「避難準備区域」の解除と「避難勧奨区域」の拡大
先週末、福島に行った。
いわき、三春、郡山、裏磐梯、福島から中村街道を抜け相馬に入り、相馬から南相馬・飯館村を経て、再び三春に入り、白河に抜けた。
松川浦周辺の復旧作業が遅れている、とは聞いていた。
しかし、現地を訪れ、言葉をなくした。
「3・11」から130日余り。いまだに浦には津波で流されたバス、転覆した何艘もの漁船やボート、破壊された民家や土産物屋などが浮かんでいた。
原型をとどめていない沖合いの防波堤。その上に、小さな漁船が二隻、乗っかっていた。
台風6号が、はるか彼方の太平洋沖をゆっくりと北上していた。
防波堤にぶつかり、波しぶきを高く上げ、砕けながら防波堤を乗り越えてくる波。
「避難準備区域」解除?
松川浦と相馬漁港の復旧作業、防波堤の修復作業が本格的に始まるのは、いつのことだろう。
「原発事故の収束なくして福島に復興はありえない」・・・。
その通りだと思う。原発事故が収束しないから、沿岸地域の復旧・復興作業が進まない。
福島の「放射能難民」は、県内外の避難者を合わせると、行政が把握しているだけでも10万人近くに上る。そしてその七割近くの人々が、故郷に帰りたいが、帰れない/帰らないと言っている。
ところが、国と自治体は、来年1月の「冷温停止」(?)→「原発事故の収束」(?)を前に、福島第1原発から20~30キロ圏を中心とした「避難準備区域」解除・縮小の「協議」を始めるという。
文科省の「原子力災害対策支援本部」は、「緊急時避難準備区域」の解除に向けた「放射線測定アクションプラン」に基づき、8月中旬までに区域内の放射線分布マップを作製し、「解除」に向けた「基礎データの収集」を開始している。
そして、原子力安全委員会が「安全性」の評価を行い、それを「解除」の「科学的な条件」にするらしい。
しかし、「避難地域」の解除・縮小が検討されている一方で、現実には、かの悪名高き「避難勧奨地点」を拡大し、「避難勧奨地域」にしようという動きがある。
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・避難勧奨拡大を検討 子ども世帯などが対象
海江田万里経済産業相は27日、局地的に放射線量が高いホットスポットに住む世帯に自主避難を促す「特定避難勧奨地点」について、指定対象世帯の拡大を検討する意向を示した。すでに勧奨地点に指定された世帯がある地区内で、未指定となった子どものいる世帯などを拡大対象とする方向で検討を進める方針。
「勧奨地点」から大字単位を基準とした「勧奨地域」への変更を求めた自民党参院政審会(山本一太会長)の要請に対し、海江田経産相が方針を示した。 山本会長は森雅子参院議員(福島選挙区)、佐藤正久参院議員(比例、福島市出身)とともに同政審の決議として要請した。「勧奨地域」への変更のほか地域内の放射線量測定の継続実施、地域全体の除染、避難世帯に対する補償の明示、避難しない世帯に対する補償や支援の明示などを求めた。(福島民友)
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「局地的に放射線量が高いホットスポット」で生活する人々に対し、国が「自主避難」を「勧奨」するとは、どういう意味か?
「地域内の放射線量測定の継続実施、地域全体の除染、避難世帯に対する補償の明示、避難しない世帯に対する補償や支援」を国が住民に対して「明示」しないまま、住民が「自己責任」で「自主」的に避難することを国が「勧誘」し「奨励」する・・・。
「計画的避難」の「計画的」もそうなのだが、「勧奨」という表現は、国の都合を第一に考え、国が住民の避難に経済的かつ政治的な責任を取らないようにするために、官僚と政治家が編み出した表現である。原発災害時の住民避難に関するこれらの定義は、もしも許容しうる、外部と内部を含めた年間被曝総線量を20ミリシーベルトではなく「1ミリシーベルト以内」と設定するなら、言葉自体が消滅する。なぜなら、「計画的」も「勧奨」もクソもなく、1ミリシーベルト以上の放射能汚染地域の住民避難・補償・賠償に、国・東電・自治体は、無条件的責任を負うようになるからである。
原子力安全委員会は、「計画的避難地域」の解除の前提として、最終的にどのような「安全基準」を「助言」するか。この間の経緯から言えば、「20以内」という数字はもはや考えられないが、どういう数字や条件が飛び出してくるか、警戒心を解除せず、注目しよう。
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・伊達市の特定避難勧奨地点4世帯が避難開始
放射線量が局所的に高い「ホットスポット」にあたるとして、4地区113世帯が「特定避難勧奨地点」に指定された福島県伊達市で28日、避難を希望した4世帯に市営住宅の鍵が引き渡された。6月30日の指定後初の避難となる。113世帯のうち避難を希望したのは77世帯で、うち49世帯は8月中に避難が完了する見込みだが、県外や民間住宅への避難を希望した28世帯は移転先が未定という。【毎日・高島博之】
特定避難勧奨地点は避難判断を住民に委ねており、指定後に市が意向を調査。49世帯のうち10世帯は指定以前に避難済みだった。国の現地対策本部と市は、避難を希望しなかった世帯については「意思を尊重する」として更なる呼び掛けなどはしない方針。
鍵の引き渡し式で市側は、避難中に除染などを進める方針を説明した。対象者の市営住宅家賃無料化などの支援を行う。鍵を受け取った清野好子さん(37)は「早めに避難先が決まらなければ、自主避難しようと考えていたのでほっとした。避難先の部屋は狭い上に3階。子供と一緒に避難しますが、夫の両親と祖母は自宅に残るので心配です」と話した。
この制度を巡っては世帯ごと指定になったことで「地域社会を分断する」との反論も噴出。国や市に「地区ごと指定」を求める要望書を提出した住民代表の高橋裕一さん(41)は「要求が受け入れられないまま戸別指定が既成事実化されていくことに憤りを感じる。地域コミュニティーが破壊されていく」と語った。引き渡し式で鍵を受け取ったのは▽霊山(りょうぜん)町石田地区1▽同町下小国地区1▽同町上小国地区2--の計4世帯。同地点には今月21日、同県南相馬市の4地区59世帯も指定されている。
・福島の子ども36万人甲状腺検査 県民全員に健康手帳
東京電力福島第一原発の事故による福島県民への放射線の影響を追う健康調査について、福島県の委員会は24日、今後の詳細な内容を決めた。震災発生時に18歳以下だった約36万人を対象に甲状腺がん検査を生涯にわたり実施する。これだけ大規模で長期に甲状腺の影響をみる検査は例がない。全県民200万人を対象に調査記録を保存する手帳「健康管理ファイル(仮称)」も作る。 子どもは大人より放射線の影響を受けやすく、特に甲状腺がんが子どもで増えることがチェルノブイリ原発事故の調査でわかっている。放射線の影響とみられる甲状腺がんの発生は事故後4~5年からだった。
福島の甲状腺検査では、10月から2014年3月までに超音波(エコー)検査で現時点でのがんの有無を調べる。それ以降は全員に2年に1度、エコー検査を受けてもらう。20歳以上は5年に1度にするが、生涯、無料で検診をする。 また全県民に対して、広島や長崎の被爆者健康手帳のように、推計した被曝(ひばく)線量や検診記録などを保存するファイルも配布する。 県は8月から年内をめどに全県民に問診票を郵送し行動記録を調べて被曝線量を推計する作業を始める。県民だけでなく3月11~26日に県内に滞在して被曝が心配な人も調査の対象に含めるという。 事故による生活環境の変化やストレスによる健康影響を見るため、職場や地域の特定健診の対象になっていない19~39歳の健診も来年度実施する。
被曝線量が高い人や避難区域などの住民には血液などの検査を受けてもらう。県の委員会の山下俊一座長(県立医大副学長)は「低線量の健康影響を見つけるには、がん以外の心臓病や脳卒中などの病気の早期発見が必要。調査の精度を上げたい」と話す。(朝日・大岩ゆり、林義則)
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「生涯、無料で検診」するのは当然のことだ。問題は、癌その他の異常が発見されたときの補償と賠償、その明文化である。補償と賠償なき「健康診断」の導入は、ただ福島県民を人体実験のモルモットに化すだけである。
・放射性の汚泥を地元に埋設 県が方針、市町村内の処分場を想定
放射性物質を含む下水処理場の汚泥問題で、福島県は施設内に仮置きされた汚泥の処理を受益市町村内の処分場で進める方針を固め、27日までに一部自治体と協議に入った。基本的に地元での処分を目指し、困難な場合は県の各地方振興局管内に範囲を広げて対応する考え。処分先が決まらないまま汚泥がたまり続ける現状を早急に打破する狙いだが、市町村から反発も出ており、協議が難航する可能性もある。
県内には県管理と市町村管理の下水処理場が計62カ所あり、施設内に仮置きされた汚泥は合わせて約6000トンに上る。環境省は下水汚泥に含まれる放射性セシウムの濃度が8000ベクレル以下の場合、埋め立て処分を可能としており、県はこの基準に沿って圏域内の処分場への埋め立てを推し進める考え。
県が管理する県北浄化センター(国見町)県中浄化センター(郡山市)あだたら清流センター(二本松市)大滝根水環境センター(田村市)の4施設については順次、地元自治体と協議を進めている。田村市からは既に了承を得て市内の一般廃棄物処分場への運び込みを再開した。 県北浄化センターについては、センターに集まる汚泥の8割を占める福島市分を同市の一般廃棄物処分場に持ち込み、伊達、国見、桑折の3市町から出る残りの二割を伊達市の一般廃棄物処分場で処理する方法を提示している。 市町村が管理する58施設については、施設を利用する自治体間で処理法を検討するよう促す。
8000ベクレルを超える汚泥について環境省は遮へい措置を取った上での保管などを求めているため、県は今回の圏域内での処理方針の対象とはしていない。 汚泥を圏域内で処理する県の方針に対しては、「住民の理解が得られない」などと批判し、国に処分を求める声が強い。 県北浄化センターは2000トンを超える汚泥を抱え、来月末には仮置き場が満杯になる状況となっている。悪臭問題も出ているため、県は対応を急ぐ必要があるとしているが、福島市側も、伊達市内の一般廃棄物処分場を運営管理する伊達地方衛生処理組合側も「住民の理解を得るのは極めて困難」と難色を示している。同センターの汚泥処理をめぐっては、柳津町の最終処分場への埋め立てを町に打診したが、拒否された経緯がある。
あだたら清流センターがある二本松市も反対の立場。大滝根水環境センターが立地する田村市は市内の処分場で受け入れているものの「県は市町村の意見を集約した上で、最終的な処分方法を考えるべき」としている。 2施設に計980トンを仮置きしている会津若松市は「市内に処分場所はない。国が全国の汚泥を一括処分してほしい」と要望。西会津町は放射性セシウム濃度が比較的低いため、汚泥の肥料化を視野に入れているが、財源確保が課題という。 こうした市町村側の受け止めに対し、県は「住民の理解が最も重要。市町村と丁寧に協議しながら処理を進めたい」(土木部)としている。 環境省は「安全性に配慮した埋め立て法を示している。市町村は、これを理解した上で対応してほしい」(産業廃棄物課)とし、あくまで地元自治体による処分を求めている。(福島民友)
・高線量被ばくの作業員は2160人
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力は27日、福島第1原発事故の収束作業に当たる作業員のうち、事故収束までの高線量被ばく者数の3月下旬時点での試算を発表した。50ミリシーベルト以上100ミリシーベルト未満が約1680人、100ミリシーベルト以上が約480人だった。
保安院などによると、試算は保安院の指示を受け、東電と原子炉メーカーの東芝、日立製作所の計3社が実施し、保安院に結果を報告。厚生労働省の内部文書内に「経産省によると50ミリシーベルト超は約1600人」との記載があることが市民団体の情報公開請求で明らかになったため発表した。
試算結果を4カ月近く公表しなかった理由について、保安院の森山善範原子力災害対策監は「個別の企業情報が含まれているため」などと説明。内部文書の開示を受けた「全国労働安全衛生センター連絡会議」の飯田勝泰事務局次長は「もっと早く作業員に知らされるべき情報だった。隠していたとしか思えない」と批判している。 東電によると、今月13日現在、100ミリシーベルト以上の被ばくをした作業員は東電と協力企業の計111人。【毎日・池田知広、久野華代】
2011年7月28日木曜日
馬毛島の違法工事差止め訴訟原告緊急募集
【全国のみなさんへの緊急アピール・第2次】
●馬毛島の違法工事差止め訴訟原告緊急募集>
防衛省・自衛隊は鹿児島県の馬毛島(まげしま)に自衛隊の施設を建設して滑走路を整備し、それを米海軍空母艦載機のFCLP(離発着訓練)のために提供しようとしています。
馬毛島に近い周辺1市3町(西之表市、中種子町、南種子町、屋久町)と同地域の住民の大多数が強く反対し、また鹿児島県内の他の地域でも反対運動がどんどん広がっているにもかかわらず、北沢防衛相はこの計画をしゃにむに強行しようとしています。そこで「馬毛島の自然を守る会・屋久島」が馬毛島の自然破壊と軍事基地化を阻止するため、「馬毛島の違法工事差止め訴訟」を起こすことになりました。
同会の原告募集要項を全国に発信します。要綱にあるように、同会は賛助会員やカンパも募集しています。同訴訟への支援を心から訴えます。
南西諸島派兵阻止ニュース編集部(井上澄夫)
・・・・・・・・・・・・
自衛隊は現在、種子島[たねがしま]の西之表市(にしのおもてし)で少人数の住民説明会をひそかに開くなど、馬毛島の軍事基地化・米軍訓練移転に反対する世論を切り崩し、基地受け入れに住民を誘導する工作を進めています。事態は非常に切迫しているので、提訴を急がねばなりません。
緊急募集要項にあるように、原告への参加申し込み期限は【本年8月5日午後5時】です。
全国からの至急のご協力・ご支援を切に訴えます。
◆連絡先
〒891-4311 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2627-133
馬毛島の自然を守る会・屋久島TEL0997-46-3714/FAX0997-46-3738
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
・・・
⇒「馬毛島の軍事施設化に反対する署名のお願い」(6/19)
●馬毛島の違法工事差止め訴訟原告緊急募集>
防衛省・自衛隊は鹿児島県の馬毛島(まげしま)に自衛隊の施設を建設して滑走路を整備し、それを米海軍空母艦載機のFCLP(離発着訓練)のために提供しようとしています。
馬毛島に近い周辺1市3町(西之表市、中種子町、南種子町、屋久町)と同地域の住民の大多数が強く反対し、また鹿児島県内の他の地域でも反対運動がどんどん広がっているにもかかわらず、北沢防衛相はこの計画をしゃにむに強行しようとしています。そこで「馬毛島の自然を守る会・屋久島」が馬毛島の自然破壊と軍事基地化を阻止するため、「馬毛島の違法工事差止め訴訟」を起こすことになりました。
同会の原告募集要項を全国に発信します。要綱にあるように、同会は賛助会員やカンパも募集しています。同訴訟への支援を心から訴えます。
南西諸島派兵阻止ニュース編集部(井上澄夫)
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自衛隊は現在、種子島[たねがしま]の西之表市(にしのおもてし)で少人数の住民説明会をひそかに開くなど、馬毛島の軍事基地化・米軍訓練移転に反対する世論を切り崩し、基地受け入れに住民を誘導する工作を進めています。事態は非常に切迫しているので、提訴を急がねばなりません。
緊急募集要項にあるように、原告への参加申し込み期限は【本年8月5日午後5時】です。
全国からの至急のご協力・ご支援を切に訴えます。
◆連絡先
〒891-4311 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2627-133
馬毛島の自然を守る会・屋久島TEL0997-46-3714/FAX0997-46-3738
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
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⇒「馬毛島の軍事施設化に反対する署名のお願い」(6/19)
2011年7月22日金曜日
原発の国民投票・・・
原発の国民投票・・・
支持率10%余りの首相と政権与党の下で、停止中原発の再稼働に向けた準備が粛々と行われている。圧倒的多数の有権者が支持しない首相と内閣が、憲法と法令で保障された権限を行使しながら、退陣を引きのばし、今後数十年におよぶ日本の未来を規定する、さまざまな法案を通そうとしているのである。
日本社会を包み込んでいる、この奇妙な政治状況は、いったいどうすれば打開できるのか。
かなり前になるが、『自由と権利』(ジョセフ・ラズ著)を読んだことがある。「人が自律的であるためには、ある選択を与えられるだけでなく、十分な一群の選択を与えられなければならない」という一文がたびたび引用される本である。
日本の「議会制民主主義」は、私たちに「十分な一群の選択」を与えない。政党政治も同じである。「国民」、有権者の圧倒的多数派たる〈私たち〉無党派は、「十分」どころか、ほとんど「選択肢」を持たない、と言っても過言ではない。いわゆる「間接民主制の弊害」と呼ばれてきたものが、ポスト「3・11」において最悪の形で現出しているのが今の情況と言ってよいだろう。
こうした中で、昨日、一部民主党議員の呼びかけで「原発に関する国民投票を実現する議員連盟」が設立され、「設立総会」が開催された(「総会」の模様はネットでも放映されているので、関心のある人は参照してほしい)
以前にも書いたが、私は一般論として言えば、原発の国民投票に賛成である。原発のみならず「国の専権事項」とされている安保・米軍基地問題や「国策」一般に対する国民投票制度の導入は、いずれは実現されなければならない課題だと考えている。そのために『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』も書いた。
しかし、「3・11」後の状況の中で、私たちが第一に考えなければならないのは、国民投票よりもむしろ、原発の「防災対策」の見直しを通じた、原発から50キロ圏内程度の自治体を網羅する、「広域的住民投票制度」の導入だと考えている。中央-地方の政治家・既成政党・議会・議員に、〈私たち〉の意志を「代表」できるとは、とても思えないからである。
要は、国と自治体の政策決定に対し、〈私たち〉が、「ある選択」だけでなく、「十分な一群の選択」を獲得するためには、何がどうなればよいか、という問題に行き着くことになる。
〈私たち〉は、日々、とても忙しい。やるべきこと、考えるべきことが山のようにある。そのほとんどは、仕事・私事・趣味に関することだ。そういう〈私たち〉が、政策上の「十分な一群の選択」を獲得するには、どのような政治のシステムが必要なのか。読者も暇をみつけて、ぜひ考えてほしい。
それにしても。「設立総会」の何と低調なことか。民主党の未来が私にはどうしても見えないのだが・・・。
・・・
・福島第1原発事故 3、4号機の電源喪失
東京電力は22日、福島第1原発の3、4号機への電力供給が停止するトラブルが発生したと発表した。外部電源の喪失は東日本大震災による復旧後初めて。3号機の使用済み核燃料プールの冷却機能は、供給回路の一部が復旧したため4時間40分後に復旧した。21日に水位計の電源が落ちて自動停止した汚染水処理システムは22日未明に復旧したが、この影響で再び止まったままだ。
外部電源が機能を失ったのは22日午前7時10分。外部電源の回路を多重化する工事に伴い、21日夕から3、4号機などの電源回路をいったん停止。別の回路から電源を確保していたが、回路の遮断機が何らかの原因で作動したため、供給が止まった。原因を調べている。 電源喪失に伴い、3、4号機の原子炉内の圧力計と温度計も一時計測できなくなったほか、免震重要棟の電源も一時失われた。
原子炉への注水は、これまでに汚染水を浄化した水が残っていたため継続した。1~3号機の窒素注入は別の電源のため継続している。このトラブルによる外部への放射性物質の漏れはないという。【毎日・蓬田正志、比嘉洋】
・福島第1原発:東電がベント不調を報告 会見では認めず(毎日)
・原発再稼働、耐性評価が鍵 高浜4号定検で野瀬町長
福井県高浜町の野瀬豊町長は21日、同町役場で記者会見した。関西電力高浜原発4号機の同日からの定期検査入りに関連し、逼迫(ひっぱく)する電力需給の改善には定検後の原発再稼働が必要と指摘した上で、「(再稼働には)ストレステスト(耐性評価)が大きな判断材料になる。国は早急にテストの手順、行程、スケジュールを示し、(自治体が)判断できる状況にしてほしい」と求めた。
ストレステストが終了し、国から再稼働の要請があった場合の町としての対応については「その段階で、以前から町が求めているアクセス道路や避難道路などへの一定の回答があることが前提」としながらも、「一定の安全対策のロードマップを明確にしてもらえれば(再稼働に)理解はできる」と述べた。 さらに、県が求めている暫定的な安全基準と、町が求める条件はすべて同じではないとし「町の(再稼働への)判断が、県より早くなることも可能性としてないわけではない」と述べた。 関西圏の電力需給に関しては「厳しい電力需給になると危惧している」と受け止める一方「図らずも、福井県が関西の“血液”を供給する場所で、社会システム全体を動かす拠点であったことが顕在化した」と述べた。 町長は政府の姿勢に関しても「国はエネルギー基本計画や将来的な代替電源など、先々のことに視点が移り過ぎているのでは」と苦言を呈し、「足元をしっかり見た対応を早急にとるべきだ」と強調した。 (福井新聞)
・美浜原発2号機、40年超運転に向け技術評価書
関西電力は22日、美浜原子力発電所2号機(福井県美浜町、出力50万キロ・ワット)を40年を超えて運転するため、経済産業省原子力安全・保安院に保安規定の変更を申請し、設備は健全で40年超の運転にも耐えられるとする「技術評価書」を提出した。 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故が起こって以来、40年超運転に向けた申請は初めて。
40年を超えて運転する場合は、その1年前までに、さらに10年間運転しても問題はないとする「技術評価書」を国に提出する必要がある。美浜2号機は1972年の運転開始で、25日にちょうど39年となる。 一方、福井県の満田誉副知事は22日、県庁を訪れた関電の豊松秀己副社長に対し、原発の40年を超す運転について、「(福島第一原発)事故の前後で同じ安全基準では理解は得られない。国が真摯(しんし)に取り組まないと運転は難しい」と話し、国が新たな審査基準を示さなければ40年超の運転を認めない方針を伝えた。(読売)
・玄海原発の耐震評価でミス 3号機、安全評価に遅れも
経済産業省原子力安全・保安院は22日、九州電力が2009年に提出した耐震安全性評価(バックチェック)の最終報告で、玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で誤ったデータ入力が2件あったことを明らかにした。結果に大きな影響はないとみられるが再評価の必要性があり、福島第1原発事故を受けて実施予定の安全評価に遅れが出る可能性もある。
保安院の森山善範原子力災害対策監は記者会見で「(評価結果は)ほとんど変わらない数字だが、ミスがあってはいけないので直してもらう」と述べた。 また玄海原発のほかの号機や、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で実施した耐震安全性評価についても再確認が必要となるとの見解を示した。 保安院がクロスチェックを依頼している原子力安全基盤機構がデータに不自然な点があることに気付き、保安院に知らせた。保安院は今月6日に九電に再確認を指示した。 (佐賀新聞)
・・・
・原発輸出、見直しが必要…参院予算委で首相
菅首相は21日の参院予算委員会で、政府が推進する原子力発電所の海外輸出について、「もう一度、きちんとした議論がなされなければならない段階に来ている。(政府が昨年6月に決定した)新成長戦略の見直しの検討の中で議論する」と述べ、見直しが必要との考えを示した。
政府は新成長戦略で、原発や高速鉄道などのインフラ輸出を柱の一つに位置づけていた。ただ、菅首相がベトナムへの原発輸出を推進した経緯もあるため、「(ベトナムとの)信頼関係を損なわないような対応の在り方も含めて議論したい」とも語った。将来的な「脱原発」方針を争点にした衆院解散・総選挙については「私の頭の中には全くない」と、改めて否定した。
一方、海江田経済産業相は同委員会で、自らの進退に関し、「(原子力損害賠償支援機構法案の)一日も早い成立を願っている。そういうことに対しては責任を果たす」と述べた。原発再稼働問題をめぐる混乱の責任を取り、関連法案の成立後に辞任する可能性に改めて言及したものだ。(読売)
・豪エネ相、ウランの需要・開発「さらに拡大」
20日まで来日していたオーストラリアのファーガソン資源・エネルギー相兼観光相は、東日本大震災後に減速感をみせた世界の原子力発電市場の動向について、今後は力強い成長を回復するとの見方を示した。同国が世界最大とされる埋蔵量を持つ原発燃料ウランへの「需要と開発投資はさらに拡大する」と指摘。原発増設に積極的なインド向けに、現在の禁輸措置を解除する方向であることも示唆した。
日本滞在中に都内で日本経済新聞の取材に答えた。原発の展望に関しては「クリーンエネルギーの一つで、発電手段の多様化の一翼を担い続ける」と強調。「(発電規模・効率の観点から)他の再生可能エネルギーとの代替は難しい」とも分析した。 核拡散防止条約(NPT)に非加盟であることを理由に豪政府が禁じてきたインド向けウラン輸出の扱いは「(供給の可否は他国と同様)商業ベースの問題だ」と説明した。既に米印原子力協定を支持する立場を表明している豪政府が国内の政治的な調整を終え、禁輸解除にメドをつけつつあることをにじませたとみられる。
豪州はカザフスタン、カナダに次ぐ世界3位のウラン生産国。ウランの国際価格は東京電力福島第1原子力発電所事故前の1ポンド70ドル超から足元で同50ドル台に下落したが、カザフは増産姿勢を堅持している。豪も新興国需要をテコにウラン開発・輸出を促進する構えだ。 豪政府がこのほど2012年7月の導入を発表した二酸化炭素(CO2)排出や資源開発を巡る企業税制にも触れ「(国民・企業の反発があっても)予定通り導入する」と言明した。影響として「製造業では(税負担の影響への)対応策を求められる」と述べる一方「石炭は需要・市場価格ともに好調で、収益の機会は豊富だ」と主張。資源分野では税負担を上回る恩恵が得られるとアピールした。
新税制で「再生可能エネルギーなどの活用が一段と重要になる」との見通しも示した。そのうえで「太陽・地熱発電やCO2の地下貯留(CCS)で日本の技術革新は強みになる」と評価し、日本政府・企業と緊密に連携したい考えを表明した。
国際石油開発帝石が主導する豪北部の大型液化天然ガス(LNG)生産・輸出プロジェクト「イクシス」にも言及。「同社だけでなく震災後の日本の資源調達の助けになるだろう」「(同社などが年内に予定する)最終投資決定に備え、豪政府は近く生産ライセンスを発給する」などとして、豪政府として後押しする姿勢を示した。(日経)
支持率10%余りの首相と政権与党の下で、停止中原発の再稼働に向けた準備が粛々と行われている。圧倒的多数の有権者が支持しない首相と内閣が、憲法と法令で保障された権限を行使しながら、退陣を引きのばし、今後数十年におよぶ日本の未来を規定する、さまざまな法案を通そうとしているのである。
日本社会を包み込んでいる、この奇妙な政治状況は、いったいどうすれば打開できるのか。
かなり前になるが、『自由と権利』(ジョセフ・ラズ著)を読んだことがある。「人が自律的であるためには、ある選択を与えられるだけでなく、十分な一群の選択を与えられなければならない」という一文がたびたび引用される本である。
日本の「議会制民主主義」は、私たちに「十分な一群の選択」を与えない。政党政治も同じである。「国民」、有権者の圧倒的多数派たる〈私たち〉無党派は、「十分」どころか、ほとんど「選択肢」を持たない、と言っても過言ではない。いわゆる「間接民主制の弊害」と呼ばれてきたものが、ポスト「3・11」において最悪の形で現出しているのが今の情況と言ってよいだろう。
こうした中で、昨日、一部民主党議員の呼びかけで「原発に関する国民投票を実現する議員連盟」が設立され、「設立総会」が開催された(「総会」の模様はネットでも放映されているので、関心のある人は参照してほしい)
以前にも書いたが、私は一般論として言えば、原発の国民投票に賛成である。原発のみならず「国の専権事項」とされている安保・米軍基地問題や「国策」一般に対する国民投票制度の導入は、いずれは実現されなければならない課題だと考えている。そのために『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』も書いた。
しかし、「3・11」後の状況の中で、私たちが第一に考えなければならないのは、国民投票よりもむしろ、原発の「防災対策」の見直しを通じた、原発から50キロ圏内程度の自治体を網羅する、「広域的住民投票制度」の導入だと考えている。中央-地方の政治家・既成政党・議会・議員に、〈私たち〉の意志を「代表」できるとは、とても思えないからである。
要は、国と自治体の政策決定に対し、〈私たち〉が、「ある選択」だけでなく、「十分な一群の選択」を獲得するためには、何がどうなればよいか、という問題に行き着くことになる。
〈私たち〉は、日々、とても忙しい。やるべきこと、考えるべきことが山のようにある。そのほとんどは、仕事・私事・趣味に関することだ。そういう〈私たち〉が、政策上の「十分な一群の選択」を獲得するには、どのような政治のシステムが必要なのか。読者も暇をみつけて、ぜひ考えてほしい。
それにしても。「設立総会」の何と低調なことか。民主党の未来が私にはどうしても見えないのだが・・・。
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・福島第1原発事故 3、4号機の電源喪失
東京電力は22日、福島第1原発の3、4号機への電力供給が停止するトラブルが発生したと発表した。外部電源の喪失は東日本大震災による復旧後初めて。3号機の使用済み核燃料プールの冷却機能は、供給回路の一部が復旧したため4時間40分後に復旧した。21日に水位計の電源が落ちて自動停止した汚染水処理システムは22日未明に復旧したが、この影響で再び止まったままだ。
外部電源が機能を失ったのは22日午前7時10分。外部電源の回路を多重化する工事に伴い、21日夕から3、4号機などの電源回路をいったん停止。別の回路から電源を確保していたが、回路の遮断機が何らかの原因で作動したため、供給が止まった。原因を調べている。 電源喪失に伴い、3、4号機の原子炉内の圧力計と温度計も一時計測できなくなったほか、免震重要棟の電源も一時失われた。
原子炉への注水は、これまでに汚染水を浄化した水が残っていたため継続した。1~3号機の窒素注入は別の電源のため継続している。このトラブルによる外部への放射性物質の漏れはないという。【毎日・蓬田正志、比嘉洋】
・福島第1原発:東電がベント不調を報告 会見では認めず(毎日)
・原発再稼働、耐性評価が鍵 高浜4号定検で野瀬町長
福井県高浜町の野瀬豊町長は21日、同町役場で記者会見した。関西電力高浜原発4号機の同日からの定期検査入りに関連し、逼迫(ひっぱく)する電力需給の改善には定検後の原発再稼働が必要と指摘した上で、「(再稼働には)ストレステスト(耐性評価)が大きな判断材料になる。国は早急にテストの手順、行程、スケジュールを示し、(自治体が)判断できる状況にしてほしい」と求めた。
ストレステストが終了し、国から再稼働の要請があった場合の町としての対応については「その段階で、以前から町が求めているアクセス道路や避難道路などへの一定の回答があることが前提」としながらも、「一定の安全対策のロードマップを明確にしてもらえれば(再稼働に)理解はできる」と述べた。 さらに、県が求めている暫定的な安全基準と、町が求める条件はすべて同じではないとし「町の(再稼働への)判断が、県より早くなることも可能性としてないわけではない」と述べた。 関西圏の電力需給に関しては「厳しい電力需給になると危惧している」と受け止める一方「図らずも、福井県が関西の“血液”を供給する場所で、社会システム全体を動かす拠点であったことが顕在化した」と述べた。 町長は政府の姿勢に関しても「国はエネルギー基本計画や将来的な代替電源など、先々のことに視点が移り過ぎているのでは」と苦言を呈し、「足元をしっかり見た対応を早急にとるべきだ」と強調した。 (福井新聞)
・美浜原発2号機、40年超運転に向け技術評価書
関西電力は22日、美浜原子力発電所2号機(福井県美浜町、出力50万キロ・ワット)を40年を超えて運転するため、経済産業省原子力安全・保安院に保安規定の変更を申請し、設備は健全で40年超の運転にも耐えられるとする「技術評価書」を提出した。 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故が起こって以来、40年超運転に向けた申請は初めて。
40年を超えて運転する場合は、その1年前までに、さらに10年間運転しても問題はないとする「技術評価書」を国に提出する必要がある。美浜2号機は1972年の運転開始で、25日にちょうど39年となる。 一方、福井県の満田誉副知事は22日、県庁を訪れた関電の豊松秀己副社長に対し、原発の40年を超す運転について、「(福島第一原発)事故の前後で同じ安全基準では理解は得られない。国が真摯(しんし)に取り組まないと運転は難しい」と話し、国が新たな審査基準を示さなければ40年超の運転を認めない方針を伝えた。(読売)
・玄海原発の耐震評価でミス 3号機、安全評価に遅れも
経済産業省原子力安全・保安院は22日、九州電力が2009年に提出した耐震安全性評価(バックチェック)の最終報告で、玄海原発(佐賀県玄海町)3号機で誤ったデータ入力が2件あったことを明らかにした。結果に大きな影響はないとみられるが再評価の必要性があり、福島第1原発事故を受けて実施予定の安全評価に遅れが出る可能性もある。
保安院の森山善範原子力災害対策監は記者会見で「(評価結果は)ほとんど変わらない数字だが、ミスがあってはいけないので直してもらう」と述べた。 また玄海原発のほかの号機や、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で実施した耐震安全性評価についても再確認が必要となるとの見解を示した。 保安院がクロスチェックを依頼している原子力安全基盤機構がデータに不自然な点があることに気付き、保安院に知らせた。保安院は今月6日に九電に再確認を指示した。 (佐賀新聞)
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・原発輸出、見直しが必要…参院予算委で首相
菅首相は21日の参院予算委員会で、政府が推進する原子力発電所の海外輸出について、「もう一度、きちんとした議論がなされなければならない段階に来ている。(政府が昨年6月に決定した)新成長戦略の見直しの検討の中で議論する」と述べ、見直しが必要との考えを示した。
政府は新成長戦略で、原発や高速鉄道などのインフラ輸出を柱の一つに位置づけていた。ただ、菅首相がベトナムへの原発輸出を推進した経緯もあるため、「(ベトナムとの)信頼関係を損なわないような対応の在り方も含めて議論したい」とも語った。将来的な「脱原発」方針を争点にした衆院解散・総選挙については「私の頭の中には全くない」と、改めて否定した。
一方、海江田経済産業相は同委員会で、自らの進退に関し、「(原子力損害賠償支援機構法案の)一日も早い成立を願っている。そういうことに対しては責任を果たす」と述べた。原発再稼働問題をめぐる混乱の責任を取り、関連法案の成立後に辞任する可能性に改めて言及したものだ。(読売)
・豪エネ相、ウランの需要・開発「さらに拡大」
20日まで来日していたオーストラリアのファーガソン資源・エネルギー相兼観光相は、東日本大震災後に減速感をみせた世界の原子力発電市場の動向について、今後は力強い成長を回復するとの見方を示した。同国が世界最大とされる埋蔵量を持つ原発燃料ウランへの「需要と開発投資はさらに拡大する」と指摘。原発増設に積極的なインド向けに、現在の禁輸措置を解除する方向であることも示唆した。
日本滞在中に都内で日本経済新聞の取材に答えた。原発の展望に関しては「クリーンエネルギーの一つで、発電手段の多様化の一翼を担い続ける」と強調。「(発電規模・効率の観点から)他の再生可能エネルギーとの代替は難しい」とも分析した。 核拡散防止条約(NPT)に非加盟であることを理由に豪政府が禁じてきたインド向けウラン輸出の扱いは「(供給の可否は他国と同様)商業ベースの問題だ」と説明した。既に米印原子力協定を支持する立場を表明している豪政府が国内の政治的な調整を終え、禁輸解除にメドをつけつつあることをにじませたとみられる。
豪州はカザフスタン、カナダに次ぐ世界3位のウラン生産国。ウランの国際価格は東京電力福島第1原子力発電所事故前の1ポンド70ドル超から足元で同50ドル台に下落したが、カザフは増産姿勢を堅持している。豪も新興国需要をテコにウラン開発・輸出を促進する構えだ。 豪政府がこのほど2012年7月の導入を発表した二酸化炭素(CO2)排出や資源開発を巡る企業税制にも触れ「(国民・企業の反発があっても)予定通り導入する」と言明した。影響として「製造業では(税負担の影響への)対応策を求められる」と述べる一方「石炭は需要・市場価格ともに好調で、収益の機会は豊富だ」と主張。資源分野では税負担を上回る恩恵が得られるとアピールした。
新税制で「再生可能エネルギーなどの活用が一段と重要になる」との見通しも示した。そのうえで「太陽・地熱発電やCO2の地下貯留(CCS)で日本の技術革新は強みになる」と評価し、日本政府・企業と緊密に連携したい考えを表明した。
国際石油開発帝石が主導する豪北部の大型液化天然ガス(LNG)生産・輸出プロジェクト「イクシス」にも言及。「同社だけでなく震災後の日本の資源調達の助けになるだろう」「(同社などが年内に予定する)最終投資決定に備え、豪政府は近く生産ライセンスを発給する」などとして、豪政府として後押しする姿勢を示した。(日経)
2011年7月21日木曜日
民主党と自民党の原発政策に違いはあるか
民主党と自民党の原発政策に違いはあるか
菅首相が「個人的な見解」として「脱原発依存社会」(将来的に原発に依存しなくてもすむ社会)を打ち出したことをめぐり、メディアの混乱が深まっている。 その一例が、今日(7/21)の東京新聞の署名入りの記事、「既存の原発維持 公共事業拡大 民主との違い 自民前面」である。
この記事は、自民党の国家戦略本部が、昨日、中長期的な政策に関する報告書を発表したことに対し、自民党の政策と民主党のそれを比較・対照することを目的にした記事である。しかし、この記事は菅内閣および民主党の政策評価にめぐる基本的分析において誤っている。誤解や勘違いが幻想とともに蔓延しているかのようだ。
東京新聞は、このように分析する。
「[自民党と]民主党との違いが際立つのはエネルギー政策だ。安全強化策を条件に、既存の原発は当面維持すると明記した。菅直人首相の福島第一原発事故を踏まえた「脱・原発依存」宣言に対抗。首相が脱原発の具体的な時期や道筋を示していないこともあり、再生可能エネルギーでは、すぐには原発分を補えないという“現実”を強調した」
「安全強化策を条件に、既存の原発は当面維持する」という点では、菅内閣・民主党も同じである。両党に違いはない。両党の「違いが際立つ」ためには、いずれか一方が党として、それがいつになるのであれ、脱原発のタイムテーブルを出せるかどうか、にかかっている。現状では、民主党にその意思があるとはとても思えない。その意味で、首相の個人的見解を過大に評価することは誤っていると言わざるをえない。
たとえば、・クローズアップ2011:「脱原発」方針表明 首相独走、募る疑心(毎日,7/14)にも、次のような一文がある。
「地球温暖化問題に取り組む気候ネットワークは「歴代首相の中で初めて脱原発を宣言した。エネルギー政策の転換へ大きくかじを切った日として記憶に残る日となる」と歓迎した。また、グリーンピース・ジャパンは「福島第1原発事故を受け、将来世代の安全・安心を最優先に考えれば当然の方針」と評価した」・・・。
しかし、「エネルギー政策の転換へ大きくかじを切った日として記憶に残る日」となるためには、首相の「個人的な見解」が「内閣の見解」となり、「政府・与党の見解」として公式の文書で確認される必要がある。「福島第1原発事故を受け、将来世代の安全・安心を最優先に考えれば当然の方針」だと一見思えるのだが、首相の宣言は、とても「方針」と評価できるような代物ではなかったのだ。(もちろん、現政権、あるいは次期政権の下で、脱原発を標榜する政府なり党なりの「方針」が、具体的文書として公表されるなら、私も大いに評価し支持するつもりだ)。
政党として、これまでの日本の原子力行政を抜本的に見直し、脱原発を路線的に追求しているかどうかを判断する基準とは何か。それは、「国策・民営」の原発行政の三大柱、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式を解体できるかどうか、そのための法改正を含めたプランとビジョンを持っているか/それを打ち出そうとする意思が感じられるかどうか、にある。 その試金石が、今回の原発災害に対する東電の社会的・経済的責任の明確化→東電の一時的「国有化」を通じた、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式、この三位一体の解体的再編成なのだ。どれか一つでも欠けると、「国策・民営」の戦後原発行政を解体することはできない。
脱原発とは、まさに「言うは易し、行うは難し」である。とても一筋縄ではゆかない。
自民党はもとより、菅内閣・民主党も、脱原発政党からは、はるかに遠い存在だ。 くれぐれも勘違いをしないよう、また決して騙されぬよう、心がけたいものである。
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・福島第1原発、浄化システムまたトラブル「予想外の停止」 台風6号で汚染水も増加
東電は21日、福島第1原発で汚染水を処理して原子炉冷却に使う「循環注水冷却」の中核である汚染水浄化システムが自動停止したと発表した。除染後の処理水をためるタンクの電源が停止し安全装置が想定外に働いたためという。台風6号接近に伴う降雨のため、原子炉建屋地下などにたまった汚染水の水位が上昇しており、東電は雨水対策を急いでいる。
東電によると、21日午前8時半ごろ、電源工事に伴う停電でタンクの水位計が停止し、システム全体が予定より約7時間早く停止した。停止により、システムの稼働率はさらに約3%低下することが見込まれ、東電が目標としている稼働率70%を下回る公算が大きくなった。 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「予定外の稼働率の低下だ」としている。
福島第1原発の建屋や立て坑などにたまっている汚染水の水位が降雨の影響で上昇。特に1号機原子炉建屋地下では、汚染水の水位が20日午後4時からの15時間で約41センチ上昇した。 東電は「1号機建屋には屋根がないので、雨がそのまま地下に流れている」とみている。ただ、地下にはまだ約4・9メートルの余裕があり、ただちにあふれ出す危険が少ないとみられる。(産経)
・関西経済5団体、政府に原発再稼働要望 空洞化を懸念
関西経済連合会など関西の経済5団体は21日、原子力発電所の早期再稼働による電力の安定確保を政府に要望した。定期検査を終えた原発は稼働させながらストレステスト(耐性調査)を実施すべきだと指摘した。同時に、省エネ機器や太陽光発電を導入した企業に対する助成を2011年度第3次補正予算案に盛り込むことも求めた。
大阪、神戸、京都の商工会議所、関西経済同友会を加えた5団体が共同で要望書を作成。大商の佐藤茂雄会頭(京阪電気鉄道相談役)らが首相官邸を21日午前に訪れ、福山哲郎官房副長官に手渡した。 佐藤会頭は記者団に対し、政府が関西電力管内で10%以上の節電を要請したことについて「場当たり的だ。将来のエネルギー政策も示してほしかった」と語った。 要望書では、電力不足は企業の海外流出を招きかねず産業空洞化につながると指摘。「西日本は震災の復興支援基地として国全体の下支え機能を果たしてきたが、電力不足が大きな足かせとなっている」と懸念を表明した。(日経)
・自民党:「集団的自衛権」認める 保守層強く意識--中長期政策 自民党国家戦略本部(本部長・谷垣禎一総裁)は20日、中長期の政策の方向性を定めた報告書「日本再興」を発表した。「選挙のたびに無党派層の動向に一喜一憂し、岩盤のような保守層を置き去りにした」という反省に立ち、「学校での国旗掲揚、国歌斉唱の義務化」「集団的自衛権の行使を認め、範囲を法律で規定」など保守色の濃い政策を積極的に盛り込んだ半面、社会保障分野では具体論に踏み込まず、与野党協議を敬遠する党の現状も浮き彫りになった。
報告書は次期衆院選の選挙公約の基礎になる。谷垣氏は20日の会見で「民主党はバラマキ本位だが、われわれの基本は『自助』だという点をきちんと出していきたい」と述べ、民主党との政策の差別化に意欲を示した。
外交・安全保障分野では、国家安全保障会議の常設▽自衛隊の国際的平和活動に関する一般法(恒久法)の制定--などを列挙。非核三原則のうち核兵器の一時的な持ち込みを容認する「非核2・5原則」への転換も打ち出した。【毎日・佐藤丈一】
・自民、原発は当面維持 中長期政策、将来の存廃は触れず
自民党の国家戦略本部(本部長・谷垣禎一総裁)は20日、中長期的な基本政策をまとめた「日本再興」と題する報告書を発表した。当面のエネルギー政策については再生可能エネルギーの促進とともに「安全強化策を施した上で既存原発の稼働維持」を掲げた。核兵器の一時的な持ち込みを容認する「非核2.5原則」への転換も打ち出した。
昨年9月から「成長戦略」「社会保障・財政・雇用」「地域活性化」「国土保全・交通」「外交・安全保障」「教育」の6分野で検討を進めてきた。同報告書が自民党の次期衆院選の選挙公約の土台になる。
自民党がこれまで推進してきた原発については「事故はわが国のエネルギー政策の根幹を大きく揺るがした」と記したが、総合エネルギー政策特命委員会(山本一太委員長)でエネルギー政策を検討中のため、将来の原発の存廃には触れなかった。(朝日)
・政府10法案成立もう断念…早すぎ批判も
民主党は20日、今通常国会に政府が提出した法案のうち、野党の協力を得るメドが立たない約10本の成立を断念する方針を固めた。 いずれも秋の臨時国会に継続審議とする方向だが、国会を70日間も延長したうえ、まだ1か月余も残した中での消極姿勢には、与党内からも批判が出そうだ。 成立を断念するのは、
〈1〉温室効果ガス25%削減目標を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案
〈2〉製造業への派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案
〈3〉国家公務員への労働協約締結権付与を柱とした国家公務員制度改革関連法案――など。大半が審議入りすらしていない。
野党側が「菅首相の下では東日本大震災関連の法案以外は原則協力しない」との姿勢を強めていることに加え、首相の退陣条件とされる再生可能エネルギー特別措置法案などの成立や、原子力損害賠償支援機構法案など震災関連法案の処理を優先する狙いがある。(読売)
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・民自公、原賠法改正で大筋合意 電力会社負担に上限
衆院復興特別委員会の民主、自民、公明の理事が、事故時に電力会社が無限の責任を負う原子力損害賠償法(原賠法)の改正を進めることで大筋合意した。21日午前の協議で、東京電力福島第一原発事故の賠償を国が支えるための「原子力損害賠償支援機構法案」を修正して成立を目指すことを確認、原賠法改正の必要性も認めた。
原賠法は電力会社に対し、事故が起きた際は過失の程度などを問わずに無限の賠償責任を負わせるとしている。福島の事故では、数兆円に達する見通しの負担を東電が背負いきれず、資金繰りなどを支える機構を設けることになった。
機構法案の修正協議の過程で、今後の事故に備えるため、損害賠償の前提となる原賠法を改める必要があるとの認識で一致。負担に上限を設けるなどの改正を一定期間で進めることを、機構法の付則や付帯決議で定める方向で調整する。 (朝日)
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すべての話が振り出しに戻る。「原発+自然エネルギー」の推進路線を採る民自公のこの合意は、結局は、東電を救済し、原発事故の補償責任を「国民」の税負担と電気料金増によって賄おうとするものに他ならない。
「今回の原発災害に対する東電の社会的・経済的責任の明確化→東電の一時的「国有化」を通じた、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式、この三位一体の解体的再編成」を棚上げにし、本質的・根本的な問題解決を先送りにしようとするものだ。
・原発再稼働基準「事故調報告の1、2年後」 首相が答弁
菅直人首相は21日の参院予算委員会での答弁で、原発再稼働のための本格的な安全基準について「(東京電力福島第一原発の)事故調(査・検証委員会)の報告が出た1年か2年の後、新しい基準をつくることになる」と述べた。
全原発を対象に実施するストレステスト(耐性評価)については「今の段階で(暫定的な)新しいルールづくりをすることは、国民に安心を持ってもらう上で必要だ」と強調した。原発輸出については「私自身これまで力を入れてきた。もう一度きちんとした議論がなされなければならない段階にきている」と述べた。
海江田万里経済産業相は、首相の「脱原発」発言について会見前に首相から説明を受けた際、「日本は核兵器を持たずに原子力技術を開発してきたが、原発ゼロとなるとこうした技術が途絶えてしまう。それで本当にいいのか。もう少し多角的な角度から議論した方がいい」と反論したことを明らかにした。 (朝日)
・原発の安全強化へ声明 核兵器非保有10カ国が閣僚会合
核兵器を保有しない10カ国による「核軍縮・不拡散に関する閣僚会合」が30日にベルリンで開かれた。日本からは松本剛明外相が出席し、福島第一原発の事故に対する日本政府の対応を説明。参加国は原発の安全性強化などを盛り込んだ「ベルリン声明」を発表した。 閣僚会合は「核兵器のない世界」をめざし、日豪の主導で昨年発足した枠組みで、ドイツ、トルコ、カナダなどの外相らも出席した。
会合では、福島第一原発の事故が各国の原子力政策に影響を及ぼす中で「原子力の国際的な安全性強化も(各国の)仕事の一つだ」(ドイツのベスターベレ外相)との認識で一致。核軍縮や不拡散に加え、原子力の平和的利用のあり方についても、連携して対処することを確認した。 声明では核軍縮の具体策として、高濃縮ウランなど核兵器用の核分裂物質の生産を禁止する「カットオフ条約」の交渉開始を促したほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた取り組みなどを挙げた。(朝日・ベルリン=松村愛)
・政府、米核実験に抗議せず
福山哲郎官房副長官は20日、昨年12月と今年2月に臨界前核実験をした米政府に対し、抗議しない考えを表明した。包括的核実験禁止条約(CTBT)が禁じる、核爆発を伴う実験でないためと説明している。 福山副長官は記者会見で「米国が貯蔵する核兵器の安全性、有効性を確保するためと承知している」とし「抗議や申し入れは考えていない」と述べた。
オバマ大統領が「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と訴えた2009年のプラハ演説にも言及。「大統領は『世界に核兵器が存在する限り、安全で効果的な核兵器を維持する』と言った。(今回の実験は)その範囲内と認識している」と強調した。(中国新聞)
・「米核実験判明に抗議文相次ぐ」(中国新聞)
・「米国の核実験に抗議文、横浜・川崎・相模原3市」(神奈川新聞)
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「菅内閣は退陣すべきである」(7/10)
⇒「「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?」(7/14)
⇒「〈脱原発〉新党と新しい政治のネットワーキングは可能か」(7/15)
菅首相が「個人的な見解」として「脱原発依存社会」(将来的に原発に依存しなくてもすむ社会)を打ち出したことをめぐり、メディアの混乱が深まっている。 その一例が、今日(7/21)の東京新聞の署名入りの記事、「既存の原発維持 公共事業拡大 民主との違い 自民前面」である。
この記事は、自民党の国家戦略本部が、昨日、中長期的な政策に関する報告書を発表したことに対し、自民党の政策と民主党のそれを比較・対照することを目的にした記事である。しかし、この記事は菅内閣および民主党の政策評価にめぐる基本的分析において誤っている。誤解や勘違いが幻想とともに蔓延しているかのようだ。
東京新聞は、このように分析する。
「[自民党と]民主党との違いが際立つのはエネルギー政策だ。安全強化策を条件に、既存の原発は当面維持すると明記した。菅直人首相の福島第一原発事故を踏まえた「脱・原発依存」宣言に対抗。首相が脱原発の具体的な時期や道筋を示していないこともあり、再生可能エネルギーでは、すぐには原発分を補えないという“現実”を強調した」
「安全強化策を条件に、既存の原発は当面維持する」という点では、菅内閣・民主党も同じである。両党に違いはない。両党の「違いが際立つ」ためには、いずれか一方が党として、それがいつになるのであれ、脱原発のタイムテーブルを出せるかどうか、にかかっている。現状では、民主党にその意思があるとはとても思えない。その意味で、首相の個人的見解を過大に評価することは誤っていると言わざるをえない。
たとえば、・クローズアップ2011:「脱原発」方針表明 首相独走、募る疑心(毎日,7/14)にも、次のような一文がある。
「地球温暖化問題に取り組む気候ネットワークは「歴代首相の中で初めて脱原発を宣言した。エネルギー政策の転換へ大きくかじを切った日として記憶に残る日となる」と歓迎した。また、グリーンピース・ジャパンは「福島第1原発事故を受け、将来世代の安全・安心を最優先に考えれば当然の方針」と評価した」・・・。
しかし、「エネルギー政策の転換へ大きくかじを切った日として記憶に残る日」となるためには、首相の「個人的な見解」が「内閣の見解」となり、「政府・与党の見解」として公式の文書で確認される必要がある。「福島第1原発事故を受け、将来世代の安全・安心を最優先に考えれば当然の方針」だと一見思えるのだが、首相の宣言は、とても「方針」と評価できるような代物ではなかったのだ。(もちろん、現政権、あるいは次期政権の下で、脱原発を標榜する政府なり党なりの「方針」が、具体的文書として公表されるなら、私も大いに評価し支持するつもりだ)。
政党として、これまでの日本の原子力行政を抜本的に見直し、脱原発を路線的に追求しているかどうかを判断する基準とは何か。それは、「国策・民営」の原発行政の三大柱、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式を解体できるかどうか、そのための法改正を含めたプランとビジョンを持っているか/それを打ち出そうとする意思が感じられるかどうか、にある。 その試金石が、今回の原発災害に対する東電の社会的・経済的責任の明確化→東電の一時的「国有化」を通じた、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式、この三位一体の解体的再編成なのだ。どれか一つでも欠けると、「国策・民営」の戦後原発行政を解体することはできない。
脱原発とは、まさに「言うは易し、行うは難し」である。とても一筋縄ではゆかない。
自民党はもとより、菅内閣・民主党も、脱原発政党からは、はるかに遠い存在だ。 くれぐれも勘違いをしないよう、また決して騙されぬよう、心がけたいものである。
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・福島第1原発、浄化システムまたトラブル「予想外の停止」 台風6号で汚染水も増加
東電は21日、福島第1原発で汚染水を処理して原子炉冷却に使う「循環注水冷却」の中核である汚染水浄化システムが自動停止したと発表した。除染後の処理水をためるタンクの電源が停止し安全装置が想定外に働いたためという。台風6号接近に伴う降雨のため、原子炉建屋地下などにたまった汚染水の水位が上昇しており、東電は雨水対策を急いでいる。
東電によると、21日午前8時半ごろ、電源工事に伴う停電でタンクの水位計が停止し、システム全体が予定より約7時間早く停止した。停止により、システムの稼働率はさらに約3%低下することが見込まれ、東電が目標としている稼働率70%を下回る公算が大きくなった。 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「予定外の稼働率の低下だ」としている。
福島第1原発の建屋や立て坑などにたまっている汚染水の水位が降雨の影響で上昇。特に1号機原子炉建屋地下では、汚染水の水位が20日午後4時からの15時間で約41センチ上昇した。 東電は「1号機建屋には屋根がないので、雨がそのまま地下に流れている」とみている。ただ、地下にはまだ約4・9メートルの余裕があり、ただちにあふれ出す危険が少ないとみられる。(産経)
・関西経済5団体、政府に原発再稼働要望 空洞化を懸念
関西経済連合会など関西の経済5団体は21日、原子力発電所の早期再稼働による電力の安定確保を政府に要望した。定期検査を終えた原発は稼働させながらストレステスト(耐性調査)を実施すべきだと指摘した。同時に、省エネ機器や太陽光発電を導入した企業に対する助成を2011年度第3次補正予算案に盛り込むことも求めた。
大阪、神戸、京都の商工会議所、関西経済同友会を加えた5団体が共同で要望書を作成。大商の佐藤茂雄会頭(京阪電気鉄道相談役)らが首相官邸を21日午前に訪れ、福山哲郎官房副長官に手渡した。 佐藤会頭は記者団に対し、政府が関西電力管内で10%以上の節電を要請したことについて「場当たり的だ。将来のエネルギー政策も示してほしかった」と語った。 要望書では、電力不足は企業の海外流出を招きかねず産業空洞化につながると指摘。「西日本は震災の復興支援基地として国全体の下支え機能を果たしてきたが、電力不足が大きな足かせとなっている」と懸念を表明した。(日経)
・自民党:「集団的自衛権」認める 保守層強く意識--中長期政策 自民党国家戦略本部(本部長・谷垣禎一総裁)は20日、中長期の政策の方向性を定めた報告書「日本再興」を発表した。「選挙のたびに無党派層の動向に一喜一憂し、岩盤のような保守層を置き去りにした」という反省に立ち、「学校での国旗掲揚、国歌斉唱の義務化」「集団的自衛権の行使を認め、範囲を法律で規定」など保守色の濃い政策を積極的に盛り込んだ半面、社会保障分野では具体論に踏み込まず、与野党協議を敬遠する党の現状も浮き彫りになった。
報告書は次期衆院選の選挙公約の基礎になる。谷垣氏は20日の会見で「民主党はバラマキ本位だが、われわれの基本は『自助』だという点をきちんと出していきたい」と述べ、民主党との政策の差別化に意欲を示した。
外交・安全保障分野では、国家安全保障会議の常設▽自衛隊の国際的平和活動に関する一般法(恒久法)の制定--などを列挙。非核三原則のうち核兵器の一時的な持ち込みを容認する「非核2・5原則」への転換も打ち出した。【毎日・佐藤丈一】
・自民、原発は当面維持 中長期政策、将来の存廃は触れず
自民党の国家戦略本部(本部長・谷垣禎一総裁)は20日、中長期的な基本政策をまとめた「日本再興」と題する報告書を発表した。当面のエネルギー政策については再生可能エネルギーの促進とともに「安全強化策を施した上で既存原発の稼働維持」を掲げた。核兵器の一時的な持ち込みを容認する「非核2.5原則」への転換も打ち出した。
昨年9月から「成長戦略」「社会保障・財政・雇用」「地域活性化」「国土保全・交通」「外交・安全保障」「教育」の6分野で検討を進めてきた。同報告書が自民党の次期衆院選の選挙公約の土台になる。
自民党がこれまで推進してきた原発については「事故はわが国のエネルギー政策の根幹を大きく揺るがした」と記したが、総合エネルギー政策特命委員会(山本一太委員長)でエネルギー政策を検討中のため、将来の原発の存廃には触れなかった。(朝日)
・政府10法案成立もう断念…早すぎ批判も
民主党は20日、今通常国会に政府が提出した法案のうち、野党の協力を得るメドが立たない約10本の成立を断念する方針を固めた。 いずれも秋の臨時国会に継続審議とする方向だが、国会を70日間も延長したうえ、まだ1か月余も残した中での消極姿勢には、与党内からも批判が出そうだ。 成立を断念するのは、
〈1〉温室効果ガス25%削減目標を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案
〈2〉製造業への派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案
〈3〉国家公務員への労働協約締結権付与を柱とした国家公務員制度改革関連法案――など。大半が審議入りすらしていない。
野党側が「菅首相の下では東日本大震災関連の法案以外は原則協力しない」との姿勢を強めていることに加え、首相の退陣条件とされる再生可能エネルギー特別措置法案などの成立や、原子力損害賠償支援機構法案など震災関連法案の処理を優先する狙いがある。(読売)
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・民自公、原賠法改正で大筋合意 電力会社負担に上限
衆院復興特別委員会の民主、自民、公明の理事が、事故時に電力会社が無限の責任を負う原子力損害賠償法(原賠法)の改正を進めることで大筋合意した。21日午前の協議で、東京電力福島第一原発事故の賠償を国が支えるための「原子力損害賠償支援機構法案」を修正して成立を目指すことを確認、原賠法改正の必要性も認めた。
原賠法は電力会社に対し、事故が起きた際は過失の程度などを問わずに無限の賠償責任を負わせるとしている。福島の事故では、数兆円に達する見通しの負担を東電が背負いきれず、資金繰りなどを支える機構を設けることになった。
機構法案の修正協議の過程で、今後の事故に備えるため、損害賠償の前提となる原賠法を改める必要があるとの認識で一致。負担に上限を設けるなどの改正を一定期間で進めることを、機構法の付則や付帯決議で定める方向で調整する。 (朝日)
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すべての話が振り出しに戻る。「原発+自然エネルギー」の推進路線を採る民自公のこの合意は、結局は、東電を救済し、原発事故の補償責任を「国民」の税負担と電気料金増によって賄おうとするものに他ならない。
「今回の原発災害に対する東電の社会的・経済的責任の明確化→東電の一時的「国有化」を通じた、①地域独占、②発送電一体化、③統括原価方式、この三位一体の解体的再編成」を棚上げにし、本質的・根本的な問題解決を先送りにしようとするものだ。
・原発再稼働基準「事故調報告の1、2年後」 首相が答弁
菅直人首相は21日の参院予算委員会での答弁で、原発再稼働のための本格的な安全基準について「(東京電力福島第一原発の)事故調(査・検証委員会)の報告が出た1年か2年の後、新しい基準をつくることになる」と述べた。
全原発を対象に実施するストレステスト(耐性評価)については「今の段階で(暫定的な)新しいルールづくりをすることは、国民に安心を持ってもらう上で必要だ」と強調した。原発輸出については「私自身これまで力を入れてきた。もう一度きちんとした議論がなされなければならない段階にきている」と述べた。
海江田万里経済産業相は、首相の「脱原発」発言について会見前に首相から説明を受けた際、「日本は核兵器を持たずに原子力技術を開発してきたが、原発ゼロとなるとこうした技術が途絶えてしまう。それで本当にいいのか。もう少し多角的な角度から議論した方がいい」と反論したことを明らかにした。 (朝日)
・原発の安全強化へ声明 核兵器非保有10カ国が閣僚会合
核兵器を保有しない10カ国による「核軍縮・不拡散に関する閣僚会合」が30日にベルリンで開かれた。日本からは松本剛明外相が出席し、福島第一原発の事故に対する日本政府の対応を説明。参加国は原発の安全性強化などを盛り込んだ「ベルリン声明」を発表した。 閣僚会合は「核兵器のない世界」をめざし、日豪の主導で昨年発足した枠組みで、ドイツ、トルコ、カナダなどの外相らも出席した。
会合では、福島第一原発の事故が各国の原子力政策に影響を及ぼす中で「原子力の国際的な安全性強化も(各国の)仕事の一つだ」(ドイツのベスターベレ外相)との認識で一致。核軍縮や不拡散に加え、原子力の平和的利用のあり方についても、連携して対処することを確認した。 声明では核軍縮の具体策として、高濃縮ウランなど核兵器用の核分裂物質の生産を禁止する「カットオフ条約」の交渉開始を促したほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた取り組みなどを挙げた。(朝日・ベルリン=松村愛)
・政府、米核実験に抗議せず
福山哲郎官房副長官は20日、昨年12月と今年2月に臨界前核実験をした米政府に対し、抗議しない考えを表明した。包括的核実験禁止条約(CTBT)が禁じる、核爆発を伴う実験でないためと説明している。 福山副長官は記者会見で「米国が貯蔵する核兵器の安全性、有効性を確保するためと承知している」とし「抗議や申し入れは考えていない」と述べた。
オバマ大統領が「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と訴えた2009年のプラハ演説にも言及。「大統領は『世界に核兵器が存在する限り、安全で効果的な核兵器を維持する』と言った。(今回の実験は)その範囲内と認識している」と強調した。(中国新聞)
・「米核実験判明に抗議文相次ぐ」(中国新聞)
・「米国の核実験に抗議文、横浜・川崎・相模原3市」(神奈川新聞)
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「菅内閣は退陣すべきである」(7/10)
⇒「「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?」(7/14)
⇒「〈脱原発〉新党と新しい政治のネットワーキングは可能か」(7/15)
で、「もんじゅ」をどうするか?
で、「もんじゅ」をどうするか?
資料・運動サイト
⇒「ストップ・ザ・もんじゅ」(「もんじゅ」訴訟、「もんじゅ」関連出版物の紹介あり)
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・もんじゅ即時廃止、みんなの党が要求へ
みんなの党は19日の役員会で、核燃料サイクル政策に基づく六ケ所再処理工場(青森県)と高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の即時廃止を求める方針を決めた。同党は「脱原発」を掲げており、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルは必要ないと判断した。
江田憲司幹事長は19日の記者会見で「将来、原発をゼロにするなら、再処理や高速増殖炉に一円もお金をかける余裕はない」と述べた。 (朝日)
・核燃料サイクル、官僚に慎重論 もんじゅ事故前の証言録
核兵器に使われるプルトニウムの大量保有につながる核燃料サイクルについて、旧通商産業省や科学技術庁の幹部が1991年、膨大な経費がかかることや日本の核武装に対する国際社会の警戒感を招くことを理由に慎重論を唱えていたことが分かった。
原子力政策の重鎮で原子力委員を務めた故・島村武久氏が、原子力にかかわった政治家や学者らを招いた研究会に出席した当時の担当官僚の証言録に残されていた。核燃料サイクルの中核を担う高速増殖炉「もんじゅ」の事故前で、政府が研究開発を奨励していた時期に証言されたものだ。
90~93年に通産省資源エネルギー庁技術課長だった谷口富裕氏は、核燃料サイクルについて「全体的展望、戦略に欠け、経済的に引き合わない」と指摘。プルトニウムの大量保有につながるため、「政治的には(各国が)日本に警戒心を高めている中でうまくいくわけがない」と語った。
今は東工大特任教授の谷口氏は、朝日新聞の取材に「高速増殖炉を進める建前論と電力ビジネスの実質論がかみ合っていないと心配だった」と話す。担当省庁の幹部が疑問を持ちながら見直しが進まなかった理由について「技術的、客観的事実より、それまでの経緯や立場が大事になってしまう傾向がある」と、原子力行政の体質に問題があったとの認識を示した。
同じ時期に科技庁核燃料課長を務めていた坂田東一氏は研究会で、政府の原子力委員会の専門部会について「核燃料サイクルありきだった。(是非論を)1回議論しかかったが、そこまでいくと収束できない。だから姑息(こそく)だが(議論をやめた)」と証言した。 のちに文部科学事務次官となった坂田氏は取材に「国家を挙げて進めてきた。担当課長にとって(継続は)大前提だった」と説明。「世界でプルトニウムに厳しい目が注がれていることにもっと注意を払うべきだと思っていた」と語った。 (朝日)
・「もんじゅ中止検討」(PDF, WEB号外)(福井新聞 原発ニュース)
・もんじゅ開発中止「まったく意図していない」 文科相 閣議後会見の発言、すぐに撤回
高木義明文部科学相は15日午前の閣議後の記者会見で、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、「エネルギー・環境会議の議論を踏まえ、(廃止するか継続するか)対応していかないといけない」と述べ、開発中止も含めて検討する考えを示唆した。その後、同日夕に改めて会見し「(開発中止は)まったく意図していない」と釈明したが、「全体のエネルギー政策の議論の中でもんじゅも議論される。(存廃は)予断を持つものではない」とも語った。
2010年版の科学技術白書では高速増殖炉の開発を最重要課題に挙げ「25年ごろに実証炉を実現する」としていたが、今月12日に発表した11年版ではこの項目が削除されていた。 もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故が起き、以降、長期間止まっていた。昨年5月に運転を再開したが、同8月には燃料交換用の装置が原子炉容器内に落下する事故が起きた。今年6月にようやく装置を引き上げたばかりだ。
高速増殖炉は発電しながら核燃料となるプルトニウムを増やせる「夢の原子炉」。使用済み核燃料を再処理し燃料に再び利用する「核燃料サイクル」政策の柱として、国は2050年までの実用化を目指している。(日経)
資料・運動サイト
⇒「ストップ・ザ・もんじゅ」(「もんじゅ」訴訟、「もんじゅ」関連出版物の紹介あり)
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・もんじゅ即時廃止、みんなの党が要求へ
みんなの党は19日の役員会で、核燃料サイクル政策に基づく六ケ所再処理工場(青森県)と高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の即時廃止を求める方針を決めた。同党は「脱原発」を掲げており、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルは必要ないと判断した。
江田憲司幹事長は19日の記者会見で「将来、原発をゼロにするなら、再処理や高速増殖炉に一円もお金をかける余裕はない」と述べた。 (朝日)
・核燃料サイクル、官僚に慎重論 もんじゅ事故前の証言録
核兵器に使われるプルトニウムの大量保有につながる核燃料サイクルについて、旧通商産業省や科学技術庁の幹部が1991年、膨大な経費がかかることや日本の核武装に対する国際社会の警戒感を招くことを理由に慎重論を唱えていたことが分かった。
原子力政策の重鎮で原子力委員を務めた故・島村武久氏が、原子力にかかわった政治家や学者らを招いた研究会に出席した当時の担当官僚の証言録に残されていた。核燃料サイクルの中核を担う高速増殖炉「もんじゅ」の事故前で、政府が研究開発を奨励していた時期に証言されたものだ。
90~93年に通産省資源エネルギー庁技術課長だった谷口富裕氏は、核燃料サイクルについて「全体的展望、戦略に欠け、経済的に引き合わない」と指摘。プルトニウムの大量保有につながるため、「政治的には(各国が)日本に警戒心を高めている中でうまくいくわけがない」と語った。
今は東工大特任教授の谷口氏は、朝日新聞の取材に「高速増殖炉を進める建前論と電力ビジネスの実質論がかみ合っていないと心配だった」と話す。担当省庁の幹部が疑問を持ちながら見直しが進まなかった理由について「技術的、客観的事実より、それまでの経緯や立場が大事になってしまう傾向がある」と、原子力行政の体質に問題があったとの認識を示した。
同じ時期に科技庁核燃料課長を務めていた坂田東一氏は研究会で、政府の原子力委員会の専門部会について「核燃料サイクルありきだった。(是非論を)1回議論しかかったが、そこまでいくと収束できない。だから姑息(こそく)だが(議論をやめた)」と証言した。 のちに文部科学事務次官となった坂田氏は取材に「国家を挙げて進めてきた。担当課長にとって(継続は)大前提だった」と説明。「世界でプルトニウムに厳しい目が注がれていることにもっと注意を払うべきだと思っていた」と語った。 (朝日)
・「もんじゅ中止検討」(PDF, WEB号外)(福井新聞 原発ニュース)
・もんじゅ開発中止「まったく意図していない」 文科相 閣議後会見の発言、すぐに撤回
高木義明文部科学相は15日午前の閣議後の記者会見で、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、「エネルギー・環境会議の議論を踏まえ、(廃止するか継続するか)対応していかないといけない」と述べ、開発中止も含めて検討する考えを示唆した。その後、同日夕に改めて会見し「(開発中止は)まったく意図していない」と釈明したが、「全体のエネルギー政策の議論の中でもんじゅも議論される。(存廃は)予断を持つものではない」とも語った。
2010年版の科学技術白書では高速増殖炉の開発を最重要課題に挙げ「25年ごろに実証炉を実現する」としていたが、今月12日に発表した11年版ではこの項目が削除されていた。 もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故が起き、以降、長期間止まっていた。昨年5月に運転を再開したが、同8月には燃料交換用の装置が原子炉容器内に落下する事故が起きた。今年6月にようやく装置を引き上げたばかりだ。
高速増殖炉は発電しながら核燃料となるプルトニウムを増やせる「夢の原子炉」。使用済み核燃料を再処理し燃料に再び利用する「核燃料サイクル」政策の柱として、国は2050年までの実用化を目指している。(日経)
2011年7月20日水曜日
工程なき「工程表見直し」に思う
工程なき「工程表見直し」に思う
政府・東電統合対策室が、昨日、「新工程表」を発表した。
①今後3~6カ月の「ステップ2」で原子炉を「冷温停止」状態にし、
②住民避難の「解除」を開始し、
③その後3年をめどに「使用済み燃料」を「プール」から取り出す作業に着手する、以上を柱とする内容だ。
菅首相は「ステップ1」について「かなりの部分で進捗し、一部では予定を超えた進捗が見られた」と言ったという。しかし、菅内閣の自画自賛とは裏腹に、「メルトスルーを引き起こした原発災害の根本問題の解決」という点から言えば、状況は、ほとんどの部分で進捗していない。一部では「予定を越えた進捗」どころか、当初の期待を裏切る「後退」が確定的となった。(以下、工事中)
〈メルトスルーの実態把握なき「冷温停止」→「収束」?〉
私たちが知りたいのは、「工程表」の各「ステップ」の「課題」=目的ではない。課題を実現するための具体的方法とその実現可能性である。従来の、工程なき「工定表」と今回の「新工程表」に欠落しているのが、この「具体的方法」と「実現可能性」である。
しかし、もっとも根源的かつ決定的な問題は、1~3号機のメルトダウン→メルトスルーの実態が、いまだに何も分からない/政府・東電が何も公表していないことである。
たとえば、私たちは東電が今月8日、2号機の原子炉建屋内に無人ロボット(千葉工大と東北大などが開発した災害対策用の「クインス」)を入れ、「ちり」を採取する作業を実施したことを知っている。「ちり」に含まれる放射性物質の種類や濃度を分析し、原子炉などからどの程度放射性物質が放出されているかを把握するのが目的だった。その結果はどうなったのか?
また、メルトスルーがどこまで「スルー」したのか、これについても何も分からない。メルトスルー状況においてそれを把握するためのテクノロジーを私たちが持たないのだから、分からないのは当然である。
〈「冷温停止」の政治的定義〉
菅内閣・経産省-保安院による「冷温停止」の政治的定義が明らかになった。ポイントは二つ。
1、「原子炉圧力容器底部の温度がおおむね100度以下」
2、「格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制」
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「冷温」=「おおむね100度以下」? で、何が「停止」するのか? 「停止」の主語は何か?
⇒「「冷温停止」の政治と科学: 研究者のモラルが試される時」
〈「冠水」断念=放棄が意味するもの〉
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・福島第1原発:避難解除の時期示さず 工程表見直し
① 政府と東京電力は19日、福島第1原発事故の収束へ向けた取り組みと被災者支援の工程表を見直し、これまでの進捗(しんちょく)状況と合わせて発表した。4月17日の工程表発表から3カ月間で「安定的な原子炉の冷却」を目指したステップ1の「達成」(???)を宣言。今後3~6カ月で「冷温停止」を目指すステップ2も大筋で変更しなかったものの、原子炉格納容器の損傷部分の密閉は、ステップ2での達成を断念した。
避難指示については、ステップ2達成時に解除の検討、実施に入るとしたが、具体的な時期は示さなかった。 東電の事故収束の工程表と、政府が5月に策定した被災者支援の工程表はこれまで別々に改定されてきたが、今回初めて政府の原子力災害対策本部がまとめて発表した。
東電の工程表では当初、格納容器を水で満たす「冠水」による冷却を目指したが、損傷部分からの大量の汚染水漏れによって断念。1~3号機を同時に冷やす「循環注水冷却システム」で対応することになり、損傷部分の密閉とともに冠水も今回の改定で削除された。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「循環注水冷却で冷温停止状態に持ち込める見通しがついたため」(???)と説明した。
② また、冷温停止状態について
▽原子炉圧力容器底部の温度がおおむね(???)100度以下(???)
▽格納容器からの放射性物質の放出を管理(???)し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制(???)
--を実現した状況と初めて定義した。ただ、格納容器の損傷修復が条件でないため、ステップ2達成時でも微量の放射性物質の放出が続く可能性がある。
6月20~28日に測定された放射線量がすべて原子炉建屋から放出された放射性物質によるものと仮定した試算結果も公表。放出量は毎時約10億ベクレルと推定され、事故直後(3月15日)の同約2000兆ベクレルと比べ約200万分の1に減少。原発から新たに放出されている放射性物質による被ばく線量は、敷地境界で年間最大1.7ミリシーベルトと推定された。経済産業省原子力安全・保安院の山形浩史・安全基準統括管理官はステップ2の数値目標として「法令の制限値である年間1ミリシーベルト以下に抑えたい」と語った。
③ 放射性物質による地下水の汚染を防ぐ壁の設置は、当初より前倒しして着手するとしながらも、完成時期はステップ2の達成後3年程度の「中期的課題」とした。「使用済み核燃料の取り出し作業の開始」も新たに中期的課題に明記した。【毎日・河内敏康、足立旬子、影山哲也】
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・循環注水冷却が「命綱」
「循環注水冷却システムこそ、原子炉の冷温停止につながる道。ステップ2でも最優先で取り組む」。東京電力の西沢俊夫社長は19日の会見で、格納容器の修復を断念する代わりに放射性汚染水を浄化して原子炉冷却に再利用する「循環注水冷却」で冷温停止に持ち込む考えを強調した。だが、日米仏3カ国の原子力企業が建設した現在の汚染水浄化システムは窮余の策で、しかも耐用年数はわずか1年しかない。
原発は本来、炉心(核燃料)を冷やす水を内部で循環させ、放射性物質を外に出さない機能を備える。福島第1原発では、水素爆発などにより格納容器や配管などの重要機器が壊れて「冷やす」「閉じ込める」の機能を失った。 冷却機能回復のため、緊急的に海水や近隣のダムの水を注入したが、それが格納容器の破損部分から漏れ、高濃度の放射性汚染水となって流出した。
根本的な解決には格納容器の修復が不可欠だが、東電は今回、工程表から削除した。「目の前であふれそうになっている汚染水処理対策を優先せざるを得ない」(東電担当者)からだ。汚染水低減と炉心冷却を同時に図れる循環注水冷却は、たとえ不十分でも「命綱」となっている。 政府と東電は19日改定の工程表に、現在のシステムに代わる「本格的水処理施設の検討」を前倒ししてステップ2に盛り込んだ。だが、具体的な手法など構想は白紙。東電の担当者は「(配管からの水漏れなど)トラブルの種を減らすため配管を短くし、シンプルな設計にすべきだ」と話す。現システムの配管は総延長4キロに及び、大部分は国が放射性廃棄物施設に課した耐震基準に適合していない。余震とともに、今後は台風のリスクにもさらされる。
工程表は来年1月までに原子炉を、100度以下の「冷温停止」に持ち込むと明記した。各原子炉(圧力容器底部)の温度は19日現在、
1号機100度▽2号機125度▽3号機111度。
現システムをいかに安定的に稼働させるかが、成否を左右する。
東大の岡本孝司教授(原子力工学)は「循環注水冷却が順調に進めば、冷温停止の前倒しも期待できる。今後導入するシステムは現在の反省を生かし、トラブルの少ない日本の技術力を結集すべきだ」と話す。(「原発工程表見直し:ステップ2へ課題山積」(毎日新聞)より。
・原発収束計画 現状と見通しを正確に示せ
福島第一原子力発電所の事故収束へ、政府の取り組みは甘い、と言わざるを得ない。
政府と東京電力が、事故収束計画の初期段階であるステップ1が終了したことを踏まえて、今後の事故収束計画の改訂版を公表した。 新たな計画は、4、6月に示した従来計画と同様、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられる」状態を来年1月までに達成する、としている。 だが、放射性物質の放出をどう食い止めるのか。肝心の具体策は依然、実効性に乏しい。これでは国民が最も懸念している問題に取り組む姿勢が問われよう。
壊れた原子炉からは今も、放射性物質が漏れ出ている。東電の推計では、その量は毎時約10億ベクレルで原発周辺での被曝(ひばく)量は年間1・7ミリ・シーベルト増える。人の被曝量の基準値、年間1ミリ・シーベルトを上回る。 新計画では、原子炉の温度が下がれば放出量も減る、との見通しを示すにとどまった。漏出を食い止めるため原子炉に覆いを設置することが決まっているのは1号機だけだ。他は、がれき処理を優先して覆いの設置は先送りした。
ステップ1の終了を受けて、菅首相や細野原発相は、福島県内で自主的な避難を求めてきた「緊急時避難準備区域」を一部解除する意向を表明している。 しかし、放射性物質の漏出を食い止められないままでは、避難住民にいくら帰宅を促しても、とても納得してもらえまい。
来年1月までに原子炉を100度以下に安定して冷却する「冷温停止」状態を達成する、という目標も従来計画通りだ。だが、放射線が強いため、炉心溶融で壊れた原子炉に作業員は近づけない。 安定した冷温停止状態にあることをどう確認するのか。遠隔操作の機器を開発するなど、その手立てを明示すべきだ。
原子炉は、危機的な状況はすでに脱している。とはいえ、19日の衆院予算委員会で菅首相が「収束の方向が見えてきた」と答弁したような確かな根拠を、新計画の内容から読み取ることは難しい。 政府はこれまで、炉心溶融の実態を控えめに報告するなど、国民に不信感を抱かれるような対応をしてきた。収束作業では、現状と見通しを正確に示すべきだ。 事故を起こした炉を最終的にどう解体し廃棄するのか。新計画に言及はないが、福島県の復旧、復興の将来像を描くうえでも、政府は、責任を持って事故収束への長期展望を示す必要がある。(読売)
↓
私は、読売新聞の社説に何の異論もない。むしろ問題は、このような内容の社説を書く読売新聞が、なぜ社として原発推進をいまだに唱導しているのか、にある。社説の執筆者は、菅内閣ではなく執筆者が思い描く「理想的政権」であれば、「こうはならなかった」とでも考えているのだろうか?
産経新聞にも言えることなのだが、原発災害および「工定表」をめぐる分析的言辞が、自社の原発政策をめぐる「提言」の言辞と乖離していること、その二重基準に社として無自覚でいられること自体が私には信じがたい。(産経新聞は、大震災直後から南相馬市や被災地に記者を派遣し、かなり質の高いレポートを発表してきたと私は評価している)
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・汚染水浄化システム 稼働率は53%と低迷
東京電力は20日、福島第1原発にたまっている高濃度の放射性物質を含む汚染水浄化システムの稼働率は、13~19日の1週間は53%だったと発表。目標の70%に届かず、低迷している。 1時間当たり50トンと想定していた処理能力が実際には37トンにとどまっている上、配管からの水漏れ修理のため装置を長時間停止させたのが原因、と東電は説明している。
東電は当初、7月の稼働率の目標を80%に設定していたが、相次ぐトラブルを受け、13日に70%へ下方修正していた。 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「年内に20万トンを処理する目標に変更はなく、処理性能の回復に努める」と話した。(毎日)
・「地下ダム」設計着手 着工前倒し検討
東京電力は(7月)16日、福島第1原発から出た放射性物質による地下水汚染を防ぐ遮蔽壁(地下ダム)について、基本設計に着手したことを明らかにした。細野豪志原発事故担当相は建築を急ぐ考えを明らかにしており、東電は当初計画を前倒しして、事故収束に向けた工程表の「ステップ2」(今月中旬から3~6カ月後まで)の期間内に着工できるか検討中だ。19日に改定する工程表に盛り込む。
地下ダムは、1~4号機の原子炉建屋と隣接するタービン建屋周辺に、遮蔽目的の壁を地下30メートルまで埋め込む。東電によると、第1原発地下では、山から海に向かって地下水が1日5~10センチの速度で流れており、放置すれば放射性物質が地下水を通じて海側に流れる恐れがある。 この計画は工程表の5月の改定で初めて盛り込まれ、6月の改定ではステップ2終了までに工法を検討し、着工は「中期的課題」としていた。関係者によると現在、建屋周辺をボーリング調査中で、結果によっては着工が遅れる可能性もあるという。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は16日の会見で「タービン建屋地下の放射性物質濃度は低く、地下水に高濃度の放射性物質が漏れ出ている可能性は薄い」としながらも、「流出のリスクは認識しており、なるべく早く工事に取り掛かりたい」と述べた。【毎日・岡田英、中西拓司】
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・関電の原発2基、定検で停止へ 高浜4号MOX装荷見送り
県は20日、関西電力高浜原発4号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)が21日、大飯原発4号機(同、118万キロワット)は22日にそれぞれ原子炉停止に向けた作業を始め、定期検査に入ると正式に連絡を受けた。16日には調整運転中だった大飯1号機(同、117・5万キロワット)がトラブルで予定外の停止をしており、関電の原発11基のうち7基が止まったまま夏場の最大需要期を迎える。
定検期間はともに4カ月間としているが、国が実施を打ち出したストレステスト(耐性評価)を受ける必要がある上、県は再起動を認めない姿勢を崩しておらず、運転再開時期は不透明だ。 また、2011年度内にプルサーマル発電を始める計画だった高浜4号機は、今回の定検でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を装荷する予定だったが、核燃料サイクル政策の見通しが不透明なままでの実施に野瀬豊高浜町長が難色を示していて、関電は装荷を見送る方針。 県によると、燃料装荷は営業運転開始の1カ月ほど前に行うが、それまでに情勢が大きく変わる見通しはなく「現実的には厳しい」(岩永幹夫原子力安全対策課長)状況だ。
2基の定検入りで205万キロワットの供給力が失われるが、関電は既に織り込み済み。一方、大飯1号機の停止は不測の事態で、8月の供給力は2931万キロワットに低下する。昨年並みの猛暑を想定した最大電力3138万キロワットに対し、6・6%不足する計算だ。
高浜4号機の第20回定検では、1次冷却水ポンプの監視装置を電源が切れた場合に警報が作動するよう改造。燃料集合体157体のうち97体(56体は新燃料集合体)を取り換える。
大飯4号機の定検は14回目。応力腐食割れの予防対策としてタービンを交換。羽根の大型化などで出力を約4%向上させる。中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を把握するため、内部に置いた照射試験片を取り出す。燃料集合体193体のうち77体(60体は新燃料集合体)を取り換える。
東京電力福島第1原発事故を受けた特別点検としては、両原発とも緊急炉心冷却装置(ECCS)や、緊急時に格納容器に水を降り注ぐスプレーリングの健全性を確認。使用済み燃料プールには水位監視カメラを設置する。(福井新聞)
・「どこでも起き得る」 佐大教授が地震メカニズム解説
東日本大震災について見つめ直す学習会が、佐賀市で開かれた。識者の意見をもとに、大地震と福島第1原発事故の被害を佐賀県に置き換え、安全性を議論した。
活断層に詳しい佐賀大学の半田駿教授(地球物理学)が地震のメカニズムを解説。日本列島が地震活動期に入っていることに加え、隠れた活断層もあることから「(地震は)どこで起きても不思議じゃない」と話した。 また、原発事故に関して「収束後も崩壊熱を冷やすため、100年以上に渡って冷やす必要がある」と指摘。大震災での想定外の被害を教訓に「今だからこそ、本当に原発が必要かを議論すべき」と話した。原子力発電の余剰電力で発電する揚水発電も含めれば、他の発電方式よりコストが高くなることも紹介した。 NPO「Sagaよかとこ発信」(樋口榮子代表)が主催。約30人が出席し、「首長は安全性を確認できるほど知識があるのか」との意見も出た。 (佐賀新聞)
・上関原発中止署名、百万人分超す 山口の団体、経産省へ
中国電力が山口県上関(かみのせき)町に建てようとしている上関原発の計画中止を求める署名が、目標の100万人分を超えた。2009年5月から始めていたが、福島第一原発事故後に急増した。呼びかけた県内の団体の代表らが8月1日、上京して経済産業省に提出する。
原水爆禁止山口県民会議などが、100万人を目標に集め始めた。09年10月に61万2613人分、10年5月にさらに23万8875人分を経産省に提出。目標まであと15万人弱となったところで伸びが止まった。締め切りを9月末から今年3月末に延ばした。 その3月、東日本大震災と原発事故が起きた。それから署名数がぐんぐん伸び、反響の大きさに締め切りを6月末に再延長した。予定地対岸で反対運動を続ける祝島(いわいしま)を描いた映画を見た人や、ドイツや米国など海外在住の日本人からも届いた。19日現在の集計で、累計100万790人分を確認した。 (朝日)
・揺れる玄海町 構図重なる原発・米基地(沖縄タイムス)
・岸本英雄・玄海町長に聞く
・「地元の人がたくさん発電所で働いている。沖縄の米軍基地と一緒かなと思うが、生活の糧を発電所から得ている人が、関連企業を含めれば相当数に上る。発電所が運転されないことで、地域社会が非常に大きな影響を受けるということも判断理由にあった」
・「原発立地自治体には、発電した電力量に単価を掛けた分が交付金として入る。だから原発が稼働せず発電しなければ、交付金の額に直接影響してくる。玄海町は国から地方交付税をもらっていない不交付団体。町予算の約6割は発電所関連の収入で、原発の固定資産税と交付金という不安定な財源で賄っているのが実情だ」
・「玄海町はカネ欲しさにこんなこと(再稼働容認)をやっていると。相当心外だ。うちの場合、こんな小さな町でそんな大金をもらえるわけもなく、佐賀県や周辺市町村にもあふれた分が入っている。玄海町ばかりいいね、と勘違いされている」
・「玄海原発は九州全体の3割近い電気を供給し、その大部分は福岡などの都市部で消費されている。ところが、原発に反対するのは、多くが福岡の人たち。沖縄の問題にしても、構図は同じではないか」
・「沖縄も今回の私のケースと非常に似ていて、国に翻弄(ほんろう)されている。(普天間移設問題で)沖縄はいったん判断を下したが、鳩山由紀夫前首相は県外か国外にもっていくと言った。にもかかわらず、皆さんを浮かれさせといて、どんと落とす。こんなやり方をされては、沖縄だって政府を信用できない。われわれも今そういう思い。菅直人総理の下で私は判断をしたくない」・・・・。
・福井県民「安全なら再稼働」45%
東京電力福島第1原発事故を受け福井新聞社は16、17の両日、福井県民1千人を対象に原発に関する電話世論調査を実施した。定期検査で停止中の原発の再稼働について、「安全対策が十分と確認できれば再稼働させる」との回答が44・9%を占めた。「定検が終わったものは直ちに再稼働させればよい」は7・4%にとどまった。条件が整えば運転再開を容認する意見が5割を超える一方で、定検入りした原発や運転年数の長い原発などの廃炉を求める声も45・6%に上り、原発をめぐる厳しい県民の意識がうかがえる。
福島の事故により約86%が原発の安全性に不安を感じていると答え、原子力安全規制の体制や情報発信の在り方など国に対する強い不信感も数字に表れた。今後のエネルギー政策をめぐっては、再生可能エネルギーの比重を高めて緩やかに原発依存から脱却すべきだという人が7割を占め、「原発は今後も基幹電源であり続ける」は16・2%だった。
停止中の県内原発の再稼働をめぐり県は、福島の知見を踏まえた新たな安全基準をつくるよう国に要請。現時点で再稼働を認めていない。これに対し国は安全上問題ないとの見解を示していたが、立地自治体の反発を受け、全国の原発で新たな安全評価を行うと決めている。 再稼働をめぐっては、「安全対策が十分確認できれば」との条件付きで認める意見が最も多く、4割以上が県の方針を支持した形。 一方、「福島と同型炉の敦賀1号機など長年運転を続けてきた原発を廃炉」が27・6%あり、高経年化した原発を不安視していることがうかがえる。廃炉を求める意見は「直ちに全て」9・2%、「定検に入ったものから」8・8%で、合計で4割を上回った。
「安全を確認できれば」「直ちに」を合わせた再稼働容認派を地域別にみると、原発のある嶺南の市町は59・5%と高いのに対し、原発のない嶺南の市町は47・5%で、立地と準立地の意識の差が表れた。嶺北は51・6%だった。 一方で、嶺南の原発立地市町では、廃炉を求める回答が他地域より少ない傾向にあった。(福井新聞)
・津波で流出、毒劇物の回収進まず 東北3県
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県の沿岸部で、津波で流出した化学薬品などの毒劇物の回収が進んでいない。各県は「発見した場合は、触れないようにし、速やかに最寄り保健所に届けてほしい」と呼び掛けている。 厚生労働省によると、確認している毒劇物の流出は岩手で27件、宮城で18件、福島で3件。毒劇物取締法は、所有者に自主回収を義務付けているが、今回の震災では建物ごと流出したケースが多く、持ち主の居場所を特定するのも難しい状態だ。 同省医薬食品局の担当者は「各自治体が把握しているのは一部でしかない。実際には、かなり多いはずだ」と指摘する。(共同)
・米が再び臨界前核実験 昨年末と2月に実施
米エネルギー省傘下の核安全保障局(NNSA)は19日、核爆発を伴わない臨界前核実験を昨年12月1日と今年2月2日に西部ネバダ州で実施していたと明らかにした。オバマ政権発足後に明らかになった同実験は計3回となり、「核兵器なき世界」の追求を掲げつつ核兵器保有に執着する姿勢が鮮明となった。 NNSAは4カ月以上経過した6月にホームページ上で実験実施を公表しただけで、活動の透明性にも批判が出そうだ。 NNSA当局者は「保有する核兵器の安全確保に貢献する」ことが実験の目的と説明した。 【ワシントン共同】
政府・東電統合対策室が、昨日、「新工程表」を発表した。
①今後3~6カ月の「ステップ2」で原子炉を「冷温停止」状態にし、
②住民避難の「解除」を開始し、
③その後3年をめどに「使用済み燃料」を「プール」から取り出す作業に着手する、以上を柱とする内容だ。
菅首相は「ステップ1」について「かなりの部分で進捗し、一部では予定を超えた進捗が見られた」と言ったという。しかし、菅内閣の自画自賛とは裏腹に、「メルトスルーを引き起こした原発災害の根本問題の解決」という点から言えば、状況は、ほとんどの部分で進捗していない。一部では「予定を越えた進捗」どころか、当初の期待を裏切る「後退」が確定的となった。(以下、工事中)
〈メルトスルーの実態把握なき「冷温停止」→「収束」?〉
私たちが知りたいのは、「工程表」の各「ステップ」の「課題」=目的ではない。課題を実現するための具体的方法とその実現可能性である。従来の、工程なき「工定表」と今回の「新工程表」に欠落しているのが、この「具体的方法」と「実現可能性」である。
しかし、もっとも根源的かつ決定的な問題は、1~3号機のメルトダウン→メルトスルーの実態が、いまだに何も分からない/政府・東電が何も公表していないことである。
たとえば、私たちは東電が今月8日、2号機の原子炉建屋内に無人ロボット(千葉工大と東北大などが開発した災害対策用の「クインス」)を入れ、「ちり」を採取する作業を実施したことを知っている。「ちり」に含まれる放射性物質の種類や濃度を分析し、原子炉などからどの程度放射性物質が放出されているかを把握するのが目的だった。その結果はどうなったのか?
また、メルトスルーがどこまで「スルー」したのか、これについても何も分からない。メルトスルー状況においてそれを把握するためのテクノロジーを私たちが持たないのだから、分からないのは当然である。
〈「冷温停止」の政治的定義〉
菅内閣・経産省-保安院による「冷温停止」の政治的定義が明らかになった。ポイントは二つ。
1、「原子炉圧力容器底部の温度がおおむね100度以下」
2、「格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制」
↓
「冷温」=「おおむね100度以下」? で、何が「停止」するのか? 「停止」の主語は何か?
⇒「「冷温停止」の政治と科学: 研究者のモラルが試される時」
〈「冠水」断念=放棄が意味するもの〉
・・
・福島第1原発:避難解除の時期示さず 工程表見直し
① 政府と東京電力は19日、福島第1原発事故の収束へ向けた取り組みと被災者支援の工程表を見直し、これまでの進捗(しんちょく)状況と合わせて発表した。4月17日の工程表発表から3カ月間で「安定的な原子炉の冷却」を目指したステップ1の「達成」(???)を宣言。今後3~6カ月で「冷温停止」を目指すステップ2も大筋で変更しなかったものの、原子炉格納容器の損傷部分の密閉は、ステップ2での達成を断念した。
避難指示については、ステップ2達成時に解除の検討、実施に入るとしたが、具体的な時期は示さなかった。 東電の事故収束の工程表と、政府が5月に策定した被災者支援の工程表はこれまで別々に改定されてきたが、今回初めて政府の原子力災害対策本部がまとめて発表した。
東電の工程表では当初、格納容器を水で満たす「冠水」による冷却を目指したが、損傷部分からの大量の汚染水漏れによって断念。1~3号機を同時に冷やす「循環注水冷却システム」で対応することになり、損傷部分の密閉とともに冠水も今回の改定で削除された。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「循環注水冷却で冷温停止状態に持ち込める見通しがついたため」(???)と説明した。
② また、冷温停止状態について
▽原子炉圧力容器底部の温度がおおむね(???)100度以下(???)
▽格納容器からの放射性物質の放出を管理(???)し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制(???)
--を実現した状況と初めて定義した。ただ、格納容器の損傷修復が条件でないため、ステップ2達成時でも微量の放射性物質の放出が続く可能性がある。
6月20~28日に測定された放射線量がすべて原子炉建屋から放出された放射性物質によるものと仮定した試算結果も公表。放出量は毎時約10億ベクレルと推定され、事故直後(3月15日)の同約2000兆ベクレルと比べ約200万分の1に減少。原発から新たに放出されている放射性物質による被ばく線量は、敷地境界で年間最大1.7ミリシーベルトと推定された。経済産業省原子力安全・保安院の山形浩史・安全基準統括管理官はステップ2の数値目標として「法令の制限値である年間1ミリシーベルト以下に抑えたい」と語った。
③ 放射性物質による地下水の汚染を防ぐ壁の設置は、当初より前倒しして着手するとしながらも、完成時期はステップ2の達成後3年程度の「中期的課題」とした。「使用済み核燃料の取り出し作業の開始」も新たに中期的課題に明記した。【毎日・河内敏康、足立旬子、影山哲也】
・・
・循環注水冷却が「命綱」
「循環注水冷却システムこそ、原子炉の冷温停止につながる道。ステップ2でも最優先で取り組む」。東京電力の西沢俊夫社長は19日の会見で、格納容器の修復を断念する代わりに放射性汚染水を浄化して原子炉冷却に再利用する「循環注水冷却」で冷温停止に持ち込む考えを強調した。だが、日米仏3カ国の原子力企業が建設した現在の汚染水浄化システムは窮余の策で、しかも耐用年数はわずか1年しかない。
原発は本来、炉心(核燃料)を冷やす水を内部で循環させ、放射性物質を外に出さない機能を備える。福島第1原発では、水素爆発などにより格納容器や配管などの重要機器が壊れて「冷やす」「閉じ込める」の機能を失った。 冷却機能回復のため、緊急的に海水や近隣のダムの水を注入したが、それが格納容器の破損部分から漏れ、高濃度の放射性汚染水となって流出した。
根本的な解決には格納容器の修復が不可欠だが、東電は今回、工程表から削除した。「目の前であふれそうになっている汚染水処理対策を優先せざるを得ない」(東電担当者)からだ。汚染水低減と炉心冷却を同時に図れる循環注水冷却は、たとえ不十分でも「命綱」となっている。 政府と東電は19日改定の工程表に、現在のシステムに代わる「本格的水処理施設の検討」を前倒ししてステップ2に盛り込んだ。だが、具体的な手法など構想は白紙。東電の担当者は「(配管からの水漏れなど)トラブルの種を減らすため配管を短くし、シンプルな設計にすべきだ」と話す。現システムの配管は総延長4キロに及び、大部分は国が放射性廃棄物施設に課した耐震基準に適合していない。余震とともに、今後は台風のリスクにもさらされる。
工程表は来年1月までに原子炉を、100度以下の「冷温停止」に持ち込むと明記した。各原子炉(圧力容器底部)の温度は19日現在、
1号機100度▽2号機125度▽3号機111度。
現システムをいかに安定的に稼働させるかが、成否を左右する。
東大の岡本孝司教授(原子力工学)は「循環注水冷却が順調に進めば、冷温停止の前倒しも期待できる。今後導入するシステムは現在の反省を生かし、トラブルの少ない日本の技術力を結集すべきだ」と話す。(「原発工程表見直し:ステップ2へ課題山積」(毎日新聞)より。
・原発収束計画 現状と見通しを正確に示せ
福島第一原子力発電所の事故収束へ、政府の取り組みは甘い、と言わざるを得ない。
政府と東京電力が、事故収束計画の初期段階であるステップ1が終了したことを踏まえて、今後の事故収束計画の改訂版を公表した。 新たな計画は、4、6月に示した従来計画と同様、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられる」状態を来年1月までに達成する、としている。 だが、放射性物質の放出をどう食い止めるのか。肝心の具体策は依然、実効性に乏しい。これでは国民が最も懸念している問題に取り組む姿勢が問われよう。
壊れた原子炉からは今も、放射性物質が漏れ出ている。東電の推計では、その量は毎時約10億ベクレルで原発周辺での被曝(ひばく)量は年間1・7ミリ・シーベルト増える。人の被曝量の基準値、年間1ミリ・シーベルトを上回る。 新計画では、原子炉の温度が下がれば放出量も減る、との見通しを示すにとどまった。漏出を食い止めるため原子炉に覆いを設置することが決まっているのは1号機だけだ。他は、がれき処理を優先して覆いの設置は先送りした。
ステップ1の終了を受けて、菅首相や細野原発相は、福島県内で自主的な避難を求めてきた「緊急時避難準備区域」を一部解除する意向を表明している。 しかし、放射性物質の漏出を食い止められないままでは、避難住民にいくら帰宅を促しても、とても納得してもらえまい。
来年1月までに原子炉を100度以下に安定して冷却する「冷温停止」状態を達成する、という目標も従来計画通りだ。だが、放射線が強いため、炉心溶融で壊れた原子炉に作業員は近づけない。 安定した冷温停止状態にあることをどう確認するのか。遠隔操作の機器を開発するなど、その手立てを明示すべきだ。
原子炉は、危機的な状況はすでに脱している。とはいえ、19日の衆院予算委員会で菅首相が「収束の方向が見えてきた」と答弁したような確かな根拠を、新計画の内容から読み取ることは難しい。 政府はこれまで、炉心溶融の実態を控えめに報告するなど、国民に不信感を抱かれるような対応をしてきた。収束作業では、現状と見通しを正確に示すべきだ。 事故を起こした炉を最終的にどう解体し廃棄するのか。新計画に言及はないが、福島県の復旧、復興の将来像を描くうえでも、政府は、責任を持って事故収束への長期展望を示す必要がある。(読売)
↓
私は、読売新聞の社説に何の異論もない。むしろ問題は、このような内容の社説を書く読売新聞が、なぜ社として原発推進をいまだに唱導しているのか、にある。社説の執筆者は、菅内閣ではなく執筆者が思い描く「理想的政権」であれば、「こうはならなかった」とでも考えているのだろうか?
産経新聞にも言えることなのだが、原発災害および「工定表」をめぐる分析的言辞が、自社の原発政策をめぐる「提言」の言辞と乖離していること、その二重基準に社として無自覚でいられること自体が私には信じがたい。(産経新聞は、大震災直後から南相馬市や被災地に記者を派遣し、かなり質の高いレポートを発表してきたと私は評価している)
・・・
・汚染水浄化システム 稼働率は53%と低迷
東京電力は20日、福島第1原発にたまっている高濃度の放射性物質を含む汚染水浄化システムの稼働率は、13~19日の1週間は53%だったと発表。目標の70%に届かず、低迷している。 1時間当たり50トンと想定していた処理能力が実際には37トンにとどまっている上、配管からの水漏れ修理のため装置を長時間停止させたのが原因、と東電は説明している。
東電は当初、7月の稼働率の目標を80%に設定していたが、相次ぐトラブルを受け、13日に70%へ下方修正していた。 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「年内に20万トンを処理する目標に変更はなく、処理性能の回復に努める」と話した。(毎日)
・「地下ダム」設計着手 着工前倒し検討
東京電力は(7月)16日、福島第1原発から出た放射性物質による地下水汚染を防ぐ遮蔽壁(地下ダム)について、基本設計に着手したことを明らかにした。細野豪志原発事故担当相は建築を急ぐ考えを明らかにしており、東電は当初計画を前倒しして、事故収束に向けた工程表の「ステップ2」(今月中旬から3~6カ月後まで)の期間内に着工できるか検討中だ。19日に改定する工程表に盛り込む。
地下ダムは、1~4号機の原子炉建屋と隣接するタービン建屋周辺に、遮蔽目的の壁を地下30メートルまで埋め込む。東電によると、第1原発地下では、山から海に向かって地下水が1日5~10センチの速度で流れており、放置すれば放射性物質が地下水を通じて海側に流れる恐れがある。 この計画は工程表の5月の改定で初めて盛り込まれ、6月の改定ではステップ2終了までに工法を検討し、着工は「中期的課題」としていた。関係者によると現在、建屋周辺をボーリング調査中で、結果によっては着工が遅れる可能性もあるという。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は16日の会見で「タービン建屋地下の放射性物質濃度は低く、地下水に高濃度の放射性物質が漏れ出ている可能性は薄い」としながらも、「流出のリスクは認識しており、なるべく早く工事に取り掛かりたい」と述べた。【毎日・岡田英、中西拓司】
・・
・関電の原発2基、定検で停止へ 高浜4号MOX装荷見送り
県は20日、関西電力高浜原発4号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)が21日、大飯原発4号機(同、118万キロワット)は22日にそれぞれ原子炉停止に向けた作業を始め、定期検査に入ると正式に連絡を受けた。16日には調整運転中だった大飯1号機(同、117・5万キロワット)がトラブルで予定外の停止をしており、関電の原発11基のうち7基が止まったまま夏場の最大需要期を迎える。
定検期間はともに4カ月間としているが、国が実施を打ち出したストレステスト(耐性評価)を受ける必要がある上、県は再起動を認めない姿勢を崩しておらず、運転再開時期は不透明だ。 また、2011年度内にプルサーマル発電を始める計画だった高浜4号機は、今回の定検でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を装荷する予定だったが、核燃料サイクル政策の見通しが不透明なままでの実施に野瀬豊高浜町長が難色を示していて、関電は装荷を見送る方針。 県によると、燃料装荷は営業運転開始の1カ月ほど前に行うが、それまでに情勢が大きく変わる見通しはなく「現実的には厳しい」(岩永幹夫原子力安全対策課長)状況だ。
2基の定検入りで205万キロワットの供給力が失われるが、関電は既に織り込み済み。一方、大飯1号機の停止は不測の事態で、8月の供給力は2931万キロワットに低下する。昨年並みの猛暑を想定した最大電力3138万キロワットに対し、6・6%不足する計算だ。
高浜4号機の第20回定検では、1次冷却水ポンプの監視装置を電源が切れた場合に警報が作動するよう改造。燃料集合体157体のうち97体(56体は新燃料集合体)を取り換える。
大飯4号機の定検は14回目。応力腐食割れの予防対策としてタービンを交換。羽根の大型化などで出力を約4%向上させる。中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を把握するため、内部に置いた照射試験片を取り出す。燃料集合体193体のうち77体(60体は新燃料集合体)を取り換える。
東京電力福島第1原発事故を受けた特別点検としては、両原発とも緊急炉心冷却装置(ECCS)や、緊急時に格納容器に水を降り注ぐスプレーリングの健全性を確認。使用済み燃料プールには水位監視カメラを設置する。(福井新聞)
・「どこでも起き得る」 佐大教授が地震メカニズム解説
東日本大震災について見つめ直す学習会が、佐賀市で開かれた。識者の意見をもとに、大地震と福島第1原発事故の被害を佐賀県に置き換え、安全性を議論した。
活断層に詳しい佐賀大学の半田駿教授(地球物理学)が地震のメカニズムを解説。日本列島が地震活動期に入っていることに加え、隠れた活断層もあることから「(地震は)どこで起きても不思議じゃない」と話した。 また、原発事故に関して「収束後も崩壊熱を冷やすため、100年以上に渡って冷やす必要がある」と指摘。大震災での想定外の被害を教訓に「今だからこそ、本当に原発が必要かを議論すべき」と話した。原子力発電の余剰電力で発電する揚水発電も含めれば、他の発電方式よりコストが高くなることも紹介した。 NPO「Sagaよかとこ発信」(樋口榮子代表)が主催。約30人が出席し、「首長は安全性を確認できるほど知識があるのか」との意見も出た。 (佐賀新聞)
・上関原発中止署名、百万人分超す 山口の団体、経産省へ
中国電力が山口県上関(かみのせき)町に建てようとしている上関原発の計画中止を求める署名が、目標の100万人分を超えた。2009年5月から始めていたが、福島第一原発事故後に急増した。呼びかけた県内の団体の代表らが8月1日、上京して経済産業省に提出する。
原水爆禁止山口県民会議などが、100万人を目標に集め始めた。09年10月に61万2613人分、10年5月にさらに23万8875人分を経産省に提出。目標まであと15万人弱となったところで伸びが止まった。締め切りを9月末から今年3月末に延ばした。 その3月、東日本大震災と原発事故が起きた。それから署名数がぐんぐん伸び、反響の大きさに締め切りを6月末に再延長した。予定地対岸で反対運動を続ける祝島(いわいしま)を描いた映画を見た人や、ドイツや米国など海外在住の日本人からも届いた。19日現在の集計で、累計100万790人分を確認した。 (朝日)
・揺れる玄海町 構図重なる原発・米基地(沖縄タイムス)
・岸本英雄・玄海町長に聞く
・「地元の人がたくさん発電所で働いている。沖縄の米軍基地と一緒かなと思うが、生活の糧を発電所から得ている人が、関連企業を含めれば相当数に上る。発電所が運転されないことで、地域社会が非常に大きな影響を受けるということも判断理由にあった」
・「原発立地自治体には、発電した電力量に単価を掛けた分が交付金として入る。だから原発が稼働せず発電しなければ、交付金の額に直接影響してくる。玄海町は国から地方交付税をもらっていない不交付団体。町予算の約6割は発電所関連の収入で、原発の固定資産税と交付金という不安定な財源で賄っているのが実情だ」
・「玄海町はカネ欲しさにこんなこと(再稼働容認)をやっていると。相当心外だ。うちの場合、こんな小さな町でそんな大金をもらえるわけもなく、佐賀県や周辺市町村にもあふれた分が入っている。玄海町ばかりいいね、と勘違いされている」
・「玄海原発は九州全体の3割近い電気を供給し、その大部分は福岡などの都市部で消費されている。ところが、原発に反対するのは、多くが福岡の人たち。沖縄の問題にしても、構図は同じではないか」
・「沖縄も今回の私のケースと非常に似ていて、国に翻弄(ほんろう)されている。(普天間移設問題で)沖縄はいったん判断を下したが、鳩山由紀夫前首相は県外か国外にもっていくと言った。にもかかわらず、皆さんを浮かれさせといて、どんと落とす。こんなやり方をされては、沖縄だって政府を信用できない。われわれも今そういう思い。菅直人総理の下で私は判断をしたくない」・・・・。
・福井県民「安全なら再稼働」45%
東京電力福島第1原発事故を受け福井新聞社は16、17の両日、福井県民1千人を対象に原発に関する電話世論調査を実施した。定期検査で停止中の原発の再稼働について、「安全対策が十分と確認できれば再稼働させる」との回答が44・9%を占めた。「定検が終わったものは直ちに再稼働させればよい」は7・4%にとどまった。条件が整えば運転再開を容認する意見が5割を超える一方で、定検入りした原発や運転年数の長い原発などの廃炉を求める声も45・6%に上り、原発をめぐる厳しい県民の意識がうかがえる。
福島の事故により約86%が原発の安全性に不安を感じていると答え、原子力安全規制の体制や情報発信の在り方など国に対する強い不信感も数字に表れた。今後のエネルギー政策をめぐっては、再生可能エネルギーの比重を高めて緩やかに原発依存から脱却すべきだという人が7割を占め、「原発は今後も基幹電源であり続ける」は16・2%だった。
停止中の県内原発の再稼働をめぐり県は、福島の知見を踏まえた新たな安全基準をつくるよう国に要請。現時点で再稼働を認めていない。これに対し国は安全上問題ないとの見解を示していたが、立地自治体の反発を受け、全国の原発で新たな安全評価を行うと決めている。 再稼働をめぐっては、「安全対策が十分確認できれば」との条件付きで認める意見が最も多く、4割以上が県の方針を支持した形。 一方、「福島と同型炉の敦賀1号機など長年運転を続けてきた原発を廃炉」が27・6%あり、高経年化した原発を不安視していることがうかがえる。廃炉を求める意見は「直ちに全て」9・2%、「定検に入ったものから」8・8%で、合計で4割を上回った。
「安全を確認できれば」「直ちに」を合わせた再稼働容認派を地域別にみると、原発のある嶺南の市町は59・5%と高いのに対し、原発のない嶺南の市町は47・5%で、立地と準立地の意識の差が表れた。嶺北は51・6%だった。 一方で、嶺南の原発立地市町では、廃炉を求める回答が他地域より少ない傾向にあった。(福井新聞)
・津波で流出、毒劇物の回収進まず 東北3県
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県の沿岸部で、津波で流出した化学薬品などの毒劇物の回収が進んでいない。各県は「発見した場合は、触れないようにし、速やかに最寄り保健所に届けてほしい」と呼び掛けている。 厚生労働省によると、確認している毒劇物の流出は岩手で27件、宮城で18件、福島で3件。毒劇物取締法は、所有者に自主回収を義務付けているが、今回の震災では建物ごと流出したケースが多く、持ち主の居場所を特定するのも難しい状態だ。 同省医薬食品局の担当者は「各自治体が把握しているのは一部でしかない。実際には、かなり多いはずだ」と指摘する。(共同)
・米が再び臨界前核実験 昨年末と2月に実施
米エネルギー省傘下の核安全保障局(NNSA)は19日、核爆発を伴わない臨界前核実験を昨年12月1日と今年2月2日に西部ネバダ州で実施していたと明らかにした。オバマ政権発足後に明らかになった同実験は計3回となり、「核兵器なき世界」の追求を掲げつつ核兵器保有に執着する姿勢が鮮明となった。 NNSAは4カ月以上経過した6月にホームページ上で実験実施を公表しただけで、活動の透明性にも批判が出そうだ。 NNSA当局者は「保有する核兵器の安全確保に貢献する」ことが実験の目的と説明した。 【ワシントン共同】
2011年7月18日月曜日
「ストレステスト」のマヤカシ(2)
「ストレステスト」のマヤカシ(2)---工学的耐性と社会的耐性
7/22
原子力安全委員会が、保安院が策定した「ストレステスト」(安全評価?)の「実施計画」を「妥当」と判断し、「了承」した。
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・ストレステスト実施計画 安全委が「妥当」と了承
経済産業省原子力安全・保安院は21日、原発の再稼働や運転継続の基準とする「安全評価」(ストレステスト)の実施計画を内閣府原子力安全委員会に提出し、安全委は「妥当」と判断し了承した。
分かりにくいと指摘された2段階評価について保安院は「(定期点検中で停止中の原発を対象とする)1次評価では、地震や津波で原発の施設に加わる力に対し、設計段階で各設備がどこまで余裕があるかの数値を評価し、(全原発が対象の)2次評価では、実際に設備が健全性や機能を失う限界値を評価する」と説明。
さらに「地震」「津波」「全電源喪失」「海水に炉心の熱を放出する機能の停止」の4項目としていた1次評価の対象に「地震と津波」が重複して起きるケースも加えた。
一方、各電力会社から評価結果の報告を受ける時期について、2次評価は年内をめどとし、東京電力福島第1原発事故の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえて見直すとしたが、再稼働の可否に影響する1次評価の時期は明示しなかった。【毎日・比嘉洋】
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7/18
ストレステストならぬ偽装「ストレステスト」の概要が、先週(7/15)、ほぼ明らかになった。 さらなる詳細は、19日まで待たねばならないが、以下の毎日新聞や東京新聞の記事をも参照しながら、「ストレステスト」が単なるマヤカシに過ぎない、その根拠を整理しておこう。
(⇒「「ストレステスト」のマヤカシ---2段階で再稼働判断?」より)
〈原発事故に対する社会的耐性
「ストレステスト」の問題点を整理するにあたり、その大前提として考えておくべきことがある。それは、ポスト「3・11」において、日本の原発事故に対する社会的耐性は、「レベル7」の福島第一原発事故より、はるかに低いレベルを限度とする、ということである。
万が一にも「第二の福島第一」が起こったとしたら、日本は文字通り、政治的・経済的・社会的に轟沈してしまうだろう。日本は、今回の大災害の「収束」過程において、「レベル7」の原発事故の再来に耐えることはできない。つまり、ポスト「3・11」における日本の原発の安全/不安全を検査するときに、福島第一と同レベルの事故が起きる/起きないの「レベル」で議論すること自体が、ナンセンスなのである。この意味において、菅内閣をはじめ、電力供給限界論や経済停滞論から、原発推進政策維持や停止中原発の再稼働容認の論陣を張る人々は、日本社会に対してはもちろんのこと、国際社会に対してもきわめて不誠実で不真面目な議論をしていると言わざるをえない。
もちろん、「万、万が一」に「第二の3・11」が起こった場合に備える、原発の工学的耐性は確保されていなければならない。そして、現状、日本の原発はその条件を満たしていない。 けれども、それ以前の問題として、実際には「レベル7」より低レベルの事故の発生によって、日本のすべての原発は有無を言わさぬ形で「アウト」になる。稼動中のものは停止に追い込まれ、停止・検査中のものは、再稼働が不可能になってしまうだろう。それ以外の選択肢がなくなってしまうだろう。このことを政府・電力会社・自治体、そして私たちは、かなりシリアスかつシビアに考える必要がある、と私は思うのだ。
では、その「レベル」とはどのような「レベル」だろう。「レベル6」、それとも「レベル5」だろうか?
たとえば、「冷却装置」が「トラブル」を起こし、原子炉を「手動」で(!!)「停止」しなければないないような「レベル」の事故はどうか。「その程度」の事故であれば、社会的に許容できるだろうか。
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・大飯原発1号機停止へ 冷却装置トラブル
関西電力は16日、大飯(おおい)原子力発電所1号機(117万5千キロワット、福井県おおい町)を手動停止する、と発表した。緊急時に原子炉の炉心を冷やすために使うタンクの圧力が下がるトラブルがあり、原子炉を止めて原因を調べるという。関西の夏の電力需給はさらに厳しくなる見込み。 関電によると、トラブルが起きたのは、事故時などに冷却水を注入するために複数設置されている「蓄圧タンク」の一つ。15日午後10時46分に異常を知らせる警報が鳴り、圧力を確認したところ保安規定上の制限値を下回っていた。圧力が低下すると緊急時に冷却水を注入できなくなる恐れがあるという。 安全確保のため、16日午後1時ごろから出力を低下させる作業に入り、午後9時ごろには原子炉を停止する。トラブルによる環境への影響はないとしている。
・福井県「現状では再稼動認められぬ」 大飯原発トラブル
16日公表された関西電力大飯原発1号機のトラブルで、約4カ月続いた異例の「調整運転」が幕を閉じた。地元福井県の幹部は停止中の他の原発と同様、現状では動かすことは認められないと明言。夏の電力需要のピークを目前に、関電の供給能力は厳しさを増すとみられる。
福井県は午前10時、安全環境部の桜本宏企画幹が県庁で記者会見。「原子炉を停止する以上、今回のトラブルの原因究明や対策を終えただけでは、再稼働はできない」と述べ、大飯原発1号機も、検査で停止中の他の原発と同様の扱いとする姿勢を示した。すでに関電にそう伝えたという。 形式的には検査中にもかかわらず、100%の出力で運転する調整運転を黙認してきた同県。桜本企画幹は「最終検査前に売電を認める調整運転制度そのものが、今回の混乱をもたらしたのではないか」と現行制度に疑問を投げかけた。 (朝日)
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原子炉を手動で停止するような事故が起こっても、「環境に影響がない」=放射能が漏出しなければ、あるいは水素爆発を起こさなければ大丈夫、と私たちは言うだろうか?
ポスト「3・11」における「万が一」の原発事故とは何か? 「ストレステスト」を論じる以前に、私たちはこのことを「全国民的」に、きちんと議論しなければならないのではないだろうか。そうでなければ、何のために「ストレステスト」を議論し、何を基準にその賛否を評価するのか、討議の前提を共有できないからである。
菅首相の思いつき的な、閣議決定さえ踏んでいない「ストレステスト」導入宣言以降、私たちはこの前提的了解事項が存在しないことをめぐり、実に膨大な時間と労力を「全国民的」に消費し、消耗してきたのである。
〈工学的耐性と社会的耐性〉
原発の稼働/停止、再稼働の是非を、(原子力)工学的観点と基準からのみ判断し、議論できるのか? 「3・11」以後、菅内閣・電力会社・自治体・「原子力村」の言動と、それを報じる主要メディアに対し、私が最も強く不信感と違和感を抱いてきたのは、このことである。「できない」と、私は考えるからだ。
⇒茨城南部震源、M.5.5の地震(気象庁) ポスト「3・11」において、「第二の「3・11」は「当面」は起こらないだろう」という絶望的楽観主義の下で、政府が将来的な「脱原発」宣言すら発せず、原発の稼働を容認していること/そういう政府を私たちが放任していること自体が異常であり、「狂気の沙汰」だと私は思う。まして、現状での停止中原発の再稼働など「ありえない話」だと言うべきである。
しかし、半世紀以上にわたる「原子力行政」の結果、たとえ「工学的安全性」を満たしていなくとも、日本は原発を即時廃止にすることができない。これがリアリティである。原子力産業と科学の育成を国家戦略として位置付けてきたからだし、原発立地自治体が、道・県も市町村も「原発マネー」と「原発利権」に呪縛されてきたからである。
こうしてできあがったのが、中央-地方を貫く、産官学・独法系研究機関の「連携」による〈原子力複合体〉である。安保と同様に、これを解体→再編成するのは、とても一筋縄ではゆかない。10年、20年で達成できることではない。原発漬けになった地域経済の再生をどうするか、「原子力村」を「平和村」に変えるにはどうすればよいか、解決すべき難題が山積するからだ。
ではどうすればよいのか。
①早ければ早いに越したことはないが、せめて2050年くらいまでに原子力複合体の原発依存をゼロにする「脱原発」を国の方針として法的に確認した上で、
②「第二の3・11」を想定した「工学的耐性」を満たしていない原発(原子炉)から、順次停止→廃炉にすることを法的に確認する。この場合、重要なことは、
③現存する原発の中で、最も新しく、相対的に最も「安全」な原発でさえ、「工学的耐性」を満たさないものが存在することを認めること(認める以外に選択肢がないこと)である。だからこそ、
④法的に未整備状態にある、「第二の3・11」を想定した〈社会的耐性〉検査を行い、市民の「安全・安心」を保証/保障/補償できる体制/態勢構築に、即刻着手しなければならないのである。
ここで言う〈社会的耐性〉とは、国・電力資本・自治体それぞれが整備すべき、「第二の3・11」が起こったときに、市民の「安全・安心」を保証/保障/補償する仕組みの「耐性」をさす。正確には、現行の「仕組み」がどこまでの事態に耐えられるか、その限界のことである。
ポスト「3・11」の日本、いや世界における「原発の安全・安心」は、新たに構想され、基準設定されるべきこの〈社会的耐性〉の要素抜きに、単なる原発(原子炉)の工学的耐性のみで判断することはできないし、してはならないのである。少なくとも私たちが市民の「安全・安心」を第一義に考えるかぎりにおいては。
逆に言えば、〈社会的耐性〉の観点と基準抜きに、原発の稼働を容認し、停止中原発の再稼働を云々していること、そのこと自体が今の日本社会の異常さと、政府を含むすべての「アクター」の無責任さを物語っているのである(〈社会的耐性〉については、改めて述べることにする)。
〈原発の「工学的耐性」について〉
このブログの読者の中には、「「原発ジプシー」と被曝」の最下段で紹介した、沢田哲生・東京工業大助教(原子核工学)が毎日新聞の取材に対して答えた言葉、すなわち「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管がある。そこに何らかの損傷があったとすれば重大なトラブルで信じがたい」と語ったことを覚えている人もいるかもしれない。沢田氏のこの指摘に対し、私は、
「沢田助教が言う、「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管」に「何らかの損傷」があったとすれば「重大なトラブル」で「信じがたい」という解説に、今回の福島第一原発事故の今後を占う「重大」なカギが隠されている。「主蒸気管」。この言葉、しっかり記憶に留めておこう」と書いた。
「東日本大震災と原発 原子力緊急事態宣言(2) 」(3/27)より。
「私の記憶では、福島第一原発(日本の原発のほとんどがそうかもしれない)が、最大の「重大事態」としているのは、原子炉格納容器外で起こる放射能「漏出」である。もちろん、「理論的」にというか「一般的」には、原子炉が破壊されることも当然ありえる。もしも本当に3号機の原子炉が損壊したのであれば、今回の地震・津波のような、原発がそれに耐えうるように「理論的」には設定されているはずの「安全対策基準」を上回る破壊的力に原発がさらされた場合だ。
しかし、すべての建築物がそうであるように、実際に原発が設計され、建設されるときには、そのような「非現実的」なことは「ありえない」ものとして、考慮すべき条件から排除される。福島第一原発の場合、現実的に想定している非常事態は、「せいぜい」原子炉外の「主蒸気管」破損とそこからの放射能の漏出、「その程度」のことなのだ。「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管」破損⇒放射能漏出である。
しかし、本当に何もない/何も考えていない、とは想定しがたい/想定したくない。何かはあるはず/あってほしい。日本の原発「安全対策」は「世界トップクラス」なのだから。そう、私たちは聞かされ続けてきたのだから。
何があるか? 何をしようとしているのか? それをまず最初に突き止めることがマスコミには求められており、正直に明らかにすることが東電、「対策本部」の責任であり使命である。 そして、もしも何かがあった場合、その「対策」の実現可能性が次に検討すべき課題となる。〈誰がその「対策」を現場で担うのか?〉という設問とともに」
(以下、工事中)
①原子炉そのものの不安全
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・「玄海1号機の劣化試験片は分析を」井野氏が講演
玄海原発(佐賀県東松浦郡玄海町)1号機の劣化問題などを考えるシンポジウムが17日、唐津市文化体育館であった。金属材料に詳しい井野博満東大名誉教授が劣化判断の指標となる試験片の「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」の大幅上昇を問題視し、大学などの研究機関でも試験片を分析する必要性を訴えた。
1号機の試験片の脆性遷移温度は56度(1993年)から98度(2009年)に急上昇した。研究者が問題視したことに対し、九電は衝撃に対する試験片の粘り強さなど新たなデータを公表したが、井野氏は「このデータでは急上昇の原因は分からず安全性は保証できない」とした。 急上昇の原因として「容器の鋼鉄に不純物が多く含まれ、想像以上に劣化が進んでいる可能性がある。中性子を浴びて組織構造がどう変質しているのか。ミクロの解析が不可欠」とし、「原因が解明されるまで運転を停止すべき」と訴えた。
シンポは市民団体などによる実行委員会が企画。18日午後6時半から佐賀市のアバンセでも開かれる。実行委は20日、試験片の公的機関への提供と、1号機の運転停止などを求める要求書を九電に提出する。(佐賀新聞)
「脱原発派の試練」(6/21)の中で、「照射脆化・脆性破壊」の問題について説明した。
「照射脆化・脆性破壊」
原子炉運転中に高速中性子の照射を受け、圧力容器鋼材が破壊に対する抵抗力が低下する(「中性子照射脆化」)という指摘や懸念に対し、東電を含む電力会社は、「脆化」や「脆性破壊」を防止するため、「監視試験片」を予め炉心の近くに装荷し、定期的に点検しているので、圧力容器の「健全性」は常に保たれている、としてきた。柏崎刈羽原発のこの問題に関する、昨年6月の東電の回答がその一例である。
②「津波対策」の不安全
⇒「東日本大震災:津波の高さ史上最大40.5メートル 宮古」(毎日新聞)
・「宮古市重茂姉吉(おもえあねよし)の約500メートル内陸で、海面から約40.5メートルの地点に津波が到達した跡を確認」
・「岩手県釜石市▽大船渡市▽久慈市▽野田村▽宮城県女川町の6市町村で30メートル超を記録」
・「青森、福島、茨城県でも10メートル以上に達した地点があった」
・「調査結果は研究者間で共有し、地震のメカニズム解明や今後の防災対策に活用される。同グループのウェブサイトで公開」
上の記事に目を通した上で、下の記事を読んで欲しい。
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・東電以外の原発37基、津波耐性「問題なし」
政府が導入する原子力発電所のストレステスト(耐性検査)のうち、津波に関する部分について、産業設備の維持管理技術などの専門家らでつくる「日本保全学会」(会長=宮健三・東大名誉教授)が、政府とほぼ同じ評価項目で独自に試行した。 震災後、各原発とも津波の高さの想定を9・5メートル引き上げる緊急安全対策が講じられたため、福島第一原発を襲った規模の津波が到達しても、炉心損傷などの深刻な事故を起こさず、安全に冷却できると結論された。
試行した耐性検査は、東京電力以外の商用原発37基が対象。地震と津波で外部電源と非常用電源が失われたと想定し、〈1〉原子炉の冷却設備〈2〉電源や冷却水の水源〈3〉原発の状態を監視する中央制御室――などが維持されるかを調べた。その結果、どの原発も、約3時間以内に電源車の接続が可能になり、電力は安定供給できると判定。原子炉とプールの冷却には問題ないとした。(読売、7/17)
③「全交流電源喪失」への対処不能性
⇒「「命綱」非常用電源を過信 複合災害原発安全は(上)」(福井新聞, 7/10)より
◎ 「国の指示を受け、電力各社はバックアップ電源を充実。関西電力は11基の県内原発に計32台の電源車を配備した。ただ、これだけではプラントの監視機能を働かす電力しかなく、ECCSを作動させて原子炉を冷温停止するには不十分。9月までに空冷式ディーゼル発電機計21台を各原発の高台に置く計画で、中長期的には非常用発電機を追加設置する。
外部電源の確保に課題を残すプラントもある。日本原電敦賀2号機の送電回線は2系統とも同一の変電所に連係しているため、変電所や鉄塔が損壊すれば早期復旧は困難。原電は2013年度までに北陸電力からの送電線に接続する方針だ」
◎ 「事故後に打ち出された対策で電源は確保されるのか。京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力工学)は「長期間の全電源喪失を防げると技術的にはいえる。最低限は確保できる」と評価する。ただ、各対策でどんなリスクを軽減できるのか、国による体系的な説明がないと問題視する。
一方、伴氏は「保安院が指示した対策で本当に済むのか。電源車を増やせばいいという問題ではない」と懐疑的。対症療法でなく、原発ごとに厳しく安全性をチェックすべきだと訴える」
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・原発:安全評価、「1次」4項目で 保安院が手法概要公表
経済産業省原子力安全・保安院は15日、原発の再稼働や運転継続の基準とする「安全評価」の手法の概要を公表した。電力各社が原発ごとに、安全性にどれだけ余裕があるかを評価し、保安院がその手続きの妥当性を評価。さらに内閣府原子力安全委員会が確認する。稼働中のほぼ全原発が対象の「2次評価」は年内に保安院に報告するよう求めるが、定期検査で停止中の原発で実施し、再稼働のカギを握る「1次評価」の報告時期は未定だ。安全委は同日臨時会を開き、保安院の手法の概要を大筋で了承した。
保安院によると、試験の対象は、「1次評価」が現在定検中の九州電力玄海原発3号機など19基。「2次評価」は、福島第1原発と同第2原発、浜岡原発を除き、1次評価対象や建設中のものを含めた50基。
安全評価は、「地震」「津波」「全電源喪失」「海水に熱を放出する機能の停止」の四つの場合について、燃料損傷などの過酷事故に至るまでにどのくらい安全性の余裕があるのか定量的に計算する。 1次評価では
(1)原子炉の配管などの機器類に負荷をかけ、健全性が十分確保される値と比べて設計値にどれだけ余裕があるかを調べる。その上で
(2)原子炉全体で燃料溶融に至るまでの余裕度も測り、原子炉の弱点を見つける。さらに
(3)過酷事故に至らないために各社が講じている対応措置の効果を評価する。
また、2次評価では、全電源喪失と炉心の熱を取り除く機能が失われ燃料溶融が起きる「限界値」を算出して設計値と比べることで、原子炉の能力を測る。
安全評価をめぐっては、保安院が玄海原発の安全性を確認し、海江田万里経産相が6月29日に地元に再稼働を要請したものの、菅直人首相が同日、原子力安全委員会を関与させて安全審査をやり直すよう海江田氏に指示。1次評価が、定検中の原発を再稼働するための要件になっている。【毎日・河内敏康、関東晋慈】
・原発:安全評価 機器の健全性対策で「基準以上」調査
① 経済産業省原子力安全・保安院が15日公表した原発の「安全評価」の手法は、地震や津波など原発の設計上の想定を超える状況で、基準に対してどのくらい余裕があるか安全性を評価するものだ。従来の安全審査では安全基準を上回るか否かが問われたが、東京電力福島第1原発事故を受け、保安院は「もともと安全は確保されているというのが前提。ただ、安全基準をぎりぎり上回っているのではないということを、テストで確認して安心していただく」と説明する。
保安院によると、通常の原発は設計時に安全性に「裕度」を見込んでいる。新たな安全評価は、機器などの健全性が保たれるレベルや、破壊される限界までの余裕がどれだけあるのかをみる。つまり安全基準を超えて設置や運転の許可を得ている原発が、どれだけ基準を超えているかの「程度」を数値で表すに過ぎない。さらに津波の高さの想定は02年に土木学会が示した基準を想定しているため、震災前の福島第1原発も「安全性がある」という評価になる可能性が高い。
② 具体的には、設計時などに想定した地震、津波で機器などにかかる力が計算され、ある材料にかかるひずみ量が求められる。 ひずみ量が大きくなると、材料は破壊される。一般に健全性が失われるひずみのレベルはその値より小さく、設計時の想定値はさらに小さい。それだけの余裕がなければ、そもそも原発の運転が認められないからだ。設計値を基準に裕度を測るため、結果として、安全評価をしても安全でないという結果は原理的に出ないということになる。
定期検査で停止中の原発を「1次評価」、運転中の原発は「2次評価」と2段構えで実施することについて、報告を受けた内閣府原子力安全委員会で「違いが分からない」と不満の声が上がった。再稼働の可否を決める判断材料の1次評価では、福島第1原発事故で実際に起きた地震と津波などの複合事象を含めていないため、1次評価に加えることなどを修正したうえで再提出するよう求めた。班目(まだらめ)春樹委員長は「一般の人にも分かるよう説明資料をつけるように」と指示した。
③ 保安院が参考にしたEU(欧州連合)のストレステストは、域内の143原発を対象とする。停止中と稼働中の原発は同じテストで、1次と2次に分けていない。また、事業者のテスト評価を各国規制機関が評価した後、さらに他の加盟国の専門家も招いた安全性の相互評価「ピアレビュー」を行う。
これに対して、保安院案は事業者が1次と2次を評価したうえで、保安院がその手続きを評価。さらに原子力安全委員会が確認する。再稼働の可否を判断するのは菅直人首相と3閣僚だ。 岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「2次評価は、ヨーロッパで行われているストレステストに近く、よく考えて作られている。ただ、1次評価は何のためにあるのか不明で、1次、2次に分ける理由が分からない」と指摘する。【毎日・足立旬子、岡田英、藤野基文】
・原発安全評価 1次は地震など4項目
経済産業省原子力安全・保安院は十五日、原発が地震や津波などにどこまで耐えられるのかを確認する「安全評価」の手法と実施計画の素案をまとめ、原子力安全委員会に説明した。安全委は同日、大筋で了承したが、評価の手法などが分かりにくいなどとして保安院に再提出を求めた。 保安院によると、安全評価はまず電力会社自らが行い、その妥当性を保安院や安全委が確認する。 定期検査中の原発を対象とした簡易の一次評価と、東京電力福島第一、第二原発を除く全原発を対象とした二次評価に分け、コンピューター解析する。二次評価について、保安院は事業者に年内の報告を求める考えだ。
一次評価は①「地震」②「津波」③「全交流電源喪失」④「熱放出機能の喪失」の四項目について、想定を超える地震や津波が起きた際、施設や機器などの安全性にどれだけ余裕があるかを確認する。 機器が壊れた際のバックアップ機能も調べる。 二次評価では、東日本大震災のように、地震や津波が複合的に襲うことを想定。地震と津波、電源喪失と熱放出機能喪失がそれぞれ同時に起きたケースについて、どこまで核燃料の損傷を防ぐことができるか耐性をチェックする。損傷からさらに事態が進み、水素爆発など過酷事故(シビアアクシデント)に至るまでのケースも検証する。
保安院から素案の提出を受けた安全委は、一次評価でも地震と津波の同時発生について調べるべきだとし、一次と二次評価の違いについても、原発の地元住民向けに分かりやすい書面をつくるよう求めた。保安院は再提出する計画案が了承され次第、電力会社に実施を要請する。(東京)
・原発:安全評価、法的根拠乏しく 「強制ではない」
15日に概要が発表されたストレステストだが、法的根拠は乏しい。枝野幸男官房長官も15日の記者会見で「法律に基づくものではなく、国民の皆さんの安全を高める見地から政府として(電力会社に)要請する手続きだ」と認めた。 背景には、菅直人首相が求める厳しい基準のルールに法的根拠を持たせるには「少なくとも1年かかる」(政府高官)ことがある(→まったく根拠無し)。それでは再稼働に間に合わない。
枝野氏は12日の会見で「強制力を伴わない範囲で、各大臣の行政権限のもとでさまざまなことを行っている。特に原子力への国民の不信、不安が高い状況で、今の法律で実現可能なことを今回行った」と述べ、従来より厳しい基準の導入と、電力供給確保の両立を図った「苦肉の策」だったと認めた。 首相も12日の衆院復興特別委員会で再稼働の責任者が誰かを問われた際、「今の法体系で言えば経済産業相になるが、政治的には経産相、原発事故担当相、官房長官と私で最終的な判断を行う」と答弁し、政治判断で再稼働や運転継続を決めるとした。【毎日・影山哲也】
・再稼働可否判断、期間は依然不明
「安全評価」の評価手法や実施計画の大枠は固まったものの、原発の再稼働の可否を判断するために実施される1次評価にかかる期間は「電力会社が作成する調査報告書の中身次第」(原子力安全・保安院)とされ、明確には示されなかった。また、1次評価の後、最終的な再稼働の可否は菅直人首相と関係3閣僚が政治判断するため、どの原発がいつ再稼働できるかは依然として見通せない状況だ
発電電力量の半分近くを原発が占める関西電力は、原発全11基のうち4基が定期検査で停止中。いずれも起動準備はほぼ整っており、「早々に1次評価を受けられる状態」(保安院)だ。管内の8月以降の需給が綱渡りなだけに「適切かつ迅速に対応したい」と再稼働を急いでいる。地元の了解が得られず、10日に予定していた再稼働を断念した伊方原発3号機を抱える四国電力も「(1次評価の通知があれば)一日も早く報告書を提出したい」と思いは同じだ。
1次評価に向けて電力会社が提出した報告書は保安院が精査し、原子力安全委員会が確認する。しかし、それだけで自動的に再稼働できるわけではない。最終的に菅首相らが、安全性以外に地元の了解度なども加味して政治判断する再稼働のハードルは高い。今夏以降、電力不足が続く可能性はある。
停止中の原発が再稼働できない状態が続けば、国内の全原発は12年3月末にはストップする。菅首相は「この夏、冬の必要な電力供給は可能」と言うが、裏付けには乏しく、経済産業省は需給逼迫(ひっぱく)が続くことを想定して、対応策の検討に入っている。【毎日・和田憲二】
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・福島3、4号機の燃料搬出を優先 東電が従来計画を変更
福島第1原発事故の収束に向けた作業のうち、水素爆発などで原子炉建屋が大きく壊れた3、4号機について、政府と東京電力は使用済み燃料プールからの燃料取り出しを優先するよう従来の計画を変更することが16日、分かった。がれき撤去やクレーン設置などの作業をするため、大気中へ放射性物質が拡散するのを防ぐ「建屋カバー」の設置は遅らせる(???)。
また建屋内の汚染水の処理完了などの「中期的課題」は、最長3年程度と、期間のめどを初めて示す。事故収束に向けた工程表の「ステップ1」が終了し、19日に政府と東電が公表する新たな工程表には、こうした「ステップ2」以降の計画を盛り込む。 (共同)
・浜岡原発真下に活断層 名古屋大教授指摘 室戸岬まで全長400キロ
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の真下を通り、室戸岬(高知県)に延びる長さ四百キロの巨大な活断層が存在する可能性があることが、鈴木康弘名古屋大教授(変動地形学)らの研究で分かった。中電は独自の調査結果で活断層の存在を否定しているが、東日本大震災を受け、専門家らは耐震評価の見直しを訴えている。
日本列島周辺の海底を調査した海上保安庁のデータを基に、鈴木教授と中田高広島大名誉教授らが二〇〇九年に詳細な海底地形図を作製し、研究を進めている。その結果、浜岡原発周辺の太平洋岸から室戸岬付近まで四百キロにわたり幅十~三十キロ、深さ三百~千メートルの海底のたわみ「撓曲(とうきょく)」を確認。「遠州灘撓曲帯」と名付けた。 撓曲は、もとは水平だった地形が、その地下にある活断層の動きで、できるとされ、「遠州灘撓曲帯」の地下には、同じ長さの活断層が想定される。
鈴木教授は、浜岡原発の北東二キロにあり、段丘状に隆起している「牧之原台地」も、遠州灘撓曲帯を形成した活断層の動きによる地形と推測し、浜岡原発の真下に活断層がある可能性を指摘している。 中電は、浜岡原発の半径百キロ圏内の海域に十四の活断層があることは認めているが、音波探査の結果、遠州灘撓曲帯に対応する活断層はないとしている。 中電が把握している活断層の中で最も強い揺れを想定する「石花海(せのうみ)海盆西縁断層帯」は長さ三十四キロ。鈴木教授は「可能性のある断層は想定に入れるべきだ」と求めている。(東京新聞、7/17)
・脱原発:弁護団が全国連絡会 大飯1号機で訴訟準備進める
東京電力福島第1原発事故を受け、原発立地地域などの弁護士96人が16日、「脱原発弁護団全国連絡会」を発足させた。東京都内で同日開かれた初会合には50人が参加し、各地域の実情や今後の方針などについて意見交換。「日本から全原発を無くすまで訴訟などのあらゆる手段を尽くして闘う」ことを確認した。
会合で、冠木克彦弁護士(大阪弁護士会)は、調整運転中に緊急炉心冷却装置(ECCS)系統にトラブルが発生した関西電力大飯原発1号機(福井県おおい町)の営業運転再開を認めないよう国に求める訴訟を起こす準備を進めていることを報告した。今週中にも大阪地裁に提訴するという。
一方、連絡会代表の河合弘之弁護士(第二東京弁護士会)は当初、全原発の運転停止を求めて秋にも各地で一斉提訴する意向を示していたが、この日の会合後の会見では「各地域ごとにいろいろな事情がある」と述べ、一斉提訴は難しいとの見方を示した。【毎日・和田武士】
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7/22
原子力安全委員会が、保安院が策定した「ストレステスト」(安全評価?)の「実施計画」を「妥当」と判断し、「了承」した。
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・ストレステスト実施計画 安全委が「妥当」と了承
経済産業省原子力安全・保安院は21日、原発の再稼働や運転継続の基準とする「安全評価」(ストレステスト)の実施計画を内閣府原子力安全委員会に提出し、安全委は「妥当」と判断し了承した。
分かりにくいと指摘された2段階評価について保安院は「(定期点検中で停止中の原発を対象とする)1次評価では、地震や津波で原発の施設に加わる力に対し、設計段階で各設備がどこまで余裕があるかの数値を評価し、(全原発が対象の)2次評価では、実際に設備が健全性や機能を失う限界値を評価する」と説明。
さらに「地震」「津波」「全電源喪失」「海水に炉心の熱を放出する機能の停止」の4項目としていた1次評価の対象に「地震と津波」が重複して起きるケースも加えた。
一方、各電力会社から評価結果の報告を受ける時期について、2次評価は年内をめどとし、東京電力福島第1原発事故の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえて見直すとしたが、再稼働の可否に影響する1次評価の時期は明示しなかった。【毎日・比嘉洋】
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7/18
ストレステストならぬ偽装「ストレステスト」の概要が、先週(7/15)、ほぼ明らかになった。 さらなる詳細は、19日まで待たねばならないが、以下の毎日新聞や東京新聞の記事をも参照しながら、「ストレステスト」が単なるマヤカシに過ぎない、その根拠を整理しておこう。
(⇒「「ストレステスト」のマヤカシ---2段階で再稼働判断?」より)
〈原発事故に対する社会的耐性
「ストレステスト」の問題点を整理するにあたり、その大前提として考えておくべきことがある。それは、ポスト「3・11」において、日本の原発事故に対する社会的耐性は、「レベル7」の福島第一原発事故より、はるかに低いレベルを限度とする、ということである。
万が一にも「第二の福島第一」が起こったとしたら、日本は文字通り、政治的・経済的・社会的に轟沈してしまうだろう。日本は、今回の大災害の「収束」過程において、「レベル7」の原発事故の再来に耐えることはできない。つまり、ポスト「3・11」における日本の原発の安全/不安全を検査するときに、福島第一と同レベルの事故が起きる/起きないの「レベル」で議論すること自体が、ナンセンスなのである。この意味において、菅内閣をはじめ、電力供給限界論や経済停滞論から、原発推進政策維持や停止中原発の再稼働容認の論陣を張る人々は、日本社会に対してはもちろんのこと、国際社会に対してもきわめて不誠実で不真面目な議論をしていると言わざるをえない。
もちろん、「万、万が一」に「第二の3・11」が起こった場合に備える、原発の工学的耐性は確保されていなければならない。そして、現状、日本の原発はその条件を満たしていない。 けれども、それ以前の問題として、実際には「レベル7」より低レベルの事故の発生によって、日本のすべての原発は有無を言わさぬ形で「アウト」になる。稼動中のものは停止に追い込まれ、停止・検査中のものは、再稼働が不可能になってしまうだろう。それ以外の選択肢がなくなってしまうだろう。このことを政府・電力会社・自治体、そして私たちは、かなりシリアスかつシビアに考える必要がある、と私は思うのだ。
では、その「レベル」とはどのような「レベル」だろう。「レベル6」、それとも「レベル5」だろうか?
たとえば、「冷却装置」が「トラブル」を起こし、原子炉を「手動」で(!!)「停止」しなければないないような「レベル」の事故はどうか。「その程度」の事故であれば、社会的に許容できるだろうか。
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・大飯原発1号機停止へ 冷却装置トラブル
関西電力は16日、大飯(おおい)原子力発電所1号機(117万5千キロワット、福井県おおい町)を手動停止する、と発表した。緊急時に原子炉の炉心を冷やすために使うタンクの圧力が下がるトラブルがあり、原子炉を止めて原因を調べるという。関西の夏の電力需給はさらに厳しくなる見込み。 関電によると、トラブルが起きたのは、事故時などに冷却水を注入するために複数設置されている「蓄圧タンク」の一つ。15日午後10時46分に異常を知らせる警報が鳴り、圧力を確認したところ保安規定上の制限値を下回っていた。圧力が低下すると緊急時に冷却水を注入できなくなる恐れがあるという。 安全確保のため、16日午後1時ごろから出力を低下させる作業に入り、午後9時ごろには原子炉を停止する。トラブルによる環境への影響はないとしている。
・福井県「現状では再稼動認められぬ」 大飯原発トラブル
16日公表された関西電力大飯原発1号機のトラブルで、約4カ月続いた異例の「調整運転」が幕を閉じた。地元福井県の幹部は停止中の他の原発と同様、現状では動かすことは認められないと明言。夏の電力需要のピークを目前に、関電の供給能力は厳しさを増すとみられる。
福井県は午前10時、安全環境部の桜本宏企画幹が県庁で記者会見。「原子炉を停止する以上、今回のトラブルの原因究明や対策を終えただけでは、再稼働はできない」と述べ、大飯原発1号機も、検査で停止中の他の原発と同様の扱いとする姿勢を示した。すでに関電にそう伝えたという。 形式的には検査中にもかかわらず、100%の出力で運転する調整運転を黙認してきた同県。桜本企画幹は「最終検査前に売電を認める調整運転制度そのものが、今回の混乱をもたらしたのではないか」と現行制度に疑問を投げかけた。 (朝日)
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原子炉を手動で停止するような事故が起こっても、「環境に影響がない」=放射能が漏出しなければ、あるいは水素爆発を起こさなければ大丈夫、と私たちは言うだろうか?
ポスト「3・11」における「万が一」の原発事故とは何か? 「ストレステスト」を論じる以前に、私たちはこのことを「全国民的」に、きちんと議論しなければならないのではないだろうか。そうでなければ、何のために「ストレステスト」を議論し、何を基準にその賛否を評価するのか、討議の前提を共有できないからである。
菅首相の思いつき的な、閣議決定さえ踏んでいない「ストレステスト」導入宣言以降、私たちはこの前提的了解事項が存在しないことをめぐり、実に膨大な時間と労力を「全国民的」に消費し、消耗してきたのである。
〈工学的耐性と社会的耐性〉
原発の稼働/停止、再稼働の是非を、(原子力)工学的観点と基準からのみ判断し、議論できるのか? 「3・11」以後、菅内閣・電力会社・自治体・「原子力村」の言動と、それを報じる主要メディアに対し、私が最も強く不信感と違和感を抱いてきたのは、このことである。「できない」と、私は考えるからだ。
⇒茨城南部震源、M.5.5の地震(気象庁) ポスト「3・11」において、「第二の「3・11」は「当面」は起こらないだろう」という絶望的楽観主義の下で、政府が将来的な「脱原発」宣言すら発せず、原発の稼働を容認していること/そういう政府を私たちが放任していること自体が異常であり、「狂気の沙汰」だと私は思う。まして、現状での停止中原発の再稼働など「ありえない話」だと言うべきである。
しかし、半世紀以上にわたる「原子力行政」の結果、たとえ「工学的安全性」を満たしていなくとも、日本は原発を即時廃止にすることができない。これがリアリティである。原子力産業と科学の育成を国家戦略として位置付けてきたからだし、原発立地自治体が、道・県も市町村も「原発マネー」と「原発利権」に呪縛されてきたからである。
こうしてできあがったのが、中央-地方を貫く、産官学・独法系研究機関の「連携」による〈原子力複合体〉である。安保と同様に、これを解体→再編成するのは、とても一筋縄ではゆかない。10年、20年で達成できることではない。原発漬けになった地域経済の再生をどうするか、「原子力村」を「平和村」に変えるにはどうすればよいか、解決すべき難題が山積するからだ。
ではどうすればよいのか。
①早ければ早いに越したことはないが、せめて2050年くらいまでに原子力複合体の原発依存をゼロにする「脱原発」を国の方針として法的に確認した上で、
②「第二の3・11」を想定した「工学的耐性」を満たしていない原発(原子炉)から、順次停止→廃炉にすることを法的に確認する。この場合、重要なことは、
③現存する原発の中で、最も新しく、相対的に最も「安全」な原発でさえ、「工学的耐性」を満たさないものが存在することを認めること(認める以外に選択肢がないこと)である。だからこそ、
④法的に未整備状態にある、「第二の3・11」を想定した〈社会的耐性〉検査を行い、市民の「安全・安心」を保証/保障/補償できる体制/態勢構築に、即刻着手しなければならないのである。
ここで言う〈社会的耐性〉とは、国・電力資本・自治体それぞれが整備すべき、「第二の3・11」が起こったときに、市民の「安全・安心」を保証/保障/補償する仕組みの「耐性」をさす。正確には、現行の「仕組み」がどこまでの事態に耐えられるか、その限界のことである。
ポスト「3・11」の日本、いや世界における「原発の安全・安心」は、新たに構想され、基準設定されるべきこの〈社会的耐性〉の要素抜きに、単なる原発(原子炉)の工学的耐性のみで判断することはできないし、してはならないのである。少なくとも私たちが市民の「安全・安心」を第一義に考えるかぎりにおいては。
逆に言えば、〈社会的耐性〉の観点と基準抜きに、原発の稼働を容認し、停止中原発の再稼働を云々していること、そのこと自体が今の日本社会の異常さと、政府を含むすべての「アクター」の無責任さを物語っているのである(〈社会的耐性〉については、改めて述べることにする)。
〈原発の「工学的耐性」について〉
このブログの読者の中には、「「原発ジプシー」と被曝」の最下段で紹介した、沢田哲生・東京工業大助教(原子核工学)が毎日新聞の取材に対して答えた言葉、すなわち「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管がある。そこに何らかの損傷があったとすれば重大なトラブルで信じがたい」と語ったことを覚えている人もいるかもしれない。沢田氏のこの指摘に対し、私は、
「沢田助教が言う、「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管」に「何らかの損傷」があったとすれば「重大なトラブル」で「信じがたい」という解説に、今回の福島第一原発事故の今後を占う「重大」なカギが隠されている。「主蒸気管」。この言葉、しっかり記憶に留めておこう」と書いた。
「東日本大震災と原発 原子力緊急事態宣言(2) 」(3/27)より。
「私の記憶では、福島第一原発(日本の原発のほとんどがそうかもしれない)が、最大の「重大事態」としているのは、原子炉格納容器外で起こる放射能「漏出」である。もちろん、「理論的」にというか「一般的」には、原子炉が破壊されることも当然ありえる。もしも本当に3号機の原子炉が損壊したのであれば、今回の地震・津波のような、原発がそれに耐えうるように「理論的」には設定されているはずの「安全対策基準」を上回る破壊的力に原発がさらされた場合だ。
しかし、すべての建築物がそうであるように、実際に原発が設計され、建設されるときには、そのような「非現実的」なことは「ありえない」ものとして、考慮すべき条件から排除される。福島第一原発の場合、現実的に想定している非常事態は、「せいぜい」原子炉外の「主蒸気管」破損とそこからの放射能の漏出、「その程度」のことなのだ。「原子炉圧力容器からタービン建屋につながる主蒸気管」破損⇒放射能漏出である。
しかし、本当に何もない/何も考えていない、とは想定しがたい/想定したくない。何かはあるはず/あってほしい。日本の原発「安全対策」は「世界トップクラス」なのだから。そう、私たちは聞かされ続けてきたのだから。
何があるか? 何をしようとしているのか? それをまず最初に突き止めることがマスコミには求められており、正直に明らかにすることが東電、「対策本部」の責任であり使命である。 そして、もしも何かがあった場合、その「対策」の実現可能性が次に検討すべき課題となる。〈誰がその「対策」を現場で担うのか?〉という設問とともに」
(以下、工事中)
①原子炉そのものの不安全
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・「玄海1号機の劣化試験片は分析を」井野氏が講演
玄海原発(佐賀県東松浦郡玄海町)1号機の劣化問題などを考えるシンポジウムが17日、唐津市文化体育館であった。金属材料に詳しい井野博満東大名誉教授が劣化判断の指標となる試験片の「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」の大幅上昇を問題視し、大学などの研究機関でも試験片を分析する必要性を訴えた。
1号機の試験片の脆性遷移温度は56度(1993年)から98度(2009年)に急上昇した。研究者が問題視したことに対し、九電は衝撃に対する試験片の粘り強さなど新たなデータを公表したが、井野氏は「このデータでは急上昇の原因は分からず安全性は保証できない」とした。 急上昇の原因として「容器の鋼鉄に不純物が多く含まれ、想像以上に劣化が進んでいる可能性がある。中性子を浴びて組織構造がどう変質しているのか。ミクロの解析が不可欠」とし、「原因が解明されるまで運転を停止すべき」と訴えた。
シンポは市民団体などによる実行委員会が企画。18日午後6時半から佐賀市のアバンセでも開かれる。実行委は20日、試験片の公的機関への提供と、1号機の運転停止などを求める要求書を九電に提出する。(佐賀新聞)
「脱原発派の試練」(6/21)の中で、「照射脆化・脆性破壊」の問題について説明した。
「照射脆化・脆性破壊」
原子炉運転中に高速中性子の照射を受け、圧力容器鋼材が破壊に対する抵抗力が低下する(「中性子照射脆化」)という指摘や懸念に対し、東電を含む電力会社は、「脆化」や「脆性破壊」を防止するため、「監視試験片」を予め炉心の近くに装荷し、定期的に点検しているので、圧力容器の「健全性」は常に保たれている、としてきた。柏崎刈羽原発のこの問題に関する、昨年6月の東電の回答がその一例である。
②「津波対策」の不安全
⇒「東日本大震災:津波の高さ史上最大40.5メートル 宮古」(毎日新聞)
・「宮古市重茂姉吉(おもえあねよし)の約500メートル内陸で、海面から約40.5メートルの地点に津波が到達した跡を確認」
・「岩手県釜石市▽大船渡市▽久慈市▽野田村▽宮城県女川町の6市町村で30メートル超を記録」
・「青森、福島、茨城県でも10メートル以上に達した地点があった」
・「調査結果は研究者間で共有し、地震のメカニズム解明や今後の防災対策に活用される。同グループのウェブサイトで公開」
上の記事に目を通した上で、下の記事を読んで欲しい。
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・東電以外の原発37基、津波耐性「問題なし」
政府が導入する原子力発電所のストレステスト(耐性検査)のうち、津波に関する部分について、産業設備の維持管理技術などの専門家らでつくる「日本保全学会」(会長=宮健三・東大名誉教授)が、政府とほぼ同じ評価項目で独自に試行した。 震災後、各原発とも津波の高さの想定を9・5メートル引き上げる緊急安全対策が講じられたため、福島第一原発を襲った規模の津波が到達しても、炉心損傷などの深刻な事故を起こさず、安全に冷却できると結論された。
試行した耐性検査は、東京電力以外の商用原発37基が対象。地震と津波で外部電源と非常用電源が失われたと想定し、〈1〉原子炉の冷却設備〈2〉電源や冷却水の水源〈3〉原発の状態を監視する中央制御室――などが維持されるかを調べた。その結果、どの原発も、約3時間以内に電源車の接続が可能になり、電力は安定供給できると判定。原子炉とプールの冷却には問題ないとした。(読売、7/17)
③「全交流電源喪失」への対処不能性
⇒「「命綱」非常用電源を過信 複合災害原発安全は(上)」(福井新聞, 7/10)より
◎ 「国の指示を受け、電力各社はバックアップ電源を充実。関西電力は11基の県内原発に計32台の電源車を配備した。ただ、これだけではプラントの監視機能を働かす電力しかなく、ECCSを作動させて原子炉を冷温停止するには不十分。9月までに空冷式ディーゼル発電機計21台を各原発の高台に置く計画で、中長期的には非常用発電機を追加設置する。
外部電源の確保に課題を残すプラントもある。日本原電敦賀2号機の送電回線は2系統とも同一の変電所に連係しているため、変電所や鉄塔が損壊すれば早期復旧は困難。原電は2013年度までに北陸電力からの送電線に接続する方針だ」
◎ 「事故後に打ち出された対策で電源は確保されるのか。京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力工学)は「長期間の全電源喪失を防げると技術的にはいえる。最低限は確保できる」と評価する。ただ、各対策でどんなリスクを軽減できるのか、国による体系的な説明がないと問題視する。
一方、伴氏は「保安院が指示した対策で本当に済むのか。電源車を増やせばいいという問題ではない」と懐疑的。対症療法でなく、原発ごとに厳しく安全性をチェックすべきだと訴える」
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・原発:安全評価、「1次」4項目で 保安院が手法概要公表
経済産業省原子力安全・保安院は15日、原発の再稼働や運転継続の基準とする「安全評価」の手法の概要を公表した。電力各社が原発ごとに、安全性にどれだけ余裕があるかを評価し、保安院がその手続きの妥当性を評価。さらに内閣府原子力安全委員会が確認する。稼働中のほぼ全原発が対象の「2次評価」は年内に保安院に報告するよう求めるが、定期検査で停止中の原発で実施し、再稼働のカギを握る「1次評価」の報告時期は未定だ。安全委は同日臨時会を開き、保安院の手法の概要を大筋で了承した。
保安院によると、試験の対象は、「1次評価」が現在定検中の九州電力玄海原発3号機など19基。「2次評価」は、福島第1原発と同第2原発、浜岡原発を除き、1次評価対象や建設中のものを含めた50基。
安全評価は、「地震」「津波」「全電源喪失」「海水に熱を放出する機能の停止」の四つの場合について、燃料損傷などの過酷事故に至るまでにどのくらい安全性の余裕があるのか定量的に計算する。 1次評価では
(1)原子炉の配管などの機器類に負荷をかけ、健全性が十分確保される値と比べて設計値にどれだけ余裕があるかを調べる。その上で
(2)原子炉全体で燃料溶融に至るまでの余裕度も測り、原子炉の弱点を見つける。さらに
(3)過酷事故に至らないために各社が講じている対応措置の効果を評価する。
また、2次評価では、全電源喪失と炉心の熱を取り除く機能が失われ燃料溶融が起きる「限界値」を算出して設計値と比べることで、原子炉の能力を測る。
安全評価をめぐっては、保安院が玄海原発の安全性を確認し、海江田万里経産相が6月29日に地元に再稼働を要請したものの、菅直人首相が同日、原子力安全委員会を関与させて安全審査をやり直すよう海江田氏に指示。1次評価が、定検中の原発を再稼働するための要件になっている。【毎日・河内敏康、関東晋慈】
・原発:安全評価 機器の健全性対策で「基準以上」調査
① 経済産業省原子力安全・保安院が15日公表した原発の「安全評価」の手法は、地震や津波など原発の設計上の想定を超える状況で、基準に対してどのくらい余裕があるか安全性を評価するものだ。従来の安全審査では安全基準を上回るか否かが問われたが、東京電力福島第1原発事故を受け、保安院は「もともと安全は確保されているというのが前提。ただ、安全基準をぎりぎり上回っているのではないということを、テストで確認して安心していただく」と説明する。
保安院によると、通常の原発は設計時に安全性に「裕度」を見込んでいる。新たな安全評価は、機器などの健全性が保たれるレベルや、破壊される限界までの余裕がどれだけあるのかをみる。つまり安全基準を超えて設置や運転の許可を得ている原発が、どれだけ基準を超えているかの「程度」を数値で表すに過ぎない。さらに津波の高さの想定は02年に土木学会が示した基準を想定しているため、震災前の福島第1原発も「安全性がある」という評価になる可能性が高い。
② 具体的には、設計時などに想定した地震、津波で機器などにかかる力が計算され、ある材料にかかるひずみ量が求められる。 ひずみ量が大きくなると、材料は破壊される。一般に健全性が失われるひずみのレベルはその値より小さく、設計時の想定値はさらに小さい。それだけの余裕がなければ、そもそも原発の運転が認められないからだ。設計値を基準に裕度を測るため、結果として、安全評価をしても安全でないという結果は原理的に出ないということになる。
定期検査で停止中の原発を「1次評価」、運転中の原発は「2次評価」と2段構えで実施することについて、報告を受けた内閣府原子力安全委員会で「違いが分からない」と不満の声が上がった。再稼働の可否を決める判断材料の1次評価では、福島第1原発事故で実際に起きた地震と津波などの複合事象を含めていないため、1次評価に加えることなどを修正したうえで再提出するよう求めた。班目(まだらめ)春樹委員長は「一般の人にも分かるよう説明資料をつけるように」と指示した。
③ 保安院が参考にしたEU(欧州連合)のストレステストは、域内の143原発を対象とする。停止中と稼働中の原発は同じテストで、1次と2次に分けていない。また、事業者のテスト評価を各国規制機関が評価した後、さらに他の加盟国の専門家も招いた安全性の相互評価「ピアレビュー」を行う。
これに対して、保安院案は事業者が1次と2次を評価したうえで、保安院がその手続きを評価。さらに原子力安全委員会が確認する。再稼働の可否を判断するのは菅直人首相と3閣僚だ。 岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「2次評価は、ヨーロッパで行われているストレステストに近く、よく考えて作られている。ただ、1次評価は何のためにあるのか不明で、1次、2次に分ける理由が分からない」と指摘する。【毎日・足立旬子、岡田英、藤野基文】
・原発安全評価 1次は地震など4項目
経済産業省原子力安全・保安院は十五日、原発が地震や津波などにどこまで耐えられるのかを確認する「安全評価」の手法と実施計画の素案をまとめ、原子力安全委員会に説明した。安全委は同日、大筋で了承したが、評価の手法などが分かりにくいなどとして保安院に再提出を求めた。 保安院によると、安全評価はまず電力会社自らが行い、その妥当性を保安院や安全委が確認する。 定期検査中の原発を対象とした簡易の一次評価と、東京電力福島第一、第二原発を除く全原発を対象とした二次評価に分け、コンピューター解析する。二次評価について、保安院は事業者に年内の報告を求める考えだ。
一次評価は①「地震」②「津波」③「全交流電源喪失」④「熱放出機能の喪失」の四項目について、想定を超える地震や津波が起きた際、施設や機器などの安全性にどれだけ余裕があるかを確認する。 機器が壊れた際のバックアップ機能も調べる。 二次評価では、東日本大震災のように、地震や津波が複合的に襲うことを想定。地震と津波、電源喪失と熱放出機能喪失がそれぞれ同時に起きたケースについて、どこまで核燃料の損傷を防ぐことができるか耐性をチェックする。損傷からさらに事態が進み、水素爆発など過酷事故(シビアアクシデント)に至るまでのケースも検証する。
保安院から素案の提出を受けた安全委は、一次評価でも地震と津波の同時発生について調べるべきだとし、一次と二次評価の違いについても、原発の地元住民向けに分かりやすい書面をつくるよう求めた。保安院は再提出する計画案が了承され次第、電力会社に実施を要請する。(東京)
・原発:安全評価、法的根拠乏しく 「強制ではない」
15日に概要が発表されたストレステストだが、法的根拠は乏しい。枝野幸男官房長官も15日の記者会見で「法律に基づくものではなく、国民の皆さんの安全を高める見地から政府として(電力会社に)要請する手続きだ」と認めた。 背景には、菅直人首相が求める厳しい基準のルールに法的根拠を持たせるには「少なくとも1年かかる」(政府高官)ことがある(→まったく根拠無し)。それでは再稼働に間に合わない。
枝野氏は12日の会見で「強制力を伴わない範囲で、各大臣の行政権限のもとでさまざまなことを行っている。特に原子力への国民の不信、不安が高い状況で、今の法律で実現可能なことを今回行った」と述べ、従来より厳しい基準の導入と、電力供給確保の両立を図った「苦肉の策」だったと認めた。 首相も12日の衆院復興特別委員会で再稼働の責任者が誰かを問われた際、「今の法体系で言えば経済産業相になるが、政治的には経産相、原発事故担当相、官房長官と私で最終的な判断を行う」と答弁し、政治判断で再稼働や運転継続を決めるとした。【毎日・影山哲也】
・再稼働可否判断、期間は依然不明
「安全評価」の評価手法や実施計画の大枠は固まったものの、原発の再稼働の可否を判断するために実施される1次評価にかかる期間は「電力会社が作成する調査報告書の中身次第」(原子力安全・保安院)とされ、明確には示されなかった。また、1次評価の後、最終的な再稼働の可否は菅直人首相と関係3閣僚が政治判断するため、どの原発がいつ再稼働できるかは依然として見通せない状況だ
発電電力量の半分近くを原発が占める関西電力は、原発全11基のうち4基が定期検査で停止中。いずれも起動準備はほぼ整っており、「早々に1次評価を受けられる状態」(保安院)だ。管内の8月以降の需給が綱渡りなだけに「適切かつ迅速に対応したい」と再稼働を急いでいる。地元の了解が得られず、10日に予定していた再稼働を断念した伊方原発3号機を抱える四国電力も「(1次評価の通知があれば)一日も早く報告書を提出したい」と思いは同じだ。
1次評価に向けて電力会社が提出した報告書は保安院が精査し、原子力安全委員会が確認する。しかし、それだけで自動的に再稼働できるわけではない。最終的に菅首相らが、安全性以外に地元の了解度なども加味して政治判断する再稼働のハードルは高い。今夏以降、電力不足が続く可能性はある。
停止中の原発が再稼働できない状態が続けば、国内の全原発は12年3月末にはストップする。菅首相は「この夏、冬の必要な電力供給は可能」と言うが、裏付けには乏しく、経済産業省は需給逼迫(ひっぱく)が続くことを想定して、対応策の検討に入っている。【毎日・和田憲二】
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・福島3、4号機の燃料搬出を優先 東電が従来計画を変更
福島第1原発事故の収束に向けた作業のうち、水素爆発などで原子炉建屋が大きく壊れた3、4号機について、政府と東京電力は使用済み燃料プールからの燃料取り出しを優先するよう従来の計画を変更することが16日、分かった。がれき撤去やクレーン設置などの作業をするため、大気中へ放射性物質が拡散するのを防ぐ「建屋カバー」の設置は遅らせる(???)。
また建屋内の汚染水の処理完了などの「中期的課題」は、最長3年程度と、期間のめどを初めて示す。事故収束に向けた工程表の「ステップ1」が終了し、19日に政府と東電が公表する新たな工程表には、こうした「ステップ2」以降の計画を盛り込む。 (共同)
・浜岡原発真下に活断層 名古屋大教授指摘 室戸岬まで全長400キロ
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の真下を通り、室戸岬(高知県)に延びる長さ四百キロの巨大な活断層が存在する可能性があることが、鈴木康弘名古屋大教授(変動地形学)らの研究で分かった。中電は独自の調査結果で活断層の存在を否定しているが、東日本大震災を受け、専門家らは耐震評価の見直しを訴えている。
日本列島周辺の海底を調査した海上保安庁のデータを基に、鈴木教授と中田高広島大名誉教授らが二〇〇九年に詳細な海底地形図を作製し、研究を進めている。その結果、浜岡原発周辺の太平洋岸から室戸岬付近まで四百キロにわたり幅十~三十キロ、深さ三百~千メートルの海底のたわみ「撓曲(とうきょく)」を確認。「遠州灘撓曲帯」と名付けた。 撓曲は、もとは水平だった地形が、その地下にある活断層の動きで、できるとされ、「遠州灘撓曲帯」の地下には、同じ長さの活断層が想定される。
鈴木教授は、浜岡原発の北東二キロにあり、段丘状に隆起している「牧之原台地」も、遠州灘撓曲帯を形成した活断層の動きによる地形と推測し、浜岡原発の真下に活断層がある可能性を指摘している。 中電は、浜岡原発の半径百キロ圏内の海域に十四の活断層があることは認めているが、音波探査の結果、遠州灘撓曲帯に対応する活断層はないとしている。 中電が把握している活断層の中で最も強い揺れを想定する「石花海(せのうみ)海盆西縁断層帯」は長さ三十四キロ。鈴木教授は「可能性のある断層は想定に入れるべきだ」と求めている。(東京新聞、7/17)
・脱原発:弁護団が全国連絡会 大飯1号機で訴訟準備進める
東京電力福島第1原発事故を受け、原発立地地域などの弁護士96人が16日、「脱原発弁護団全国連絡会」を発足させた。東京都内で同日開かれた初会合には50人が参加し、各地域の実情や今後の方針などについて意見交換。「日本から全原発を無くすまで訴訟などのあらゆる手段を尽くして闘う」ことを確認した。
会合で、冠木克彦弁護士(大阪弁護士会)は、調整運転中に緊急炉心冷却装置(ECCS)系統にトラブルが発生した関西電力大飯原発1号機(福井県おおい町)の営業運転再開を認めないよう国に求める訴訟を起こす準備を進めていることを報告した。今週中にも大阪地裁に提訴するという。
一方、連絡会代表の河合弘之弁護士(第二東京弁護士会)は当初、全原発の運転停止を求めて秋にも各地で一斉提訴する意向を示していたが、この日の会合後の会見では「各地域ごとにいろいろな事情がある」と述べ、一斉提訴は難しいとの見方を示した。【毎日・和田武士】
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市民の「安全・安心」を保証しない菅内閣
市民の「安全・安心」を保証しない菅内閣
7/19
・南相馬北西部、21日にも「特定避難勧奨地点」指定
政府の原子力災害現地対策本部は21日にも、積算放射線量が局地的に高い「ホットスポット」を対象にした特定避難勧奨地点に新たに南相馬市北西部の地域の住居を指定する見通しであることが18日分かった。 市は22日、6月に詳細調査を行った7行政区111世帯に結果を説明し、対象住居に通知する。伊達市の4地域113世帯に続く特定避難勧奨地点指定となる。
政府は6月下旬に同市原町区の大原、大谷、高倉、馬場、片倉、押釜、鹿島区の橲原の7行政区で、原発事故から1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される地点を詳細調査。その結果、地上1メートルで毎時3.0マイクロシーベルトを超える地点が78地点あった。(福島民友)
・福島第1原発:避難指示など解除要件 原子力安全委が公表
内閣府原子力安全委員会(班目春樹委員長)は19日、東京電力福島第1原発事故で政府が出した避難指示などの解除に向けた要件を公表した。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従い、政府や地元自治体、住民が協議した上で年間被ばく量が1~20ミリシーベルトの範囲で当面の許容レベルを決め、これを超える地域に住民が戻る場合には除染などの措置が必要とした。また、長期的には年間1ミリシーベルトを目標に被ばく量を減らす措置を取ることなどを盛り込んだ。
避難指示などの解除に向け、判断の根拠となる環境モニタリングや、事故後の行動調査結果と環境モニタリングの結果などを組み合わせて個人の被ばく量を推定するシステム、住民の定期検診など長期的な健康評価システムの構築などを提言。できるだけ被ばく量を減らすための活動への住民参加も求めた。記者会見した久住静代委員は「(当面の許容レベルは)国が一律に決めるのではなく、住民の意向を尊重すべきだ」と話した。【毎日・西川拓】
↓
この程度の「助言」を受けるために、年間6億5千万もの税金を安全委員会に投入することが必要だろうか?
7/18
〈「冷温停止(???)の前倒し」問題〉
⇒「首相、冷温停止の前倒し強調 福島で周辺首長と意見交換」(朝日)
・「首相が将来の「脱原発」を表明した後に「個人的な思い」と言い直したことについて、市町村側から「我々は脱原発に向かっているのに本当にがっかりした」との意見が出た。首相は直接答えなかったという」
・「市町村側からは不満も漏れた。首相が具体的な帰還時期を示さなかったことについて、川内村の遠藤雄幸村長は「現実問題として除染対策などが進んでいない証拠」と指摘」
・「緊急時避難準備区域の解除が議題とならなかったことには、該当する田村市の冨塚ゆうけい市長が「一部の住民は『安全なんですか』『根拠は』となるでしょうから、戻るにはかなりの説明を要する。住民ときちんと話をしないと」と語った」
・安定冷却、道なお険し 福島第一原発・ステップ1期限
東京電力が福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表を発表して17日で3カ月が経ち、工程表の第1段階(ステップ1)の期限を迎える。最大の目標は原子炉の安定的な冷却だが、その実現の要となる放射能汚染水の浄化処理施設では不具合が相次ぎ、改善が必要な状態だ。政府と東京電力は19日、課題はあると認めつつも、ステップ1の目標をおおむね達成したとの見解を示す。
東電は4月17日に工程表を初めて公表した。3カ月後を終了のめどにした「ステップ1」で原子炉の安定的な冷却を、最長で来年1月までの終了をめどにした「ステップ2」で、原子炉が十分に冷えて安全な状態になる「冷温停止」状態を、それぞれ実現するとの目標を掲げてきた。 政府と東電は、原子炉の安定的な冷却は達成できたとみている。溶けた核燃料を冷やすことで出る高濃度の放射能汚染水を、浄化して原子炉の冷却に使う「循環注水冷却」システムが動き始め、汚染水を増やすことなく原子炉を冷やす仕組みができたため、というのがその理由だ。 これを受け、政府は緊急時避難準備区域の解除の検討を始める。その前提となる、
(1)窒素注入によって水素爆発の危険性をほぼゼロの状態にできたこと
(2)発電所外への新たな放射性物質の流出が限りなく低く(???)抑えられた状態になったこと――も19日に示す予定だ。
だが、原子炉の安定的な冷却の前提となる循環注水冷却システムはトラブルが続いている。システムの要である放射能汚染水の浄化処理施設は6月17日に稼働を始めたものの、配管の水漏れなどの不具合が相次ぎ、一時停止を繰り返している。 また、4月当初の工程表では実施を明記していた、格納容器を密閉して内部を水で満たす冠水の作業は、5月の時点で事実上断念した。放射能汚染水の処理が思いのほか手間取ったのに加え、原子炉建屋の放射線量が高く、復旧作業ができなかったためだ。
冠水させて原子炉をさらに冷やして冷温停止状態にするために、ステップ2で格納容器の損傷部の補修作業に取りかかる。だが、どこが損傷しているかわかっていないうえ、圧力容器から格納容器内に燃料が漏れ出ている可能性があり、作業は難航も予想される。(朝日・坪谷英紀)
〈「汚染牛肉」問題〉
・新たに435頭、7都県に流通 新潟でも宮城の汚染わら(東京新聞)
・細野原発事故相:肉牛全県出荷停止 テレビ朝日番組で発言
消費者担当相を兼務する細野豪志原発事故担当相は17日、高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが肉牛の餌とされていた問題に関し「根本的に絶つことができるまでは(福島)全県出荷停止するという方向になる」と述べた。その上で「外に置いたものは餌にしない、という周知が不徹底だった」と指摘。「原因は明確なので、しっかり取り除けば問題は解決できる」と述べ、汚染拡大は防止できるとの認識を示した。テレビ朝日の番組で語った。
消費者に対しては「規制値を超えるものが出たことはおわびしなければならない」と陳謝した上で「非常に安全サイドに立った基準で、少量を口にしても大変な被害が出るものではない」と冷静な対応を呼びかけた。【毎日・笈田直樹】
⇒「セシウム汚染牛:風評被害懸念…「福島産」値崩れ深刻」(毎日)
・「廃業しかないか」 危機福島牛 畜産農家、悲痛な叫び
県内の肉用牛が19日にも出荷停止となる見通しとなり、県内の生産者に不安が広がっている。畜産農家の多くが収入を断たれることになり、「いつまでも持ちこたえられるか」とため息が漏れる。出荷停止が長引けば、これまで培ってきた「福島牛」のブランド力を失うことにもつながりかねない。消費者の信頼をつなぎとめる全頭検査の見通しも立たず、いら立ちは募るばかりだ。農家の苦悩を追った。
「20歳のころから42年間、情熱を持って牛を育ててきた。それも、もう終わりかもしれない」。大玉村の肉牛農家の鈴木広直さん(62)は17日、自宅の牛舎にいる牛を悲壮な表情で見詰めた。 稲わらは牛の反すうを促す作用があり、健康で肉質の良い牛を育てるのには欠かせない。原発事故発生前に仕入れ、その後は屋根付きの倉庫で保管してきた。放射性物質の混入は考えられない。「消費者の安心のため、全県での出荷停止が仕方がないのは理屈では分かる。でも…」。割り切れない思いが渦巻く。
村内の稲作農家から牛の堆肥との交換で仕入れてきた。「今後は県外の業者から購入するしかない」と思案する。現在、飼育する約50頭の餌代は月に70~80万円。新たに稲わらを購入するとなれば、年間300万円近く増える計算だ。出荷停止が長引けば、さらに餌代がかさむ。 肉牛の出荷価格は原発事故以降、風評被害で3~4割落ち込んでいる。そこに「出荷停止」というレッテルが加われば、どんな影響が出るのか。考えただけで気持ちが暗くなる。「廃業」という言葉が頭にちらつく。
会津地方の30代の肉牛農家男性は16日、約40頭を飼う自宅の牛舎で、県の検査担当者が稲わらを運び出すのを心配そうに見守った。原発事故以降に田んぼに一部残っていた稲わらを取り入れ、保管していた分で、結果を待っている。「セシウムが検出されなければいいが…」と祈るような気持ちだ。
会津地方では畜産農家が一丸となって「会津牛」のブランド化に力を入れ、男性も経営が軌道に乗り始めていた。だが、原発事故で会津牛も価格が3~5割も下落している。会津地方でもわらの汚染問題が起き、事態はより深刻になった。 「肉牛は出荷時期に合わせて計画的に肥育している。出荷停止が続けば、肥育が難しくなる」と行政の対応にいら立ちを隠せない。「収入がない中、肥育がうまくいかず、牛が死んでしまえば、それまで掛けた費用が全て無駄になる」
繁殖農家も子牛が出荷停止になるかどうかに神経をとがらせる。郡山市で繁殖牛8頭を飼う農家男性(66)は「県内で生まれた子牛は買ってもらえるのか。売値は限りなく下がるのではないか」と不安を募らせる。 5年程前にトラクターを購入するなどして、年間約200万円を返済している。収入減は大きな打撃だ。肉用牛が出荷制限になれば、母牛を最終的に肉用に売ることもできず、年間約40万円の減収にもなる。 「福島の牛に対する消費者の信頼は失われてしまった。安心して買ってもらえる環境を一刻も早く整えてほしい」。畜産農家からは全頭検査を求める声が高まっている。 (福島民報)
〈「避難準備区域縮小」問題〉
・避難準備区域縮小「8月にも開始」 政府が自治体に打診
東京電力福島第一原発の事故で住民の自主的避難を求めている「緊急時避難準備区域」について、政府が、指定されている福島県の自治体に区域の縮小を8月にも始める方針を打診していることが分かった。 菅直人首相が16日に同県を訪れて首長らから直接意見を聞き、その結果を踏まえて区域の見直し作業に着手する。
政府や自治体関係者によると、政府は、原子炉を安定冷却させる工程表の「ステップ1」が、目標通り今月中旬に達成可能との見通しを自治体側に非公式に説明している。 その上で、避難準備区域の中で大気中や地表の放射線量が低く、上下水道や道路などのインフラを早期に復旧できる地域について、指定の解除を検討。8月中にも解除できないか自治体側から意見を聞いているという。第一原発から20キロ圏内の「警戒区域」や、放射線量の高い「計画的避難区域」を見直す考えはこれまでのところ示していない。
避難準備区域があるのは南相馬市、田村市、広野町、楢葉町、川内村の5市町村で、対象住民は計5万9千人。このうち南相馬市は指定が解除された場合に備え、インフラ整備などを始めている。一方、広野町や川内村などは安全性が確保されない中での指定解除には慎重な立場だ。ある首長は「雇用、インフラ、子どもの安全をクリアしないと、解除には納得できないと伝えた」と明かしている。 政府は自治体ごとの事情を考慮しながら解除の具体的な地域や時期を詰める。近く予定している原子力災害への対応方針を示した計画の見直しに盛り込めないか検討しているという。(朝日)
・福島市が高線量地域住民の一時的転居促す
福島市は、放射線量が比較的低い同市荒井などの西部地区に災害公営住宅を建設し、市内で線量が高いとされる同市渡利など東部地区の住民に数年から十数年の一時的な転居を促す。瀬戸孝則市長が15日の市災害対策会議で示した。
市民の県外流出を防止する。また、同市には東部地区の住民から「仕事の事情で転居が難しい」「引っ越したいが、子どもが転校したくないと言っている」などの相談が寄せられており、自主避難が困難な世帯の不安を解消する狙いもある。 ただ、現行の激甚災害法では放射線被害が災害として認定されないため、国から公営住宅建設費用の十分な支援を受けることができない。(福島民友)
・大波、渡利地区3マイクロシーベルト超 車両連続測定
政府の原子力災害現地対策本部と県は15日、5~7日に福島市で行った車両による放射線量の連続測定調査の結果を公表、大波、渡利両地区の一部で最大値が、毎時3マイクロシーベルトを超える数値を計測した。 最大値で大波が毎時3.39マイクロシーベルト、渡利が毎時3.32マイクロシーベルト。結果は県のホームページに掲載されている。(福島民友)
・シイタケから基準超えるセシウム 福島県産ハウス栽培
福島県は15日、同県本宮市と伊達市のビニールハウスで栽培された原木シイタケから、国の基準を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。本宮市の農家からは基準超えの可能性のあるシイタケ129キロが東京の大田市場へ、伊達市の農家からは28キロが地元の直売所や福島市内のスーパーへ、それぞれ今月初め以降に出荷されていた。 伊達市では、2カ所の農家のハウスでモニタリング検査をした結果、1カ所で暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)の3倍強の1770ベクレルが検出された。本宮市は1カ所の農家で、同560ベクレルが検出された。
県は生産者に自主回収を指示するとともに、本宮市と伊達市からのハウスの原木シイタケの出荷自粛を求めた。同県内ではこれまで、露地栽培の原木シイタケで基準を超えるセシウムやヨウ素が検出されているが施設栽培では初めて。県によると、温度管理のためビニールハウスを開けたことがあったという。(朝日・神田明美)
⇒「子どもと妊婦に「バッジ式線量計」を配布するのは正しいか?」
7/19
・南相馬北西部、21日にも「特定避難勧奨地点」指定
政府の原子力災害現地対策本部は21日にも、積算放射線量が局地的に高い「ホットスポット」を対象にした特定避難勧奨地点に新たに南相馬市北西部の地域の住居を指定する見通しであることが18日分かった。 市は22日、6月に詳細調査を行った7行政区111世帯に結果を説明し、対象住居に通知する。伊達市の4地域113世帯に続く特定避難勧奨地点指定となる。
政府は6月下旬に同市原町区の大原、大谷、高倉、馬場、片倉、押釜、鹿島区の橲原の7行政区で、原発事故から1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される地点を詳細調査。その結果、地上1メートルで毎時3.0マイクロシーベルトを超える地点が78地点あった。(福島民友)
・福島第1原発:避難指示など解除要件 原子力安全委が公表
内閣府原子力安全委員会(班目春樹委員長)は19日、東京電力福島第1原発事故で政府が出した避難指示などの解除に向けた要件を公表した。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従い、政府や地元自治体、住民が協議した上で年間被ばく量が1~20ミリシーベルトの範囲で当面の許容レベルを決め、これを超える地域に住民が戻る場合には除染などの措置が必要とした。また、長期的には年間1ミリシーベルトを目標に被ばく量を減らす措置を取ることなどを盛り込んだ。
避難指示などの解除に向け、判断の根拠となる環境モニタリングや、事故後の行動調査結果と環境モニタリングの結果などを組み合わせて個人の被ばく量を推定するシステム、住民の定期検診など長期的な健康評価システムの構築などを提言。できるだけ被ばく量を減らすための活動への住民参加も求めた。記者会見した久住静代委員は「(当面の許容レベルは)国が一律に決めるのではなく、住民の意向を尊重すべきだ」と話した。【毎日・西川拓】
↓
この程度の「助言」を受けるために、年間6億5千万もの税金を安全委員会に投入することが必要だろうか?
7/18
〈「冷温停止(???)の前倒し」問題〉
⇒「首相、冷温停止の前倒し強調 福島で周辺首長と意見交換」(朝日)
・「首相が将来の「脱原発」を表明した後に「個人的な思い」と言い直したことについて、市町村側から「我々は脱原発に向かっているのに本当にがっかりした」との意見が出た。首相は直接答えなかったという」
・「市町村側からは不満も漏れた。首相が具体的な帰還時期を示さなかったことについて、川内村の遠藤雄幸村長は「現実問題として除染対策などが進んでいない証拠」と指摘」
・「緊急時避難準備区域の解除が議題とならなかったことには、該当する田村市の冨塚ゆうけい市長が「一部の住民は『安全なんですか』『根拠は』となるでしょうから、戻るにはかなりの説明を要する。住民ときちんと話をしないと」と語った」
・安定冷却、道なお険し 福島第一原発・ステップ1期限
東京電力が福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表を発表して17日で3カ月が経ち、工程表の第1段階(ステップ1)の期限を迎える。最大の目標は原子炉の安定的な冷却だが、その実現の要となる放射能汚染水の浄化処理施設では不具合が相次ぎ、改善が必要な状態だ。政府と東京電力は19日、課題はあると認めつつも、ステップ1の目標をおおむね達成したとの見解を示す。
東電は4月17日に工程表を初めて公表した。3カ月後を終了のめどにした「ステップ1」で原子炉の安定的な冷却を、最長で来年1月までの終了をめどにした「ステップ2」で、原子炉が十分に冷えて安全な状態になる「冷温停止」状態を、それぞれ実現するとの目標を掲げてきた。 政府と東電は、原子炉の安定的な冷却は達成できたとみている。溶けた核燃料を冷やすことで出る高濃度の放射能汚染水を、浄化して原子炉の冷却に使う「循環注水冷却」システムが動き始め、汚染水を増やすことなく原子炉を冷やす仕組みができたため、というのがその理由だ。 これを受け、政府は緊急時避難準備区域の解除の検討を始める。その前提となる、
(1)窒素注入によって水素爆発の危険性をほぼゼロの状態にできたこと
(2)発電所外への新たな放射性物質の流出が限りなく低く(???)抑えられた状態になったこと――も19日に示す予定だ。
だが、原子炉の安定的な冷却の前提となる循環注水冷却システムはトラブルが続いている。システムの要である放射能汚染水の浄化処理施設は6月17日に稼働を始めたものの、配管の水漏れなどの不具合が相次ぎ、一時停止を繰り返している。 また、4月当初の工程表では実施を明記していた、格納容器を密閉して内部を水で満たす冠水の作業は、5月の時点で事実上断念した。放射能汚染水の処理が思いのほか手間取ったのに加え、原子炉建屋の放射線量が高く、復旧作業ができなかったためだ。
冠水させて原子炉をさらに冷やして冷温停止状態にするために、ステップ2で格納容器の損傷部の補修作業に取りかかる。だが、どこが損傷しているかわかっていないうえ、圧力容器から格納容器内に燃料が漏れ出ている可能性があり、作業は難航も予想される。(朝日・坪谷英紀)
〈「汚染牛肉」問題〉
・新たに435頭、7都県に流通 新潟でも宮城の汚染わら(東京新聞)
・細野原発事故相:肉牛全県出荷停止 テレビ朝日番組で発言
消費者担当相を兼務する細野豪志原発事故担当相は17日、高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが肉牛の餌とされていた問題に関し「根本的に絶つことができるまでは(福島)全県出荷停止するという方向になる」と述べた。その上で「外に置いたものは餌にしない、という周知が不徹底だった」と指摘。「原因は明確なので、しっかり取り除けば問題は解決できる」と述べ、汚染拡大は防止できるとの認識を示した。テレビ朝日の番組で語った。
消費者に対しては「規制値を超えるものが出たことはおわびしなければならない」と陳謝した上で「非常に安全サイドに立った基準で、少量を口にしても大変な被害が出るものではない」と冷静な対応を呼びかけた。【毎日・笈田直樹】
⇒「セシウム汚染牛:風評被害懸念…「福島産」値崩れ深刻」(毎日)
・「廃業しかないか」 危機福島牛 畜産農家、悲痛な叫び
県内の肉用牛が19日にも出荷停止となる見通しとなり、県内の生産者に不安が広がっている。畜産農家の多くが収入を断たれることになり、「いつまでも持ちこたえられるか」とため息が漏れる。出荷停止が長引けば、これまで培ってきた「福島牛」のブランド力を失うことにもつながりかねない。消費者の信頼をつなぎとめる全頭検査の見通しも立たず、いら立ちは募るばかりだ。農家の苦悩を追った。
「20歳のころから42年間、情熱を持って牛を育ててきた。それも、もう終わりかもしれない」。大玉村の肉牛農家の鈴木広直さん(62)は17日、自宅の牛舎にいる牛を悲壮な表情で見詰めた。 稲わらは牛の反すうを促す作用があり、健康で肉質の良い牛を育てるのには欠かせない。原発事故発生前に仕入れ、その後は屋根付きの倉庫で保管してきた。放射性物質の混入は考えられない。「消費者の安心のため、全県での出荷停止が仕方がないのは理屈では分かる。でも…」。割り切れない思いが渦巻く。
村内の稲作農家から牛の堆肥との交換で仕入れてきた。「今後は県外の業者から購入するしかない」と思案する。現在、飼育する約50頭の餌代は月に70~80万円。新たに稲わらを購入するとなれば、年間300万円近く増える計算だ。出荷停止が長引けば、さらに餌代がかさむ。 肉牛の出荷価格は原発事故以降、風評被害で3~4割落ち込んでいる。そこに「出荷停止」というレッテルが加われば、どんな影響が出るのか。考えただけで気持ちが暗くなる。「廃業」という言葉が頭にちらつく。
会津地方の30代の肉牛農家男性は16日、約40頭を飼う自宅の牛舎で、県の検査担当者が稲わらを運び出すのを心配そうに見守った。原発事故以降に田んぼに一部残っていた稲わらを取り入れ、保管していた分で、結果を待っている。「セシウムが検出されなければいいが…」と祈るような気持ちだ。
会津地方では畜産農家が一丸となって「会津牛」のブランド化に力を入れ、男性も経営が軌道に乗り始めていた。だが、原発事故で会津牛も価格が3~5割も下落している。会津地方でもわらの汚染問題が起き、事態はより深刻になった。 「肉牛は出荷時期に合わせて計画的に肥育している。出荷停止が続けば、肥育が難しくなる」と行政の対応にいら立ちを隠せない。「収入がない中、肥育がうまくいかず、牛が死んでしまえば、それまで掛けた費用が全て無駄になる」
繁殖農家も子牛が出荷停止になるかどうかに神経をとがらせる。郡山市で繁殖牛8頭を飼う農家男性(66)は「県内で生まれた子牛は買ってもらえるのか。売値は限りなく下がるのではないか」と不安を募らせる。 5年程前にトラクターを購入するなどして、年間約200万円を返済している。収入減は大きな打撃だ。肉用牛が出荷制限になれば、母牛を最終的に肉用に売ることもできず、年間約40万円の減収にもなる。 「福島の牛に対する消費者の信頼は失われてしまった。安心して買ってもらえる環境を一刻も早く整えてほしい」。畜産農家からは全頭検査を求める声が高まっている。 (福島民報)
〈「避難準備区域縮小」問題〉
・避難準備区域縮小「8月にも開始」 政府が自治体に打診
東京電力福島第一原発の事故で住民の自主的避難を求めている「緊急時避難準備区域」について、政府が、指定されている福島県の自治体に区域の縮小を8月にも始める方針を打診していることが分かった。 菅直人首相が16日に同県を訪れて首長らから直接意見を聞き、その結果を踏まえて区域の見直し作業に着手する。
政府や自治体関係者によると、政府は、原子炉を安定冷却させる工程表の「ステップ1」が、目標通り今月中旬に達成可能との見通しを自治体側に非公式に説明している。 その上で、避難準備区域の中で大気中や地表の放射線量が低く、上下水道や道路などのインフラを早期に復旧できる地域について、指定の解除を検討。8月中にも解除できないか自治体側から意見を聞いているという。第一原発から20キロ圏内の「警戒区域」や、放射線量の高い「計画的避難区域」を見直す考えはこれまでのところ示していない。
避難準備区域があるのは南相馬市、田村市、広野町、楢葉町、川内村の5市町村で、対象住民は計5万9千人。このうち南相馬市は指定が解除された場合に備え、インフラ整備などを始めている。一方、広野町や川内村などは安全性が確保されない中での指定解除には慎重な立場だ。ある首長は「雇用、インフラ、子どもの安全をクリアしないと、解除には納得できないと伝えた」と明かしている。 政府は自治体ごとの事情を考慮しながら解除の具体的な地域や時期を詰める。近く予定している原子力災害への対応方針を示した計画の見直しに盛り込めないか検討しているという。(朝日)
・福島市が高線量地域住民の一時的転居促す
福島市は、放射線量が比較的低い同市荒井などの西部地区に災害公営住宅を建設し、市内で線量が高いとされる同市渡利など東部地区の住民に数年から十数年の一時的な転居を促す。瀬戸孝則市長が15日の市災害対策会議で示した。
市民の県外流出を防止する。また、同市には東部地区の住民から「仕事の事情で転居が難しい」「引っ越したいが、子どもが転校したくないと言っている」などの相談が寄せられており、自主避難が困難な世帯の不安を解消する狙いもある。 ただ、現行の激甚災害法では放射線被害が災害として認定されないため、国から公営住宅建設費用の十分な支援を受けることができない。(福島民友)
・大波、渡利地区3マイクロシーベルト超 車両連続測定
政府の原子力災害現地対策本部と県は15日、5~7日に福島市で行った車両による放射線量の連続測定調査の結果を公表、大波、渡利両地区の一部で最大値が、毎時3マイクロシーベルトを超える数値を計測した。 最大値で大波が毎時3.39マイクロシーベルト、渡利が毎時3.32マイクロシーベルト。結果は県のホームページに掲載されている。(福島民友)
・シイタケから基準超えるセシウム 福島県産ハウス栽培
福島県は15日、同県本宮市と伊達市のビニールハウスで栽培された原木シイタケから、国の基準を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。本宮市の農家からは基準超えの可能性のあるシイタケ129キロが東京の大田市場へ、伊達市の農家からは28キロが地元の直売所や福島市内のスーパーへ、それぞれ今月初め以降に出荷されていた。 伊達市では、2カ所の農家のハウスでモニタリング検査をした結果、1カ所で暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)の3倍強の1770ベクレルが検出された。本宮市は1カ所の農家で、同560ベクレルが検出された。
県は生産者に自主回収を指示するとともに、本宮市と伊達市からのハウスの原木シイタケの出荷自粛を求めた。同県内ではこれまで、露地栽培の原木シイタケで基準を超えるセシウムやヨウ素が検出されているが施設栽培では初めて。県によると、温度管理のためビニールハウスを開けたことがあったという。(朝日・神田明美)
⇒「子どもと妊婦に「バッジ式線量計」を配布するのは正しいか?」
原子力安全・保安院が原子力安全委員会と統一?
原子力安全・保安院が原子力安全委員会と統一?
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経産省の原子力安全・保安院を内閣府の原子力安全委員会と「統一」させるなんて、あってはならない/ありえない話である。
「3・11」以後、何度も述べてきたように、日本の「原子力行政」の構造的欠陥とは、機構上の問題として言えば、
①国の原発推進機関としての経産省(資源・エネルギー庁)の中に、同じく原発推進機関としての安全・保安院が存在し、これらに対し、
②内閣府の原子力科学及び原発の推進機関・原子力委員会と同じく、原子力科学及び原発の推進機関たる原子力安全委員会が、二つの「原発推進御用機関」として存在し、
③これらを文科省はじめその他の官・産・学(独法系)の原子力科学・原発推進機関が①と②の下で行われてきた「原子力行政」の実態的担い手であると同時に「シンクタンク」にもなってきたところにある。
「安全・保安院」や「安全委員会」とは名ばかりで、本来、原発の「安全規制」を担うこれら二つの政府機関が、本来の機能と役割を果たさなかった/果たせなかったところに、機構上と法制上の根本的な問題がある。
だから、原子力安全委員会を、
①国から独立した機関とすべく、内閣府から「分離」し、
②国と原発企業を規制する法的権原および権限(規制を執行する権力)を持たせるべく、
③原子力安全委員会の「設置法」そのものを抜本的に改定しなければ、
日本において「原子力行政」の「安全性」など確保しようがないのである。
2
行政(官僚機構)の監督を行政(官僚機構)にさせてはならない、という大原則が官僚制国家日本では通じるようでいて、なかなか通じない。
原子力委員会や原子力安全委員会が、(その意味で言えば総合科学技術会議もそうなのだが)、内閣府に存在することの意味を、脱原発派は、改めて考えてみる必要があるだろう。
「この二つの委員会は内閣府に設置されてはいるが、行政機構ではない」とナイーブにも考えている人は、
①両委員会が、実際にどのような権限を国に対して行使しえるか、また、
②年間予算16億数千万円にのぼる内閣府独自の「原子力予算」を二分する両委員会の「資金フロー」に、いかなる「利権」が絡んでいるか、さらに、
③両委員会の運営が、いかに「事務局」(内閣府付の官僚+経産省・文科省・外務省等々からの出向組官僚)に支配されているか、その実態をまず研究してみることを推奨したい。
・・・
・原子力委の設置、裏に偽装報告 55年 初の海外調査団(朝日)
◎ 「政府が1955年、原発を導入するために初めて派遣した海外調査団の報告書が、原子力委員会の設置を推進する内容に偽装されていたことがわかった。作成に関与した旧通商産業省の初代原子力課長(故人)の偽装を認める証言が、文部科学省の内部文書に記録されていた」
◎ 「政府は報告書をもとに原子力委員会を56年に発足させ、初代委員長に正力松太郎国務相、委員にノーベル物理学賞の湯川秀樹氏、経団連会長の石川一郎氏らを起用。著名人を集めた委員会を設け、米国の水爆実験で「第五福竜丸」が被曝した事件による原子力への世論の逆風を弱める狙いがあったとみられる。政府が公表した報告書の偽装は、原発導入期からの隠蔽体質を示すものだ」
・細野原発事故相:「保安院独立、来年4月」8月上旬に試案
細野豪志原発事故担当相は17日、NHKの討論番組に出演し、原子力安全規制を巡る行政機構の再編に関し「できるだけ早く実現する。来年4月が望ましい。8月上旬には私の試案を提案したい」と述べ、早期に対応する考えを示した。「過去の歴史では2、3年かけて新組織を作るが、今の状況を放置するのは無理だ」とした。
細野氏は再編で設立する新組織について、経済産業省から原子力安全・保安院を独立させた上で「原子力安全委員会を一緒にし(放射線量を)モニタリングしている文部科学省の機能も一部移行できるのではないか」と語った。組織形態は「自由な意見が出る(公正取引委員会のような)委員会形式と、安定性や長期的な方向性がある行政庁のいい面を持ち込みたい」とした。
一方、菅直人首相が「脱原発」方針を「私の考え」としたことに関し、細野氏はテレビ朝日の番組で「(首相会見は)純粋な個人的見解ではあり得ない。アドバルーンをドンと上げて走る昔の市民活動時代からのやり方(???)が、必ずしも党内、政府内から認められていないのは現実だ」と批判。ただ、「首相の中で『福島第1原発事故は自分の内閣で起きた問題で、この内閣で次の一歩を踏み出す』との思いが強い。私も本当に『日本存亡のとき』とまで思った」と理解も示した。【毎日・笈田直樹】
・原発担当相「再稼働認めるべき」 テストで安全性確保後
細野豪志原発担当相は(7月)14日の参院内閣委員会で、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開について「安全性を確保した上で再稼働は認めるべきだ。54基すべての原発がいずれかの段階で止まることを想定していない」と述べ、ストレステストを経て原発を再稼働させるべきだとの認識を示した。
民主党の植松恵美子氏の質問に対する答弁。細野氏は「安全性を前提に日本経済をどう動かしていくか、国民生活をどう守っていくかという視点はきわめて重要な要素だ」と述べ、原発停止は慎重な対応が必要との考えを明らかにした。
また、福島第一原発の廃炉や使用済み核燃料の取り出し、放射性物質を帯びたがれき処理の費用負担について「政府として担当していかなければ解決できない」と述べ、国費投入も検討する考えを示した。 (朝日)
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経産省の原子力安全・保安院を内閣府の原子力安全委員会と「統一」させるなんて、あってはならない/ありえない話である。
「3・11」以後、何度も述べてきたように、日本の「原子力行政」の構造的欠陥とは、機構上の問題として言えば、
①国の原発推進機関としての経産省(資源・エネルギー庁)の中に、同じく原発推進機関としての安全・保安院が存在し、これらに対し、
②内閣府の原子力科学及び原発の推進機関・原子力委員会と同じく、原子力科学及び原発の推進機関たる原子力安全委員会が、二つの「原発推進御用機関」として存在し、
③これらを文科省はじめその他の官・産・学(独法系)の原子力科学・原発推進機関が①と②の下で行われてきた「原子力行政」の実態的担い手であると同時に「シンクタンク」にもなってきたところにある。
「安全・保安院」や「安全委員会」とは名ばかりで、本来、原発の「安全規制」を担うこれら二つの政府機関が、本来の機能と役割を果たさなかった/果たせなかったところに、機構上と法制上の根本的な問題がある。
だから、原子力安全委員会を、
①国から独立した機関とすべく、内閣府から「分離」し、
②国と原発企業を規制する法的権原および権限(規制を執行する権力)を持たせるべく、
③原子力安全委員会の「設置法」そのものを抜本的に改定しなければ、
日本において「原子力行政」の「安全性」など確保しようがないのである。
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行政(官僚機構)の監督を行政(官僚機構)にさせてはならない、という大原則が官僚制国家日本では通じるようでいて、なかなか通じない。
原子力委員会や原子力安全委員会が、(その意味で言えば総合科学技術会議もそうなのだが)、内閣府に存在することの意味を、脱原発派は、改めて考えてみる必要があるだろう。
「この二つの委員会は内閣府に設置されてはいるが、行政機構ではない」とナイーブにも考えている人は、
①両委員会が、実際にどのような権限を国に対して行使しえるか、また、
②年間予算16億数千万円にのぼる内閣府独自の「原子力予算」を二分する両委員会の「資金フロー」に、いかなる「利権」が絡んでいるか、さらに、
③両委員会の運営が、いかに「事務局」(内閣府付の官僚+経産省・文科省・外務省等々からの出向組官僚)に支配されているか、その実態をまず研究してみることを推奨したい。
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・原子力委の設置、裏に偽装報告 55年 初の海外調査団(朝日)
◎ 「政府が1955年、原発を導入するために初めて派遣した海外調査団の報告書が、原子力委員会の設置を推進する内容に偽装されていたことがわかった。作成に関与した旧通商産業省の初代原子力課長(故人)の偽装を認める証言が、文部科学省の内部文書に記録されていた」
◎ 「政府は報告書をもとに原子力委員会を56年に発足させ、初代委員長に正力松太郎国務相、委員にノーベル物理学賞の湯川秀樹氏、経団連会長の石川一郎氏らを起用。著名人を集めた委員会を設け、米国の水爆実験で「第五福竜丸」が被曝した事件による原子力への世論の逆風を弱める狙いがあったとみられる。政府が公表した報告書の偽装は、原発導入期からの隠蔽体質を示すものだ」
・細野原発事故相:「保安院独立、来年4月」8月上旬に試案
細野豪志原発事故担当相は17日、NHKの討論番組に出演し、原子力安全規制を巡る行政機構の再編に関し「できるだけ早く実現する。来年4月が望ましい。8月上旬には私の試案を提案したい」と述べ、早期に対応する考えを示した。「過去の歴史では2、3年かけて新組織を作るが、今の状況を放置するのは無理だ」とした。
細野氏は再編で設立する新組織について、経済産業省から原子力安全・保安院を独立させた上で「原子力安全委員会を一緒にし(放射線量を)モニタリングしている文部科学省の機能も一部移行できるのではないか」と語った。組織形態は「自由な意見が出る(公正取引委員会のような)委員会形式と、安定性や長期的な方向性がある行政庁のいい面を持ち込みたい」とした。
一方、菅直人首相が「脱原発」方針を「私の考え」としたことに関し、細野氏はテレビ朝日の番組で「(首相会見は)純粋な個人的見解ではあり得ない。アドバルーンをドンと上げて走る昔の市民活動時代からのやり方(???)が、必ずしも党内、政府内から認められていないのは現実だ」と批判。ただ、「首相の中で『福島第1原発事故は自分の内閣で起きた問題で、この内閣で次の一歩を踏み出す』との思いが強い。私も本当に『日本存亡のとき』とまで思った」と理解も示した。【毎日・笈田直樹】
・原発担当相「再稼働認めるべき」 テストで安全性確保後
細野豪志原発担当相は(7月)14日の参院内閣委員会で、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開について「安全性を確保した上で再稼働は認めるべきだ。54基すべての原発がいずれかの段階で止まることを想定していない」と述べ、ストレステストを経て原発を再稼働させるべきだとの認識を示した。
民主党の植松恵美子氏の質問に対する答弁。細野氏は「安全性を前提に日本経済をどう動かしていくか、国民生活をどう守っていくかという視点はきわめて重要な要素だ」と述べ、原発停止は慎重な対応が必要との考えを明らかにした。
また、福島第一原発の廃炉や使用済み核燃料の取り出し、放射性物質を帯びたがれき処理の費用負担について「政府として担当していかなければ解決できない」と述べ、国費投入も検討する考えを示した。 (朝日)
2011年7月16日土曜日
泊原発が危ない!
泊原発が危ない!
8月
・泊原発3号機:知事が再開容認に理解求める 道議会特別委
定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の営業運転再開をめぐり、北海道議会特別委員会が16日開かれ、高橋はるみ知事は国の原発の安全対策を評価した上で「道の考え方を整理し、国に伝えていきたい」と述べ、運転再開容認への理解を求めた。ただし議会内に慎重論もあり、同日中の正式容認表明は見送った。地元4町村の意向を確認した上で、近く容認表明し、海江田万里経済産業相に伝える方針。 その後、経産省原子力安全・保安院が3号機の最終検査の検査終了証を北電に交付し、営業運転に移行する。東京電力福島第1原発事故以降、原発の営業運転再開は全国で初めてとなる。
高橋知事は、3号機の営業運転再開を認めなければ道内の冬場の電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあることや、地元4町村にも異論がないことなどから再開を容認したとみられる。道議会特別委は、運転再開容認をめぐって各会派と道の調整が続き、審議は休憩をはさみ深夜までもつれた。
3号機は1月に定期検査に入ったが、福島第1原発事故の影響で、北電が4月8日に営業運転再開の延期を発表し、フル出力状態の調整運転が約5カ月間続いていた。 道は7月、経産省に営業運転再開などに関する質問状を提出。同省は8月9日に「営業運転再開は再稼働にはあたらない」などとする回答を出したが、同時に北電に営業運転再開へ向けた最終検査を申請するよう指示し、10日に検査を終えた。このため高橋知事は「地元軽視だ」と反発、海江田経産相は終了証の交付を先送りした。【毎日・高山純二】
・道知事が泊原発3号機再開を容認 営業運転は震災後初
北海道の高橋はるみ知事は16日夜の道議会特別委員会で、定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(泊村)の営業運転再開に向けた政府対応を評価し、事実上再開を容認した。知事は、最終検査に経済産業省原子力安全・保安院だけでなく、原子力安全委員会を関与させた政府対応に関し「二重チェックは評価できる」(???)と述べた。特別委の審議や地元4町村などの意見を踏まえ、海江田万里経産相に再開容認の意向を正式に伝える方針。
特別委は同日夕から約6時間半にわたって休憩。午後10時半ごろ、高橋知事が出席して再開された。知事の答弁内容の調整などに手間取ったとみられる。【共同通信】
・道内研究者50人 泊原発営業運転へ5項目要求
北電泊原発3号機の営業運転再開について、道議会産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会が開かれるのを前に、元道環境審議会会長の吉田文和北大大学院教授(環境経済学)ら道内の研究者50人が15日、緊急声明を発表した。「無条件の営業運転開始は容認できない」として、道と地元4町村が北電と結んでいる安全協定の範囲を周辺自治体に拡大することなど5項目を求めている。 50人は北大や酪農学園大、北海学園大など道内9大学の教授や准教授。この日、吉田教授と干場信司酪農学園大教授(家畜管理学)が道庁で記者会見した。 声明では
《1》安全協定の範囲拡大
《2》泊原発の沖合に存在が指摘されている活断層などについて、第三者機関による調査・検証の実施
《3》2~4年後までに実施するとしている北電による安全性向上対策の前倒し-
などの5項目を営業運転再開の条件とするよう求めている。
会見で吉田教授は「大震災以降、正式な営業運転再開は全国初。泊3号機への対応が今後の前例になる」と強調した。 (北海道新聞)
・道議会どう判断 泊3号機 知事きょう容認
道議会は16日午後、北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開の是非を審議するため、産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会を開く。高橋はるみ知事は運転再開を容認する考えを表明する見通しで、知事の判断に対し、議会側がどのような態度を示すかが焦点となる。
海江田万里経済産業相は、道の判断が示されるまで、営業運転再開を認める検査終了証の交付を見合わせており、知事は地元としての意見集約を急ぐ考えを示している。 道政与党で最大会派の自民党・道民会議は15日、党道連と合同の会合を開いて対応を協議。会派内には、冬の電力確保に不安が生じるとして、3号機の運転停止に否定的な声が強いが、「拙速に判断を求めるのはおかしい」(ベテラン道議)との異論も出ており、知事の容認方針を会派の総意として支持するか不透明な部分も残る。 (北海道新聞)
・泊3号機 知事、16日にも容認表明 営業運転に即日移行
高橋はるみ知事は12日、調整運転中の北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開を容認する考えを16日にも表明する方針を固めた。原子力政策を審議する道議会特別委員会を16日にも開き、委員会での議論と地元町村の意向を踏まえた上で海江田万里経済産業相に道として再開に同意することを伝える。海江田氏はこれを受けて検査終了証を交付、同日中にも3号機は営業運転に移行する。
知事は地元としての意見集約に向け、11日から道議会や泊原発から半径10キロ圏内の後志管内4町村(泊、岩内、共和、神恵内)との協議を開始した。 12日には、道議会との間で産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会を16日か17日に開き、3号機の営業運転再開に対する道としての考え方を説明し、議論する方向で最終調整に入った。(北海道新聞)
・泊原発:3号機再開を先送り 経産相、北海道知事に伝える
北海道電力泊発電所3号機=北海道泊村で2010年7月10日、本社機から小出洋平撮影 調整運転中の北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の営業運転再開について、海江田万里経済産業相が10日夜、北海道の高橋はるみ知事に「知事の判断は大切で、(再開を)待ちたい」と電話で伝えていたことが11日、道への取材で分かった。3号機は10日に経産省原子力安全・保安院の最終検査を終え、11日にも営業運転が再開される見通しだったが、これに伴い先送りされることになった。
道は泊村など地元4町村や道議会の意見を聞き、運転再開の是非を判断する方針。4町村に運転再開に目立った反対意見はなく、3号機の停止で電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあるとみて、道は運転再開を容認するとみられる。 道によると、海江田経産相は10日午後7時ごろ、高橋知事に電話し、道が運転再開の是非を判断するまで検査終了証を交付しない考えを伝えるとともに「(判断を)できるだけ早くまとめてほしい」と求めた。高橋知事は「道としての考え方をできる限り早く集約する」と答えたという。
3号機の運転再開を巡っては海江田経産相が9日、調整運転中の原発の営業運転再開を「再稼働には当たらない」とする政府見解を道に提示。あわせて原子力安全・保安院が北電に最終検査を申請するよう指導した。 この動きに対し、高橋知事は、国が地元の同意を取り付けないまま再開に向けた手続きを進めているとして強く反発していた。
泊原発3号機は1月5日、定期検査に入り運転を停止。3月7日に再起動し、フル出力で調整運転を始めた。福島第1原発事故を受けた緊急安全対策などで最終検査が先送りされ、調整運転が長引いていた。【毎日・高山純二、片平知宏】
・泊3号機運転認めぬよう提訴 住民40人、札幌地裁に
定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(泊村)の営業運転への移行を止めるため、北海道の住民約40人が1日、検査終了証を交付しないよう国に求める訴訟を札幌地裁に起こし、仮処分を同時に申し立てた。 訴状によると、3号機は、長期の全電源喪失を想定していない誤った安全設計審査指針に基づいて設置。電源車の配置などの緊急安全対策も十分ではなく、終了証を交付し、営業運転を認めることは違法だとしている。
原告団の泉かおり代表(54)は提訴後に記者会見し「事故が起きれば被害がどこまで広がるか分からない。営業運転の再開に危機感を覚えている」と述べた。 3号機は1月に定期検査入りして停止。3月に再稼働して調整運転に入った。国の最終検査を受けて終了証が交付されれば営業運転に移る見通しだが、福島第1原発事故後、手続きは進まず、5カ月近くフル稼働での調整運転が続いている。〔共同〕
7月
・泊3号機「再開反対」 札幌市民団体がデモ行進
北電が調整運転を続けている後志管内泊村の泊原発3号機の営業運転再開に反対するデモ行進が24日、札幌市中央区の大通公園周辺で行われた。主催者発表で約200人が参加し、放射能の不安からの解放を訴えた。 札幌の市民団体「Shut泊」「ほっかいどうピースネット」「市民自治を創る会」が主催し、小学生からお年寄りまでが参加。
大通西4を出発した一行は「NO原発」「STOP!再稼働」などと記したプラカードを掲げ、道庁前まで約2キロを「魚や畑、子供を守れ」とシュプレヒコールしながら行進。泊原発全体を停止するよう訴えた。
・泊3号機再開 政府回答見通し立たず 首相と経産省なお溝?
北電が調整運転を続けている泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について、「再稼働に当たらない」との政府の統一見解を求めた高橋はるみ知事の質問書(14日送付)に、政府が回答できないでいる。菅直人首相が最終的に同意していないためとみられ、回答時期の見通しも立っていない。
「官房長官まではクリアしているが、最終的な判断は首相に求めていますので」。22日に札幌市内で開かれた泊原発の環境保全監視協議会。経済産業省原子力安全・保安院の高橋正裕・泊原子力保安検査官事務所長は、首相の同意が得られないことが回答の遅れの理由であることを示唆した。 (北海道新聞)
・北電、民間からの電力購入を検討
北電は22日、泊原発(後志管内泊村)1、2号機の運転停止が長期化した場合の電力不足を回避するため、火力発電所で定期検査の延期を検討していることを発表するとともに、民間の自家発電設備からの電力購入も検討することを明らかにした。 自家発電設備からの電力購入は、民間工場などが持つ3万キロワット程度を見込む。さらに電力需給が逼迫(ひっぱく)した際に大規模工場などに使用抑制を求めて6万キロワット確保するとした。 (北海道新聞)
・保安院、北海道電力泊原発に最終検査促す 通常運転移行にらみ
経済産業省原子力安全・保安院は21日、原子力発電所の新たな安全評価制度の修正案を原子力安全委員会に示し、了承を得た。定期検査で停止中の原発を再稼働するのに必要な「1次評価」で評価項目を拡充するなどした。評価制度が固まったことを受け、保安院は定期検査が終わる直前の「調整運転」を続ける北海道電力泊原発3号機について、最終検査を受けて通常運転に移行するよう北電に改めて求める。
新たな安全評価は地震や津波にどこまで原発が耐えられるかを調べるストレステスト(耐性調査)。再稼働の準備が整った原発を対象に実施する1次評価と、すべての原発を対象にした2次評価の2種類ある。保安院は15日に原案を安全委に示したが、委員から「わかりにくい」などの指摘が出たため修正案をまとめた。
主な修正点は1次評価項目の拡充。原案では地震、津波、全交流電源喪失、最終的な熱の逃がし場の喪失――の4項目だけだったが、「地震と津波の同時発生」と「過酷事故対策の検証」を加えた。東京電力福島第1原発の事故が津波と地震の複合で起きたことを踏まえた。
安全評価の了承を受け、保安院は北電に泊原発の最終検査を受けるよう促す。同原発は「試運転」である調整運転を通常の4倍の4カ月続けており、検査なしで運転する不自然な状態を解消する狙い。地元の北海道は泊原発と安全評価の関係などを問い合わせており、保安院は道に回答して通常運転移行への理解を求める。北電は早ければ22日にも最終検査を申請する可能性がある。(日経)
・泊3号機運転再開 政府の文書回答不可欠 高橋知事が強調
高橋はるみ知事は20日、道東京事務所で記者会見し、北電が調整運転を続ける泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について「道からの質問に対する回答を政府の統一見解としてもらった後、頭の整理がスタートする」と述べ、政府から文書による回答がない限り、再開の可否を判断しないとの考えをあらためて強調した。 道は3号機の営業運転再開が「再稼働」に当たるか否かの説明を求める質問書を、海江田万里経済産業相に送っている。
枝野幸男官房長官は20日午前の記者会見で、3号機は「現に稼働中の状態」と述べ、運転再開は再稼働に当たらないとの認識を示した。現在も営業運転中の2号機と同じ扱いになり、理屈の上では知事の政治判断が必要なくなる。
・泊原発3号機 営業運転中止を 市民団体が北電に要請
道内18の市民団体でつくる、脱原発・クリーンエネルギー市民の会(事務局・北海道平和運動フォーラム)は19日、調整運転が続いている北電泊原発(後志管内泊村)3号機について、営業運転を再開しないよう北電に申し入れた。 同会は、
《1》営業運転再開に向けた国への最終検査申請を取りやめ、調整運転を中止する
《2》定期検査のため停止中の1号機の運転再開断念-を求めた。これに対し、北電の担当者は「国から最終検査を受けるよう指導があり、営業運転に向けた審査を申請したい」と答えた。
一方、脱原発社会の実現を求める札幌の市民団体は19日、札幌市中央区の大通公園で街頭活動を行い、3号機の営業運転再開反対を訴えた。ほっかいどうピースネット(札幌)とShut泊(同)などが初めて企画。Shut泊の泉かおり代表は演説で「福島の原発と同じことが泊原発で起こる可能性はだれも否定できない。道には道民の不安を受け止めてほしい」と述べ、ビラを配った。24日午後1時半からは札幌市内でデモ行進を行う。(北海道新聞)
・・
・泊3号機 再開第1号の可能性も 知事の判断時期に影響か
福井県の大飯原発1号機のトラブルを受け、道は16日、北電に対し、同原発と同様に試験運転を続けている泊原発3号機について、安全確認を徹底して運転するよう要請した。 道原子力安全対策課によると、同日午前、福井県からトラブル発生の連絡があった。
泊原発3号機は3月7日から、試験運転を行っている。大飯原発が今回のトラブルで国への最終検査申請を見合わせることになったため、泊原発3号機は最終検査で異常がなければ、全国の定期検査中の原発で東日本大震災後初の営業運転再開に単独で入る可能性が出てきた。
・泊3号機営業運転 知事容認の方向
高橋はるみ知事は15日の定例記者会見で、北電が試験運転を続けている泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について、「道知事として、道民生活や産業活動を支える意味で、電力の安定供給を確保する責務がある」と述べ、容認する方向で検討していることを明らかにした。ただ、営業運転再開が「再稼働」に当たるか否かについて、政府から「納得できる回答」を得られることが容認の条件になるとの考えを強調した。(北海道新聞)
・道が経産相に質問書を送付 北電泊原発3号機の営業運転再開で
道は14日、試験運転中の北電泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について「再稼働」に当たるか否かなどの明確な説明を政府に求める質問書を、海江田万里経済産業相宛てに送付した。 道は、回答がなければ営業運転再開への対応を決めない方針。ただ、国からの回答時期は未定で、回答が遅れれば道の態度決定もずれ込む可能性がある。 (北海道新聞)
・10月までに北電提訴 「泊廃炉をめざす会」が札幌に発足(北海道新聞 映像あり)
・泊原発 「廃炉をめざす会」発足
■10月末めど提訴へ
■札幌市長がメッセージ
北海道電力泊原発(泊村)の「廃炉をめざす会」が7日夜、札幌市内で発足した。同会を母体とする千人規模の原告団を組織して、「再稼働のない完全廃炉」を北電に求めて、10月末をめどに札幌地裁に提訴することを決めた。 同市内で開かれた発足集会には、定員を大幅に超える300人の市民が参加した。準備会の市川守弘弁護士が訴訟の手続きを説明。代表委員に小野有五・北大名誉教授(地球環境学)、建築史家の常田(ときた)益代さん、市川弁護士を選んだ。 同会は今後、青森県の大間原発の建設差し止め訴訟の原告団や全国の脱原発訴訟の弁護団とも協力し、歩調を合わせながら提訴の準備を進めるとともに、訴訟以外の集会や学習会の開催、署名などによる運動の展開で「原発のない社会」をめざすという。
小野・名誉教授は冒頭、東京電力福島第一原発の事故について「東電と政府は、原発は『安全』だと言ってきたが、ことごとくうそだった」と指摘。「今こそ泊原発を止めなければいけない」と訴えた。 集会には、ウランとプルトニウムの混合燃料を原子炉で燃やすプルサーマル計画の泊原発での実施に反対している上田文雄・札幌市長も「原発問題を正しく判断するのに必要な情報を、多くの市民が幅広く共有する運動に発展することを期待します」とメッセージを寄せた。 同会では、1口千円で幅広く会費やカンパを集め、訴訟費用や運動費用を賄う。(朝日・小林舞子)
・原発、検査中なのにフル稼働 泊・大飯、手続き先送り
定期検査中の原発の運転再開が遅れている問題で、北海道電力の泊原発3号機(北海道)と関西電力の大飯(おおい)原発1号機(福井県)が、定検終了直前の「調整運転」を4カ月近く続けている。フル稼働で送電しており営業運転と同じだが、国と電力会社、立地自治体が安全評価の責任を押し付け合い、定検中のまま手続きの先送りを3カ月近く続ける異例の事態になっている。
両機が13カ月に1度の定検に入ったのは、昨年12月から今年1月。約50項目の検査を終え、泊3号機は3月7日、大飯1号機は3月10日と、いずれも大震災直前に原子炉を起動し、調整運転に入っていた。 調整運転は通常、約1カ月行われる。徐々に出力を上げ、フル稼働時点で、経済産業省原子力安全・保安院から、正常に作動しているかを最終チェックする総合負荷性能検査を受ける。 両機とも4月上旬に営業運転に移る予定だったが、震災と原発事故で状況は一変した。保安院は3月と先月、緊急の安全対策を指示。海江田万里経済産業相は先月18日、両機を含む原発について「対策は適切」と再開を認めた。 だが北海道電と関電はその後も最終検査を受けず、営業運転に踏み切らない。理由については両社とも「地元自治体の理解が得られていないので……」(???)と歯切れが悪い。(朝日)
・・
・試運転中の2原発、月内にも通常運転移行 保安院要求
定期検査が終わる直前の「調整運転」の段階にある関西電力、北海道電力管轄下の2つの原子力発電所を通常の営業運転に移す方向で、関係者の調整が始まった。経済産業省原子力安全・保安院が2電力に対し、通常運転の前提となる最終検査の申請をするように求めた。2電力も検査を受ける方向で準備に入った。定期検査中で停止している原発の再稼働問題とは区別する考えだが、首相官邸との溝が拡大する可能性もある。
対象となるのは、北電泊3号機と関電大飯1号機。いずれも3月11日の東日本大震災の直前に、地元自治体の確認を受けた上で、原子炉を再起動し、調整運転に入った。 調整運転は通常の営業運転に入る前の「試運転」。通常は1カ月程度で、その間に安定運転が可能か調べる最終検査(総合負荷性能試験)を受け、合格すれば営業運転に移る仕組みだ。
■調整運転すでに4ヵ月
福島原発事故の影響で、最終検査が遅れ、両原発の調整運転は4カ月間に及んでいる。 試運転といっても、現実には、再稼働後の原発と同じように、原子炉はフル稼働し、電力も供給している。最終チェックを受けずに運転が長期化している点について、保安院の森山善範原子力災害対策監は12日の記者会見で「法令上、問題になる可能性がある」と指摘。2電力に対し、最終検査の申請を求めていることを明らかにした。検査を受けられるのに受けない場合、電力会社は電気事業法上、検査忌避とされる可能性がある。
保安院は最終検査を通れば定期検査を終了し、2原発の通常運転を認めることに問題はないという立場。保安院は週内に最終検査の申請をするよう打診している。申請があれば、最終検査は数日程度で終わるとみられ、月内にも通常運転に移行する見通し。次の定期検査を来年5月までに実施する方向で調整する。
■2社が申請準備
菅直人首相は定期検査中で停止している原発の再稼働に難色を示している。ただ、保安院は今回の2原発は検査が最終段階にあり、原子炉を起動しているため、ほかの原発の再稼働問題とは区別する考え。 関電の大飯1号機の出力は117.5万キロワットある。関電の電力供給の3%強を占め、夏場の供給計画にも織り込んでいるため、仮に停止となると影響は大きい。このため、関電の幹部は12日、「最終検査の準備を進めたい」と語った。北海道電力も12日、検査の申請準備に入ったことを明らかにした。
一方、原発立地自治体は、今回の判断とは距離を置いている。 関電によれば、大飯原発の通常運転移行について福井県から「国と事業者が判断するもの」という回答を得たという。国と関電の判断を容認する姿勢を示したものだが、積極的な同意は見送る。 北海道は国に対し「中部電力浜岡原発と泊原発の違いを説明してほしい」と要請中。高橋はるみ知事は原発の通常運転の可否について「(考えを述べるのは)難しい」と、判断を留保している。(日経)
・脱原発 高橋知事、評価避ける 岩内町長「納得しなければ」
菅直人首相が13日の記者会見で、「脱原発」社会を目指す方針を表明したことに、北電泊原発(後志管内泊村)を抱える道内の自治体などからは、評価や戸惑いの声が上がった。
高橋はるみ知事は同日、首相会見を受けてコメントを発表したが、「電力の安定供給は道民生活や産業活動に必要不可欠であり、新エネルギーの導入などによる多様な電源構成を図っていく必要がある」などとし、脱原発には明言を避けた。
泊原発から30キロ圏内にある後志管内倶知安町の福島世二町長は「電力供給の問題があるのでいっぺんに脱原発にはならないだろう」としながら「原発に代わるエネルギー確保にメドがつくなら、3年、5年先に脱原発社会を目指すのは評価できる」と述べた。 泊原発の地元4町村の一つ、同管内岩内町の上岡雄司町長は「国が原発が危ないものと判断した結果であれば、地元としても納得しないといけない」としたが、「原発をなくしていくとなれば、既存の泊原発にも今後、何らかの影響が出てくるのではないか」と述べ、見えない先行きに懸念も示した。(北海道新聞 7/14)
・北電、泊3号機営業運転再開へ 地元自治体に説明開始
北海道電力は泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開に向け、13日までに道や地元4町村などに対する説明を開始した。関係自治体の理解を得て、なるべく早く営業運転を再開したい考え。泊3号機と同様に試験運転中の関西電力大飯原発(福井県)1号機とともに、東日本大震災後、全国の定期検査中の原発で初めて営業運転に移行する可能性が出てきた。 (北海道新聞)
↓
高橋知事は、少なくとも「ストレステスト」の実施とその結果が判明するまで、という条件の下に、泊3号機の営業再開にストップをかけることができるし、そうすべきだろう。「地元4町村」の首長たちにしても同じである。
・泊最終検査 道民の理解得られるか(北海道新聞・社説より抜粋)
◇ 「道民の不安を解消することが最優先である以上、3号機をいったん停止させ、さまざまな安全審査を待つことも選択肢の一つになるのではないか。 最終検査は、原発の設備の状態をデータで確認する程度の形式的なものにすぎない。 中ぶらりんの状態は解消すべきだが、それを出来レースのような手続きで済ませるのは誠実なやり方とは言えまい。 ・・・北電は、道民の議論の材料として、道内企業の自家発電設備も含めた電力供給能力、必要な節電の程度など詳細なデータを公開すべきだ 」
◇ 「これまで試験運転の継続を放置してきた保安院が、検査忌避の疑いまで持ち出して、北電に検査申請を促すのは奇妙だ。 経産省は停止中の原発の運転再開を急いでいた。その突破口として期待していた玄海原発の再稼働が暗礁に乗り上げた直後である。 泊3号機を、福島の事故後に定期検査から営業運転を再開する最初の原発と位置づけ、再稼働に弾みをつける意図があるとしたら、国民軽視もはなはだしい」
⇒北海道新聞・「東日本大震災・福島原発事故」関連ニュース
8月
・泊原発3号機:知事が再開容認に理解求める 道議会特別委
定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の営業運転再開をめぐり、北海道議会特別委員会が16日開かれ、高橋はるみ知事は国の原発の安全対策を評価した上で「道の考え方を整理し、国に伝えていきたい」と述べ、運転再開容認への理解を求めた。ただし議会内に慎重論もあり、同日中の正式容認表明は見送った。地元4町村の意向を確認した上で、近く容認表明し、海江田万里経済産業相に伝える方針。 その後、経産省原子力安全・保安院が3号機の最終検査の検査終了証を北電に交付し、営業運転に移行する。東京電力福島第1原発事故以降、原発の営業運転再開は全国で初めてとなる。
高橋知事は、3号機の営業運転再開を認めなければ道内の冬場の電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあることや、地元4町村にも異論がないことなどから再開を容認したとみられる。道議会特別委は、運転再開容認をめぐって各会派と道の調整が続き、審議は休憩をはさみ深夜までもつれた。
3号機は1月に定期検査に入ったが、福島第1原発事故の影響で、北電が4月8日に営業運転再開の延期を発表し、フル出力状態の調整運転が約5カ月間続いていた。 道は7月、経産省に営業運転再開などに関する質問状を提出。同省は8月9日に「営業運転再開は再稼働にはあたらない」などとする回答を出したが、同時に北電に営業運転再開へ向けた最終検査を申請するよう指示し、10日に検査を終えた。このため高橋知事は「地元軽視だ」と反発、海江田経産相は終了証の交付を先送りした。【毎日・高山純二】
・道知事が泊原発3号機再開を容認 営業運転は震災後初
北海道の高橋はるみ知事は16日夜の道議会特別委員会で、定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(泊村)の営業運転再開に向けた政府対応を評価し、事実上再開を容認した。知事は、最終検査に経済産業省原子力安全・保安院だけでなく、原子力安全委員会を関与させた政府対応に関し「二重チェックは評価できる」(???)と述べた。特別委の審議や地元4町村などの意見を踏まえ、海江田万里経産相に再開容認の意向を正式に伝える方針。
特別委は同日夕から約6時間半にわたって休憩。午後10時半ごろ、高橋知事が出席して再開された。知事の答弁内容の調整などに手間取ったとみられる。【共同通信】
・道内研究者50人 泊原発営業運転へ5項目要求
北電泊原発3号機の営業運転再開について、道議会産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会が開かれるのを前に、元道環境審議会会長の吉田文和北大大学院教授(環境経済学)ら道内の研究者50人が15日、緊急声明を発表した。「無条件の営業運転開始は容認できない」として、道と地元4町村が北電と結んでいる安全協定の範囲を周辺自治体に拡大することなど5項目を求めている。 50人は北大や酪農学園大、北海学園大など道内9大学の教授や准教授。この日、吉田教授と干場信司酪農学園大教授(家畜管理学)が道庁で記者会見した。 声明では
《1》安全協定の範囲拡大
《2》泊原発の沖合に存在が指摘されている活断層などについて、第三者機関による調査・検証の実施
《3》2~4年後までに実施するとしている北電による安全性向上対策の前倒し-
などの5項目を営業運転再開の条件とするよう求めている。
会見で吉田教授は「大震災以降、正式な営業運転再開は全国初。泊3号機への対応が今後の前例になる」と強調した。 (北海道新聞)
・道議会どう判断 泊3号機 知事きょう容認
道議会は16日午後、北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開の是非を審議するため、産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会を開く。高橋はるみ知事は運転再開を容認する考えを表明する見通しで、知事の判断に対し、議会側がどのような態度を示すかが焦点となる。
海江田万里経済産業相は、道の判断が示されるまで、営業運転再開を認める検査終了証の交付を見合わせており、知事は地元としての意見集約を急ぐ考えを示している。 道政与党で最大会派の自民党・道民会議は15日、党道連と合同の会合を開いて対応を協議。会派内には、冬の電力確保に不安が生じるとして、3号機の運転停止に否定的な声が強いが、「拙速に判断を求めるのはおかしい」(ベテラン道議)との異論も出ており、知事の容認方針を会派の総意として支持するか不透明な部分も残る。 (北海道新聞)
・泊3号機 知事、16日にも容認表明 営業運転に即日移行
高橋はるみ知事は12日、調整運転中の北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開を容認する考えを16日にも表明する方針を固めた。原子力政策を審議する道議会特別委員会を16日にも開き、委員会での議論と地元町村の意向を踏まえた上で海江田万里経済産業相に道として再開に同意することを伝える。海江田氏はこれを受けて検査終了証を交付、同日中にも3号機は営業運転に移行する。
知事は地元としての意見集約に向け、11日から道議会や泊原発から半径10キロ圏内の後志管内4町村(泊、岩内、共和、神恵内)との協議を開始した。 12日には、道議会との間で産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会を16日か17日に開き、3号機の営業運転再開に対する道としての考え方を説明し、議論する方向で最終調整に入った。(北海道新聞)
・泊原発:3号機再開を先送り 経産相、北海道知事に伝える
北海道電力泊発電所3号機=北海道泊村で2010年7月10日、本社機から小出洋平撮影 調整運転中の北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)の営業運転再開について、海江田万里経済産業相が10日夜、北海道の高橋はるみ知事に「知事の判断は大切で、(再開を)待ちたい」と電話で伝えていたことが11日、道への取材で分かった。3号機は10日に経産省原子力安全・保安院の最終検査を終え、11日にも営業運転が再開される見通しだったが、これに伴い先送りされることになった。
道は泊村など地元4町村や道議会の意見を聞き、運転再開の是非を判断する方針。4町村に運転再開に目立った反対意見はなく、3号機の停止で電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れがあるとみて、道は運転再開を容認するとみられる。 道によると、海江田経産相は10日午後7時ごろ、高橋知事に電話し、道が運転再開の是非を判断するまで検査終了証を交付しない考えを伝えるとともに「(判断を)できるだけ早くまとめてほしい」と求めた。高橋知事は「道としての考え方をできる限り早く集約する」と答えたという。
3号機の運転再開を巡っては海江田経産相が9日、調整運転中の原発の営業運転再開を「再稼働には当たらない」とする政府見解を道に提示。あわせて原子力安全・保安院が北電に最終検査を申請するよう指導した。 この動きに対し、高橋知事は、国が地元の同意を取り付けないまま再開に向けた手続きを進めているとして強く反発していた。
泊原発3号機は1月5日、定期検査に入り運転を停止。3月7日に再起動し、フル出力で調整運転を始めた。福島第1原発事故を受けた緊急安全対策などで最終検査が先送りされ、調整運転が長引いていた。【毎日・高山純二、片平知宏】
・泊3号機運転認めぬよう提訴 住民40人、札幌地裁に
定期検査で調整運転中の北海道電力泊原発3号機(泊村)の営業運転への移行を止めるため、北海道の住民約40人が1日、検査終了証を交付しないよう国に求める訴訟を札幌地裁に起こし、仮処分を同時に申し立てた。 訴状によると、3号機は、長期の全電源喪失を想定していない誤った安全設計審査指針に基づいて設置。電源車の配置などの緊急安全対策も十分ではなく、終了証を交付し、営業運転を認めることは違法だとしている。
原告団の泉かおり代表(54)は提訴後に記者会見し「事故が起きれば被害がどこまで広がるか分からない。営業運転の再開に危機感を覚えている」と述べた。 3号機は1月に定期検査入りして停止。3月に再稼働して調整運転に入った。国の最終検査を受けて終了証が交付されれば営業運転に移る見通しだが、福島第1原発事故後、手続きは進まず、5カ月近くフル稼働での調整運転が続いている。〔共同〕
7月
・泊3号機「再開反対」 札幌市民団体がデモ行進
北電が調整運転を続けている後志管内泊村の泊原発3号機の営業運転再開に反対するデモ行進が24日、札幌市中央区の大通公園周辺で行われた。主催者発表で約200人が参加し、放射能の不安からの解放を訴えた。 札幌の市民団体「Shut泊」「ほっかいどうピースネット」「市民自治を創る会」が主催し、小学生からお年寄りまでが参加。
大通西4を出発した一行は「NO原発」「STOP!再稼働」などと記したプラカードを掲げ、道庁前まで約2キロを「魚や畑、子供を守れ」とシュプレヒコールしながら行進。泊原発全体を停止するよう訴えた。
・泊3号機再開 政府回答見通し立たず 首相と経産省なお溝?
北電が調整運転を続けている泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について、「再稼働に当たらない」との政府の統一見解を求めた高橋はるみ知事の質問書(14日送付)に、政府が回答できないでいる。菅直人首相が最終的に同意していないためとみられ、回答時期の見通しも立っていない。
「官房長官まではクリアしているが、最終的な判断は首相に求めていますので」。22日に札幌市内で開かれた泊原発の環境保全監視協議会。経済産業省原子力安全・保安院の高橋正裕・泊原子力保安検査官事務所長は、首相の同意が得られないことが回答の遅れの理由であることを示唆した。 (北海道新聞)
・北電、民間からの電力購入を検討
北電は22日、泊原発(後志管内泊村)1、2号機の運転停止が長期化した場合の電力不足を回避するため、火力発電所で定期検査の延期を検討していることを発表するとともに、民間の自家発電設備からの電力購入も検討することを明らかにした。 自家発電設備からの電力購入は、民間工場などが持つ3万キロワット程度を見込む。さらに電力需給が逼迫(ひっぱく)した際に大規模工場などに使用抑制を求めて6万キロワット確保するとした。 (北海道新聞)
・保安院、北海道電力泊原発に最終検査促す 通常運転移行にらみ
経済産業省原子力安全・保安院は21日、原子力発電所の新たな安全評価制度の修正案を原子力安全委員会に示し、了承を得た。定期検査で停止中の原発を再稼働するのに必要な「1次評価」で評価項目を拡充するなどした。評価制度が固まったことを受け、保安院は定期検査が終わる直前の「調整運転」を続ける北海道電力泊原発3号機について、最終検査を受けて通常運転に移行するよう北電に改めて求める。
新たな安全評価は地震や津波にどこまで原発が耐えられるかを調べるストレステスト(耐性調査)。再稼働の準備が整った原発を対象に実施する1次評価と、すべての原発を対象にした2次評価の2種類ある。保安院は15日に原案を安全委に示したが、委員から「わかりにくい」などの指摘が出たため修正案をまとめた。
主な修正点は1次評価項目の拡充。原案では地震、津波、全交流電源喪失、最終的な熱の逃がし場の喪失――の4項目だけだったが、「地震と津波の同時発生」と「過酷事故対策の検証」を加えた。東京電力福島第1原発の事故が津波と地震の複合で起きたことを踏まえた。
安全評価の了承を受け、保安院は北電に泊原発の最終検査を受けるよう促す。同原発は「試運転」である調整運転を通常の4倍の4カ月続けており、検査なしで運転する不自然な状態を解消する狙い。地元の北海道は泊原発と安全評価の関係などを問い合わせており、保安院は道に回答して通常運転移行への理解を求める。北電は早ければ22日にも最終検査を申請する可能性がある。(日経)
・泊3号機運転再開 政府の文書回答不可欠 高橋知事が強調
高橋はるみ知事は20日、道東京事務所で記者会見し、北電が調整運転を続ける泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について「道からの質問に対する回答を政府の統一見解としてもらった後、頭の整理がスタートする」と述べ、政府から文書による回答がない限り、再開の可否を判断しないとの考えをあらためて強調した。 道は3号機の営業運転再開が「再稼働」に当たるか否かの説明を求める質問書を、海江田万里経済産業相に送っている。
枝野幸男官房長官は20日午前の記者会見で、3号機は「現に稼働中の状態」と述べ、運転再開は再稼働に当たらないとの認識を示した。現在も営業運転中の2号機と同じ扱いになり、理屈の上では知事の政治判断が必要なくなる。
・泊原発3号機 営業運転中止を 市民団体が北電に要請
道内18の市民団体でつくる、脱原発・クリーンエネルギー市民の会(事務局・北海道平和運動フォーラム)は19日、調整運転が続いている北電泊原発(後志管内泊村)3号機について、営業運転を再開しないよう北電に申し入れた。 同会は、
《1》営業運転再開に向けた国への最終検査申請を取りやめ、調整運転を中止する
《2》定期検査のため停止中の1号機の運転再開断念-を求めた。これに対し、北電の担当者は「国から最終検査を受けるよう指導があり、営業運転に向けた審査を申請したい」と答えた。
一方、脱原発社会の実現を求める札幌の市民団体は19日、札幌市中央区の大通公園で街頭活動を行い、3号機の営業運転再開反対を訴えた。ほっかいどうピースネット(札幌)とShut泊(同)などが初めて企画。Shut泊の泉かおり代表は演説で「福島の原発と同じことが泊原発で起こる可能性はだれも否定できない。道には道民の不安を受け止めてほしい」と述べ、ビラを配った。24日午後1時半からは札幌市内でデモ行進を行う。(北海道新聞)
・・
・泊3号機 再開第1号の可能性も 知事の判断時期に影響か
福井県の大飯原発1号機のトラブルを受け、道は16日、北電に対し、同原発と同様に試験運転を続けている泊原発3号機について、安全確認を徹底して運転するよう要請した。 道原子力安全対策課によると、同日午前、福井県からトラブル発生の連絡があった。
泊原発3号機は3月7日から、試験運転を行っている。大飯原発が今回のトラブルで国への最終検査申請を見合わせることになったため、泊原発3号機は最終検査で異常がなければ、全国の定期検査中の原発で東日本大震災後初の営業運転再開に単独で入る可能性が出てきた。
・泊3号機営業運転 知事容認の方向
高橋はるみ知事は15日の定例記者会見で、北電が試験運転を続けている泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について、「道知事として、道民生活や産業活動を支える意味で、電力の安定供給を確保する責務がある」と述べ、容認する方向で検討していることを明らかにした。ただ、営業運転再開が「再稼働」に当たるか否かについて、政府から「納得できる回答」を得られることが容認の条件になるとの考えを強調した。(北海道新聞)
・道が経産相に質問書を送付 北電泊原発3号機の営業運転再開で
道は14日、試験運転中の北電泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について「再稼働」に当たるか否かなどの明確な説明を政府に求める質問書を、海江田万里経済産業相宛てに送付した。 道は、回答がなければ営業運転再開への対応を決めない方針。ただ、国からの回答時期は未定で、回答が遅れれば道の態度決定もずれ込む可能性がある。 (北海道新聞)
・10月までに北電提訴 「泊廃炉をめざす会」が札幌に発足(北海道新聞 映像あり)
・泊原発 「廃炉をめざす会」発足
■10月末めど提訴へ
■札幌市長がメッセージ
北海道電力泊原発(泊村)の「廃炉をめざす会」が7日夜、札幌市内で発足した。同会を母体とする千人規模の原告団を組織して、「再稼働のない完全廃炉」を北電に求めて、10月末をめどに札幌地裁に提訴することを決めた。 同市内で開かれた発足集会には、定員を大幅に超える300人の市民が参加した。準備会の市川守弘弁護士が訴訟の手続きを説明。代表委員に小野有五・北大名誉教授(地球環境学)、建築史家の常田(ときた)益代さん、市川弁護士を選んだ。 同会は今後、青森県の大間原発の建設差し止め訴訟の原告団や全国の脱原発訴訟の弁護団とも協力し、歩調を合わせながら提訴の準備を進めるとともに、訴訟以外の集会や学習会の開催、署名などによる運動の展開で「原発のない社会」をめざすという。
小野・名誉教授は冒頭、東京電力福島第一原発の事故について「東電と政府は、原発は『安全』だと言ってきたが、ことごとくうそだった」と指摘。「今こそ泊原発を止めなければいけない」と訴えた。 集会には、ウランとプルトニウムの混合燃料を原子炉で燃やすプルサーマル計画の泊原発での実施に反対している上田文雄・札幌市長も「原発問題を正しく判断するのに必要な情報を、多くの市民が幅広く共有する運動に発展することを期待します」とメッセージを寄せた。 同会では、1口千円で幅広く会費やカンパを集め、訴訟費用や運動費用を賄う。(朝日・小林舞子)
・原発、検査中なのにフル稼働 泊・大飯、手続き先送り
定期検査中の原発の運転再開が遅れている問題で、北海道電力の泊原発3号機(北海道)と関西電力の大飯(おおい)原発1号機(福井県)が、定検終了直前の「調整運転」を4カ月近く続けている。フル稼働で送電しており営業運転と同じだが、国と電力会社、立地自治体が安全評価の責任を押し付け合い、定検中のまま手続きの先送りを3カ月近く続ける異例の事態になっている。
両機が13カ月に1度の定検に入ったのは、昨年12月から今年1月。約50項目の検査を終え、泊3号機は3月7日、大飯1号機は3月10日と、いずれも大震災直前に原子炉を起動し、調整運転に入っていた。 調整運転は通常、約1カ月行われる。徐々に出力を上げ、フル稼働時点で、経済産業省原子力安全・保安院から、正常に作動しているかを最終チェックする総合負荷性能検査を受ける。 両機とも4月上旬に営業運転に移る予定だったが、震災と原発事故で状況は一変した。保安院は3月と先月、緊急の安全対策を指示。海江田万里経済産業相は先月18日、両機を含む原発について「対策は適切」と再開を認めた。 だが北海道電と関電はその後も最終検査を受けず、営業運転に踏み切らない。理由については両社とも「地元自治体の理解が得られていないので……」(???)と歯切れが悪い。(朝日)
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・試運転中の2原発、月内にも通常運転移行 保安院要求
定期検査が終わる直前の「調整運転」の段階にある関西電力、北海道電力管轄下の2つの原子力発電所を通常の営業運転に移す方向で、関係者の調整が始まった。経済産業省原子力安全・保安院が2電力に対し、通常運転の前提となる最終検査の申請をするように求めた。2電力も検査を受ける方向で準備に入った。定期検査中で停止している原発の再稼働問題とは区別する考えだが、首相官邸との溝が拡大する可能性もある。
対象となるのは、北電泊3号機と関電大飯1号機。いずれも3月11日の東日本大震災の直前に、地元自治体の確認を受けた上で、原子炉を再起動し、調整運転に入った。 調整運転は通常の営業運転に入る前の「試運転」。通常は1カ月程度で、その間に安定運転が可能か調べる最終検査(総合負荷性能試験)を受け、合格すれば営業運転に移る仕組みだ。
■調整運転すでに4ヵ月
福島原発事故の影響で、最終検査が遅れ、両原発の調整運転は4カ月間に及んでいる。 試運転といっても、現実には、再稼働後の原発と同じように、原子炉はフル稼働し、電力も供給している。最終チェックを受けずに運転が長期化している点について、保安院の森山善範原子力災害対策監は12日の記者会見で「法令上、問題になる可能性がある」と指摘。2電力に対し、最終検査の申請を求めていることを明らかにした。検査を受けられるのに受けない場合、電力会社は電気事業法上、検査忌避とされる可能性がある。
保安院は最終検査を通れば定期検査を終了し、2原発の通常運転を認めることに問題はないという立場。保安院は週内に最終検査の申請をするよう打診している。申請があれば、最終検査は数日程度で終わるとみられ、月内にも通常運転に移行する見通し。次の定期検査を来年5月までに実施する方向で調整する。
■2社が申請準備
菅直人首相は定期検査中で停止している原発の再稼働に難色を示している。ただ、保安院は今回の2原発は検査が最終段階にあり、原子炉を起動しているため、ほかの原発の再稼働問題とは区別する考え。 関電の大飯1号機の出力は117.5万キロワットある。関電の電力供給の3%強を占め、夏場の供給計画にも織り込んでいるため、仮に停止となると影響は大きい。このため、関電の幹部は12日、「最終検査の準備を進めたい」と語った。北海道電力も12日、検査の申請準備に入ったことを明らかにした。
一方、原発立地自治体は、今回の判断とは距離を置いている。 関電によれば、大飯原発の通常運転移行について福井県から「国と事業者が判断するもの」という回答を得たという。国と関電の判断を容認する姿勢を示したものだが、積極的な同意は見送る。 北海道は国に対し「中部電力浜岡原発と泊原発の違いを説明してほしい」と要請中。高橋はるみ知事は原発の通常運転の可否について「(考えを述べるのは)難しい」と、判断を留保している。(日経)
・脱原発 高橋知事、評価避ける 岩内町長「納得しなければ」
菅直人首相が13日の記者会見で、「脱原発」社会を目指す方針を表明したことに、北電泊原発(後志管内泊村)を抱える道内の自治体などからは、評価や戸惑いの声が上がった。
高橋はるみ知事は同日、首相会見を受けてコメントを発表したが、「電力の安定供給は道民生活や産業活動に必要不可欠であり、新エネルギーの導入などによる多様な電源構成を図っていく必要がある」などとし、脱原発には明言を避けた。
泊原発から30キロ圏内にある後志管内倶知安町の福島世二町長は「電力供給の問題があるのでいっぺんに脱原発にはならないだろう」としながら「原発に代わるエネルギー確保にメドがつくなら、3年、5年先に脱原発社会を目指すのは評価できる」と述べた。 泊原発の地元4町村の一つ、同管内岩内町の上岡雄司町長は「国が原発が危ないものと判断した結果であれば、地元としても納得しないといけない」としたが、「原発をなくしていくとなれば、既存の泊原発にも今後、何らかの影響が出てくるのではないか」と述べ、見えない先行きに懸念も示した。(北海道新聞 7/14)
・北電、泊3号機営業運転再開へ 地元自治体に説明開始
北海道電力は泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開に向け、13日までに道や地元4町村などに対する説明を開始した。関係自治体の理解を得て、なるべく早く営業運転を再開したい考え。泊3号機と同様に試験運転中の関西電力大飯原発(福井県)1号機とともに、東日本大震災後、全国の定期検査中の原発で初めて営業運転に移行する可能性が出てきた。 (北海道新聞)
↓
高橋知事は、少なくとも「ストレステスト」の実施とその結果が判明するまで、という条件の下に、泊3号機の営業再開にストップをかけることができるし、そうすべきだろう。「地元4町村」の首長たちにしても同じである。
・泊最終検査 道民の理解得られるか(北海道新聞・社説より抜粋)
◇ 「道民の不安を解消することが最優先である以上、3号機をいったん停止させ、さまざまな安全審査を待つことも選択肢の一つになるのではないか。 最終検査は、原発の設備の状態をデータで確認する程度の形式的なものにすぎない。 中ぶらりんの状態は解消すべきだが、それを出来レースのような手続きで済ませるのは誠実なやり方とは言えまい。 ・・・北電は、道民の議論の材料として、道内企業の自家発電設備も含めた電力供給能力、必要な節電の程度など詳細なデータを公開すべきだ 」
◇ 「これまで試験運転の継続を放置してきた保安院が、検査忌避の疑いまで持ち出して、北電に検査申請を促すのは奇妙だ。 経産省は停止中の原発の運転再開を急いでいた。その突破口として期待していた玄海原発の再稼働が暗礁に乗り上げた直後である。 泊3号機を、福島の事故後に定期検査から営業運転を再開する最初の原発と位置づけ、再稼働に弾みをつける意図があるとしたら、国民軽視もはなはだしい」
⇒北海道新聞・「東日本大震災・福島原発事故」関連ニュース
2011年7月15日金曜日
〈脱原発〉新党と新しい政治のネットワーキングは可能か
〈脱原発〉新党と新しい政治のネットワーキングは可能か
1
昨日の時事通信の世論調査の結果は、かなり衝撃的だった。
日本という国が、支持率10%の政党を与党とする、支持率12.5%の内閣によって運営されていることが明白になったからだ。10%と12.5%。どうやらこれが日本の「民主主義」のリアリティであるらしい。
考えてみれば、「3.11」から4ヶ月余り、日本の政治的現実は、福島第一原発災害の収束が見えないのと同じような、ほとんど収束不能の危機に陥ってしまったのではないだろうか。
菅直人という一国会議員が、いつまで首相の座に居座ろうとしているのかは分からない。しかしとにかく、この人物が辞めるまで、日本は有権者10人の内、わずか1人にしかに支持されない内閣によって国の政治が運営されるのである。しかも首相の顔が変わったとしても、支持率10%の民主党が政権の座にある限り、政治の危機が「冷温停止」するなどということもありえないだろう。10年前の森内閣の時より、危機はかなり深刻である。
こうした日本の政治の危機という観点からみれば、一昨日の菅首相の「脱原発依存社会」宣言を、上のような政治的現実から切り離して「絶賛」(社民党党首)したり、肯定的に評価する(一部の知事、朝日、毎日その他の新聞の社説など)ことがありえないことも、はっきりするのではないか。
首相が何を言おうと、圧倒的大多数の有権者、「国民」は聞く耳を持たないのだ。とにかく早く辞めてくれ、you go out!と叫んでいるのだから。「「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?」もクソもない、ということになる。
・・
・閣僚から脱原発批判 首相「私的な思い」
中野寛成国家公安委員長は15日午前の閣僚懇談会で、菅直人首相が「脱原発」を打ち出したことについて「首相の発言が混乱を招いている。閣僚はそういう話を聞いたことがない」と批判、原発問題に関する閣僚懇の開催を求めた。首相は「私的な思いを述べた」(!!!)と釈明。枝野幸男官房長官は、来週前半に閣僚懇を開く考えを示した。 これに関連し、野田佳彦財務相は記者会見で「短兵急に進める話ではない。政府としてこれから丁寧に議論しなければならない」と述べ、脱原発は政府方針ではないとの考えを強調した。(共同)
・・
まったく、お話にもならない。
政治の危機は、菅内閣の不人気も大きな要因であるが、そればかりではない。議会政党、政党政治に対する不信が、「3.11」以後、いっそう深まっている。時事通信の世論調査によれば、民主の支持率10%に対し、自民15.0%、公明3.3%、共産とみんなの党1.1%、社民党0.3%、たちあがれ日本0.2%。国民新党0.1%。 そして、支持政党なしが67.4%である。
2
無党派67.4%という数字をどう読むか。この数字に触れて、「3.11」の三週間前に書いた文章を思い出した。「サハラ砂漠の蜃気楼に浮かぶのは社会主義ではない」の中の、「facebookとtwitterは「オマカセ民主主義」を越えられるか」である。
「すべての国の政府・官僚機構、議会政党にメディア、もっと言えば市民・社会運動やNGOもサイバー空間で起こる〈革命〉についてゆけない。これが〈今〉の情況である。というより、誰もがそうなのだ。「政治」という特殊な世界において、それがもっとも醜悪な形で表出しているだけの話である。
冷戦崩壊後に生まれた人々はもちろん、ちょうど30年前にレーガン政権が登場し「レーガノミックス」やイギリスの「サッチャー主義」が席巻し、いわゆる「新自由主義」経済政策が「新保守主義」の政治と合体したころに生まれた人々は、冷戦崩壊⇒バブル崩壊⇒「失われた10年」となった1990年代の「政局」の大混乱⇒政界の再編に次ぐ再編の過程を体験していない世代になる。
この二つの世代がこの1月半ば以降のアラブ・イスラム社会の「革命」の担い手だ。「ボク」と同世代の人々は、若い世代がセッティングしたステージ(広場)にかけつけ「積年の恨み」を晴らそうとした、そんな感じだろうか。
で。これからの数年、2010年代の半ば・あるいは後半期まで、あの頃ほど悲惨ではなくともまた同じような日本の議会政治の大混乱・「政界再編」を私たちは体験することになるかもしれない。政権与党をめざす政党のプラットフォームが定まらず、しかもどの政党も変わり映えのしない「マニフェスト」しか出せず、「争点」なるものがきわめてテクニカルな「やりかた」の違いでしかないような、そんな「政策論争」が延々とくり返される時代である。
もうすでに始まっているが、それは政治的ニヒリズムというか、「日本の(議会)政治が変わることによって何かがもしかしたら変わるかもしれない」、そんな風にはとても思えない何とも鬱屈した気分が社会的に蔓延する時代である。無党派層が有権者の5割から6割(6割から7割?)になる時代。「国政選挙」の投票率が5割を割り、4割を割り、それでも「政治」や国が「回っている」時代。
そのとき、上昇・安定志向を持たない/持てないタブレット・カルチャー第一世代の人々が、どういうムーブメントを起こすか/起こせるか。それが10年後/20年後に〈少しはマトモなデモクラシー〉に日本がなっているかどうかを決めることになる。そうしてセッティングされたステージ(広場)に「ボク」もかけつけ、「積年の恨み」を晴らすことができるだろうか。日本における戦後政治の終焉、ポスト冷戦時代のほんとうの幕開けは、そのときはじめてやってくるのかもしれない」・・・・。
無党派層が有権者の5割から6割(6割から7割?)になる時代。
「国政選挙」の投票率が5割を割り、4割を割り、それでも「政治」や国が「回っている」時代・・・。
それがまさに、菅政権下の日本の現実なのである。
3
(つづく)
1
昨日の時事通信の世論調査の結果は、かなり衝撃的だった。
日本という国が、支持率10%の政党を与党とする、支持率12.5%の内閣によって運営されていることが明白になったからだ。10%と12.5%。どうやらこれが日本の「民主主義」のリアリティであるらしい。
考えてみれば、「3.11」から4ヶ月余り、日本の政治的現実は、福島第一原発災害の収束が見えないのと同じような、ほとんど収束不能の危機に陥ってしまったのではないだろうか。
菅直人という一国会議員が、いつまで首相の座に居座ろうとしているのかは分からない。しかしとにかく、この人物が辞めるまで、日本は有権者10人の内、わずか1人にしかに支持されない内閣によって国の政治が運営されるのである。しかも首相の顔が変わったとしても、支持率10%の民主党が政権の座にある限り、政治の危機が「冷温停止」するなどということもありえないだろう。10年前の森内閣の時より、危機はかなり深刻である。
こうした日本の政治の危機という観点からみれば、一昨日の菅首相の「脱原発依存社会」宣言を、上のような政治的現実から切り離して「絶賛」(社民党党首)したり、肯定的に評価する(一部の知事、朝日、毎日その他の新聞の社説など)ことがありえないことも、はっきりするのではないか。
首相が何を言おうと、圧倒的大多数の有権者、「国民」は聞く耳を持たないのだ。とにかく早く辞めてくれ、you go out!と叫んでいるのだから。「「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?」もクソもない、ということになる。
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・閣僚から脱原発批判 首相「私的な思い」
中野寛成国家公安委員長は15日午前の閣僚懇談会で、菅直人首相が「脱原発」を打ち出したことについて「首相の発言が混乱を招いている。閣僚はそういう話を聞いたことがない」と批判、原発問題に関する閣僚懇の開催を求めた。首相は「私的な思いを述べた」(!!!)と釈明。枝野幸男官房長官は、来週前半に閣僚懇を開く考えを示した。 これに関連し、野田佳彦財務相は記者会見で「短兵急に進める話ではない。政府としてこれから丁寧に議論しなければならない」と述べ、脱原発は政府方針ではないとの考えを強調した。(共同)
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まったく、お話にもならない。
政治の危機は、菅内閣の不人気も大きな要因であるが、そればかりではない。議会政党、政党政治に対する不信が、「3.11」以後、いっそう深まっている。時事通信の世論調査によれば、民主の支持率10%に対し、自民15.0%、公明3.3%、共産とみんなの党1.1%、社民党0.3%、たちあがれ日本0.2%。国民新党0.1%。 そして、支持政党なしが67.4%である。
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無党派67.4%という数字をどう読むか。この数字に触れて、「3.11」の三週間前に書いた文章を思い出した。「サハラ砂漠の蜃気楼に浮かぶのは社会主義ではない」の中の、「facebookとtwitterは「オマカセ民主主義」を越えられるか」である。
「すべての国の政府・官僚機構、議会政党にメディア、もっと言えば市民・社会運動やNGOもサイバー空間で起こる〈革命〉についてゆけない。これが〈今〉の情況である。というより、誰もがそうなのだ。「政治」という特殊な世界において、それがもっとも醜悪な形で表出しているだけの話である。
冷戦崩壊後に生まれた人々はもちろん、ちょうど30年前にレーガン政権が登場し「レーガノミックス」やイギリスの「サッチャー主義」が席巻し、いわゆる「新自由主義」経済政策が「新保守主義」の政治と合体したころに生まれた人々は、冷戦崩壊⇒バブル崩壊⇒「失われた10年」となった1990年代の「政局」の大混乱⇒政界の再編に次ぐ再編の過程を体験していない世代になる。
この二つの世代がこの1月半ば以降のアラブ・イスラム社会の「革命」の担い手だ。「ボク」と同世代の人々は、若い世代がセッティングしたステージ(広場)にかけつけ「積年の恨み」を晴らそうとした、そんな感じだろうか。
で。これからの数年、2010年代の半ば・あるいは後半期まで、あの頃ほど悲惨ではなくともまた同じような日本の議会政治の大混乱・「政界再編」を私たちは体験することになるかもしれない。政権与党をめざす政党のプラットフォームが定まらず、しかもどの政党も変わり映えのしない「マニフェスト」しか出せず、「争点」なるものがきわめてテクニカルな「やりかた」の違いでしかないような、そんな「政策論争」が延々とくり返される時代である。
もうすでに始まっているが、それは政治的ニヒリズムというか、「日本の(議会)政治が変わることによって何かがもしかしたら変わるかもしれない」、そんな風にはとても思えない何とも鬱屈した気分が社会的に蔓延する時代である。無党派層が有権者の5割から6割(6割から7割?)になる時代。「国政選挙」の投票率が5割を割り、4割を割り、それでも「政治」や国が「回っている」時代。
そのとき、上昇・安定志向を持たない/持てないタブレット・カルチャー第一世代の人々が、どういうムーブメントを起こすか/起こせるか。それが10年後/20年後に〈少しはマトモなデモクラシー〉に日本がなっているかどうかを決めることになる。そうしてセッティングされたステージ(広場)に「ボク」もかけつけ、「積年の恨み」を晴らすことができるだろうか。日本における戦後政治の終焉、ポスト冷戦時代のほんとうの幕開けは、そのときはじめてやってくるのかもしれない」・・・・。
無党派層が有権者の5割から6割(6割から7割?)になる時代。
「国政選挙」の投票率が5割を割り、4割を割り、それでも「政治」や国が「回っている」時代・・・。
それがまさに、菅政権下の日本の現実なのである。
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(つづく)
2011年7月14-15日の原発ニュース
2011年7月14-15日の原発ニュース
〈美浜〉
・原発40年超運転、関電が手続きへ 福井の美浜2号機
関西電力の八木誠社長は15日の記者会見で、2012年7月に運転40年となる美浜原子力発電所(福井県美浜町)2号機について、運転延長に必要な手続きを進める考えを明らかにした。原発の長期運転は40年を超す場合、1年前までに国に長期保全計画を提出する。美浜2号機の提出期限は今月25日で、八木社長は「22日ごろに出す方向で進めている」と述べた。
原発の安全性を巡り、長期運転の影響が問われるなか、40年超運転の手続きを進めることは関連自治体などの反発を招く可能性もありそうだ。関電は10年11月、国内2例目として美浜1号機の40年超運転に入った経緯がある。ただ美浜2号機の運転を実際に続けるかどうかは、関電も態度を明確にしていない。
・美浜原発1号機の後継計画先送り 関電社長「表明は難しい」
関西電力の八木誠社長は15日、都内で開いた電気事業連合会の会見で、今秋メドとしていた美浜原子力発電所1号機(出力34万キロワット)の後継機計画は「現状で表明するのは難しい」と先送りする考えを明らかにした。 美浜1号機は昨年11月、国内2例目の40年超運転に移行。最長50年の運転で廃炉にする一方、同じ福井県美浜町に後継機を設けるかどうか、今秋に計画を示す方針だった。八木社長は判断延期の理由として、東日本大震災で後継機計画に向けた地質調査などを中止したうえ、「国のエネルギー政策の方針など状況が流動的」と説明した。
原発の長期運転では、来年7月に40年超となる美浜2号機(出力50万キロワット)の運転継続に必要な長期保全計画を「国に出す方向」とも述べた。実際に2号機を40年超運転に進めるかは改めて判断する。 関電の原発運転の可否に影響力を持つ福井県の西川一誠知事は、1970年代に稼働した東京電力・福島第1原発の事故について、長期運転の影響を詳細に調べるよう国に求めている。関電は福井県はじめ地元自治体の意向を慎重に確かめながら、原発の長期運転計画を練る必要に迫られる。(日経)
〈福島第一関連〉
・地域振興「脱原発」に 県復興ビジョン案まとめる
県は15日、東日本大震災復旧・復興本部会議を開き、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を基本理念に掲げた県復興ビジョン案をまとめた。県民10万人が避難を強いられた東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、地域振興政策の基本方針をこれまでの「原発との共生」から「脱原発」に転換する。県民や県内全市町村、各種団体からビジョン案に対する意見を募り、8月8日に開く同本部会議で策定する。
復興ビジョン案は7項目の主要施策で構成、「再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくり」を掲げ、各家庭や企業、団体への普及を促進する一方、再生可能エネルギーや分散型発電に適した高性能の次世代送電網(スマートグリッド)などによるエネルギーの「地産地消モデル」の確立を目指すとした。(福島民友)
・福島県「脱原発」を宣言 被害拡大、共存を転換
東日本大震災で被災し、東京電力福島第1原発事故による甚大な被害が続いている福島県は15日、東日本大震災復旧・復興本部会議を開き「脱原発」を基本理念に掲げた「復興ビジョン」を取りまとめた。1971年の第1原発1号機の営業運転以来、第2原発を含め10基と共存してきた福島県が正式に原発との決別を宣言した。
菅直人首相も「脱原発」を表明してエネルギー政策の転換を主張。福島の復興ビジョンは国の原子力政策や原発関連施設を抱える他の自治体にも影響を与えそうだ。 資源エネルギー庁の立地担当者は「原発立地の自治体が脱原発を掲げたのは聞いたことがない」と話した。【共同通信】
・福島第1原発:浄水システム一時停止 処理量は改善せず
東京電力は15日、福島第1原発の汚染水浄化システムで、処理量が想定の7割程度にとどまっていることを受け、調査のためにシステムを一時停止し、配管を変えるなどの対策をした。約9時間後に再開したが、大幅な改善はみられなかった。 東電によると、システムの定格処理量は毎時50立方メートルだが、再開後も同39立方メートルにとどまっている。配管に高低差があって空気がたまっていたり、流れに抵抗が生じている可能性があるという。
また、14~15日にかけて同原発2号機の使用済み核燃料プールの冷却機能が一時低下し、水温が5度程度上昇するトラブルがあった。調査の結果、冷却に使う配管にある手動バルブが閉まっていたことが分かり、原因を調べている。15日は作業員2人が熱中症と診断された。【毎日・八田浩輔】
・来月9日に総決起大会 原発事故被災市町村議会連絡協議会
警戒区域や計画的避難区域、緊急時避難準備区域の自治体と伊達市の計13市町村議会でつくる福島原発事故被災市町村議会連絡協議会(会長・菅野善一田村市議会議長)は8月9日午後1時半から田村市文化センターで総決起大会を開く。14日に田村市議会で役員会を開き、決めた。
当日は各議会の議員らが集い、各市町村の被災状況などを報告する。三春町在住で政府の復興構想会議委員を務める玄侑宗久氏(福聚寺住職、芥川賞作家)が講演する。国や東京電力に対し、福島第一原発事故の早期収束や風評被害の打開を求める大会決議を採択する。 各自治体の首長や国会議員などにも参加を呼び掛ける。(福島民友)
・福島第1原発:野党の賠償金仮払い法案、参院本会議で可決
福島第1原発事故の被害者への賠償金を東京電力に代わって国が仮払いする自民、公明など野党5党提出の「原子力事故被害緊急措置法案」は15日午前の参院本会議で、野党の賛成多数で可決された。民主、国民新、共産各党は反対した。 同法案は被害者を早期救済するため、東電が支払うべき損害賠償額の半分以上を国が仮払いし、後で東電に請求する内容。民主党は国に仮払いを義務付ける規定に難色を示しており、衆院で可決、成立するには与野党の修正協議が焦点になる。 地元自治体が「原子力被害応急対策基金」を創設した場合、国が財源を補助する規定も盛り込んだ。必要経費を総額約5000億円と見込んでいる。【毎日・岡崎大輔】
・枝野氏、ステップ1「期限内に」 避難準備区域の縮小検討
東京電力は14日、福島第1原発3号機の原子炉格納容器に、水素爆発を防ぐための窒素ガスの注入を始めた。17日に期限を迎える事故収束の工程表「ステップ1」には、原子炉の一定の冷却や放射性物質の放出抑制が盛り込まれていたが、枝野官房長官は14日の会見で、期限内に達成できるとの見通しを示した。 枝野長官は、事態の急変時に速やかに避難できるよう備えを求める「緊急時避難準備区域」の縮小(???)していることを明らかにしたが、具体的時期は言及しなかった。 一方、原子力安全委員会は同準備区域を縮小する前に、原子炉の冷却が長時間止まった場合の影響評価が必要との見方を示した。(共同)
・福島第1原発:避難区域解除の条件「循環注水冷却」の安定
班目春樹・原子力安全委員会委員長 内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は14日、臨時会議後の会見で東京電力福島第1原発から半径20~30キロの範囲に定められている緊急時避難準備区域解除の条件として、浄化した汚染水で原子炉を冷却する「循環注水冷却」のシステムが安定稼働する必要があるとの見解を示した。
班目委員長は、水漏れなどで再三、運転が中断している冷却システムについて「普通の原子力施設の装置と比べるとはるかに脆弱(ぜいじゃく)」と指摘。「内的要因か地震などの外的要因で一定時間失われる可能性があり、そういう時でも本当に緊急時避難準備区域を解除していいのかしっかりとした説明が行われるべきだ」と述べた。 同区域については、細野豪志原発事故担当相が事故収束に向けた東電の工程表のステップ1が終了する7月17日の段階で「原子炉の冷却機能が安定し、水素爆発の危険性がない」ことを条件に解除できるとの見通し(???)を示している。
また、原子炉から半径8~10キロを原発事故の「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ)」と定めている防災指針を見直す原子力安全委の防災専門部会が14日、開かれた。EPZ外に放射性物質が拡散した今回の事故を踏まえ、部会では設定範囲を拡大する方向で見直し、今年度中に結論を出す方針。中込良広部会長は「早く結論を出せるものは前倒しで出したい」と述べた。部会の委員からは「範囲を一律に広げればいいのではなく、地方ごとに対応できる基準を設定(???)だ」との意見が出た。【毎日・比嘉洋】
・3号機にも窒素封入開始 福島第一原発関連トピックス東京電力 原子力発電所
東京電力は14日夜、水素爆発の事故を起こした福島第一原子力発電所3号機の格納容器への窒素の封入を始めた。窒素を入れ、水素を追い出すことで、再び爆発が起きる危険を減らす措置。(→つまり、1~3号機は「再び爆発が起きる危険」が、ずっとあったし、これからもある、ということ)。
東電は事故収束に向けた工程表で、爆発事故を起こした1~3号機への窒素封入を7月中旬までに実施することを目標にしていた。 窒素封入は4月7日に1号機で始めて以降、2号機に続いて3基目。3号機は7月12日に、窒素の発生装置からホースを原子炉建屋に引き込み、格納容器を貫通する配管につないだ。
窒素封入をした場合、格納容器内の放射性物質が外部に漏れるおそれがある。東電は発電所周辺への影響はほとんどないとしているが、窒素封入に先立って福島県や周辺の市町村に説明した。東電の実施計画について、経済産業省原子力安全・保安院は14日午前、安全性や外部への放射能影響に問題なしと判断した。 (朝日)
↓
「保安院の独立・分離」を主張する首相・内閣の下で、これまでずっと、そして少なくとも今後も1年近く、保安院主導の原発「安全規制」が行われることに対し、なぜ政党や朝日を含む主要メディアは沈黙を決め込んでいるのか?
〈高浜・大飯〉
・原発2基、21~22日に停止 関電の高浜4号と大飯4号
関西電力は14日、高浜原発4号機(福井県高浜町、87万キロワット)が21日に、大飯原発4号機(同県おおい町、118万キロワット)が22日にそれぞれ運転を停止し、定期検査に入ることを明らかにした。関電の原発11基中、半数以上の6基が止まることになる。 高浜4号機などの停止は夏場の電力需給計画に織り込み済みだが、年末までにさらに3基が検査のため止まる見通し。関電は火力発電の増強などで不足分をカバーするが、燃料費高騰で発電コストの大幅増は避けられず、経営を圧迫しそうだ。(共同)
〈その他〉
・東芝が汚染水処理装置納入へ 8月に稼働
東芝は14日、東京電力福島第1原発の汚染水浄化システム向けに、放射性物質を取り除く装置を納入することを明らかにした。8月上旬から稼働する予定。装置の相次ぐトラブルで汚染水処理は難航しており、東電は新たな装置の導入で対策を強化する。 処理装置は直径1.4メートル、高さ3.6メートルの吸着装置を14本備え、汚染水の処理能力は1日当たり1200立方メートル。吸着装置内部の合成ゼオライトやチタンケイ酸塩が、汚染水から放射性物質のセシウムなどを除去する。
東芝はこの日、京浜事業所(横浜市)で吸着装置の製造過程を報道陣に公開。駆動用のポンプを少なくすることで故障のリスクを抑えたという。 福島第1原発の汚染水処理は、水漏れでフランスのアレバと米キュリオンの2社の装置が停止するなどたびたびトラブルに見舞われている。 東芝の吸着装置は鉛を詰めた厚さ二十数センチの壁を設けることで放射能漏れを防ぎ、放射性物質を大量にためられるのも特徴。開発担当者は「キュリオン製に比べて交換頻度を5分の1程度にできる」と説明している。(毎日)
・放射能汚染焼却灰、埋め立て基準緩和を検討 環境省
環境省は14日、放射能に汚染された福島県内のがれきの処理方針を緩和する方向で検討を始めた。現在は、焼却灰に含まれる放射性セシウムが、1キログラム当たり8千ベクレル以下の場合だけに最終処分場での埋め立てを認めているが、10万ベクレル以下なら埋め立てられるようにする。
同省は「10万ベクレル以下なら安全性は高く(???)、有識者の意見を参考に早期に結論を出す」としている。同時に、周辺住民の年間被曝(ひばく)量が10マイクロシーベルトを下回るような対策も検討する。これまで8千ベクレルを超えた場合は、最終処分場などでの一時保管を求めてきたが、放射能に汚染された下水汚泥埋め立て後の周辺住民の被曝量について、政府が出した試算などをもとに判断した。 (朝日)
・リトアニアの新規原発、日立が優先交渉権 震災後初の新設案件進展
日立製作所は14日、リトアニア政府から同国に新設する原子力発電所について、受注に向けた優先交渉権を獲得したと発表した。2011年末までの合意を目指す。受注が正式に決まれば、日立にとって海外で初めての原発プラント建設となる。また3月11日の福島第1原発の事故以来、世界で原発の新設案件が進展するのは初めてで、各国での原発建設再開に向けた動きに影響を与えそうだ。
日立が優先交渉権を獲得したのは、同国北東部のビサギナスに新設する原発プラント。運転開始は20年の予定で、日立は130万キロワット級の最新型の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を提案する。日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社、日立GEニュークリア・エナジーと共同で事業を進める。
これまでビサギナス原発の受注をめぐっては日立陣営と、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)の2陣営が競ってきた。6月中旬には日立とWHの首脳がリトアニアを訪れ、受注獲得に向けた大詰めの交渉をしていた。
リトアニアは旧ソビエト連邦時代に建設されたイグナリナ原発を09年末に閉鎖した。ロシアからのエネルギー供給依存の脱却を目指し、10年に新たな原発建設計画を表明。韓国電力公社だけが応札していたが、その後に取り下げていた。リトアニアは20年までに原発を新設するため、原発プラントメーカーと資金調達先を探していた。(日経)
・原子力協定締結交渉見合わせ ブラジルなど5カ国と
政府は14日、菅首相の「脱原発」表明を受け、ブラジルなど5カ国と進めてきた原子力協定の締結交渉を当面見合わせざるを得ないとの判断を固めた。原発輸出の前提となる協定締結を急げば「首相の方針と矛盾しかねない」(政府筋)ためだ。国際受注レースからの撤退だけでなく、国際的信用性の低下につながる可能性もある。民主党政権の「日の丸原発」輸出戦略は大きな岐路に立った形だ。
交渉相手国はほかにインド、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦で、いずれの国との交渉も首相官邸からの明確な指示が出ない限りは、高官級協議の日程を入れない方向。(共同)
↓
これは単に「ポスト菅まで一時凍結」ということでしかない。
・九電 組織的やらせ謝罪 メール問題調査報告 3幹部相談し指示 投稿141人 賛成例文も配布 社長は続投の意向(西日本新聞)
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・・・
・菅政権、リビアの反体制派承認へ 唯一の対話相手として 菅政権は、リビア北東部ベンガジに拠点を置く反体制派の代表組織「国民評議会」を「リビア国民を代表する唯一の正統な対話相手」として承認する方針を固めた。15日にトルコで開かれるリビア問題の「連絡調整グループ」会議で表明する見通し。
外務省によると、現在もカダフィ政権が国家として存続しているため、反体制派組織を別の国家として承認するのは難しい。ただ、すでに米国、フランス、イタリア、カタールなど欧米や中東の主要国を中心に国民評議会を「唯一の正統な組織」と認める国が相次いでおり、日本政府も政治的な支持表明を通じ、「カダフィ後」の国づくりを後押しする構えだ。(朝日・松村愛)
・サイバー攻撃に軍事報復、米国防総省が戦略発表
米国防総省は14日、外国からのサイバー攻撃への対応方針を示す「サイバー軍事戦略」を発表した。 サイバー空間を、陸、海、空、宇宙と並ぶ5番目の軍事作戦領域と定義し、攻撃に対応する「戦力」の強化を提言している。
戦略を発表したリン国防副長官は、3月にサイバー攻撃によって軍需企業から2万4000点のファイルが流出する過去最大規模の被害があったことを明らかにして、「外国の諜報(ちょうほう)機関の仕業と思う」と指摘。「高度なサイバー能力はほぼ例外なく国家に属するものだ」(???)とも語って、新戦略が国家によるサイバー攻撃に対応したものであることを強調した。さらに、「米国は深刻なサイバー攻撃に軍事的に対応する権利を有する」と述べ、通常戦力による報復も辞さない方針を明言した。 【読売・ワシントン=山口香子】
・アフガン民間人犠牲最悪ペース 11年上半期1462人
アフガニスタンの政府当局者は14日、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)が南東部コスト州で夜襲を行った際に、民間人6人を殺害した、と語った。AP通信などが報じた。同州では市民ら約1千人が抗議デモを行った。 また、南部カンダハル州のモスクで同日、何者かが自爆し、内務省によると、5人が死亡、15人が負傷した。モスクでは12日に殺害されたカルザイ大統領の弟アフマド・ワリ・カルザイ氏の追悼式が行われており、同省は式を狙ったテロと見ている。 国連は14日、アフガンで今年上半期に戦闘などに巻き込まれて死亡した民間人が1462人に上り、2001年以降最悪だった昨年の同期に比べ15%増加したとの報告書を発表した。(カブール=五十嵐誠)
⇒「ポスト「3・11」の世界と平和構築」(6/19)
⇒「ポスト「3・11」の世界と平和構築(2) ~自衛隊よ、どこへゆく?」(7/7)
〈美浜〉
・原発40年超運転、関電が手続きへ 福井の美浜2号機
関西電力の八木誠社長は15日の記者会見で、2012年7月に運転40年となる美浜原子力発電所(福井県美浜町)2号機について、運転延長に必要な手続きを進める考えを明らかにした。原発の長期運転は40年を超す場合、1年前までに国に長期保全計画を提出する。美浜2号機の提出期限は今月25日で、八木社長は「22日ごろに出す方向で進めている」と述べた。
原発の安全性を巡り、長期運転の影響が問われるなか、40年超運転の手続きを進めることは関連自治体などの反発を招く可能性もありそうだ。関電は10年11月、国内2例目として美浜1号機の40年超運転に入った経緯がある。ただ美浜2号機の運転を実際に続けるかどうかは、関電も態度を明確にしていない。
・美浜原発1号機の後継計画先送り 関電社長「表明は難しい」
関西電力の八木誠社長は15日、都内で開いた電気事業連合会の会見で、今秋メドとしていた美浜原子力発電所1号機(出力34万キロワット)の後継機計画は「現状で表明するのは難しい」と先送りする考えを明らかにした。 美浜1号機は昨年11月、国内2例目の40年超運転に移行。最長50年の運転で廃炉にする一方、同じ福井県美浜町に後継機を設けるかどうか、今秋に計画を示す方針だった。八木社長は判断延期の理由として、東日本大震災で後継機計画に向けた地質調査などを中止したうえ、「国のエネルギー政策の方針など状況が流動的」と説明した。
原発の長期運転では、来年7月に40年超となる美浜2号機(出力50万キロワット)の運転継続に必要な長期保全計画を「国に出す方向」とも述べた。実際に2号機を40年超運転に進めるかは改めて判断する。 関電の原発運転の可否に影響力を持つ福井県の西川一誠知事は、1970年代に稼働した東京電力・福島第1原発の事故について、長期運転の影響を詳細に調べるよう国に求めている。関電は福井県はじめ地元自治体の意向を慎重に確かめながら、原発の長期運転計画を練る必要に迫られる。(日経)
〈福島第一関連〉
・地域振興「脱原発」に 県復興ビジョン案まとめる
県は15日、東日本大震災復旧・復興本部会議を開き、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を基本理念に掲げた県復興ビジョン案をまとめた。県民10万人が避難を強いられた東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、地域振興政策の基本方針をこれまでの「原発との共生」から「脱原発」に転換する。県民や県内全市町村、各種団体からビジョン案に対する意見を募り、8月8日に開く同本部会議で策定する。
復興ビジョン案は7項目の主要施策で構成、「再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくり」を掲げ、各家庭や企業、団体への普及を促進する一方、再生可能エネルギーや分散型発電に適した高性能の次世代送電網(スマートグリッド)などによるエネルギーの「地産地消モデル」の確立を目指すとした。(福島民友)
・福島県「脱原発」を宣言 被害拡大、共存を転換
東日本大震災で被災し、東京電力福島第1原発事故による甚大な被害が続いている福島県は15日、東日本大震災復旧・復興本部会議を開き「脱原発」を基本理念に掲げた「復興ビジョン」を取りまとめた。1971年の第1原発1号機の営業運転以来、第2原発を含め10基と共存してきた福島県が正式に原発との決別を宣言した。
菅直人首相も「脱原発」を表明してエネルギー政策の転換を主張。福島の復興ビジョンは国の原子力政策や原発関連施設を抱える他の自治体にも影響を与えそうだ。 資源エネルギー庁の立地担当者は「原発立地の自治体が脱原発を掲げたのは聞いたことがない」と話した。【共同通信】
・福島第1原発:浄水システム一時停止 処理量は改善せず
東京電力は15日、福島第1原発の汚染水浄化システムで、処理量が想定の7割程度にとどまっていることを受け、調査のためにシステムを一時停止し、配管を変えるなどの対策をした。約9時間後に再開したが、大幅な改善はみられなかった。 東電によると、システムの定格処理量は毎時50立方メートルだが、再開後も同39立方メートルにとどまっている。配管に高低差があって空気がたまっていたり、流れに抵抗が生じている可能性があるという。
また、14~15日にかけて同原発2号機の使用済み核燃料プールの冷却機能が一時低下し、水温が5度程度上昇するトラブルがあった。調査の結果、冷却に使う配管にある手動バルブが閉まっていたことが分かり、原因を調べている。15日は作業員2人が熱中症と診断された。【毎日・八田浩輔】
・来月9日に総決起大会 原発事故被災市町村議会連絡協議会
警戒区域や計画的避難区域、緊急時避難準備区域の自治体と伊達市の計13市町村議会でつくる福島原発事故被災市町村議会連絡協議会(会長・菅野善一田村市議会議長)は8月9日午後1時半から田村市文化センターで総決起大会を開く。14日に田村市議会で役員会を開き、決めた。
当日は各議会の議員らが集い、各市町村の被災状況などを報告する。三春町在住で政府の復興構想会議委員を務める玄侑宗久氏(福聚寺住職、芥川賞作家)が講演する。国や東京電力に対し、福島第一原発事故の早期収束や風評被害の打開を求める大会決議を採択する。 各自治体の首長や国会議員などにも参加を呼び掛ける。(福島民友)
・福島第1原発:野党の賠償金仮払い法案、参院本会議で可決
福島第1原発事故の被害者への賠償金を東京電力に代わって国が仮払いする自民、公明など野党5党提出の「原子力事故被害緊急措置法案」は15日午前の参院本会議で、野党の賛成多数で可決された。民主、国民新、共産各党は反対した。 同法案は被害者を早期救済するため、東電が支払うべき損害賠償額の半分以上を国が仮払いし、後で東電に請求する内容。民主党は国に仮払いを義務付ける規定に難色を示しており、衆院で可決、成立するには与野党の修正協議が焦点になる。 地元自治体が「原子力被害応急対策基金」を創設した場合、国が財源を補助する規定も盛り込んだ。必要経費を総額約5000億円と見込んでいる。【毎日・岡崎大輔】
・枝野氏、ステップ1「期限内に」 避難準備区域の縮小検討
東京電力は14日、福島第1原発3号機の原子炉格納容器に、水素爆発を防ぐための窒素ガスの注入を始めた。17日に期限を迎える事故収束の工程表「ステップ1」には、原子炉の一定の冷却や放射性物質の放出抑制が盛り込まれていたが、枝野官房長官は14日の会見で、期限内に達成できるとの見通しを示した。 枝野長官は、事態の急変時に速やかに避難できるよう備えを求める「緊急時避難準備区域」の縮小(???)していることを明らかにしたが、具体的時期は言及しなかった。 一方、原子力安全委員会は同準備区域を縮小する前に、原子炉の冷却が長時間止まった場合の影響評価が必要との見方を示した。(共同)
・福島第1原発:避難区域解除の条件「循環注水冷却」の安定
班目春樹・原子力安全委員会委員長 内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は14日、臨時会議後の会見で東京電力福島第1原発から半径20~30キロの範囲に定められている緊急時避難準備区域解除の条件として、浄化した汚染水で原子炉を冷却する「循環注水冷却」のシステムが安定稼働する必要があるとの見解を示した。
班目委員長は、水漏れなどで再三、運転が中断している冷却システムについて「普通の原子力施設の装置と比べるとはるかに脆弱(ぜいじゃく)」と指摘。「内的要因か地震などの外的要因で一定時間失われる可能性があり、そういう時でも本当に緊急時避難準備区域を解除していいのかしっかりとした説明が行われるべきだ」と述べた。 同区域については、細野豪志原発事故担当相が事故収束に向けた東電の工程表のステップ1が終了する7月17日の段階で「原子炉の冷却機能が安定し、水素爆発の危険性がない」ことを条件に解除できるとの見通し(???)を示している。
また、原子炉から半径8~10キロを原発事故の「防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ)」と定めている防災指針を見直す原子力安全委の防災専門部会が14日、開かれた。EPZ外に放射性物質が拡散した今回の事故を踏まえ、部会では設定範囲を拡大する方向で見直し、今年度中に結論を出す方針。中込良広部会長は「早く結論を出せるものは前倒しで出したい」と述べた。部会の委員からは「範囲を一律に広げればいいのではなく、地方ごとに対応できる基準を設定(???)だ」との意見が出た。【毎日・比嘉洋】
・3号機にも窒素封入開始 福島第一原発関連トピックス東京電力 原子力発電所
東京電力は14日夜、水素爆発の事故を起こした福島第一原子力発電所3号機の格納容器への窒素の封入を始めた。窒素を入れ、水素を追い出すことで、再び爆発が起きる危険を減らす措置。(→つまり、1~3号機は「再び爆発が起きる危険」が、ずっとあったし、これからもある、ということ)。
東電は事故収束に向けた工程表で、爆発事故を起こした1~3号機への窒素封入を7月中旬までに実施することを目標にしていた。 窒素封入は4月7日に1号機で始めて以降、2号機に続いて3基目。3号機は7月12日に、窒素の発生装置からホースを原子炉建屋に引き込み、格納容器を貫通する配管につないだ。
窒素封入をした場合、格納容器内の放射性物質が外部に漏れるおそれがある。東電は発電所周辺への影響はほとんどないとしているが、窒素封入に先立って福島県や周辺の市町村に説明した。東電の実施計画について、経済産業省原子力安全・保安院は14日午前、安全性や外部への放射能影響に問題なしと判断した。 (朝日)
↓
「保安院の独立・分離」を主張する首相・内閣の下で、これまでずっと、そして少なくとも今後も1年近く、保安院主導の原発「安全規制」が行われることに対し、なぜ政党や朝日を含む主要メディアは沈黙を決め込んでいるのか?
〈高浜・大飯〉
・原発2基、21~22日に停止 関電の高浜4号と大飯4号
関西電力は14日、高浜原発4号機(福井県高浜町、87万キロワット)が21日に、大飯原発4号機(同県おおい町、118万キロワット)が22日にそれぞれ運転を停止し、定期検査に入ることを明らかにした。関電の原発11基中、半数以上の6基が止まることになる。 高浜4号機などの停止は夏場の電力需給計画に織り込み済みだが、年末までにさらに3基が検査のため止まる見通し。関電は火力発電の増強などで不足分をカバーするが、燃料費高騰で発電コストの大幅増は避けられず、経営を圧迫しそうだ。(共同)
〈その他〉
・東芝が汚染水処理装置納入へ 8月に稼働
東芝は14日、東京電力福島第1原発の汚染水浄化システム向けに、放射性物質を取り除く装置を納入することを明らかにした。8月上旬から稼働する予定。装置の相次ぐトラブルで汚染水処理は難航しており、東電は新たな装置の導入で対策を強化する。 処理装置は直径1.4メートル、高さ3.6メートルの吸着装置を14本備え、汚染水の処理能力は1日当たり1200立方メートル。吸着装置内部の合成ゼオライトやチタンケイ酸塩が、汚染水から放射性物質のセシウムなどを除去する。
東芝はこの日、京浜事業所(横浜市)で吸着装置の製造過程を報道陣に公開。駆動用のポンプを少なくすることで故障のリスクを抑えたという。 福島第1原発の汚染水処理は、水漏れでフランスのアレバと米キュリオンの2社の装置が停止するなどたびたびトラブルに見舞われている。 東芝の吸着装置は鉛を詰めた厚さ二十数センチの壁を設けることで放射能漏れを防ぎ、放射性物質を大量にためられるのも特徴。開発担当者は「キュリオン製に比べて交換頻度を5分の1程度にできる」と説明している。(毎日)
・放射能汚染焼却灰、埋め立て基準緩和を検討 環境省
環境省は14日、放射能に汚染された福島県内のがれきの処理方針を緩和する方向で検討を始めた。現在は、焼却灰に含まれる放射性セシウムが、1キログラム当たり8千ベクレル以下の場合だけに最終処分場での埋め立てを認めているが、10万ベクレル以下なら埋め立てられるようにする。
同省は「10万ベクレル以下なら安全性は高く(???)、有識者の意見を参考に早期に結論を出す」としている。同時に、周辺住民の年間被曝(ひばく)量が10マイクロシーベルトを下回るような対策も検討する。これまで8千ベクレルを超えた場合は、最終処分場などでの一時保管を求めてきたが、放射能に汚染された下水汚泥埋め立て後の周辺住民の被曝量について、政府が出した試算などをもとに判断した。 (朝日)
・リトアニアの新規原発、日立が優先交渉権 震災後初の新設案件進展
日立製作所は14日、リトアニア政府から同国に新設する原子力発電所について、受注に向けた優先交渉権を獲得したと発表した。2011年末までの合意を目指す。受注が正式に決まれば、日立にとって海外で初めての原発プラント建設となる。また3月11日の福島第1原発の事故以来、世界で原発の新設案件が進展するのは初めてで、各国での原発建設再開に向けた動きに影響を与えそうだ。
日立が優先交渉権を獲得したのは、同国北東部のビサギナスに新設する原発プラント。運転開始は20年の予定で、日立は130万キロワット級の最新型の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を提案する。日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社、日立GEニュークリア・エナジーと共同で事業を進める。
これまでビサギナス原発の受注をめぐっては日立陣営と、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)の2陣営が競ってきた。6月中旬には日立とWHの首脳がリトアニアを訪れ、受注獲得に向けた大詰めの交渉をしていた。
リトアニアは旧ソビエト連邦時代に建設されたイグナリナ原発を09年末に閉鎖した。ロシアからのエネルギー供給依存の脱却を目指し、10年に新たな原発建設計画を表明。韓国電力公社だけが応札していたが、その後に取り下げていた。リトアニアは20年までに原発を新設するため、原発プラントメーカーと資金調達先を探していた。(日経)
・原子力協定締結交渉見合わせ ブラジルなど5カ国と
政府は14日、菅首相の「脱原発」表明を受け、ブラジルなど5カ国と進めてきた原子力協定の締結交渉を当面見合わせざるを得ないとの判断を固めた。原発輸出の前提となる協定締結を急げば「首相の方針と矛盾しかねない」(政府筋)ためだ。国際受注レースからの撤退だけでなく、国際的信用性の低下につながる可能性もある。民主党政権の「日の丸原発」輸出戦略は大きな岐路に立った形だ。
交渉相手国はほかにインド、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦で、いずれの国との交渉も首相官邸からの明確な指示が出ない限りは、高官級協議の日程を入れない方向。(共同)
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これは単に「ポスト菅まで一時凍結」ということでしかない。
・九電 組織的やらせ謝罪 メール問題調査報告 3幹部相談し指示 投稿141人 賛成例文も配布 社長は続投の意向(西日本新聞)
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・菅政権、リビアの反体制派承認へ 唯一の対話相手として 菅政権は、リビア北東部ベンガジに拠点を置く反体制派の代表組織「国民評議会」を「リビア国民を代表する唯一の正統な対話相手」として承認する方針を固めた。15日にトルコで開かれるリビア問題の「連絡調整グループ」会議で表明する見通し。
外務省によると、現在もカダフィ政権が国家として存続しているため、反体制派組織を別の国家として承認するのは難しい。ただ、すでに米国、フランス、イタリア、カタールなど欧米や中東の主要国を中心に国民評議会を「唯一の正統な組織」と認める国が相次いでおり、日本政府も政治的な支持表明を通じ、「カダフィ後」の国づくりを後押しする構えだ。(朝日・松村愛)
・サイバー攻撃に軍事報復、米国防総省が戦略発表
米国防総省は14日、外国からのサイバー攻撃への対応方針を示す「サイバー軍事戦略」を発表した。 サイバー空間を、陸、海、空、宇宙と並ぶ5番目の軍事作戦領域と定義し、攻撃に対応する「戦力」の強化を提言している。
戦略を発表したリン国防副長官は、3月にサイバー攻撃によって軍需企業から2万4000点のファイルが流出する過去最大規模の被害があったことを明らかにして、「外国の諜報(ちょうほう)機関の仕業と思う」と指摘。「高度なサイバー能力はほぼ例外なく国家に属するものだ」(???)とも語って、新戦略が国家によるサイバー攻撃に対応したものであることを強調した。さらに、「米国は深刻なサイバー攻撃に軍事的に対応する権利を有する」と述べ、通常戦力による報復も辞さない方針を明言した。 【読売・ワシントン=山口香子】
・アフガン民間人犠牲最悪ペース 11年上半期1462人
アフガニスタンの政府当局者は14日、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)が南東部コスト州で夜襲を行った際に、民間人6人を殺害した、と語った。AP通信などが報じた。同州では市民ら約1千人が抗議デモを行った。 また、南部カンダハル州のモスクで同日、何者かが自爆し、内務省によると、5人が死亡、15人が負傷した。モスクでは12日に殺害されたカルザイ大統領の弟アフマド・ワリ・カルザイ氏の追悼式が行われており、同省は式を狙ったテロと見ている。 国連は14日、アフガンで今年上半期に戦闘などに巻き込まれて死亡した民間人が1462人に上り、2001年以降最悪だった昨年の同期に比べ15%増加したとの報告書を発表した。(カブール=五十嵐誠)
⇒「ポスト「3・11」の世界と平和構築」(6/19)
⇒「ポスト「3・11」の世界と平和構築(2) ~自衛隊よ、どこへゆく?」(7/7)
2011年7月14日木曜日
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める署名
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める署名
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会
東海村の住民、そして周辺の日立市、水戸市、つくば市の住民で実行委員会形式で署名活動をはじめました。 東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める署名です。「ネット署名」と「筆記式署名」の2本立てで進めております。
こちらのページに呼びかけ文章もございます。全国の皆様のご協力をどうぞよろしくお願いします。
・ネット署名はこちらから入力できます。
・筆記式署名はこちらにPDFファイルがあります
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会(小川)
たんぽぽ舎
〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-6-2ダイナミックビル5F
TEL: 03-3238-9035/ FAX: 03-3238-0797/Email: nonukes@tanpoposya.net
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〈東海第2原発〉
・東海第2原発:「村民投票あり得る」 東海村長、再稼働の是非で/茨城
東海村の村上達也村長は(7月)6日夜、村内で報道陣の取材に応じ、定期検査中の日本原子力発電東海第2原子力発電の再稼働の是非について「村民投票の実施もあり得る」との考えを示した。また、海江田万里経済産業相が実施を表明した全原発を対象にしたストレステストに関し、「運転再開を前提とした、形だけのテストならどうかと思う」と疑問を呈した。その上で「きっちりしたテストの基準を国民に明示してもらいたい」と強く求めた。
村上村長は、東日本大震災後の毎日新聞の単独インタビューなどで、「同原発の再稼働には住民の意見集約が必要」との考えを強調。例年、村民と意見交換するために開催している「村政懇談会」をそのための場にしたいと述べており、今回村民投票に言及したのも、住民の意見を尊重する姿勢の表れだ。 ただ、実際には条例制定などの手続きや議会の承認が必要になる。このため村上村長は「(実施できる)条件が整うかどうか。なかなか難しいところがある」との認識も合わせて示した。
6日夜に村内のコミュニティーセンターで約2時間にわたって開かれた村政懇談会では、原発事故に絡む村民からの質問は2問にとどまった。終了後、村上村長は「(原発関係の質問が少なくて)意外だった。これからもっと出てくるだろう」と感想を漏らした。【毎日・大久保陽一】
・東海第2原発:送電設備の耐震性に問題 保安院に報告
日本原子力発電(原電)は7日、定期検査中の東海第2原発(茨城県東海村)の送電設備の耐震安全性に問題がみつかったとする報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。
原電によると、問題が見つかったのは、送電のための中継施設「開閉所」。万一の際は外部電源を取り込むときに使われる。所内にある送電線とケーブルを接続する「ケーブルヘッド」と呼ばれる機器で、電気事業連合会が定めた耐震余裕度の基準「1.3以上」に対し、半分以下の0.6にとどまったという。原電は今回の結果を受け、11月14日まで実施予定の定期検査中にケーブルヘッドの補強工事を実施するとしている。 東日本大震災の影響で、東京電力福島第1原発の開閉所が損傷を受けたことから、国が全国の電力事業者に開閉所の調査を求めていた。
・東海第2原発で火災 放射性物質漏洩なし
6日午前9時50分ごろ、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村白方)の放射線管理区域内の廃棄物処理建屋3階で、作業員が廃棄物を溶融炉に投入する容器の下部から火が出ているのを発見した。すぐに防火用水で消火し、東海村消防署に通報。同消防署が現場検証し、火災と判断した。放射性物質の漏洩(ろうえい)はないという。 東海第2原発での火災は昭和61年1月以来。ただ、廃炉になった東海第1原発では平成10年11月に火災が起きている。 東海第2原発は定期検査中で運転を停止している。
同社東海事務所によると、火災が起きたのは同建屋の高周波溶融炉設備。原発から出た金属などの低レベル廃棄物の容量を減らすため、最高温度約1500度の溶融炉に投入して溶かす施設。 容器は金属製で、直径30センチ、高さ88・5センチ。一度炉内に投入し、下部を開いて廃棄物を投下する。火災発生時は金属製の配管と、配管の保温材として使用されたガラス繊維を投入していたという。 同事務所では、今回の火災は容器が閉じた際、燃えた廃棄物が引っ掛かった可能性があると説明しており、今後、詳しい原因を調べる。(産経)
・橋本知事が視察 経産相の安全宣言、「説明なし」と批判 /茨城
橋本昌知事は(6月)30日、東日本大震災後初めて日本原子力発電(原電)東海第2原子力発電所(東海村)を視察した。原電東海事務所の門谷光人所長らの説明を受けながら、原子炉建屋内の使用済み燃料プールや、推定高さ5・4メートルの津波によって冷却用ポンプが水没し、非常用発電機が停止するトラブルが起きた取水口エリアなどを見て回った。その後、報道陣の取材に応じ、原電が進める地震、津波対策について「一生懸命(対策を)講じている」と評価した。
東海第2原発は現在定期検査のため停止中で、11月14日に6カ月の検査を終える予定。その後の再稼働に向けた県や村の判断も焦点だが、「再開への条件は考えているのか」との問いに、橋本知事は「まだまだ何も考えていない」と述べるにとどまった。
一方で、海江田万里経済産業相が停止中の全国の原発に「安全宣言」を出したことを巡っては、改めて痛烈に批判。5月末に非公開で面談した際、中部電力浜岡原発停止の明確な根拠の説明を求めて以降、いまだに十分な説明がないと指摘。「(浜岡原発のみを停止した)国の説明がないと、前に進めない」と強調し、慎重な姿勢もにじませた。
・IAEA:東海第2を査察、地震対応を調査 国内原発は初
東京電力福島第1原子力発電所の事故原因などを調査するために訪日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団約20人が(5月)26日午前、東海第2原発(茨城県東海村)を訪れた。原発の視察は初めて。
東海第2原発では震災発生時、最大5.4メートル(推定)の津波が押し寄せ、非常用ディーゼル発電機の冷却用ポンプが浸水し、3台の発電機のうち1台が停止した。このため、調査団は発電機などを視察し、日本原子力発電(原電)の地震・津波への対応状況や、外部電源喪失などを想定した緊急時の対策について調査する方針だ。
東海第2原発の剱田(けんだ)裕史所長らの出迎えを受けたマイケル・ウェイトマン団長(英原子力規制機関長)は「今回の震災の経験をどのように生かし、また、どう対応しようとしているのかを調査していきたい」と述べた。 調査団は同日午後に東電福島第2原発を、27日には福島第1原発を視察する予定。【毎日・大久保陽一】
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会
東海村の住民、そして周辺の日立市、水戸市、つくば市の住民で実行委員会形式で署名活動をはじめました。 東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める署名です。「ネット署名」と「筆記式署名」の2本立てで進めております。
こちらのページに呼びかけ文章もございます。全国の皆様のご協力をどうぞよろしくお願いします。
・ネット署名はこちらから入力できます。
・筆記式署名はこちらにPDFファイルがあります
東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会(小川)
たんぽぽ舎
〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-6-2ダイナミックビル5F
TEL: 03-3238-9035/ FAX: 03-3238-0797/Email: nonukes@tanpoposya.net
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〈東海第2原発〉
・東海第2原発:「村民投票あり得る」 東海村長、再稼働の是非で/茨城
東海村の村上達也村長は(7月)6日夜、村内で報道陣の取材に応じ、定期検査中の日本原子力発電東海第2原子力発電の再稼働の是非について「村民投票の実施もあり得る」との考えを示した。また、海江田万里経済産業相が実施を表明した全原発を対象にしたストレステストに関し、「運転再開を前提とした、形だけのテストならどうかと思う」と疑問を呈した。その上で「きっちりしたテストの基準を国民に明示してもらいたい」と強く求めた。
村上村長は、東日本大震災後の毎日新聞の単独インタビューなどで、「同原発の再稼働には住民の意見集約が必要」との考えを強調。例年、村民と意見交換するために開催している「村政懇談会」をそのための場にしたいと述べており、今回村民投票に言及したのも、住民の意見を尊重する姿勢の表れだ。 ただ、実際には条例制定などの手続きや議会の承認が必要になる。このため村上村長は「(実施できる)条件が整うかどうか。なかなか難しいところがある」との認識も合わせて示した。
6日夜に村内のコミュニティーセンターで約2時間にわたって開かれた村政懇談会では、原発事故に絡む村民からの質問は2問にとどまった。終了後、村上村長は「(原発関係の質問が少なくて)意外だった。これからもっと出てくるだろう」と感想を漏らした。【毎日・大久保陽一】
・東海第2原発:送電設備の耐震性に問題 保安院に報告
日本原子力発電(原電)は7日、定期検査中の東海第2原発(茨城県東海村)の送電設備の耐震安全性に問題がみつかったとする報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。
原電によると、問題が見つかったのは、送電のための中継施設「開閉所」。万一の際は外部電源を取り込むときに使われる。所内にある送電線とケーブルを接続する「ケーブルヘッド」と呼ばれる機器で、電気事業連合会が定めた耐震余裕度の基準「1.3以上」に対し、半分以下の0.6にとどまったという。原電は今回の結果を受け、11月14日まで実施予定の定期検査中にケーブルヘッドの補強工事を実施するとしている。 東日本大震災の影響で、東京電力福島第1原発の開閉所が損傷を受けたことから、国が全国の電力事業者に開閉所の調査を求めていた。
・東海第2原発で火災 放射性物質漏洩なし
6日午前9時50分ごろ、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村白方)の放射線管理区域内の廃棄物処理建屋3階で、作業員が廃棄物を溶融炉に投入する容器の下部から火が出ているのを発見した。すぐに防火用水で消火し、東海村消防署に通報。同消防署が現場検証し、火災と判断した。放射性物質の漏洩(ろうえい)はないという。 東海第2原発での火災は昭和61年1月以来。ただ、廃炉になった東海第1原発では平成10年11月に火災が起きている。 東海第2原発は定期検査中で運転を停止している。
同社東海事務所によると、火災が起きたのは同建屋の高周波溶融炉設備。原発から出た金属などの低レベル廃棄物の容量を減らすため、最高温度約1500度の溶融炉に投入して溶かす施設。 容器は金属製で、直径30センチ、高さ88・5センチ。一度炉内に投入し、下部を開いて廃棄物を投下する。火災発生時は金属製の配管と、配管の保温材として使用されたガラス繊維を投入していたという。 同事務所では、今回の火災は容器が閉じた際、燃えた廃棄物が引っ掛かった可能性があると説明しており、今後、詳しい原因を調べる。(産経)
・橋本知事が視察 経産相の安全宣言、「説明なし」と批判 /茨城
橋本昌知事は(6月)30日、東日本大震災後初めて日本原子力発電(原電)東海第2原子力発電所(東海村)を視察した。原電東海事務所の門谷光人所長らの説明を受けながら、原子炉建屋内の使用済み燃料プールや、推定高さ5・4メートルの津波によって冷却用ポンプが水没し、非常用発電機が停止するトラブルが起きた取水口エリアなどを見て回った。その後、報道陣の取材に応じ、原電が進める地震、津波対策について「一生懸命(対策を)講じている」と評価した。
東海第2原発は現在定期検査のため停止中で、11月14日に6カ月の検査を終える予定。その後の再稼働に向けた県や村の判断も焦点だが、「再開への条件は考えているのか」との問いに、橋本知事は「まだまだ何も考えていない」と述べるにとどまった。
一方で、海江田万里経済産業相が停止中の全国の原発に「安全宣言」を出したことを巡っては、改めて痛烈に批判。5月末に非公開で面談した際、中部電力浜岡原発停止の明確な根拠の説明を求めて以降、いまだに十分な説明がないと指摘。「(浜岡原発のみを停止した)国の説明がないと、前に進めない」と強調し、慎重な姿勢もにじませた。
・IAEA:東海第2を査察、地震対応を調査 国内原発は初
東京電力福島第1原子力発電所の事故原因などを調査するために訪日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団約20人が(5月)26日午前、東海第2原発(茨城県東海村)を訪れた。原発の視察は初めて。
東海第2原発では震災発生時、最大5.4メートル(推定)の津波が押し寄せ、非常用ディーゼル発電機の冷却用ポンプが浸水し、3台の発電機のうち1台が停止した。このため、調査団は発電機などを視察し、日本原子力発電(原電)の地震・津波への対応状況や、外部電源喪失などを想定した緊急時の対策について調査する方針だ。
東海第2原発の剱田(けんだ)裕史所長らの出迎えを受けたマイケル・ウェイトマン団長(英原子力規制機関長)は「今回の震災の経験をどのように生かし、また、どう対応しようとしているのかを調査していきたい」と述べた。 調査団は同日午後に東電福島第2原発を、27日には福島第1原発を視察する予定。【毎日・大久保陽一】
「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?
「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?
枝野官房長官が、14日午前の記者会見で、菅首相の「原発に依存しない社会」宣言に関し、「より高い安全性で(当面)原子力を活用していくことを(首相発言は)含んでいる」と説明した。政府の方針は「「脱原発」と一線を画している」、と強調したらしい。
極めつけは、官房長官の職にある者が、「「脱原発」社会については「遠い将来の首相の思い」などと説明したことである(時事通信より)。
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・菅内閣支持、最低の12%=68%「退陣不明確に納得せず」―時事世論調査
時事通信が7~10日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は前月から9.4ポイント急落し12.5%となった。2月の17.8%を下回り、2009年9月の民主党政権発足以降、最低を更新した。不支持率は11.6ポイント増の71.2%だった。退陣を表明しながら時期を明確にしない菅直人首相への不信に加え、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働をめぐる政府内の混乱などが響いたとみられる。首相の一段の求心力低下は必至だ。
調査は全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は66.1%。
7月の内閣支持率は、01年4月の森内閣の10.8%に次ぐ低水準。東日本大震災の被災地での発言で批判を受け、松本龍前復興担当相が就任直後に辞任したことも支持率の大幅下落を招いた。不支持率も民主党政権で最悪。 首相が退陣時期を明らかにしていないことについて、「納得できない」が68.7%で、「納得できる」の18.6%を大きく上回った。
今後首相に望む行動については「直ちに退陣」が37.6%で最多。以下、「11年度第2次補正予算案の成立後」の退陣が22.6%、「早期の衆院解散・総選挙」が11.5%、「引き続き政権運営に当たる」が11.4%、「再生可能エネルギー促進法案の成立後」の退陣が10.5%だった。
一方、政党支持率は、自民党が15.0%(前月14.6%)、民主党が10.0%(同12.8%)。以下、公明党3.3%、共産党とみんなの党1.1%、社民党0.3%、たちあがれ日本0.2%。国民新党0.1%。支持政党なしは67.4%(同63.1%)だった。
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何か、痛いほどの虚しさを禁じえないのだが、以下、書きかけの文章である。
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昨日の菅首相の「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?
私の知人の中にも、「脱原発」を首相が打ち出したこと自体は評価できるのではないか、と首相と内閣の退陣を求める私の主張に異論を唱える人がいる。むしろ、そういう人の方が多いかも知れない。
「脱原発依存社会」宣言を考える参考資料として、全国紙三紙と地方紙の社説を取りあげることにした。
とり急ぎ、毎日、朝日、読売新聞と新潟日報、北海道新聞の社説を紹介しておこう。私の意見は、新潟日報の社説の基調に最も近く、全国紙三紙のどの社説にも同意できなかったのだが、その理由は追って説明したい。
一方、北海道新聞は、菅首相の「個人的表明」には深追いをせず、道民に対して脱原発の呼びかけを行っている。非常に「ポジティブ・シンキング」な社説で、私は好きだ。読者は、どの社説を好むだろうか。
〈新潟日報〉
・「脱原発依存」 首相の提起に誠はあるか
菅直人首相が13日夕、記者会見し、「原発に依存しない社会を目指す」と表明した。 福島第1原発の事故を通して「原子力のリスクの大きさと、安全確保という考え方だけでは律することが困難な技術であることを痛感した」と語り、原発への依存度を計画的、段階的に下げ、将来、原発ゼロとする方針を示した。 脱原発を求める世論と、電力の安定供給を望む産業界の両方を見据えた、現実的な判断といえよう。
福島原発事故による放射能汚染の拡大と収束の長期化が明らかになるにつれ、脱原発の世論が急速な高まりを見せている。 6月に実施された全国世論調査では、原発の「廃炉推進」賛成が82%にも上っている。 原発の新増設などは国民感情からいって無理な状況にある。稼働中の原発も老朽化したものから順次、廃炉にしていかざるを得ない。 首相の「脱原発依存」宣言は、こうした現状を踏まえたものであろう。
しかし、なぜか釈然としない。「宣言」に心がこもっていないと感じるのである。確たる信念と展望の裏付けを示さなかったのが、その理由だ。 首相の言動を振り返ると、節操のなさばかりが浮かび上がる。
原発輸出を新成長戦略の柱に掲げ、ベトナムでトップセールスを行って得々としていたのは昨秋のことだ。 福島原発の事故が起きると「原発に詳しい」と言いだし、事故収束で一刻を争う時に現地視察を強行し、結果として事態の悪化を招いた。 「原発サミット」と呼ばれた5月の主要国(G8)首脳会議のころは、原発を日本のエネルギー政策の4本柱の一つに位置付けていた。 海江田万里経済産業相が全国の原発の安全宣言をすると、首相も「同じ考え」と語る。ところが突如、ストレステスト(耐性評価)を持ち出した。 場当たり主義も極まれりだ。世論をうかがいながら「脱原発」をパフォーマンス、延命の道具にしているとしか思えないのである。
エネルギー政策をどうするかは、今後の日本の生き方を左右する国家的な課題である。そのための真摯(しんし)な議論を妨げているのは「首相の進退」という壁である。 廃炉時期などの数値目標も設定されず、脱原発を埋めていく再生可能エネルギー導入などの具体策も明らかにされなかった。 首相が「脱原発依存」を唱えるのなら、それを実現する土俵を整えるのが先である。 菅首相は、自らの提起の重さに気付くべきだ。
・フクシマに学んで 脱原発社会へ踏み出そう
菅直人首相は、原発のない社会を目指す考えを表明したものの、閣内の合意も具体策もなく、反発を受けると、腰砕けになった。 「菅おろし」の政局も絡み、原発政策の行方はいまだに不透明だ。 しかし、私たちは福島第1原発事故の過酷な被害を目の当たりにした。故郷を追われた福島県民は数万に上り、広範な地域で住民が放射能という見えない恐怖に脅かされている。
汚染された環境は復元できないかもしれない。被害は甚大で長期に及び、見積もることさえ不可能だ。 人間の技術では制御しきれない原子力エネルギーに依存し続けることはもはやできない。 原発をなくす道筋を真剣に探る時が来ている。
*廃炉の工程表早急に
電力供給の約3割を占める原発を直ちに全面停止すれば、混乱が予想される。段階的に進めざるを得ない。廃炉の手順を示す工程表を早急に作る必要がある。 当然、新設はしない。事故を起こした福島第1原発の1号機は運転40年目の老朽機だった。最長40年をルールとし、運転年数30年以上の原発の廃炉の検討から始め、活断層に近いものなどは繰り上げてはどうか。 代替電源として、自然エネルギーの普及を急ぐ。とりわけ現状で電源の1%にすぎない風力、太陽光、バイオマス、地熱などの育成に全力を注ぎたい。
首相は、大型水力を含めて総電力の9%になる自然エネルギーの割合を、2020年代の早い時期に20%に高める目標を打ち出した。これを達成すべきだ。 風力などの電気を電力会社に買い取るよう義務づける再生エネルギー特別措置法案が、実現への第一歩となる。今国会で成立を望む。
*定着させたい省エネ
自然エネルギーは世界的な成長産業で、現在は割高なコストも低下していくだろう。政策を総動員して、開発を加速させることが肝心だ。 原発が安上がりなエネルギーに見えたのは、国から陰に陽に支援を受けているからだ。 電気料金に上乗せされる電源開発促進税は、年間約3500億円に上る。これが電源立地交付金のほか、原子力政策の基本方針である核燃料サイクルの研究開発費に充てられている。
使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉やプルサーマル発電で使う核燃サイクルは、ほとんど破綻している。もう見切りをつけよう。 これまで先送りされてきた使用済み核燃料の最終処分も、避けて通れない問題だ。 再処理がもたつく間に、使用済み核燃料は各地の原発敷地内にたまり続けている。 万年単位の保管が必要な核のごみは処分候補地すらなく、技術も確立されていない。サイクルを放棄すると同時に、最終処分問題の論議を急がねばならない。
既存電力会社の地域独占体制の見直しも検討課題だ。 発送電分離は新たな電力事業者の参入を促し、自然エネルギー普及のカギを握る。 送配電網は公共財だ。国有化も選択肢の一つではないか。 広まりつつある節電を一時の我慢ではなく、ライフスタイルとして定着させていきたい。生活が変われば、家電製品などの省エネ化も進み、産業界も活気づく。 「原子力が温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギー」という言い方は、福島の大惨事の後では何の意味も持たない。結局、温暖化対策の王道も省エネだ。
*北海道こそ先進の地
北海道も脱原発と自然エネルギーの振興に向けた独自の未来図を描くべきだ。 北海道電力の発電量のうち泊原発が占める割合は38%と高い。一方、道内の風力発電の潜在能力は全国一とも言われる。 家畜のふん尿や間伐材を使ったバイオマス、広大な土地を生かした太陽光など自然エネルギーの先進地となる可能性を秘めている。
分散型の発電設備は、地域活性化にも役立つ。 泊原発で万一の事態が起きれば、1次産業と観光を振興の軸に据える北海道は立ち直れまい。脱原発の方針は、豊かな自然をアピールする武器ともなるのではないか。
北電には、自然エネルギーの受け入れに最大限の配慮を求めたい。送電網の強化が必要な場合は、自治体や事業者と費用負担について誠実に話し合う姿勢が求められる。 脱原発が克服すべき課題は多岐にわたる。省エネや環境ビジネスの起爆剤となり得る半面、技術革新など不確定な要素も前提にしている。 「脱原発は非現実的」という声は根強い。しかし、破局におびえながら暮らす現実を受け入れるわけにはいかない。原発のない未来は、挑戦しがいのある選択だ。(北海道新聞)
〈毎日新聞〉
・「脱原発」表明 目指す方向は評価する
菅直人首相が13日、記者会見し、原発への依存度を今後、計画的、段階的に下げていき、将来的には原発がなくてもやっていける社会の実現を目指すと表明した。国のエネルギー政策を抜本的に見直す「脱原発」表明である。
原発への依存を減らしていくこと、そして現実的にもそうした方向にならざるを得ないことは、私たちもこれまで何度も指摘してきたところだ。その考え方については基本的に支持し、評価したい。
しかし、首相のこの日の会見ではあまりに具体性が乏しい。将来とは一体、いつごろを考えているのか。代替エネルギーをどうやって促進していくのか。何より、菅首相が「私自身の考えを明確にしたい」と前置きしたように、これは内閣、あるいは民主党も含めた政権としての方針なのか、はなはだ心もとない。 いずれ遠くない時期に退陣するであろう首相だ。まず、政府・与党としての考えをまとめる作業を急いでもらいたい。
菅内閣では九州電力玄海原発の再稼働問題をめぐり、首相と海江田万里経済産業相との間で「不一致」が問題になったばかりだ。一連の経過に対し、首相は会見で「私の指示が遅れ迷惑をかけた」と改めて陳謝したが、今回の「脱原発」表明についても、早くも「どこまで閣内で議論をしているのか」という疑問の声が出ている。 もちろん、首相のリーダーシップで進めていくことは必要だ。しかし、民主党の執行部でさえ菅首相と距離を置き始め、絶えず退陣時期が焦点となっている現状を考えれば、個人的な意見の言いっぱなしで終わる心配がある。
一方、菅首相は、企業や各家庭の節電の努力の結果、今年の夏から冬にかけては「十分に必要な電力供給は可能」と明言したが、もっと具体的な数字を挙げて説明しないと説得力を欠く。 さらに来年夏以降に関しては、天然ガスを使う火力発電所の活用などを挙げたが、「計画を立てていきたい」と語るだけだった。これでは、ただでさえ方針が二転三転する菅内閣に不信感を強めている産業界などは納得しない。
国民の安全と暮らし、経済活動をどう保っていくか。確かに首相がいうように国民が選択すべき政治課題である。いずれは総選挙の大きな争点ともなるだろう。だからこそ、政権与党の責任として民主党の考えをまとめることが必要だ。 首相はこの日も退陣時期を明確にしなかったが、まさか「脱原発」を自らの延命の材料にするつもりはなかろう。次期代表を決める代表選でもきちんと論議すべきである。
〈朝日新聞〉
・脱原発―政治全体で取り組もう
菅直人首相がきのう記者会見し、「脱原発」をめざす方針を明確にした。「将来は原発がない社会を実現する」と初めて言い切った。 国策として進めてきた原発を計画的、段階的になくしていくという政策の大転換である。
私たちは13日付の社説特集で、20~30年後をめどに「原発ゼロ社会」をつくろうと呼びかけた。首相は目標年次こそ示さなかったが方向性は同じだ。首相の方針を歓迎し、支持する。
退陣を表明した首相が、国の根幹となり、社会のあり方を決めるエネルギー政策の今後を方向づけていいのかという意見はあろう。 確かに最終目標として原発廃に踏み切れるのか、何年かけて実現するのかといった点は、そう簡単に国民的な合意は得られまい。 だが、自然エネルギーを飛躍的に普及させ、原発への依存を減らしていく方針への異論は少ないはずだ。誰が首相であっても進めなければならない、焦眉(しょうび)の政治課題なのだ。 ただ、首相の今回の方針も、例によって内閣や民主党内の論議を積み重ねたものではない。脱原発の具体策を示したわけでもない。そのぶん、発言の唐突さは否めない。
民主党はかつて原子力を「過渡的エネルギー」としていたが、政権をとった一昨年の衆院選で原子力利用に「着実に取り組む」と方針を転換している。菅首相も原発依存を高める計画を閣議決定し、原発の海外輸出を成長戦略に位置づけていた。 こうした経緯を総括し、まず民主党としての考え方を明確にしなければ、首相発言は絵空事になりかねない。 自民党は過去の原子力政策を検証する特命委員会を設けて議論を始めている。電力業界や経済産業省とともに経済性を重視し、安全性を犠牲にしてこなかったか。真摯(しんし)な反省が不可欠だ。それなくして、新しい政策は説得力を持たないだろう。
エネルギー政策の転換を探る超党派の議員による勉強会も発足した。脱原発への機運は確実に高まっている。 だからこそ首相が交代した後も、この流れが変わらぬような道筋をつけてほしい。 最悪の原発事故が現実のものとなった以上、もはやスローガンを唱えるだけでなく、脱原発への具体的な手法と政策を真剣に検討しなければならない。 いまこそ、与野党を問わず、政治全体として脱原発という大目標を共有して、具体化へ走り出そう。
〈読売新聞〉
・脱原発宣言 看板だけ掲げるのは無責任だ
深刻な電力不足が予想される中で、脱原子力発電の“看板”だけを掲げるのは無責任だ。
菅首相は13日の記者会見で、「原発に依存しない社会を目指すべきだ。計画的、段階的に依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」と述べた。 日本のエネルギー政策を大転換する方針を示したものだが、原発をどのように減らしていくのか、肝心の具体策は示さなかった。
原子力発電を補う代替エネルギーの確保策が、不透明なままだったことも問題である。 首相は、太陽光や風力などの自然エネルギーを「ポスト原発」の有力候補と考えているようだ。 自然エネルギーの普及は促進すべきだが、現時点では総電力の1%にとどまり、発電量は天候などで変動する。コストも高い。
量と価格の両面で難題を抱えており、近い将来、原発に代わる基幹電力の役割を担えるほど見通しは甘くない。 火力発電で急場をしのげても、燃料費がかさんで電力料金が上がれば、産業の競争力低下を招く。工場の海外移転による空洞化も加速して、日本経済は窮地に立たされかねない。 安全確保を徹底しつつ、原発利用を続けることが、経済の衰退を防ぐためには欠かせない。
首相はまた、当面の電力不足について、節電などで「この夏と冬に必要な電力供給は可能だ」との見通しを述べたが、その根拠についての言及はなかった。 企業の自家発電など「埋蔵電力」も活用できると見ているようだが、どの程度の供給余力があるのか、手探りの状態にある。 代替電力の展望もないまま原発からの脱却ばかりを強調するのは、あまりにも非現実的だ。
原発のストレステスト(耐性検査)を巡る閣内不一致によって、九州電力玄海原発など、定期検査で停止している原発の再稼働に見通しが立たなくなっている。 首相が、ストレステストの判断が妥当なら「再稼働を認めることは十分にある」と述べたのは、当然のことである。 ただし、脱原発を掲げる政府が運転再開を求めても、地元自治体は戸惑うだろう。 首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の不安に乗じ、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑もあったのではないか。場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしている。首相は、そのことを自覚すべきだ。
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・汚染水配管、完全にちぎれる…修理見通し立たず
東京電力は14日、福島第一原子力発電所の汚染水処理システムが配管からの漏水で停止している問題で、ポリ塩化ビニール製の配管接続部が完全にちぎれていたと発表した。
破損部周辺は、放射線量が毎時100~150ミリ・シーベルトと非常に高く、作業員1人あたり1~2分程度しか作業を続けられない。東電では同日中に稼働を再開したいとするが、放射線の遮蔽や作業方法について慎重な検討が必要で、修理の見通しは立っていない。 水漏れは13日、仏アレバ社製の放射性物質の凝集・沈殿装置で、薬液を汚染水に注入する配管で起きた。(読売)
・浜岡原発再開は別検査で判断 官房長官「統一見解と違う次元」
枝野幸男官房長官は14日午前の記者会見で、菅直人首相の要請を受けて運転を停止した中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、原発の再稼働に関する政府統一見解の枠外との認識を示した。政府統一見解では停止中の原発の再稼働には、比較的簡易な1次評価による安全確認をした後としているが、浜岡原発の再稼働にはさらに慎重に判断する考えだ。 枝野氏は浜岡原発について「停止要請したのは、地震の発生確率が高いためだ。それを前提にした対応が図られているのか。(政府統一見解とは)少し違う次元で検討する必要がある」と指摘。 浜岡原発の再稼働にあたっては、1次評価に加えて、別の検査によって安全を確認することが必要との考えを示した。(中日新聞より)
・関電、高浜原発4号機のプルサーマル発電見合わせへ
関西電力は13日、高浜原発4号機(福井県高浜町、87万キロワット)で、プルサーマル発電を見合わせる検討に入った。7月下旬までに始まる定期検査が終わり次第、始める予定だった。国の原子力政策が揺れ、通常の定期検査中の原発の運転再開すら見通せない中、地元の同意が得られないと判断した。
使用済み核燃料を再処理してリサイクルするプルサーマル発電は、毒性の高いプルトニウムを扱うことから反対論も根強い。プルサーマル計画の見合わせは、他電力会社の取り組みや国の核燃料サイクル政策にも影響がありそうだ。
今回の定期検査ではプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を新たに装填(そうてん)する予定だったが、関電は従来のウラン燃料のままとする方向。高浜町でも懸念の声があり、関電幹部は「地元も判断を留保せざるをえない状況だ。無理はしないということだ」としている。(朝日)
・脱原発 国は一貫戦略を/三村知事
菅直人首相の「脱原発」表明を受け、三村申吾知事は14日午前、「首相個人の発言か、内閣で統一した見解か真意が分かりかねる。水、食料、エネルギーなど国家の基幹に関わる問題は、政府として具体的、一貫した戦略を示してほしい」との見解を示した。青森市の青森国際ホテルで行われた、県内原子力施設に関する安全対策の最終回の県民説明会で、参加者の質問に答えた。
2番目に発言を求めた六ケ所村の男性は「豊かな生活を守るのが知事の役目だが、原子力の火を消したら本県はどうなるか慎重に考えてほしい」とし、知事の見解を求めた。三村知事は「首相の真意がぶれ、その場の思い付きなのか、意思決定の重要な機関である内閣の話なのか、分かりにくい」と述べ、二転三転する国の方針に疑問を呈した。 続いて発言した女性は「知事に脱原発をお願いしたい。経済よりも命」と発言、会場からは拍手が起こった。 県民説明会は、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、県内原子力施設の安全対策について県民の意見を聞くため県が主催した。(東奥日報)
枝野官房長官が、14日午前の記者会見で、菅首相の「原発に依存しない社会」宣言に関し、「より高い安全性で(当面)原子力を活用していくことを(首相発言は)含んでいる」と説明した。政府の方針は「「脱原発」と一線を画している」、と強調したらしい。
極めつけは、官房長官の職にある者が、「「脱原発」社会については「遠い将来の首相の思い」などと説明したことである(時事通信より)。
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・菅内閣支持、最低の12%=68%「退陣不明確に納得せず」―時事世論調査
時事通信が7~10日に実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は前月から9.4ポイント急落し12.5%となった。2月の17.8%を下回り、2009年9月の民主党政権発足以降、最低を更新した。不支持率は11.6ポイント増の71.2%だった。退陣を表明しながら時期を明確にしない菅直人首相への不信に加え、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働をめぐる政府内の混乱などが響いたとみられる。首相の一段の求心力低下は必至だ。
調査は全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は66.1%。
7月の内閣支持率は、01年4月の森内閣の10.8%に次ぐ低水準。東日本大震災の被災地での発言で批判を受け、松本龍前復興担当相が就任直後に辞任したことも支持率の大幅下落を招いた。不支持率も民主党政権で最悪。 首相が退陣時期を明らかにしていないことについて、「納得できない」が68.7%で、「納得できる」の18.6%を大きく上回った。
今後首相に望む行動については「直ちに退陣」が37.6%で最多。以下、「11年度第2次補正予算案の成立後」の退陣が22.6%、「早期の衆院解散・総選挙」が11.5%、「引き続き政権運営に当たる」が11.4%、「再生可能エネルギー促進法案の成立後」の退陣が10.5%だった。
一方、政党支持率は、自民党が15.0%(前月14.6%)、民主党が10.0%(同12.8%)。以下、公明党3.3%、共産党とみんなの党1.1%、社民党0.3%、たちあがれ日本0.2%。国民新党0.1%。支持政党なしは67.4%(同63.1%)だった。
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何か、痛いほどの虚しさを禁じえないのだが、以下、書きかけの文章である。
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昨日の菅首相の「脱原発依存社会」宣言をどう評価するか?
私の知人の中にも、「脱原発」を首相が打ち出したこと自体は評価できるのではないか、と首相と内閣の退陣を求める私の主張に異論を唱える人がいる。むしろ、そういう人の方が多いかも知れない。
「脱原発依存社会」宣言を考える参考資料として、全国紙三紙と地方紙の社説を取りあげることにした。
とり急ぎ、毎日、朝日、読売新聞と新潟日報、北海道新聞の社説を紹介しておこう。私の意見は、新潟日報の社説の基調に最も近く、全国紙三紙のどの社説にも同意できなかったのだが、その理由は追って説明したい。
一方、北海道新聞は、菅首相の「個人的表明」には深追いをせず、道民に対して脱原発の呼びかけを行っている。非常に「ポジティブ・シンキング」な社説で、私は好きだ。読者は、どの社説を好むだろうか。
〈新潟日報〉
・「脱原発依存」 首相の提起に誠はあるか
菅直人首相が13日夕、記者会見し、「原発に依存しない社会を目指す」と表明した。 福島第1原発の事故を通して「原子力のリスクの大きさと、安全確保という考え方だけでは律することが困難な技術であることを痛感した」と語り、原発への依存度を計画的、段階的に下げ、将来、原発ゼロとする方針を示した。 脱原発を求める世論と、電力の安定供給を望む産業界の両方を見据えた、現実的な判断といえよう。
福島原発事故による放射能汚染の拡大と収束の長期化が明らかになるにつれ、脱原発の世論が急速な高まりを見せている。 6月に実施された全国世論調査では、原発の「廃炉推進」賛成が82%にも上っている。 原発の新増設などは国民感情からいって無理な状況にある。稼働中の原発も老朽化したものから順次、廃炉にしていかざるを得ない。 首相の「脱原発依存」宣言は、こうした現状を踏まえたものであろう。
しかし、なぜか釈然としない。「宣言」に心がこもっていないと感じるのである。確たる信念と展望の裏付けを示さなかったのが、その理由だ。 首相の言動を振り返ると、節操のなさばかりが浮かび上がる。
原発輸出を新成長戦略の柱に掲げ、ベトナムでトップセールスを行って得々としていたのは昨秋のことだ。 福島原発の事故が起きると「原発に詳しい」と言いだし、事故収束で一刻を争う時に現地視察を強行し、結果として事態の悪化を招いた。 「原発サミット」と呼ばれた5月の主要国(G8)首脳会議のころは、原発を日本のエネルギー政策の4本柱の一つに位置付けていた。 海江田万里経済産業相が全国の原発の安全宣言をすると、首相も「同じ考え」と語る。ところが突如、ストレステスト(耐性評価)を持ち出した。 場当たり主義も極まれりだ。世論をうかがいながら「脱原発」をパフォーマンス、延命の道具にしているとしか思えないのである。
エネルギー政策をどうするかは、今後の日本の生き方を左右する国家的な課題である。そのための真摯(しんし)な議論を妨げているのは「首相の進退」という壁である。 廃炉時期などの数値目標も設定されず、脱原発を埋めていく再生可能エネルギー導入などの具体策も明らかにされなかった。 首相が「脱原発依存」を唱えるのなら、それを実現する土俵を整えるのが先である。 菅首相は、自らの提起の重さに気付くべきだ。
・フクシマに学んで 脱原発社会へ踏み出そう
菅直人首相は、原発のない社会を目指す考えを表明したものの、閣内の合意も具体策もなく、反発を受けると、腰砕けになった。 「菅おろし」の政局も絡み、原発政策の行方はいまだに不透明だ。 しかし、私たちは福島第1原発事故の過酷な被害を目の当たりにした。故郷を追われた福島県民は数万に上り、広範な地域で住民が放射能という見えない恐怖に脅かされている。
汚染された環境は復元できないかもしれない。被害は甚大で長期に及び、見積もることさえ不可能だ。 人間の技術では制御しきれない原子力エネルギーに依存し続けることはもはやできない。 原発をなくす道筋を真剣に探る時が来ている。
*廃炉の工程表早急に
電力供給の約3割を占める原発を直ちに全面停止すれば、混乱が予想される。段階的に進めざるを得ない。廃炉の手順を示す工程表を早急に作る必要がある。 当然、新設はしない。事故を起こした福島第1原発の1号機は運転40年目の老朽機だった。最長40年をルールとし、運転年数30年以上の原発の廃炉の検討から始め、活断層に近いものなどは繰り上げてはどうか。 代替電源として、自然エネルギーの普及を急ぐ。とりわけ現状で電源の1%にすぎない風力、太陽光、バイオマス、地熱などの育成に全力を注ぎたい。
首相は、大型水力を含めて総電力の9%になる自然エネルギーの割合を、2020年代の早い時期に20%に高める目標を打ち出した。これを達成すべきだ。 風力などの電気を電力会社に買い取るよう義務づける再生エネルギー特別措置法案が、実現への第一歩となる。今国会で成立を望む。
*定着させたい省エネ
自然エネルギーは世界的な成長産業で、現在は割高なコストも低下していくだろう。政策を総動員して、開発を加速させることが肝心だ。 原発が安上がりなエネルギーに見えたのは、国から陰に陽に支援を受けているからだ。 電気料金に上乗せされる電源開発促進税は、年間約3500億円に上る。これが電源立地交付金のほか、原子力政策の基本方針である核燃料サイクルの研究開発費に充てられている。
使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉やプルサーマル発電で使う核燃サイクルは、ほとんど破綻している。もう見切りをつけよう。 これまで先送りされてきた使用済み核燃料の最終処分も、避けて通れない問題だ。 再処理がもたつく間に、使用済み核燃料は各地の原発敷地内にたまり続けている。 万年単位の保管が必要な核のごみは処分候補地すらなく、技術も確立されていない。サイクルを放棄すると同時に、最終処分問題の論議を急がねばならない。
既存電力会社の地域独占体制の見直しも検討課題だ。 発送電分離は新たな電力事業者の参入を促し、自然エネルギー普及のカギを握る。 送配電網は公共財だ。国有化も選択肢の一つではないか。 広まりつつある節電を一時の我慢ではなく、ライフスタイルとして定着させていきたい。生活が変われば、家電製品などの省エネ化も進み、産業界も活気づく。 「原子力が温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギー」という言い方は、福島の大惨事の後では何の意味も持たない。結局、温暖化対策の王道も省エネだ。
*北海道こそ先進の地
北海道も脱原発と自然エネルギーの振興に向けた独自の未来図を描くべきだ。 北海道電力の発電量のうち泊原発が占める割合は38%と高い。一方、道内の風力発電の潜在能力は全国一とも言われる。 家畜のふん尿や間伐材を使ったバイオマス、広大な土地を生かした太陽光など自然エネルギーの先進地となる可能性を秘めている。
分散型の発電設備は、地域活性化にも役立つ。 泊原発で万一の事態が起きれば、1次産業と観光を振興の軸に据える北海道は立ち直れまい。脱原発の方針は、豊かな自然をアピールする武器ともなるのではないか。
北電には、自然エネルギーの受け入れに最大限の配慮を求めたい。送電網の強化が必要な場合は、自治体や事業者と費用負担について誠実に話し合う姿勢が求められる。 脱原発が克服すべき課題は多岐にわたる。省エネや環境ビジネスの起爆剤となり得る半面、技術革新など不確定な要素も前提にしている。 「脱原発は非現実的」という声は根強い。しかし、破局におびえながら暮らす現実を受け入れるわけにはいかない。原発のない未来は、挑戦しがいのある選択だ。(北海道新聞)
〈毎日新聞〉
・「脱原発」表明 目指す方向は評価する
菅直人首相が13日、記者会見し、原発への依存度を今後、計画的、段階的に下げていき、将来的には原発がなくてもやっていける社会の実現を目指すと表明した。国のエネルギー政策を抜本的に見直す「脱原発」表明である。
原発への依存を減らしていくこと、そして現実的にもそうした方向にならざるを得ないことは、私たちもこれまで何度も指摘してきたところだ。その考え方については基本的に支持し、評価したい。
しかし、首相のこの日の会見ではあまりに具体性が乏しい。将来とは一体、いつごろを考えているのか。代替エネルギーをどうやって促進していくのか。何より、菅首相が「私自身の考えを明確にしたい」と前置きしたように、これは内閣、あるいは民主党も含めた政権としての方針なのか、はなはだ心もとない。 いずれ遠くない時期に退陣するであろう首相だ。まず、政府・与党としての考えをまとめる作業を急いでもらいたい。
菅内閣では九州電力玄海原発の再稼働問題をめぐり、首相と海江田万里経済産業相との間で「不一致」が問題になったばかりだ。一連の経過に対し、首相は会見で「私の指示が遅れ迷惑をかけた」と改めて陳謝したが、今回の「脱原発」表明についても、早くも「どこまで閣内で議論をしているのか」という疑問の声が出ている。 もちろん、首相のリーダーシップで進めていくことは必要だ。しかし、民主党の執行部でさえ菅首相と距離を置き始め、絶えず退陣時期が焦点となっている現状を考えれば、個人的な意見の言いっぱなしで終わる心配がある。
一方、菅首相は、企業や各家庭の節電の努力の結果、今年の夏から冬にかけては「十分に必要な電力供給は可能」と明言したが、もっと具体的な数字を挙げて説明しないと説得力を欠く。 さらに来年夏以降に関しては、天然ガスを使う火力発電所の活用などを挙げたが、「計画を立てていきたい」と語るだけだった。これでは、ただでさえ方針が二転三転する菅内閣に不信感を強めている産業界などは納得しない。
国民の安全と暮らし、経済活動をどう保っていくか。確かに首相がいうように国民が選択すべき政治課題である。いずれは総選挙の大きな争点ともなるだろう。だからこそ、政権与党の責任として民主党の考えをまとめることが必要だ。 首相はこの日も退陣時期を明確にしなかったが、まさか「脱原発」を自らの延命の材料にするつもりはなかろう。次期代表を決める代表選でもきちんと論議すべきである。
〈朝日新聞〉
・脱原発―政治全体で取り組もう
菅直人首相がきのう記者会見し、「脱原発」をめざす方針を明確にした。「将来は原発がない社会を実現する」と初めて言い切った。 国策として進めてきた原発を計画的、段階的になくしていくという政策の大転換である。
私たちは13日付の社説特集で、20~30年後をめどに「原発ゼロ社会」をつくろうと呼びかけた。首相は目標年次こそ示さなかったが方向性は同じだ。首相の方針を歓迎し、支持する。
退陣を表明した首相が、国の根幹となり、社会のあり方を決めるエネルギー政策の今後を方向づけていいのかという意見はあろう。 確かに最終目標として原発廃に踏み切れるのか、何年かけて実現するのかといった点は、そう簡単に国民的な合意は得られまい。 だが、自然エネルギーを飛躍的に普及させ、原発への依存を減らしていく方針への異論は少ないはずだ。誰が首相であっても進めなければならない、焦眉(しょうび)の政治課題なのだ。 ただ、首相の今回の方針も、例によって内閣や民主党内の論議を積み重ねたものではない。脱原発の具体策を示したわけでもない。そのぶん、発言の唐突さは否めない。
民主党はかつて原子力を「過渡的エネルギー」としていたが、政権をとった一昨年の衆院選で原子力利用に「着実に取り組む」と方針を転換している。菅首相も原発依存を高める計画を閣議決定し、原発の海外輸出を成長戦略に位置づけていた。 こうした経緯を総括し、まず民主党としての考え方を明確にしなければ、首相発言は絵空事になりかねない。 自民党は過去の原子力政策を検証する特命委員会を設けて議論を始めている。電力業界や経済産業省とともに経済性を重視し、安全性を犠牲にしてこなかったか。真摯(しんし)な反省が不可欠だ。それなくして、新しい政策は説得力を持たないだろう。
エネルギー政策の転換を探る超党派の議員による勉強会も発足した。脱原発への機運は確実に高まっている。 だからこそ首相が交代した後も、この流れが変わらぬような道筋をつけてほしい。 最悪の原発事故が現実のものとなった以上、もはやスローガンを唱えるだけでなく、脱原発への具体的な手法と政策を真剣に検討しなければならない。 いまこそ、与野党を問わず、政治全体として脱原発という大目標を共有して、具体化へ走り出そう。
〈読売新聞〉
・脱原発宣言 看板だけ掲げるのは無責任だ
深刻な電力不足が予想される中で、脱原子力発電の“看板”だけを掲げるのは無責任だ。
菅首相は13日の記者会見で、「原発に依存しない社会を目指すべきだ。計画的、段階的に依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」と述べた。 日本のエネルギー政策を大転換する方針を示したものだが、原発をどのように減らしていくのか、肝心の具体策は示さなかった。
原子力発電を補う代替エネルギーの確保策が、不透明なままだったことも問題である。 首相は、太陽光や風力などの自然エネルギーを「ポスト原発」の有力候補と考えているようだ。 自然エネルギーの普及は促進すべきだが、現時点では総電力の1%にとどまり、発電量は天候などで変動する。コストも高い。
量と価格の両面で難題を抱えており、近い将来、原発に代わる基幹電力の役割を担えるほど見通しは甘くない。 火力発電で急場をしのげても、燃料費がかさんで電力料金が上がれば、産業の競争力低下を招く。工場の海外移転による空洞化も加速して、日本経済は窮地に立たされかねない。 安全確保を徹底しつつ、原発利用を続けることが、経済の衰退を防ぐためには欠かせない。
首相はまた、当面の電力不足について、節電などで「この夏と冬に必要な電力供給は可能だ」との見通しを述べたが、その根拠についての言及はなかった。 企業の自家発電など「埋蔵電力」も活用できると見ているようだが、どの程度の供給余力があるのか、手探りの状態にある。 代替電力の展望もないまま原発からの脱却ばかりを強調するのは、あまりにも非現実的だ。
原発のストレステスト(耐性検査)を巡る閣内不一致によって、九州電力玄海原発など、定期検査で停止している原発の再稼働に見通しが立たなくなっている。 首相が、ストレステストの判断が妥当なら「再稼働を認めることは十分にある」と述べたのは、当然のことである。 ただし、脱原発を掲げる政府が運転再開を求めても、地元自治体は戸惑うだろう。 首相には、福島第一原発の事故に伴う国民の不安に乗じ、脱原発を唱えることで、政権延命を図る思惑もあったのではないか。場当たり的言動が、多くの混乱を引き起こしている。首相は、そのことを自覚すべきだ。
・・・
・汚染水配管、完全にちぎれる…修理見通し立たず
東京電力は14日、福島第一原子力発電所の汚染水処理システムが配管からの漏水で停止している問題で、ポリ塩化ビニール製の配管接続部が完全にちぎれていたと発表した。
破損部周辺は、放射線量が毎時100~150ミリ・シーベルトと非常に高く、作業員1人あたり1~2分程度しか作業を続けられない。東電では同日中に稼働を再開したいとするが、放射線の遮蔽や作業方法について慎重な検討が必要で、修理の見通しは立っていない。 水漏れは13日、仏アレバ社製の放射性物質の凝集・沈殿装置で、薬液を汚染水に注入する配管で起きた。(読売)
・浜岡原発再開は別検査で判断 官房長官「統一見解と違う次元」
枝野幸男官房長官は14日午前の記者会見で、菅直人首相の要請を受けて運転を停止した中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、原発の再稼働に関する政府統一見解の枠外との認識を示した。政府統一見解では停止中の原発の再稼働には、比較的簡易な1次評価による安全確認をした後としているが、浜岡原発の再稼働にはさらに慎重に判断する考えだ。 枝野氏は浜岡原発について「停止要請したのは、地震の発生確率が高いためだ。それを前提にした対応が図られているのか。(政府統一見解とは)少し違う次元で検討する必要がある」と指摘。 浜岡原発の再稼働にあたっては、1次評価に加えて、別の検査によって安全を確認することが必要との考えを示した。(中日新聞より)
・関電、高浜原発4号機のプルサーマル発電見合わせへ
関西電力は13日、高浜原発4号機(福井県高浜町、87万キロワット)で、プルサーマル発電を見合わせる検討に入った。7月下旬までに始まる定期検査が終わり次第、始める予定だった。国の原子力政策が揺れ、通常の定期検査中の原発の運転再開すら見通せない中、地元の同意が得られないと判断した。
使用済み核燃料を再処理してリサイクルするプルサーマル発電は、毒性の高いプルトニウムを扱うことから反対論も根強い。プルサーマル計画の見合わせは、他電力会社の取り組みや国の核燃料サイクル政策にも影響がありそうだ。
今回の定期検査ではプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を新たに装填(そうてん)する予定だったが、関電は従来のウラン燃料のままとする方向。高浜町でも懸念の声があり、関電幹部は「地元も判断を留保せざるをえない状況だ。無理はしないということだ」としている。(朝日)
・脱原発 国は一貫戦略を/三村知事
菅直人首相の「脱原発」表明を受け、三村申吾知事は14日午前、「首相個人の発言か、内閣で統一した見解か真意が分かりかねる。水、食料、エネルギーなど国家の基幹に関わる問題は、政府として具体的、一貫した戦略を示してほしい」との見解を示した。青森市の青森国際ホテルで行われた、県内原子力施設に関する安全対策の最終回の県民説明会で、参加者の質問に答えた。
2番目に発言を求めた六ケ所村の男性は「豊かな生活を守るのが知事の役目だが、原子力の火を消したら本県はどうなるか慎重に考えてほしい」とし、知事の見解を求めた。三村知事は「首相の真意がぶれ、その場の思い付きなのか、意思決定の重要な機関である内閣の話なのか、分かりにくい」と述べ、二転三転する国の方針に疑問を呈した。 続いて発言した女性は「知事に脱原発をお願いしたい。経済よりも命」と発言、会場からは拍手が起こった。 県民説明会は、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、県内原子力施設の安全対策について県民の意見を聞くため県が主催した。(東奥日報)
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