2010年10月24日日曜日

『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』のご案内


 「安保は軍事同盟ではない」。これが日本政府の公式見解だ。だとしたら、「日米同盟」の法的根拠とは何か。あるいはその逆に、安保が軍事同盟であるなら安保条約のどこにその根拠を見出しうるのか。また、かつて吉田茂は旧安保条約を米軍の「駐兵条約」と言ったが、ではそれを改定した現安保条約は在日米軍の無期限駐留を米国に保障した条約という以上の、何か具体的な軍事的意味を持つものなのか。

 岸信介は条約改定によって米国が「対日防衛義務」を負い、それによって安保は日本の「平和と安全」を「保障」する条約になったと語った。しかし、吉田茂もまたそれと同じことを語り、旧条約の国会「承認」を強行したのである。

 安保条約第五条一項。この条項はこれまで日米の「共同作戦」を規定した条項だと解釈されてきた。本書はそのような解釈に真っ向から挑戦する。北大西洋条約を始めとした軍事同盟条約と安保条約の条文の一字一句をつぶさに対照しながら、本書は安保条約が結局のところ「改定された駐兵条約」であり、1970年代末期に登場した日米同盟論が、「在日米軍の無期限駐留のための安保条約の無期限延長」を正当化するために捏造された、条約上の根拠なき政治宣言に過ぎないことを明らかにする。

 その意味で本書は、安保を「冷戦の産物」と捉え、軍事同盟規定した旧社会党や共産党の安保=対米従属論、さらには「60年安保」後の護憲運動が「九条を守る」ことを第一義に置き、安保問題を後景化させてきたことなどをも批判的検討の俎上にのせている。「日米同盟という欺瞞」を暴き、「日米安保という虚構」の物語を解体し、在日米軍の無期限駐留を阻むためには避けて通ることができない課題としてそれはある。
 読者の忌憚無き批判を仰ぎたい。

[本書の構成]

第一章 日米同盟という欺瞞
第二章 日米安保という虚構(Ⅰ)――日米「共同防衛」の幻影
第三章 日米安保という虚構(Ⅱ)――安保=日米軍事同盟論をめぐって
第四章 憲法九条の死文化と日米安保――国家の自衛権をめぐって
第五章 憲法九条の死文化のメカニズム――「普通の国家」と霞ヶ関イリュージョン
第六章 国連憲章第五一条と「戦争と平和の同在性」
終章 日米同盟を再考し、日米安保に期限をつけるために

目次の詳細はhttp://nakano-kenji.net/book/2010.mokujiを、
「まえがき」はhttp://nakano-kenji.net/book/2010.maegakiを、
「あとがき」はhttp://nakano-kenji.net/book/2010.atogakiをご覧ください。

『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』のための、著者自身による広告

 天木直人さんが、『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』を読んだそうだ、と教えてくれた人がいる。
 昨日(12/4)付の氏の「メルマガ」で、今日の「テレ朝サンデーフロントライン」に出演の後、
「なおついでにご報告させていただきますと、新幹線が遅れたおかげで車中で『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』(中野憲志著 新評論)という本を読了しました。今までにめぐり会った事のないほど共感を覚えた本でした。その読後感は機会を改めて私のメールマガジンでお伝えします」と書かれていたそうである。

 私は評論家でも作家でもないが、どのような人であれ、自分が書いた本を「今までにめぐり会った事のないほど共感を覚えた本」と評されることほど、嬉しい言葉はないのではないだろうか。それを自分より一世代上の、外交・安保問題を専門とする人から言われたことを、私は素直に喜びたいと思う。私は天木氏のメールマガジンの読者ではないが、氏が拙著の批評を公表されるのを心待ちにしたいと思う。

 天木氏から、これ以上にないと思える賛辞をいただいたと知って、はたと気づいたのは、10月にほぼ一年ぶりでこのブログを再開してから、『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』に関する自分自身の文章をひとつも書いていないことだった。

 そう思ってこのページを立ち上げることにしたのだが、昨日「百年を歌う」に参加し、中山千夏さんの八丈島の民謡、アイヌの昔話と絵本『となりのイカン』の朗読やパギやん(趙博)との掛け合い、大熊ワタルとジンタらムータ板橋文夫トリオ、朴根鐘とユッケジャン・バンド、寿[kotobuki]の歌と演奏を聴いた興奮、そしてその後に考えさせられたことから、未だ自分の思考が自由になっていない。頭の風通しがよくなるのを、もう少し待ってみたい。

 それともう一人、『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の広報をしていただいた人がいる。前田朗さんだ。しかも前田さんには、一昨日、『平和力養成講座 非国民が贈る希望のインタビュー』を贈呈していただいた。ここに紹介し、氏への謝辞に代えたい。

 一冊の本が本として、とりわけ私のような者のそれが社会的に成立する、つまり本が売れない時代の、ネット消費社会の中で、売れそうもない作者による売れそうもないテーマの本が世に出て生き延びてゆくためには、出版を勧めていただいた新評論の人々はもとより、さまざまな人々の力添えぬきにはありえない、と今更のように思う。このブログの読者の中にも、力添えをしてくださっている人々がいることを私は知っている。改めて感謝を申し上げる次第である。
12/5/2010

天木直人さんの『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の書評

 天木直人さんがご自身のメルマガで、四回にわたり『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の書評を連載されていたようだ。感謝。
 有料のメルマガということだけれど、関心がある人はこちらからどうぞ。2010年12月9日(第1回)から同12日(第4回)まで。

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