2009年3月27日金曜日

「海賊対策」と対テロ戦争---(3)国連安保理決議と米国のソマリア介入No.2

「海賊対策」と対テロ戦争

(3)国連安保理決議と米国のソマリア介入


2 内戦の泥沼化と「ソマリア・コンタクト・グループ」の結成

 ブッシュ政権八年の米国のアフリカ戦略は、対テロ戦争と開発戦略を通じた経済統合を両輪にしてきた。一方において、親米政権の形成と反米イスラム武装勢力の軍事的解体、他方において石油、天然ガス、鉱物資源、海底資源などの開発権益の保全と新たな開拓。そのために有償・無償の軍事援助、政府開発援助(ODA)、「人道援助」が使い分けられてきたのである。

 二〇〇二年のソマリアの隣国ジプチ共和国での基地建設と、ソマリア国内におけるCIAの政治工作に始まったブッシュ政権のソマリアへの軍事的・政治的介入は、アフリカ大陸の中でもこうした傾向が最も顕著に現れていた。その意味で、グローバル対テロ戦争の中に位置づけられたブッシュ政権のソマリア政策は、恐ろしくはあるが、逆に非常に分かりやすいものであったということができる。

 記憶を呼び戻すために、二年前の二〇〇七年一月の下の記事と、参考資料に目を通してほしい。

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 ソマリア沖に米軍展開 イスラム勢力の逃亡阻止
 【共同通信】2007/01/03

 マコーマック米国務省報道官は3日の記者会見で、ソマリアの首都モガディシオから撤退したイスラム原理主義勢力「イスラム法廷会議」(イスラム法廷連合のこと。引用者)メンバーの国外逃亡を阻止するため、米軍がソマリア沖に展開していることを明らかにした。
 また暫定政府部隊とエチオピア軍がモガディシオを制圧したことを受け、今後の対応を関係国間で協議するため「ソマリア連絡調整グループ」(Somalia Contact Groupのこと。引用者)の会合を5日にケニアで開く予定だと述べた。米国の呼び掛けによるもので、フレーザー国務次官補(アフリカ担当)が共同議長を務める。
 報道官は、イスラム法廷会議のメンバーがアルカイダを含む国際テロ組織と関係を持っていると指摘。国外逃亡は「われわれの大きな懸念」と強調し、米軍展開は「海上の逃げ道をなくすため」と説明した。

◎参考資料⇒「ソマリアで生じている事態および米国のソマリア軍事介入に関する日本NGOの声明」(2007年2月2日)
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 ブッシュ政権の全面的なソマリア軍事介入を決定付けたのは、前年の二〇〇六年の上半期にイスラム法廷連合が全土を支配下に置く気配をみせ、ついに六月、首都モガディシュを制圧したことだった。これを機に、米国は二〇〇四年にケニアのナイロビに亡命政府として樹立された暫定連邦政府およびこれへの軍事的支援を行っていたエチオピア政府を、さらにその背後から、しかし公然と支援するようになる。

ソマリア内戦の経緯については、AFPの「ソマリア紛争年表」、その他の資料を参照してほしい。

 こうした米国のソマリア介入を国際的に事前承認し、バックアップする非公式機関として、二〇〇六年六月に米国自身のイニシアティブによってニューヨークで組織されたのが、「ソマリア・コンタクト・グループ」(国際ソマリア連絡調整グループ。ICGS)である。ICGSのオリジナルメンバーは米国、英国、イタリア、EU代表部と委員会、スウェーデン、そしてタンザニア。国連とアフリカ連合はアラブ連盟、ソマリア開発政府間協議(Intergovernmental Authority on Development )とともに「オブザーバー」としてこれに参加した。

 以降、米国がヘゲモニーをとる形で国連(安保理)を巻き込みながら、暫定連邦政府を軍事的・政治的に支え、「イスラム原理主義過激派」をソマリアから放逐する、いわゆる「ソマリアの平和と和解」(ICGSのスローガン)に向けた「国際社会」の介入が本格化する。二〇〇六年十二月のエチオピアのソマリア侵略、そして年明けの米軍の空爆・ミサイル攻撃は、こうした米国版「ソマリアの平和と和解」戦略の本質を、最も露骨な形で全世界に示したのである。その結果もたらされたものが、上に紹介した日本の国際協力NGOの声明の内容である。