玄海と川内が危ない!(2)
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玄海町の町長が、再稼働同意を撤回し、佐賀県知事が「ストレス・テスト」の結果が出るまで県としての判断を延期すると明言した。ごく常識的に考えるのであれば、これで玄海町以外の立地自治体が名乗りを上げるのでなければ、停止中原発の「ストレス・テスト」結果判明前の再稼働は、ほぼありえなくなった、と言ってよいだろう。
5日の「ストレス・テスト」宣言から、喜ばしき想定外の展開をみた再稼働問題。しかしだからと言って、停止中原発の再稼働がなくなったわけではない。時期がズレただけのことだ。また、不安全な稼動中原発の稼働停止は、何も決まっていない。 思わぬ形で転がり込んだ時間を、原発再稼働における市民の「安全・安心」を総点検する、そのための猶予期間として活用したいものである。
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国(経産大臣・保安院)が停止中原発の「安全を保証する」と言い、再稼働を要請しておきながら、国(原発担当大臣・原子力安全委員会)が、再稼働を要請した原発を「優先させながら」(???)、「ストレス・テスト」をこれから行うのだという。
そして国(内閣総理大臣)は、再稼働を優先させるのか、それともストレス・テストを優先させるのか、どちらとも言わない。何をどうしたいのか、何も明言しない。
おそらく今日、原発立地自治体の関係者は、一斉にドン引きしてしまったに違いない。各電力会社も、途方に暮れているかもしれない。これでまず、「7月中の再稼働は不可能になった」と、普通は考えるからである。「お上」が何をどうしたいのか、わからなくなってしまったからである。
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・首相、原発再稼働の判断留保…新基準等作成まで
菅首相は6日の衆院予算委員会で、運転停止中の九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)をはじめとする全国各地の原発再稼働について、「(安全性確保の)新たなルールを作り、国民が納得できるよう、海江田経済産業相と細野原発相に指示を出している」と述べ、原発の運転再開を判断するための新たな基準やルールを作成するよう、関係閣僚に指示したことを明らかにした。 新ルール策定まで、再稼働の判断を留保する考えを示したものだ。
玄海原発を巡っては、海江田氏が再稼働を地元に要請済みで、政府内の調整不足が表面化した形。同原発の再稼働が遅れるのは必至だ。 首相は答弁で、原発再稼働について、東京電力福島第一原発事故を踏まえ、「従来のルールなら経産省原子力安全・保安院、経産相の判断で(再稼働を判断)できるが、国民に納得をいただくのは難しい」と指摘。そのうえで、原発の耐久性を調べるストレステスト(耐性検査)にも触れ、「ストレステストも含め、日本のすべての原発を共通のルールでチェックできるような形を検討してくれと(経産相らに)指示した」と説明した。(読売)
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普通は、「留保」したのだと考える。しかし、この人は「新基準作成」まで再稼働の判断を、国として「留保」するとは、一言も言っていない。何も言明してはいないのだ。この読売の記事は、マスコミの「先走り報道」の典型である。
「玄海と川内が危い!」は、「当面」、解除できるだろうか? 普通は、そう考えるだろう。しかし、安心は禁物だ。誰がどう解釈しても辞任表明としか理解できない言葉を発しながら、「満身創痍、刀折れ、矢尽きるまで、力の及ぶ限りやるべきことをやっていきたい」と素面で語る人が首相になっている国のこと。
警戒を解くのは、まだ早い。
以下、誰がどういう立場で、具体的にどういう日本語で、何を語ったか、注意しながら確認しておこう。
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・佐賀県知事、玄海再開の判断延期 政府、全原発の安全検査追加
海江田万里経済産業相は6日、九州電力玄海原発2、3号機など運転停止中の原発の再稼働問題を受け、経産省原子力安全・保安院が追加の安全対策として安全検査「ストレステスト」を近く実施することを表明した。 佐賀県の古川康知事は、7月中旬を予定していた玄海原発の運転再開の判断時期について「全く飛んだ」と指摘。「(判断は)検査を待って行うのが妥当」と話し、大幅に遅れる可能性を示唆した。
安全検査は、稼働中のものも含めた原発すべてを対象とし、欧州連合(EU)の各国が6月から実施している方式を導入する。原発周辺の住民や地方自治体の不安に応えることを目指す。(西日本新聞)
・7日に玄海原発で官房長官と協議 佐賀県知事、追加対策で
佐賀県は6日、海江田万里経済産業相が原発の追加安全対策として安全検査「ストレステスト」の実施を表明したことを受け、古川康知事が7日に枝野幸男官房長官を訪ね、定期点検を終えた九州電力玄海原発2、3号機(佐賀県玄海町)の再稼働をめぐり、地元判断の在り方などを協議する(???)と発表。
古川知事は7月中旬を予定していた運転再開の判断時が大幅に遅れる可能性を示唆しており、官房長官との会談で政府の統一見解を確認し、地元自治体との話し合いの道を探るとみられる。 細野豪志原発事故担当相は6日、ストレステスト実施と玄海原発の再稼働は「当然、何らかの関連を持ってくる」と述べた。【共同通信】
・玄海原発再開に関する緊急決議案を可決 長崎県議会
定期検査で停止したままの九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開に玄海町長が同意したことを受け、長崎県議会は5日の本会議で、古川康・佐賀県知事が再開容認を最終判断する際、長崎県側の意見を反映するよう同知事に求める緊急決議案を全会一致で可決した。
決議文は「万が一の場合に被害を受けることは佐賀県民と同様」と指摘。運転再開の判断時に中村法道・長崎県知事や同県議会と協議するよう要請した。さらに、国に対し、原発の安全対策などについて長崎県で説明会を開くよう求める緊急決議案も可決した。 6日には長崎県議会副議長が、副知事や同県松浦市の友広郁洋市長らとともに経済産業省に要請する。(佐賀新聞)
・佐賀県主催「原発説明会」応募3倍 佐賀市は20倍
佐賀県が8日に開催する玄海原発(東松浦郡玄海町)の安全性についての県民説明会の申し込みが5日、締め切られた。定員370人に対して1092人が応募、倍率は約3倍となった。佐賀市は約20倍の申し込みがあったのに対し、定員の半数に満たない市町もあり、関心を持つ県民からは「参加機会が平等とは言えない」と不満も漏れた。 定員は立地自治体を重視し、玄海町と唐津市が各50人、残る市が20人、町が10人。応募状況は定員超えが13市町、定員と同数が2町、定員割れが5市町だった。
佐賀市が399人で最も多く、唐津市が229人、説明会開催地の多久市が64人、伊万里市が58人。玄海町は定員と同じ50人だった。佐賀市には市外からの応募もあり、19・95倍に膨らんだ。同市の担当者は定員設定について「一律20人(???)というのはどうか。配分をもっと考えてほしかった」と話した。 唐津市は定員の4倍超の申し込みがあり、同日午後5時半から抽選会を実施した。当選した無職男性(69)は「こんなやり方はアリバイ作り。説明を聞きたい人がいれば何度でも開けばいい。なぜ、地元の唐津市や玄海町で開催しないのか」と訴えた。
経産省が実施した県民説明番組(6月26日)は専門用語も多く、「分かりにくい」という不満の声が上がった。応募した嬉野市の前田美雪さん(35)は「説明する側が『伝えた』と満足するのではなく、聞いた側が『分かった』と納得できる会にしてほしい」と要望した。
一方、鹿島、太良、大町の県西部3市町は玄海原発との距離もあり、定員の3~4割にとどまった。定員割れした市町は職員や区長会などから補充する考えで、定員を3人下回った上峰町は「多久市で夜開催という時間的、地理的な影響もあったのではないか」と述べた。 県民説明会は8日午後7時から、多久市中央公民館で開かれる。
・原発再開問題 玄海に続き川内も容認? 周辺自治体は慎重姿勢
佐賀県の九州電力玄海原子力発電所2、3号機再稼働に向けた動きを、九電川内原発1号機が定期検査で停止している鹿児島県の自治体はどう受け止めたのか-。立地する薩摩川内市は運転再開へと大きくかじを切ったように見える。今後の予定も含め、関係者の声をまとめた。
■「条件一つクリア」
九電は当初、川内原発1号機について「7月下旬の発電再開」を計画していた。2号機の定期検査も9月に迫るなか「川内は海抜13メートルで津波も防げる」「全電源が喪失しても安全を確保できる」と主張。経済産業省原子力安全・保安院も「九電の対策は適切。運転再開に支障はない」と歩調を合わせている。
佐賀県玄海町の岸本英雄町長が再稼働に同意した4日、薩摩川内市の岩切秀雄市長は町長の判断自体については「いい悪いとは言えない」と評価を避けた。ただ、市長は川内1号機の再開条件を(1)九電の安全対策(2)玄海原発の運転再開(3)国の住民説明会(4)市議会の同意-としており「条件の一つがクリアされた。玄海町長と同様の手順、手続きを踏まえたい」と述べ、再開容認の姿勢を一段と鮮明にした。 岩切市長は、九電の安全対策も「国が責任を持って大丈夫と言っているのだから了としたい」と評価。自らの判断を示す時期は「最終的には議会(の判断後)だと思う」と話す。
■理解は「国の責任」
同県の伊藤祐一郎知事は「鹿児島県は国による川内原発30キロ圏の住民を対象とした国の公開説明会が全てのスタート」とする。30キロ圏の9市町を対象に住民説明会を7月下旬-8月に複数回開く方針で保安院と調整中とする。規模は「それぞれ数百-数千人規模」。知事は今は賛否を語らず、国の責任で住民から理解を得る必要があるとの立場を示す。
玄海町長の同意に呼応するかのように、動きは鹿児島県議会でも加速しそうだ。4日の原子力安全対策等特別委員会第2回会合。九電副社長との質疑を終えた中村真委員長は早々に「安全性への懸念や疑問は出尽くした」(???)と語った。委員会の運転再開への是非は、11日に予定する保安院の参考人招致後に判断したいとしている。 これには「県も県議会も国イコール保安院任せ」の批判も出てきそうだ。
■「協定の拡大必要」
一方、周辺自治体からは早期の運転再開に慎重な意見も目立つ。放射性物質が拡散した福島第1原発事故を受け、国が原発8-10キロ圏としてきた原子力防災対策重点地域(EPZ)や九電との原子力安全協定の拡大を望む声も高まっている。 川内原発の協定は、放射性物質の管理や自治体の立ち入り調査権などを定め、今は九電と県、薩摩川内市の3者だけで結んでいるが、日置市の宮路高光市長が九電に正式要請し、出水市の渋谷俊彦市長も再開条件の一つに掲げている。 これに対し、九電は「薩摩川内市以外は県との協定で対応できる」(古城悟執行役員)と否定的で、今後の焦点の一つになりそうだ。(西日本新聞)
〈再録〉
・原発:福島と同型は廃炉も…経産相、今後の検討課題
国際原子力機関(IAEA)閣僚級会議に出席中の海江田万里経済産業相は(6月)20日、当地で会見し、東京電力福島第1原発1~5号機に使われている米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した原子炉格納容器「マーク1」について、安全性の観点から、廃炉を含めた検討が今後の課題になるとの考えを示した。震災後、閣僚がマーク1の廃炉の可能性に言及したのは初めて。 海江田経産相は「(マーク1は)40年以上が過ぎている。(設置から)30年で大規模点検をし、以後も頻繁に点検をしている」とした上で、「どんな安全対策をとれば良いか、一定期間がきたら廃炉にすべきかどうかが課題だ」と語った。
IAEAが過去に原子力安全・保安院を経産省から独立させるよう助言したものの「生かされなかった」と指摘し、「原子力に関係した人の間で安全性に対する根拠の乏しい考えがあった」と批判。原子力安全・保安院の独立を「2012年がめど」との考えを示す一方、原子力利用を後退させる考えはないことも強調した。
マーク1は、GE社が60年代に開発。耐震強度の問題が指摘され、米原子力規制委員会(NRC)は80年に再評価したが、「(問題を)無視できる」と結論づけ、日本も同様の国内指針を作った。同型炉は、米国は地震の少ない東部に24基、日本は福島第1や敦賀、浜岡(廃炉決定済み)、女川、島根の5原発に計10基。ほか台湾2▽スイス1▽スペイン1。【毎日・ウィーン会川晴之】
・原発再稼働、国の対策「不十分」 知事、県議会に「認めぬ」 /福井
定期検査中の原発の再稼働を認めない判断について、西川一誠知事は(6月)22日開会の県議会6月定例会本会議で「国として立地地域の不安に真摯に向き合う姿勢が見えない。定検中の原発の再起動は認められない立場に何ら変わりはない」と説明し、理解を求めた。県議からも知事の判断を支持する声が聞かれた。
東京電力福島第1原発事故を受けて、国は5月6日に緊急安全対策の確認結果と基準を示したが、知事は「短期対策と津波だけに偏った応急対策の一部に限られ、地震対策や高経年(老朽)化原発の対策がいまだ不十分」と指摘。今月7日に政府がIAEA(国際原子力機関)閣僚会議に示した同事故の報告書については「いつまでに何をするのか、具体的なスケジュールが明確でない。地震対策の影響や高経年化の検証が不十分。浜岡原発のみに運転停止を要請し、他が安全とする基準がはっきり示されていない」などと疑問点を挙げた。
◇県議会の反応
知事の発言について、県議会の過半数を占める自民党系会派「自民党県政会」の山岸猛夫幹事長は「ボールは国が持っている。国が運転再開を急ぐというなら、早急にもっと合理的な説明をするべきだ」と指摘する。別の同会派幹部は「知事が振り上げた拳を下ろさせるのも議会の役目だが、今の国の説明では誰も納得していない。今議会中に、議会が了承することはあり得ない」と解説した。
一方、民主党系会派「民主・みらい」の鈴木宏治会長は「国の説明は『安全だ、安全だ』というだけで、従来の説明の域を出ていない。海江田万里経済産業相は民主党の大臣だが、大臣が来たからと言って再稼働できる訳がない」と批判。個人的見解とした上で、「一度、関西が停電したらいい。皆が電気のことについて真剣に考えられるチャンスになる」と語った。【毎日・安藤大介】