工程なき「工程表見直し」に思う
政府・東電統合対策室が、昨日、「新工程表」を発表した。
①今後3~6カ月の「ステップ2」で原子炉を「冷温停止」状態にし、
②住民避難の「解除」を開始し、
③その後3年をめどに「使用済み燃料」を「プール」から取り出す作業に着手する、以上を柱とする内容だ。
菅首相は「ステップ1」について「かなりの部分で進捗し、一部では予定を超えた進捗が見られた」と言ったという。しかし、菅内閣の自画自賛とは裏腹に、「メルトスルーを引き起こした原発災害の根本問題の解決」という点から言えば、状況は、ほとんどの部分で進捗していない。一部では「予定を越えた進捗」どころか、当初の期待を裏切る「後退」が確定的となった。(以下、工事中)
〈メルトスルーの実態把握なき「冷温停止」→「収束」?〉
私たちが知りたいのは、「工程表」の各「ステップ」の「課題」=目的ではない。課題を実現するための具体的方法とその実現可能性である。従来の、工程なき「工定表」と今回の「新工程表」に欠落しているのが、この「具体的方法」と「実現可能性」である。
しかし、もっとも根源的かつ決定的な問題は、1~3号機のメルトダウン→メルトスルーの実態が、いまだに何も分からない/政府・東電が何も公表していないことである。
たとえば、私たちは東電が今月8日、2号機の原子炉建屋内に無人ロボット(千葉工大と東北大などが開発した災害対策用の「クインス」)を入れ、「ちり」を採取する作業を実施したことを知っている。「ちり」に含まれる放射性物質の種類や濃度を分析し、原子炉などからどの程度放射性物質が放出されているかを把握するのが目的だった。その結果はどうなったのか?
また、メルトスルーがどこまで「スルー」したのか、これについても何も分からない。メルトスルー状況においてそれを把握するためのテクノロジーを私たちが持たないのだから、分からないのは当然である。
〈「冷温停止」の政治的定義〉
菅内閣・経産省-保安院による「冷温停止」の政治的定義が明らかになった。ポイントは二つ。
1、「原子炉圧力容器底部の温度がおおむね100度以下」
2、「格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制」
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「冷温」=「おおむね100度以下」? で、何が「停止」するのか? 「停止」の主語は何か?
⇒「「冷温停止」の政治と科学: 研究者のモラルが試される時」
〈「冠水」断念=放棄が意味するもの〉
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・福島第1原発:避難解除の時期示さず 工程表見直し
① 政府と東京電力は19日、福島第1原発事故の収束へ向けた取り組みと被災者支援の工程表を見直し、これまでの進捗(しんちょく)状況と合わせて発表した。4月17日の工程表発表から3カ月間で「安定的な原子炉の冷却」を目指したステップ1の「達成」(???)を宣言。今後3~6カ月で「冷温停止」を目指すステップ2も大筋で変更しなかったものの、原子炉格納容器の損傷部分の密閉は、ステップ2での達成を断念した。
避難指示については、ステップ2達成時に解除の検討、実施に入るとしたが、具体的な時期は示さなかった。 東電の事故収束の工程表と、政府が5月に策定した被災者支援の工程表はこれまで別々に改定されてきたが、今回初めて政府の原子力災害対策本部がまとめて発表した。
東電の工程表では当初、格納容器を水で満たす「冠水」による冷却を目指したが、損傷部分からの大量の汚染水漏れによって断念。1~3号機を同時に冷やす「循環注水冷却システム」で対応することになり、損傷部分の密閉とともに冠水も今回の改定で削除された。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「循環注水冷却で冷温停止状態に持ち込める見通しがついたため」(???)と説明した。
② また、冷温停止状態について
▽原子炉圧力容器底部の温度がおおむね(???)100度以下(???)
▽格納容器からの放射性物質の放出を管理(???)し、追加的放出による被ばく線量の大幅抑制(???)
--を実現した状況と初めて定義した。ただ、格納容器の損傷修復が条件でないため、ステップ2達成時でも微量の放射性物質の放出が続く可能性がある。
6月20~28日に測定された放射線量がすべて原子炉建屋から放出された放射性物質によるものと仮定した試算結果も公表。放出量は毎時約10億ベクレルと推定され、事故直後(3月15日)の同約2000兆ベクレルと比べ約200万分の1に減少。原発から新たに放出されている放射性物質による被ばく線量は、敷地境界で年間最大1.7ミリシーベルトと推定された。経済産業省原子力安全・保安院の山形浩史・安全基準統括管理官はステップ2の数値目標として「法令の制限値である年間1ミリシーベルト以下に抑えたい」と語った。
③ 放射性物質による地下水の汚染を防ぐ壁の設置は、当初より前倒しして着手するとしながらも、完成時期はステップ2の達成後3年程度の「中期的課題」とした。「使用済み核燃料の取り出し作業の開始」も新たに中期的課題に明記した。【毎日・河内敏康、足立旬子、影山哲也】
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・循環注水冷却が「命綱」
「循環注水冷却システムこそ、原子炉の冷温停止につながる道。ステップ2でも最優先で取り組む」。東京電力の西沢俊夫社長は19日の会見で、格納容器の修復を断念する代わりに放射性汚染水を浄化して原子炉冷却に再利用する「循環注水冷却」で冷温停止に持ち込む考えを強調した。だが、日米仏3カ国の原子力企業が建設した現在の汚染水浄化システムは窮余の策で、しかも耐用年数はわずか1年しかない。
原発は本来、炉心(核燃料)を冷やす水を内部で循環させ、放射性物質を外に出さない機能を備える。福島第1原発では、水素爆発などにより格納容器や配管などの重要機器が壊れて「冷やす」「閉じ込める」の機能を失った。 冷却機能回復のため、緊急的に海水や近隣のダムの水を注入したが、それが格納容器の破損部分から漏れ、高濃度の放射性汚染水となって流出した。
根本的な解決には格納容器の修復が不可欠だが、東電は今回、工程表から削除した。「目の前であふれそうになっている汚染水処理対策を優先せざるを得ない」(東電担当者)からだ。汚染水低減と炉心冷却を同時に図れる循環注水冷却は、たとえ不十分でも「命綱」となっている。 政府と東電は19日改定の工程表に、現在のシステムに代わる「本格的水処理施設の検討」を前倒ししてステップ2に盛り込んだ。だが、具体的な手法など構想は白紙。東電の担当者は「(配管からの水漏れなど)トラブルの種を減らすため配管を短くし、シンプルな設計にすべきだ」と話す。現システムの配管は総延長4キロに及び、大部分は国が放射性廃棄物施設に課した耐震基準に適合していない。余震とともに、今後は台風のリスクにもさらされる。
工程表は来年1月までに原子炉を、100度以下の「冷温停止」に持ち込むと明記した。各原子炉(圧力容器底部)の温度は19日現在、
1号機100度▽2号機125度▽3号機111度。
現システムをいかに安定的に稼働させるかが、成否を左右する。
東大の岡本孝司教授(原子力工学)は「循環注水冷却が順調に進めば、冷温停止の前倒しも期待できる。今後導入するシステムは現在の反省を生かし、トラブルの少ない日本の技術力を結集すべきだ」と話す。(「原発工程表見直し:ステップ2へ課題山積」(毎日新聞)より。
・原発収束計画 現状と見通しを正確に示せ
福島第一原子力発電所の事故収束へ、政府の取り組みは甘い、と言わざるを得ない。
政府と東京電力が、事故収束計画の初期段階であるステップ1が終了したことを踏まえて、今後の事故収束計画の改訂版を公表した。 新たな計画は、4、6月に示した従来計画と同様、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられる」状態を来年1月までに達成する、としている。 だが、放射性物質の放出をどう食い止めるのか。肝心の具体策は依然、実効性に乏しい。これでは国民が最も懸念している問題に取り組む姿勢が問われよう。
壊れた原子炉からは今も、放射性物質が漏れ出ている。東電の推計では、その量は毎時約10億ベクレルで原発周辺での被曝(ひばく)量は年間1・7ミリ・シーベルト増える。人の被曝量の基準値、年間1ミリ・シーベルトを上回る。 新計画では、原子炉の温度が下がれば放出量も減る、との見通しを示すにとどまった。漏出を食い止めるため原子炉に覆いを設置することが決まっているのは1号機だけだ。他は、がれき処理を優先して覆いの設置は先送りした。
ステップ1の終了を受けて、菅首相や細野原発相は、福島県内で自主的な避難を求めてきた「緊急時避難準備区域」を一部解除する意向を表明している。 しかし、放射性物質の漏出を食い止められないままでは、避難住民にいくら帰宅を促しても、とても納得してもらえまい。
来年1月までに原子炉を100度以下に安定して冷却する「冷温停止」状態を達成する、という目標も従来計画通りだ。だが、放射線が強いため、炉心溶融で壊れた原子炉に作業員は近づけない。 安定した冷温停止状態にあることをどう確認するのか。遠隔操作の機器を開発するなど、その手立てを明示すべきだ。
原子炉は、危機的な状況はすでに脱している。とはいえ、19日の衆院予算委員会で菅首相が「収束の方向が見えてきた」と答弁したような確かな根拠を、新計画の内容から読み取ることは難しい。 政府はこれまで、炉心溶融の実態を控えめに報告するなど、国民に不信感を抱かれるような対応をしてきた。収束作業では、現状と見通しを正確に示すべきだ。 事故を起こした炉を最終的にどう解体し廃棄するのか。新計画に言及はないが、福島県の復旧、復興の将来像を描くうえでも、政府は、責任を持って事故収束への長期展望を示す必要がある。(読売)
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私は、読売新聞の社説に何の異論もない。むしろ問題は、このような内容の社説を書く読売新聞が、なぜ社として原発推進をいまだに唱導しているのか、にある。社説の執筆者は、菅内閣ではなく執筆者が思い描く「理想的政権」であれば、「こうはならなかった」とでも考えているのだろうか?
産経新聞にも言えることなのだが、原発災害および「工定表」をめぐる分析的言辞が、自社の原発政策をめぐる「提言」の言辞と乖離していること、その二重基準に社として無自覚でいられること自体が私には信じがたい。(産経新聞は、大震災直後から南相馬市や被災地に記者を派遣し、かなり質の高いレポートを発表してきたと私は評価している)
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・汚染水浄化システム 稼働率は53%と低迷
東京電力は20日、福島第1原発にたまっている高濃度の放射性物質を含む汚染水浄化システムの稼働率は、13~19日の1週間は53%だったと発表。目標の70%に届かず、低迷している。 1時間当たり50トンと想定していた処理能力が実際には37トンにとどまっている上、配管からの水漏れ修理のため装置を長時間停止させたのが原因、と東電は説明している。
東電は当初、7月の稼働率の目標を80%に設定していたが、相次ぐトラブルを受け、13日に70%へ下方修正していた。 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「年内に20万トンを処理する目標に変更はなく、処理性能の回復に努める」と話した。(毎日)
・「地下ダム」設計着手 着工前倒し検討
東京電力は(7月)16日、福島第1原発から出た放射性物質による地下水汚染を防ぐ遮蔽壁(地下ダム)について、基本設計に着手したことを明らかにした。細野豪志原発事故担当相は建築を急ぐ考えを明らかにしており、東電は当初計画を前倒しして、事故収束に向けた工程表の「ステップ2」(今月中旬から3~6カ月後まで)の期間内に着工できるか検討中だ。19日に改定する工程表に盛り込む。
地下ダムは、1~4号機の原子炉建屋と隣接するタービン建屋周辺に、遮蔽目的の壁を地下30メートルまで埋め込む。東電によると、第1原発地下では、山から海に向かって地下水が1日5~10センチの速度で流れており、放置すれば放射性物質が地下水を通じて海側に流れる恐れがある。 この計画は工程表の5月の改定で初めて盛り込まれ、6月の改定ではステップ2終了までに工法を検討し、着工は「中期的課題」としていた。関係者によると現在、建屋周辺をボーリング調査中で、結果によっては着工が遅れる可能性もあるという。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は16日の会見で「タービン建屋地下の放射性物質濃度は低く、地下水に高濃度の放射性物質が漏れ出ている可能性は薄い」としながらも、「流出のリスクは認識しており、なるべく早く工事に取り掛かりたい」と述べた。【毎日・岡田英、中西拓司】
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・関電の原発2基、定検で停止へ 高浜4号MOX装荷見送り
県は20日、関西電力高浜原発4号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)が21日、大飯原発4号機(同、118万キロワット)は22日にそれぞれ原子炉停止に向けた作業を始め、定期検査に入ると正式に連絡を受けた。16日には調整運転中だった大飯1号機(同、117・5万キロワット)がトラブルで予定外の停止をしており、関電の原発11基のうち7基が止まったまま夏場の最大需要期を迎える。
定検期間はともに4カ月間としているが、国が実施を打ち出したストレステスト(耐性評価)を受ける必要がある上、県は再起動を認めない姿勢を崩しておらず、運転再開時期は不透明だ。 また、2011年度内にプルサーマル発電を始める計画だった高浜4号機は、今回の定検でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を装荷する予定だったが、核燃料サイクル政策の見通しが不透明なままでの実施に野瀬豊高浜町長が難色を示していて、関電は装荷を見送る方針。 県によると、燃料装荷は営業運転開始の1カ月ほど前に行うが、それまでに情勢が大きく変わる見通しはなく「現実的には厳しい」(岩永幹夫原子力安全対策課長)状況だ。
2基の定検入りで205万キロワットの供給力が失われるが、関電は既に織り込み済み。一方、大飯1号機の停止は不測の事態で、8月の供給力は2931万キロワットに低下する。昨年並みの猛暑を想定した最大電力3138万キロワットに対し、6・6%不足する計算だ。
高浜4号機の第20回定検では、1次冷却水ポンプの監視装置を電源が切れた場合に警報が作動するよう改造。燃料集合体157体のうち97体(56体は新燃料集合体)を取り換える。
大飯4号機の定検は14回目。応力腐食割れの予防対策としてタービンを交換。羽根の大型化などで出力を約4%向上させる。中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を把握するため、内部に置いた照射試験片を取り出す。燃料集合体193体のうち77体(60体は新燃料集合体)を取り換える。
東京電力福島第1原発事故を受けた特別点検としては、両原発とも緊急炉心冷却装置(ECCS)や、緊急時に格納容器に水を降り注ぐスプレーリングの健全性を確認。使用済み燃料プールには水位監視カメラを設置する。(福井新聞)
・「どこでも起き得る」 佐大教授が地震メカニズム解説
東日本大震災について見つめ直す学習会が、佐賀市で開かれた。識者の意見をもとに、大地震と福島第1原発事故の被害を佐賀県に置き換え、安全性を議論した。
活断層に詳しい佐賀大学の半田駿教授(地球物理学)が地震のメカニズムを解説。日本列島が地震活動期に入っていることに加え、隠れた活断層もあることから「(地震は)どこで起きても不思議じゃない」と話した。 また、原発事故に関して「収束後も崩壊熱を冷やすため、100年以上に渡って冷やす必要がある」と指摘。大震災での想定外の被害を教訓に「今だからこそ、本当に原発が必要かを議論すべき」と話した。原子力発電の余剰電力で発電する揚水発電も含めれば、他の発電方式よりコストが高くなることも紹介した。 NPO「Sagaよかとこ発信」(樋口榮子代表)が主催。約30人が出席し、「首長は安全性を確認できるほど知識があるのか」との意見も出た。 (佐賀新聞)
・上関原発中止署名、百万人分超す 山口の団体、経産省へ
中国電力が山口県上関(かみのせき)町に建てようとしている上関原発の計画中止を求める署名が、目標の100万人分を超えた。2009年5月から始めていたが、福島第一原発事故後に急増した。呼びかけた県内の団体の代表らが8月1日、上京して経済産業省に提出する。
原水爆禁止山口県民会議などが、100万人を目標に集め始めた。09年10月に61万2613人分、10年5月にさらに23万8875人分を経産省に提出。目標まであと15万人弱となったところで伸びが止まった。締め切りを9月末から今年3月末に延ばした。 その3月、東日本大震災と原発事故が起きた。それから署名数がぐんぐん伸び、反響の大きさに締め切りを6月末に再延長した。予定地対岸で反対運動を続ける祝島(いわいしま)を描いた映画を見た人や、ドイツや米国など海外在住の日本人からも届いた。19日現在の集計で、累計100万790人分を確認した。 (朝日)
・揺れる玄海町 構図重なる原発・米基地(沖縄タイムス)
・岸本英雄・玄海町長に聞く
・「地元の人がたくさん発電所で働いている。沖縄の米軍基地と一緒かなと思うが、生活の糧を発電所から得ている人が、関連企業を含めれば相当数に上る。発電所が運転されないことで、地域社会が非常に大きな影響を受けるということも判断理由にあった」
・「原発立地自治体には、発電した電力量に単価を掛けた分が交付金として入る。だから原発が稼働せず発電しなければ、交付金の額に直接影響してくる。玄海町は国から地方交付税をもらっていない不交付団体。町予算の約6割は発電所関連の収入で、原発の固定資産税と交付金という不安定な財源で賄っているのが実情だ」
・「玄海町はカネ欲しさにこんなこと(再稼働容認)をやっていると。相当心外だ。うちの場合、こんな小さな町でそんな大金をもらえるわけもなく、佐賀県や周辺市町村にもあふれた分が入っている。玄海町ばかりいいね、と勘違いされている」
・「玄海原発は九州全体の3割近い電気を供給し、その大部分は福岡などの都市部で消費されている。ところが、原発に反対するのは、多くが福岡の人たち。沖縄の問題にしても、構図は同じではないか」
・「沖縄も今回の私のケースと非常に似ていて、国に翻弄(ほんろう)されている。(普天間移設問題で)沖縄はいったん判断を下したが、鳩山由紀夫前首相は県外か国外にもっていくと言った。にもかかわらず、皆さんを浮かれさせといて、どんと落とす。こんなやり方をされては、沖縄だって政府を信用できない。われわれも今そういう思い。菅直人総理の下で私は判断をしたくない」・・・・。
・福井県民「安全なら再稼働」45%
東京電力福島第1原発事故を受け福井新聞社は16、17の両日、福井県民1千人を対象に原発に関する電話世論調査を実施した。定期検査で停止中の原発の再稼働について、「安全対策が十分と確認できれば再稼働させる」との回答が44・9%を占めた。「定検が終わったものは直ちに再稼働させればよい」は7・4%にとどまった。条件が整えば運転再開を容認する意見が5割を超える一方で、定検入りした原発や運転年数の長い原発などの廃炉を求める声も45・6%に上り、原発をめぐる厳しい県民の意識がうかがえる。
福島の事故により約86%が原発の安全性に不安を感じていると答え、原子力安全規制の体制や情報発信の在り方など国に対する強い不信感も数字に表れた。今後のエネルギー政策をめぐっては、再生可能エネルギーの比重を高めて緩やかに原発依存から脱却すべきだという人が7割を占め、「原発は今後も基幹電源であり続ける」は16・2%だった。
停止中の県内原発の再稼働をめぐり県は、福島の知見を踏まえた新たな安全基準をつくるよう国に要請。現時点で再稼働を認めていない。これに対し国は安全上問題ないとの見解を示していたが、立地自治体の反発を受け、全国の原発で新たな安全評価を行うと決めている。 再稼働をめぐっては、「安全対策が十分確認できれば」との条件付きで認める意見が最も多く、4割以上が県の方針を支持した形。 一方、「福島と同型炉の敦賀1号機など長年運転を続けてきた原発を廃炉」が27・6%あり、高経年化した原発を不安視していることがうかがえる。廃炉を求める意見は「直ちに全て」9・2%、「定検に入ったものから」8・8%で、合計で4割を上回った。
「安全を確認できれば」「直ちに」を合わせた再稼働容認派を地域別にみると、原発のある嶺南の市町は59・5%と高いのに対し、原発のない嶺南の市町は47・5%で、立地と準立地の意識の差が表れた。嶺北は51・6%だった。 一方で、嶺南の原発立地市町では、廃炉を求める回答が他地域より少ない傾向にあった。(福井新聞)
・津波で流出、毒劇物の回収進まず 東北3県
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県の沿岸部で、津波で流出した化学薬品などの毒劇物の回収が進んでいない。各県は「発見した場合は、触れないようにし、速やかに最寄り保健所に届けてほしい」と呼び掛けている。 厚生労働省によると、確認している毒劇物の流出は岩手で27件、宮城で18件、福島で3件。毒劇物取締法は、所有者に自主回収を義務付けているが、今回の震災では建物ごと流出したケースが多く、持ち主の居場所を特定するのも難しい状態だ。 同省医薬食品局の担当者は「各自治体が把握しているのは一部でしかない。実際には、かなり多いはずだ」と指摘する。(共同)
・米が再び臨界前核実験 昨年末と2月に実施
米エネルギー省傘下の核安全保障局(NNSA)は19日、核爆発を伴わない臨界前核実験を昨年12月1日と今年2月2日に西部ネバダ州で実施していたと明らかにした。オバマ政権発足後に明らかになった同実験は計3回となり、「核兵器なき世界」の追求を掲げつつ核兵器保有に執着する姿勢が鮮明となった。 NNSAは4カ月以上経過した6月にホームページ上で実験実施を公表しただけで、活動の透明性にも批判が出そうだ。 NNSA当局者は「保有する核兵器の安全確保に貢献する」ことが実験の目的と説明した。 【ワシントン共同】