2009年3月19日木曜日

「海賊対策」と対テロ戦争---(1)佐藤正久自民党議員の重大発言

「海賊対策」と対テロ戦争

(1)佐藤正久自民党議員の重大発言

(右の地図は産経新聞の「“ソマリア海賊掃討司令部”へ要員派遣 政府検討」より)

 3月19日午前中の参議院予算委員会における「外交・安全保障等に関する集中審議」。自民党の佐藤正久議員が質疑にたった。佐藤議員の質疑内容は、ソマリアの「海賊対策」についてこれからぼうが書こうとすることと密接に関係しているので、ここにその要旨をまとめておこうと思う。ポイントは次の五点である。

①ソマリア沖(アデン湾)への自衛隊派兵には「海賊の脅威だけでなく、テロの脅威」にも対応するものである。

②「海賊新法」での制限付の武器使用の緩和措置を、そのまま自衛隊のPKO活動における武器使用の緩和措置の前例としないこと。
 つまり、自衛隊のPKO参加にあたっては、自衛隊の「現場」における行動を縛るような武器使用の制限を廃止し、「任務遂行のための武器使用」を全面的に認めべきという主張である。
 これに対し宮崎内閣法制局長は「海賊対策」とPKOは前提が違うので、「PKOにおける警護任務における武器使用についての議論に直接結びつくものではない」と答弁した。さらにこの答弁に対し、佐藤議員は「前例としないという明確な答弁」と解釈し、「感謝」を示した。

③自衛隊を海外で「運用」する一般法の制定すること。
 これに関連し、現在、防衛省、外務省、内閣府、内閣官房にまたがっている自衛隊の海外展開に関する管轄官庁を防衛省に一本化すること。
④一般法の中に「海賊新法」を含め、自衛隊が「海上交通路を確保する任務」を統合すること。
⑤今回アデン湾に派兵された自衛隊員に「補給支援特別措置法」に基づいた、あるいはそれ以上の特別手当を支給すること。
 
 もっとも重要なことは、佐藤議員(自民党の一部)が、憲法論議や九条解釈をいっさい抜きにして、海外における自衛隊の「任務遂行目的」での武器使用=武力行使の承認、そしてそれに基づく海外派兵一般法の制定を主張していることである。自衛隊OBのロビーイストとしてならともかく、いやしくも国会議員の発言としては、はっきり言って無茶苦茶な議論である。

 しかし、他方で政府与党の「国際平和協力の一般法に関するプロジェクト・チーム」のメンバーでもあるこの佐藤議員の主張を踏まえるなら、「海賊新法」を憲法違反とし、武力行使に「つながる」から反対するといった議論が、論戦の戦術としてもいかに無力であるか、その根拠も理解しうると思うのである。