2010年11月23日火曜日

1960年代の日本の大学の軍事研究 

1960年代の日本の大学の軍事研究

 1967年5月23日、衆院本会議における、旧社会党の松本七郎の発言である。

「私は、日本社会党を代表して、日米安保条約に関連する最近の緊急事態等について質問を行なわんとするものであります。(中略)。まず第一に指摘したいのは、日本の大学、研究所、学会などが、米国陸軍極東開発局から広範な財政援助を受け委託研究に従事している事実であります。

 政府提出の資料によりますると、東京大学の宇宙航空研究所や科学技術庁の航空宇宙研究所を含めまして、その大部分が国立や公立の機関で、これが外国軍のひもつき研究をやっているのであります。これは日本の教育のあり方、学問の自由という基本的な観点から申しましても、きわめてゆゆしい問題であります。佐藤総理は、外国からの援助はあり得るなどと言って、ユネスコや一般の国際機関からの財政援助と同じように見ておられるようです。しかし、この委託研究には、米国陸軍から一つ一つ研究テーマや条件をつけているのでありまして、この一事をもってしても、決して純粋にして自由な科学研究のための援助ではなく、米国陸軍の特殊の意図と利用価値から出たものであることは明々白々であります。

 この財政援助と委託研究問題できわめて特徴的なことは、総計九十六件、三億八千七百万円のうち、生物・医学関係が圧倒的に多く、金額において全体の八四・三%を占め、また、援助の大部分がベトナム戦争の拡大と歩調を合わせて、一九六五年、六六年、六七年に集中していることであります。このことは、今日、アメリカがベトナム戦争で生物・化学兵器を使用している実情と考え合わせてみますると、決して偶然の一致ではないのであります。

 現在、米国陸軍は、多額の予算をもって生物・化学兵器の開発に力を入れており、メリーランド州のフレデリックにある米国陸軍の生物戦争研究センターでは、全米科学アカデミー、微生物学会、大学、研究所などのあらゆる科学者を総動員して研究開発に当たっている現状であります。これに対して、ノーベル賞受賞者十七名を含めてアメリカの指導的科学者二十三名が、いわゆるCB戦争、つまり、生物・化学戦争に道を開くものだとして、米国政府に抗議、警告を行なっているほどであります。(拍手)また、日本におきましても、たとえば、国立予防衛生研究所の和気細菌第四室長は、研究のテーマだけを見れば一見非軍事的であっても、その成果が容易に軍事目的に転用され得ると喝破しておられるのであります。

 このように、米国陸軍による援助問題は、総理や政府の首脳の楽観とは正反対に、疑いもなくアメリカの生物・化学兵器の研究開発の一環であり、また同時に、現にベトナムで進行しているCB戦と密接な関係を持っているきわめて重大な事件なのであります。佐藤首相並びに関係閣僚の真剣な反省と誠意ある答弁を求めるものであります。
 また、この問題と関連いたしまして私たちがきわめて奇怪に感じますのは、アメリカ陸軍の援助が一九五九年から十年近くも続けられており、その対象も非常に広範囲にわたっているにかかわらず、総理をはじめ関係閣僚が全くつんぼさじき(原文のママ)に置かれていたという事実であります。所管の文部大臣すら、聞いていないとか、連絡を受けていないという状態では、主権国家として黙視できない重大問題であります。ここに安保条約のもとにおける日本の従属性が象徴的に浮き彫りにされております。本件の処理にいたしましても、堂々と米国陸軍と交渉し、抗議する態度はみじんも見当たらないのであります。(中略)。

 次に、軍用地図作製の問題であります。建設省国土地理院が、旧日本陸軍の参謀本部でさえもつくらなかったような精密な特殊軍用地図を五カ年計画で作製しているにもかかわらず、これまた、総理をはじめ建設大臣も防衛庁長官も何一つ知らない。新聞を見て初めて知ったというありさまであります。しかも、毎日新聞の調査によりますと、この特殊地図は、米軍独自の道路番号やグリッドゾーンが記入されており、砲撃が完全に目標に的中するように仕組まれています。また、ミサイル発射に役立つ地磁気の偏差度が明示されている。上陸用舟艇のために海面には等深線が記入されているなど、疑いもなく軍用の特殊地図なのであります。
 このように、外国のために日本を完全まる裸にしたも同然の軍用地図作製について、政府首脳が何も知らされていない。これは、安保条約のもとにおいてさえ、決して正常とは言えない姿であります。政府は、当初、これに対して、安保体制のもとでは当然のことだとうそぶいていたのでありまするが、あとになると、昭和三十五年二月の当時の藤山外相とマッカーサー大使の間にかわされました交換公文にその根拠を求めて、佐藤総理は、一々こまかなことまで知らないといって、米軍の行動をあくまで擁護し合理化しようとしております。(中略)。

 しかも、この交換公文をつくる前に、すでに米国の陸軍極東地図局長アーサー・T・ストックランド中佐と国土地理院の武藤院長との間には地図作製の覚え書が取りかわされております。これは、明らかに米軍の一方的覚え書きによって軍用地図の作製が決定され、日本は交換公文という形式で追認させられたにすぎないという事情を物語るものであります。五カ年間にもわたって軍用地図の作製が行なわれてきたにもかかわらず、政府首脳には何ら知らされず、国土地理院の内部においても、この覚え書きの内容は幹部クラスにも知らされていないといわれています。実際の作業及び内容は極秘のうちに進められたものと思われます。
 このように、政府首脳が何も知らなかったということは、怠慢からなのか、それとも、作業そのものが極秘であったのか、その辺の事情を明らかにするとともに、国土地理院の覚え書きを公表して、本院を通じて国民の疑惑を解明すべきであると思います。
 
 こういう趣旨から、実は本日の衆議院の決算委員会におきましては、この覚え書きを国会に提出すべきであるという決議がなされておるのです。しかるに政府は、これに対する答弁で、国際儀礼上できないと言っております。これははなはだしい主権の侵害を受けながら、なお国際儀礼を守る必要がどこにあるのでしょうか。国際儀礼というのは、相互の主権尊重という原則が守られて初めて通用する儀礼であります。この際、私は、政府が積極的にこれを本院に提出して公表すべきことを重ねて要求します。
 なお、軍用地図の作製は、昭和四十年三月に完成し、それに伴いまして交換公文も覚え書きもすでに効力を失っておるにかかわらず、国土地理院は、現在もなお、座間にある米陸軍司令部と連絡を持って各種の調査資料を提供しているといわれておりますが、この実情並びに法的根拠もここに明らかにしていただきたい。

 第三は、兵器の輸出問題であります。
 佐藤総理は、外国輸出を目的にした兵器の製造は行なわないと言いながら、同時に、自衛隊のためにつくる武器であるが、余力があれば、貿易管理令の運営上差しつかえない範囲で出してもよいなどと、これまた欺瞞的答弁をしているのであります。まず、防衛産業に余力のあるのは当然のことでありまして、それだからこそ、経団連の防衛生産委員会をはじめ、軍需産業資本は、第三次防衛力整備五カ年計画を軸とする兵器の国産化の推進とともに、兵器産業を輸出産業として育成することを強く要求しているのであります。
 
 また注目すべきは、特需扱いと貿易管理令との関係であります。アメリカのベトナム侵略戦争遂行のために、各種の武器、軍需物資が製造され、それが特需という名のもとに米軍に輸出されている。しかも、この特需というのは、国内取引であって、通関手続を要しない。したがって、貿易管理令の規制を受けないことになっているわけです。米軍が日本の産業に何を注文し、何をつくらせるかは全く米軍の自由であって、日本政府は指一本も触れることができない。したがって、日本政府の知っていることといえば、税関を通るピストルが何丁輸出したくらいのことでありまして、特需のルートを通じて何を輸出しているかは全く知らないのが現状であります。国民の目をかすめて、そうしてベトナム戦争に協力しているこの実態を政府は何と考えるのか、日本の軍需産業資本は、特需にいまやウの目タカの目でこれをあさり、外国向けの武器を製造し、輸出をしているのであります。」

 これに対する内閣総理大臣、佐藤榮作(後のノーベル平和賞の受賞者)の答弁。

 「社会党と私どもとの間には、日米安保条約についての基本的な考え方の相違がございます。しかし、日米安保条約の体制のもとに日本は安全を確保し、また繁栄の道をたどっております。国民はよく承知しておりますので、この日米安保体制を国民はまた守ろうとしております。このことをまず最初に申し上げておきます。(中略)。
 そこで、お尋ねになりました点について、二、三お答えをいたしたいと思います。
 まず第一は、学界に対する米軍の資金援助の問題であります。本来、学術の研究というものは、研究者の良識、また、自由な判断によりまして研究が続けられるものでありまして、政府はこれに積極的な干渉をするような考えは毛頭持っておりません。しかし、御指摘になりましたように、外国の政府や、あるいは特に軍隊だとか、こういうところから資金の援助を受けますと、いろいろ誤解を受けることもあるだろうと思います。したがいまして、そういう意味で、これは一般の民間からの資金の受け入れとは相違いたしておりまして、十分慎重に扱わなければならぬ問題だと思います。そういう意味で、今後の問題については、政府はこの処置について検討するつもりでございます。
 
 次は、兵器輸出の問題でございます。ただいまも松本君は、防衛産業に余力のあるのは当然だ、こういうことを言っておられます。この余力があるところで輸出をするということ、これがしかも輸出貿易管理令の許しを得てやるということ、これは何ら不都合ではないと思う。(中略)。佐藤内閣は、私はまた、死の商人たる歩みをするものではございません。これははっきり申し上げておきます。」

参院・予算委員会(1967年5月19日)

剱木亨弘(文部大臣) 大体その資料でごらんいただければわかると思いますが、一九五九年から今日までずっと続きまして、件数としては約九十六件、金額といたしましては三億八千七百万円、こういう状況になっておるようでございます。それで、きょうお手元にお配りしました資料で一応なおお断わりしておかなければなりませんと思いますのは、ここで各機関の名称だけを出しておるのでございまして、しかし事実は、医学部とございますれば医学部の中の特定の教授にこれが渡っておるわけでございます。(中略)。

 なお、この全部の、研究なり、旅費とか、あるいは品物によるものがございますが、この援助の形式は、米国陸軍当局のほうからこれを公募するとか、あるいは補助してやるから出しなさいというような勧誘をいたしたのではなくて、実際上のこういう制度があるということを、あるいは国際会議でございますとか、友人関係でございますとか、こういうのを知りまして、そして学者のほうで自分のいままで研究をいたしておりますデータについて申請書を出し、その申請書におきましては、その所属する長のサインを求めまして、たとえば医学部でございますと医学部長あるいは学長のサイン、これを添えまして申請をし、そしてその申請をいたしました者について許可をいたし、許可あったものについて援助が行なわれたというのでございます。

 それから、その発表につきましては、必ず公表をすることにいたしておりますし、なお、経理及び研究成果につきまして中間報告及び最終報告を米軍のほうに出すということになっておるのでございます。

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天城勲(文部官僚) この六件の中には病院が三カ所ございますが、そのほか民間会社といたしまして、先ほど申したような、確認はいたしておりませんが、株式会社松下電器産業東京研究所と東海電極が入っております。株式会社松下電器産業東京研究所でございますが、赤外線可視装置、一九六五年で、これは向こうの資料でございますので、十万六千ドルでございます。それから東海電極製造、これが強力高率炭素フィラメント、そういうテーマでございますが、三万二千ドル、一九六六年でございます。

小柳勇 希有ガス力学第五回国際シンポジウム出席旅費というのが東大の宇宙研、大阪大学の基礎工学部、航空宇宙技術研究所、同じ一九六六年のこの会議に行っておられまして、四百六ドル、九百五十四ドル、九百五十四ドル、こういう学会出席旅費を出してございます。(中略)。
 次の問題、京浜地区の大気汚染に基づく呼吸器疾患、こういうテーマがございまして、東大の医学部、こういうのが研究をやっておられます・・・(中略)。
 もう一つ。次は慶応大学の医学部の研究ですが、日本の一般市民に対する大気汚染の影響・・・。
 次はこの、ペルーにおける日食記録のためのペルー地球物理学研究所との共同研究、これに京都大学の理学部の出張旅費として二千五百ドルを出されておりますが、ペルー地球物理学共同研究にいつもこういうふうに日本の学者が、研究員が補助をもらって行っているのかどうか。(中略)。

 この資料には載ってないんですけれども、ことしから研究契約がなされた「太平洋地域特に東南アジアにおける肺吸虫の分類及び生態に関する研究」というのがあります。これを学者がなぜこういう契約を受け得ることを知ったかといいますと、米軍担当官とパーテーで会って研究の話をしたら、こういう金があるぞとおっしゃった。東南アジアの調査旅費に使用できるから非常に便利だから契約したと言っている。この問題について、文部大臣御存じあるかどうか。(中略)。その学者に聞きますと、りっぱな最高の研究である、こういうものがどこかで総合されるわけです。総合されますと、それが私どもがいま問題にしております米国陸軍省から補助金が出て、それがどこかで総合される。文部大臣すらわからないりっぱな研究テーマというものが、(中略)、米国陸軍の援助を受けて、どこかで総合されるわけです。

剱木亨弘 私はこの大体を取り調べました私どもの感じといたしましては、いまもちょっと小柳先生申されましたが、いろいろこういう制度があって、これで申請すると、その研究内容がよければ金が出るということを聞きまして、やはりこの研究費を請求をいたしまして、より自由なる研究の充実を期したと思うのでございまして、その研究の申請をいたしました本人が、これはアメリカの軍とか、そういう総合されて何かそれに利用されるであろうという予測のもとにやったものではないということだけは、私はっきり言えると思います。ただしかし、これは外国の政府機関の金でございます。この何にも正式の文部省なり外務省に話がなく、直接にこの研究者に渡ってまいりました問題、しかも、それが向こうの陸軍の関係の部局からこの金が出た。

 そういたしますと、いま申されましたように、その結論を総合して何かに利用されるのじゃないかというような疑いを受けるおそれが十分にあると思います。でございますので、私といたしましては、このあり方についてやはり大学当局において再検討してまいりたい、少なくとも、これは正式に受け入れ、その他につきましては公のものにすべきではなかろうかと思っておるのでございます。ただ、ここで申し添えたいと存じますけれども、いままで文部省としましては、学者が研究をいたします場合において、全く自主的に 私どもとしては、研究内容その他に対しては、何らの関与をいたしたことはございません。ですから、こういうことによって学者の研究内容にまでタッチをいたそうとは思いませんけれども、しかしこういう問題は、十分やはり疑いを受けるという面におきまして、大学当局におきましても考慮いたすべき問題だと、今日ただいま感じておるわけであります。

亀田得治 大臣いまちょっと誤解を受けやすいことを言われたわけですが、学者が米軍から金を受ける場合、少なくとも公のものにしていかなければならぬという意味のことをちょっと言われたわけですが、これは従来のように、特別会計にも入れないで直接受け取る、そういうことは困る。そうじゃなしに、ちゃんと特別会計に入れてそこから受け取るということなら認めていいのじゃないかというふうな何かこう印象を受けたのですが、そのことが一つ。公のものにしなければならぬというのは、いわゆる特別会計のワクの中へ一たん入れよ、そういう意味で言われておるのか、その点が一つ。

 それからもう一つは、それとまた若干違ったことも言われておるわけなんです。こういう寄付は思わしくないという意味のことも、その前で言われておるわけです。もし思わしくないということであれば、そのあとの手続上のことなどは、これはもう問題外のことになるわけですね。だからその思わしくないということの意味ですね。これはたとえば、京都大学の奥田総長の、この問題が新聞等で論議されるようになってからの談話でありますが、やはり軍事を目的としておるこのような寄付は受けるべきではない、こういうことをはっきり談話で申しておられます。

剱木亨弘 この一般の寄付がございまして、たとえば国内の人とか、いろいろな委託研究等でございまして、大学の教授に研究費の寄付がありました場合、これは特別会計の中にそういうものは入れてやるべきだと考えております。でございますから、このものは実はそれには入っていないということを先ほど申し上げました。ですから、それに入っておれば、公のものとして私どもは調べることができるのでございますが、直接的に渡されて研究して、私どもに何らの報告がなしに今日までまいっておりますので、この点は私どもが知り得なかったのでございます。

 ただ、私は外国でございましても、たとえばロックフェラー財団とか、そういったような民間の財団等から研究費を受けるという問題と、それからこの場合は政府機関でございます。政府機関が――日本のやはり大学も国立の政府機関の一つでございます、これに直接的に金の授受があるという問題につきまして、基本的にそういうことが直接に行なわれていいかどうか。これは少なくとも、私は政府機関におきまして話を通じて、それがいいか悪いかを政府が判断をして、これを受け入れるかどうかを決定すべき問題であるのではなかろうか。そういう意味におきまして、またこれが軍から出ておるとかいうこと以外に、政府間の問題でございますので、これを政府というものを抜いて直接的にいっていいのかどうか。この問題につきましては、私どもやはり考え直さなければならぬ問題があるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。

亀田得治 それは重大なことだ。研究内容がよくわからぬと、大臣先ほどからおっしゃっておるわけですね。そういう状態の中で、ずっと年度が継続しておるものは認めるような意味のことを言われると、これは私は非常に軽率だと思うんですね。それが、それじゃあ軍事に結びついておったらどうするんですか。明確にしなければならぬでしょう、その点は少なくとも。だからいまおっしゃったことは、これはちょっと行き過ぎているんじゃないですか、この点は。内容がわかっておるなら、別ですよ。

 たとえば、京都大学のウイルス研究所ですね。これは三口出ていますね。これはどういう研究ですか。これはしろうと考えで考えても、最近はやりの生物化学兵器、こういうものに結びついていくんじゃないかというふうな感じもするわけなんですが、これは継続の中に入っているんじゃないですか。これは済んでいるやつですか。

 だから、いまおっしゃったことは、これはちょっとこの場で訂正してもらいませんと、最初は非常に良心的に軍事に結びついちゃいかぬという立場で研究しておるということでしたから、多少安心感を持ったんですが、途中で手続のことなどをおっしゃるものですから、これはあるいは逆に考えているんじゃないかということでお聞きしてみた。そしたら継続のやつはいいという、そういう軽い考えでは、非常にこれだけ注目されている以上いかぬと思う。

 学者自身の中で、これは受けるべきじゃない、こういう意見が相当出ているわけですからね。ことに京都大学の総長は、そういう意見を公に出している。そこの研究がウイルス研究、だからいまの発言はちょっと問題じゃないですか。

小柳勇 この法的な根拠は何でしょうか、外務大臣。いま文部大臣は独断で、これは全部学者のほうが知らないで金の援助を受けたとおっしゃいますけれども、米軍の担当官が募集に行っている事実もある。また大学に募集広告がいって、これを知って応募した学者もあるわけです。それから民間の会社に行って研究さしておる。それからあとでまた資料要求いたしますが、陸軍付属病院の四〇六部隊が別に直接学者に研究費を出しておる。こういうことの法的根拠は何でしょうか。(中略)。米国陸軍だけでなくて、どこの国の陸軍であろうが海軍であろうが、日本の学者に研究を依頼すれば、学者がOKすればできる、こういうことでございますか。

三木武夫(外務大臣) これは世界的に見れば、研究費というものに対してはいろいろな――まあ金ということになれば、一番アメリカが多いでしょう。しかし、ないわけでもないでしょうが、しかし、そういうことで私は、いま文部大臣もお答えになったように、政府機関、これがやはりいろいろな寄付を受け入れるというときには、ただ研究団体の自分の意思だけが寄付を受け入れるということは、ちょっと私はまずいと思う。その場合には、文部省も政府も知らぬということは、いま言った、そんならどこの国でも寄付をくれると言ったら何でも受けるのかという御疑問も出てまいりますので、これは政府のほうとして、何らかのこれに対して、受ける場合に、政府に対して報告、承認を求めるとか、何らかの多少の規制が私は要ると思う。これは研究をいたしたいと考えております。

小柳勇 外務大臣、米軍司令官は日本の政府には全部報告してある、日本政府は承知しておると言うが、文部省ではこの間も御存じなかった。外務省に報告があっておったのでしょうか。

藤田進 ちょっと関連して。最近内之浦の衛星発射等に関連する大学の会計等を見ましても、しかし、少なくとも国立大学、あるいま公立において、私学といえども、年度間の大学の予算決算というものは当然ある。ですから、東大等の場合も出ておりますが、こういう場合には、国として文教関係予算の中で、特に当該学校の年度予算というものがあり、これには受託研究費は幾ら見るか、当然なくちゃあならぬと思うんです。これは国内の処理として、会計経理上のね。

 ところが、まま研究所、あるいは指導教授といったようなプライベートの形で外部との金銭の授受というものが行なわれ、そうして研究者の勘で適当にこれが経費を配分をしていく、表に出てこない。それから、特にやがて民間の法人に就職をさせようという場合には、表向きでなくて、相当年額、金が直接受け入れられていることが、特定のところがどこということはここで申し上げるつもりはありませんが、いわば大学の会計経理の処理については、そういうものが、どうも通常の方式から考えると、異様な感じを受けるものがあるようにも思うわけであります。この辺が国立大学についてはどうなっているのか、文部省からいまの問題も関連して、一向に知らないはずのものではないと私は思うのです。会計経理、予算決算から見ても、そういうことはあり得ないはずである。御説明をいただきたい。

剱木亨弘 契約につきましては幾つかの条件が取りつけられておるようでございます。ただその目的、特に目的の中で軍事目的に関すると思われる条件は、事前、事後を通じまして全くつけられていないと私ども考えておりますが、援助を受けました研究者が、この一定の条件に対しまして義務を負っておる点はございます。たとえば、定められました期間内に研究を終了することを原則とする。それから研究責任者の指揮のもとに実施すること、こういう条件でございます。

 補助金受領者が、当該研究実施の能力がない場合、双方の合意のもとに補助金の全部または一部を取り消すことができる、それから、研究成果に関する報告書等について、まず研究成果に関し概括的な中間報告を提出すること。研究成果の公表は全く制限されないこと。ただし公表の場合は米陸軍の援助と協力による旨を記載するとともに、当該出版物を提供すること。それから特許及び著作権につきましては、発明の実施権は研究者が所有するが、同時に米国政府にも実施権が無料で与えられる。研究成果の公表刊行に関連する権利はもちろん研究者が所有するが、同時に米国政府もデータ及び技術的情報を出版し、翻訳し、複製し、配布し、及び使用する権利が与えられる。以上のような条件がついているのが普通のようでございます。
 
(つづく)