2010年11月21日日曜日

武器輸出三原則緩和と軍産学複合体・資料(1)

武器輸出三原則緩和と軍産学複合体・資料(1)

 毎日新聞(11月17日)によると、民主党の外交・安全保障調査会(中川正春会長)は、17日の役員会で、政府が12月に改定する「防衛計画の大綱」(防衛大綱)に向けた提言案の「たたき台」を示した。その中で、
①すべての国への武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」を緩和し、輸出禁止対象国を拡大し、国際共同開発に道を開くこと
②自衛隊の全国均衡配備の根拠となってきた「基盤的防衛力構想」から「脱却」し、「南西諸島防衛」を想定した機動的な運用をはかること、を提言するという。

 武器輸出(禁止)三原則については、すでに「米国との武器技術供与や共同開発」が例外になっているが、民主党の見直し案では、
(1)平和構築・人道目的に関する「武器」、
(2)「殺傷能力の低い武器」、
(3)共同開発・生産の対象を、米国からさらに北大西洋条約機構(NATO)加盟国、韓国、オーストラリアなどに拡大するというものだ。
 また、国連平和維持活動(PKO)に自衛隊が参加する場合の「武器使用基準の緩和」なども求めている。

 私が大学とNGOの問題を、軍産学(NGO)複合体の問題として、また「理系」と「文系」、さらには大学と「市民社会」を超えた問題として論じてきたのは、このような動きが民主党政権になって一段と加速化しているからである。
 日本の大学(院)研究に関して言えば、例えばロボット工学、脳科学分野を始めとして、米国の軍産学複合体を形成する大学群と、旧帝大系七大学を中心とする大学群との「共同研究」が拡大している現実、またその「共同研究」の実態があまりにも社会的に知られていない、という問題がある。
 つまり、私が三年前の『大学を解体せよ』の中で触れたように、米国の「全世界即時攻撃」計画と「核戦争の危険性」をはらんだ「日米共同研究」に、知ってか知らずか、独法系研究機関と直結した旧帝大系を中軸とする理工系大学院研究が「貢献」するシステムが、すでに構築されているのである。

出典 Global Issues
Arms Trade—a major cause of suffering
Arms Control

① 1988年から2009年の世界の軍事支出総額の変遷と2009年度の国別割合
(「核なき世界」をめざすとするオバマ政権の登場以降、世界の軍事支出総額が冷戦時代よりも増えている。
 国別割合は米国の46,5%を筆頭に、その他の国連安保理常任理事国(順に中、仏、英、ロ)で全体の65%を、その次の10カ国が20,75%を占めている。上位15カ国で世界の軍事支出の86%を占めていることがわかる。
 なお、日本はドイツと共に安保理常任理事国に続き、世界第7位(2008年度))





 

                          

② 2001年から2011年度の米国の軍事支出総額の変遷
(ブッシュ共和党政権からオバマ民主党政権に政権交代しても変わることのない超核軍事大国米国の現実)









③ 世界の軍事支出に占める大陸ごとの割合
(北米とロシアを含めた欧州で全体の71%、これに中国と日本を加えると80%近くを占める。一方、アフリカ大陸とラテンアメリカ大陸の合計は全体の6%に過ぎないことがわかる)


④ 米国の軍事援助の国別割合
(イラク、アフガニスタン、イスラエル、エジプト、その他と続く)
⑤ 国連安保理常任理事国(米、英、仏、ロ、中)の武器輸出の世界的フロー
(「国際の平和と安全」を守るべき安保理常任理事国が世界の武器生産の大半を占め、それがアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中東へと流出し、「民族紛争」の物理的原因をつくっていることがわかる)