2011年7月18日月曜日

原子力安全・保安院が原子力安全委員会と統一?

原子力安全・保安院が原子力安全委員会と統一?


 経産省の原子力安全・保安院を内閣府の原子力安全委員会と「統一」させるなんて、あってはならない/ありえない話である。
 「3・11」以後、何度も述べてきたように、日本の「原子力行政」の構造的欠陥とは、機構上の問題として言えば、
①国の原発推進機関としての経産省(資源・エネルギー庁)の中に、同じく原発推進機関としての安全・保安院が存在し、これらに対し、
②内閣府の原子力科学及び原発の推進機関・原子力委員会と同じく、原子力科学及び原発の推進機関たる原子力安全委員会が、二つの「原発推進御用機関」として存在し、
③これらを文科省はじめその他の官・産・学(独法系)の原子力科学・原発推進機関が①と②の下で行われてきた「原子力行政」の実態的担い手であると同時に「シンクタンク」にもなってきたところにある。

 「安全・保安院」や「安全委員会」とは名ばかりで、本来、原発の「安全規制」を担うこれら二つの政府機関が、本来の機能と役割を果たさなかった/果たせなかったところに、機構上と法制上の根本的な問題がある。
 だから、原子力安全委員会を、
①国から独立した機関とすべく、内閣府から「分離」し、
②国と原発企業を規制する法的権原および権限(規制を執行する権力)を持たせるべく、
原子力安全委員会の「設置法」そのものを抜本的に改定しなければ、
日本において「原子力行政」の「安全性」など確保しようがないのである。


 行政(官僚機構)の監督を行政(官僚機構)にさせてはならない、という大原則が官僚制国家日本では通じるようでいて、なかなか通じない。
 原子力委員会や原子力安全委員会が、(その意味で言えば総合科学技術会議もそうなのだが)、内閣府に存在することの意味を、脱原発派は、改めて考えてみる必要があるだろう。

 「この二つの委員会は内閣府に設置されてはいるが、行政機構ではない」とナイーブにも考えている人は、
①両委員会が、実際にどのような権限を国に対して行使しえるか、また、
②年間予算16億数千万円にのぼる内閣府独自の「原子力予算」を二分する両委員会の「資金フロー」に、いかなる「利権」が絡んでいるか、さらに、
③両委員会の運営が、いかに「事務局」(内閣府付の官僚+経産省・文科省・外務省等々からの出向組官僚)に支配されているか、その実態をまず研究してみることを推奨したい。 

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原子力委の設置、裏に偽装報告 55年 初の海外調査団(朝日)
◎ 「政府が1955年、原発を導入するために初めて派遣した海外調査団の報告書が、原子力委員会の設置を推進する内容に偽装されていたことがわかった。作成に関与した旧通商産業省の初代原子力課長(故人)の偽装を認める証言が、文部科学省の内部文書に記録されていた」
◎ 「政府は報告書をもとに原子力委員会を56年に発足させ、初代委員長に正力松太郎国務相、委員にノーベル物理学賞の湯川秀樹氏、経団連会長の石川一郎氏らを起用。著名人を集めた委員会を設け、米国の水爆実験で「第五福竜丸」が被曝した事件による原子力への世論の逆風を弱める狙いがあったとみられる。政府が公表した報告書の偽装は、原発導入期からの隠蔽体質を示すものだ」

細野原発事故相:「保安院独立、来年4月」8月上旬に試案
 細野豪志原発事故担当相は17日、NHKの討論番組に出演し、原子力安全規制を巡る行政機構の再編に関し「できるだけ早く実現する。来年4月が望ましい。8月上旬には私の試案を提案したい」と述べ、早期に対応する考えを示した。「過去の歴史では2、3年かけて新組織を作るが、今の状況を放置するのは無理だ」とした。

 細野氏は再編で設立する新組織について、経済産業省から原子力安全・保安院を独立させた上で「原子力安全委員会を一緒にし(放射線量を)モニタリングしている文部科学省の機能も一部移行できるのではないか」と語った。組織形態は「自由な意見が出る(公正取引委員会のような)委員会形式と、安定性や長期的な方向性がある行政庁のいい面を持ち込みたい」とした。
 一方、菅直人首相が「脱原発」方針を「私の考え」としたことに関し、細野氏はテレビ朝日の番組で「(首相会見は)純粋な個人的見解ではあり得ない。アドバルーンをドンと上げて走る昔の市民活動時代からのやり方(???)が、必ずしも党内、政府内から認められていないのは現実だ」と批判。ただ、「首相の中で『福島第1原発事故は自分の内閣で起きた問題で、この内閣で次の一歩を踏み出す』との思いが強い。私も本当に『日本存亡のとき』とまで思った」と理解も示した。【毎日・笈田直樹】

原発担当相「再稼働認めるべき」 テストで安全性確保後
 細野豪志原発担当相は(7月)14日の参院内閣委員会で、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開について「安全性を確保した上で再稼働は認めるべきだ。54基すべての原発がいずれかの段階で止まることを想定していない」と述べ、ストレステストを経て原発を再稼働させるべきだとの認識を示した。
 民主党の植松恵美子氏の質問に対する答弁。細野氏は「安全性を前提に日本経済をどう動かしていくか、国民生活をどう守っていくかという視点はきわめて重要な要素だ」と述べ、原発停止は慎重な対応が必要との考えを明らかにした。
 また、福島第一原発の廃炉や使用済み核燃料の取り出し、放射性物質を帯びたがれき処理の費用負担について「政府として担当していかなければ解決できない」と述べ、国費投入も検討する考えを示した。 (朝日)