相馬と南相馬で考えたこと
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クリスマスの連休に、イスラーム教徒の医師の一行に同行した、とあるNGOのスタッフとともに相馬と南相馬に入った。 医師は人々の話をききながら、人々を診て回った。NGOのスタッフはこれから何をすべきかを考えていた。 私にとっては、これから自分が何を語り、書くべきか/何を語ってはいけないか、書いてはいけないかを考える三日間となった。 〈3・11以後〉を考える、とても濃密な三日間となった。
相馬と南相馬の仮設住宅を訪れた。震災後最初に建てられたところ、最も新しいところを含め、5カ所回った。 市役所や保健施設に行った。休日にもかかわらず、私たちを歓待してくれた「センター長」の肩書を持つ人から懇切丁寧な説明を受けた。 穏やかな面持ちと静かな口調で国を痛烈に批判した消防団の人、自治体行政を批判した仮設に住む漁師の話も聞くことができた。 どれか写真をと探してみたが、どれもこれも人物が特定できるものばかりで紹介できないのが残念である。
医師と話しながら、突然泣き出した人、おとなの心の動きを読むように楽しげに振る舞う子どもたちの姿が印象に残っている。 しかし、それ以上に胸を打った言葉がある。ある居酒屋の女将が言った「忘れないでください」という一言だ。「浜通りのことを忘れないでほしい」・・・。女将の言葉にはそういう思いが込められていた。
私は、居酒屋の女将から「忘れないでください」と言われた経験を持たない。 さすがの能天気な私も、この言葉が私個人に投げかけているその意味を、考えずにはいられなくなった。
「反/脱原発」を語る私たちの多くも、「浜通り」に、福島に生活と人生がある/あった人々のことを忘れかけてはいないだろうか。 私たちは、どれだけ「医師と話しながら、突然泣き出した人、おとなの心の動きを読むように楽しげに振る舞う子どもたち」とつながっているだろう。 「たしかに女将が言う通りなのかもしれない」、と思った。
⇒「相馬と南相馬で考えたこと(2)」につづく
・・・
・福島県知事:第1、第2原発10基廃炉求める 東電に
福島県の佐藤雄平知事は27日、県庁で東京電力の西沢俊夫社長と会談し、県内にある福島第1、第2両原発全10基の廃炉を求めた。西沢社長は廃炉に言及せず、会談後も報道陣の取材を拒否して県庁を離れた。
西沢社長は、福島第1原発事故収束に向けた工程表のステップ2完了報告のため県を訪問。佐藤知事は「原子力に頼らない社会を福島県はつくる。県内全基の廃炉を求めていく」と強調した。西沢社長は「安全確保や損害賠償、除染にきちっと対応していきたい」と述べるにとどまった。 県は28日、東日本大震災と同原発事故を受けての県復興計画を正式決定する方針で、県内全基の廃炉を明記した上で、基本理念に「原子力に依存しない社会」を掲げる。【毎日、関雄輔】
⇒「で、私たちは福島第一5、6号機と第二原発をどうするのか?」
・原発安全軽視 国と東電のもたれ合いに県民怒り
「原発事故の原因は、国と東京電力のもたれ合いにあったのではないのか」。政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会が26日発表した中間報告には、国と東電がともに津波による過酷事故を想定せず、原発事故への必要な対策を講じなかったとの内容が盛り込まれたほか、事故後も政権中枢と東電間などに情報共有の不備があったと指摘した。十分な対策や、事故後の対応がなされていれば、事故がここまで拡大していなかった可能性もある。原発立地地域の住民や首長は、国と東電への不信感をさらに募らせている。
双葉郡町村会長を務める双葉町の井戸川克隆町長は、中間報告で明らかになった東京電力と原子力安全・保安院のもたれ合いの構図について「とんでもないことで、許せない」と憤慨。国が双葉郡内への設置を模索している放射性廃棄物の中間貯蔵施設について「このような国の体質では、地元の理解はない」と話し、「国に対し『今後、双葉郡では何も進まない』ことを伝えたい」と設置の受け入れを拒否する考えを明らかにした。(福島民友)
・迅速な賠償へ対応を 県が23市町村に協力要請
東京電力福島第1原発事故の自主避難や精神的損害への賠償指針が示されたことを受け、県は26日、県庁で対象となった県内23市町村の担当者会議を開き、約150万人とされる対象者への迅速な賠償実施に向けて、住民情報の提供や、住民票発行業務の簡便化などの対策の検討を要請した。
自主避難などの損害賠償では、請求書の発行や、3月11日時点の所在確認などのため、住民票などの基礎情報が必要になる見通し。ただ賠償を実施する東電には住民情報がなく、迅速な賠償に障害になる可能性が高い。 このため県は市町村の協力を得ることで、速やかな賠償につなげる考え。(福島民友)
・50キロ圏全住民に賠償案 原賠紛争審 市町村ごと指定
政府の原子力損害賠償紛争審査会(会長=能見善久学習院大教授)は(12月)5日、東京電力の福島第一原発から半径50キロ圏にある自治体の住民まで、損害賠償の対象を広げる方針を固めた。検討していた自主避難者への賠償に加え、とどまった人もすべて対象とする。6日にも正式に決め、賠償の目安となる指針に盛り込む。
対象地域は福島県内の市町村ごとに指定する。原発から半径20キロ圏内の警戒区域や、計画的避難区域、緊急時避難準備区域(9月末で解除)の周辺にあり、半径50キロの円が一部でもかかる市町村は、原則として自治体の全域が対象となる。
具体的には、相馬市、福島市、伊達市、二本松市、本宮市、郡山市、いわき市、三春町、小野町などが対象となる見通し。対象者は最大で100万人規模になるとみられている。また、50キロ圏外でも局地的に放射線量が高い自治体があるため、賠償範囲はさらに広がる可能性がある。 (朝日)
・仮置き場、福島県11市町村のみ 難航する除染ごみ保管先
東京電力福島第1原発事故を受け、除染で出た放射性物質を含む土壌などの廃棄物を市町村内に保管する仮置き場について、福島県内の59市町村のうち、少なくとも1カ所は確保できている自治体が11市町村にとどまることが27日、共同通信の調べで分かった。
放射線量が低く除染の必要がないなどの理由で仮置き場を設置しないか、検討中の自治体が11市町村あるものの、設置を目指している自治体の多くは、住民の反発で整備が進まず、除染ごみの保管先の確保が難航している実態が浮き彫りとなった。(福島民報)
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・「[青森県]知事、原子力施設の安全対策を了承 再開は事業者の判断」(河北新報)
<責任放棄の印象拭えず 県民に明確な意志表示を>
三村申吾知事が県内原子力施設の安全対策を認め、国の安全評価の作業が続く東北電力東通原発1号機(東通村)を除いて各施設は事業者の判断で試験や工事の再開に踏み切ることになった。三村知事は「県民の安全を守る立場で総合判断した」と強調したが、自ら再開の是非を示さない手法は責任回避の印象が拭えない。
県は福島第1原発事故を受け、国が認めた事業者の安全対策をうのみにせず、専門家による検証委員会を設置。厳冬期の過酷事故対策の必要性など県特有の課題を見つけ、事業者に追加の対策を講じさせた。その取り組みは評価できる。 だが、三村知事は「(了承したのは)緊急安全対策などで、再開はそれぞれの事業者判断だ」と発言。県として再稼働や工事再開の是非に触れない意向を示した。
県には再稼働などの是非を決める法的根拠はない。とはいえ、5月の県議会臨時会では、蝦名武副知事(当時)が東通1号機の再稼働を問われ「検証委の提言を聞き、知事が判断していく」と答弁していた。軌道修正は明らかで、県議は「責任放棄だ」と批判する。
原発の再稼働をめぐっては、国が6月18日に電力各社の安全対策を適切と表明して間もない7月6日に安全評価の実施を打ち出すなど方針が二転三転。最終的に関係閣僚が政治判断する仕組みになった。 休止している原発などの建設についても、国は「工事再開などを止める理由はない」との立場を取る。先行きを見通せず、立地県を振り回す形になった国の責任は重い。
それでも、原発事故を受け、原子力政策に対する県民の視線はかつてなく厳しく、県の意向は重要な意味を持つ。「県民の安全を守る立場」の知事だからこそ、県民は明確な意思表示を求めている。(青森総局・沼田雅佳)
・地元の了解得られた/原燃社長
六ケ所再処理工場で中断しているガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)製造試験の再開を表明した日本原燃の川井吉彦社長は27日、再開を判断した理由として、前日に三村申吾知事が県内原子力施設の緊急安全対策を了承したことを挙げた。川井社長はこれまで、試験再開に当たっては「県など地元の同意が必要」と説明してきたが、知事の了承により「一定の理解を得られたと考えている」と述べた。(東奥日報)
⇒「原発再稼働・工事再開・新規建設における自治体の責任を問う、何度でも」
・泊2号機 揺れ耐性想定の1・86倍 北電が1次評価(北海道新聞)
2011年12月28日水曜日
2011年12月27日火曜日
政府「事故調」の「調査」に疑義あり!(2)--「中間報告書」はどこまで信用できるか
政府「事故調」の「調査」に疑義あり!(2)--「中間報告書」はどこまで信用できるか
1
政府「事故調」の「中間報告書」が公表された。
毎日新聞は、「中間報告書」について、「炉心溶融を防ぐための冷却装置への東電の対応に問題があったと認定し、「極めて遺憾」と指摘。政府の対策本部が機能不全に陥っていたことにも言及した。深刻な被害にいたった背景として、自然災害と原発事故の複合災害という視点がなく、政府や東電の備えの欠如があったと分析した」とまとめている。
しかし、「事故」の原因は「冷却装置への東電の対応」、「政府の対策本部」の「機能不全」、「政府や東電の備えの欠如」のみにあったのだろうか?
「中間報告書」の問題点を簡潔に述べたうえで、「冷却装置への東電の対応」から考えてみよう。
2
「中間報告書」の問題点
1) 最初に指摘できることは、「報告書」が、「地震による影響はなかった」「原子炉は止まった」とする東電関係者からの「証言」と東電が公表してきた「データ」を元に作成されていること、そして結論については来夏の「最終報告書」を待たねばならないとしながらも、基本的には東電の主張に沿う形でまとめられていることである。
「報告書」は、地震は原子炉建屋・タービン建屋内部には影響を与えておらず、あくまでも打撃は建屋外の敷地の施設に限定されるという総論的見解を示している。
たしかに、「報告書」は、地震の影響について東電関係者の「証言」や「データ」に全面的に依拠するのではなく、独自の分析を加えたような体裁をとっている。「報告書」によれば、問題は、建屋内の高い放射線量によって実態が調査できないことにあるのであって、東電の主張を追認するものではないことが示唆されている。
2) しかし、1~4号機が「冷温停止状態」宣言から廃炉工程に突入した現状にあって、「最終報告書」がまとめられる向こう半年間の過程において、地震による建屋内の損壊状態をめぐるさらなる調査が行われる現実的可能性は極めて低いと言わねばならない。建屋内の高い放射線量が今後数カ月で低下する見込みはなく、「事故調」が「ロボット」を動員し、独自かつ戦略的に地震の影響の有無を調査しないかぎり、「廃炉工程」の過程において、存在するかもしれない物的証拠は「現場検証」さえ行われることなく、次から次に「処分=証拠隠滅」されてゆくことになるからである。 「中間報告書」の第一の問題点として私たちはこのことを踏まえておく必要がある。
3) ニ点目の問題は、米、仏、韓といった原発大国・推進国の「専門家」が委員となっていること。つまり、「事故調」の「調査」と「検証」の公正さ・中立性・客観性の問題である。
米国からは、2003年まで原子力規制委員会の議長を務め、IAEAの国際原子力安全諮問グループのメンバー、リチャード・A ・メザーブが、フランスからは原子力安全庁の長官で、IAEAの原子力安全基準委員会委員長のアンドレ・クロード・ラコステが、韓国からは韓国科学技術院教授、韓国原子力協会会長、チャン・スンフンが委員となった。
このような面々から原発の構造的・工学的脆弱性を指摘するようなレポートが作成されることは、まずありえない。
4) 私は読者に、マスコミが報じる「中間報告書」の概要ではなく、ざっとでも全文に目を通してみることをすすめたい。 そうすれば、読者がどういう立場の人であれ、今回の「事故」を招いた「こんな東電、こんな国と官僚機構、こんな原子力ムラの「科学者」たちが、何ら法的・政治的・社会的責任を問われぬまま不処罰になるのは、どう考えてもおかしい/許せない」と考えるに違いない。
「事故調」の「報告書」を受け、国は少なくとも、今回の〈事態〉に決定的役割を果たした者たちからのヒアリングを、国会などの公的場において再度行うと同時に、その者たちの〈責任〉を問うことができる法の制定の検討を開始すべきである。
見方と読み方によっては、「「報告書」はかなり切り込んだ内容になっている」と言うこともできるかもしれない。 しかし、そうであるなら/そうであるからこそ余計に、「組織と個人の責任を問わない」という政府「事故調」の結成当初よりの姿勢と、匿名に始まり匿名で終わる「報告書」の在り方が改めて問われるべきだと私は思う。 「これだけの事態」を招いた当事者たちが、何の組織的・個人的責任を問われずに済まされるという考え方そのものが間違っている。国も東電も「事故調」も、考えが甘すぎるのだ。
国と東電を同じ被告席に立つ当事者として裁く法の不在。
私たちはこの現実から変えてゆくしかないのである。
3
3号機の注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題
次に、「冷却装置への東電の対応」に関し、このブログでも問題にしてきた3号機の注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題を、「中間報告書」を精査・検証する〈ケース・スタディ〉の一つとして、考えてみよう。
中日新聞は、このようにまとめている。
「12日午前11時36分に3号機のRCIC[原子炉隔離時冷却系]が停止した後、午後0時35分に高圧注水系(HPCI)が起動。低い回転数で、設備が壊れることを恐れた運転員は、13日午前2時42分、手動で停止した。代替注水はできず、HPCIも再起動できず7時間近く経過、炉心損傷が進んだ」・・・。
しかし、事はそんなに単純ではない。
私が問題にしたのは、まずHPCIが「自動起動」したか否か、「手動停止」が所長以下の現場の「原発幹部」と本部が関知しないところでなされたこと(とされていることの異様さ・異常さ)であるが、下に引用した「中間報告書」の該当箇所を、次の三点に留意しながら読んでほしい。
①「何らかの原因でRCIC が停止した」状態、しかも「中央制御室においてRCIC の再起動を試みたがうまくいかなかった」状態において、HPCIが「自動起動」する可能性/確率について。
②「当直」が、「HPCI による注水からD/DFP による注水に切り替えた方が安定した注水ができると考え」たことに不自然さがないかどうか。また、その判断の妥当性/誤りについて。
③メルトダウン直前のHPCIの「手動停止」→代替給水の失敗を本部・現場の「原発幹部」が関知していなかったとする「証言」の信憑性について。そんなことが許されるのかということをも含めて。
③に関し「中間報告書」は、このように書いている。
ア) 「発電班の一部の者は、現場対応に注意を払う余り、情報伝達が疎かになり、当直が抱いたHPCI の作動状態に関する問題意識やHPCIの手動停止に関する情報が、発電所対策本部発電班全体で共有されることもなかった。そのため、発電班長も、かかる情報を把握しておらず、低圧状態下で回転数が落ちた状態ではあるもののHPCIが作動しているという認識を有しているにすぎなかった。その結果、吉田所長を含む発電所対策本部幹部や本店対策本部も、3 号機の当直がHPCI を手動で停止しようとしていることを知らなかった」
イ) 「発電班の中で、その報告を受けた者や、その者から状況を伝え聞いた者は、いずれも3/4 号中央制御室の交代要員として控えていた当直長らであり、発電班長に報告していなかったため、発電所対策本部や本店対策本部は、この時点になってもなお、SR 弁の開操作に失敗したことはもとより、HPCIを手動で停止させていたことすら把握していなかった」
この記述に不自然さはないか。また仮に「ない」としたら、非常用復水器(IC)の作動「誤認」問題と併せて考えるなら、とても東電の「原発幹部」に「国策・民営」の事業を任せることはできない、国は直ちに第一原発5、6号機と第二原発の廃炉→事業所の解体、柏崎刈羽の全号機稼働停止→廃炉→事業所解体を決定すべき、という結論しか出てきようがないのではないか?
「中間報告書」には、「3号機注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題」をはじめ、「常識では考えられない証言」、「非常時とは言え、とても信じられない証言」が随所に散らばっている。そのことを読者に理解してもらうために、少し長くなるが、「報告書」の該当箇所を下に引いておこう。 上に述べた諸点を念頭に置きながら、読者それぞれの〈眼〉で判断してほしい。
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?」
・・・
「Ⅳ 東京電力福島第一原子力発電所における事故対処」(p170)
(2)3号機への代替注水の状況 a) 3号機の当時のプラント状況と当直の対応
① 3号機については、3月12日11時36分頃、何らかの原因でRCIC が停止した。
このため、当直が3号機T/B 地下1 階にあるRCIC 室に行き、その作動状態を確認の上、3/4 号中央制御室においてRCIC の再起動を試みたがうまくいかなかった。3号機のRCICが停止した後である同日12時6分頃、当直はD/DFPライン(ディーゼル駆動消火ポンプ)を起動し、その後、S/Cスプレイを実施した。そのうちに3号機の原子炉水位が低下していったため、同日12 時35 分頃、HPCIが自動起動した。
HPCIについては、その流量が大きいため、流量を調節しなければ、原子炉水位が急上昇してすぐに停止してしまう。そして、再起動には多くの電気を必要とすることから、バッテリーの消耗が大きくなる。そのため、当直は、あらかじめ、HPCIのテスト配管の電動弁を開操作して、原子炉に注入するラインと水源である復水貯蔵タンクに戻るラインを作り、HPCIの流量を調節して作動できるようにしていた。
その後、3号機原子炉は、HPCIの作動によって減圧が顕著となり、同日19時以降、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、0.8MPa gage から1.0MPa gage までの数値を示すようになった。
② 3月12日20時36分頃、3/4号中央制御室では、3号機の原子炉水位計の電源(24V直流電源)が枯渇し、原子炉水位の監視ができなくなった。そこで、発電所対策本部復旧班は、同日未明に広野火力発電所から調達した2Vバッテリー合計50個のうち13個(予備用バッテリー1 個を含む。)を順次3/4号中
央制御室に運び込み、3号機の原子炉水位計の電源復旧作業を行った。その間、3/4号中央制御室の当直は、3号機の原子炉水位を監視できなくなったため、原子炉内への注水量を十分確保できるようにHPCIの流量の設定値をやや引き上げた上、原子炉圧力やHPCIの吐出圧力などを監視することにより、HPCIの
運転状態を確認していた。
HPCI は、本来、原子炉圧力が1.03MPa gage から7.75MPa gage 程度の高圧状態にある場合に短時間に大量に原子炉注水をするために用いることが予定された注水システムであった。しかし、3号機のHPCI については、原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPagage を推移している中で、流量調整をしながら、手順で定められた運転範囲を下回る回転数で長時間作動させ続けていた。
さらに、次第に、HPCIの吐出圧力が低下傾向を示し、原子炉圧力と拮抗するようになっていった。そのため、当直は、原子炉水位が不明な中で、HPCI によって原子炉注水が十分なされているのか判然とせず、かつ、通常と異なる運転方法によってHPCIの設備が壊れるおそれがあるとも考え、HPCIを作動させ続けることに不安を抱くようになった。
また、この頃、3/4号中央制御室の制御盤上、SR弁の状態表示灯が全閉を示す緑色ランプを示していたため、当直は、依然として制御盤上の遠隔手動操作によりSR弁を開けることができると考えていた(資料Ⅳ-6 参照)。そして、原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPa gage 程度といった低い状態であったため、当直は、制御盤上の遠隔手動操作によりSR 弁を開けて原子炉を更に減圧すれば、作動中のD/DFPの吐出圧力でも注水可能であり、D/DFPの接続先をS/C スプレイラインから原子炉注水ラインに変更すれば、D/DFPで原子炉に注水できると考えた。そこで、当直は、HPCIによる注水からD/DFPによる注水に切り替えた方が安定した注水ができると考え、同月13 日2 時42 分頃、HPCIを手動で停止することにした。
③ 3号機のHPCI を手動停止する前、当直は、発電所対策本部発電班の一部(緊急時対策室の発電班ブースに控えていた3/4号中央制御室担当の当直長ら)に対し、HPCIの作動状態に関する問題意識を示した上、HPCI を手動停止し、SR 弁で減圧操作してD/DFPを用いた原子炉注水を実施したい旨相談した。
当直から相談を受けた発電班の一部の者は、3号機のHPCIの作動状態に関する問題点やHPCIの手動停止の是非等に関して話し合った。その結果、これらの者は、運転許容範囲を下回る回転数でHPCI を作動させ続ければHPCIの設備破損等の危険があるのに対し、制御盤上の操作でSR を開けてD/DFPによる原子炉注水が可能なのであれば、HPCIを停止するのもやむを得ないと考え、当直にも、その旨伝えた。
しかし、これらの発電班の一部の者は、現場対応に注意を払う余り、情報伝達が疎かになり、当直が抱いたHPCI の作動状態に関する問題意識やHPCIの手動停止に関する情報が、発電所対策本部発電班全体で共有されることもなかった。そのため、発電班長も、かかる情報を把握しておらず、低圧状態下で回転数が落ちた状態ではあるもののHPCIが作動しているという認識を有しているにすぎなかった。その結果、吉田所長を含む発電所対策本部幹部や本店対策本部も、3 号機の当直がHPCI を手動で停止しようとしていることを知らなかった。
④ 3 月13 日2 時42 分頃に3号機のHPCIを手動停止する前、当直は、D/DFPの運転確認及び原子炉格納容器スプレイから原子炉注水に切り替えるため、3号機R/B内に立ち入った。しかし、この頃、現場と3/4 号中央制御室の通信手段が確保されておらず、現場で原子炉注水に切り替える作業に従事していた当
直が3/4 号中央制御室に戻ったのは同日3 時5 分頃であり、既にHPCI を手動停止した後であった。そのため、HPCI 手動停止と原子炉注水切替の前後関係については不明である。いずれにせよ、これらの操作は近接した時間帯に相前後してなされた。
同日2時42分頃、当直は、3/4号中央制御室において、制御盤上のHPCIの停止ボタンを押し、さらに、タービン蒸気入口弁の全閉操作をして、HPCIを手動で停止した。そして、同日2時45分頃及び同日2時55分頃、当直は、3/4 号中央制御室において、制御盤上の遠隔手動操作によりSR 弁の開操作を実施した。しかし、いずれの場合も、制御盤上の SR 弁の状態表示ランプは、「全閉」を示す緑色ランプから「全開」を示す赤色ランプに変わらなかった。そのため、当直は、制御盤上の遠隔手動操作によってSR弁を開くことができず、減圧操作に失敗したと判断した。
3号機制御盤上の状態表示灯が点灯していたにもかかわらず、SR弁の開操作に失敗した原因については、その後同日9時頃、電源復旧してSR弁の開操作に成功していることから、物理的な障害ではなく、開操作に必要なバッテリー容量が不足していた可能性がある。そして、このことは、SR弁開操作に必要なバッテリー容量が、状態表示灯を点灯させるバッテリー容量よりも大きいことを意味し、状況次第では、制御盤上の状態表示灯が点灯しているからといって、必ずしもSR弁の遠隔手動開操作が可能であると断定できないことを示すことになり、今後、運転操作上、留意しておく必要があると思われる。
⑤ 3月13日2時45分頃及び同日2時55分頃、当直は、合計2度にわたり、遠隔手動によるSR弁の開操作に失敗したが、当直長は、その都度、その状況を発電所対策本部発電班に報告していた。しかし、発電班の中で、その報告を受けた者や、その者から状況を伝え聞いた者は、いずれも3/4 号中央制御室の交代要員として控えていた当直長らであり、発電班長に報告していなかったため、発電所対策本部や本店対策本部は、この時点になってもなお、SR 弁の開操作に失敗したことはもとより、HPCIを手動で停止させていたことすら把握していなかった。
3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、HPCI停止直後の同日2時44 分頃に0.580MPa gage まで落ち込んでいたものの、SR 弁の開操作失敗後の同日3時頃には0.770MPa gage を、同日3 時44 分頃には4.100MPa gageを示し、上昇傾向に転じた。その間、当直は、3号機のD/DFP を起動させて原子炉注水をしようと試みていたが、同日3時5分頃、D/DFP の吐出圧力は0.61MPa gage まで上昇していたものの、3号機の原子炉圧力を上回ることはなく、原子炉に注水することは物理的に不可能であった。
⑥ 3月13日3時35分頃、当直は、3/4 号中央制御室において、HPCIの再起動を試みたが再起動できなかった。再起動できなかった要因は、HPCI 起動時のバッテリー消費が大きいため、再起動に必要なバッテリー残量がなかった可能性が高い。
当直員引継日誌及びプラントパラメータによれば、D/DFPは、3 月12 日14 時頃の時点で吐出圧力0.35MPa gage、吸込圧力0.02MPa gage、同月13日1時45分頃の時点で吐出圧力0.42MPa gage、吸込圧力0MPa gage であった。これに対し、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、同月12 日13 時58 分頃に3.630MPa gage、同日14 時25 分頃に3.560MPa gage、同月13 日2 時に0.850MPagage、同日2 時44 分頃に0.580MPa gage をそれぞれ示していた。
そうすると、これらを前提とする限り、原子炉圧力がD/DFPの吐出圧力を下回ることはなかったと考えられ、仮に、この頃、D/DFP が作動状態にあり、S/C スプレイラインから切り替えてFP 系ラインから3 号機原子炉内に注水を試みたとしても、注水可能な状況にはなかったと認められる。
(当直員引継日誌によれば、3 月13 日2 時55 分頃の欄には、SR 弁の開操作を失敗したことのほかに、D/DFP の吐出圧力をはるかに上回る「炉圧1.3MPa」という記載がある。)
そして、このバッテリーは、人力で持ち運び困難であり、仮に新たなバッテリーを調達したとしても、3号機R/B 内に持ち運んで取替作業を行うことは事実上不可能であった。
また、同日3 時37 分頃以降、同日5 時8 分頃までの間、当直は、3号機R/B内のHPCI室を経由してRCIC 室に向かい、RCIC の機械・機構部の状態を確認するなどして、RCIC による原子炉注水を試みようとしたが、RCIC が再起動することはなかった。また、当直は、HPCI室で、HPCIが運転停止状態にあることを確認した。なお、当時のHPCI室は、大量の蒸気で満たされ、又は水浸しになっているような状況にはなく、HPCIの配管が破断していた形跡はうかがえなかった。
そして、当直は、減圧操作に失敗してFP系から注水することができず、RCICもHPCIも再起動できなかったが、随時、発電所対策本部発電班に報告や相談をしていた。しかし、当直から報告、相談を受けた発電班の人間や、これを伝え聞いた周囲の人間は、現場の緊迫した事態に気を取られる余り、誰からも発電班長への報告がなされず、その結果、発電所対策本部や本店対策本部は、HPCI の手動停止や、停止後の当直の対応について把握できなかった。そして、HPCI 停止及びその後の当直の対応を把握していた発電班の人間は、同日3時55分頃になってようやく、発電班長に報告することに思いを致し、発電班長に対し、「3号機のHPCI が停止し、D/DFPによる注水を試みたが、注水できなかった。原子炉圧力が4MPa gage 程度まで上昇した。」旨報告し、発電班長を通じて、吉田所長を含む発電所対策本部幹部も、3号機のHPCI が停止したことを把握した。
それまで、吉田所長を含む発電所対策本部幹部は、3号機の当直がHPCI を手動で停止する予定であるという報告も、手動で停止したとの報告も受けておらず、3号機のHPCI が正常に作動しているものと考えていた。
このとき、本店対策本部も、テレビ会議システムを通じて、3 号機のHPCIが停止したことを初めて把握し、発電所対策本部に対し、自動停止だったのか、手動停止だったのかを確認するように指示した。そこで、発電班長は、発電班に HPCIの停止原因を確認したが、緊急時対策室が騒然とする中で、発電班から「手動停止」と報告を受けたのに、「自動停止」と聞き違え、メインテーブルにおいて、マイクで「自動停止」と発話した。その際、緊急時対策室が騒然としていたため、報告をした発電班の人間も、発電班長の誤解に基づく発話に気付かず、訂正できなかった。そのため、発電所対策本部及び本店対策本部は、同日2 時42 分頃に3 号機のHPCI が自動停止したものと誤解した。
b 3 号機注水に関する吉田所長の判断
① 3 月13 日3 時55 分頃、吉田所長は、発電班長からの報告を受け、3 号機のHPCI が同日2 時42 分頃に停止していたことを知った。ただし、発電所対策本部及び本店対策本部では、当直がHPCIを手動停止したとは認識しておらず、自動停止したものと誤解していた。同時に、吉田所長は、3 号機のD/DFP による注水のためSR 弁を開けて減圧操作することを試みたが失敗した旨の報告も受けたが、元々、D/DFP の吐出圧力が弱く、水源であるろ過水タンクの水量にも疑義がある上、FP 系ラインにつながる建屋外配管も地震の影響により破断している可能性があるので、信頼を置くことはできないと考えていた。
また、同月12 日夜以降、発電所対策本部復旧班は、3号機の電源を復旧させて、3号機のSLC による注水、RCIC の駆動、SR 弁の開操作を可能にするべく、電源復旧作業の再開に向けた準備・検討を開始していた。しかし、同月13日3 時55 分頃、発電所対策本部が当直からHPCI 作動停止の報告を受けた時点では、かかる電源復旧の見込みは立っていなかった。
吉田所長は、3 号機のHPCI が停止したとの報告を受け、3号機について、他号機よりも優先して、可能な限り早期に水を確保し、SR 弁による原子炉減圧と消防車を用いた注水を実施する必要があると判断した。そこで、吉田所長は、3 号機T/B 前の逆洗弁ピット内の海水を3 号機原子炉に注水するラインを構成するとともに、SR 弁の開操作に必要なバッテリーを調達するように指示した。本店対策本部やオフサイトセンターの武藤副社長らも、吉田所長の前記判断に異論はなかった。
② 3月13日5 時頃、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、7.380MPa gage を示し、以後、減圧操作を実施するまで、7MPa gage 台を推移した。同日 5 時8 分頃、当直は、原子炉格納容器の圧力上昇を抑えるため、原子炉注入ラインのRHR 注入弁を手動で閉操作し、トーラス室にあるS/C スプレイ弁を手動で開操作して、S/C スプレイを開始した。
このとき、S/C スプレイ手動操作用ハンドルが異常に熱くなっていた。さらに、同日5 時8 分頃まで、当直は、RCIC の手動起動を試みたがうまくいかず、同日5 時10 分頃、発電所対策本部にその旨報告した。この報告を受け、吉田所長は、原災法第15 条第1 項の規定に基づく特定事象(原子炉冷却機能喪失)に発生したと判断し、同日5 時58 分頃、官庁等に報告した。
③ 3月13日6時19分頃、3号機につき、同日4時15分頃にはTAF に到達していたものと考えられたため、吉田所長は、官庁等に、その旨報告した。
・・
1
政府「事故調」の「中間報告書」が公表された。
毎日新聞は、「中間報告書」について、「炉心溶融を防ぐための冷却装置への東電の対応に問題があったと認定し、「極めて遺憾」と指摘。政府の対策本部が機能不全に陥っていたことにも言及した。深刻な被害にいたった背景として、自然災害と原発事故の複合災害という視点がなく、政府や東電の備えの欠如があったと分析した」とまとめている。
しかし、「事故」の原因は「冷却装置への東電の対応」、「政府の対策本部」の「機能不全」、「政府や東電の備えの欠如」のみにあったのだろうか?
「中間報告書」の問題点を簡潔に述べたうえで、「冷却装置への東電の対応」から考えてみよう。
2
「中間報告書」の問題点
1) 最初に指摘できることは、「報告書」が、「地震による影響はなかった」「原子炉は止まった」とする東電関係者からの「証言」と東電が公表してきた「データ」を元に作成されていること、そして結論については来夏の「最終報告書」を待たねばならないとしながらも、基本的には東電の主張に沿う形でまとめられていることである。
「報告書」は、地震は原子炉建屋・タービン建屋内部には影響を与えておらず、あくまでも打撃は建屋外の敷地の施設に限定されるという総論的見解を示している。
たしかに、「報告書」は、地震の影響について東電関係者の「証言」や「データ」に全面的に依拠するのではなく、独自の分析を加えたような体裁をとっている。「報告書」によれば、問題は、建屋内の高い放射線量によって実態が調査できないことにあるのであって、東電の主張を追認するものではないことが示唆されている。
2) しかし、1~4号機が「冷温停止状態」宣言から廃炉工程に突入した現状にあって、「最終報告書」がまとめられる向こう半年間の過程において、地震による建屋内の損壊状態をめぐるさらなる調査が行われる現実的可能性は極めて低いと言わねばならない。建屋内の高い放射線量が今後数カ月で低下する見込みはなく、「事故調」が「ロボット」を動員し、独自かつ戦略的に地震の影響の有無を調査しないかぎり、「廃炉工程」の過程において、存在するかもしれない物的証拠は「現場検証」さえ行われることなく、次から次に「処分=証拠隠滅」されてゆくことになるからである。 「中間報告書」の第一の問題点として私たちはこのことを踏まえておく必要がある。
3) ニ点目の問題は、米、仏、韓といった原発大国・推進国の「専門家」が委員となっていること。つまり、「事故調」の「調査」と「検証」の公正さ・中立性・客観性の問題である。
米国からは、2003年まで原子力規制委員会の議長を務め、IAEAの国際原子力安全諮問グループのメンバー、リチャード・A ・メザーブが、フランスからは原子力安全庁の長官で、IAEAの原子力安全基準委員会委員長のアンドレ・クロード・ラコステが、韓国からは韓国科学技術院教授、韓国原子力協会会長、チャン・スンフンが委員となった。
このような面々から原発の構造的・工学的脆弱性を指摘するようなレポートが作成されることは、まずありえない。
4) 私は読者に、マスコミが報じる「中間報告書」の概要ではなく、ざっとでも全文に目を通してみることをすすめたい。 そうすれば、読者がどういう立場の人であれ、今回の「事故」を招いた「こんな東電、こんな国と官僚機構、こんな原子力ムラの「科学者」たちが、何ら法的・政治的・社会的責任を問われぬまま不処罰になるのは、どう考えてもおかしい/許せない」と考えるに違いない。
「事故調」の「報告書」を受け、国は少なくとも、今回の〈事態〉に決定的役割を果たした者たちからのヒアリングを、国会などの公的場において再度行うと同時に、その者たちの〈責任〉を問うことができる法の制定の検討を開始すべきである。
見方と読み方によっては、「「報告書」はかなり切り込んだ内容になっている」と言うこともできるかもしれない。 しかし、そうであるなら/そうであるからこそ余計に、「組織と個人の責任を問わない」という政府「事故調」の結成当初よりの姿勢と、匿名に始まり匿名で終わる「報告書」の在り方が改めて問われるべきだと私は思う。 「これだけの事態」を招いた当事者たちが、何の組織的・個人的責任を問われずに済まされるという考え方そのものが間違っている。国も東電も「事故調」も、考えが甘すぎるのだ。
国と東電を同じ被告席に立つ当事者として裁く法の不在。
私たちはこの現実から変えてゆくしかないのである。
3
3号機の注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題
次に、「冷却装置への東電の対応」に関し、このブログでも問題にしてきた3号機の注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題を、「中間報告書」を精査・検証する〈ケース・スタディ〉の一つとして、考えてみよう。
中日新聞は、このようにまとめている。
「12日午前11時36分に3号機のRCIC[原子炉隔離時冷却系]が停止した後、午後0時35分に高圧注水系(HPCI)が起動。低い回転数で、設備が壊れることを恐れた運転員は、13日午前2時42分、手動で停止した。代替注水はできず、HPCIも再起動できず7時間近く経過、炉心損傷が進んだ」・・・。
しかし、事はそんなに単純ではない。
私が問題にしたのは、まずHPCIが「自動起動」したか否か、「手動停止」が所長以下の現場の「原発幹部」と本部が関知しないところでなされたこと(とされていることの異様さ・異常さ)であるが、下に引用した「中間報告書」の該当箇所を、次の三点に留意しながら読んでほしい。
①「何らかの原因でRCIC が停止した」状態、しかも「中央制御室においてRCIC の再起動を試みたがうまくいかなかった」状態において、HPCIが「自動起動」する可能性/確率について。
②「当直」が、「HPCI による注水からD/DFP による注水に切り替えた方が安定した注水ができると考え」たことに不自然さがないかどうか。また、その判断の妥当性/誤りについて。
③メルトダウン直前のHPCIの「手動停止」→代替給水の失敗を本部・現場の「原発幹部」が関知していなかったとする「証言」の信憑性について。そんなことが許されるのかということをも含めて。
③に関し「中間報告書」は、このように書いている。
ア) 「発電班の一部の者は、現場対応に注意を払う余り、情報伝達が疎かになり、当直が抱いたHPCI の作動状態に関する問題意識やHPCIの手動停止に関する情報が、発電所対策本部発電班全体で共有されることもなかった。そのため、発電班長も、かかる情報を把握しておらず、低圧状態下で回転数が落ちた状態ではあるもののHPCIが作動しているという認識を有しているにすぎなかった。その結果、吉田所長を含む発電所対策本部幹部や本店対策本部も、3 号機の当直がHPCI を手動で停止しようとしていることを知らなかった」
イ) 「発電班の中で、その報告を受けた者や、その者から状況を伝え聞いた者は、いずれも3/4 号中央制御室の交代要員として控えていた当直長らであり、発電班長に報告していなかったため、発電所対策本部や本店対策本部は、この時点になってもなお、SR 弁の開操作に失敗したことはもとより、HPCIを手動で停止させていたことすら把握していなかった」
この記述に不自然さはないか。また仮に「ない」としたら、非常用復水器(IC)の作動「誤認」問題と併せて考えるなら、とても東電の「原発幹部」に「国策・民営」の事業を任せることはできない、国は直ちに第一原発5、6号機と第二原発の廃炉→事業所の解体、柏崎刈羽の全号機稼働停止→廃炉→事業所解体を決定すべき、という結論しか出てきようがないのではないか?
「中間報告書」には、「3号機注水停止・HPCI(高圧炉心注水系)問題」をはじめ、「常識では考えられない証言」、「非常時とは言え、とても信じられない証言」が随所に散らばっている。そのことを読者に理解してもらうために、少し長くなるが、「報告書」の該当箇所を下に引いておこう。 上に述べた諸点を念頭に置きながら、読者それぞれの〈眼〉で判断してほしい。
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?」
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「Ⅳ 東京電力福島第一原子力発電所における事故対処」(p170)
(2)3号機への代替注水の状況 a) 3号機の当時のプラント状況と当直の対応
① 3号機については、3月12日11時36分頃、何らかの原因でRCIC が停止した。
このため、当直が3号機T/B 地下1 階にあるRCIC 室に行き、その作動状態を確認の上、3/4 号中央制御室においてRCIC の再起動を試みたがうまくいかなかった。3号機のRCICが停止した後である同日12時6分頃、当直はD/DFPライン(ディーゼル駆動消火ポンプ)を起動し、その後、S/Cスプレイを実施した。そのうちに3号機の原子炉水位が低下していったため、同日12 時35 分頃、HPCIが自動起動した。
HPCIについては、その流量が大きいため、流量を調節しなければ、原子炉水位が急上昇してすぐに停止してしまう。そして、再起動には多くの電気を必要とすることから、バッテリーの消耗が大きくなる。そのため、当直は、あらかじめ、HPCIのテスト配管の電動弁を開操作して、原子炉に注入するラインと水源である復水貯蔵タンクに戻るラインを作り、HPCIの流量を調節して作動できるようにしていた。
その後、3号機原子炉は、HPCIの作動によって減圧が顕著となり、同日19時以降、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、0.8MPa gage から1.0MPa gage までの数値を示すようになった。
② 3月12日20時36分頃、3/4号中央制御室では、3号機の原子炉水位計の電源(24V直流電源)が枯渇し、原子炉水位の監視ができなくなった。そこで、発電所対策本部復旧班は、同日未明に広野火力発電所から調達した2Vバッテリー合計50個のうち13個(予備用バッテリー1 個を含む。)を順次3/4号中
央制御室に運び込み、3号機の原子炉水位計の電源復旧作業を行った。その間、3/4号中央制御室の当直は、3号機の原子炉水位を監視できなくなったため、原子炉内への注水量を十分確保できるようにHPCIの流量の設定値をやや引き上げた上、原子炉圧力やHPCIの吐出圧力などを監視することにより、HPCIの
運転状態を確認していた。
HPCI は、本来、原子炉圧力が1.03MPa gage から7.75MPa gage 程度の高圧状態にある場合に短時間に大量に原子炉注水をするために用いることが予定された注水システムであった。しかし、3号機のHPCI については、原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPagage を推移している中で、流量調整をしながら、手順で定められた運転範囲を下回る回転数で長時間作動させ続けていた。
さらに、次第に、HPCIの吐出圧力が低下傾向を示し、原子炉圧力と拮抗するようになっていった。そのため、当直は、原子炉水位が不明な中で、HPCI によって原子炉注水が十分なされているのか判然とせず、かつ、通常と異なる運転方法によってHPCIの設備が壊れるおそれがあるとも考え、HPCIを作動させ続けることに不安を抱くようになった。
また、この頃、3/4号中央制御室の制御盤上、SR弁の状態表示灯が全閉を示す緑色ランプを示していたため、当直は、依然として制御盤上の遠隔手動操作によりSR弁を開けることができると考えていた(資料Ⅳ-6 参照)。そして、原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPa gage 程度といった低い状態であったため、当直は、制御盤上の遠隔手動操作によりSR 弁を開けて原子炉を更に減圧すれば、作動中のD/DFPの吐出圧力でも注水可能であり、D/DFPの接続先をS/C スプレイラインから原子炉注水ラインに変更すれば、D/DFPで原子炉に注水できると考えた。そこで、当直は、HPCIによる注水からD/DFPによる注水に切り替えた方が安定した注水ができると考え、同月13 日2 時42 分頃、HPCIを手動で停止することにした。
③ 3号機のHPCI を手動停止する前、当直は、発電所対策本部発電班の一部(緊急時対策室の発電班ブースに控えていた3/4号中央制御室担当の当直長ら)に対し、HPCIの作動状態に関する問題意識を示した上、HPCI を手動停止し、SR 弁で減圧操作してD/DFPを用いた原子炉注水を実施したい旨相談した。
当直から相談を受けた発電班の一部の者は、3号機のHPCIの作動状態に関する問題点やHPCIの手動停止の是非等に関して話し合った。その結果、これらの者は、運転許容範囲を下回る回転数でHPCI を作動させ続ければHPCIの設備破損等の危険があるのに対し、制御盤上の操作でSR を開けてD/DFPによる原子炉注水が可能なのであれば、HPCIを停止するのもやむを得ないと考え、当直にも、その旨伝えた。
しかし、これらの発電班の一部の者は、現場対応に注意を払う余り、情報伝達が疎かになり、当直が抱いたHPCI の作動状態に関する問題意識やHPCIの手動停止に関する情報が、発電所対策本部発電班全体で共有されることもなかった。そのため、発電班長も、かかる情報を把握しておらず、低圧状態下で回転数が落ちた状態ではあるもののHPCIが作動しているという認識を有しているにすぎなかった。その結果、吉田所長を含む発電所対策本部幹部や本店対策本部も、3 号機の当直がHPCI を手動で停止しようとしていることを知らなかった。
④ 3 月13 日2 時42 分頃に3号機のHPCIを手動停止する前、当直は、D/DFPの運転確認及び原子炉格納容器スプレイから原子炉注水に切り替えるため、3号機R/B内に立ち入った。しかし、この頃、現場と3/4 号中央制御室の通信手段が確保されておらず、現場で原子炉注水に切り替える作業に従事していた当
直が3/4 号中央制御室に戻ったのは同日3 時5 分頃であり、既にHPCI を手動停止した後であった。そのため、HPCI 手動停止と原子炉注水切替の前後関係については不明である。いずれにせよ、これらの操作は近接した時間帯に相前後してなされた。
同日2時42分頃、当直は、3/4号中央制御室において、制御盤上のHPCIの停止ボタンを押し、さらに、タービン蒸気入口弁の全閉操作をして、HPCIを手動で停止した。そして、同日2時45分頃及び同日2時55分頃、当直は、3/4 号中央制御室において、制御盤上の遠隔手動操作によりSR 弁の開操作を実施した。しかし、いずれの場合も、制御盤上の SR 弁の状態表示ランプは、「全閉」を示す緑色ランプから「全開」を示す赤色ランプに変わらなかった。そのため、当直は、制御盤上の遠隔手動操作によってSR弁を開くことができず、減圧操作に失敗したと判断した。
3号機制御盤上の状態表示灯が点灯していたにもかかわらず、SR弁の開操作に失敗した原因については、その後同日9時頃、電源復旧してSR弁の開操作に成功していることから、物理的な障害ではなく、開操作に必要なバッテリー容量が不足していた可能性がある。そして、このことは、SR弁開操作に必要なバッテリー容量が、状態表示灯を点灯させるバッテリー容量よりも大きいことを意味し、状況次第では、制御盤上の状態表示灯が点灯しているからといって、必ずしもSR弁の遠隔手動開操作が可能であると断定できないことを示すことになり、今後、運転操作上、留意しておく必要があると思われる。
⑤ 3月13日2時45分頃及び同日2時55分頃、当直は、合計2度にわたり、遠隔手動によるSR弁の開操作に失敗したが、当直長は、その都度、その状況を発電所対策本部発電班に報告していた。しかし、発電班の中で、その報告を受けた者や、その者から状況を伝え聞いた者は、いずれも3/4 号中央制御室の交代要員として控えていた当直長らであり、発電班長に報告していなかったため、発電所対策本部や本店対策本部は、この時点になってもなお、SR 弁の開操作に失敗したことはもとより、HPCIを手動で停止させていたことすら把握していなかった。
3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、HPCI停止直後の同日2時44 分頃に0.580MPa gage まで落ち込んでいたものの、SR 弁の開操作失敗後の同日3時頃には0.770MPa gage を、同日3 時44 分頃には4.100MPa gageを示し、上昇傾向に転じた。その間、当直は、3号機のD/DFP を起動させて原子炉注水をしようと試みていたが、同日3時5分頃、D/DFP の吐出圧力は0.61MPa gage まで上昇していたものの、3号機の原子炉圧力を上回ることはなく、原子炉に注水することは物理的に不可能であった。
⑥ 3月13日3時35分頃、当直は、3/4 号中央制御室において、HPCIの再起動を試みたが再起動できなかった。再起動できなかった要因は、HPCI 起動時のバッテリー消費が大きいため、再起動に必要なバッテリー残量がなかった可能性が高い。
当直員引継日誌及びプラントパラメータによれば、D/DFPは、3 月12 日14 時頃の時点で吐出圧力0.35MPa gage、吸込圧力0.02MPa gage、同月13日1時45分頃の時点で吐出圧力0.42MPa gage、吸込圧力0MPa gage であった。これに対し、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、同月12 日13 時58 分頃に3.630MPa gage、同日14 時25 分頃に3.560MPa gage、同月13 日2 時に0.850MPagage、同日2 時44 分頃に0.580MPa gage をそれぞれ示していた。
そうすると、これらを前提とする限り、原子炉圧力がD/DFPの吐出圧力を下回ることはなかったと考えられ、仮に、この頃、D/DFP が作動状態にあり、S/C スプレイラインから切り替えてFP 系ラインから3 号機原子炉内に注水を試みたとしても、注水可能な状況にはなかったと認められる。
(当直員引継日誌によれば、3 月13 日2 時55 分頃の欄には、SR 弁の開操作を失敗したことのほかに、D/DFP の吐出圧力をはるかに上回る「炉圧1.3MPa」という記載がある。)
そして、このバッテリーは、人力で持ち運び困難であり、仮に新たなバッテリーを調達したとしても、3号機R/B 内に持ち運んで取替作業を行うことは事実上不可能であった。
また、同日3 時37 分頃以降、同日5 時8 分頃までの間、当直は、3号機R/B内のHPCI室を経由してRCIC 室に向かい、RCIC の機械・機構部の状態を確認するなどして、RCIC による原子炉注水を試みようとしたが、RCIC が再起動することはなかった。また、当直は、HPCI室で、HPCIが運転停止状態にあることを確認した。なお、当時のHPCI室は、大量の蒸気で満たされ、又は水浸しになっているような状況にはなく、HPCIの配管が破断していた形跡はうかがえなかった。
そして、当直は、減圧操作に失敗してFP系から注水することができず、RCICもHPCIも再起動できなかったが、随時、発電所対策本部発電班に報告や相談をしていた。しかし、当直から報告、相談を受けた発電班の人間や、これを伝え聞いた周囲の人間は、現場の緊迫した事態に気を取られる余り、誰からも発電班長への報告がなされず、その結果、発電所対策本部や本店対策本部は、HPCI の手動停止や、停止後の当直の対応について把握できなかった。そして、HPCI 停止及びその後の当直の対応を把握していた発電班の人間は、同日3時55分頃になってようやく、発電班長に報告することに思いを致し、発電班長に対し、「3号機のHPCI が停止し、D/DFPによる注水を試みたが、注水できなかった。原子炉圧力が4MPa gage 程度まで上昇した。」旨報告し、発電班長を通じて、吉田所長を含む発電所対策本部幹部も、3号機のHPCI が停止したことを把握した。
それまで、吉田所長を含む発電所対策本部幹部は、3号機の当直がHPCI を手動で停止する予定であるという報告も、手動で停止したとの報告も受けておらず、3号機のHPCI が正常に作動しているものと考えていた。
このとき、本店対策本部も、テレビ会議システムを通じて、3 号機のHPCIが停止したことを初めて把握し、発電所対策本部に対し、自動停止だったのか、手動停止だったのかを確認するように指示した。そこで、発電班長は、発電班に HPCIの停止原因を確認したが、緊急時対策室が騒然とする中で、発電班から「手動停止」と報告を受けたのに、「自動停止」と聞き違え、メインテーブルにおいて、マイクで「自動停止」と発話した。その際、緊急時対策室が騒然としていたため、報告をした発電班の人間も、発電班長の誤解に基づく発話に気付かず、訂正できなかった。そのため、発電所対策本部及び本店対策本部は、同日2 時42 分頃に3 号機のHPCI が自動停止したものと誤解した。
b 3 号機注水に関する吉田所長の判断
① 3 月13 日3 時55 分頃、吉田所長は、発電班長からの報告を受け、3 号機のHPCI が同日2 時42 分頃に停止していたことを知った。ただし、発電所対策本部及び本店対策本部では、当直がHPCIを手動停止したとは認識しておらず、自動停止したものと誤解していた。同時に、吉田所長は、3 号機のD/DFP による注水のためSR 弁を開けて減圧操作することを試みたが失敗した旨の報告も受けたが、元々、D/DFP の吐出圧力が弱く、水源であるろ過水タンクの水量にも疑義がある上、FP 系ラインにつながる建屋外配管も地震の影響により破断している可能性があるので、信頼を置くことはできないと考えていた。
また、同月12 日夜以降、発電所対策本部復旧班は、3号機の電源を復旧させて、3号機のSLC による注水、RCIC の駆動、SR 弁の開操作を可能にするべく、電源復旧作業の再開に向けた準備・検討を開始していた。しかし、同月13日3 時55 分頃、発電所対策本部が当直からHPCI 作動停止の報告を受けた時点では、かかる電源復旧の見込みは立っていなかった。
吉田所長は、3 号機のHPCI が停止したとの報告を受け、3号機について、他号機よりも優先して、可能な限り早期に水を確保し、SR 弁による原子炉減圧と消防車を用いた注水を実施する必要があると判断した。そこで、吉田所長は、3 号機T/B 前の逆洗弁ピット内の海水を3 号機原子炉に注水するラインを構成するとともに、SR 弁の開操作に必要なバッテリーを調達するように指示した。本店対策本部やオフサイトセンターの武藤副社長らも、吉田所長の前記判断に異論はなかった。
② 3月13日5 時頃、3号機の原子炉圧力は、原子炉圧力計によれば、7.380MPa gage を示し、以後、減圧操作を実施するまで、7MPa gage 台を推移した。同日 5 時8 分頃、当直は、原子炉格納容器の圧力上昇を抑えるため、原子炉注入ラインのRHR 注入弁を手動で閉操作し、トーラス室にあるS/C スプレイ弁を手動で開操作して、S/C スプレイを開始した。
このとき、S/C スプレイ手動操作用ハンドルが異常に熱くなっていた。さらに、同日5 時8 分頃まで、当直は、RCIC の手動起動を試みたがうまくいかず、同日5 時10 分頃、発電所対策本部にその旨報告した。この報告を受け、吉田所長は、原災法第15 条第1 項の規定に基づく特定事象(原子炉冷却機能喪失)に発生したと判断し、同日5 時58 分頃、官庁等に報告した。
③ 3月13日6時19分頃、3号機につき、同日4時15分頃にはTAF に到達していたものと考えられたため、吉田所長は、官庁等に、その旨報告した。
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2011年12月25日日曜日
2011年12月22日木曜日
廃炉は脱原発に非ず
廃炉は脱原発に非ず
1
停止中原発の再稼働先送りが再稼働中止ではないように、再稼働中止は永久停止ではない。そして永久停止は廃炉ではない。
さらに言えば、福島第一原発1~4号機の「廃炉」が「福島第一原子力発電所」を廃止するのではないことを考えればわかるように、個々の原発の原子炉の廃炉それ自体は、原発廃絶という意味における脱原発とは無関係である。 もちろん、これらはすべて脱原発に向けた重要な一歩ではある。しかしその次の一歩の距離は果てしなく長く、困難だ。
私はあたりまえのことを、あたりまえのこととして語っているにすぎないが、誤解と混乱、幻想と思い込みを排したところから、運動の論理を組み立て直すことが必要である。
2
まず、茨城新聞より、東海第2をめぐる動き。
・・
・東海第2廃炉求める意見書可決 土浦市議会、全会一致
土浦市議会は20日、日本原子力発電東海第2原発の再稼働中止(断念)と廃炉を求める意見書案を全会一致で可決した。
意見書は、運転開始から30年以上が経過し老朽化する同原発が東日本大震災で大きな被害を受けており、今後事故が起これば関東全域に予測不能で甚大な被害を及ぼすと指摘。再稼働を認めないこと、事業者である原電に廃炉を求めることを国と関係機関に要請している。子どもたちを放射能から守る会、生活クラブ茨城土浦支部、新日本婦人の会土浦支部から請願が提出されていた。
・原子力安全協定の広域化を 県央9首長懇、県に申し入れへ
水戸市やひたちなか市など県央9市町村の首長で構成する「県央地域首長懇話会」は28日、福島第1原発事故を受け、東海村などに立地する原子力事業者と県、関係市町村が締結する「原子力安全協定」の広域化と枠組みの見直しを橋本昌知事に申し入れる。
要求するのは、水戸、笠間、ひたちなか、那珂、小美玉、茨城、大洗、城里、東海の9市町村。申し入れでは、東海第2原発から原則20キロ圏内を、新たに原発の「所在エリア」に設定し、施設の新増設や原発の運転再開に関する事前協議に参加できる権限などを求める。これまでは「所在」「隣接」「隣々接」の順に権限が強かった。
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3
次に、河北新報より、青森県の動き。
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・原子力施設安全対策 知事 週明けにも了承か 青森
福島第1原発事故を受け、青森県内の原子力施設の各事業者が示した安全対策について、三村申吾知事は21日、施設が立地する4市町村の首長と県議会各会派から賛否の意見を聞いた。首長4人と最大会派の自民党、民主党が対策を容認した。県が安全対策の是非を判断する手続きは終了。三村知事が週明けにも対策を了承する公算が大きくなった。
立地市町村のむつ市、大間町、東通村、六ケ所村の首長4人は県庁で三村知事らと会談し、安全対策を認めた。電源開発大間原発を抱える大間町の金沢満春町長は「国のエネルギー政策を理解し、立地に協力してきた住民の思いは揺るがない」と述べた。
県議会の自民党は、原子力防災対策の見直しなどを国に要請することを条件に安全対策を容認する意見書を知事に提出。与党系の青和会も賛成意見を伝えた。民主党は「エネルギーの安全保障を確立する観点からも県内の原子力施設の必要性は明らかだ」として了承した。
一方、公明・健政会は施設の安全対策を妥当とした県の第三者委員会の結論を「対症療法にとどまり、現時点で安全が確保されたとは言い難い」と指摘。「会派の意見を求める前に、県が見解を表明するべきだ」と県の対応を批判した。 共産党県議団は原発事故が収束せず、原因が示されていないなどとして、県に「安全宣言」を出さないよう申し入れた。無所属県議2人のうち1人は反対し、残る1人は意見を出さなかった。
意見聴取後、三村知事は最終判断について「少し時間をいただきたい」と報道陣に述べた。 県が安全対策を了承すれば、日本原燃は中断している使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の高レベル放射性廃液ガラス固化試験を再開する見通し。大間原発と、リサイクル燃料貯蔵の使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)も、工事再開に向けた環境が整う。 東北電力東通原発1号機(東通村)は、国から指示された安全評価の作業中で、再稼働時期は見通せていない。
・・
続きは、時間があれば、南相馬で考えることにしよう。
・・・
・3号機冷却装置、破損恐れ止める=代替注水の切り替え失敗―水素爆発前日・福島第1
東京電力福島第1原発事故で、3号機の緊急炉心冷却装置(ECCS)の一つで、水素爆発前日の3月13日未明に動作が止まった高圧注水系(HPCI)について、東電は22日、HPCIが破損し、放射性物質を含んだ蒸気が原子炉建屋内に漏れることを恐れて、中央制御室の判断で同装置を止めたことを明らかにした。 調査結果は同日、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。(時事)
↓
また、これまでの「証言」や「報告」と矛盾することを東電が言いだした。
「中央制御室の判断」とは誰(と誰と誰・・・)の判断なのか?
電源が止まった状態で、「緊急炉心冷却装置」を止めてしまえば、メルトダウン→核爆発(「水素爆発」?)→メルトスルーは不可避である。「HPCIが破損し、放射性物質を含んだ蒸気が原子炉建屋内に漏れる」云々、それを「恐れる」云々のレベルの問題ではない。
東電も国も、うそをつかないこと。正直にすべてを明らかにすること。
それがすべての出発点である。
1
停止中原発の再稼働先送りが再稼働中止ではないように、再稼働中止は永久停止ではない。そして永久停止は廃炉ではない。
さらに言えば、福島第一原発1~4号機の「廃炉」が「福島第一原子力発電所」を廃止するのではないことを考えればわかるように、個々の原発の原子炉の廃炉それ自体は、原発廃絶という意味における脱原発とは無関係である。 もちろん、これらはすべて脱原発に向けた重要な一歩ではある。しかしその次の一歩の距離は果てしなく長く、困難だ。
私はあたりまえのことを、あたりまえのこととして語っているにすぎないが、誤解と混乱、幻想と思い込みを排したところから、運動の論理を組み立て直すことが必要である。
2
まず、茨城新聞より、東海第2をめぐる動き。
・・
・東海第2廃炉求める意見書可決 土浦市議会、全会一致
土浦市議会は20日、日本原子力発電東海第2原発の再稼働中止(断念)と廃炉を求める意見書案を全会一致で可決した。
意見書は、運転開始から30年以上が経過し老朽化する同原発が東日本大震災で大きな被害を受けており、今後事故が起これば関東全域に予測不能で甚大な被害を及ぼすと指摘。再稼働を認めないこと、事業者である原電に廃炉を求めることを国と関係機関に要請している。子どもたちを放射能から守る会、生活クラブ茨城土浦支部、新日本婦人の会土浦支部から請願が提出されていた。
・原子力安全協定の広域化を 県央9首長懇、県に申し入れへ
水戸市やひたちなか市など県央9市町村の首長で構成する「県央地域首長懇話会」は28日、福島第1原発事故を受け、東海村などに立地する原子力事業者と県、関係市町村が締結する「原子力安全協定」の広域化と枠組みの見直しを橋本昌知事に申し入れる。
要求するのは、水戸、笠間、ひたちなか、那珂、小美玉、茨城、大洗、城里、東海の9市町村。申し入れでは、東海第2原発から原則20キロ圏内を、新たに原発の「所在エリア」に設定し、施設の新増設や原発の運転再開に関する事前協議に参加できる権限などを求める。これまでは「所在」「隣接」「隣々接」の順に権限が強かった。
・・
3
次に、河北新報より、青森県の動き。
・・
・原子力施設安全対策 知事 週明けにも了承か 青森
福島第1原発事故を受け、青森県内の原子力施設の各事業者が示した安全対策について、三村申吾知事は21日、施設が立地する4市町村の首長と県議会各会派から賛否の意見を聞いた。首長4人と最大会派の自民党、民主党が対策を容認した。県が安全対策の是非を判断する手続きは終了。三村知事が週明けにも対策を了承する公算が大きくなった。
立地市町村のむつ市、大間町、東通村、六ケ所村の首長4人は県庁で三村知事らと会談し、安全対策を認めた。電源開発大間原発を抱える大間町の金沢満春町長は「国のエネルギー政策を理解し、立地に協力してきた住民の思いは揺るがない」と述べた。
県議会の自民党は、原子力防災対策の見直しなどを国に要請することを条件に安全対策を容認する意見書を知事に提出。与党系の青和会も賛成意見を伝えた。民主党は「エネルギーの安全保障を確立する観点からも県内の原子力施設の必要性は明らかだ」として了承した。
一方、公明・健政会は施設の安全対策を妥当とした県の第三者委員会の結論を「対症療法にとどまり、現時点で安全が確保されたとは言い難い」と指摘。「会派の意見を求める前に、県が見解を表明するべきだ」と県の対応を批判した。 共産党県議団は原発事故が収束せず、原因が示されていないなどとして、県に「安全宣言」を出さないよう申し入れた。無所属県議2人のうち1人は反対し、残る1人は意見を出さなかった。
意見聴取後、三村知事は最終判断について「少し時間をいただきたい」と報道陣に述べた。 県が安全対策を了承すれば、日本原燃は中断している使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の高レベル放射性廃液ガラス固化試験を再開する見通し。大間原発と、リサイクル燃料貯蔵の使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)も、工事再開に向けた環境が整う。 東北電力東通原発1号機(東通村)は、国から指示された安全評価の作業中で、再稼働時期は見通せていない。
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続きは、時間があれば、南相馬で考えることにしよう。
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・3号機冷却装置、破損恐れ止める=代替注水の切り替え失敗―水素爆発前日・福島第1
東京電力福島第1原発事故で、3号機の緊急炉心冷却装置(ECCS)の一つで、水素爆発前日の3月13日未明に動作が止まった高圧注水系(HPCI)について、東電は22日、HPCIが破損し、放射性物質を含んだ蒸気が原子炉建屋内に漏れることを恐れて、中央制御室の判断で同装置を止めたことを明らかにした。 調査結果は同日、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。(時事)
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また、これまでの「証言」や「報告」と矛盾することを東電が言いだした。
「中央制御室の判断」とは誰(と誰と誰・・・)の判断なのか?
電源が止まった状態で、「緊急炉心冷却装置」を止めてしまえば、メルトダウン→核爆発(「水素爆発」?)→メルトスルーは不可避である。「HPCIが破損し、放射性物質を含んだ蒸気が原子炉建屋内に漏れる」云々、それを「恐れる」云々のレベルの問題ではない。
東電も国も、うそをつかないこと。正直にすべてを明らかにすること。
それがすべての出発点である。
「保護する責任」(R2P)と現実政治(power politics)
「保護する責任」(R2P)と現実政治(power politics)
1
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の土井香苗氏(東京事務所ディレクター)から、公表を前提とした返答が送られてきた。 私たちが土井氏にお願いしたのは、①「「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答」に対する補足的コメントと、②「質問4」に対する東京事務所の見解である。
以下が、返答の全文。
・・
世界各地の国家、特に日本政府が多くの経済援助を渡している国家でも、多くの重大な人権侵害が行われています。しかし、残念ながら、日本政府はこれまで、その潜在的な影響力にも拘らず、二国間の政府の間の友好関係にばかり焦点をあて、相手国の市民が当該国家から受けている人権侵害被害に対しての対応は概して受け身の対応に終始してきました。これは日本の市民社会から日本外交に対する要求や監視がまだ限られていることも原因のひとつだと感じます。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京事務所は、世界各地で起きている人権侵害を止めるため、日本政府が人権により重点をおいた政策を取るよう働きかけています。日本の市民社会から、日本政府の外交政策に対し人権保護の観点からの発言や行動を求める声が高まることを期待するとともに、そうしたNGOとともに、各NGOのミッションの範囲内で、様々な形で協働できれば幸いです。
土井香苗
・・
とても残念な返答、だった。
2
〈リビア以後〉のR2Pを考えるときの課題性については「解説」の中に書いた。
これらはすべて、R2Pの実行/不実行が、国連安保理を舞台とした「現実政治」に左右されることに関係している。 私が問題にしているのは、HRWやアムネスティインターナショナル(AI)などの「国際人権NGO」が、そのことがはらむ問題に関し、あまりに無自覚なことだ。
HRWやAIなどのR2P推進NGOは、シリアや「北朝鮮」等々の個別事例における「R2P安保理決議」に向けた国際キャンペーン・ロビーイング活動を精力的に展開する。そうすることによって、実は、国連安保理を舞台とした「現実政治」に自ら能動的・積極的に加担してしまっているのである。
もちろん、そうすることが個々の国々の、彼/彼女らが言う「人権侵害」の改善・是正につながるのであれば「問題なし」とすることもできる。しかし実際にはそうはならず、事態はより悪化するだけなのだ。シリアやイスラエル/パレスチナがそうであるように、国連安保理を舞台とした「現実政治」は、国家(軍・治安部隊)による民衆虐殺の継続を放置し、彼/彼女らが言う「人権侵害」の改善・是正を本気で考えてはいないからである。
土井氏や東京事務所のスタッフ・ボランティアのみなさんにも、「このリアリティをどうするのか?」、そこからまず考えてほしい。
山ではアプローチの取り方を誤れば死に至る。それと同じ誤りを犯していることを理解してほしいと思うのである。
・・・
・イスラエル:国連安保理4カ国が非難声明…入植者住宅建設
東エルサレムやヨルダン川西岸で入植者住宅の建設を進めるイスラエルに対し、英仏独ポルトガルの国連安全保障理事会理事国は20日、連名で非難声明を発表した。議長国ロシアが「深刻な懸念」を表明するなど、入植活動には15理事国のうち米国を除く14カ国が懸念を示すが、拒否権を持つ米国が非難に消極的で安保理として対応できず、個別に意見を表明する異例な形となった。
声明で欧州4カ国は「イスラエルの行為は、中東和平を進めようとする4者(米国、ロシア、国連、欧州連合)協議の努力を踏みにじるものだ。入植者の暴力行為も非難する」とし、パレスチナとイスラエルに速やかな交渉再開を促した。
議長国ロシアのチュルキン大使は記者団に「ある国が安保理でのいかなる種類の声明も望んでいない」と付言し、米国を暗に非難した。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)でパレスチナの正式加盟が可決されたことへの報復措置としてイスラエルは11月、国際法違反とされる占領地の入植活動を決定。今月18日に入植者住宅約1000戸の入札を始めた。【毎日、ニューヨーク山科武司】
・ユダヤ人入植者によるモスク放火相次ぐ、パレスチナ
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)で、イスラエル政府が承認していない違法なユダヤ人入植地の一部をイスラエル軍が解体したことに対し、ユダヤ人の原理主義者たちが腹いせにパレスチナ人のモスクに放火する事件が相次いでいる。
14日にはエルサレム(Jerusalem)で、倉庫として使われていた元モスクが放火された。外壁が焦げただけで火は燃え上がらなかったが、壁にはイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を侮辱する言葉や反アラブのスローガン、売却地であることを示すような「値札」などの落書きが残された。同日夜にはカルキリヤ(Qalqilya)でパレスチナ人の車が複数放火され、やはり「値札」の落書きなどが残されていた
15日には、ヨルダン川西岸(West Bank)のラマラ(Ramallah)に近いブルカ(Burqa)村のモスクが放火され、女性用の施設の一部が燃えた。壁にはヘブライ語で「戦争が始まった」と書かれていたほか、ナブルス(Nablus)近郊にあるミツペ・イトゥザル(Mitzpe Yitzhar)入植地の名前も落書きされていた。同入植地では前夜、パレスチナ人の私有地内にユダヤ人入植者が違法に建てた家屋と飼育小屋をイスラエル軍が解体していた。
こうした襲撃事件は、イスラエル政府が違法入植地を解体する過程で、ユダヤ人入植者側の反動として起きている。一連のモスクに放火し「値札」の落書きを残す襲撃は通常、パレスチナ人が標的とされているが、9月にガリラヤ(Galilee)のベドウィン(Bedouin)村のモスクが放火されて以降、アラブ系住民を標的とするものも増えており、またイスラエル人の左派運動家やイスラエル軍も標的となっている。
今週12日、原理主義ユダヤ人入植者たちは抗議デモを実施し、ヨルダンとの境界沿いにある立ち入り禁止の軍事地域内に侵入。13日にはヨルダン川西岸にあるイスラエル軍基地を襲撃、車両を破壊した。
ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は14日夜、自らが率いる右派政党リクード(Likud)の会合で、「わが軍の兵士たちに対する彼ら(原理主義のユダヤ人入植者)の攻撃は許さないし、われわれの隣人との宗教戦争を誘発することも許さない。モスクの神聖を冒涜させもしないし、ユダヤ人でもアラブ人でも傷つけることは許さない。彼らを拘束し、裁いてみせる」と強く非難した。
ただ、これまでもイスラエルの指導者たちはこうした事件を直ちに非難してきたが、実行犯が拘束されることは滅多にない。
一方、パレスチナ人社会は一連の襲撃事件に激怒している。パレスチナの指導者たちは、実行犯を罰しもせず放置しているとしてイスラエル政府を非難。マフムード・アッバス(Mahmud Abbas)自治政府議長の報道官、ナビル・アブ・ルデイナ(Nabil Abu Rudeina)氏はAFPの取材に対し「モスクへの放火は、ユダヤ人入植者たちによるパレスチナ人への宣戦布告だ」と怒りをあらわにした。
パレスチナ自治政府は、イスラエル軍が「入植者たちの暴力の台頭を防ぐ努力も、罰することもしていない」と批判し、「そうした方針がパレスチナ人とその礼拝の場への入植者たちの憎悪犯罪をたきつけている。イスラエル政府がそのような原理主義者を無罪放免にする方針だから、こうした事件がいつまでも続いている」と強く責めている。【12月16日 AFP】(c)AFP
1
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の土井香苗氏(東京事務所ディレクター)から、公表を前提とした返答が送られてきた。 私たちが土井氏にお願いしたのは、①「「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答」に対する補足的コメントと、②「質問4」に対する東京事務所の見解である。
以下が、返答の全文。
・・
世界各地の国家、特に日本政府が多くの経済援助を渡している国家でも、多くの重大な人権侵害が行われています。しかし、残念ながら、日本政府はこれまで、その潜在的な影響力にも拘らず、二国間の政府の間の友好関係にばかり焦点をあて、相手国の市民が当該国家から受けている人権侵害被害に対しての対応は概して受け身の対応に終始してきました。これは日本の市民社会から日本外交に対する要求や監視がまだ限られていることも原因のひとつだと感じます。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京事務所は、世界各地で起きている人権侵害を止めるため、日本政府が人権により重点をおいた政策を取るよう働きかけています。日本の市民社会から、日本政府の外交政策に対し人権保護の観点からの発言や行動を求める声が高まることを期待するとともに、そうしたNGOとともに、各NGOのミッションの範囲内で、様々な形で協働できれば幸いです。
土井香苗
・・
とても残念な返答、だった。
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〈リビア以後〉のR2Pを考えるときの課題性については「解説」の中に書いた。
これらはすべて、R2Pの実行/不実行が、国連安保理を舞台とした「現実政治」に左右されることに関係している。 私が問題にしているのは、HRWやアムネスティインターナショナル(AI)などの「国際人権NGO」が、そのことがはらむ問題に関し、あまりに無自覚なことだ。
HRWやAIなどのR2P推進NGOは、シリアや「北朝鮮」等々の個別事例における「R2P安保理決議」に向けた国際キャンペーン・ロビーイング活動を精力的に展開する。そうすることによって、実は、国連安保理を舞台とした「現実政治」に自ら能動的・積極的に加担してしまっているのである。
もちろん、そうすることが個々の国々の、彼/彼女らが言う「人権侵害」の改善・是正につながるのであれば「問題なし」とすることもできる。しかし実際にはそうはならず、事態はより悪化するだけなのだ。シリアやイスラエル/パレスチナがそうであるように、国連安保理を舞台とした「現実政治」は、国家(軍・治安部隊)による民衆虐殺の継続を放置し、彼/彼女らが言う「人権侵害」の改善・是正を本気で考えてはいないからである。
土井氏や東京事務所のスタッフ・ボランティアのみなさんにも、「このリアリティをどうするのか?」、そこからまず考えてほしい。
山ではアプローチの取り方を誤れば死に至る。それと同じ誤りを犯していることを理解してほしいと思うのである。
・・・
・イスラエル:国連安保理4カ国が非難声明…入植者住宅建設
東エルサレムやヨルダン川西岸で入植者住宅の建設を進めるイスラエルに対し、英仏独ポルトガルの国連安全保障理事会理事国は20日、連名で非難声明を発表した。議長国ロシアが「深刻な懸念」を表明するなど、入植活動には15理事国のうち米国を除く14カ国が懸念を示すが、拒否権を持つ米国が非難に消極的で安保理として対応できず、個別に意見を表明する異例な形となった。
声明で欧州4カ国は「イスラエルの行為は、中東和平を進めようとする4者(米国、ロシア、国連、欧州連合)協議の努力を踏みにじるものだ。入植者の暴力行為も非難する」とし、パレスチナとイスラエルに速やかな交渉再開を促した。
議長国ロシアのチュルキン大使は記者団に「ある国が安保理でのいかなる種類の声明も望んでいない」と付言し、米国を暗に非難した。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)でパレスチナの正式加盟が可決されたことへの報復措置としてイスラエルは11月、国際法違反とされる占領地の入植活動を決定。今月18日に入植者住宅約1000戸の入札を始めた。【毎日、ニューヨーク山科武司】
・ユダヤ人入植者によるモスク放火相次ぐ、パレスチナ
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)で、イスラエル政府が承認していない違法なユダヤ人入植地の一部をイスラエル軍が解体したことに対し、ユダヤ人の原理主義者たちが腹いせにパレスチナ人のモスクに放火する事件が相次いでいる。
14日にはエルサレム(Jerusalem)で、倉庫として使われていた元モスクが放火された。外壁が焦げただけで火は燃え上がらなかったが、壁にはイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を侮辱する言葉や反アラブのスローガン、売却地であることを示すような「値札」などの落書きが残された。同日夜にはカルキリヤ(Qalqilya)でパレスチナ人の車が複数放火され、やはり「値札」の落書きなどが残されていた
15日には、ヨルダン川西岸(West Bank)のラマラ(Ramallah)に近いブルカ(Burqa)村のモスクが放火され、女性用の施設の一部が燃えた。壁にはヘブライ語で「戦争が始まった」と書かれていたほか、ナブルス(Nablus)近郊にあるミツペ・イトゥザル(Mitzpe Yitzhar)入植地の名前も落書きされていた。同入植地では前夜、パレスチナ人の私有地内にユダヤ人入植者が違法に建てた家屋と飼育小屋をイスラエル軍が解体していた。
こうした襲撃事件は、イスラエル政府が違法入植地を解体する過程で、ユダヤ人入植者側の反動として起きている。一連のモスクに放火し「値札」の落書きを残す襲撃は通常、パレスチナ人が標的とされているが、9月にガリラヤ(Galilee)のベドウィン(Bedouin)村のモスクが放火されて以降、アラブ系住民を標的とするものも増えており、またイスラエル人の左派運動家やイスラエル軍も標的となっている。
今週12日、原理主義ユダヤ人入植者たちは抗議デモを実施し、ヨルダンとの境界沿いにある立ち入り禁止の軍事地域内に侵入。13日にはヨルダン川西岸にあるイスラエル軍基地を襲撃、車両を破壊した。
ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は14日夜、自らが率いる右派政党リクード(Likud)の会合で、「わが軍の兵士たちに対する彼ら(原理主義のユダヤ人入植者)の攻撃は許さないし、われわれの隣人との宗教戦争を誘発することも許さない。モスクの神聖を冒涜させもしないし、ユダヤ人でもアラブ人でも傷つけることは許さない。彼らを拘束し、裁いてみせる」と強く非難した。
ただ、これまでもイスラエルの指導者たちはこうした事件を直ちに非難してきたが、実行犯が拘束されることは滅多にない。
一方、パレスチナ人社会は一連の襲撃事件に激怒している。パレスチナの指導者たちは、実行犯を罰しもせず放置しているとしてイスラエル政府を非難。マフムード・アッバス(Mahmud Abbas)自治政府議長の報道官、ナビル・アブ・ルデイナ(Nabil Abu Rudeina)氏はAFPの取材に対し「モスクへの放火は、ユダヤ人入植者たちによるパレスチナ人への宣戦布告だ」と怒りをあらわにした。
パレスチナ自治政府は、イスラエル軍が「入植者たちの暴力の台頭を防ぐ努力も、罰することもしていない」と批判し、「そうした方針がパレスチナ人とその礼拝の場への入植者たちの憎悪犯罪をたきつけている。イスラエル政府がそのような原理主義者を無罪放免にする方針だから、こうした事件がいつまでも続いている」と強く責めている。【12月16日 AFP】(c)AFP
「3.11大集会」現地実行委員会準備会のご案内
「3.11大集会」現地実行委員会準備会のご案内
原発・放射能問題に取り組まれている皆様
地震・津波そして原発爆発から1年となる来春3月11日に、超党派、オール福島で2万人規模の「3.11大集会」が郡山市開成山野球場で開かれることになりました。
全原発の停止、廃炉、脱原発への道を確かなものとするために、また子どもたちをはじめ県民・市民の命と健康を守るために、原発・放射能問題に取り組まれてきた皆さんの経験、怒りと悲しみ、力と知恵・アイディアを結集し、この集会を成功させていきたいと思います。
下記のように第1回現地実行委員会準備会を開きますのでふるって参加くださるようご案内いたします。
記
1.日時 2011年12月29日(木)午後1時~
2.会場 郡山教組会館2階会議室
3.内容
①.3.11大集会のとりくみ経過について
②.3.11大集会の内容について
③.3.11集会成功のためのとりくみについて
④.その他
4.連絡
参加される団体・個人名を下表に記入し送付くだされば幸いです。
FAX 024-932-2143
e-mail ftu-k@circus.ocn.ne.jp
●参加者のお名前
●団体名
「3.11大集会」現地実行委員会準備会
郡山市桑野2‐33‐9福島県教職員組合郡山支部内
℡ 024-932-2144 fax 0243-932-2143
・・・
原発・放射能問題に取り組まれている皆様
地震・津波そして原発爆発から1年となる来春3月11日に、超党派、オール福島で2万人規模の「3.11大集会」が郡山市開成山野球場で開かれることになりました。
全原発の停止、廃炉、脱原発への道を確かなものとするために、また子どもたちをはじめ県民・市民の命と健康を守るために、原発・放射能問題に取り組まれてきた皆さんの経験、怒りと悲しみ、力と知恵・アイディアを結集し、この集会を成功させていきたいと思います。
下記のように第1回現地実行委員会準備会を開きますのでふるって参加くださるようご案内いたします。
記
1.日時 2011年12月29日(木)午後1時~
2.会場 郡山教組会館2階会議室
3.内容
①.3.11大集会のとりくみ経過について
②.3.11大集会の内容について
③.3.11集会成功のためのとりくみについて
④.その他
4.連絡
参加される団体・個人名を下表に記入し送付くだされば幸いです。
FAX 024-932-2143
e-mail ftu-k@circus.ocn.ne.jp
●参加者のお名前
●団体名
「3.11大集会」現地実行委員会準備会
郡山市桑野2‐33‐9福島県教職員組合郡山支部内
℡ 024-932-2144 fax 0243-932-2143
・・・
2011年12月21日水曜日
工程なき廃炉「工程表」
工程なき廃炉「工程表」
政府は今日(12/21)、福島第一原発1~4号機のみの廃炉に向けた、工程なき「中長期の工程表」を発表した。ただ時間的「目標」が示されただけの「工程表」である。重く、深刻な問題群だけが改めて浮き彫りになった。 来年から「最長40年」。しかもそれはただの「目標」に過ぎないという。何がどうなっても誰も責任を取らない、取れないという。
私たちはそれら「重く、深刻な問題群」を解決する、いや解決する糸口を深い闇の中で、これから手探りで見出すしかない。「先立つもの」をどうするのか、東電をどうするのか、福島第一5、6号機、とある週刊誌の最新号で放射能漏れが暴露された福島第二の廃炉問題をどうするのか、といった別の「重く、深刻な問題群」などとともに。「最長40年」にわたって。
・・
・福島第1原発1─4号機の廃炉、30─40年後目標=政府が工程表
政府は21日、東京電力福島第1原子力発電所1─4号機の廃炉終了までに今後30─40年を目標とすることなど、中長期の工程表を発表した。枝野幸男経済産業相は記者会見で「可能な限り具体的な計画を織り込んだ」と説明したが、費用の見積もりは示されなかった。枝野経産相は「1─2年後に30年先のことまで全て見積もるのは困難」と述べた。
中長期工程表は3期に分けて道筋が示された。原子炉を冷温停止状態にしたとして今月達成が宣言されたステップ2を起点に、
1)使用済み燃料プール内の燃料取り出しまでに2年以内を目標とする第1期、
2)燃料デブリ(燃料と被覆管等が溶融して再固化したもの)の取り出し開始までに今後10年以内を目標とする第2期、
3)第2期終了後から廃炉完了までに30─40年後を目標とする第3期──とした。
使用済み燃料プールからの燃料の取り出しは、
・原子炉に燃料のない4号機でステップ2終了後2年以内(2013年中)、
・3号機で同3年後程度(2014年末)をそれぞれ目標に開始する。
・1号機は「3─4号機での実績を把握し、がれき等の調査を踏まえて計画立案し、第2期中(→今後10年以内)に取り出す」、
・2号機は「建屋内除染等の状況を踏まえ、既設設備の調査を実施後、計画立案し、第2期中に取り出す」とした。
最も困難な作業となる原子炉からの燃料デブリの取り出しについて、工程表は「作業の多くには(ロボットによる)遠隔技術等の研究開発が必要で、これからの成果、現場の状況などを踏まえ段階的に進める」としている。枝野経産相は「廃炉のプロセスが想定通り進んでいかない可能性を否定するつもりはないが、基本的にはこの範囲の中で実現していく強い意志と十分な可能性はある(??)と考えている」と強調した。
廃炉費用を負担する主体については「当然東電が負担すべき性質のもの」(枝野経産相)とされ、費用がどの程度膨らむかによっては東電が債務超過に陥るリスクが生じ、そのことが原子力損害賠償支援機構を通じて東電への国の資本注入が行われるとの観測につながっている。
枝野経産相は「これから着手して見積もることができる費用は当然、経営計画の中に入ってくる」と説明しながらも、東電を実質国有化するとの報道については「(政府の対東電方針は)あらゆる選択肢を否定せずに検討しているが、政治的に現時点で何かを決定しているわけではない」と述べるにとどめた。(ロイターニュース、浜田健太郎)
・・
「原発再稼動の広域的住民投票を考える前に、考えなければならないこと」(10/13)より再録。
・・
◆廃炉に向けた作業工程(⇒リンク切れ)◆(※は研究開発が難航すると原子力委員会が判断した項目)
<使用済み核燃料の処理>
(1)燃料の長期健全性を確保する方法の開発
(2)燃料の再処理の可否を判断する方法の開発
(3)損傷燃料の処理技術の開発
↓
取り出した使用済み核燃料の「長期健全性を確保する方法」を「開発」しなければならないという表現は理解できる。しかし、使用済み核燃料の「燃料の再処理の可否を判断する方法」という表現の意味や、「損傷燃料」をどこに、どうやって「処理」できるのか、またそんな「技術」が「開発」できるかどうかも私の理解の域を超えている。
<冠水(水棺)に向けて>
(4)原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発
(5)圧力容器・格納容器の健全性評価技術の開発
(6)放射性汚染水処理で出る廃棄物処理技術の開発
(7)格納容器の損傷部分を特定する技術開発
※(8)冠水技術の開発
※(9)格納容器の内部調査技術の開発
※(10)圧力容器の内部調査技術の開発
↓
今では懐かしい「冠水」という言葉。冷温停止しない、「健全性」が破壊された原子炉の「冠水」は並大抵のことではない。 「冠水」しなければならないという「目標」だけが定まったわけだが、そのための「技術」がない。その「開発」から始まるのだ。
<溶融燃料の取り出しに向けて>
※(11)取り出し技術の工法・装置開発
(12)再臨界を防ぐための技術開発
(13)模擬燃料を使った内部の状況把握
(14)予備的な取り出し・内容分析
※(15)本格的な取り出し・専用容器への収納
(16)回収した溶融燃料の処理技術の開発
(17)溶融燃料の本格的な内容分析
↓
まずは再臨界防止の「技術開発」をしっかり進めてもらうしかない。
<その他>
(18)放射性廃棄物の処分技術の開発
(19)原子炉内の事故解析技術の高度化
↓
まずは、格納容器・圧力容器外の温度・水温計測によって原子炉内の状態を推測するだけの段階から、内部状態をしっかり「解析」し、把握できる技術を開発し、結果を情報公開してほしい。
「放射性廃棄物の処分」・・・・。どこに、どうやって?
・・・
・福島原発:浪江町議会も全10基の廃炉要求決議
福島県浪江町議会は21日の12月定例会で、県内にある東京電力福島第1、第2原発の全10基の廃炉を求める決議を10対9の賛成多数で可決した。原発が立地する双葉郡の議会で、県内の全原発の廃炉を求める決議が可決されたのは初めて。町議の多くが廃炉に理解を示しているとみられるが、「雇用の場が失われる」などの反対意見も相次いだ。
決議は「浪江の全町民2万1000人を含め、県民17万人が全国に避難を余儀なくされ、健康不安におびえている」と政府の対応を批判した。そのうえで、県内全原発の廃炉を決断するよう国や東京電力に求めている。
県内では、県議会が10月20日、全原発の廃炉を求める請願を採択し、南相馬市が今月5日、県内全10基の廃炉を決議しているが、雇用など原発への依存度が高い双葉郡での「廃炉決議」は初めてだ。 同町は原発事故後、避難区域に指定され、役場機能を同県二本松市内に移転している。
一方、東北電力が南相馬市と同町に建設を計画している浪江・小高原発の誘致についても白紙撤回する決議を全会一致で可決した。同市も建設中止を求める決議を全会一致で可決している。【毎日、清水勝】
⇒「で、私たちは福島第一5、6号機と第二原発をどうするのか?」
・格納容器冠水がヤマ場=セメント埋めも検討-廃炉工程表で東電幹部
東京電力福島第1原発の廃炉に向けた工程表の策定を受け、東電幹部が21日午後、記者会見した。武井一浩原子力運営管理部長は「原子炉格納容器を水で満たせるかが一番のヤマ場」と述べ、相沢善吾副社長は「溶融燃料の取り出しは本当に難しい」と指摘。実現の可能性や時期は、技術開発次第との考えを示した。
最長で40年後の廃炉を目指すことについて、相沢副社長は40年後に東電に残っている人はいないとした上で「人材育成も大きなテーマだ」と語った。
工程表では2015年度末ごろから原子炉格納容器を補修し、溶融燃料の強い放射線を遮るため水を満たす「冠水」を始める。しかし、水漏れ箇所の特定と補修は困難が予想され、武井部長は「格納容器下部にセメントを注入して埋め、掘って溶融燃料を取り出すことも検討している」と話した。粘着性の液体を注入して損傷部をふさぐ方法も考え、さまざまな材料を試す実験も始めたという。(時事)
・東電、廃炉費用計上へ 財務状況は正念場
福島第1原発の1~3号機が冷温停止したことで、東電は廃炉作業を本格化させる。来週中に作業工程も公表する予定だ。廃炉には、兆円単位の費用が見込まれるが、原発停止に伴う代替火力発電燃料コストの上昇などで、東電の財務内容は悪化している。債務超過に陥る可能性も指摘されるなど、東電の財務状況は正念場を迎えている。
東電の西沢俊夫社長は16日の会見で「燃料取り出しや廃棄物管理に責任を持って対応していく」と述べ、廃炉作業に意欲を示した。 これまでも、廃炉費用について「合理的な見通しがついた部分はその時点で引き当てている」(西沢社長)。事故直後の平成23年3月期決算には収束費用として6333億円を計上。23年9月中間決算でも、原子炉冷却や放射性物質の飛散防止費用に1660億円を盛り込み、事故前から積み立てていた解体費1408億円とあわせて、約9400億円を備えた。
ただ、東電に関する経営・財務調査委員会(委員長・下河辺和彦弁護士)は、1~4号機の廃炉費用に少なくとも1兆1510億円かかると試算。周辺の除染費用なども加われば、費用はこれを大きく上回る。
東電は今期中さらに引当額を積み増す方針だが、全国銀行協会の永易克典会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は「(廃炉の)費用が膨らめば債務超過もあり得る」と、追加支援に慎重姿勢を崩していない。公的資金注入による東電の実質国有化が、現実味を帯び始めている。(12/16, 産経)
政府は今日(12/21)、福島第一原発1~4号機のみの廃炉に向けた、工程なき「中長期の工程表」を発表した。ただ時間的「目標」が示されただけの「工程表」である。重く、深刻な問題群だけが改めて浮き彫りになった。 来年から「最長40年」。しかもそれはただの「目標」に過ぎないという。何がどうなっても誰も責任を取らない、取れないという。
私たちはそれら「重く、深刻な問題群」を解決する、いや解決する糸口を深い闇の中で、これから手探りで見出すしかない。「先立つもの」をどうするのか、東電をどうするのか、福島第一5、6号機、とある週刊誌の最新号で放射能漏れが暴露された福島第二の廃炉問題をどうするのか、といった別の「重く、深刻な問題群」などとともに。「最長40年」にわたって。
・・
・福島第1原発1─4号機の廃炉、30─40年後目標=政府が工程表
政府は21日、東京電力福島第1原子力発電所1─4号機の廃炉終了までに今後30─40年を目標とすることなど、中長期の工程表を発表した。枝野幸男経済産業相は記者会見で「可能な限り具体的な計画を織り込んだ」と説明したが、費用の見積もりは示されなかった。枝野経産相は「1─2年後に30年先のことまで全て見積もるのは困難」と述べた。
中長期工程表は3期に分けて道筋が示された。原子炉を冷温停止状態にしたとして今月達成が宣言されたステップ2を起点に、
1)使用済み燃料プール内の燃料取り出しまでに2年以内を目標とする第1期、
2)燃料デブリ(燃料と被覆管等が溶融して再固化したもの)の取り出し開始までに今後10年以内を目標とする第2期、
3)第2期終了後から廃炉完了までに30─40年後を目標とする第3期──とした。
使用済み燃料プールからの燃料の取り出しは、
・原子炉に燃料のない4号機でステップ2終了後2年以内(2013年中)、
・3号機で同3年後程度(2014年末)をそれぞれ目標に開始する。
・1号機は「3─4号機での実績を把握し、がれき等の調査を踏まえて計画立案し、第2期中(→今後10年以内)に取り出す」、
・2号機は「建屋内除染等の状況を踏まえ、既設設備の調査を実施後、計画立案し、第2期中に取り出す」とした。
最も困難な作業となる原子炉からの燃料デブリの取り出しについて、工程表は「作業の多くには(ロボットによる)遠隔技術等の研究開発が必要で、これからの成果、現場の状況などを踏まえ段階的に進める」としている。枝野経産相は「廃炉のプロセスが想定通り進んでいかない可能性を否定するつもりはないが、基本的にはこの範囲の中で実現していく強い意志と十分な可能性はある(??)と考えている」と強調した。
廃炉費用を負担する主体については「当然東電が負担すべき性質のもの」(枝野経産相)とされ、費用がどの程度膨らむかによっては東電が債務超過に陥るリスクが生じ、そのことが原子力損害賠償支援機構を通じて東電への国の資本注入が行われるとの観測につながっている。
枝野経産相は「これから着手して見積もることができる費用は当然、経営計画の中に入ってくる」と説明しながらも、東電を実質国有化するとの報道については「(政府の対東電方針は)あらゆる選択肢を否定せずに検討しているが、政治的に現時点で何かを決定しているわけではない」と述べるにとどめた。(ロイターニュース、浜田健太郎)
・・
「原発再稼動の広域的住民投票を考える前に、考えなければならないこと」(10/13)より再録。
・・
◆廃炉に向けた作業工程(⇒リンク切れ)◆(※は研究開発が難航すると原子力委員会が判断した項目)
<使用済み核燃料の処理>
(1)燃料の長期健全性を確保する方法の開発
(2)燃料の再処理の可否を判断する方法の開発
(3)損傷燃料の処理技術の開発
↓
取り出した使用済み核燃料の「長期健全性を確保する方法」を「開発」しなければならないという表現は理解できる。しかし、使用済み核燃料の「燃料の再処理の可否を判断する方法」という表現の意味や、「損傷燃料」をどこに、どうやって「処理」できるのか、またそんな「技術」が「開発」できるかどうかも私の理解の域を超えている。
<冠水(水棺)に向けて>
(4)原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発
(5)圧力容器・格納容器の健全性評価技術の開発
(6)放射性汚染水処理で出る廃棄物処理技術の開発
(7)格納容器の損傷部分を特定する技術開発
※(8)冠水技術の開発
※(9)格納容器の内部調査技術の開発
※(10)圧力容器の内部調査技術の開発
↓
今では懐かしい「冠水」という言葉。冷温停止しない、「健全性」が破壊された原子炉の「冠水」は並大抵のことではない。 「冠水」しなければならないという「目標」だけが定まったわけだが、そのための「技術」がない。その「開発」から始まるのだ。
<溶融燃料の取り出しに向けて>
※(11)取り出し技術の工法・装置開発
(12)再臨界を防ぐための技術開発
(13)模擬燃料を使った内部の状況把握
(14)予備的な取り出し・内容分析
※(15)本格的な取り出し・専用容器への収納
(16)回収した溶融燃料の処理技術の開発
(17)溶融燃料の本格的な内容分析
↓
まずは再臨界防止の「技術開発」をしっかり進めてもらうしかない。
<その他>
(18)放射性廃棄物の処分技術の開発
(19)原子炉内の事故解析技術の高度化
↓
まずは、格納容器・圧力容器外の温度・水温計測によって原子炉内の状態を推測するだけの段階から、内部状態をしっかり「解析」し、把握できる技術を開発し、結果を情報公開してほしい。
「放射性廃棄物の処分」・・・・。どこに、どうやって?
・・・
・福島原発:浪江町議会も全10基の廃炉要求決議
福島県浪江町議会は21日の12月定例会で、県内にある東京電力福島第1、第2原発の全10基の廃炉を求める決議を10対9の賛成多数で可決した。原発が立地する双葉郡の議会で、県内の全原発の廃炉を求める決議が可決されたのは初めて。町議の多くが廃炉に理解を示しているとみられるが、「雇用の場が失われる」などの反対意見も相次いだ。
決議は「浪江の全町民2万1000人を含め、県民17万人が全国に避難を余儀なくされ、健康不安におびえている」と政府の対応を批判した。そのうえで、県内全原発の廃炉を決断するよう国や東京電力に求めている。
県内では、県議会が10月20日、全原発の廃炉を求める請願を採択し、南相馬市が今月5日、県内全10基の廃炉を決議しているが、雇用など原発への依存度が高い双葉郡での「廃炉決議」は初めてだ。 同町は原発事故後、避難区域に指定され、役場機能を同県二本松市内に移転している。
一方、東北電力が南相馬市と同町に建設を計画している浪江・小高原発の誘致についても白紙撤回する決議を全会一致で可決した。同市も建設中止を求める決議を全会一致で可決している。【毎日、清水勝】
⇒「で、私たちは福島第一5、6号機と第二原発をどうするのか?」
・格納容器冠水がヤマ場=セメント埋めも検討-廃炉工程表で東電幹部
東京電力福島第1原発の廃炉に向けた工程表の策定を受け、東電幹部が21日午後、記者会見した。武井一浩原子力運営管理部長は「原子炉格納容器を水で満たせるかが一番のヤマ場」と述べ、相沢善吾副社長は「溶融燃料の取り出しは本当に難しい」と指摘。実現の可能性や時期は、技術開発次第との考えを示した。
最長で40年後の廃炉を目指すことについて、相沢副社長は40年後に東電に残っている人はいないとした上で「人材育成も大きなテーマだ」と語った。
工程表では2015年度末ごろから原子炉格納容器を補修し、溶融燃料の強い放射線を遮るため水を満たす「冠水」を始める。しかし、水漏れ箇所の特定と補修は困難が予想され、武井部長は「格納容器下部にセメントを注入して埋め、掘って溶融燃料を取り出すことも検討している」と話した。粘着性の液体を注入して損傷部をふさぐ方法も考え、さまざまな材料を試す実験も始めたという。(時事)
・東電、廃炉費用計上へ 財務状況は正念場
福島第1原発の1~3号機が冷温停止したことで、東電は廃炉作業を本格化させる。来週中に作業工程も公表する予定だ。廃炉には、兆円単位の費用が見込まれるが、原発停止に伴う代替火力発電燃料コストの上昇などで、東電の財務内容は悪化している。債務超過に陥る可能性も指摘されるなど、東電の財務状況は正念場を迎えている。
東電の西沢俊夫社長は16日の会見で「燃料取り出しや廃棄物管理に責任を持って対応していく」と述べ、廃炉作業に意欲を示した。 これまでも、廃炉費用について「合理的な見通しがついた部分はその時点で引き当てている」(西沢社長)。事故直後の平成23年3月期決算には収束費用として6333億円を計上。23年9月中間決算でも、原子炉冷却や放射性物質の飛散防止費用に1660億円を盛り込み、事故前から積み立てていた解体費1408億円とあわせて、約9400億円を備えた。
ただ、東電に関する経営・財務調査委員会(委員長・下河辺和彦弁護士)は、1~4号機の廃炉費用に少なくとも1兆1510億円かかると試算。周辺の除染費用なども加われば、費用はこれを大きく上回る。
東電は今期中さらに引当額を積み増す方針だが、全国銀行協会の永易克典会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は「(廃炉の)費用が膨らめば債務超過もあり得る」と、追加支援に慎重姿勢を崩していない。公的資金注入による東電の実質国有化が、現実味を帯び始めている。(12/16, 産経)
2011年12月20日火曜日
原発災害と「修復的正義」(restorative justice)
原発災害と「修復的正義」(restorative justice)
1
「シンクロニシティ」という言葉がある。「何か複数の事象が、「意味・イメージ」において「類似性・近接性」を備える時、このような複数の事象が、時空間の秩序で規定されているこの世界の中で、従来の因果性では、何の関係も持たない場合でも、随伴して現象・生起する」ことを指すようだ。
先週(12/17)の明治学院大でのNGOシンポから、この三日間、①原発災害と被災・被曝者支援、②国連PKOと自衛隊の南スーダン部隊派遣、③「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題」と「保護する責任」(R2P)、そして④「琉球の自治」と普天間問題という、「従来の因果性では、何の関係も持たない」「複数の事象」のことを考えている。
これらはまさに、私たちが先月から3回続けて行ってきたシンポジウムのテーマそのものなのだが、私たちは、これら「複数の事象」を、「時空間の秩序で規定されているこの世界の中で」、「共時的」に経験していることになる。
では、その奇跡のような偶然/必然性の秘密を解く鍵は何だろう? つまり、現代世界を「規定」しているいかなる「時空間の秩序」が、偶然あるいは必然にも、これらの事象を共時的に存在たらしめているのか、という問題である。
それを考えていて、〈修復的正義(restorative justice)の不在〉という観念がよぎった。
2
"restorative justice"には他に「修復的司法」という訳語がある。「修復」を「回復」を訳す場合もある。
その理論や論争については、関連文献に直接あたってほしい。私はこれを「紛争解決」と言うよりも〈紛争の変容〉を説いたある研究者の文章から知るようになったのだが、いまでは非常に広範囲に及ぶ分野で主張され、実践されるようになっている法的概念である。
しかし、どの分野であれ、国家、自治体、企業、また個人レベルの犯罪が起こったときに、ただ犯罪者(組織であれ個人であれ)を罰するだけでなく、被害者(集団)の権利・補償・「癒し」、それらを法的に保障する制度作り、そして同じ類の犯罪が二度と起きないようにする政治・法・社会の「仕組み」を作るべきだという主張に関しては、おおむね一致しているように思われる。
①の「原発災害と被災・被曝者支援」と〈修復的正義(restorative justice)の不在〉について、少し考えてみたい。 思うに、これは「脱原発法学・原論」(「法医学」に倣うなら、「法原子力工学」と呼んでもよい)の要諦となるのではないか。未来を担う研究者・「市民」が、「文理融合」で考究すべきテーマだと思うのだ。
3
「医療過誤」(malpractice)と原発災害
・・
「うそをつかないでくれ!」
『医療の良心を守る市民の会』 副代表/新葛飾病院 院長 清水 陽一
1.私の病院では、私が院長になってから「うそをつかない医療」を実践しています。新入医局員には、けして「患者さん、ご家族にうそをついてはいけない」と書かれている冊子を渡し、診療録にうそが書いていないのだから、診療録はいつでもお見せするよう指導しています。
30年以上医業に携わっているといかに医療の中では「うそ」をつくことが当たり前になっているかを思い知ります。まるで政治の世界と同じです。それもたちが悪いことに患者のために「うそ」をついているという傲慢な医者もいます。確かにときには真実を語ることが辛いこともあります。しかし「うそ」は結局患者さんを傷つけることになります。
2.25年前より患者側の弁護士に依頼され、鑑定意見書を書くようになりました。原告(患者側)、弁護士とも素人、裁判官も素人、被告(病院)は専門家のため、輸血ミスのような明白な事例はよいのですが、専門性が問われるような事例では被告の陳述、病院側の意見書の中には堂々とうそが語られていることがあることに、驚きあきれ、怒りがこみあげてきます。
3.(中略) 現在の法律では過失があっても、カルテを改ざんしても刑法上罪がないということです。ドイツではカルテの改ざんは刑法上の罪に当たるため、ありえないとのことでした。
さらに日本では病院側の意見書にも考えられないような「うそ、ごまかし」があります。ドイツでは医師職業裁判所では鑑定意見書も俎上にかけられ、問題があればペナルティーがあるそうです。
被告医者は過失もカルテの改ざんもないと居直っています。さらに病院は判決が誤っていると主張しています。どうして素直に判決の指摘を受け入れないのでしょうか。医師職業裁判所があればこの医者は免許剥奪、病院は業務停止でしょう。」
⇒「医療訴訟」
・・
原発「事故」を「修復的正義」に照らして考えるとき、その大前提となるべきは、国や電力企業、原子力ムラの面々、「専門家」が「うそをつかない」ということだ。「専門性が問われるような事例では・・・堂々とうそが語られている」。しかも問題の根っこには、「現在の法律では過失があっても」、データを「改ざんしても刑法上罪がない」現実がある。このような状況においては、「修復的正義」を語ることそれ自体が何かの冗談になってしまう。
けれども、現実政治や現行法体系を与件とするなら冗談話になってしまうことを怖れて、この問題を素通りしたり、棚上げにすることは許されないし、そんな余裕もない。放射能汚染・被曝被害と「風評被害」という名の実害は広がり続け、その補償/賠償を求める当事者たちのたたかいが、国・東電を一方の「紛争」の当事者としながら現在進行形で展開され、しかもいつ、何がどうなるかも分からない稼働中の原発が現に存在するからだ。
必要なことは、「医療過誤」に対する患者、家族/遺族のたたかい20年の歴史から、何を教訓として引き出せるか、を考えることである。そうすれば、「安全性のさらなる向上」「規制のいっそうの強化」を合言葉に、原発再稼働・工事再開・新規建設を進めようとするポスト「3・11」における原発推進論に欠けている思想や政策の限界も、自ずと明らかになってくるのではないか。
(つづく)
・・・
・安全庁予算は500億円規模 12年度、健康管理も担当
細野豪志環境相は20日の閣議後の記者会見で、経済産業省原子力安全・保安院などを改組し、来年4月に環境省の外局として新たに発足する原子力安全庁(仮称)の予算が500億円規模になることを明らかにした。週内に決定する2012年度予算案に盛り込む。
安全庁は、保安院と原子力安全委員会を統合し、文部科学省が所管する放射線の環境モニタリング部門なども移管する。現在の予算の合計は約370億円で、130億円程度の増額となる。このうち新設する健康管理の担当部門は約20億円。人員は全体で500人規模と説明した。(福島民報)
↓
①職員は現行より100人増員、
②原子力安全庁の幹部は長官、次長、緊急事態対策監のほか複数の審議官で構成、
(原発などの施設の審査や検査関係で5部署程度、原子力防災や核物質防護、放射線モニタリングなどの危機管理関係で2部署程度、国際機関との調整や審査基準策定などを担当する部署を設置。
また、テロ対策など核セキュリティー確保に向けた事業者の監督、治安機関との連携を担当。これまで原子力委員会が所管していた核セキュリティーに関する政策立案機能も安全庁に一元化。)
③「独立的組織」として原子力安全審議会(仮称)を置き安全庁の行政を「監視」、
④原発が設置されている地域に、それぞれ「連絡調整」のための「検査官事務所」を置く、
⑤原発立地自治体への交付金を今年度32億から111億円へと増額。(産経)
・民主PC「原子力規制庁」を提言 規制組織の名称
経済産業省原子力安全・保安院などを再編し、来年4月に環境省の外局として発足予定の原子力規制組織について、民主党の原発事故収束対策プロジェクトチーム(荒井聡座長)は21日、名称を「原子力規制庁」とするよう求める提言をまとめた。 新組織について、政府はこれまで「原子力安全庁(仮称)」としてきたが、「規制」を入れるべきだとの声が強くなっている。
提言では「原子力事故災害の収束と損害に対する賠償は一体だ」として、現在文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が担当している賠償事務を新組織に移管すべきとした。(共同)
↓
「修復的正義」は、犠牲者の補償や「癒し」を、賠償問題やその額に還元する考え方を拒絶する。
もちろん、賠償問題は重要であるし、それ抜きに「修復的正義」は語れない。しかし、それだけではない。「修復的正義」は、ある重大で深刻な「紛争」「災害」「事故」が起きたときに、国際社会や国家が、地域社会や個人が、一定期間の過渡期を経て、その先に広がるべき未来社会の在り方、そのビジョンを規定づけるようなもの、と言ってよい。しかし常に賠償額の問題に切り縮められてしまう傾向があることに注意する必要がある。
・全県民への賠償要請 応急対策基金の活用求める
佐藤雄平知事は18日の3閣僚との会談で、東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償で、あらためて県内全域、全県民への賠償実施を求めた上で、自主避難や精神的損害の賠償で対象外となった県南、会津、南会津地域の住民の賠償も含め、原子力損害賠償紛争審査会の指針に盛り込まれていない損害について原子力被害応急対策基金を活用し賠償を進めるよう求めた。
枝野幸男経済産業相は、応急対策基金の活用に向けて関係省庁と調整を進める考えを示し、県に対し基金の活用方策について具体的に提示するよう求めた。 佐藤知事は会談で「県が当初から求めている県全域を対象とする完全賠償を考えてほしい。応急対策基金の活用をお願いしたい」と要請した。(福島民友)
・賠償地域拡大へ気勢 指針見直し求め決起集会
東京電力福島第1原発事故で、県内23市町村に限定した文科省原子力損害賠償紛争審査会の賠償指針をめぐり、対象外となった白河市と西白河、東白川郡地域の市町村長や議会議員による緊急決起集会が19日、白河市東文化センターで開かれた。約150人が対象地域の拡大を目指し、国などに一致団結して要望していくことを確認した。
白河地方広域市町村圏整備組合管理者の鈴木和夫市長は「時間がかかるかもしれないが、最後まで頑張ろう」、西白河地方町村会長の佐藤正博西郷村長は「ここが天王山。一致団結して国などに訴えたい」、東白川地方町村会長の藤田幸治棚倉町長は「福島は一つであることを国や審査会に伝えていこう」とあいさつ。古張允矢祭町長が、賠償指針を撤回し、損害賠償の対象地域を県内全市町村・全県民とする決議文を読み上げて採択。最後に「頑張ろう」コールで、参加者は気勢を上げた。(福島民友)
・102市町村が除染対象に 重点調査地域を環境省公表
環境省は19日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染作業を国の財政負担で行う前提となる「汚染状況重点調査地域」に、東北や関東地方の8県にある102市町村を指定すると発表した。28日付の官報で告示し、自治体に正式に通知する。 除染の枠組みを定める放射性物質汚染対処特別措置法に基づくもので、自然界からの被ばくを除く追加線量が年間1ミリシーベルト以上の地域がある市町村が対象。指定市町村は今後、地域内の汚染状況を詳しく調査し、実際に除染する区域を定めた除染実施計画を順次策定、来年1月以降、国の負担で除染を進める。(共同)
・尾瀬国立公園:「原発事故の風評」で入山者が前年度比18.9%減
◇豪雨も影響 89年以降で初の30万人割れ
環境省関東地方環境事務所は20日、11年度の尾瀬国立公園(群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがって位置)の入山者数が前年度比18・9%減の28万1300人となり、記録の残る89年度以降で初めて30万人を下回ったと発表した。集計期間は5月23日~10月31日。同事務所は「東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害に加え、7月末の新潟・福島豪雨の被害も重なったため」と分析している。
月別では5~9月が前年を下回り、5月=5400人(同55・0%減)▽6月=6万9100人(同23・1%減)▽7月=8万400人(同14・1%減)▽8月=3万5800人(同30・4%減)▽9月=3万3100人(同29・7%減)。10月は同10・1%増の5万5500人だった。
同事務所によると、特に西日本からの団体客が激減した。例年はニッコウキスゲの咲く7月の入山者数が最も多いが、今年は豪雨被害で公園内の木道が流されたほか、尾瀬に通じる道路の一部が通行止めになり、入山者が伸び悩んだという。【毎日、喜屋武真之介】
・・・
・東海村・原子力機構研究所で火災 外部に影響なし
20日午前9時半ごろ、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構原子力科学研究所で火災があった。地元消防によると、約2時間後に鎮火。同機構や県によると、研究用の原子炉棟の天井裏が燃えたが、放射性物質の漏えいはなく、けが人はいないという。
同機構によると、原子炉棟の屋根の葺き替え工事中に溶接の火花が天井裏に燃え移り、吸音板が約110平方メートルにわたって燃えた。敷地境界に設置されたモニタリングポストの値に異常はないという。 原子炉は、燃料の安全性を確認するための研究炉。現在は定期検査中で、東日本大震災前から運転を停止していた。(共同)
・東海第2、停止機能の万全確保を 村原子力安全懇が最終答申
東京電力福島第1原発の事故を受け、日本原子力発電東海第2発電所の安全対策などについて検討を重ねていた「東海村原子力安全対策懇談会」(斎藤平会長)は19日、東海第2原発で異常事態が発生した場合でも、原子炉を安全に停止させる機能や使用済み燃料プールの冷却機能の確保に万全を期すことなどを求める最終答申書を村上達也村長に手渡した。同懇談会は今年5月以降、村上村長の諮問を受け、東海第2原発の安全対策や住民の理解を得るために必要な方策について議論を重ねていた。
答申書では、原子炉を安全に停止させる機能や使用済み燃料プールの冷却機能の確保に加え、
(1)外部電源の耐震強化や非常用電源の独立性・多様性の確保、系統電源引き込みの早期実施
(2)原子炉建屋屋上の排気弁、建屋過圧防止用の安全装置の早期設置
(3)地震と津波、台風など過酷条件下における対応の準備や検討中の防潮堤の早期実現
(4)福島第1原発事故を反映した事故対応マニュアルの見直しとシステムの確立-など9点について求めた。
住民への周知・理解については、
(1)国・県・村が日本原電に求め実施された安全強化策の村民への説明
(2)東海第2発電の今後について村が方針決定する際、村民の意思を広く反映した内容とすること
(3)原子力相談員制度の創設-などを求めた。
村原子力対策課によると、今後は状況をみながら東海第2原発の安全対策強化を求めるとともに、住民の周知や理解については早急に対応したい考え。
最終答申について斎藤会長は「諮問当時、村民の間には(原発に対し)不安や不満が募っていた。村民の希望や意見を吸い上げ、今後も村と連携して原子力対策の展開に注目したい」などと語った。また、村上村長は「真剣にこの問題について検討していただいた。再稼働問題とは別の判断になるが、(答申は)非常に重要な提言だ」と述べた。 (茨城新聞)
・東海第2廃炉求める署名5万人分 県内18団体、県に提出
定期検査中の東海第2原発の再稼働に反対する住民グループなどが8日、同原発の再稼働中止と廃炉を求める計5万1435人分の署名簿を県に提出した。署名は7月10日から今月4日までの第1次集計分で、県内外を問わずインターネットなどで広く呼び掛けた。提出は18団体で行い、茨城大の名誉教授11人も名を連ねた。各団体は10万人の目標に向け、来年4月まで署名活動を続ける計画。
署名活動は「東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会」が7月に開始。第1次の提出に向け、別に署名活動を行っていた新日本婦人の会県本部など5団体と同大名誉教授団が合流した。各団体のメンバーら約60人は同日、県庁を訪れ、大塚誠県原子力安全対策課長に署名簿を手渡した。
呼び掛け団体の一つ、脱原発とうかい塾の相沢一正代表は「より多くの署名を集め、2次、3次の提出では橋本昌知事に直接訴えたい」と話した。茨城大の田村武夫名誉教授は「知事や県原子力安全対策委員会にインパクトを与えられるよう、理学部や工学部の教授にも協力を求めていく」と述べた。 (11/9,茨城新聞)
・・・
「理論物理学者ワイスコップは、一人前の物理学者になるためには、研究室の中での口頭教育(oral education)にさらされることが必要だと言っていますが、これは実は日本で言う「誰それの背中を見て育つ」という無言教育と相通じるところがあると私は受け取っています。
教科書や論文を勉強するだけでは足りません。研究室で個人が何とはなしに教えられて身につけるものは、クーンの言う、パラダイムに含まれる暗黙の知(これはもともとはマイケル・ポラニーのアイディアであり、言葉ですが)と大いに関係があります。それに、研究仲間がいることの利益として、学界の事情やニュースに絶えず接触できているということもあると思います。孤立した研究者あるいは門外漢は、時折、いわゆる「つんぼ桟敷」に置かれる悲哀を味わうことになります」
「何の分野であれ、私のように、独学者として孤独に勉強を進めている人々が世の中には必ずおいででしょう。研究室で仲間と先生にもまれながら仕事のやり方を身につけることが大切だと私も言いましたし、「親の背中を見て育つ」という言葉もありますが、その一方で「親はなくとも子は育つ」という格言もあります。独学でも何とかやれると思います。「人を見たら泥棒と思え」と教えられる一方で、「旅は道づれ、世は情け」という言葉にも真実があるのと同じでしょう。」(「孤独な独学者の告白 2011/12/16」 藤永茂)
1
「シンクロニシティ」という言葉がある。「何か複数の事象が、「意味・イメージ」において「類似性・近接性」を備える時、このような複数の事象が、時空間の秩序で規定されているこの世界の中で、従来の因果性では、何の関係も持たない場合でも、随伴して現象・生起する」ことを指すようだ。
先週(12/17)の明治学院大でのNGOシンポから、この三日間、①原発災害と被災・被曝者支援、②国連PKOと自衛隊の南スーダン部隊派遣、③「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題」と「保護する責任」(R2P)、そして④「琉球の自治」と普天間問題という、「従来の因果性では、何の関係も持たない」「複数の事象」のことを考えている。
これらはまさに、私たちが先月から3回続けて行ってきたシンポジウムのテーマそのものなのだが、私たちは、これら「複数の事象」を、「時空間の秩序で規定されているこの世界の中で」、「共時的」に経験していることになる。
では、その奇跡のような偶然/必然性の秘密を解く鍵は何だろう? つまり、現代世界を「規定」しているいかなる「時空間の秩序」が、偶然あるいは必然にも、これらの事象を共時的に存在たらしめているのか、という問題である。
それを考えていて、〈修復的正義(restorative justice)の不在〉という観念がよぎった。
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"restorative justice"には他に「修復的司法」という訳語がある。「修復」を「回復」を訳す場合もある。
その理論や論争については、関連文献に直接あたってほしい。私はこれを「紛争解決」と言うよりも〈紛争の変容〉を説いたある研究者の文章から知るようになったのだが、いまでは非常に広範囲に及ぶ分野で主張され、実践されるようになっている法的概念である。
しかし、どの分野であれ、国家、自治体、企業、また個人レベルの犯罪が起こったときに、ただ犯罪者(組織であれ個人であれ)を罰するだけでなく、被害者(集団)の権利・補償・「癒し」、それらを法的に保障する制度作り、そして同じ類の犯罪が二度と起きないようにする政治・法・社会の「仕組み」を作るべきだという主張に関しては、おおむね一致しているように思われる。
①の「原発災害と被災・被曝者支援」と〈修復的正義(restorative justice)の不在〉について、少し考えてみたい。 思うに、これは「脱原発法学・原論」(「法医学」に倣うなら、「法原子力工学」と呼んでもよい)の要諦となるのではないか。未来を担う研究者・「市民」が、「文理融合」で考究すべきテーマだと思うのだ。
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「医療過誤」(malpractice)と原発災害
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「うそをつかないでくれ!」
『医療の良心を守る市民の会』 副代表/新葛飾病院 院長 清水 陽一
1.私の病院では、私が院長になってから「うそをつかない医療」を実践しています。新入医局員には、けして「患者さん、ご家族にうそをついてはいけない」と書かれている冊子を渡し、診療録にうそが書いていないのだから、診療録はいつでもお見せするよう指導しています。
30年以上医業に携わっているといかに医療の中では「うそ」をつくことが当たり前になっているかを思い知ります。まるで政治の世界と同じです。それもたちが悪いことに患者のために「うそ」をついているという傲慢な医者もいます。確かにときには真実を語ることが辛いこともあります。しかし「うそ」は結局患者さんを傷つけることになります。
2.25年前より患者側の弁護士に依頼され、鑑定意見書を書くようになりました。原告(患者側)、弁護士とも素人、裁判官も素人、被告(病院)は専門家のため、輸血ミスのような明白な事例はよいのですが、専門性が問われるような事例では被告の陳述、病院側の意見書の中には堂々とうそが語られていることがあることに、驚きあきれ、怒りがこみあげてきます。
3.(中略) 現在の法律では過失があっても、カルテを改ざんしても刑法上罪がないということです。ドイツではカルテの改ざんは刑法上の罪に当たるため、ありえないとのことでした。
さらに日本では病院側の意見書にも考えられないような「うそ、ごまかし」があります。ドイツでは医師職業裁判所では鑑定意見書も俎上にかけられ、問題があればペナルティーがあるそうです。
被告医者は過失もカルテの改ざんもないと居直っています。さらに病院は判決が誤っていると主張しています。どうして素直に判決の指摘を受け入れないのでしょうか。医師職業裁判所があればこの医者は免許剥奪、病院は業務停止でしょう。」
⇒「医療訴訟」
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原発「事故」を「修復的正義」に照らして考えるとき、その大前提となるべきは、国や電力企業、原子力ムラの面々、「専門家」が「うそをつかない」ということだ。「専門性が問われるような事例では・・・堂々とうそが語られている」。しかも問題の根っこには、「現在の法律では過失があっても」、データを「改ざんしても刑法上罪がない」現実がある。このような状況においては、「修復的正義」を語ることそれ自体が何かの冗談になってしまう。
けれども、現実政治や現行法体系を与件とするなら冗談話になってしまうことを怖れて、この問題を素通りしたり、棚上げにすることは許されないし、そんな余裕もない。放射能汚染・被曝被害と「風評被害」という名の実害は広がり続け、その補償/賠償を求める当事者たちのたたかいが、国・東電を一方の「紛争」の当事者としながら現在進行形で展開され、しかもいつ、何がどうなるかも分からない稼働中の原発が現に存在するからだ。
必要なことは、「医療過誤」に対する患者、家族/遺族のたたかい20年の歴史から、何を教訓として引き出せるか、を考えることである。そうすれば、「安全性のさらなる向上」「規制のいっそうの強化」を合言葉に、原発再稼働・工事再開・新規建設を進めようとするポスト「3・11」における原発推進論に欠けている思想や政策の限界も、自ずと明らかになってくるのではないか。
(つづく)
・・・
・安全庁予算は500億円規模 12年度、健康管理も担当
細野豪志環境相は20日の閣議後の記者会見で、経済産業省原子力安全・保安院などを改組し、来年4月に環境省の外局として新たに発足する原子力安全庁(仮称)の予算が500億円規模になることを明らかにした。週内に決定する2012年度予算案に盛り込む。
安全庁は、保安院と原子力安全委員会を統合し、文部科学省が所管する放射線の環境モニタリング部門なども移管する。現在の予算の合計は約370億円で、130億円程度の増額となる。このうち新設する健康管理の担当部門は約20億円。人員は全体で500人規模と説明した。(福島民報)
↓
①職員は現行より100人増員、
②原子力安全庁の幹部は長官、次長、緊急事態対策監のほか複数の審議官で構成、
(原発などの施設の審査や検査関係で5部署程度、原子力防災や核物質防護、放射線モニタリングなどの危機管理関係で2部署程度、国際機関との調整や審査基準策定などを担当する部署を設置。
また、テロ対策など核セキュリティー確保に向けた事業者の監督、治安機関との連携を担当。これまで原子力委員会が所管していた核セキュリティーに関する政策立案機能も安全庁に一元化。)
③「独立的組織」として原子力安全審議会(仮称)を置き安全庁の行政を「監視」、
④原発が設置されている地域に、それぞれ「連絡調整」のための「検査官事務所」を置く、
⑤原発立地自治体への交付金を今年度32億から111億円へと増額。(産経)
・民主PC「原子力規制庁」を提言 規制組織の名称
経済産業省原子力安全・保安院などを再編し、来年4月に環境省の外局として発足予定の原子力規制組織について、民主党の原発事故収束対策プロジェクトチーム(荒井聡座長)は21日、名称を「原子力規制庁」とするよう求める提言をまとめた。 新組織について、政府はこれまで「原子力安全庁(仮称)」としてきたが、「規制」を入れるべきだとの声が強くなっている。
提言では「原子力事故災害の収束と損害に対する賠償は一体だ」として、現在文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が担当している賠償事務を新組織に移管すべきとした。(共同)
↓
「修復的正義」は、犠牲者の補償や「癒し」を、賠償問題やその額に還元する考え方を拒絶する。
もちろん、賠償問題は重要であるし、それ抜きに「修復的正義」は語れない。しかし、それだけではない。「修復的正義」は、ある重大で深刻な「紛争」「災害」「事故」が起きたときに、国際社会や国家が、地域社会や個人が、一定期間の過渡期を経て、その先に広がるべき未来社会の在り方、そのビジョンを規定づけるようなもの、と言ってよい。しかし常に賠償額の問題に切り縮められてしまう傾向があることに注意する必要がある。
・全県民への賠償要請 応急対策基金の活用求める
佐藤雄平知事は18日の3閣僚との会談で、東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償で、あらためて県内全域、全県民への賠償実施を求めた上で、自主避難や精神的損害の賠償で対象外となった県南、会津、南会津地域の住民の賠償も含め、原子力損害賠償紛争審査会の指針に盛り込まれていない損害について原子力被害応急対策基金を活用し賠償を進めるよう求めた。
枝野幸男経済産業相は、応急対策基金の活用に向けて関係省庁と調整を進める考えを示し、県に対し基金の活用方策について具体的に提示するよう求めた。 佐藤知事は会談で「県が当初から求めている県全域を対象とする完全賠償を考えてほしい。応急対策基金の活用をお願いしたい」と要請した。(福島民友)
・賠償地域拡大へ気勢 指針見直し求め決起集会
東京電力福島第1原発事故で、県内23市町村に限定した文科省原子力損害賠償紛争審査会の賠償指針をめぐり、対象外となった白河市と西白河、東白川郡地域の市町村長や議会議員による緊急決起集会が19日、白河市東文化センターで開かれた。約150人が対象地域の拡大を目指し、国などに一致団結して要望していくことを確認した。
白河地方広域市町村圏整備組合管理者の鈴木和夫市長は「時間がかかるかもしれないが、最後まで頑張ろう」、西白河地方町村会長の佐藤正博西郷村長は「ここが天王山。一致団結して国などに訴えたい」、東白川地方町村会長の藤田幸治棚倉町長は「福島は一つであることを国や審査会に伝えていこう」とあいさつ。古張允矢祭町長が、賠償指針を撤回し、損害賠償の対象地域を県内全市町村・全県民とする決議文を読み上げて採択。最後に「頑張ろう」コールで、参加者は気勢を上げた。(福島民友)
・102市町村が除染対象に 重点調査地域を環境省公表
環境省は19日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染作業を国の財政負担で行う前提となる「汚染状況重点調査地域」に、東北や関東地方の8県にある102市町村を指定すると発表した。28日付の官報で告示し、自治体に正式に通知する。 除染の枠組みを定める放射性物質汚染対処特別措置法に基づくもので、自然界からの被ばくを除く追加線量が年間1ミリシーベルト以上の地域がある市町村が対象。指定市町村は今後、地域内の汚染状況を詳しく調査し、実際に除染する区域を定めた除染実施計画を順次策定、来年1月以降、国の負担で除染を進める。(共同)
・尾瀬国立公園:「原発事故の風評」で入山者が前年度比18.9%減
◇豪雨も影響 89年以降で初の30万人割れ
環境省関東地方環境事務所は20日、11年度の尾瀬国立公園(群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがって位置)の入山者数が前年度比18・9%減の28万1300人となり、記録の残る89年度以降で初めて30万人を下回ったと発表した。集計期間は5月23日~10月31日。同事務所は「東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害に加え、7月末の新潟・福島豪雨の被害も重なったため」と分析している。
月別では5~9月が前年を下回り、5月=5400人(同55・0%減)▽6月=6万9100人(同23・1%減)▽7月=8万400人(同14・1%減)▽8月=3万5800人(同30・4%減)▽9月=3万3100人(同29・7%減)。10月は同10・1%増の5万5500人だった。
同事務所によると、特に西日本からの団体客が激減した。例年はニッコウキスゲの咲く7月の入山者数が最も多いが、今年は豪雨被害で公園内の木道が流されたほか、尾瀬に通じる道路の一部が通行止めになり、入山者が伸び悩んだという。【毎日、喜屋武真之介】
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・東海村・原子力機構研究所で火災 外部に影響なし
20日午前9時半ごろ、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構原子力科学研究所で火災があった。地元消防によると、約2時間後に鎮火。同機構や県によると、研究用の原子炉棟の天井裏が燃えたが、放射性物質の漏えいはなく、けが人はいないという。
同機構によると、原子炉棟の屋根の葺き替え工事中に溶接の火花が天井裏に燃え移り、吸音板が約110平方メートルにわたって燃えた。敷地境界に設置されたモニタリングポストの値に異常はないという。 原子炉は、燃料の安全性を確認するための研究炉。現在は定期検査中で、東日本大震災前から運転を停止していた。(共同)
・東海第2、停止機能の万全確保を 村原子力安全懇が最終答申
東京電力福島第1原発の事故を受け、日本原子力発電東海第2発電所の安全対策などについて検討を重ねていた「東海村原子力安全対策懇談会」(斎藤平会長)は19日、東海第2原発で異常事態が発生した場合でも、原子炉を安全に停止させる機能や使用済み燃料プールの冷却機能の確保に万全を期すことなどを求める最終答申書を村上達也村長に手渡した。同懇談会は今年5月以降、村上村長の諮問を受け、東海第2原発の安全対策や住民の理解を得るために必要な方策について議論を重ねていた。
答申書では、原子炉を安全に停止させる機能や使用済み燃料プールの冷却機能の確保に加え、
(1)外部電源の耐震強化や非常用電源の独立性・多様性の確保、系統電源引き込みの早期実施
(2)原子炉建屋屋上の排気弁、建屋過圧防止用の安全装置の早期設置
(3)地震と津波、台風など過酷条件下における対応の準備や検討中の防潮堤の早期実現
(4)福島第1原発事故を反映した事故対応マニュアルの見直しとシステムの確立-など9点について求めた。
住民への周知・理解については、
(1)国・県・村が日本原電に求め実施された安全強化策の村民への説明
(2)東海第2発電の今後について村が方針決定する際、村民の意思を広く反映した内容とすること
(3)原子力相談員制度の創設-などを求めた。
村原子力対策課によると、今後は状況をみながら東海第2原発の安全対策強化を求めるとともに、住民の周知や理解については早急に対応したい考え。
最終答申について斎藤会長は「諮問当時、村民の間には(原発に対し)不安や不満が募っていた。村民の希望や意見を吸い上げ、今後も村と連携して原子力対策の展開に注目したい」などと語った。また、村上村長は「真剣にこの問題について検討していただいた。再稼働問題とは別の判断になるが、(答申は)非常に重要な提言だ」と述べた。 (茨城新聞)
・東海第2廃炉求める署名5万人分 県内18団体、県に提出
定期検査中の東海第2原発の再稼働に反対する住民グループなどが8日、同原発の再稼働中止と廃炉を求める計5万1435人分の署名簿を県に提出した。署名は7月10日から今月4日までの第1次集計分で、県内外を問わずインターネットなどで広く呼び掛けた。提出は18団体で行い、茨城大の名誉教授11人も名を連ねた。各団体は10万人の目標に向け、来年4月まで署名活動を続ける計画。
署名活動は「東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会」が7月に開始。第1次の提出に向け、別に署名活動を行っていた新日本婦人の会県本部など5団体と同大名誉教授団が合流した。各団体のメンバーら約60人は同日、県庁を訪れ、大塚誠県原子力安全対策課長に署名簿を手渡した。
呼び掛け団体の一つ、脱原発とうかい塾の相沢一正代表は「より多くの署名を集め、2次、3次の提出では橋本昌知事に直接訴えたい」と話した。茨城大の田村武夫名誉教授は「知事や県原子力安全対策委員会にインパクトを与えられるよう、理学部や工学部の教授にも協力を求めていく」と述べた。 (11/9,茨城新聞)
・・・
「理論物理学者ワイスコップは、一人前の物理学者になるためには、研究室の中での口頭教育(oral education)にさらされることが必要だと言っていますが、これは実は日本で言う「誰それの背中を見て育つ」という無言教育と相通じるところがあると私は受け取っています。
教科書や論文を勉強するだけでは足りません。研究室で個人が何とはなしに教えられて身につけるものは、クーンの言う、パラダイムに含まれる暗黙の知(これはもともとはマイケル・ポラニーのアイディアであり、言葉ですが)と大いに関係があります。それに、研究仲間がいることの利益として、学界の事情やニュースに絶えず接触できているということもあると思います。孤立した研究者あるいは門外漢は、時折、いわゆる「つんぼ桟敷」に置かれる悲哀を味わうことになります」
「何の分野であれ、私のように、独学者として孤独に勉強を進めている人々が世の中には必ずおいででしょう。研究室で仲間と先生にもまれながら仕事のやり方を身につけることが大切だと私も言いましたし、「親の背中を見て育つ」という言葉もありますが、その一方で「親はなくとも子は育つ」という格言もあります。独学でも何とかやれると思います。「人を見たら泥棒と思え」と教えられる一方で、「旅は道づれ、世は情け」という言葉にも真実があるのと同じでしょう。」(「孤独な独学者の告白 2011/12/16」 藤永茂)
2011年12月18日日曜日
「冷温停止」で冷却停止?
「冷温停止」で冷却停止?
1
「冷温停止」したはずの福島第一原発1号機の「使用済み核燃料プール」が冷却停止した。
しかし、それは「一時的」なものであるから、国と東電によれば、1号機は「安全」であり、私たちは「安心」しなければならないそうだ。
・・
・福島第1原発:核燃料プールの冷却装置水漏れ…1号機 (毎日、神保圭作)
東京電力は17日、福島第1原発1号機の使用済み核燃料プールの冷却装置から水が漏れ、一時的に冷却が停止したと発表した。冷温停止状態の達成が宣言された直後のトラブルだが、松本純一原子力・立地本部長代理は「プールは十分冷えている。(冷温停止状態の達成の)判断を急ぎすぎたということではない」(??)と話した。
トラブルが発生したのは17日午前10時23分。プールの冷却装置から流量の異常を知らせる警報が発生し、自動停止した。作業員が現場を確認したところ、冷却装置の弁が閉まり切っておらず、約0.1立方メートル(100リットル)の水が漏れていた。作業中にだれかが弁に接触し、緩んだ可能性(??)があるという。
弁は元の位置に戻され、冷却装置の運転は同日午後1時39分に再開した。プールには392本の燃料があるが、水温は13度で停止前と変化はなかった。また、漏れた水は燃料に直接触れない配管を流れており、放射性物質は含まれていない。
・・
↓
●「だれかが」って誰? 「可能性」って何? なぜこの程度のことが現場ですぐに確認できないのか? それを東電に追求するのが「報道」の役割ではないのか?
●「水温は13度で停止前と変化はなかった」・・・。(⇒誰の情報? 毎日の神保さんは現場で確認した?)
●「漏れた水は燃料に直接触れない配管」・・・。(⇒どの配管? 配管名は?)
●「放射性物質は含まれていない」・・・。(⇒正しくは、「と、東電は言っている、しかし毎日新聞は確認していない」ではないのか?)
国と東電が自発的に「冷温停止」を撤回することはありえない。だから、私たち、とりわけ「有識者」「専門家」「メディア」がそのための働きかけをし、国と東電の、ほとんど理性を失いかけていると言ってもよい、その姿勢を改めさせる以外にない。少なくとも、まるで「大本営発表」のような「東電発表」を垂れ流し続ける「報道」の在り方を変えることくらいはできるはずだ。
何も起こらないことを誰だって祈っている。もう勘弁してほしい。
しかし、そう断言できる根拠を私たちは持ち合わせていない。
私たちは、国と東電に「冷温停止」宣言を見直し、抜本的に再検証させる必要がある。
本当に、今のままでは、マズイしダメだと思うのだ。
何とかしなければならない。
(再掲)
参考サイト
⇒「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」(東京電力)
「東電は信用できない」と言ってしまえば身も蓋もない。しかし東電とは、「第一原発から放出される放射性物質は東電の「所有物」ではない、だから除染の責任を社として負う義務はない」と平気で言ってのける会社である。5、6号機を「定期検査中・冷温停止」とし、第二原発を「正常」な状態にあるとする東電の「報告」は、何度も眉に唾を付けて読む必要があるのではないか。
この間、5、6号機の(再)臨界の「可能性」や第二原発も相当のダメージを受けたという情報が飛び交ってきたが、非常に不当なことに東電のデータに問題がある場合、その「立証責任」は私たちの側にあることを再確認しておこう。二日後に迫った「冷温停止」政治宣言の「非妥当性」をめぐる立証責任とともに。
↓
上の東電のサイトで、東電が報告する1~3号機の状態のデータを各自検証してみてほしい。
私たちのようなド素人でさえ、2号機の状態と比較した場合における、1、3号機、とりわけ1号機の不安定状態がわかるはずだ。
2
下の朝日新聞の記事によると、東電の「原発幹部」が、冷却装置「非常用復水器」の電源が失われると「弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」ことが判明したそうだ。
「幹部」って誰?
「食道がん」で入院した人?
こんな時期に、そんなに都合よく?
それとも、「冷温停止」政治宣言の翌日に、使用済み核燃燃料プールの冷却が「一時」停止しても、「冷温停止」の「判断を急ぎすぎたということはない」と言っている人?
朝日新聞は、なぜ実名を公表しないのか?
なぜ実名を公表するように「検証委」に迫らないのか?
・・
・原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機
東京電力福島第一原発の事故で最初に炉心溶融した1号機の冷却装置「非常用復水器」について、電源が失われると弁が閉じて機能しなくなる構造を原発幹部らが知らなかったことが、政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)の調べで分かった。委員会は、機能していると思い込んでいた幹部らの認識不足(??)を問題視している。また、その結果、炉心溶融を早めた可能性があるとみて調べている。
このほか3号機について、委員会は、緊急時に炉心を冷やすための注水装置を3月13日に停止させたことが事故拡大につながった可能性があるとみている。こうした点をまとめた中間報告を26日に公表する。
非常用復水器は、外部電源や非常用発電機などの交流電源を使う通常のポンプを動かせなくなった時に炉心を冷やす手段。原子炉圧力容器内の蒸気を冷やして水に戻し、再び炉心に入れるのに使う。装置は2系統あり、水を満たしたタンク内に通した配管に蒸気を送る。直流電源(蓄電池)を失うと、操作不能になって外へ蒸気とともに放射性物質が漏れるのを防ぐため、蒸気を送る配管の弁のうち格納容器の内側の弁が自動的に閉じ、蒸気が通らなくなる設定になっていた。
・・
「機能していると思い込んでいた幹部らの認識不足」?
そういう問題だろうか? これはいったい何だ?
いま日本で、福島原発「事故」の「調査」で何が起こっているのか?
これから何が起ころうとしているのか?
常識で考えて、「原発幹部」が、冷却装置「非常用復水器」の電源が失われると「弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」なんてありえるだろうか?
もしもそうだとしたら、野田政権はそういう東電の「原発幹部」が管理している5、6号機、第二原発、柏崎刈羽も直ちに全号機を稼働停止し、「冷温停止」状態のまま廃炉処分にする検討を開始すべきである。 私たちは、原発の基本構造を知らない東電の「原発幹部」に私たちの生命を預けるわけにはいかない。
⇒「政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?」(12/16)
・・・
・原子力安全委の審査委員、ほぼ半数が電力業界から
内閣府の原子力安全委員会=班目(まだらめ)春樹委員長=で原発の安全を審査する審査委員76人(12月現在)の半数近い37人が、過去5年に、審査される立場にある電力事業者とその関連組織に所属していたことがわかった。安全委への自己申告から明らかになった。
安全委は電力事業者や国を指導する立場にある。多くの審査委員が、審査する側とされる側の双方に所属していたことになり、線引きがあいまいな実態が浮かんだ。
審査委員は大学などで原子力や耐震性、放射線を専門とする研究者らで非常勤。安全委は2009年、電力事業者や原子力関係機関、学会、行政庁との関係を審査委員に自己申告させて公開することを決めたが、2年以上公開を怠っていた。朝日新聞が今年11月に指摘し、ホームページで初公開された。
朝日新聞が分析すると、計32人の審査委員が、安全委の審査を受ける電力事業者・原子力関係機関の設置組織で原子力に関する助言をするメンバーに就いていたり、電力事業者の常勤職員を務めていたりした。(朝日)
・経産相、公正性を調査の意向 紛争審委員の報酬問題
政府の原子力損害賠償紛争審査会の委員2人が、電力業界とつながりが深い日本エネルギー法研究所(東京)から報酬を得ていた問題で、枝野幸男経済産業相は27日の閣議後の記者会見で、審査会の公正さに影響しているかどうか(??)を調べる考えを示した。 審査会は原発事故に伴う損害賠償の目安をつくっている。枝野氏は「電力会社、東京電力とどの程度利害関係があるかが問題(??)。公正であることと公正らしく見えることが重要だ(??)。公正さを疑わせることがないかどうか、さらに確認したい」(⇒何を?)と述べた。
一方、審査会を所管する中川正春文部科学相は同日の閣議後会見で「審査会の議論はオープン。そういうシステムがある限り、公正性は保証されている」と述べ、委員の人選に問題はないとの認識を示した。 (朝日)
・・・
↓
「2人」とは、学習院大教授野村豊弘氏(68)と早大大学院教授大塚直氏(52)。
「野村氏は4月にエネ法研の理事・所長に就任して以来、毎月20万円程度の固定給を受け取っている。 大塚氏は委員就任前から研究部長の職にあり、毎月20万円の固定給を得ていた。ただ、周囲からの助言で、 6月末に研究部長を辞め、4~6月の報酬を返納」(「紛争審2委員、電力系研究所から報酬 原発事故賠償」(朝日)
⇒「原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令」
「第一条 原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)は、委員十人以内で組織する。
2 委員は、人格が高潔であつて、法律、医療又は原子力工学その他の原子力関連技術に関する学識経験を有する者のうちから、文部科学大臣が任命する」
・・
・収束阻む汚染水 タンク増設困難
東京電力福島第一原発事故の収束工程「ステップ2」完了を受け、細野豪志環境相兼原発事故担当相は17日、福島第一原発を視察し、「(原発の)一定の落ち着きを確認できた」との認識を示した。しかし、原発敷地内の汚染水の増加は止まらず、貯蔵タンクは間もなく満杯になる。タンク増設の用地確保もままならず、汚染水の海洋放出には漁業関係者が強く反発している。八方ふさがりの状態に、専門家は「事故収束作業はいまだ道半ばだ。汚染水が処理できなければ、廃炉作業は進まない」と指摘する。
「今後は除染、住民の健康管理、1日も早い帰還だ」。細野環境相兼原発事故担当相は視察後、広野町で報道陣に言い切った。地震や津波などあらゆる危険を想定した場合でも「多重の防御策」が取られていることを強調した上で、事故収束作業が順調に進んでいるとの見方を示した。
しかし、廃炉作業の生命線となる循環注水冷却システムは、つまずきを見せる。建屋などに滞留する汚染水を段階的に浄化して原子炉に注水させる仕組みだが、1日当たり200~500トンの量の汚染水が増え続けている。 建屋地下に雨水や地下水が流れ込み、汚染水が増え続けるためで、改善策がなかなか見つからない。数百個に及ぶ汚染水タンクの許容量は14万トンで、16日現在の貯蔵量は10万6千トン。このままのペースで進めば、来年3月でいっぱいになる計算だ。
東電はタンクの設置場所を確保するため、雑木林を伐採し、丘陵部をさら地に造成してきた。敷地内に山積するがれきを仮置きするスペースを設ける必要もあり、新たにタンク置き場をつくるのは難しいという。 同社関係者は「タンクを永遠に増やし続けることは不可能だ。早く解決策を見つけなければ、注水できなくなる」と頭を悩ませる。
汚染水を確実に減らす方法が一つだけある。海洋放出だが、漁業関係者の理解が得られない。 東電は原子炉等規制法における放射性物質の濃度限度を下回った低濃度の汚染水を海洋放出する計画を立てた。西沢俊夫社長は福島民報社のインタビューで、「データを(漁業者らに)示しながら、納得するまで(??)待つしかない」と苦しい胸の内を明かした。 今月4日には、水処理施設からストロンチウムを含む約150リットルの汚染水が海洋に流出し、漁業者の心情を逆なでした。 年明けからの操業再開に向けた準備を進めている県漁連の新妻芳弘専務理事は「海に出る準備をしているのに、水を差された形だ。東電は何度、漁業者を裏切れば気が済むのか」と語気を強める。
〈背景〉
政府は16日、東京電力福島第一原発1~3号機の原子炉圧力容器底部の温度が100度以下の安定的な状態となる「冷温停止」と、放射性物質の大幅な放出抑制を達成したとして事故収束の「ステップ2」完了を宣言した。使用済み燃料プールにある燃料の取り出しや、原子炉の損傷部分の修復、遠隔操作による破損した燃料回収など廃炉に向けた工程と期間を盛り込んだ最長40年のロードマップを年内に公表予定で、来年から本格的な作業に入る。(福島民報)
・高濃度汚染水、数トンが隣接のトレンチに流出か
東京電力は19日、福島第一原子力発電所の集中廃棄物処理施設の地下に貯蔵している高濃度汚染水の一部が、隣接するトレンチ(電線用地下トンネル)に流出したとみられると発表した。
18日にトレンチに約230トンの水がたまっているのが見つかり、放射性物質の濃度の分析から、汚染水がトレンチに漏れだし、そこに地下水や雨水が流れ込んだと判断した。計算上、漏れた量は数トン程度の可能性が高い。同原発を巡っては、今月16日、野田首相が事故収束を宣言したばかり。
東電では、地下水の水位の方がトレンチ側より高いことから、トレンチ外へ流出する心配はないとしている。集中廃棄物処理施設とトレンチの接続部は、4月の止水工事でふさがれており、最後に点検が行われたのは6月だった。今後、トレンチの水位を監視しながら対応を検討する。(読売)
・・
↓
「放射能汚染」という表現を私たちは使う。しかし、国の辞書、つまり法律用語としてはこのような表現はしない。「放射線障害」と言う。「汚染」が「障害」に変わってしまうのだ。
⇒「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」
・(廃棄に関する確認)
第十九条の二 許可届出使用者及び許可廃棄業者は、放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物を工場又は事業所の外において廃棄する場合において、放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物による放射線障害の防止のため特に必要がある場合として政令で定める場合に該当するときは、その廃棄に関する措置が前条第二項の技術上の基準に適合することについて、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣の確認を受けなければならない。
2 廃棄物埋設をしようとする許可廃棄業者は、その都度、当該廃棄物埋設において講ずる措置が前条第一項の技術上の基準に適合することについて、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣又は文部科学大臣の登録を受けた者(以下「登録埋設確認機関」という。)の確認(以下「埋設確認」という。)を受けなければならない。
・(海洋投棄の制限)
第三十条の二 放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物は、次の各号のいずれかに該当する場合のほか、海洋投棄をしてはならない。
一 許可届出使用者又は許可廃棄業者が第十九条の二第一項の規定による確認を受けた場合
二 人命又は船舶、航空機若しくは人工海洋構築物の安全を確保するためやむを得ない場合
2 前項の「海洋投棄」とは、船舶、航空機若しくは人工海洋構築物から海洋に物を廃棄すること又は船舶若しくは人工海洋構築物において廃棄する目的で物を燃焼させることをいう。
ただし、船舶、航空機若しくは人工海洋構築物から海洋に当該船舶、航空機若しくは人工海洋構築物及びこれらの設備の運用に伴つて生ずる物を廃棄すること又は船舶若しくは人工海洋構築物において廃棄する目的で当該船舶若しくは人工海洋構築物及びこれらの設備の運用に伴つて生ずる物を燃焼させることを除く。
↓
この国の「原子力行政」を成り立たせている法体系は、「霞が関文学」の駆使によって、国と原発産業にのみ都合良く文言化されている。それは、原発災害時における、放射能汚染を伴う生態系破壊、二次災害、三次災害から私たちの「生命・財産」を守らない。自然を守らない。守らなくとも国と原発企業は法的に免罪される体系になっているのである。
この「体系」に切り込み、悪法を改定すること、「霞が関文学」の焼き直しにならぬようにすることが問われている。「法医学」というフィールドがあるが、「脱原発法学」とでもいった新たなフィールドを開拓する必要がある。これも次世代の脱原発派とその運動に課せられている最重要課題の一つである。 そういう問題意識を持つことが非常に重要だと私は思う。
1
「冷温停止」したはずの福島第一原発1号機の「使用済み核燃料プール」が冷却停止した。
しかし、それは「一時的」なものであるから、国と東電によれば、1号機は「安全」であり、私たちは「安心」しなければならないそうだ。
・・
・福島第1原発:核燃料プールの冷却装置水漏れ…1号機 (毎日、神保圭作)
東京電力は17日、福島第1原発1号機の使用済み核燃料プールの冷却装置から水が漏れ、一時的に冷却が停止したと発表した。冷温停止状態の達成が宣言された直後のトラブルだが、松本純一原子力・立地本部長代理は「プールは十分冷えている。(冷温停止状態の達成の)判断を急ぎすぎたということではない」(??)と話した。
トラブルが発生したのは17日午前10時23分。プールの冷却装置から流量の異常を知らせる警報が発生し、自動停止した。作業員が現場を確認したところ、冷却装置の弁が閉まり切っておらず、約0.1立方メートル(100リットル)の水が漏れていた。作業中にだれかが弁に接触し、緩んだ可能性(??)があるという。
弁は元の位置に戻され、冷却装置の運転は同日午後1時39分に再開した。プールには392本の燃料があるが、水温は13度で停止前と変化はなかった。また、漏れた水は燃料に直接触れない配管を流れており、放射性物質は含まれていない。
・・
↓
●「だれかが」って誰? 「可能性」って何? なぜこの程度のことが現場ですぐに確認できないのか? それを東電に追求するのが「報道」の役割ではないのか?
●「水温は13度で停止前と変化はなかった」・・・。(⇒誰の情報? 毎日の神保さんは現場で確認した?)
●「漏れた水は燃料に直接触れない配管」・・・。(⇒どの配管? 配管名は?)
●「放射性物質は含まれていない」・・・。(⇒正しくは、「と、東電は言っている、しかし毎日新聞は確認していない」ではないのか?)
国と東電が自発的に「冷温停止」を撤回することはありえない。だから、私たち、とりわけ「有識者」「専門家」「メディア」がそのための働きかけをし、国と東電の、ほとんど理性を失いかけていると言ってもよい、その姿勢を改めさせる以外にない。少なくとも、まるで「大本営発表」のような「東電発表」を垂れ流し続ける「報道」の在り方を変えることくらいはできるはずだ。
何も起こらないことを誰だって祈っている。もう勘弁してほしい。
しかし、そう断言できる根拠を私たちは持ち合わせていない。
私たちは、国と東電に「冷温停止」宣言を見直し、抜本的に再検証させる必要がある。
本当に、今のままでは、マズイしダメだと思うのだ。
何とかしなければならない。
(再掲)
参考サイト
⇒「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」(東京電力)
「東電は信用できない」と言ってしまえば身も蓋もない。しかし東電とは、「第一原発から放出される放射性物質は東電の「所有物」ではない、だから除染の責任を社として負う義務はない」と平気で言ってのける会社である。5、6号機を「定期検査中・冷温停止」とし、第二原発を「正常」な状態にあるとする東電の「報告」は、何度も眉に唾を付けて読む必要があるのではないか。
この間、5、6号機の(再)臨界の「可能性」や第二原発も相当のダメージを受けたという情報が飛び交ってきたが、非常に不当なことに東電のデータに問題がある場合、その「立証責任」は私たちの側にあることを再確認しておこう。二日後に迫った「冷温停止」政治宣言の「非妥当性」をめぐる立証責任とともに。
↓
上の東電のサイトで、東電が報告する1~3号機の状態のデータを各自検証してみてほしい。
私たちのようなド素人でさえ、2号機の状態と比較した場合における、1、3号機、とりわけ1号機の不安定状態がわかるはずだ。
2
下の朝日新聞の記事によると、東電の「原発幹部」が、冷却装置「非常用復水器」の電源が失われると「弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」ことが判明したそうだ。
「幹部」って誰?
「食道がん」で入院した人?
こんな時期に、そんなに都合よく?
それとも、「冷温停止」政治宣言の翌日に、使用済み核燃燃料プールの冷却が「一時」停止しても、「冷温停止」の「判断を急ぎすぎたということはない」と言っている人?
朝日新聞は、なぜ実名を公表しないのか?
なぜ実名を公表するように「検証委」に迫らないのか?
・・
・原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機
東京電力福島第一原発の事故で最初に炉心溶融した1号機の冷却装置「非常用復水器」について、電源が失われると弁が閉じて機能しなくなる構造を原発幹部らが知らなかったことが、政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)の調べで分かった。委員会は、機能していると思い込んでいた幹部らの認識不足(??)を問題視している。また、その結果、炉心溶融を早めた可能性があるとみて調べている。
このほか3号機について、委員会は、緊急時に炉心を冷やすための注水装置を3月13日に停止させたことが事故拡大につながった可能性があるとみている。こうした点をまとめた中間報告を26日に公表する。
非常用復水器は、外部電源や非常用発電機などの交流電源を使う通常のポンプを動かせなくなった時に炉心を冷やす手段。原子炉圧力容器内の蒸気を冷やして水に戻し、再び炉心に入れるのに使う。装置は2系統あり、水を満たしたタンク内に通した配管に蒸気を送る。直流電源(蓄電池)を失うと、操作不能になって外へ蒸気とともに放射性物質が漏れるのを防ぐため、蒸気を送る配管の弁のうち格納容器の内側の弁が自動的に閉じ、蒸気が通らなくなる設定になっていた。
・・
「機能していると思い込んでいた幹部らの認識不足」?
そういう問題だろうか? これはいったい何だ?
いま日本で、福島原発「事故」の「調査」で何が起こっているのか?
これから何が起ころうとしているのか?
常識で考えて、「原発幹部」が、冷却装置「非常用復水器」の電源が失われると「弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」なんてありえるだろうか?
もしもそうだとしたら、野田政権はそういう東電の「原発幹部」が管理している5、6号機、第二原発、柏崎刈羽も直ちに全号機を稼働停止し、「冷温停止」状態のまま廃炉処分にする検討を開始すべきである。 私たちは、原発の基本構造を知らない東電の「原発幹部」に私たちの生命を預けるわけにはいかない。
⇒「政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?」(12/16)
・・・
・原子力安全委の審査委員、ほぼ半数が電力業界から
内閣府の原子力安全委員会=班目(まだらめ)春樹委員長=で原発の安全を審査する審査委員76人(12月現在)の半数近い37人が、過去5年に、審査される立場にある電力事業者とその関連組織に所属していたことがわかった。安全委への自己申告から明らかになった。
安全委は電力事業者や国を指導する立場にある。多くの審査委員が、審査する側とされる側の双方に所属していたことになり、線引きがあいまいな実態が浮かんだ。
審査委員は大学などで原子力や耐震性、放射線を専門とする研究者らで非常勤。安全委は2009年、電力事業者や原子力関係機関、学会、行政庁との関係を審査委員に自己申告させて公開することを決めたが、2年以上公開を怠っていた。朝日新聞が今年11月に指摘し、ホームページで初公開された。
朝日新聞が分析すると、計32人の審査委員が、安全委の審査を受ける電力事業者・原子力関係機関の設置組織で原子力に関する助言をするメンバーに就いていたり、電力事業者の常勤職員を務めていたりした。(朝日)
・経産相、公正性を調査の意向 紛争審委員の報酬問題
政府の原子力損害賠償紛争審査会の委員2人が、電力業界とつながりが深い日本エネルギー法研究所(東京)から報酬を得ていた問題で、枝野幸男経済産業相は27日の閣議後の記者会見で、審査会の公正さに影響しているかどうか(??)を調べる考えを示した。 審査会は原発事故に伴う損害賠償の目安をつくっている。枝野氏は「電力会社、東京電力とどの程度利害関係があるかが問題(??)。公正であることと公正らしく見えることが重要だ(??)。公正さを疑わせることがないかどうか、さらに確認したい」(⇒何を?)と述べた。
一方、審査会を所管する中川正春文部科学相は同日の閣議後会見で「審査会の議論はオープン。そういうシステムがある限り、公正性は保証されている」と述べ、委員の人選に問題はないとの認識を示した。 (朝日)
・・・
↓
「2人」とは、学習院大教授野村豊弘氏(68)と早大大学院教授大塚直氏(52)。
「野村氏は4月にエネ法研の理事・所長に就任して以来、毎月20万円程度の固定給を受け取っている。 大塚氏は委員就任前から研究部長の職にあり、毎月20万円の固定給を得ていた。ただ、周囲からの助言で、 6月末に研究部長を辞め、4~6月の報酬を返納」(「紛争審2委員、電力系研究所から報酬 原発事故賠償」(朝日)
⇒「原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令」
「第一条 原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」という。)は、委員十人以内で組織する。
2 委員は、人格が高潔であつて、法律、医療又は原子力工学その他の原子力関連技術に関する学識経験を有する者のうちから、文部科学大臣が任命する」
・・
・収束阻む汚染水 タンク増設困難
東京電力福島第一原発事故の収束工程「ステップ2」完了を受け、細野豪志環境相兼原発事故担当相は17日、福島第一原発を視察し、「(原発の)一定の落ち着きを確認できた」との認識を示した。しかし、原発敷地内の汚染水の増加は止まらず、貯蔵タンクは間もなく満杯になる。タンク増設の用地確保もままならず、汚染水の海洋放出には漁業関係者が強く反発している。八方ふさがりの状態に、専門家は「事故収束作業はいまだ道半ばだ。汚染水が処理できなければ、廃炉作業は進まない」と指摘する。
「今後は除染、住民の健康管理、1日も早い帰還だ」。細野環境相兼原発事故担当相は視察後、広野町で報道陣に言い切った。地震や津波などあらゆる危険を想定した場合でも「多重の防御策」が取られていることを強調した上で、事故収束作業が順調に進んでいるとの見方を示した。
しかし、廃炉作業の生命線となる循環注水冷却システムは、つまずきを見せる。建屋などに滞留する汚染水を段階的に浄化して原子炉に注水させる仕組みだが、1日当たり200~500トンの量の汚染水が増え続けている。 建屋地下に雨水や地下水が流れ込み、汚染水が増え続けるためで、改善策がなかなか見つからない。数百個に及ぶ汚染水タンクの許容量は14万トンで、16日現在の貯蔵量は10万6千トン。このままのペースで進めば、来年3月でいっぱいになる計算だ。
東電はタンクの設置場所を確保するため、雑木林を伐採し、丘陵部をさら地に造成してきた。敷地内に山積するがれきを仮置きするスペースを設ける必要もあり、新たにタンク置き場をつくるのは難しいという。 同社関係者は「タンクを永遠に増やし続けることは不可能だ。早く解決策を見つけなければ、注水できなくなる」と頭を悩ませる。
汚染水を確実に減らす方法が一つだけある。海洋放出だが、漁業関係者の理解が得られない。 東電は原子炉等規制法における放射性物質の濃度限度を下回った低濃度の汚染水を海洋放出する計画を立てた。西沢俊夫社長は福島民報社のインタビューで、「データを(漁業者らに)示しながら、納得するまで(??)待つしかない」と苦しい胸の内を明かした。 今月4日には、水処理施設からストロンチウムを含む約150リットルの汚染水が海洋に流出し、漁業者の心情を逆なでした。 年明けからの操業再開に向けた準備を進めている県漁連の新妻芳弘専務理事は「海に出る準備をしているのに、水を差された形だ。東電は何度、漁業者を裏切れば気が済むのか」と語気を強める。
〈背景〉
政府は16日、東京電力福島第一原発1~3号機の原子炉圧力容器底部の温度が100度以下の安定的な状態となる「冷温停止」と、放射性物質の大幅な放出抑制を達成したとして事故収束の「ステップ2」完了を宣言した。使用済み燃料プールにある燃料の取り出しや、原子炉の損傷部分の修復、遠隔操作による破損した燃料回収など廃炉に向けた工程と期間を盛り込んだ最長40年のロードマップを年内に公表予定で、来年から本格的な作業に入る。(福島民報)
・高濃度汚染水、数トンが隣接のトレンチに流出か
東京電力は19日、福島第一原子力発電所の集中廃棄物処理施設の地下に貯蔵している高濃度汚染水の一部が、隣接するトレンチ(電線用地下トンネル)に流出したとみられると発表した。
18日にトレンチに約230トンの水がたまっているのが見つかり、放射性物質の濃度の分析から、汚染水がトレンチに漏れだし、そこに地下水や雨水が流れ込んだと判断した。計算上、漏れた量は数トン程度の可能性が高い。同原発を巡っては、今月16日、野田首相が事故収束を宣言したばかり。
東電では、地下水の水位の方がトレンチ側より高いことから、トレンチ外へ流出する心配はないとしている。集中廃棄物処理施設とトレンチの接続部は、4月の止水工事でふさがれており、最後に点検が行われたのは6月だった。今後、トレンチの水位を監視しながら対応を検討する。(読売)
・・
↓
「放射能汚染」という表現を私たちは使う。しかし、国の辞書、つまり法律用語としてはこのような表現はしない。「放射線障害」と言う。「汚染」が「障害」に変わってしまうのだ。
⇒「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」
・(廃棄に関する確認)
第十九条の二 許可届出使用者及び許可廃棄業者は、放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物を工場又は事業所の外において廃棄する場合において、放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物による放射線障害の防止のため特に必要がある場合として政令で定める場合に該当するときは、その廃棄に関する措置が前条第二項の技術上の基準に適合することについて、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣の確認を受けなければならない。
2 廃棄物埋設をしようとする許可廃棄業者は、その都度、当該廃棄物埋設において講ずる措置が前条第一項の技術上の基準に適合することについて、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣又は文部科学大臣の登録を受けた者(以下「登録埋設確認機関」という。)の確認(以下「埋設確認」という。)を受けなければならない。
・(海洋投棄の制限)
第三十条の二 放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物は、次の各号のいずれかに該当する場合のほか、海洋投棄をしてはならない。
一 許可届出使用者又は許可廃棄業者が第十九条の二第一項の規定による確認を受けた場合
二 人命又は船舶、航空機若しくは人工海洋構築物の安全を確保するためやむを得ない場合
2 前項の「海洋投棄」とは、船舶、航空機若しくは人工海洋構築物から海洋に物を廃棄すること又は船舶若しくは人工海洋構築物において廃棄する目的で物を燃焼させることをいう。
ただし、船舶、航空機若しくは人工海洋構築物から海洋に当該船舶、航空機若しくは人工海洋構築物及びこれらの設備の運用に伴つて生ずる物を廃棄すること又は船舶若しくは人工海洋構築物において廃棄する目的で当該船舶若しくは人工海洋構築物及びこれらの設備の運用に伴つて生ずる物を燃焼させることを除く。
↓
この国の「原子力行政」を成り立たせている法体系は、「霞が関文学」の駆使によって、国と原発産業にのみ都合良く文言化されている。それは、原発災害時における、放射能汚染を伴う生態系破壊、二次災害、三次災害から私たちの「生命・財産」を守らない。自然を守らない。守らなくとも国と原発企業は法的に免罪される体系になっているのである。
この「体系」に切り込み、悪法を改定すること、「霞が関文学」の焼き直しにならぬようにすることが問われている。「法医学」というフィールドがあるが、「脱原発法学」とでもいった新たなフィールドを開拓する必要がある。これも次世代の脱原発派とその運動に課せられている最重要課題の一つである。 そういう問題意識を持つことが非常に重要だと私は思う。
2011年12月16日金曜日
「冷温停止」宣言の日に
「冷温停止」宣言の日に
「冷温停止」?
これを「宣言」する者たち、これを追認する者たちの
言葉と存在の耐えられない軽さは何だろう
死んだ者たち、自殺した者たちがいた
家に帰れない者たち、家で怯えている者たちがいる
そこにいたし、そこにいる
「冷温停止」?
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる
泣き、そして笑うのだ
私たちの日常を〈忌中〉にしたのは誰か?
それがはっきりするまで〈忌中〉は続く
〈あの日〉を決して忘れられない者たちが存在するかぎり
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる
ノーマルを装いながら生きるアブノーマルな日常を、泣き、そして笑うのだ
⇒「政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである」(11/6)
⇒「政府・東電は、なぜ「冷温停止」を急ぐのか?」(10/18)
⇒「村上東海村村長が東海第2原発の廃炉を要望」の「ちなみに」(10/12)
・・
・首相、事故収束を宣言=「冷温停止状態」達成―避難区域見直しへ―福島第1原発
東京電力福島第1原発事故で、政府は16日、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)の会議を首相官邸で開いた。原子炉の冷却が安定して放射性物質の放出が大幅に抑えられた「冷温停止状態」が実現し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了したとする政府・東電統合対策室の判断を了承。
野田首相は「冷温停止状態に達し、事故収束に至ったと判断した」と宣言した。
同原発では3基の原子炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こし、溶けた核燃料の状況が確認できない上、放射性物質の外部への放出も完全に止まっていない。避難した周辺住民の帰還のめども立っておらず、反発を呼びそうだ。
宣言を受け、政府は同原発から半径20キロ圏内の警戒区域と、年間放射線量が20ミリシーベルトを超える計画的避難区域を、新たに3区域に再編する検討に入った。近い将来の帰宅が可能な「解除準備区域」(年間線量20ミリシーベルト未満)、数年間居住が難しい「居住制限区域」(同20ミリシーベルト以上~50ミリシーベルト未満)、数十年間帰宅できない可能性がある「帰還困難区域」(同50ミリシーベルト以上)とする方向で調整している。(時事)
・保安院 海への汚染水 ゼロ扱い
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。
原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算(!!)される。(⇒感嘆に値する)
しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているのが見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。
これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。 試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。
今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。 さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化して海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出を見送る方針だ。
保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。 「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具体的な期間は「これからの議論」とあいまい。 今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続けるという。(東京新聞)
・・
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる。
〈「被曝避難基準20ミリシーベルト」について〉
・被ばく避難基準:20ミリシーベルト「妥当な値」政府WG
東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質による低線量被ばくの影響を有識者で検討する政府のワーキンググループ(WG、共同主査・長滝重信長崎大名誉教授、前川和彦東京大名誉教授)は15日、年20ミリシーベルト程度の被ばくによる健康影響は低いとしたうえで、政府の除染方針と同様に年20ミリシーベルトの地域では2年後に年10ミリシーベルト、その後は年5ミリシーベルトを中間的なに目標にすべきだとの提言をまとめた。細野豪志原発事故担当相に提出した。
◇段階的下げ提言
WGは、国際的な基準を参考に、避難の基準となっている年20ミリシーベルトについて「(喫煙などの)他の発がんリスク要因と比べて十分に低い水準だ」として、科学的に妥当な値だと結論付けた。福島県民の被ばく線量は年20ミリシーベルトを平均的に下回っていると分析する一方、「線量が高い地域から、優先順位をつけて徐々に下げていくべきだ」と提案した。
また、放射線の影響を受けやすい子供の生活環境を優先して除染し、避難区域でも校庭や園庭は毎時1マイクロシーベルト以下を目指すべきだと訴えたほか、子供が口にする食品に配慮して放射性物質濃度の適切な基準の設定を求めた。チェルノブイリ原発事故(1986年)で増加した子供の甲状腺がんについては「福島第1原発事故では線量が小さく、発がんリスクは非常に小さい」と指摘した。【久野華代】
◇解説…さらに議論、検証が必要
福島第1原発事故後、健康影響についての明確な科学的証拠がないとされている100ミリシーベルト未満の被ばくを巡っては、食品や除染などさまざまな規制値や基準値が示され、国民の間では混乱も起きた。政府のワーキンググループは政府と東京電力を名指しして「低線量被ばくによる社会的不安を巻き起こした」と反省を求めたが、少数の専門家によるわずか1カ月余りの議論が、住民にとって安心材料になったとは言い難い。
避難の基準となった年20ミリシーベルトという数値はもともと、専門家で組織する国際放射線防護委員会が緊急時の目安に掲げたもの。WGは今回、この目安を追認しただけでなく、除染などの中間目標も政府が8月に示した基本方針を踏まえただけに終わり、今回の原発事故に伴う具体的な健康影響を独自に評価する姿勢は、ほとんどうかがわれなかった。
WGは提言の中で今後の適切な被ばく防護対策を取るために「多様な価値観を考慮すべきで地域ごとの住民参加が必要」と指摘した。放射性物質と向き合う日々は今後も続く。低線量被ばくの健康影響について、住民の意見を積極的に取り入れながら、不安解消につながる真剣な議論、検証作業が求められる。【久野華代、永山悦子】
◇WGがまとめた低線量被ばくの影響◇
・100ミリシーベルト以上は線量の上昇に応じて発がんリスクも増加することが分かっているが、100ミリシーベルト未満は影響が科学的に証明されていない
・低線量を長期間被ばくした場合、同じ線量を短期間で集中的に被ばくした場合より健康影響は小さい
・内部被ばくと外部被ばくの人体への影響は同じ
・低線量の内部被ばくによるぼうこうがんの増加は被ばくとの因果関係があると評価できない(毎日)
・・
ある事柄が「科学的に証明されていない」「因果関係があると評価できない」ことをもって、その事柄の否定の上に成り立つある政策の正当性が「科学的に証明」されるわけでも、ある問題の「因果関係」が否定できるわけでもない。詰まるところ、一見「科学的」な言説によって粉飾された「有識者」の「提言」は、国の強引な方針にただお墨付きを与えるだけという、きわめて政治的な目的に基づいた「非科学的」な代物なのだ。
こういう「有識者」のことを、大昔、宇井純は「バカ」と呼んだ。私たちは「御用学者」と呼ぶ。
国、東電、「有識者」が理解しなければならないのは、「3・11」から9ケ月余りを経て、「非常事態時における許容しうる放射線量」という概念自体が、もはや通用しなくなったことである。そしてこれは、とても良いことだと私は思う。
「放射能汚染に対する一般的恐怖と現実的恐怖」という表現を私は使ったことがあるが、その「恐怖」や懸念(とりわけ子どもを抱えた親たちのそれら)と、それらが転じた国、東電、「有識者」に対する怒りは、「20」ではなく「1」という数値をめぐってのものなのだ。国が、「有識者」が何をし、何を言おうが、これはもう変えることはできない。
国、東電、「有識者」がこのことを根本的に理解しないかぎり、今後の除染活動も「避難区域の見直し」も紛糾を極めるだけになるだろう。時間がない。この程度にしておこう。
・・・
・玄海3号機、ポンプ主軸折れる 冷却水漏れで発見
九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で9日に1次冷却水の浄化用ポンプの接合部から放射性物質を含む冷却水約1・8トンが漏れた事故で、九電は16日、ポンプの主軸が折れているのが見つかったと県に連絡した。
九電は9日、浄化装置に設置したポンプ1台の軸受けの温度が、80度以上に上昇したことを知らせる警報が鳴る不具合があったことを県などに連絡したが、水漏れの事実については「浄化装置の外に漏れたわけではない」として発表していなかった。(共同)
・原子力政策の堅持 年内にも国に要望へ
原子力施設が立地する下北半島のむつ市、大間町、東通村、六ケ所村の4市町村が合同で、年内にも国に原子力政策の堅持を要望することが15日、分かった。東京電力福島第1原発事故後、青森県内の立地自治体が合同で国に要請活動を行うのは初めて。県原子力安全対策検証委員会の検証作業が終了し(??)、三村申吾知事が安全対策の是非を判断する環境が整いつつある中、原発事故後に中断している各施設の試験や工事の早期再開を知事にアピールする狙いもあるとみられる。(デーリー東北)
⇒「原発再稼働・工事再開・新規建設における自治体の責任を問う、何度でも」(12/10)
・東海第2の再稼働認めぬ請願不採択 日立市議会
日立市議会は12月定例会最終日の15日、本会議を開き、日本原子力発電東海第2原発をめぐる「住民合意のないまま再稼働を認めないことを求める」請願を不採択とした。付託された総務産業委員会が「代替エネルギーの議論なく廃炉にするのは産業界に打撃が大きい」などとして不採択とすべきとの結論を出し、本会議で同委員長報告に対して賛成多数で不採択とした。 (茨城新聞)
・福井県内の稼動原発1基のみに 大飯2号、美浜2号定検へ
福井県にある関西電力大飯原発2号機(加圧水型軽水炉、出力117・5万キロワット)は16日夕、第24回定期検査に入る。8日にトラブルで停止した美浜原発2号機(同、出力50万キロワット)も18日に定検入りする。東京電力福島第1原発事故を受け、停止した原発が再稼働できない状況が続く中、県内の商業炉13基のうち運転しているのは高浜原発3号機(同、出力87万キロワット)だけとなる。 電力需要が高まる冬場を迎え、供給力不足が見込まれる関電は19日から前年同月比10%以上の節電に取り組む。
関電から15日、県に入った連絡によると、定検期間は1カ月間の調整運転を含め約4カ月の予定。1次冷却水の流量やホウ酸濃度を調整する化学体積制御系の弁や配管を耐食性に優れた材料に取り換える。過去の点検で減肉が確認されたものなど計20カ所の配管をステンレス鋼に交換する。(⇒福島第一、第二の「配管」の「減肉」はどの程度だったのか? またその素材は?)
福島の事故を踏まえた特別点検では、緊急炉心冷却装置(ECCS)や緊急時に格納容器内に水を注ぐスプレーリングの健全性を確認。使用済み燃料プールには水位監視カメラを増設し、広域水位計も設置する。燃料集合体は193体のうち65体(60体は新燃料集合体)を取り換える。
1次冷却水が配管内に漏れるトラブルで手動停止した美浜2号機は、18日から第27回定検に入る。県によると、停止後に漏れの個所を目視で点検したところ、1次冷却水の系統外への漏出はなかったという。
定検期間は調整運転を含め約5カ月。1次冷却水の圧力を調整する加圧器周辺にある6カ所の弁を調達が容易な国産品に取り換える。原子炉容器の溶接部で超音波探傷検査を行い健全性を確認する。燃料集合体は121体のうち41体(36体は新燃料集合体)を取り換える。
停止原発の再稼働の見通しが立っていないため、両プラントとも調整運転に入るための原子炉起動時期は未定。定検の作業自体が終わった段階でストレステスト(耐性評価)を実施する見込み。(福井新聞)
・・・
⇒「原発災害・復興支援・NGO~現場の活動を通してみえてきたもの、その成果と課題」(明日, 明学)チラシ
「冷温停止」?
これを「宣言」する者たち、これを追認する者たちの
言葉と存在の耐えられない軽さは何だろう
死んだ者たち、自殺した者たちがいた
家に帰れない者たち、家で怯えている者たちがいる
そこにいたし、そこにいる
「冷温停止」?
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる
泣き、そして笑うのだ
私たちの日常を〈忌中〉にしたのは誰か?
それがはっきりするまで〈忌中〉は続く
〈あの日〉を決して忘れられない者たちが存在するかぎり
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる
ノーマルを装いながら生きるアブノーマルな日常を、泣き、そして笑うのだ
⇒「政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである」(11/6)
⇒「政府・東電は、なぜ「冷温停止」を急ぐのか?」(10/18)
⇒「村上東海村村長が東海第2原発の廃炉を要望」の「ちなみに」(10/12)
・・
・首相、事故収束を宣言=「冷温停止状態」達成―避難区域見直しへ―福島第1原発
東京電力福島第1原発事故で、政府は16日、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)の会議を首相官邸で開いた。原子炉の冷却が安定して放射性物質の放出が大幅に抑えられた「冷温停止状態」が実現し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了したとする政府・東電統合対策室の判断を了承。
野田首相は「冷温停止状態に達し、事故収束に至ったと判断した」と宣言した。
同原発では3基の原子炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こし、溶けた核燃料の状況が確認できない上、放射性物質の外部への放出も完全に止まっていない。避難した周辺住民の帰還のめども立っておらず、反発を呼びそうだ。
宣言を受け、政府は同原発から半径20キロ圏内の警戒区域と、年間放射線量が20ミリシーベルトを超える計画的避難区域を、新たに3区域に再編する検討に入った。近い将来の帰宅が可能な「解除準備区域」(年間線量20ミリシーベルト未満)、数年間居住が難しい「居住制限区域」(同20ミリシーベルト以上~50ミリシーベルト未満)、数十年間帰宅できない可能性がある「帰還困難区域」(同50ミリシーベルト以上)とする方向で調整している。(時事)
・保安院 海への汚染水 ゼロ扱い
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。
原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算(!!)される。(⇒感嘆に値する)
しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているのが見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。
これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。 試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。
今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。 さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化して海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出を見送る方針だ。
保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。 「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具体的な期間は「これからの議論」とあいまい。 今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続けるという。(東京新聞)
・・
こういう日は、喪に服して、酒宴をするにかぎる。
〈「被曝避難基準20ミリシーベルト」について〉
・被ばく避難基準:20ミリシーベルト「妥当な値」政府WG
東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質による低線量被ばくの影響を有識者で検討する政府のワーキンググループ(WG、共同主査・長滝重信長崎大名誉教授、前川和彦東京大名誉教授)は15日、年20ミリシーベルト程度の被ばくによる健康影響は低いとしたうえで、政府の除染方針と同様に年20ミリシーベルトの地域では2年後に年10ミリシーベルト、その後は年5ミリシーベルトを中間的なに目標にすべきだとの提言をまとめた。細野豪志原発事故担当相に提出した。
◇段階的下げ提言
WGは、国際的な基準を参考に、避難の基準となっている年20ミリシーベルトについて「(喫煙などの)他の発がんリスク要因と比べて十分に低い水準だ」として、科学的に妥当な値だと結論付けた。福島県民の被ばく線量は年20ミリシーベルトを平均的に下回っていると分析する一方、「線量が高い地域から、優先順位をつけて徐々に下げていくべきだ」と提案した。
また、放射線の影響を受けやすい子供の生活環境を優先して除染し、避難区域でも校庭や園庭は毎時1マイクロシーベルト以下を目指すべきだと訴えたほか、子供が口にする食品に配慮して放射性物質濃度の適切な基準の設定を求めた。チェルノブイリ原発事故(1986年)で増加した子供の甲状腺がんについては「福島第1原発事故では線量が小さく、発がんリスクは非常に小さい」と指摘した。【久野華代】
◇解説…さらに議論、検証が必要
福島第1原発事故後、健康影響についての明確な科学的証拠がないとされている100ミリシーベルト未満の被ばくを巡っては、食品や除染などさまざまな規制値や基準値が示され、国民の間では混乱も起きた。政府のワーキンググループは政府と東京電力を名指しして「低線量被ばくによる社会的不安を巻き起こした」と反省を求めたが、少数の専門家によるわずか1カ月余りの議論が、住民にとって安心材料になったとは言い難い。
避難の基準となった年20ミリシーベルトという数値はもともと、専門家で組織する国際放射線防護委員会が緊急時の目安に掲げたもの。WGは今回、この目安を追認しただけでなく、除染などの中間目標も政府が8月に示した基本方針を踏まえただけに終わり、今回の原発事故に伴う具体的な健康影響を独自に評価する姿勢は、ほとんどうかがわれなかった。
WGは提言の中で今後の適切な被ばく防護対策を取るために「多様な価値観を考慮すべきで地域ごとの住民参加が必要」と指摘した。放射性物質と向き合う日々は今後も続く。低線量被ばくの健康影響について、住民の意見を積極的に取り入れながら、不安解消につながる真剣な議論、検証作業が求められる。【久野華代、永山悦子】
◇WGがまとめた低線量被ばくの影響◇
・100ミリシーベルト以上は線量の上昇に応じて発がんリスクも増加することが分かっているが、100ミリシーベルト未満は影響が科学的に証明されていない
・低線量を長期間被ばくした場合、同じ線量を短期間で集中的に被ばくした場合より健康影響は小さい
・内部被ばくと外部被ばくの人体への影響は同じ
・低線量の内部被ばくによるぼうこうがんの増加は被ばくとの因果関係があると評価できない(毎日)
・・
ある事柄が「科学的に証明されていない」「因果関係があると評価できない」ことをもって、その事柄の否定の上に成り立つある政策の正当性が「科学的に証明」されるわけでも、ある問題の「因果関係」が否定できるわけでもない。詰まるところ、一見「科学的」な言説によって粉飾された「有識者」の「提言」は、国の強引な方針にただお墨付きを与えるだけという、きわめて政治的な目的に基づいた「非科学的」な代物なのだ。
こういう「有識者」のことを、大昔、宇井純は「バカ」と呼んだ。私たちは「御用学者」と呼ぶ。
国、東電、「有識者」が理解しなければならないのは、「3・11」から9ケ月余りを経て、「非常事態時における許容しうる放射線量」という概念自体が、もはや通用しなくなったことである。そしてこれは、とても良いことだと私は思う。
「放射能汚染に対する一般的恐怖と現実的恐怖」という表現を私は使ったことがあるが、その「恐怖」や懸念(とりわけ子どもを抱えた親たちのそれら)と、それらが転じた国、東電、「有識者」に対する怒りは、「20」ではなく「1」という数値をめぐってのものなのだ。国が、「有識者」が何をし、何を言おうが、これはもう変えることはできない。
国、東電、「有識者」がこのことを根本的に理解しないかぎり、今後の除染活動も「避難区域の見直し」も紛糾を極めるだけになるだろう。時間がない。この程度にしておこう。
・・・
・玄海3号機、ポンプ主軸折れる 冷却水漏れで発見
九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で9日に1次冷却水の浄化用ポンプの接合部から放射性物質を含む冷却水約1・8トンが漏れた事故で、九電は16日、ポンプの主軸が折れているのが見つかったと県に連絡した。
九電は9日、浄化装置に設置したポンプ1台の軸受けの温度が、80度以上に上昇したことを知らせる警報が鳴る不具合があったことを県などに連絡したが、水漏れの事実については「浄化装置の外に漏れたわけではない」として発表していなかった。(共同)
・原子力政策の堅持 年内にも国に要望へ
原子力施設が立地する下北半島のむつ市、大間町、東通村、六ケ所村の4市町村が合同で、年内にも国に原子力政策の堅持を要望することが15日、分かった。東京電力福島第1原発事故後、青森県内の立地自治体が合同で国に要請活動を行うのは初めて。県原子力安全対策検証委員会の検証作業が終了し(??)、三村申吾知事が安全対策の是非を判断する環境が整いつつある中、原発事故後に中断している各施設の試験や工事の早期再開を知事にアピールする狙いもあるとみられる。(デーリー東北)
⇒「原発再稼働・工事再開・新規建設における自治体の責任を問う、何度でも」(12/10)
・東海第2の再稼働認めぬ請願不採択 日立市議会
日立市議会は12月定例会最終日の15日、本会議を開き、日本原子力発電東海第2原発をめぐる「住民合意のないまま再稼働を認めないことを求める」請願を不採択とした。付託された総務産業委員会が「代替エネルギーの議論なく廃炉にするのは産業界に打撃が大きい」などとして不採択とすべきとの結論を出し、本会議で同委員長報告に対して賛成多数で不採択とした。 (茨城新聞)
・福井県内の稼動原発1基のみに 大飯2号、美浜2号定検へ
福井県にある関西電力大飯原発2号機(加圧水型軽水炉、出力117・5万キロワット)は16日夕、第24回定期検査に入る。8日にトラブルで停止した美浜原発2号機(同、出力50万キロワット)も18日に定検入りする。東京電力福島第1原発事故を受け、停止した原発が再稼働できない状況が続く中、県内の商業炉13基のうち運転しているのは高浜原発3号機(同、出力87万キロワット)だけとなる。 電力需要が高まる冬場を迎え、供給力不足が見込まれる関電は19日から前年同月比10%以上の節電に取り組む。
関電から15日、県に入った連絡によると、定検期間は1カ月間の調整運転を含め約4カ月の予定。1次冷却水の流量やホウ酸濃度を調整する化学体積制御系の弁や配管を耐食性に優れた材料に取り換える。過去の点検で減肉が確認されたものなど計20カ所の配管をステンレス鋼に交換する。(⇒福島第一、第二の「配管」の「減肉」はどの程度だったのか? またその素材は?)
福島の事故を踏まえた特別点検では、緊急炉心冷却装置(ECCS)や緊急時に格納容器内に水を注ぐスプレーリングの健全性を確認。使用済み燃料プールには水位監視カメラを増設し、広域水位計も設置する。燃料集合体は193体のうち65体(60体は新燃料集合体)を取り換える。
1次冷却水が配管内に漏れるトラブルで手動停止した美浜2号機は、18日から第27回定検に入る。県によると、停止後に漏れの個所を目視で点検したところ、1次冷却水の系統外への漏出はなかったという。
定検期間は調整運転を含め約5カ月。1次冷却水の圧力を調整する加圧器周辺にある6カ所の弁を調達が容易な国産品に取り換える。原子炉容器の溶接部で超音波探傷検査を行い健全性を確認する。燃料集合体は121体のうち41体(36体は新燃料集合体)を取り換える。
停止原発の再稼働の見通しが立っていないため、両プラントとも調整運転に入るための原子炉起動時期は未定。定検の作業自体が終わった段階でストレステスト(耐性評価)を実施する見込み。(福井新聞)
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⇒「原発災害・復興支援・NGO~現場の活動を通してみえてきたもの、その成果と課題」(明日, 明学)チラシ
政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?
政府「事故調」の「調査」に疑義あり!--3号機の「高圧注水系(HPCI)」は「自動起動」したか?
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毎日新聞(電子版)の記事(12/16)、「福島3号機:現場独断で冷却停止…3月13日、高圧注水系」を読んだ。
私は毎日新聞の原発関連の記事を、他の主要新聞メディアのそれに比し、評価している。 しかし、この記事は、「事故」の「責任を問わない」という意味において決定的な問題をはらんでいる政府の「事故調査・検証委」の「報告」を鵜呑みにしているという点において、あまりに問題点が多い。 ここでは核心的なポイントのみ述べておく。
今回の「事故」の真相究明にあたり、解明されなければならないのは、次の点である。 すなわち、いったい如何なる①福島第一原発の構造的・工学的な脆弱性と、②政府・東電の「統合対策本部」および現場における「ヒューマン・エラー」が、メルトダウン→メルトスルーを引き起こしてしまったのか?
分かりやすく言えば、東電は、「想定外の津波」以外については耐震設計・安全対策を含め①は問題なかったとし、②に関し、現場末端の匿名の「作業員」の「判断ミス」という形で、「事故」原因解明の収束を図ろう/謀ろうとしている。そして、野田政権(原子力委員会・安全委員会、安全・保安院)も、それを追認しよとしている。誰ひとりとして刑事・民事・政治・行政上の責任を取ることもなく・・・。と言うか、まさにそのために。
これに対し、〈私たち〉は、①と②の両方に今回の大災害の原因があると主張する。②については、国と東電のトップレベルから「課長」クラスまでの、歴史的に蓄積されてきた「ガバナンス」と「マネジメント」の能力欠如の問題として。
間違ってもこれを、単なる「システム上の不備」に還元してはならない。「国策・民営」の原発事業が引き起こした大災害の責任の所在は、国においても民においても固有名を持つ人格と組織に帰せられねばならないからだ。そうでなければ私たちは今回の事態の教訓を歴史化し、社会化することができない。最も肝心なことは、組織と個人の法的不処罰(impunity)を絶対に許してはならない、ということである。
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上の記事を読み、私たちが理解すべきは、政府の「事故調・検証委」が、①今回の事態に人格的・組織的責任を負うべき主体の法的不処罰のための「お膳立て」をしていること、さらに②日本の主要新聞メディアの一つ、しかも「脱原発」を社として主張してきた毎日新聞が、予め仕組まれていた①の動きに対し、批判的に報道する〈眼〉を持っていない、ということである。
私がこのように言う理由は、とても単純なことだ。記事には、「事故調が経過を調べた結果、運転員がバッテリー切れを恐れ、吉田前所長の判断を仰がずHPCIを止めたことが分かった」とあるが、原発に対する基礎的知識を持つ人間の常識で考えるなら、非常事態発生時においてメルトダウンを防止する安全装置たるHPCIを、「運転員」(いったい誰?)が「バッテリー切れを恐れ」、「止める」ことなど、ありえないからだ。しかも、「吉田前所長の判断を仰がず」に? これは何かの冗談だろうか?
東電の現場「関係者」は、私の眼から見れば、明らかに共謀し、虚偽の「証言」をしている。
ここで話は、「福島第一原発は「止まった」か?」(10/31)の中段、「福島第一原発災害と地震」に戻ることになる。
内容はくり返さない。今後の対東電刑事・民事訴訟、および国賠訴訟の追求との関連で言えば、その「係争点」の一つが高圧注水系(HPCI)問題になることを確認するにとどめておきたい。つまり、東電の「事故」責任を問うにあたり、HPCIが「自動起動」したか、それとも津波襲来以前に地震の衝撃によって作動不全をきたしていたか否か、という問題である。
12/18
3
もう一点。「原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機」(12/18, 朝日新聞)についてだが、もしも東電の「原発幹部」が、「冷却装置「非常用復水器」について、電源が失われると弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」のだとしたら、これは下にあるような「有事の指揮系統、機能せず」といったレベルの問題では済まされないことになる。
原発の基本構造および非常時の安全システムを知らない「原発幹部」に、「有事の指揮」などできるはずがない。それは指揮「系統」の問題ではない。「機能」すべき「系統」など最初から存在しなかったことになる。
私には、「原発幹部」たちは、自分が何を「証言」しているのか、それさえ理解しているとは思えない。
組織的・個人的責任を問わない、しかも匿名の「事故調査」「検証」が、常識では考えられないこうした「証言」を可能にする。
そうした偽証の積み重ね、羅列による虚偽と虚構の「中間報告」が26日に発表されようとしている。
・・
・福島3号機:現場独断で冷却停止…3月13日、高圧注水系
東京電力福島第1原発事故で、3号機の原子炉を冷やすための最後の要となる「高圧注水系(HPCI)」が3月13日に現場の独断で止められ、再起動できなくなっていたことが、政府の事故調査・検証委員会の調べで分かった。
3号機は翌日、水素爆発した。1号機でも冷却装置「非常用復水器(IC)」が止まったが、吉田昌郎前所長が稼働していると誤認して事故対応していたこともすでに判明している。指揮系統が機能していなかったことが重大事故につながった可能性がある。今月末に公表される中間報告書に、こうした対応が不適切だったと記載される模様だ。
◇政府事故調、中間報告へ
東電が今月2日に公表した社内調査中間報告書などによると、3号機では東日本大震災が発生した3月11日、電源が喪失し、「原子炉隔離時冷却系(RCIC)」と呼ばれる別の冷却系が作動、原子炉に注水した。だが、12日午前11時36分には原因不明で停止。原子炉の水位が低下し同日午後0時35分にHPCIが自動起動したが、13日午前2時42分に停止した、としている。
複数の関係者によると、事故調が経過を調べた結果、運転員がバッテリー切れを恐れ、吉田前所長の判断を仰がずHPCIを止めたことが分かった。その後、HPCI、RCICともに起動を試みたが再開しなかった。報告書は「HPCIを止めない方がよかった」と指摘する見通し。
一方、報告書は津波対策にも言及するとみられる。東電は08年、想定していた高さ5・7メートルを上回る10メートル超の津波の可能性を試算したが、社内で「防潮堤のかさ上げは費用が高くなる」との意見が出された。当時原子力設備管理部長だった吉田前所長らが「学術的性格の強い試算で、そのような津波はこない」と主張したこともあり、具体的な対応は見送られたという。
さらに、報告書は法律に基づいて設置された現地本部が十分機能しなかったことや、政府が「炉心溶融(メルトダウン)」を軽微に感じさせる「炉心損傷」と修正した点にも触れる見込み。閣僚の具体的な関与では今月から聴取を始めており、来夏に作成する最終報告書に盛り込む。
◇高圧注水系◇
非常時に原子炉内に注水するために備えられた緊急炉心冷却装置(ECCS)の一つで、原子炉内の水位が異常に下がった場合に働く。原子炉の余熱で発生する蒸気を利用してタービン駆動のポンプを動かし、復水貯蔵タンクなどの水を勢いよく炉内上部から炉心(核燃料)に注ぎ込む。停電時でもバッテリーで使用できるのが利点。
◇解説…有事の指揮系統、機能せず
これまで東京電力は「原発事故防止のためにさまざまな取り組みをしてきた」「想定を上回る津波だった」などと主張してきた。しかし、政府の事故調査・検証委員会による関係者聴取から浮かぶのは、「不十分な備え」であり、「人災」という側面すらみえる。
同委員会の調査で、福島第1原発3号機で「高圧注水系(HPCI)」を運転員が独断で止めたことが判明した。今夏までの調査でも1号機の非常用復水器(IC)の停止を吉田昌郎前所長が把握できていなかったことが判明している。重大事故時の備えがなく、運転員にこのような行動をさせた点こそ問題だ。
また、東電の過酷事故時の手順書には、全電源喪失が長時間続くことを想定せず、格納容器を守るためのベント(排気)の手順なども盛り込まれていなかった。備えが不十分で現場の指揮系統が混乱し、最善策を取れなかったとうかがわせる。
過酷事故対策は79年の米スリーマイル島原発事故を契機に、世界的に整備が進んだ。日本でも検討され、原子力安全委員会は92年、事業者に過酷事故対策を求めた。だが、事業者の自主性に委ね、それ以来、対策内容を見直してこなかった。あらゆる警告を謙虚に受け止めることが関係者に求められる。
↓
「あらゆる警告を謙虚に受け止めることが関係者に求められる」・・・。
匿名のこの記事の筆者は、国と東電に対し、随分と理解があるようだ。
1
毎日新聞(電子版)の記事(12/16)、「福島3号機:現場独断で冷却停止…3月13日、高圧注水系」を読んだ。
私は毎日新聞の原発関連の記事を、他の主要新聞メディアのそれに比し、評価している。 しかし、この記事は、「事故」の「責任を問わない」という意味において決定的な問題をはらんでいる政府の「事故調査・検証委」の「報告」を鵜呑みにしているという点において、あまりに問題点が多い。 ここでは核心的なポイントのみ述べておく。
今回の「事故」の真相究明にあたり、解明されなければならないのは、次の点である。 すなわち、いったい如何なる①福島第一原発の構造的・工学的な脆弱性と、②政府・東電の「統合対策本部」および現場における「ヒューマン・エラー」が、メルトダウン→メルトスルーを引き起こしてしまったのか?
分かりやすく言えば、東電は、「想定外の津波」以外については耐震設計・安全対策を含め①は問題なかったとし、②に関し、現場末端の匿名の「作業員」の「判断ミス」という形で、「事故」原因解明の収束を図ろう/謀ろうとしている。そして、野田政権(原子力委員会・安全委員会、安全・保安院)も、それを追認しよとしている。誰ひとりとして刑事・民事・政治・行政上の責任を取ることもなく・・・。と言うか、まさにそのために。
これに対し、〈私たち〉は、①と②の両方に今回の大災害の原因があると主張する。②については、国と東電のトップレベルから「課長」クラスまでの、歴史的に蓄積されてきた「ガバナンス」と「マネジメント」の能力欠如の問題として。
間違ってもこれを、単なる「システム上の不備」に還元してはならない。「国策・民営」の原発事業が引き起こした大災害の責任の所在は、国においても民においても固有名を持つ人格と組織に帰せられねばならないからだ。そうでなければ私たちは今回の事態の教訓を歴史化し、社会化することができない。最も肝心なことは、組織と個人の法的不処罰(impunity)を絶対に許してはならない、ということである。
2
上の記事を読み、私たちが理解すべきは、政府の「事故調・検証委」が、①今回の事態に人格的・組織的責任を負うべき主体の法的不処罰のための「お膳立て」をしていること、さらに②日本の主要新聞メディアの一つ、しかも「脱原発」を社として主張してきた毎日新聞が、予め仕組まれていた①の動きに対し、批判的に報道する〈眼〉を持っていない、ということである。
私がこのように言う理由は、とても単純なことだ。記事には、「事故調が経過を調べた結果、運転員がバッテリー切れを恐れ、吉田前所長の判断を仰がずHPCIを止めたことが分かった」とあるが、原発に対する基礎的知識を持つ人間の常識で考えるなら、非常事態発生時においてメルトダウンを防止する安全装置たるHPCIを、「運転員」(いったい誰?)が「バッテリー切れを恐れ」、「止める」ことなど、ありえないからだ。しかも、「吉田前所長の判断を仰がず」に? これは何かの冗談だろうか?
東電の現場「関係者」は、私の眼から見れば、明らかに共謀し、虚偽の「証言」をしている。
ここで話は、「福島第一原発は「止まった」か?」(10/31)の中段、「福島第一原発災害と地震」に戻ることになる。
内容はくり返さない。今後の対東電刑事・民事訴訟、および国賠訴訟の追求との関連で言えば、その「係争点」の一つが高圧注水系(HPCI)問題になることを確認するにとどめておきたい。つまり、東電の「事故」責任を問うにあたり、HPCIが「自動起動」したか、それとも津波襲来以前に地震の衝撃によって作動不全をきたしていたか否か、という問題である。
12/18
3
もう一点。「原発幹部、非常用冷却装置作動と誤解 福島第一1号機」(12/18, 朝日新聞)についてだが、もしも東電の「原発幹部」が、「冷却装置「非常用復水器」について、電源が失われると弁が閉じて機能しなくなる構造」を「知らなかった」のだとしたら、これは下にあるような「有事の指揮系統、機能せず」といったレベルの問題では済まされないことになる。
原発の基本構造および非常時の安全システムを知らない「原発幹部」に、「有事の指揮」などできるはずがない。それは指揮「系統」の問題ではない。「機能」すべき「系統」など最初から存在しなかったことになる。
私には、「原発幹部」たちは、自分が何を「証言」しているのか、それさえ理解しているとは思えない。
組織的・個人的責任を問わない、しかも匿名の「事故調査」「検証」が、常識では考えられないこうした「証言」を可能にする。
そうした偽証の積み重ね、羅列による虚偽と虚構の「中間報告」が26日に発表されようとしている。
・・
・福島3号機:現場独断で冷却停止…3月13日、高圧注水系
東京電力福島第1原発事故で、3号機の原子炉を冷やすための最後の要となる「高圧注水系(HPCI)」が3月13日に現場の独断で止められ、再起動できなくなっていたことが、政府の事故調査・検証委員会の調べで分かった。
3号機は翌日、水素爆発した。1号機でも冷却装置「非常用復水器(IC)」が止まったが、吉田昌郎前所長が稼働していると誤認して事故対応していたこともすでに判明している。指揮系統が機能していなかったことが重大事故につながった可能性がある。今月末に公表される中間報告書に、こうした対応が不適切だったと記載される模様だ。
◇政府事故調、中間報告へ
東電が今月2日に公表した社内調査中間報告書などによると、3号機では東日本大震災が発生した3月11日、電源が喪失し、「原子炉隔離時冷却系(RCIC)」と呼ばれる別の冷却系が作動、原子炉に注水した。だが、12日午前11時36分には原因不明で停止。原子炉の水位が低下し同日午後0時35分にHPCIが自動起動したが、13日午前2時42分に停止した、としている。
複数の関係者によると、事故調が経過を調べた結果、運転員がバッテリー切れを恐れ、吉田前所長の判断を仰がずHPCIを止めたことが分かった。その後、HPCI、RCICともに起動を試みたが再開しなかった。報告書は「HPCIを止めない方がよかった」と指摘する見通し。
一方、報告書は津波対策にも言及するとみられる。東電は08年、想定していた高さ5・7メートルを上回る10メートル超の津波の可能性を試算したが、社内で「防潮堤のかさ上げは費用が高くなる」との意見が出された。当時原子力設備管理部長だった吉田前所長らが「学術的性格の強い試算で、そのような津波はこない」と主張したこともあり、具体的な対応は見送られたという。
さらに、報告書は法律に基づいて設置された現地本部が十分機能しなかったことや、政府が「炉心溶融(メルトダウン)」を軽微に感じさせる「炉心損傷」と修正した点にも触れる見込み。閣僚の具体的な関与では今月から聴取を始めており、来夏に作成する最終報告書に盛り込む。
◇高圧注水系◇
非常時に原子炉内に注水するために備えられた緊急炉心冷却装置(ECCS)の一つで、原子炉内の水位が異常に下がった場合に働く。原子炉の余熱で発生する蒸気を利用してタービン駆動のポンプを動かし、復水貯蔵タンクなどの水を勢いよく炉内上部から炉心(核燃料)に注ぎ込む。停電時でもバッテリーで使用できるのが利点。
◇解説…有事の指揮系統、機能せず
これまで東京電力は「原発事故防止のためにさまざまな取り組みをしてきた」「想定を上回る津波だった」などと主張してきた。しかし、政府の事故調査・検証委員会による関係者聴取から浮かぶのは、「不十分な備え」であり、「人災」という側面すらみえる。
同委員会の調査で、福島第1原発3号機で「高圧注水系(HPCI)」を運転員が独断で止めたことが判明した。今夏までの調査でも1号機の非常用復水器(IC)の停止を吉田昌郎前所長が把握できていなかったことが判明している。重大事故時の備えがなく、運転員にこのような行動をさせた点こそ問題だ。
また、東電の過酷事故時の手順書には、全電源喪失が長時間続くことを想定せず、格納容器を守るためのベント(排気)の手順なども盛り込まれていなかった。備えが不十分で現場の指揮系統が混乱し、最善策を取れなかったとうかがわせる。
過酷事故対策は79年の米スリーマイル島原発事故を契機に、世界的に整備が進んだ。日本でも検討され、原子力安全委員会は92年、事業者に過酷事故対策を求めた。だが、事業者の自主性に委ね、それ以来、対策内容を見直してこなかった。あらゆる警告を謙虚に受け止めることが関係者に求められる。
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「あらゆる警告を謙虚に受け止めることが関係者に求められる」・・・。
匿名のこの記事の筆者は、国と東電に対し、随分と理解があるようだ。
2011年12月14日水曜日
で、私たちは福島第一5、6号機と第二原発をどうするのか?
で、私たちは福島第一5、6号機と第二原発をどうするのか?
12/15
・国内廃棄物に大量の核物質 未計量で濃縮ウラン4トン
政府が国際原子力機関(IAEA)の保障措置(査察)の対象となっている全国の262施設を調査した結果、計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかったことが14日、分かった。政府は国際社会の批判を避けるためIAEAへの申告を急ぎ、水面下で協議(!!)を始めた。複数の政府高官が明らかにした。
中でも政府系研究所で高濃縮ウラン約2・8キロ、原子力燃料製造企業で約4トンの低濃縮ウランがそれぞれ未計量だったケースを重視して調べている。中部、北陸、中国の3電力会社などにも未計量とみられる核物質があり、確認を進めている。(共同)
・IAEAが「深刻な懸念」 日本の報告漏れ核物質
国際原子力機関(IAEA)が今年2月、査察対象となっている日本の原子力関連施設の核物質報告漏れについて、日本側に「深刻な懸念」を伝え、通常は査察の対象にしない廃棄物を検査したいと異例の申し入れをしていたことが15日、分かった。政府関係者が明らかにした。
これが発端となって文部科学省が全国262施設の一斉調査に踏み切り、さらに大量の報告漏れが見つかった。 関係者によると、昨年10月に政府系研究施設で廃棄物から報告漏れの核物質が見つかり、IAEAに報告。今年2月のIAEAと日本政府の会議で、この問題が取り上げられた。(共同)
・・
↓
ただただ言葉を失うばかりだ。
「計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかった」「国際社会の批判を避けるため」、IAEAと「水面下で協議」・・・。
濃縮ウランやプルトニウムの「廃棄物への廃棄(!!)」が長年にわたり、計画的かつ組織的かつ秘密裡に行われ、これが明るみに出るとマズイ、と事実の隠ぺい・揉み消し(→こんな事実など無かったことにする)を経産官僚が原子力ムラの研究者、そして外務官僚出身の人間を長とする国際機関と一体となってはかる・・・。
原発の「安全神話」がどうのこうの、「脱原発の〈思想〉と〈科学〉」がどうのこうの、原発の「コスト」や「リスク」がどうのこうの、これまで議論してきたそうした問題群のはるか以前的な重大事態である。
これまで何のために、何をめぐって書いてきたのか、強烈に空しくさせる事態である。
しかし、どこの国であれ、これが「国家」というものの実相であり、「原子力行政」なるもの、それを推進する官僚機構の実態なのである。
「話にもなんにもならない」、と誰だって思うだろう。最悪に滅入ってしまう。
が、これが原子力ムラを構成する独立行政法人系研究機関、原発関連企業、電力会社の「ガバナンス」と「マネジメント」の実態、それを担ってきた/いる「研究者」たちの人間性、その倫理観のクオリティなのだ。私たちには、この現実にきちんと向き合う以外に選択肢はない。
裏返して言えば、これまでの日本の原発行政がこういう研究機関、こういう企業、東電を筆頭とするこういう電力会社とそれを支えるこのような人間集団を作ってしまったのである。
だからこれは、私たちにとってまったく他人事ではない。私たちも「こういう人間集団」の構成主体にいつでもなりえたし、これからもなりえるからである。
野田政権は、濃縮ウランやプルトニウムを含む「未計量の核物質」が存在する、すべての「政府系研究所」「原子力燃料製造企業」の実名・場所、そして「中部、北陸、中国の3電力会社」の施設名を直ちに公表し、実態を全国民、全世界に報告したうえで、公式に謝罪すべきである。
そして、これら「政府系研究所」を直ちに閉鎖し、「原子力燃料製造企業」、中部、北陸、中国の3電力会社の関連施設を営業停止処分にすべきである。
・・
・冷温停止「事故原発には使わない」=元東電社員の蓮池透さん講演―佐賀
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の元副代表で、東京電力に30年余り勤めた蓮池透さん(56)が15日午後、佐賀市内で講演した。東電福島第1原発事故で野田佳彦首相が16日にも示すとされる冷温停止宣言について、蓮池さんは「冷温停止は、正常な原発に使う言葉。事故を起こした原発に冷温停止という概念はない」と断じた。 蓮池さんは約400人の聴衆を前に、同宣言は「前のめりのやり方」と批判。「早く原子炉格納容器の中を把握する方法を実施すべきだ。それからでも遅くない」などと訴えた。
冒頭では、同原発で保守管理者や原子力燃料サイクル部長を務めた立場から、「ご迷惑を掛けて申し訳ない」と謝罪。大津波が事故の主因とされる点については、「想定していなかった。防波堤を高くするなど防ぎようがあった」と述べた。(時事)
12/14
福島民友新聞の記事を読んでいて、気になったことがある。それは、先日も書いたが、福島第一原発5、6号機と第二原発の廃炉に関係する問題である。
東電は明らかに、5、6号機と第二原発全号機の将来的な再稼働を大前提に、第一原発1~4号機の「事故収束」→廃炉を考えている。これに対し、野田政権は、9月に枝野経産相が「廃炉は不可避と考えている」と述べただけで、明確な政府方針を打ち出していない。 一方、周知のように福島県議会は、10月、県としての「脱原発」宣言を受け、様々な紆余曲折を経ながらも、第一・第二原発すべての廃炉を国と東電に対する要請する決議をあげている。
つまり、何が問題かと言えば、国と東電は福島県が原発全廃決議を上げたことを踏まえ、今後の「事故収束」の「新工程表」や「冷温停止」の政治宣言を発する義務と責任があるはずなのに、県議会の決議以降、「冷温停止」宣言直前の今日まで、国と東電のそのような動きがまったく確認できないことである。これをどのように私たちは考えればよいのか。たとえば、下の記事の東電社長のインタビューを読むと、まるで決議など無かったかのように、あくまでも第一原発の1~4号機の廃炉問題のみに固執する東電の姿勢が明らかになってくる。
・・
・「廃炉」年内に新工程表 福島第1原発1~4号機
東京電力の西沢俊夫社長は13日、福島民友新聞社のインタビューに応じ、福島第1原発1~4号機の廃炉に向けた中長期的な視点の新たな工程表を年内に公表する考えを示した。政府と東電は事故の収束に向けて現在実行中の工程表で、原子炉の冷温停止を目指すステップ2の終了を16日に発表する方針で、事故収束作業は原子炉を冷やし、安定させる初期の工程から、最終目標である廃炉に向けた具体的な工程に移る。
西沢社長は新たな工程表について「ステップ2を終えた場合、中長期的なロードマップを年内に出す」と説明。廃炉までには「30年以上」と言われる収束作業となるが、「10年、20年かかる仕事で、国と一緒に取り組まなければならない。そうしなければ福島県の方々に責任を取ったことにはならない。それだけは肝に銘じている」と述べた。(福島民友)
・・
東電が「福島県の方々に責任」を取るとは、賠償・補償問題に加え、原発全廃の県議会の決議が上がったことを深刻に受け止め、第一・第二原発の廃炉を社として明確に打ち出すことにあるのではないか?
それは国についても同じはずだ。ところが、国に至っては何をどうしたいのか、未だ何もはっきりしていないのが実情だ。
・・
・「避難指示」解除へ 第2原発8キロ圏内の4町
経済産業省原子力安全・保安院は13日、東京電力福島第2原発から8キロ圏内の広野、楢葉、富岡、大熊4町に措置している避難指示を解除する方針を関係市町村に伝えた。
関係者によると、政府は年内に福島第1原発から20キロ圏内の警戒区域と計画的避難区域見直しの考え方を示すとみられる。ただ、警戒区域は、福島第2原発の避難指示区域と重なっていることから、警戒区域の見直しに先行して第2原発の避難指示を解除することで、見直しに向けた環境を整える考えとみられる。
警戒区域などの見直しについて政府は、福島第1原発事故収束の工程表ステップ2の完了を受けて実施する方針。年間の積算放射線量に応じて50ミリシーベルト以上を「長期帰還困難」、20~50ミリシーベルト未満を「居住制限」、20ミリシーベルト未満を「解除準備」の3区域に再編する方向で関係自治体と調整しているもようで、見直しの考え方について年内に明らかにする見通し。(福島民友)
・・
野田政権、というより経産省は、第二原発8キロ圏内の「避難区域」解除の方針を打ち出した。けれども私たちは、「警戒区域」の「見直し」を行うために、福島第2原発の「避難指示区域」を解除するという、この政府方針が妥当か否かとともに、これが今後、第二原発の存続(再稼働か、それとも廃炉か)問題とどのように関係し、発展して行くか、その観点を含めて考える必要に迫られている。
国と東電は、とにもかくにも、何が何でも、16日に「冷温停止」宣言を発し、それに合わせて新廃炉工程表も公表するとしている。福島県議会決議を受け、今や問題の焦点は、「冷温停止」の政治セレモニーにあるのではなく、その「宣言」の中で5、6号機と第二原発の廃炉問題がどのように扱われるか、に移っているのである。 国がその結論を先延ばしにする「方針」だけは明らかになっている。しかしその先延ばしを許さない福島県そのものと私たちの行動が問われているのである。
参考サイト
⇒「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」(東京電力)
「東電は信用できない」と言ってしまえば身も蓋もない。しかし東電とは、「第一原発から放出される放射性物質は東電の「所有物」ではない、だから除染の責任を社として負う義務はない」と平気で言ってのける会社である。5、6号機を「定期検査中・冷温停止」とし、第二原発を「正常」な状態にあるとする東電の「報告」は、何度も眉に唾を付けて読む必要があるのではないか。
この間、5、6号機の(再)臨界の「可能性」や第二原発も相当のダメージを受けたという情報が飛び交ってきたが、非常に不当なことに東電のデータに問題がある場合、その「立証責任」は私たちの側にあることを再確認しておこう。二日後に迫った「冷温停止」政治宣言の「非妥当性」をめぐる立証責任とともに。
・・
・基準見えず県民困惑 23市町村の住民賠償 相談急増
■窓口に電話次々
東京電力福島第一原発事故で、原子力損害賠償紛争審査会が県内23市町村の住民に賠償金を支払う新たな指針を示して13日で1週間が過ぎた。東電からはいまだ、詳細な基準が示されず、県民や自治体に疑問や戸惑いが広がる。対象は全県民の4分の3に当たる150万人。支払いが行われるとしても作業は膨大だ。東電は手続きなどで県内自治体の支援を求めているが、その姿勢に批判が集まっている。先行きは不透明で、賠償金が届く見通しはまるで立っていない。
「住民票を移していないが、対象区域内に住んでいる」「18歳以下とは、いつの時点か」「里帰り出産で事故当時は対象区域内にいた」
東京電力福島第一原発事故に伴う県の損害賠償関係の相談窓口。指針が発表された後、電話が急増した。発表から2日後の8日はそれまでの5倍の220件を数えた。その後も1日80件程度が寄せられている。
賠償の対象区域となった23市町村の住民は、賠償の基準や手続きを知りたがる。しかし、窓口担当者は「基準は明確になっていません。判明したら速やかに情報提供します」と繰り返すのが精いっぱいだ。
単身赴任や長期の出張で原発事故直後、一時的に対象区域内に居合わせた人はどう扱うのか、区域外に引っ越した住民が当時居住していた実績をどう確認するか、何も判断は示されない。18歳以下の子どもは、いつの時点を年齢の基準日とするのかも不明確だ。「東電は本当に支払う気があるのだろうか」。福島市で2人の幼児を育てる主婦(36)は日に日に疑問が膨らんでいる。
■反応冷ややか
150万人が対象となる賠償指針の決定を受け、東電の西沢俊夫社長は「国や自治体など関係機関のご指導、ご支援を頂きたい」と行政に頼る姿勢をあらためて示している。
しかし、県と県内市町村の反応は冷ややかだ。約33万人が対象となる郡山市。早急に小中学校の校庭の表土除去や生活圏の除染を実施することを余儀なくされている。市原子力災害対策直轄室の担当者は「最初から自治体に協力を求める姿勢は疑問だ」と批判する。
現段階で支援の要請は受けていないが、まずは東電が自ら行動することが筋だとみている。「他の市町村と足並みをそろえる必要があるが、事故を起こした当事者が責任を持って手続きも行うべき」と厳しく指摘した。
一方、比較的に放射線量の高い地点を抱え一部住民が避難している福島市の担当者は、「住民本位に考えれば、何らかの対応を市として取らざるを得ない」とする。損害賠償の取り組みの主体はあくまで東電だが、全ての市民に確実に賠償金は届けなければならない。相談窓口の設置が必要になるとみている。原発事故の後始末の業務が確実にまた一つ加わる。
県原子力損害対策課は県民の請求手続きの負担を減らす方法に頭を悩ます。「ともかく早急に東電や市町村と対応を協議するしかない」と東電の基準が一日も早く示されることを待っている。(福島民報)
・・
福島第一5、6号機と第ニ原発の廃炉問題は、東電による賠償・補償問題に深く影響を与える問題である。逆に言えば、東電がどこまで賠償・補償に責任を取る意思があるか、そのことが廃炉問題に直結しているのである。
現在、東電は前者を曖昧にする無責任と、後者を前提にしないという二重の無責任を犯している。これに対し、国は両方を先送りにするという無責任を犯している。東電は何が何でも社としての延命をはかることを中心に考え、国は結論を先送りにしながらも、その方向で「調整」することを考えている・・・。
被災者・被曝者にとっても私たちにとっても、今年の冬は去年にも増して、長くて寒い冬になりそうだ。
・・・
・玄海原発、耐震安全性は「妥当」 原子力保安院
経済産業省原子力安全・保安院は13日、九州電力がデータ入力ミスを受けて実施した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の耐震安全性評価の再点検結果について「妥当」と判断した。玄海1、2号機と川内原発1、2号機(鹿児島県)の再点検結果も妥当とした。
これを受け、九電は再稼働に必要なストレステストの1次評価作業をほぼ終えている玄海2、3号機と川内1号機のいずれかの1次評価結果を近く国に提出する。ただ、「やらせメール」や2005年のプルサーマル公開討論会の「仕込み質問」などの問題が決着しておらず、再稼働に理解を得るのは難しい情勢となっている。
耐震安全性評価については、7月に玄海3、4号機で解析データの入力ミスが4カ所判明。玄海1、2号機では再点検で15カ所の転記ミスが見つかった。九電は正しい数値で計算しても「安全性に影響はない」とした評価結果を10月末と11月下旬に保安院に提出していた。
定期検査で停止している原発の再稼働条件となる1次評価の結果について、九電は「準備が整い次第、提出する」としている。具体的な提出日やどの原発から提出するかは明らかにしていない。
年内をめどに提出を求められていた全原発対象の2次評価については「年末までの提出は難しい」としており、年明け以降になるとみられる。 (佐賀新聞)
・・・
・住民投票の法制化見送りへ 地方側の意向受け後退
地方制度調査会(会長・西尾勝東大名誉教授)は15日の総会で、政府が国会提出を見合わせている地方自治法改正案をめぐり、全国知事会など地方6団体が「自治体行政を混乱させる」(???)と反対している住民投票の法制化と直接請求の対象拡大について、削除を求める意見をまとめた。
いずれも総務省が住民自治の強化に向け目玉と位置付けていたが「対象など詰めるべき論点がある」として見送りを求めた。政府は意見を踏まえて改正案を修正、来年の通常国会に提出するが、当初の狙いは後退が避けられない見通しだ。(共同)
↓
「調査会」で審議されてきた「住民投票制度の法制化」は、その対象が大型施設の建設問題等に限定されていたことを含め、「住民自治の強化」と言うには、あまりに是正・克服すべき課題が多いものである。
上の記事では何かしら総務省が「住民自治の強化」を考え、「調査会」の「意見」がそれに逆行するものであるかのように報じられているが、そのような分析はきわめて皮相的なものだと言わざるを得ない。
むしろこの「意見」は、たとえば原発を始めとする国家プロジェクトに対する(広域的)住民投票制度の導入がいかに国策遂行の障害となりえるかを考えてみればわかるように、「地域主権」=「住民主権」を骨抜きにしようとする中央官僚機構の思惑を反映したものと分析すべきである。
この問題は、いつか機会を見つけて改めて論じることにしたい。
・出先機関に国の関与温存案 国交省、焼け太り狙う?
原則廃止して地方に移すことが決まっている国の出先機関について、国土交通省が国の関与を温存する案を作った。新しい体制を設けて、都道府県の権限も吸収する内容。野田政権が年内にまとめる出先機関改革の方針への反映をめざす。
国交省案によると、全国を複数のブロックに分けて「広域的実施体制」を新設。各ブロックには、域内の自治体とは別の「長」を置くことを法律で義務づけ、議会も設ける。「長」は個別の選挙で選ばれた自治体の首長から独立し、利害関係を調整する。また、議会によるチェック機能で透明性を高めるという。
この体制を受け皿に、国交省地方整備局や経済産業省経済産業局など国の出先機関の権限や財源を移す。そのうえで「都道府県から同種の事務・権限を全て持ち寄り、一体的に処理」として、地方の権限も新しい体制に集める。さらに「国交相が整備計画決定や予算措置するなど関与」とも明記し、国の介入を認める。
この案は、出先機関改革の具体案を練っている「アクション・プラン推進委員会」で、19日に検討される。地域主権戦略会議が年末にまとめる改革の方針に反映されれば、国の権限や予算を自治体に移す地域主権の考えに逆行することになる。新たな体制を立ち上げることで、職員の人員削減の目的も果たせず、焼け太りになる可能性もある。 (12/18,朝日)
・・・
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?」
⇒「原発再稼働・工事再開・新規建設における自治体の責任を問う、何度でも」
12/15
・国内廃棄物に大量の核物質 未計量で濃縮ウラン4トン
政府が国際原子力機関(IAEA)の保障措置(査察)の対象となっている全国の262施設を調査した結果、計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかったことが14日、分かった。政府は国際社会の批判を避けるためIAEAへの申告を急ぎ、水面下で協議(!!)を始めた。複数の政府高官が明らかにした。
中でも政府系研究所で高濃縮ウラン約2・8キロ、原子力燃料製造企業で約4トンの低濃縮ウランがそれぞれ未計量だったケースを重視して調べている。中部、北陸、中国の3電力会社などにも未計量とみられる核物質があり、確認を進めている。(共同)
・IAEAが「深刻な懸念」 日本の報告漏れ核物質
国際原子力機関(IAEA)が今年2月、査察対象となっている日本の原子力関連施設の核物質報告漏れについて、日本側に「深刻な懸念」を伝え、通常は査察の対象にしない廃棄物を検査したいと異例の申し入れをしていたことが15日、分かった。政府関係者が明らかにした。
これが発端となって文部科学省が全国262施設の一斉調査に踏み切り、さらに大量の報告漏れが見つかった。 関係者によると、昨年10月に政府系研究施設で廃棄物から報告漏れの核物質が見つかり、IAEAに報告。今年2月のIAEAと日本政府の会議で、この問題が取り上げられた。(共同)
・・
↓
ただただ言葉を失うばかりだ。
「計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかった」「国際社会の批判を避けるため」、IAEAと「水面下で協議」・・・。
濃縮ウランやプルトニウムの「廃棄物への廃棄(!!)」が長年にわたり、計画的かつ組織的かつ秘密裡に行われ、これが明るみに出るとマズイ、と事実の隠ぺい・揉み消し(→こんな事実など無かったことにする)を経産官僚が原子力ムラの研究者、そして外務官僚出身の人間を長とする国際機関と一体となってはかる・・・。
原発の「安全神話」がどうのこうの、「脱原発の〈思想〉と〈科学〉」がどうのこうの、原発の「コスト」や「リスク」がどうのこうの、これまで議論してきたそうした問題群のはるか以前的な重大事態である。
これまで何のために、何をめぐって書いてきたのか、強烈に空しくさせる事態である。
しかし、どこの国であれ、これが「国家」というものの実相であり、「原子力行政」なるもの、それを推進する官僚機構の実態なのである。
「話にもなんにもならない」、と誰だって思うだろう。最悪に滅入ってしまう。
が、これが原子力ムラを構成する独立行政法人系研究機関、原発関連企業、電力会社の「ガバナンス」と「マネジメント」の実態、それを担ってきた/いる「研究者」たちの人間性、その倫理観のクオリティなのだ。私たちには、この現実にきちんと向き合う以外に選択肢はない。
裏返して言えば、これまでの日本の原発行政がこういう研究機関、こういう企業、東電を筆頭とするこういう電力会社とそれを支えるこのような人間集団を作ってしまったのである。
だからこれは、私たちにとってまったく他人事ではない。私たちも「こういう人間集団」の構成主体にいつでもなりえたし、これからもなりえるからである。
野田政権は、濃縮ウランやプルトニウムを含む「未計量の核物質」が存在する、すべての「政府系研究所」「原子力燃料製造企業」の実名・場所、そして「中部、北陸、中国の3電力会社」の施設名を直ちに公表し、実態を全国民、全世界に報告したうえで、公式に謝罪すべきである。
そして、これら「政府系研究所」を直ちに閉鎖し、「原子力燃料製造企業」、中部、北陸、中国の3電力会社の関連施設を営業停止処分にすべきである。
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・冷温停止「事故原発には使わない」=元東電社員の蓮池透さん講演―佐賀
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の元副代表で、東京電力に30年余り勤めた蓮池透さん(56)が15日午後、佐賀市内で講演した。東電福島第1原発事故で野田佳彦首相が16日にも示すとされる冷温停止宣言について、蓮池さんは「冷温停止は、正常な原発に使う言葉。事故を起こした原発に冷温停止という概念はない」と断じた。 蓮池さんは約400人の聴衆を前に、同宣言は「前のめりのやり方」と批判。「早く原子炉格納容器の中を把握する方法を実施すべきだ。それからでも遅くない」などと訴えた。
冒頭では、同原発で保守管理者や原子力燃料サイクル部長を務めた立場から、「ご迷惑を掛けて申し訳ない」と謝罪。大津波が事故の主因とされる点については、「想定していなかった。防波堤を高くするなど防ぎようがあった」と述べた。(時事)
12/14
福島民友新聞の記事を読んでいて、気になったことがある。それは、先日も書いたが、福島第一原発5、6号機と第二原発の廃炉に関係する問題である。
東電は明らかに、5、6号機と第二原発全号機の将来的な再稼働を大前提に、第一原発1~4号機の「事故収束」→廃炉を考えている。これに対し、野田政権は、9月に枝野経産相が「廃炉は不可避と考えている」と述べただけで、明確な政府方針を打ち出していない。 一方、周知のように福島県議会は、10月、県としての「脱原発」宣言を受け、様々な紆余曲折を経ながらも、第一・第二原発すべての廃炉を国と東電に対する要請する決議をあげている。
つまり、何が問題かと言えば、国と東電は福島県が原発全廃決議を上げたことを踏まえ、今後の「事故収束」の「新工程表」や「冷温停止」の政治宣言を発する義務と責任があるはずなのに、県議会の決議以降、「冷温停止」宣言直前の今日まで、国と東電のそのような動きがまったく確認できないことである。これをどのように私たちは考えればよいのか。たとえば、下の記事の東電社長のインタビューを読むと、まるで決議など無かったかのように、あくまでも第一原発の1~4号機の廃炉問題のみに固執する東電の姿勢が明らかになってくる。
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・「廃炉」年内に新工程表 福島第1原発1~4号機
東京電力の西沢俊夫社長は13日、福島民友新聞社のインタビューに応じ、福島第1原発1~4号機の廃炉に向けた中長期的な視点の新たな工程表を年内に公表する考えを示した。政府と東電は事故の収束に向けて現在実行中の工程表で、原子炉の冷温停止を目指すステップ2の終了を16日に発表する方針で、事故収束作業は原子炉を冷やし、安定させる初期の工程から、最終目標である廃炉に向けた具体的な工程に移る。
西沢社長は新たな工程表について「ステップ2を終えた場合、中長期的なロードマップを年内に出す」と説明。廃炉までには「30年以上」と言われる収束作業となるが、「10年、20年かかる仕事で、国と一緒に取り組まなければならない。そうしなければ福島県の方々に責任を取ったことにはならない。それだけは肝に銘じている」と述べた。(福島民友)
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東電が「福島県の方々に責任」を取るとは、賠償・補償問題に加え、原発全廃の県議会の決議が上がったことを深刻に受け止め、第一・第二原発の廃炉を社として明確に打ち出すことにあるのではないか?
それは国についても同じはずだ。ところが、国に至っては何をどうしたいのか、未だ何もはっきりしていないのが実情だ。
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・「避難指示」解除へ 第2原発8キロ圏内の4町
経済産業省原子力安全・保安院は13日、東京電力福島第2原発から8キロ圏内の広野、楢葉、富岡、大熊4町に措置している避難指示を解除する方針を関係市町村に伝えた。
関係者によると、政府は年内に福島第1原発から20キロ圏内の警戒区域と計画的避難区域見直しの考え方を示すとみられる。ただ、警戒区域は、福島第2原発の避難指示区域と重なっていることから、警戒区域の見直しに先行して第2原発の避難指示を解除することで、見直しに向けた環境を整える考えとみられる。
警戒区域などの見直しについて政府は、福島第1原発事故収束の工程表ステップ2の完了を受けて実施する方針。年間の積算放射線量に応じて50ミリシーベルト以上を「長期帰還困難」、20~50ミリシーベルト未満を「居住制限」、20ミリシーベルト未満を「解除準備」の3区域に再編する方向で関係自治体と調整しているもようで、見直しの考え方について年内に明らかにする見通し。(福島民友)
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野田政権、というより経産省は、第二原発8キロ圏内の「避難区域」解除の方針を打ち出した。けれども私たちは、「警戒区域」の「見直し」を行うために、福島第2原発の「避難指示区域」を解除するという、この政府方針が妥当か否かとともに、これが今後、第二原発の存続(再稼働か、それとも廃炉か)問題とどのように関係し、発展して行くか、その観点を含めて考える必要に迫られている。
国と東電は、とにもかくにも、何が何でも、16日に「冷温停止」宣言を発し、それに合わせて新廃炉工程表も公表するとしている。福島県議会決議を受け、今や問題の焦点は、「冷温停止」の政治セレモニーにあるのではなく、その「宣言」の中で5、6号機と第二原発の廃炉問題がどのように扱われるか、に移っているのである。 国がその結論を先延ばしにする「方針」だけは明らかになっている。しかしその先延ばしを許さない福島県そのものと私たちの行動が問われているのである。
参考サイト
⇒「東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況」(東京電力)
「東電は信用できない」と言ってしまえば身も蓋もない。しかし東電とは、「第一原発から放出される放射性物質は東電の「所有物」ではない、だから除染の責任を社として負う義務はない」と平気で言ってのける会社である。5、6号機を「定期検査中・冷温停止」とし、第二原発を「正常」な状態にあるとする東電の「報告」は、何度も眉に唾を付けて読む必要があるのではないか。
この間、5、6号機の(再)臨界の「可能性」や第二原発も相当のダメージを受けたという情報が飛び交ってきたが、非常に不当なことに東電のデータに問題がある場合、その「立証責任」は私たちの側にあることを再確認しておこう。二日後に迫った「冷温停止」政治宣言の「非妥当性」をめぐる立証責任とともに。
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・基準見えず県民困惑 23市町村の住民賠償 相談急増
■窓口に電話次々
東京電力福島第一原発事故で、原子力損害賠償紛争審査会が県内23市町村の住民に賠償金を支払う新たな指針を示して13日で1週間が過ぎた。東電からはいまだ、詳細な基準が示されず、県民や自治体に疑問や戸惑いが広がる。対象は全県民の4分の3に当たる150万人。支払いが行われるとしても作業は膨大だ。東電は手続きなどで県内自治体の支援を求めているが、その姿勢に批判が集まっている。先行きは不透明で、賠償金が届く見通しはまるで立っていない。
「住民票を移していないが、対象区域内に住んでいる」「18歳以下とは、いつの時点か」「里帰り出産で事故当時は対象区域内にいた」
東京電力福島第一原発事故に伴う県の損害賠償関係の相談窓口。指針が発表された後、電話が急増した。発表から2日後の8日はそれまでの5倍の220件を数えた。その後も1日80件程度が寄せられている。
賠償の対象区域となった23市町村の住民は、賠償の基準や手続きを知りたがる。しかし、窓口担当者は「基準は明確になっていません。判明したら速やかに情報提供します」と繰り返すのが精いっぱいだ。
単身赴任や長期の出張で原発事故直後、一時的に対象区域内に居合わせた人はどう扱うのか、区域外に引っ越した住民が当時居住していた実績をどう確認するか、何も判断は示されない。18歳以下の子どもは、いつの時点を年齢の基準日とするのかも不明確だ。「東電は本当に支払う気があるのだろうか」。福島市で2人の幼児を育てる主婦(36)は日に日に疑問が膨らんでいる。
■反応冷ややか
150万人が対象となる賠償指針の決定を受け、東電の西沢俊夫社長は「国や自治体など関係機関のご指導、ご支援を頂きたい」と行政に頼る姿勢をあらためて示している。
しかし、県と県内市町村の反応は冷ややかだ。約33万人が対象となる郡山市。早急に小中学校の校庭の表土除去や生活圏の除染を実施することを余儀なくされている。市原子力災害対策直轄室の担当者は「最初から自治体に協力を求める姿勢は疑問だ」と批判する。
現段階で支援の要請は受けていないが、まずは東電が自ら行動することが筋だとみている。「他の市町村と足並みをそろえる必要があるが、事故を起こした当事者が責任を持って手続きも行うべき」と厳しく指摘した。
一方、比較的に放射線量の高い地点を抱え一部住民が避難している福島市の担当者は、「住民本位に考えれば、何らかの対応を市として取らざるを得ない」とする。損害賠償の取り組みの主体はあくまで東電だが、全ての市民に確実に賠償金は届けなければならない。相談窓口の設置が必要になるとみている。原発事故の後始末の業務が確実にまた一つ加わる。
県原子力損害対策課は県民の請求手続きの負担を減らす方法に頭を悩ます。「ともかく早急に東電や市町村と対応を協議するしかない」と東電の基準が一日も早く示されることを待っている。(福島民報)
・・
福島第一5、6号機と第ニ原発の廃炉問題は、東電による賠償・補償問題に深く影響を与える問題である。逆に言えば、東電がどこまで賠償・補償に責任を取る意思があるか、そのことが廃炉問題に直結しているのである。
現在、東電は前者を曖昧にする無責任と、後者を前提にしないという二重の無責任を犯している。これに対し、国は両方を先送りにするという無責任を犯している。東電は何が何でも社としての延命をはかることを中心に考え、国は結論を先送りにしながらも、その方向で「調整」することを考えている・・・。
被災者・被曝者にとっても私たちにとっても、今年の冬は去年にも増して、長くて寒い冬になりそうだ。
・・・
・玄海原発、耐震安全性は「妥当」 原子力保安院
経済産業省原子力安全・保安院は13日、九州電力がデータ入力ミスを受けて実施した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の耐震安全性評価の再点検結果について「妥当」と判断した。玄海1、2号機と川内原発1、2号機(鹿児島県)の再点検結果も妥当とした。
これを受け、九電は再稼働に必要なストレステストの1次評価作業をほぼ終えている玄海2、3号機と川内1号機のいずれかの1次評価結果を近く国に提出する。ただ、「やらせメール」や2005年のプルサーマル公開討論会の「仕込み質問」などの問題が決着しておらず、再稼働に理解を得るのは難しい情勢となっている。
耐震安全性評価については、7月に玄海3、4号機で解析データの入力ミスが4カ所判明。玄海1、2号機では再点検で15カ所の転記ミスが見つかった。九電は正しい数値で計算しても「安全性に影響はない」とした評価結果を10月末と11月下旬に保安院に提出していた。
定期検査で停止している原発の再稼働条件となる1次評価の結果について、九電は「準備が整い次第、提出する」としている。具体的な提出日やどの原発から提出するかは明らかにしていない。
年内をめどに提出を求められていた全原発対象の2次評価については「年末までの提出は難しい」としており、年明け以降になるとみられる。 (佐賀新聞)
・・・
・住民投票の法制化見送りへ 地方側の意向受け後退
地方制度調査会(会長・西尾勝東大名誉教授)は15日の総会で、政府が国会提出を見合わせている地方自治法改正案をめぐり、全国知事会など地方6団体が「自治体行政を混乱させる」(???)と反対している住民投票の法制化と直接請求の対象拡大について、削除を求める意見をまとめた。
いずれも総務省が住民自治の強化に向け目玉と位置付けていたが「対象など詰めるべき論点がある」として見送りを求めた。政府は意見を踏まえて改正案を修正、来年の通常国会に提出するが、当初の狙いは後退が避けられない見通しだ。(共同)
↓
「調査会」で審議されてきた「住民投票制度の法制化」は、その対象が大型施設の建設問題等に限定されていたことを含め、「住民自治の強化」と言うには、あまりに是正・克服すべき課題が多いものである。
上の記事では何かしら総務省が「住民自治の強化」を考え、「調査会」の「意見」がそれに逆行するものであるかのように報じられているが、そのような分析はきわめて皮相的なものだと言わざるを得ない。
むしろこの「意見」は、たとえば原発を始めとする国家プロジェクトに対する(広域的)住民投票制度の導入がいかに国策遂行の障害となりえるかを考えてみればわかるように、「地域主権」=「住民主権」を骨抜きにしようとする中央官僚機構の思惑を反映したものと分析すべきである。
この問題は、いつか機会を見つけて改めて論じることにしたい。
・出先機関に国の関与温存案 国交省、焼け太り狙う?
原則廃止して地方に移すことが決まっている国の出先機関について、国土交通省が国の関与を温存する案を作った。新しい体制を設けて、都道府県の権限も吸収する内容。野田政権が年内にまとめる出先機関改革の方針への反映をめざす。
国交省案によると、全国を複数のブロックに分けて「広域的実施体制」を新設。各ブロックには、域内の自治体とは別の「長」を置くことを法律で義務づけ、議会も設ける。「長」は個別の選挙で選ばれた自治体の首長から独立し、利害関係を調整する。また、議会によるチェック機能で透明性を高めるという。
この体制を受け皿に、国交省地方整備局や経済産業省経済産業局など国の出先機関の権限や財源を移す。そのうえで「都道府県から同種の事務・権限を全て持ち寄り、一体的に処理」として、地方の権限も新しい体制に集める。さらに「国交相が整備計画決定や予算措置するなど関与」とも明記し、国の介入を認める。
この案は、出先機関改革の具体案を練っている「アクション・プラン推進委員会」で、19日に検討される。地域主権戦略会議が年末にまとめる改革の方針に反映されれば、国の権限や予算を自治体に移す地域主権の考えに逆行することになる。新たな体制を立ち上げることで、職員の人員削減の目的も果たせず、焼け太りになる可能性もある。 (12/18,朝日)
・・・
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?」
⇒「原発再稼働・工事再開・新規建設における自治体の責任を問う、何度でも」
「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答: 解説
「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答: 解説
『脱「国際協力」――開発と平和構築を超えて』の版元新評論のブログに、「日本の「国際協力」と人道的介入」(11/20, 法政大学)で配布されたレジュメと資料が公開された。
その中から「「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答」をここに転載するにあたり、若干の補足的説明を加え、解説に代えたい。
1
まず最初に、多忙な中、質問状に対して回答してくれたHRW(本部)の担当者、ジェームズ・ロス氏への感謝を改めて述べておかねばならない。
国際的に言えば、論争という形式を伴ったR2Pをめぐる議論は、この10年間にわたり展開されてきたが、日本においてはそれがなかった。日本の大学研究者による「R2P研究」なるものは、その質的レベルにおいて、単なる「R2Pの紹介」やその「意義」を追認する以上の、クリティカルなものではなかったのである。
これについては、日本における「国際法」「国連研究」「国際関係」論等といった分野が、「現状維持」的であるという意味において、元来きわめて「保守」的な分野(=国連、政府・外務省追随型)であることに加え、国公立大学の法人化以降、ますますその傾向が強まっていること、大学研究者の「自主規制」が進行してきたなどがその要因として指摘できる。
国連が「規範化」し、欧米など世界の「主要国」が推進し、日本も承認してしまったR2Pを、そこにどのような「隠れた狙い」(hidden agenda)が存在するかまでを分析しながら、批判的に研究するという作業は、それ自体とても困難な営みである。
日本のアカデミズムにおけるこうした状況を、とりわけ若い研究者やNGOを含めた市民・社会組織体が乗り越え、すでに実行段階に突入しているR2Pをめぐる今後の活発な議論を切り開く一助として、この「質問状と回答」が少しでも寄与することが私たちの希望であり期待である。
なお、「質問状と回答」については、ジェームズ・ロス氏の回答が個々の質問に対する回答になっているかどうか、この点に特に留意しながら読者それぞれが判断を下されることを促したい。
また、東京オフィス代表の土井香苗氏に、ロス氏の回答に対するコメントと「質問4」に対する氏の見解を寄せて頂くように要請している(12月14日現在未着)。土井氏の回答が届き次第、氏の確認を得た上で、ロス氏の回答とともに上の資料に追加したいと考えている。
2
今後のR2P研究(批判的検討)に問われている諸課題
以下、順不同で列挙しておきたい。
1)、国家が「文民」を「保護する責任」を果たしていないと国家が判断する基準とNGOを含めた市民・社会組織体が判断する基準の差異性について。
これは「国益」「国策」を基準に政策立案・決定する国家(政府)と「市民社会」の「公共益」との差異性、および両者の間に横たわるその緊張関係(「利益相反」)をNGOや市民・社会組織がいかに考えるのか、という問題である。
2)、R2Pが現実政治に適用される場合と適用されない場合が存在する、いわゆる「二重基準」の解決策が存在するか否かという問題。
3)、さらに、R2Pが現実政治に適用される場合には、①「外交」を含めた非軍事的強制措置(経済制裁など)と②軍事的強制措置(武力行使)を二つの「柱」とされるが、ある国家に対する非軍事的および軍事的制裁措置は、国家による「組織的かつ計画的」な「人権侵害」の阻止を含めたR2Pの目的を実際に実現するか否かという問題。
4)、ある国の「人権侵害」を阻止するために、NGOを含めた市民・社会組織体が国家や国連安保理に対し、、①「外交」を含めた非軍事的強制措置(経済制裁など)と②軍事的強制措置(武力行使)が一体化したR2Pの実行を「提言」し、ロビーイングすることの是非について。
これは上の「1」と相即的な問題であるが、特にNGOや市民・社会組織の活動の「政治性」を考える上で避けられない問題である。
5)、NGOを含めた市民・社会組織体は、国家の軍隊を自らの目的達成のための「道具」として利用すべきか否か。 独自の戦略に基づき行動する/しないを自律的に決定する軍隊(正規軍)と「市民社会」との間の「利益相反」および緊張関係の問題である。
6)、R2Pの実行に伴う一般市民の犠牲に対し、誰が責任を取り補償・賠償するのか。その主体の明確化の問題。
7)、「リビア以後」における日本におけるR2P論は、米軍・NATO軍・カナダ軍等によるリビアに対する武力攻撃、および「人道に対する罪」の適用による「北朝鮮」に対する制裁強化に対していかなる立場を取るのか、この二つをめぐる論者の主体的判断が欠かせない。
つまり、意図する/しないにかかわらず、これら抜きの「R2P論」は思弁的な、ただの「おしゃべり」に終始せざるをえないことを踏まえる必要があるという点。
『脱「国際協力」――開発と平和構築を超えて』の版元新評論のブログに、「日本の「国際協力」と人道的介入」(11/20, 法政大学)で配布されたレジュメと資料が公開された。
その中から「「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答」をここに転載するにあたり、若干の補足的説明を加え、解説に代えたい。
1
まず最初に、多忙な中、質問状に対して回答してくれたHRW(本部)の担当者、ジェームズ・ロス氏への感謝を改めて述べておかねばならない。
国際的に言えば、論争という形式を伴ったR2Pをめぐる議論は、この10年間にわたり展開されてきたが、日本においてはそれがなかった。日本の大学研究者による「R2P研究」なるものは、その質的レベルにおいて、単なる「R2Pの紹介」やその「意義」を追認する以上の、クリティカルなものではなかったのである。
これについては、日本における「国際法」「国連研究」「国際関係」論等といった分野が、「現状維持」的であるという意味において、元来きわめて「保守」的な分野(=国連、政府・外務省追随型)であることに加え、国公立大学の法人化以降、ますますその傾向が強まっていること、大学研究者の「自主規制」が進行してきたなどがその要因として指摘できる。
国連が「規範化」し、欧米など世界の「主要国」が推進し、日本も承認してしまったR2Pを、そこにどのような「隠れた狙い」(hidden agenda)が存在するかまでを分析しながら、批判的に研究するという作業は、それ自体とても困難な営みである。
日本のアカデミズムにおけるこうした状況を、とりわけ若い研究者やNGOを含めた市民・社会組織体が乗り越え、すでに実行段階に突入しているR2Pをめぐる今後の活発な議論を切り開く一助として、この「質問状と回答」が少しでも寄与することが私たちの希望であり期待である。
なお、「質問状と回答」については、ジェームズ・ロス氏の回答が個々の質問に対する回答になっているかどうか、この点に特に留意しながら読者それぞれが判断を下されることを促したい。
また、東京オフィス代表の土井香苗氏に、ロス氏の回答に対するコメントと「質問4」に対する氏の見解を寄せて頂くように要請している(12月14日現在未着)。土井氏の回答が届き次第、氏の確認を得た上で、ロス氏の回答とともに上の資料に追加したいと考えている。
2
今後のR2P研究(批判的検討)に問われている諸課題
以下、順不同で列挙しておきたい。
1)、国家が「文民」を「保護する責任」を果たしていないと国家が判断する基準とNGOを含めた市民・社会組織体が判断する基準の差異性について。
これは「国益」「国策」を基準に政策立案・決定する国家(政府)と「市民社会」の「公共益」との差異性、および両者の間に横たわるその緊張関係(「利益相反」)をNGOや市民・社会組織がいかに考えるのか、という問題である。
2)、R2Pが現実政治に適用される場合と適用されない場合が存在する、いわゆる「二重基準」の解決策が存在するか否かという問題。
3)、さらに、R2Pが現実政治に適用される場合には、①「外交」を含めた非軍事的強制措置(経済制裁など)と②軍事的強制措置(武力行使)を二つの「柱」とされるが、ある国家に対する非軍事的および軍事的制裁措置は、国家による「組織的かつ計画的」な「人権侵害」の阻止を含めたR2Pの目的を実際に実現するか否かという問題。
4)、ある国の「人権侵害」を阻止するために、NGOを含めた市民・社会組織体が国家や国連安保理に対し、、①「外交」を含めた非軍事的強制措置(経済制裁など)と②軍事的強制措置(武力行使)が一体化したR2Pの実行を「提言」し、ロビーイングすることの是非について。
これは上の「1」と相即的な問題であるが、特にNGOや市民・社会組織の活動の「政治性」を考える上で避けられない問題である。
5)、NGOを含めた市民・社会組織体は、国家の軍隊を自らの目的達成のための「道具」として利用すべきか否か。 独自の戦略に基づき行動する/しないを自律的に決定する軍隊(正規軍)と「市民社会」との間の「利益相反」および緊張関係の問題である。
6)、R2Pの実行に伴う一般市民の犠牲に対し、誰が責任を取り補償・賠償するのか。その主体の明確化の問題。
7)、「リビア以後」における日本におけるR2P論は、米軍・NATO軍・カナダ軍等によるリビアに対する武力攻撃、および「人道に対する罪」の適用による「北朝鮮」に対する制裁強化に対していかなる立場を取るのか、この二つをめぐる論者の主体的判断が欠かせない。
つまり、意図する/しないにかかわらず、これら抜きの「R2P論」は思弁的な、ただの「おしゃべり」に終始せざるをえないことを踏まえる必要があるという点。
「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答
「保護する責任」(R2P)に関するヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)への質問状と回答
●質問作成:中野憲志(先住民族・第四世界研究、〈NGOと社会〉の会)
●回答者:ジェームズ・ロス(ヒューマン・ライツ・ウォッチ リーガル&ポリシーディレクター)
Q1 ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスによれば、「ヒューマン・ライツ・ウォッチは「保護する責任」(Responsibility to Protect=R2P)や(R2Pに基づき)安保理が決議を出すことには賛成していますが、今回のリビア武力介入そのものには立場はない(賛成もしない、反対もしない) というのが正確な立場」ということですが、説明を願います。
安保理がR2Pに基づきリビアへの武力攻撃決議を挙げることを支持しながら、実際に行われた武力攻撃そのものについて「賛成も反対もしない」というのは、非常に無責任であると思えるのですが。
J.R ご質問ありがとうございます。当団体および世界中で人権を伸長し保護するための当団体の活動に関心をもっていただき感謝します。たとえ貴殿が私たちのアプローチに賛同されないとしても、ヒューマン・ライツ・ウォッチの立場とその立場を支える根拠をご理解いただく上で、私の回答が役立てば幸いです。
「保護する責任」(R2P)や人道的介入という問題は、ヒューマン・ライツ・ウォッチがとりくもうとしている問題の中でも最も困難なものです。後述するようにヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの問題について一般的方針をもっていますが、それを実際に適用するのは抽象的に論じるよりもずっと難しいものです。他の大方の問題に比べ、これらの問題はしばしば当団体内で大きな議論になります。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの一般的立場は、赤十字国際委員会や国境なき医師団のような人道支援組織の立場と同様で、武力紛争状況においては中立を保つということです。一国もしくは複数の国が武力行使を決めた場合、ヒューマン・ライツ・ウォッチはそれに賛成も反対もしません。
私たちは、団体としての役割をもっともよく遂行できるのは、特定の武力行使が正しいかどうか、あるいは国連憲章に合致しているかどうかについて公に主張するよりも、戦闘における行動を監視し報告することであると考えます。それにより紛争当事者のどちらか一方に肩入れしていると思われることなく、両方の振る舞いについて報告することができます。また現地の調査スタッフが、特定の紛争当事者を支持しているという非難を受けずに済みます。
「保護する責任」は採択された当初から議論を呼んできました。国連にとって最も重要な課題の一つ――もっともよく知られた失敗でもあります――は世界各地の大量殺戮にどう対処するかというものです。
1999年の国連総会の演説において、当時のコフィ・アナン事務総長は「次世紀における安全保障理事会および国連全体にとっての主要な課題は、それがどこで起きようとも、大規模かつ体系だった人権侵害を許してはならないという原則の下に団結すること」であろうと述べました。
6年後の2005年世界サミットにおいて、世界各国の首脳は「ジェノサイド(集団殺害)、戦争犯罪、民族浄化、および人道に対する罪から人々を保護する責任」を認めることに合意しました。
「保護する責任」を認めることはしばしば、強制的人道的介入と同義であると誤って解釈されます。事実、「保護する責任」に含まれる広範な一連の行動の一方の極に軍事介入があります。世界サミットの成果文書は次のように述べています。
「国際社会は適切な外交的、人道的、その他の平和的手段を用いてこうした犯罪から人々を保護するべきである。ある国家がその国の市民を保護できない場合、もしくはまさにそうした犯罪の加害者である場合。国際社会は国連安全保障理事会を通じた集団的武力行使を含む、より強力な手段をとる用意がなければならない」。
このように、軍事力の行使は「保護する責任」の下活用できる行動の一つに過ぎず、必須というわけではなりません。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、関係国が「保護する責任」に関係する状況について指標を策定し、先に述べた一連の行動に意味を与えることが重要だと考えます。「保護する責任」をとるよう各国に求める際に、ヒューマン・ライツ・ウォッチはその活動使命の範囲内で、市民への脅威に対処するための一定の対応策――たとえば対象を絞った制裁や武器禁輸、その他の武力紛争に至らない措置――を提案しています。
リビアに関しては、同国の状況が切迫し、国際社会が戦争犯罪と人道に対する罪(カダフィ大佐はその部隊をベンガジの制圧に向けて進軍させ、ベンガジの一般市民を公然と脅かしていました)からリビアの市民を守るため行動を起こす必要があることから、私たちは国連安全保障理事会に「保護する責任」を行使するよう求めました。しかし、軍事介入を具体的に求めることはしませんでした。人道的介入の要請に関する団体内の規定(後述)を満たしていなかったからです。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで、一般市民が紛争当事者から重大なリスクにさらされている状況についてたびたび報告してきました。私たちは政策決定者や一般市民に私たちの懸念を伝えることが重要だと考えています。
たとえば、市民が神の抵抗軍から残虐な攻撃を繰り返し受けていたコンゴ民主共和国北部のケース、政府の支援を受けた民兵組織ジャンジャウィードが市民を脅かしていたダルフールのケースなどです。その両ケースで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは一般市民を保護するために必要な行動をとるよう国連に呼びかけました。
非軍事行動であれ軍事行動であれ、どのような行動が最善かを具体的に示したわけではありませんでしたが、たとえば、村人に携帯電話を提供したり、国連の軍用ヘリを増やしたりといった、保護の方法についての実践的な提案を試みました。たしかに、市民の保護と攻撃的な軍事作戦の区別はあいまいになる可能性があります――村人を攻撃から守るための部隊の配備は必ずしも軍事力の行使を必要とするわけではありませんが、行使される可能性があります。
Q2 1990年代初期のソマリアに対する介入以降、武力による「人道的」介入が成功したとヒューマン・ライツ・ウォッチが総括する事例はありますか? あれば、その根拠とともに日本のオーディエンスに説明してください。
Q3 人権尊重の名の下に行われるR2Pに基づく武力介入は、それ自体が戦争行為であり、大量難民の発生と非戦闘員の犠牲(多国籍軍、当該国家の軍隊、あるいは武装勢力によって)をもたらし、より人権状況を悪化させるというR2P批判に対してどう答えますか?
J.R この二つの質問はともに同じ一般的問題に関係するのでまとめてお答えします。そしてこの機会に、人道的介入に関するヒューマン・ライツ・ウォッチの立場を説明します(人権団体としては異例です)。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、重大な国際犯罪に対して各国が一連の行動をとる義務に焦点をあてる「保護する責任」の行使を求めることと、人道目的の同意を得ない軍事力の行使である「人道的介入」を求めることを区別しています。
人道的介入は定義上、より広範に悲惨な状況が起きているところで行われます。人道的介入は当該国の人々がすでに甚大な被害を被っている中で行われます。したがって、人道的介入が「成功」であるか否かを見極めるには、その介入が引き起こす損害と、介入しなかった結果として生じるであろう損害の両方を検討しなければなりません。
つまり、起きたことと起こらなかったことを比較することになります。したがって、個別の人道的介入について、そしてそれが「成功」したか否か――短期的には人命の損失を軽減したか、長期的にはより権利を尊重する政府の形成につながったか――について結論に至ることは極めて困難であり、そこにおいて意見の一致はほとんど見られないでしょう。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは個別の人道的介入を成功あるいは失敗と判断することはしません。ただし、少なくとも50万人が死亡したルワンダのジェノサイドや、ボスニアにおける大規模な「民族浄化」とジェノサイドなど、国際人道法に合致した迅速な人道的介入が、実際に起きた悲惨な人間の悲劇を軽減したであろうと思われる状況は存在すると考えます。
組織の方針の問題として、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、極めて限定的な状況下において、国際社会による人道的介入――市民の保護という一義的目的のための軍事力の行使――の提唱を検討します。戦争は悲惨な人命の損失を伴いますが、ジェノサイドや同様の体系だった殺戮を止めるまたは防止するためには、ときに軍事力の行使が正当化され得ると私たちは考えます。そのため、ヒューマン・ライツ・ウォッチはルワンダやボスニアで続いていたジェノサイドを止めるためなど、まれに軍事介入を支持してきました。
団体の方針として、ヒューマン・ライツ・ウォッチが人道的介入を支持するのは、ジェノサイドが実際に起きているまたは切迫している、あるいはそれに比肩する市民の大量殺戮が起きている場合に限られます。加えて、政治的、外交的、経済的その他の性格の手段を試みたが成功しなかった、または、そうした手段が現下のジェノサイドを止められると期待できる根拠がないという条件が必要です。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人道的介入を求めるにあたって、かかる軍事力の行使は国際法に則って行わなければならないことを明確にします。同様に、軍に対して国際人道法に基づくすべての義務に厳格に従うことを求め、すべての当事者が遵守しているかを監視し報告を行います。
Q4 日本国憲法は、国際紛争の武力による解決を否定しています。すなわち、日本の自衛隊が海外で武力行使することを禁止しています。このような国で活動する市民社会組織、NGOは、R2Pに対していかなる立場を取るべきだと考えますか。
J.R 各団体はもちろん、それぞれがもっとも納得できる立場をとるべきです。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「保護する責任」原則が、大規模な虐待が起きている当の国だけでなく、国連の全加盟国が一般市民への極めて重大な脅威を低減するための行動をとる必要を認めた重要なものだと考えます。前述のように「保護する責任」を「人道的介入」と同義に捉えてはなりません。
「保護する責任」は各国に対し、一連の手段をとるよう求めますが、そのうち軍事力の行使は最後の手段です。すべての組織は武力行使に反対する場合であっても、非軍事的制裁を求めることによって「保護する責任」を支持することができます。これには、重大かつ広範な人権侵害への非難を示す手段として、政府や個人との軍事、貿易、財政、経済その他の関係を制限することも含まれます。
私たちは対象を絞った(「スマート」)制裁を強く支持します。これはマイナスの人道的影響を最小限にとどめながらできるだけ効果を上げることを意図するものです。効果的で対象を絞った制裁の詳細な提案を国際社会に提示できる団体は、「保護する責任」の下の非軍事的手段の推進に寄与できるでしょう。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人権侵害を行う政府に対して日本政府が他国と協調して科す効果的な制裁を策定するにあたって、日本の諸団体とともに活動していきたいと思っています。
2011年10月25日
ジェームズ・ロス
(翻訳:〈NGOと社会〉の会)
●質問作成:中野憲志(先住民族・第四世界研究、〈NGOと社会〉の会)
●回答者:ジェームズ・ロス(ヒューマン・ライツ・ウォッチ リーガル&ポリシーディレクター)
Q1 ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスによれば、「ヒューマン・ライツ・ウォッチは「保護する責任」(Responsibility to Protect=R2P)や(R2Pに基づき)安保理が決議を出すことには賛成していますが、今回のリビア武力介入そのものには立場はない(賛成もしない、反対もしない) というのが正確な立場」ということですが、説明を願います。
安保理がR2Pに基づきリビアへの武力攻撃決議を挙げることを支持しながら、実際に行われた武力攻撃そのものについて「賛成も反対もしない」というのは、非常に無責任であると思えるのですが。
J.R ご質問ありがとうございます。当団体および世界中で人権を伸長し保護するための当団体の活動に関心をもっていただき感謝します。たとえ貴殿が私たちのアプローチに賛同されないとしても、ヒューマン・ライツ・ウォッチの立場とその立場を支える根拠をご理解いただく上で、私の回答が役立てば幸いです。
「保護する責任」(R2P)や人道的介入という問題は、ヒューマン・ライツ・ウォッチがとりくもうとしている問題の中でも最も困難なものです。後述するようにヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの問題について一般的方針をもっていますが、それを実際に適用するのは抽象的に論じるよりもずっと難しいものです。他の大方の問題に比べ、これらの問題はしばしば当団体内で大きな議論になります。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの一般的立場は、赤十字国際委員会や国境なき医師団のような人道支援組織の立場と同様で、武力紛争状況においては中立を保つということです。一国もしくは複数の国が武力行使を決めた場合、ヒューマン・ライツ・ウォッチはそれに賛成も反対もしません。
私たちは、団体としての役割をもっともよく遂行できるのは、特定の武力行使が正しいかどうか、あるいは国連憲章に合致しているかどうかについて公に主張するよりも、戦闘における行動を監視し報告することであると考えます。それにより紛争当事者のどちらか一方に肩入れしていると思われることなく、両方の振る舞いについて報告することができます。また現地の調査スタッフが、特定の紛争当事者を支持しているという非難を受けずに済みます。
「保護する責任」は採択された当初から議論を呼んできました。国連にとって最も重要な課題の一つ――もっともよく知られた失敗でもあります――は世界各地の大量殺戮にどう対処するかというものです。
1999年の国連総会の演説において、当時のコフィ・アナン事務総長は「次世紀における安全保障理事会および国連全体にとっての主要な課題は、それがどこで起きようとも、大規模かつ体系だった人権侵害を許してはならないという原則の下に団結すること」であろうと述べました。
6年後の2005年世界サミットにおいて、世界各国の首脳は「ジェノサイド(集団殺害)、戦争犯罪、民族浄化、および人道に対する罪から人々を保護する責任」を認めることに合意しました。
「保護する責任」を認めることはしばしば、強制的人道的介入と同義であると誤って解釈されます。事実、「保護する責任」に含まれる広範な一連の行動の一方の極に軍事介入があります。世界サミットの成果文書は次のように述べています。
「国際社会は適切な外交的、人道的、その他の平和的手段を用いてこうした犯罪から人々を保護するべきである。ある国家がその国の市民を保護できない場合、もしくはまさにそうした犯罪の加害者である場合。国際社会は国連安全保障理事会を通じた集団的武力行使を含む、より強力な手段をとる用意がなければならない」。
このように、軍事力の行使は「保護する責任」の下活用できる行動の一つに過ぎず、必須というわけではなりません。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、関係国が「保護する責任」に関係する状況について指標を策定し、先に述べた一連の行動に意味を与えることが重要だと考えます。「保護する責任」をとるよう各国に求める際に、ヒューマン・ライツ・ウォッチはその活動使命の範囲内で、市民への脅威に対処するための一定の対応策――たとえば対象を絞った制裁や武器禁輸、その他の武力紛争に至らない措置――を提案しています。
リビアに関しては、同国の状況が切迫し、国際社会が戦争犯罪と人道に対する罪(カダフィ大佐はその部隊をベンガジの制圧に向けて進軍させ、ベンガジの一般市民を公然と脅かしていました)からリビアの市民を守るため行動を起こす必要があることから、私たちは国連安全保障理事会に「保護する責任」を行使するよう求めました。しかし、軍事介入を具体的に求めることはしませんでした。人道的介入の要請に関する団体内の規定(後述)を満たしていなかったからです。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで、一般市民が紛争当事者から重大なリスクにさらされている状況についてたびたび報告してきました。私たちは政策決定者や一般市民に私たちの懸念を伝えることが重要だと考えています。
たとえば、市民が神の抵抗軍から残虐な攻撃を繰り返し受けていたコンゴ民主共和国北部のケース、政府の支援を受けた民兵組織ジャンジャウィードが市民を脅かしていたダルフールのケースなどです。その両ケースで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは一般市民を保護するために必要な行動をとるよう国連に呼びかけました。
非軍事行動であれ軍事行動であれ、どのような行動が最善かを具体的に示したわけではありませんでしたが、たとえば、村人に携帯電話を提供したり、国連の軍用ヘリを増やしたりといった、保護の方法についての実践的な提案を試みました。たしかに、市民の保護と攻撃的な軍事作戦の区別はあいまいになる可能性があります――村人を攻撃から守るための部隊の配備は必ずしも軍事力の行使を必要とするわけではありませんが、行使される可能性があります。
Q2 1990年代初期のソマリアに対する介入以降、武力による「人道的」介入が成功したとヒューマン・ライツ・ウォッチが総括する事例はありますか? あれば、その根拠とともに日本のオーディエンスに説明してください。
Q3 人権尊重の名の下に行われるR2Pに基づく武力介入は、それ自体が戦争行為であり、大量難民の発生と非戦闘員の犠牲(多国籍軍、当該国家の軍隊、あるいは武装勢力によって)をもたらし、より人権状況を悪化させるというR2P批判に対してどう答えますか?
J.R この二つの質問はともに同じ一般的問題に関係するのでまとめてお答えします。そしてこの機会に、人道的介入に関するヒューマン・ライツ・ウォッチの立場を説明します(人権団体としては異例です)。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、重大な国際犯罪に対して各国が一連の行動をとる義務に焦点をあてる「保護する責任」の行使を求めることと、人道目的の同意を得ない軍事力の行使である「人道的介入」を求めることを区別しています。
人道的介入は定義上、より広範に悲惨な状況が起きているところで行われます。人道的介入は当該国の人々がすでに甚大な被害を被っている中で行われます。したがって、人道的介入が「成功」であるか否かを見極めるには、その介入が引き起こす損害と、介入しなかった結果として生じるであろう損害の両方を検討しなければなりません。
つまり、起きたことと起こらなかったことを比較することになります。したがって、個別の人道的介入について、そしてそれが「成功」したか否か――短期的には人命の損失を軽減したか、長期的にはより権利を尊重する政府の形成につながったか――について結論に至ることは極めて困難であり、そこにおいて意見の一致はほとんど見られないでしょう。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは個別の人道的介入を成功あるいは失敗と判断することはしません。ただし、少なくとも50万人が死亡したルワンダのジェノサイドや、ボスニアにおける大規模な「民族浄化」とジェノサイドなど、国際人道法に合致した迅速な人道的介入が、実際に起きた悲惨な人間の悲劇を軽減したであろうと思われる状況は存在すると考えます。
組織の方針の問題として、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、極めて限定的な状況下において、国際社会による人道的介入――市民の保護という一義的目的のための軍事力の行使――の提唱を検討します。戦争は悲惨な人命の損失を伴いますが、ジェノサイドや同様の体系だった殺戮を止めるまたは防止するためには、ときに軍事力の行使が正当化され得ると私たちは考えます。そのため、ヒューマン・ライツ・ウォッチはルワンダやボスニアで続いていたジェノサイドを止めるためなど、まれに軍事介入を支持してきました。
団体の方針として、ヒューマン・ライツ・ウォッチが人道的介入を支持するのは、ジェノサイドが実際に起きているまたは切迫している、あるいはそれに比肩する市民の大量殺戮が起きている場合に限られます。加えて、政治的、外交的、経済的その他の性格の手段を試みたが成功しなかった、または、そうした手段が現下のジェノサイドを止められると期待できる根拠がないという条件が必要です。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人道的介入を求めるにあたって、かかる軍事力の行使は国際法に則って行わなければならないことを明確にします。同様に、軍に対して国際人道法に基づくすべての義務に厳格に従うことを求め、すべての当事者が遵守しているかを監視し報告を行います。
Q4 日本国憲法は、国際紛争の武力による解決を否定しています。すなわち、日本の自衛隊が海外で武力行使することを禁止しています。このような国で活動する市民社会組織、NGOは、R2Pに対していかなる立場を取るべきだと考えますか。
J.R 各団体はもちろん、それぞれがもっとも納得できる立場をとるべきです。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「保護する責任」原則が、大規模な虐待が起きている当の国だけでなく、国連の全加盟国が一般市民への極めて重大な脅威を低減するための行動をとる必要を認めた重要なものだと考えます。前述のように「保護する責任」を「人道的介入」と同義に捉えてはなりません。
「保護する責任」は各国に対し、一連の手段をとるよう求めますが、そのうち軍事力の行使は最後の手段です。すべての組織は武力行使に反対する場合であっても、非軍事的制裁を求めることによって「保護する責任」を支持することができます。これには、重大かつ広範な人権侵害への非難を示す手段として、政府や個人との軍事、貿易、財政、経済その他の関係を制限することも含まれます。
私たちは対象を絞った(「スマート」)制裁を強く支持します。これはマイナスの人道的影響を最小限にとどめながらできるだけ効果を上げることを意図するものです。効果的で対象を絞った制裁の詳細な提案を国際社会に提示できる団体は、「保護する責任」の下の非軍事的手段の推進に寄与できるでしょう。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人権侵害を行う政府に対して日本政府が他国と協調して科す効果的な制裁を策定するにあたって、日本の諸団体とともに活動していきたいと思っています。
2011年10月25日
ジェームズ・ロス
(翻訳:〈NGOと社会〉の会)
2011年12月12日月曜日
原発災害・復興支援・NGO~現場の活動を通してみえてきたもの、その成果と課題
シンポジウム「原発災害・復興支援・NGO~現場の活動を通してみえてきたもの、その成果と課題」(再掲)
■日時: 12月17日(土)午後1時半―5時半
■場所: 明治学院大学白金校舎本館2301教室
東京都港区白金台1-2-37(地下鉄白金台・白金高輪駅下車徒歩約7分)
地図⇒http://www.meijigakuin.ac.jp/access/
■参加費: 500円(明治学院大学学生は無料)
■共催: 〈NGOと社会〉の会/明治学院大学国際平和研究所(PRIME)
■協力: FoE Japan/子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(子ども福島)
プログラム:
■パネリストからの報告・提起
●「放射能汚染対策と脱原発のとりくみ」
満田 夏花(FoE Japan)
●「福島の現状と行動の訴え」
吉野 裕之(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(子ども福島))【避難・疎開・保養班】
●「いわき市での復興支援活動から見えてきたもの」
小松 豊明(シャプラニール震災救援活動担当)
●「JVCの福島支援活動と震災後復興支援について」
谷山 博史(日本国際ボランティアセンター=JVC代表理事)
■コメント
猪瀬 浩平(明治学院大学国際平和研究所所員)
原田 麻以(明治学院大学国際平和研究所研究員/ココルーム東北ひとり出張所)
■質疑応答・討論
■コーディネータ
藤岡美恵子(<NGOと社会>の会/法政大学非常勤講師)
【お申込み・お問合せ】
準備のため、できるだけ事前にお申込み下さい。当日参加も可能です。メールまたはFAXにて、件名に「12/17原発シンポ申込み」とご記入の上、お名前、ご所属(または学籍番号)、連絡先をお伝え下さい。
明治学院大学国際平和研究所
E-mail: prime@prime.meijigakuin.ac.jp
TEL:03-5421-5652 FAX: 03-5421-5653
・・・
・除染の作業員死亡=「被ばく無関係」モデル地区で―福島
政府の原子力災害現地対策本部は12日、福島県伊達市で日本原子力研究開発機構が実施中の除染モデル事業に従事していた建設会社の男性作業員(60)が死亡したと発表した。原子力機構は死因を明らかにしていないが、被ばくとの関係はないとしている。
国などの除染事業で作業員が亡くなったのは初めて。 男性は12日午後1時ごろ、同市霊山町下小国のモデル地区で、休憩中のトラック内で心肺停止状態で見つかり、約1時間後に病院で死亡が確認された。この日は午前10時から正午まで、マスクを着けて側溝の土砂を撤去していた。重労働ではなかったという。 下小国地区は6月末、放射線量が局地的に高いとして特定避難勧奨地点に指定された。原子力機構は一部地域をモデル事業の対象とし、同日から除染作業を始めていた。(時事)
・【各地の放射線量】東北の一部で上昇
東北、関東各都県で10日午前9時から12日午前9時に観測された最大放射線量は9~10日に比べ、東北の一部で上昇し、ほかは低下した場所が多かった。文部科学省の集計によると、青森が毎時0・057マイクロシーベルト、秋田が0・050マイクロシーベルトでそれぞれ上昇。福島は0・970マイクロシーベルトで横ばいだった。 東京電力福島第1原発の北西約30キロの福島県浪江町で11日午前10時3分に14・6マイクロシーベルトだった。(共同)→東北各地で放射線量が上昇していても、「冷温停止」宣言?
・セシウム飛散は県全域に 文科省が詳細地図作製
文部科学省は10日までに、東京電力福島第1原発事故による広範囲な放射能汚染の状況を、従来よりも詳細に表した地図を作製した。外部被ばくや農産物の栽培などに長期的に影響するとみられる地表の放射性セシウム量を見ると、原発から北東方向の汚染地帯にとどまらず、中通りの全域、さらに会津地域にまで広く放射性セシウムが降下した状況が分かる。
文科省の原子力損害賠償審査会は自主避難と精神的損害の賠償指針で、県南や会津地域を除外したが、これら地域も汚染が無視できない状況だ。 地図は、文科省のホームページに公開している。地上1メートルの放射線量の概要なども分かる。地区名が分かる範囲にまで拡大できるのが大きな特徴。(福島民友)
・本県への避難者、増加傾向続く 9日現在で7095人に
東日本大震災の発生から11日で9カ月。福島県など被災地から本県への避難者数は、県によると9日現在、7095人に上る。福島市や郡山市などからの避難者が増加する傾向が続いており、東京電力福島第1原発事故による放射性物質への不安が広がっているためとみられる。
避難者数は11月25日までの12週連続で増加。その後の2週は、ほぼ横ばいとなっている。(新潟日報)
・被災3県41校が仮設校舎で授業 文科省調査
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の公立小中高校などのうち、41校が仮設校舎を使い、106校が他校や公民館で授業をしていることが12日、文部科学省の調査(10月1日現在)で分かった。東京電力福島第1原発事故の警戒区域では11校、計画的避難区域では4校が休校中。 調査対象は3県の公立小中高校と特別支援学校計2278校。同省は6月にも同様の調査をしたが、公表は初めて。
仮設校舎は岩手5校、宮城9校、福島27校で設置。うち福島の8校は隣接自治体などに建設した。他の施設を借りているのは岩手19校、宮城42校、福島45校だった。(共同)
・被災地に冬の悩み 遠距離通勤負担、対策に苦心
本格的な冬を迎え、県内の老人介護施設などでは現場の職員不足に加え、道路の凍結、積雪による通勤環境の悪化で、職員の負担増が心配されている。飯舘村の特別養護老人ホームには102人が入所しているが、運営する社会福祉法人の職員は放射能の影響などで3割以上が戻らず、介護に当たる職員らは計画的避難区域のため約1時間かけて村外から通勤している。一方、福島市やいわき市小名浜などで今季最低気温を記録した10日、仮設住宅群によっては除雪用具がまだそろっていないことも判明、道路管理を含め、行政の冬対策の充実が求められている。
東京電力福島第1原発事故で村全体が計画的避難区域に指定された飯舘村の公共施設集約地域にある、いいたて福祉会「いいたてホーム」。職員は約140人から約90人に減少。特に介護職員は51人から45人、看護職員は8人から5人に減少した。職員の避難先は福島市の31人を最高に、県北、相馬地区が大半を占める。入所者の生活を支える仕事上、切れ目ない対応が求められ、早朝勤務の場合、前泊する職員もいるという。(福島民友)
・・・
・敦賀原発1号機でぼや 放射能漏れはなし
12日午後7時45分ごろ、福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発1号機で、放射線管理区域内にある廃棄物処理建屋の電源盤から火が出ているのを運転員が見つけた。運転員が消火器で消し止めた。周辺への放射能漏れはないという。
県原子力安全対策課などによると、13日から予定していた電源の点検に備え、運転員が電源盤で電気系統の切り替え操作をしたところ、電源盤から火が出たという。 同原発では昨年末から火災が3件相次いだ。地元の敦賀美方消防組合は10月17日に厳重注意をしたうえで報告書の提出を求め、同原発は11月30日、防火対策の強化などをうたった報告書を提出したばかりだった。(朝日、高橋孝二)
⇒「自衛隊の「国際平和協力」と「保護する責任(R2P)」を更新
■日時: 12月17日(土)午後1時半―5時半
■場所: 明治学院大学白金校舎本館2301教室
東京都港区白金台1-2-37(地下鉄白金台・白金高輪駅下車徒歩約7分)
地図⇒http://www.meijigakuin.ac.jp/access/
■参加費: 500円(明治学院大学学生は無料)
■共催: 〈NGOと社会〉の会/明治学院大学国際平和研究所(PRIME)
■協力: FoE Japan/子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(子ども福島)
プログラム:
■パネリストからの報告・提起
●「放射能汚染対策と脱原発のとりくみ」
満田 夏花(FoE Japan)
●「福島の現状と行動の訴え」
吉野 裕之(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(子ども福島))【避難・疎開・保養班】
●「いわき市での復興支援活動から見えてきたもの」
小松 豊明(シャプラニール震災救援活動担当)
●「JVCの福島支援活動と震災後復興支援について」
谷山 博史(日本国際ボランティアセンター=JVC代表理事)
■コメント
猪瀬 浩平(明治学院大学国際平和研究所所員)
原田 麻以(明治学院大学国際平和研究所研究員/ココルーム東北ひとり出張所)
■質疑応答・討論
■コーディネータ
藤岡美恵子(<NGOと社会>の会/法政大学非常勤講師)
【お申込み・お問合せ】
準備のため、できるだけ事前にお申込み下さい。当日参加も可能です。メールまたはFAXにて、件名に「12/17原発シンポ申込み」とご記入の上、お名前、ご所属(または学籍番号)、連絡先をお伝え下さい。
明治学院大学国際平和研究所
E-mail: prime@prime.meijigakuin.ac.jp
TEL:03-5421-5652 FAX: 03-5421-5653
・・・
・除染の作業員死亡=「被ばく無関係」モデル地区で―福島
政府の原子力災害現地対策本部は12日、福島県伊達市で日本原子力研究開発機構が実施中の除染モデル事業に従事していた建設会社の男性作業員(60)が死亡したと発表した。原子力機構は死因を明らかにしていないが、被ばくとの関係はないとしている。
国などの除染事業で作業員が亡くなったのは初めて。 男性は12日午後1時ごろ、同市霊山町下小国のモデル地区で、休憩中のトラック内で心肺停止状態で見つかり、約1時間後に病院で死亡が確認された。この日は午前10時から正午まで、マスクを着けて側溝の土砂を撤去していた。重労働ではなかったという。 下小国地区は6月末、放射線量が局地的に高いとして特定避難勧奨地点に指定された。原子力機構は一部地域をモデル事業の対象とし、同日から除染作業を始めていた。(時事)
・【各地の放射線量】東北の一部で上昇
東北、関東各都県で10日午前9時から12日午前9時に観測された最大放射線量は9~10日に比べ、東北の一部で上昇し、ほかは低下した場所が多かった。文部科学省の集計によると、青森が毎時0・057マイクロシーベルト、秋田が0・050マイクロシーベルトでそれぞれ上昇。福島は0・970マイクロシーベルトで横ばいだった。 東京電力福島第1原発の北西約30キロの福島県浪江町で11日午前10時3分に14・6マイクロシーベルトだった。(共同)→東北各地で放射線量が上昇していても、「冷温停止」宣言?
・セシウム飛散は県全域に 文科省が詳細地図作製
文部科学省は10日までに、東京電力福島第1原発事故による広範囲な放射能汚染の状況を、従来よりも詳細に表した地図を作製した。外部被ばくや農産物の栽培などに長期的に影響するとみられる地表の放射性セシウム量を見ると、原発から北東方向の汚染地帯にとどまらず、中通りの全域、さらに会津地域にまで広く放射性セシウムが降下した状況が分かる。
文科省の原子力損害賠償審査会は自主避難と精神的損害の賠償指針で、県南や会津地域を除外したが、これら地域も汚染が無視できない状況だ。 地図は、文科省のホームページに公開している。地上1メートルの放射線量の概要なども分かる。地区名が分かる範囲にまで拡大できるのが大きな特徴。(福島民友)
・本県への避難者、増加傾向続く 9日現在で7095人に
東日本大震災の発生から11日で9カ月。福島県など被災地から本県への避難者数は、県によると9日現在、7095人に上る。福島市や郡山市などからの避難者が増加する傾向が続いており、東京電力福島第1原発事故による放射性物質への不安が広がっているためとみられる。
避難者数は11月25日までの12週連続で増加。その後の2週は、ほぼ横ばいとなっている。(新潟日報)
・被災3県41校が仮設校舎で授業 文科省調査
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の公立小中高校などのうち、41校が仮設校舎を使い、106校が他校や公民館で授業をしていることが12日、文部科学省の調査(10月1日現在)で分かった。東京電力福島第1原発事故の警戒区域では11校、計画的避難区域では4校が休校中。 調査対象は3県の公立小中高校と特別支援学校計2278校。同省は6月にも同様の調査をしたが、公表は初めて。
仮設校舎は岩手5校、宮城9校、福島27校で設置。うち福島の8校は隣接自治体などに建設した。他の施設を借りているのは岩手19校、宮城42校、福島45校だった。(共同)
・被災地に冬の悩み 遠距離通勤負担、対策に苦心
本格的な冬を迎え、県内の老人介護施設などでは現場の職員不足に加え、道路の凍結、積雪による通勤環境の悪化で、職員の負担増が心配されている。飯舘村の特別養護老人ホームには102人が入所しているが、運営する社会福祉法人の職員は放射能の影響などで3割以上が戻らず、介護に当たる職員らは計画的避難区域のため約1時間かけて村外から通勤している。一方、福島市やいわき市小名浜などで今季最低気温を記録した10日、仮設住宅群によっては除雪用具がまだそろっていないことも判明、道路管理を含め、行政の冬対策の充実が求められている。
東京電力福島第1原発事故で村全体が計画的避難区域に指定された飯舘村の公共施設集約地域にある、いいたて福祉会「いいたてホーム」。職員は約140人から約90人に減少。特に介護職員は51人から45人、看護職員は8人から5人に減少した。職員の避難先は福島市の31人を最高に、県北、相馬地区が大半を占める。入所者の生活を支える仕事上、切れ目ない対応が求められ、早朝勤務の場合、前泊する職員もいるという。(福島民友)
・・・
・敦賀原発1号機でぼや 放射能漏れはなし
12日午後7時45分ごろ、福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発1号機で、放射線管理区域内にある廃棄物処理建屋の電源盤から火が出ているのを運転員が見つけた。運転員が消火器で消し止めた。周辺への放射能漏れはないという。
県原子力安全対策課などによると、13日から予定していた電源の点検に備え、運転員が電源盤で電気系統の切り替え操作をしたところ、電源盤から火が出たという。 同原発では昨年末から火災が3件相次いだ。地元の敦賀美方消防組合は10月17日に厳重注意をしたうえで報告書の提出を求め、同原発は11月30日、防火対策の強化などをうたった報告書を提出したばかりだった。(朝日、高橋孝二)
⇒「自衛隊の「国際平和協力」と「保護する責任(R2P)」を更新
〈リビア以後〉の「保護する責任」にNO!と言う責任(2)~「人権と人道の政治性」について
〈リビア以後〉の「保護する責任」にNO!と言う責任(2)~「人権と人道の政治性」について
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「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」が先週の土曜(12/10)から始まった(12/16まで)。これに合わせ、政府主催の「拉致シンポジウム」が昨日(12/11)、都内で開かれた。
・・
・拉致問題に関心を 「二度とこんなことが…」横田夫妻が訴え
きのうから始まった北朝鮮人権侵害問題啓発週間に合わせて、政府が主催する拉致問題のシンポジウムがきょう、都内で開かれました。 初めに山岡拉致問題担当大臣が「拉致問題が30年以上経過してもまだ解決できないのは大変申し訳ない」とした上で「北朝鮮に対話を促すよう政府一丸となって取り組んでいるところだ」(???)と発言しました。
しかし、シンポジウムの途中で山岡大臣や与野党の国会議員らが退席したほか、問題解決が進まない現状に拉致被害者の家族からは「口先だけでなく実行に移してほしい」と不満といら立ちの声が上がりました。 16人の拉致被害者の家族のうち、横田めぐみさんの母親の早紀江さんは「もう二度とこんなことが起きないよう、一刻も早くみんなが元気な間に、一目でも会って話ができる時間を与えていただきたい」と、今の思いを強く訴えました。
シンポジウムではこの他、韓国やアメリカの専門家らが講演し、国際連携の強化を呼び掛けました。(Tokyo MX)
・・
山岡拉致担当相の発言、「北朝鮮に対話を促すよう政府一丸となって取り組んでいる」というのは、まったくのデタラメである。が、それについては後で述べることにする。先に、上の政府主催の拉致シンポで「韓国やアメリカの専門家」がどのような「国際連携の強化」を「呼び掛け」たのかを確認しておこう。
・・
・拉致問題、専門家らが解決の必要性訴え
政府が毎年行っている北朝鮮の人権侵害啓発週間が10日から始まり、11日は韓国やアメリカの北朝鮮問題専門家らが拉致問題解決の必要性を訴えました。
「日本がただ待っているだけでは絶対に解決しません。北朝鮮との戦いなんです」(飯塚繁雄さん)
「対話の方式は水面下でもいい。問題解決の窓口は開いても、原則は絶対に譲らない」(聖学院大学 総合研究所客員教授 カン・インドク氏)
集会には韓国の統一部長官を務めたカン・インドク氏などが出席し、アメリカの北朝鮮専門家は「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべきだ」と述べました。
このところ、横田めぐみさんの生存に関する情報が相次いでいることについて、横田滋さん夫妻は「情報をきっかけに進展することを願っている」と訴えました。(TBS)
・・
「北朝鮮との戦い」「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべき」・・・。
これらの発言は、9月に行われた「北朝鮮人権国際会議」の「概括的意見」が、「狂気の独裁政権を倒し、民主化を推し進めるべき」というものであったのと同様に「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」の、きわめて露骨なその政治性を表現している。どのような「政治性」のことか。それを考えるためには、山岡拉致担当相の発言がいかにデタラメであるか、その説明から始めねばならない。
2
最も核心的な問題は、なぜ「拉致問題が30年以上経過してもまだ解決できない」(山岡拉致担当相)のか、ということだ。民主党政権と外務省は、本当に「拉致問題の解決」をめざしてきた/いると言えるのだろうか? この間の民主党政権および外務省の動向を分析する限り、めざしてきたとは言えないし、めざそうともしていないと言わざるを得ない。
その根拠は、民主党が政権交代を機に安倍政権期に打ち出された「対北朝鮮制裁外交」を政策的に見直すのではなく、その逆の方向へとさらにのめり込んでしまったことにある。民主党は、自公政権時代に制定された「北朝鮮人権法」に基づく日本独自の制裁の強化と、国連、二国間、多国間のチャンネルを通じた国際的な対北朝鮮包囲網の形成をもって北朝鮮を「締め上げる」ことを拉致問題解決の「対策」としてきたのである。
しかし、こんなことをいくら続けても、生存している拉致被害者は永遠に帰ってこないだろう。また、身元不明の拉致被害者の消息もつかめないだろう。そのことは2002年9月の「日朝平壌宣言」から来年で丸10年を迎えようとするのに、拉致解決の具体的進展が何も見られないことにも、はっきりと示されている。
自らの失策を決して認めようとしない外務省の独断的・独善的暴走と民主党政権の無策。拉致と核の解決を望む私たちはそれを見極め、現状からの方向転換を政府・外務省に促す「輿論」を興すことが必要だ。そうでなければ、米国・中国・ロシア・韓国・日本と同様に、深刻な「人権・人道問題」を抱える北朝鮮のそれも決して改善することはないだろう。
政府や国連に対する「政策提言」を通じ、国際人権の「普遍化」をめざすという「国際人権NGO」が果たすべき役割は、国家(連合)による武力行使や制裁政治と一体化した「保護する責任」を推進したり、「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべき」と言ってはばからないジンゴリスト(好戦主義者)と共に活動することではないはずだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(東京オフィス)の支持者を始め、アムネスティ・インターナショナル(日本)の理事・事務局・会員・支持者の人々は、ぜひともこのことを真剣に考えてほしい。
3
外務省の対北朝鮮「外交」の何が誤っているのか?
「自らの失策を決して認めようとしない外務省の独断的・独善的暴走と民主党政権の無策」を理解するためには、「日朝平壌宣言」からこの9年間におよぶ「六者協議」と日朝交渉の経緯を、時系列に沿って、押さえておく必要がある。
「日朝平壌宣言」とはどのような「宣言」なのか、またその後どういう経緯を辿り、今日に至っているのか、知らない人も多いと思う。下の資料にまず目を通してほしい。
・・参考資料
・「日朝平壌宣言」(2002, 9/17)
・「第4回六者会合に関する共同声明」(2005, 9/19)
・「第1回「日朝国交正常化のための作業部会」の概要」(2007, 3/8)
(政府・外務省の「北朝鮮による日本人拉致問題」「六者会合関連協議」より)
・・
外務省が今年の6月にまとめた、これまでの「拉致問題の解決その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する政府の取組についての報告」なる文書がある。上にあげた「日朝平壌宣言」「第四回六者会合の共同声明」「第1回「日朝国交正常化のための作業部会」の概要」を熟読するなら、この「報告」がはらむ致命的な問題が浮かび上がってくる。
「報告」は「1 総論」に続く、「2 拉致問題」の「2)六者会合及び日朝協議」の、「ア.六者会合」において、
○「平成17 (2005)年に採択された六者会合共同声明においては、拉致問題を含めた諸懸案事項を解決することを基礎として、日朝間の国交を正常化するための措置をとることが、六者会合の目標の一つとして位置づけられており、この共同声明の完全な実施が重要である」と述べ、
また、「イ. 日朝協議」において、
○「政府は、日朝関係について、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を実現するとの方針である。
これまで日朝間では、平成20 年に2回にわたり日朝実務者協議が開催され、拉致問題に関する全面的な調査の実施及びその具体的態様等につき日朝間で合意した。
しかし、同年9月に北朝鮮側から、引き続き日朝実務者協議の合意を履行する立場であるが、調査開始を見合わせるとの連絡があり、それ以降、政府は北朝鮮側に早期の調査開始を繰り返し要求しているが、北朝鮮はいまだに調査を開始していない。政府は、引き続き北朝鮮に対し、拉致問題を含む諸懸案の包括的解決に向けた具体的な行動を求めている」と書いている。
しかし、「日朝平壌宣言」「六者会合」の「共同声明」のどこを読んでも、そんなことはいっさい書かれていない。「拉致」の「ら」の字も出てこない。読者も自分の目で確認してほしい(「日朝実務者協議」とその行き詰まりについては後述する)。
この事実を事実として認めることが、拉致・核問題の解決と「米国・中国・ロシア・韓国・日本と同様に、深刻な「人権・人道問題」を抱える北朝鮮のそれ」を改善する出発点となる。
(つづく)
・・・
・武器輸出緩和へ新基準 人道目的や共同開発は「例外」
野田政権は、武器の輸出を原則として禁じる武器輸出三原則について、平和構築・人道目的の場合や、他国との共同開発・生産などを例外とする新たな基準をつくる方針を固めた。年内をめどに結論を出す。
政府関係者によると、官房長官談話などの形で、武器輸出の例外とする基準を示す。具体的には国連平和維持活動(PKO)や人道目的の支援をする際、武器とみなされる巡視艇の輸出などが想定されている。
また米以外の国との共同開発・生産を求める民主党政調の提言を踏まえ、対象国の範囲や開発・生産のあり方を検討する。これまでは米国とミサイル防衛(MD)の共同開発に乗り出した際、個別に三原則の「例外」とすることを官房長官談話で表明した。今後は新たな基準をつくり、紛争の助長や情報漏出につながらないよう秘密保持や第三国移転の一定のルールを設けた上で、戦闘機などハイテク兵器の共同開発・生産の拡大を認める方向だ。
民主党内外で議論を呼びそうな三原則自体の見直しや、輸出禁止の対象となる「武器」の定義の変更には踏み込まない。関係副大臣会合が開かれる12日にも方向性を打ち出す。
・空自次期主力戦闘機:政府16日にも安保会議で機種決定
航空自衛隊のF4戦闘機の後継となる次期主力戦闘機(FX)=約40機調達予定=の選定をめぐり、政府は16日にも安全保障会議を開き、機種を決定する方針だ。米国を中心に9カ国が共同開発中のF35(米ロッキード・マーチン社)が有力視されてきたが、開発が遅れ気味で、防衛省の求める16年度からの納入に間に合わない可能性が指摘されている。年末の12年度予算案編成に間に合わせなければならず、選定作業は大詰めを迎えた。
F35は敵のレーダーに探知されにくいステルス性能の高さが特徴。対立候補はすでに実戦配備されている2機種で、米国が開発したFA18(米ボーイング社)は米海軍の主力機としての実績があり、英独など欧州4カ国が共同開発したユーロファイター(英BAEシステムズ社など)は高い飛行性能などをアピールしている。
防衛省は9月に各機種の提案書提出を受け、関係各課長らで作る統合プロジェクトチームが、性能▽維持管理を含む経費▽国内企業の製造への参加▽納入後の支援態勢--の4分野で採点。一川保夫防衛相が近く岩崎茂航空幕僚長から結果報告を受け、中江公人事務次官をトップとする機種選定調整会議や政務三役会議を経て機種を内定。その後、安保会議で決定する予定だ。 野党は一川氏が辞任しないままFX選定を担当することに反発している。【毎日、朝日弘行、鈴木泰広】
・「パレスチナ人は創作」米大統領選共和党有力候補が発言
来年秋の米大統領選挙に向けた共和党の指名獲得争いでトップを走るギングリッチ元下院議長が「パレスチナ人は創作された人々で、実際はアラブ人だ」などと発言した。パレスチナの存在を根本から否定する内容で、米内外から批判が出ている。
ギングリッチ氏はユダヤ系ケーブルテレビの取材で、パレスチナ人について「歴史的にアラブ人コミュニティーの一部であり、どこにでも行くことができた」などと述べた。10日にあった共和党の討論会でも、「彼ら(パレスチナ人)はテロリストだ。学校でテロリズムを教えている」と発言。米政府の対パレスチナ支援への疑問も示した。
米メディアによると、パレスチナ自治政府のファイヤド首相は発言について「イスラエル人の最も過激な者もこんなに馬鹿げた言い方はしない」と反発。アラブ連盟の高官は「(在米ユダヤ人の)わずかな票を得るために、アメリカの国益を損なった」とし、中東和平の仲介役(???)である米国の立場への影響を懸念した。共和党の指名を争うライバルたちも「間違った理解だ」(ロムニー前マサチューセッツ州知事)と発言を問題視するコメントを出した。 (朝日)
・韓国:原発新設を許可 東部の2基、福島事故後初
韓国政府は(12月)2日、原子力安全委員会を開き、東部・蔚珍(ウルジン)で計画中の原子力発電所2基の建設を許可した。3月の東京電力福島第1原発事故後、初の建設許可。建設が完了した南部・釜山(プサン)と南東部・慶州(キョンジュ)の原発各1基の試運転の開始も許可した。 新設される2基は08年9月に許可申請があり審査が続いていた。加圧水型軽水炉で発電量は各140万キロワット。
韓国では原発21基が稼働し、総発電量の約3割を占める。李明博(イミョンバク)大統領は福島第1原発事故後も「わが国は100%エネルギー輸入国であり、原発を建設し続けねばならない」と推進政策を緩めなかった。また、韓国は国際原発商戦に参入しており、09年末にはアラブ首長国連邦(UAE)から原発を初受注。30年までに原発80基を輸出するという国家目標も掲げている。(毎日)
↓
・韓国、また原発停止 節電へ対策強化
韓国南部の釜山市にある古里原発3号機(出力95万キロワット)が14日、タービン発電機の過電圧を防止する装置が作動し、運転を停止した。知識経済省と事業者の「韓国水力原子力」が詳しい原因を調べているが、再稼働のめどは立っていない。
9月に大規模停電が起きた韓国では冬の電力需給が逼迫しているが、東部の蔚珍原発1号機(同)も13日に中央制御室の警報が鳴って運転を停止した。 韓国政府は今月5日から電気料金を平均4・5%値上げし、ネオン点灯を制限、違反企業には罰金も科す厳しい節電策を始めている。(ソウル共同)
・韓米原子力協定改定交渉が終了 隔たり埋まらず
2014年に満了する韓米原子力協定の改定に向けた4回目の交渉が8日に終了した。
交渉はソウルで6日から行われ、外交通商部の朴魯壁(パク・ノビョク)韓米原子力協定担当大使と米国務省のアインホーン調整官が首席代表として出席し、改定案の草案の内容について意見を交換した。特に、使用済み核燃料の再処理問題について集中的な論議が行われた。
韓国側は核燃料の保管施設が2016年に飽和状態になると予測しているため、使用済み核燃料の再処理を可能にすべきだと主張したのに対し、米国側は再処理による核兵器製造の可能性などを理由に慎重な立場を示し、双方の隔たりは埋まらなかった。 外交通商部当局者は「協定文を新しく書くための協議の過程なので、共通の理解や認識に基づいた技術的な条件など、さまざまな問題について意見を交換した」と述べた。 韓米は来年上半期(1~6月)に米国で5回目の交渉を行う予定だ。【ソウル聯合ニュース】
・韓国政府、軍事境界線隣接地域に電飾塔…北朝鮮強い反発
西部・東部・中部戦線の3カ所にクリスマスツリー状に電飾を施した塔が立てられる。
軍当局者は11日、「キリスト教団体の要請により西部戦線の愛妓峰(エギボン)と平和展望台、統一展望台にひとつずつクリスマスツリー型の電飾を施した塔を建てることにした」と明らかにした。
塔は23日から来年1月6日まで半月間点灯される。これに対し北朝鮮はこの日、対南宣伝用ウェブサイト「わが民族同士」を通じ、「塔を点灯することで予想できない結果がもたらされる場合、全面的責任は南側好戦者にある」と威嚇した。 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」が先週の土曜(12/10)から始まった(12/16まで)。これに合わせ、政府主催の「拉致シンポジウム」が昨日(12/11)、都内で開かれた。
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・拉致問題に関心を 「二度とこんなことが…」横田夫妻が訴え
きのうから始まった北朝鮮人権侵害問題啓発週間に合わせて、政府が主催する拉致問題のシンポジウムがきょう、都内で開かれました。 初めに山岡拉致問題担当大臣が「拉致問題が30年以上経過してもまだ解決できないのは大変申し訳ない」とした上で「北朝鮮に対話を促すよう政府一丸となって取り組んでいるところだ」(???)と発言しました。
しかし、シンポジウムの途中で山岡大臣や与野党の国会議員らが退席したほか、問題解決が進まない現状に拉致被害者の家族からは「口先だけでなく実行に移してほしい」と不満といら立ちの声が上がりました。 16人の拉致被害者の家族のうち、横田めぐみさんの母親の早紀江さんは「もう二度とこんなことが起きないよう、一刻も早くみんなが元気な間に、一目でも会って話ができる時間を与えていただきたい」と、今の思いを強く訴えました。
シンポジウムではこの他、韓国やアメリカの専門家らが講演し、国際連携の強化を呼び掛けました。(Tokyo MX)
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山岡拉致担当相の発言、「北朝鮮に対話を促すよう政府一丸となって取り組んでいる」というのは、まったくのデタラメである。が、それについては後で述べることにする。先に、上の政府主催の拉致シンポで「韓国やアメリカの専門家」がどのような「国際連携の強化」を「呼び掛け」たのかを確認しておこう。
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・拉致問題、専門家らが解決の必要性訴え
政府が毎年行っている北朝鮮の人権侵害啓発週間が10日から始まり、11日は韓国やアメリカの北朝鮮問題専門家らが拉致問題解決の必要性を訴えました。
「日本がただ待っているだけでは絶対に解決しません。北朝鮮との戦いなんです」(飯塚繁雄さん)
「対話の方式は水面下でもいい。問題解決の窓口は開いても、原則は絶対に譲らない」(聖学院大学 総合研究所客員教授 カン・インドク氏)
集会には韓国の統一部長官を務めたカン・インドク氏などが出席し、アメリカの北朝鮮専門家は「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべきだ」と述べました。
このところ、横田めぐみさんの生存に関する情報が相次いでいることについて、横田滋さん夫妻は「情報をきっかけに進展することを願っている」と訴えました。(TBS)
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「北朝鮮との戦い」「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべき」・・・。
これらの発言は、9月に行われた「北朝鮮人権国際会議」の「概括的意見」が、「狂気の独裁政権を倒し、民主化を推し進めるべき」というものであったのと同様に「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」の、きわめて露骨なその政治性を表現している。どのような「政治性」のことか。それを考えるためには、山岡拉致担当相の発言がいかにデタラメであるか、その説明から始めねばならない。
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最も核心的な問題は、なぜ「拉致問題が30年以上経過してもまだ解決できない」(山岡拉致担当相)のか、ということだ。民主党政権と外務省は、本当に「拉致問題の解決」をめざしてきた/いると言えるのだろうか? この間の民主党政権および外務省の動向を分析する限り、めざしてきたとは言えないし、めざそうともしていないと言わざるを得ない。
その根拠は、民主党が政権交代を機に安倍政権期に打ち出された「対北朝鮮制裁外交」を政策的に見直すのではなく、その逆の方向へとさらにのめり込んでしまったことにある。民主党は、自公政権時代に制定された「北朝鮮人権法」に基づく日本独自の制裁の強化と、国連、二国間、多国間のチャンネルを通じた国際的な対北朝鮮包囲網の形成をもって北朝鮮を「締め上げる」ことを拉致問題解決の「対策」としてきたのである。
しかし、こんなことをいくら続けても、生存している拉致被害者は永遠に帰ってこないだろう。また、身元不明の拉致被害者の消息もつかめないだろう。そのことは2002年9月の「日朝平壌宣言」から来年で丸10年を迎えようとするのに、拉致解決の具体的進展が何も見られないことにも、はっきりと示されている。
自らの失策を決して認めようとしない外務省の独断的・独善的暴走と民主党政権の無策。拉致と核の解決を望む私たちはそれを見極め、現状からの方向転換を政府・外務省に促す「輿論」を興すことが必要だ。そうでなければ、米国・中国・ロシア・韓国・日本と同様に、深刻な「人権・人道問題」を抱える北朝鮮のそれも決して改善することはないだろう。
政府や国連に対する「政策提言」を通じ、国際人権の「普遍化」をめざすという「国際人権NGO」が果たすべき役割は、国家(連合)による武力行使や制裁政治と一体化した「保護する責任」を推進したり、「北朝鮮で有事が起きた際の拉致被害者救出計画を日米韓で準備すべき」と言ってはばからないジンゴリスト(好戦主義者)と共に活動することではないはずだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(東京オフィス)の支持者を始め、アムネスティ・インターナショナル(日本)の理事・事務局・会員・支持者の人々は、ぜひともこのことを真剣に考えてほしい。
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外務省の対北朝鮮「外交」の何が誤っているのか?
「自らの失策を決して認めようとしない外務省の独断的・独善的暴走と民主党政権の無策」を理解するためには、「日朝平壌宣言」からこの9年間におよぶ「六者協議」と日朝交渉の経緯を、時系列に沿って、押さえておく必要がある。
「日朝平壌宣言」とはどのような「宣言」なのか、またその後どういう経緯を辿り、今日に至っているのか、知らない人も多いと思う。下の資料にまず目を通してほしい。
・・参考資料
・「日朝平壌宣言」(2002, 9/17)
・「第4回六者会合に関する共同声明」(2005, 9/19)
・「第1回「日朝国交正常化のための作業部会」の概要」(2007, 3/8)
(政府・外務省の「北朝鮮による日本人拉致問題」「六者会合関連協議」より)
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外務省が今年の6月にまとめた、これまでの「拉致問題の解決その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する政府の取組についての報告」なる文書がある。上にあげた「日朝平壌宣言」「第四回六者会合の共同声明」「第1回「日朝国交正常化のための作業部会」の概要」を熟読するなら、この「報告」がはらむ致命的な問題が浮かび上がってくる。
「報告」は「1 総論」に続く、「2 拉致問題」の「2)六者会合及び日朝協議」の、「ア.六者会合」において、
○「平成17 (2005)年に採択された六者会合共同声明においては、拉致問題を含めた諸懸案事項を解決することを基礎として、日朝間の国交を正常化するための措置をとることが、六者会合の目標の一つとして位置づけられており、この共同声明の完全な実施が重要である」と述べ、
また、「イ. 日朝協議」において、
○「政府は、日朝関係について、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を実現するとの方針である。
これまで日朝間では、平成20 年に2回にわたり日朝実務者協議が開催され、拉致問題に関する全面的な調査の実施及びその具体的態様等につき日朝間で合意した。
しかし、同年9月に北朝鮮側から、引き続き日朝実務者協議の合意を履行する立場であるが、調査開始を見合わせるとの連絡があり、それ以降、政府は北朝鮮側に早期の調査開始を繰り返し要求しているが、北朝鮮はいまだに調査を開始していない。政府は、引き続き北朝鮮に対し、拉致問題を含む諸懸案の包括的解決に向けた具体的な行動を求めている」と書いている。
しかし、「日朝平壌宣言」「六者会合」の「共同声明」のどこを読んでも、そんなことはいっさい書かれていない。「拉致」の「ら」の字も出てこない。読者も自分の目で確認してほしい(「日朝実務者協議」とその行き詰まりについては後述する)。
この事実を事実として認めることが、拉致・核問題の解決と「米国・中国・ロシア・韓国・日本と同様に、深刻な「人権・人道問題」を抱える北朝鮮のそれ」を改善する出発点となる。
(つづく)
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・武器輸出緩和へ新基準 人道目的や共同開発は「例外」
野田政権は、武器の輸出を原則として禁じる武器輸出三原則について、平和構築・人道目的の場合や、他国との共同開発・生産などを例外とする新たな基準をつくる方針を固めた。年内をめどに結論を出す。
政府関係者によると、官房長官談話などの形で、武器輸出の例外とする基準を示す。具体的には国連平和維持活動(PKO)や人道目的の支援をする際、武器とみなされる巡視艇の輸出などが想定されている。
また米以外の国との共同開発・生産を求める民主党政調の提言を踏まえ、対象国の範囲や開発・生産のあり方を検討する。これまでは米国とミサイル防衛(MD)の共同開発に乗り出した際、個別に三原則の「例外」とすることを官房長官談話で表明した。今後は新たな基準をつくり、紛争の助長や情報漏出につながらないよう秘密保持や第三国移転の一定のルールを設けた上で、戦闘機などハイテク兵器の共同開発・生産の拡大を認める方向だ。
民主党内外で議論を呼びそうな三原則自体の見直しや、輸出禁止の対象となる「武器」の定義の変更には踏み込まない。関係副大臣会合が開かれる12日にも方向性を打ち出す。
・空自次期主力戦闘機:政府16日にも安保会議で機種決定
航空自衛隊のF4戦闘機の後継となる次期主力戦闘機(FX)=約40機調達予定=の選定をめぐり、政府は16日にも安全保障会議を開き、機種を決定する方針だ。米国を中心に9カ国が共同開発中のF35(米ロッキード・マーチン社)が有力視されてきたが、開発が遅れ気味で、防衛省の求める16年度からの納入に間に合わない可能性が指摘されている。年末の12年度予算案編成に間に合わせなければならず、選定作業は大詰めを迎えた。
F35は敵のレーダーに探知されにくいステルス性能の高さが特徴。対立候補はすでに実戦配備されている2機種で、米国が開発したFA18(米ボーイング社)は米海軍の主力機としての実績があり、英独など欧州4カ国が共同開発したユーロファイター(英BAEシステムズ社など)は高い飛行性能などをアピールしている。
防衛省は9月に各機種の提案書提出を受け、関係各課長らで作る統合プロジェクトチームが、性能▽維持管理を含む経費▽国内企業の製造への参加▽納入後の支援態勢--の4分野で採点。一川保夫防衛相が近く岩崎茂航空幕僚長から結果報告を受け、中江公人事務次官をトップとする機種選定調整会議や政務三役会議を経て機種を内定。その後、安保会議で決定する予定だ。 野党は一川氏が辞任しないままFX選定を担当することに反発している。【毎日、朝日弘行、鈴木泰広】
・「パレスチナ人は創作」米大統領選共和党有力候補が発言
来年秋の米大統領選挙に向けた共和党の指名獲得争いでトップを走るギングリッチ元下院議長が「パレスチナ人は創作された人々で、実際はアラブ人だ」などと発言した。パレスチナの存在を根本から否定する内容で、米内外から批判が出ている。
ギングリッチ氏はユダヤ系ケーブルテレビの取材で、パレスチナ人について「歴史的にアラブ人コミュニティーの一部であり、どこにでも行くことができた」などと述べた。10日にあった共和党の討論会でも、「彼ら(パレスチナ人)はテロリストだ。学校でテロリズムを教えている」と発言。米政府の対パレスチナ支援への疑問も示した。
米メディアによると、パレスチナ自治政府のファイヤド首相は発言について「イスラエル人の最も過激な者もこんなに馬鹿げた言い方はしない」と反発。アラブ連盟の高官は「(在米ユダヤ人の)わずかな票を得るために、アメリカの国益を損なった」とし、中東和平の仲介役(???)である米国の立場への影響を懸念した。共和党の指名を争うライバルたちも「間違った理解だ」(ロムニー前マサチューセッツ州知事)と発言を問題視するコメントを出した。 (朝日)
・韓国:原発新設を許可 東部の2基、福島事故後初
韓国政府は(12月)2日、原子力安全委員会を開き、東部・蔚珍(ウルジン)で計画中の原子力発電所2基の建設を許可した。3月の東京電力福島第1原発事故後、初の建設許可。建設が完了した南部・釜山(プサン)と南東部・慶州(キョンジュ)の原発各1基の試運転の開始も許可した。 新設される2基は08年9月に許可申請があり審査が続いていた。加圧水型軽水炉で発電量は各140万キロワット。
韓国では原発21基が稼働し、総発電量の約3割を占める。李明博(イミョンバク)大統領は福島第1原発事故後も「わが国は100%エネルギー輸入国であり、原発を建設し続けねばならない」と推進政策を緩めなかった。また、韓国は国際原発商戦に参入しており、09年末にはアラブ首長国連邦(UAE)から原発を初受注。30年までに原発80基を輸出するという国家目標も掲げている。(毎日)
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・韓国、また原発停止 節電へ対策強化
韓国南部の釜山市にある古里原発3号機(出力95万キロワット)が14日、タービン発電機の過電圧を防止する装置が作動し、運転を停止した。知識経済省と事業者の「韓国水力原子力」が詳しい原因を調べているが、再稼働のめどは立っていない。
9月に大規模停電が起きた韓国では冬の電力需給が逼迫しているが、東部の蔚珍原発1号機(同)も13日に中央制御室の警報が鳴って運転を停止した。 韓国政府は今月5日から電気料金を平均4・5%値上げし、ネオン点灯を制限、違反企業には罰金も科す厳しい節電策を始めている。(ソウル共同)
・韓米原子力協定改定交渉が終了 隔たり埋まらず
2014年に満了する韓米原子力協定の改定に向けた4回目の交渉が8日に終了した。
交渉はソウルで6日から行われ、外交通商部の朴魯壁(パク・ノビョク)韓米原子力協定担当大使と米国務省のアインホーン調整官が首席代表として出席し、改定案の草案の内容について意見を交換した。特に、使用済み核燃料の再処理問題について集中的な論議が行われた。
韓国側は核燃料の保管施設が2016年に飽和状態になると予測しているため、使用済み核燃料の再処理を可能にすべきだと主張したのに対し、米国側は再処理による核兵器製造の可能性などを理由に慎重な立場を示し、双方の隔たりは埋まらなかった。 外交通商部当局者は「協定文を新しく書くための協議の過程なので、共通の理解や認識に基づいた技術的な条件など、さまざまな問題について意見を交換した」と述べた。 韓米は来年上半期(1~6月)に米国で5回目の交渉を行う予定だ。【ソウル聯合ニュース】
・韓国政府、軍事境界線隣接地域に電飾塔…北朝鮮強い反発
西部・東部・中部戦線の3カ所にクリスマスツリー状に電飾を施した塔が立てられる。
軍当局者は11日、「キリスト教団体の要請により西部戦線の愛妓峰(エギボン)と平和展望台、統一展望台にひとつずつクリスマスツリー型の電飾を施した塔を建てることにした」と明らかにした。
塔は23日から来年1月6日まで半月間点灯される。これに対し北朝鮮はこの日、対南宣伝用ウェブサイト「わが民族同士」を通じ、「塔を点灯することで予想できない結果がもたらされる場合、全面的責任は南側好戦者にある」と威嚇した。 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
2011年12月10日土曜日
東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?
東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?
最低でも一兆円を超える公的資金投入によって、東電の一時「国有化」がほぼ確実となった(現時点では「確定」とは言えないことに注意)。
しかし、①福島第一1~4号機の廃炉費用と、②放射能汚染→賠償・補償+除染費用の捻出に加え、さらに③福島第一5、6号機と第二原発の稼働停止状態が継続するのであるから、東電が資金調達に行き詰まり、公的資金を投入せざるをえなくなり、それによって「国有化」→解体せざるをえなくなることは、「3・11」直後の段階ですでに分かりきっていたことである。
さらに、6月以降、定期検査と「ストレステスト」によって、当然にも、柏崎刈羽の原子炉が順次稼働停止に追い込まれてきたのであるから、公的資金投入→東電「国有化」→解体は、夏から秋にかけ、より濃厚になって行ったと言うことができる。なのにまだ野田政権は「で、東電をどうするのか?」に対する明確な方針を打ち出せないでいる。
私が東電一時「国有化」→再生(「更生」)ではなく「解体」と書くのは、東電に対する感情論からではない。東電は原発事業の存続なくして企業として成り立ちようがなく、「レベル7」の「過酷事故」を起こした企業に原発事業を継続させるということに社会的合意など取れるはずもないからだ。以前にも書いたが、東電が何を言っても、もう私たちは信用できなくなってしまった。
というか、東電が「何か」をしたり「発表」したりすればするほど、ボロや嘘が明るみになり、すでに「国民」の多くにとって東電という企業は「終わっている」と言うほうが正確だろう。そのような企業が企業形態を温存させたまま生き残り、「公益性/公共性」を帯びた「事業」を継続することなど、ありえない。
菅・野田と続く民主党政権は、私の目から見るなら、この点に関する認識がきわめて、きわめて甘い。そしてそれがために東電に対する政府方針を未だに確定できずにいる。 さらに悪いことには、その結果、不必要な「国民」の不信・不安・怒り・離反を自ら招いてしまっている。
「あらゆる可能性を排除しない」。首相によれば、これが昨日段階の政府「方針」であるらしい。来年以降、決めるのだと。東電に対する姿勢、この一点において民主党はさらに無党派層の離反を招くことになるだろう。
東電の行く末については、主要な新聞メディアによって様々なことが報道されている。しかし、それらも「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が10月初旬にまとめた「第10回委員会報告」をベースとし、そこから発展したものである。
公的資金投入→「国有化」→解体に至らざるをえないことは、その「概要」を一瞥するだけで明白だと思えるので、まずはしっかりこれに目を通しておくことにしよう(必読資料)。
(注)
福島第二原発を廃炉にせず、再稼働させるなんて「ありえない」と考えている人は多いだろう。しかし、福島県が「脱原発宣言」を発した以降でさえ、第一原発5、6号機の廃炉はもちろん第二原発の処理問題についても何も決まっていないことを確認しておく必要がある。 「枝野vs.東電」がいろいろ取り沙汰されているが、公的に表明されている野田政権のこれらに対する基本的立場は「東電次第」というものである。
・・
・柏崎原発2号機で微量の放射性物質 環境に影響なしと東京電力
東京電力は9日、定期検査中の柏崎刈羽原発2号機の主排気筒で、8日にごく微量のアルファ線を放出する放射性物質を検出したと発表した。物質は天然のものとみられ、周辺のモニタリングポストに変化がないことから、環境に影響はないとしている。
東電によると、検査の結果、この物質はコンクリートなどに含まれるポロニウムと推定。原子炉水では検出されなかったため、原子炉建屋内のコンクリートから移動したと推測している。(新潟日報)
・東電の安全確保策「妥当」 冷温停止維持で保安院
経済産業省原子力安全・保安院は9日、東京電力福島第1原発事故の収束作業に関し、東電が提出した今後3年程度の施設運営計画について「公衆や作業員の安全を確保する上で妥当」との評価をまとめた。
保安院は近く評価書を原子力安全委員会に報告。これを受け、政府は16日に事故収束の工程表の「ステップ2」終了を決定する方針。
保安院は、原子炉の温度計の誤差を見込んでも圧力容器底部で100度以下という冷温停止状態の条件を維持できるとの東電の報告を認め、溶けた燃料が格納容器に漏れている場合でも格納容器内の温度から冷却状態は把握できるとした。(共同)
・福島第一で岩盤の揺れ、想定の3倍 保安院が解析
東日本大震災時に東京電力福島第一原発や東北電力女川原発(宮城県)の地下岩盤部で地震の揺れが、国の新しい耐震指針による想定を上回っていたことが9日、明らかになった。福島第一原発では敷地沖が震源になった場合の揺れの見積もりの約3倍だったうえに、余裕を持たせたはずの設計用の揺れも超えた。地震対策の前提となる揺れの想定が過小評価だったことを裏づけた。
経済産業省原子力安全・保安院が専門家からの意見聴取会で解析結果を明らかにした。原発の耐震設計では直下の岩盤で想定する揺れの「基準地震動」がすべての基本。上に造られる建屋や機器類が地震に耐えるかの評価に使われる。
第一原発の基準地震動は地下196メートルで600ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。これに対して解析では675ガルだった。基準地震動は敷地沖の震源域が複数連動すると仮想した地震(マグニチュード〈M〉7.9)などをもとに余裕を上積みしたが、仮想の地震の揺れと比べ約3倍の大きさだった。 (朝日)
・復水器継続でメルトダウン回避 1号機解析、東電「困難」
東電福島第1原発事故で、独立行政法人「原子力安全基盤機構」は9日、1号機の非常用復水器(IC)が津波襲来後も早期に作動し、蒸気の冷却に必要な水が補給できていれば、原子炉の水位が維持されて炉心溶融(メルトダウン)を防ぐことが可能だったとの解析結果を公表した。 東電は、当時の状況では現実には困難(???)だったとの見方を示した。
ICは事故の際に、原子炉の蒸気を引き込んで冷やし、水に戻して原子炉に戻す設備。電源がなくても作動するが、蒸気や水が通る配管の弁の開閉には電源が必要。(共同)
↓
であるなら、「安全対策」の一環として「蒸気や水が通る配管の弁の開閉」のための「非常用電源」を設置しておくべきだったのである。それだけのことだ。つまり、瑕疵責任は東電と政府にある。
現存する原発の「安全対策」にこれが配備されているか、要チェックである。
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12/11
・玄海原発:放射線測定値、変動範囲上回る…3号機の放水口
佐賀県は11日、九州電力玄海原発(同県玄海町)3号機の放水口で、9日午後3時の放射線測定値が通常の変動範囲を上回る数値を示していたと発表した。3号機では9日午前10時50分ごろ、放射能を帯びた1次冷却水が1.8トン漏れるトラブルが発生しているが、九電はトラブルとの関連を否定し、原因を調査するという。
同県原子力安全対策課によると、モニターが示したのは473cpm(測定器に1分間に入ってきた放射線の数)。通常の変動範囲は433~472cpmとなっている。放水口からは2次冷却水を冷やすのに使われた海水のほか、発電所内の汚染水を浄化処理した水なども排出される。九電は9日は処理水を放出していないと説明しているという。 測定値は降雨などの自然条件で変動範囲を超えることもあり、昨年12月には雨で507cpmを測定した。9日朝にも雨が観測されている。また放水口周辺に貝類が付着した場合も、貝類の放つ放射線により値が高くなることがあるという。
モニターは同県環境センター(佐賀市)が常時測定している。データを10日に回収した担当職員は週明けに九電に確認しようと判断したが、11日の別の担当職員がトラブルとの関連から、急きょ九電に確認したという。
9日の冷却水漏れは3号機の原子炉補助建屋内で発生し、九電は建屋内で汚染水を回収し、外部には漏れていないとしている。汚染水の濃度など詳細は明らかにしていない。(毎日)
・<玄海原発>冷却水漏れ1.8トン 九電公表せず
九州電力は9日、定期検査中の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3号機で、1次冷却水の浄化やホウ素濃度調節をする系統のポンプの温度が上昇したことを知らせる警報が鳴ったと発表した。その際、放射能を帯びた汚染水(1次冷却水)約1.8トンが漏れたという。
九電はポンプの異常だけを発表。その後の取材で、夜になって1次冷却水漏れを認めた。「設備の構造を考えると、ポンプの温度上昇と漏水に因果関係はないだろう。通常でも漏れはあり、原子炉建屋内にとどまっているので広報しなかった」としている。
九電によると、1次冷却水はとい状の設備を伝い、建屋内のピットと呼ばれる回収ますに出た。ポンプが異常を示したのは9日午前10時50分ごろ。3台あるポンプのうち稼働中の1台の温度が上がり、休止していた他のポンプに切り替えて循環を続けている。通常は30~40度で、80度を超えると警報が鳴るという。
3号機は昨年12月11日から定期検査に入った。原子炉内には燃料が装着されており、冷温停止状態を保つために冷却水を循環させている。原因は冷却水不足などの可能性があり、ポンプを分解するなどして調べる
◇報告義務の対象外
経済産業省原子力安全・保安院によると、今回のポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらない。ただし、九電からは、冷却水が外部に漏れていないことやモニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。【毎日、竹花周、中山裕司】
⇒「九電は情報公開を 玄海3号機冷却水漏れに怒りの声 」(佐賀新聞)
・・・
・オスプレイ 衝突防止装置に不具合 国防総省、改善で予算計上
【中部】2012年秋に米軍普天間飛行場への配備が計画されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、ほかの航空機との衝突を回避する装置に不具合があり、機能改善の予算を米国防総省が計上していることが8日までに明らかになった。米国防次官室(会計監査)のホームページで公開されている11年米会計年度の予算組み替え文書によって指摘された。
文書によると、「MV22オスプレイの乗務員がアフガニスタン上空でほかの航空機と安全な距離を維持して飛行できない状況にある」とした上で、それは「衝突回避機能の欠如に起因している」と指摘。「同機飛行隊が、壊滅的な衝突を引き起こす可能性を緩和するサポート機能である衝突回避システム(TCAS)を提供するために480万ドル」を計上した。さらに、同予算が「12会計年度の国防予算で積み立てられていないが緊急性が高い」と強調している。
また、機体の主脚付近や脆弱(ぜいじゃく)な箇所での火災を自律的に検知・抑制する機能の修正に370万ドル、作業負荷を大きく軽減し、土埃(つちぼこり)が舞うような悪条件での操作時の安全性を向上させるため、視界装置の改善に284万ドルも必要として、計上している。(琉球新報)
最低でも一兆円を超える公的資金投入によって、東電の一時「国有化」がほぼ確実となった(現時点では「確定」とは言えないことに注意)。
しかし、①福島第一1~4号機の廃炉費用と、②放射能汚染→賠償・補償+除染費用の捻出に加え、さらに③福島第一5、6号機と第二原発の稼働停止状態が継続するのであるから、東電が資金調達に行き詰まり、公的資金を投入せざるをえなくなり、それによって「国有化」→解体せざるをえなくなることは、「3・11」直後の段階ですでに分かりきっていたことである。
さらに、6月以降、定期検査と「ストレステスト」によって、当然にも、柏崎刈羽の原子炉が順次稼働停止に追い込まれてきたのであるから、公的資金投入→東電「国有化」→解体は、夏から秋にかけ、より濃厚になって行ったと言うことができる。なのにまだ野田政権は「で、東電をどうするのか?」に対する明確な方針を打ち出せないでいる。
私が東電一時「国有化」→再生(「更生」)ではなく「解体」と書くのは、東電に対する感情論からではない。東電は原発事業の存続なくして企業として成り立ちようがなく、「レベル7」の「過酷事故」を起こした企業に原発事業を継続させるということに社会的合意など取れるはずもないからだ。以前にも書いたが、東電が何を言っても、もう私たちは信用できなくなってしまった。
というか、東電が「何か」をしたり「発表」したりすればするほど、ボロや嘘が明るみになり、すでに「国民」の多くにとって東電という企業は「終わっている」と言うほうが正確だろう。そのような企業が企業形態を温存させたまま生き残り、「公益性/公共性」を帯びた「事業」を継続することなど、ありえない。
菅・野田と続く民主党政権は、私の目から見るなら、この点に関する認識がきわめて、きわめて甘い。そしてそれがために東電に対する政府方針を未だに確定できずにいる。 さらに悪いことには、その結果、不必要な「国民」の不信・不安・怒り・離反を自ら招いてしまっている。
「あらゆる可能性を排除しない」。首相によれば、これが昨日段階の政府「方針」であるらしい。来年以降、決めるのだと。東電に対する姿勢、この一点において民主党はさらに無党派層の離反を招くことになるだろう。
東電の行く末については、主要な新聞メディアによって様々なことが報道されている。しかし、それらも「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が10月初旬にまとめた「第10回委員会報告」をベースとし、そこから発展したものである。
公的資金投入→「国有化」→解体に至らざるをえないことは、その「概要」を一瞥するだけで明白だと思えるので、まずはしっかりこれに目を通しておくことにしよう(必読資料)。
(注)
福島第二原発を廃炉にせず、再稼働させるなんて「ありえない」と考えている人は多いだろう。しかし、福島県が「脱原発宣言」を発した以降でさえ、第一原発5、6号機の廃炉はもちろん第二原発の処理問題についても何も決まっていないことを確認しておく必要がある。 「枝野vs.東電」がいろいろ取り沙汰されているが、公的に表明されている野田政権のこれらに対する基本的立場は「東電次第」というものである。
・・
・柏崎原発2号機で微量の放射性物質 環境に影響なしと東京電力
東京電力は9日、定期検査中の柏崎刈羽原発2号機の主排気筒で、8日にごく微量のアルファ線を放出する放射性物質を検出したと発表した。物質は天然のものとみられ、周辺のモニタリングポストに変化がないことから、環境に影響はないとしている。
東電によると、検査の結果、この物質はコンクリートなどに含まれるポロニウムと推定。原子炉水では検出されなかったため、原子炉建屋内のコンクリートから移動したと推測している。(新潟日報)
・東電の安全確保策「妥当」 冷温停止維持で保安院
経済産業省原子力安全・保安院は9日、東京電力福島第1原発事故の収束作業に関し、東電が提出した今後3年程度の施設運営計画について「公衆や作業員の安全を確保する上で妥当」との評価をまとめた。
保安院は近く評価書を原子力安全委員会に報告。これを受け、政府は16日に事故収束の工程表の「ステップ2」終了を決定する方針。
保安院は、原子炉の温度計の誤差を見込んでも圧力容器底部で100度以下という冷温停止状態の条件を維持できるとの東電の報告を認め、溶けた燃料が格納容器に漏れている場合でも格納容器内の温度から冷却状態は把握できるとした。(共同)
・福島第一で岩盤の揺れ、想定の3倍 保安院が解析
東日本大震災時に東京電力福島第一原発や東北電力女川原発(宮城県)の地下岩盤部で地震の揺れが、国の新しい耐震指針による想定を上回っていたことが9日、明らかになった。福島第一原発では敷地沖が震源になった場合の揺れの見積もりの約3倍だったうえに、余裕を持たせたはずの設計用の揺れも超えた。地震対策の前提となる揺れの想定が過小評価だったことを裏づけた。
経済産業省原子力安全・保安院が専門家からの意見聴取会で解析結果を明らかにした。原発の耐震設計では直下の岩盤で想定する揺れの「基準地震動」がすべての基本。上に造られる建屋や機器類が地震に耐えるかの評価に使われる。
第一原発の基準地震動は地下196メートルで600ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)。これに対して解析では675ガルだった。基準地震動は敷地沖の震源域が複数連動すると仮想した地震(マグニチュード〈M〉7.9)などをもとに余裕を上積みしたが、仮想の地震の揺れと比べ約3倍の大きさだった。 (朝日)
・復水器継続でメルトダウン回避 1号機解析、東電「困難」
東電福島第1原発事故で、独立行政法人「原子力安全基盤機構」は9日、1号機の非常用復水器(IC)が津波襲来後も早期に作動し、蒸気の冷却に必要な水が補給できていれば、原子炉の水位が維持されて炉心溶融(メルトダウン)を防ぐことが可能だったとの解析結果を公表した。 東電は、当時の状況では現実には困難(???)だったとの見方を示した。
ICは事故の際に、原子炉の蒸気を引き込んで冷やし、水に戻して原子炉に戻す設備。電源がなくても作動するが、蒸気や水が通る配管の弁の開閉には電源が必要。(共同)
↓
であるなら、「安全対策」の一環として「蒸気や水が通る配管の弁の開閉」のための「非常用電源」を設置しておくべきだったのである。それだけのことだ。つまり、瑕疵責任は東電と政府にある。
現存する原発の「安全対策」にこれが配備されているか、要チェックである。
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12/11
・玄海原発:放射線測定値、変動範囲上回る…3号機の放水口
佐賀県は11日、九州電力玄海原発(同県玄海町)3号機の放水口で、9日午後3時の放射線測定値が通常の変動範囲を上回る数値を示していたと発表した。3号機では9日午前10時50分ごろ、放射能を帯びた1次冷却水が1.8トン漏れるトラブルが発生しているが、九電はトラブルとの関連を否定し、原因を調査するという。
同県原子力安全対策課によると、モニターが示したのは473cpm(測定器に1分間に入ってきた放射線の数)。通常の変動範囲は433~472cpmとなっている。放水口からは2次冷却水を冷やすのに使われた海水のほか、発電所内の汚染水を浄化処理した水なども排出される。九電は9日は処理水を放出していないと説明しているという。 測定値は降雨などの自然条件で変動範囲を超えることもあり、昨年12月には雨で507cpmを測定した。9日朝にも雨が観測されている。また放水口周辺に貝類が付着した場合も、貝類の放つ放射線により値が高くなることがあるという。
モニターは同県環境センター(佐賀市)が常時測定している。データを10日に回収した担当職員は週明けに九電に確認しようと判断したが、11日の別の担当職員がトラブルとの関連から、急きょ九電に確認したという。
9日の冷却水漏れは3号機の原子炉補助建屋内で発生し、九電は建屋内で汚染水を回収し、外部には漏れていないとしている。汚染水の濃度など詳細は明らかにしていない。(毎日)
・<玄海原発>冷却水漏れ1.8トン 九電公表せず
九州電力は9日、定期検査中の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3号機で、1次冷却水の浄化やホウ素濃度調節をする系統のポンプの温度が上昇したことを知らせる警報が鳴ったと発表した。その際、放射能を帯びた汚染水(1次冷却水)約1.8トンが漏れたという。
九電はポンプの異常だけを発表。その後の取材で、夜になって1次冷却水漏れを認めた。「設備の構造を考えると、ポンプの温度上昇と漏水に因果関係はないだろう。通常でも漏れはあり、原子炉建屋内にとどまっているので広報しなかった」としている。
九電によると、1次冷却水はとい状の設備を伝い、建屋内のピットと呼ばれる回収ますに出た。ポンプが異常を示したのは9日午前10時50分ごろ。3台あるポンプのうち稼働中の1台の温度が上がり、休止していた他のポンプに切り替えて循環を続けている。通常は30~40度で、80度を超えると警報が鳴るという。
3号機は昨年12月11日から定期検査に入った。原子炉内には燃料が装着されており、冷温停止状態を保つために冷却水を循環させている。原因は冷却水不足などの可能性があり、ポンプを分解するなどして調べる
◇報告義務の対象外
経済産業省原子力安全・保安院によると、今回のポンプの異常や冷却水漏れは法令による報告義務の対象にあたらない。ただし、九電からは、冷却水が外部に漏れていないことやモニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。【毎日、竹花周、中山裕司】
⇒「九電は情報公開を 玄海3号機冷却水漏れに怒りの声 」(佐賀新聞)
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・オスプレイ 衝突防止装置に不具合 国防総省、改善で予算計上
【中部】2012年秋に米軍普天間飛行場への配備が計画されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、ほかの航空機との衝突を回避する装置に不具合があり、機能改善の予算を米国防総省が計上していることが8日までに明らかになった。米国防次官室(会計監査)のホームページで公開されている11年米会計年度の予算組み替え文書によって指摘された。
文書によると、「MV22オスプレイの乗務員がアフガニスタン上空でほかの航空機と安全な距離を維持して飛行できない状況にある」とした上で、それは「衝突回避機能の欠如に起因している」と指摘。「同機飛行隊が、壊滅的な衝突を引き起こす可能性を緩和するサポート機能である衝突回避システム(TCAS)を提供するために480万ドル」を計上した。さらに、同予算が「12会計年度の国防予算で積み立てられていないが緊急性が高い」と強調している。
また、機体の主脚付近や脆弱(ぜいじゃく)な箇所での火災を自律的に検知・抑制する機能の修正に370万ドル、作業負荷を大きく軽減し、土埃(つちぼこり)が舞うような悪条件での操作時の安全性を向上させるため、視界装置の改善に284万ドルも必要として、計上している。(琉球新報)
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