2011年12月1日木曜日

基地と原発、振興開発と住民の〈自己決定権〉

基地と原発、振興開発と住民の〈自己決定権〉

 今週の土曜(12/3)、京都の龍谷大学(深草キャンパス 21号館501教室)で行うシンポジウム、「パレスチナと沖縄を結ぶ――民族自決権と開発」の準備のために、いろいろ資料にあたっていたらパネリストの一人、 松島泰勝さん(龍谷大学済学部教授、ゆいまーる琉球の自治代表) からメールが入り、レジュメが届いた。
 パワーポイント24頁に及ぶそのレジュメの中に、「4.振興開発の総括と琉球人の自己決定権の行使」という項目がある。その内容は、以下のようなものである。
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・1972年から2001年まで、琉球の振興開発を主管とする沖縄開発庁は米軍基地の存在を前提とした開発行政を実施。
・しかし、特に1996年以降、米軍基地を固定化し、再編・拡大する手段として振興開発が流用。
・2001年に設立された内閣府沖縄担当部局は、振興開発と基地問題双方を統括する機関となり、開発と基地とのリンケージを強化
「復帰」後約40年間の開発行政は格差是正・経済自立を実現させず、国への依存度を深め、基地の固定化を進め、環境を大きく破壊し、失敗であったと総括できる。
〈失敗の主な原因〉
①画一的な開発手法
②予算配分率の固定化
③開発計画の策定・実施過程における琉球側の主体的な参加の欠如
④中央官庁による介入・規制・指導
⑤基地と振興開発とのリンケージ
(11月20日に行った法政大学でのシンポジウムのレジュメ、「保護する責任」に関する私たちの公開質問状に対するヒューマン・ライツ・ウォッチの回答を含め、すべてのレジュメ・資料は〈NGOと社会〉の会のサイトに掲載される予定になっているので、全文の公開は今しばらく待っていただきたい)
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 琉球の米軍基地・普天間問題については、改めて論じることにしたい。私が松島さんのレジュメに目を通しながら感じたことは、「戦後」の国・自治体の「原発行政」が「基地行政」と同様に、
①画一的な開発手法、
②予算配分率の固定化、
③開発計画の策定・実施過程における「立地自治体」の主体的な参加の欠如
④中央官庁による介入・規制・指導、
原発と振興開発とのリンケージの下で行われてきたことだ。そして、結局のところ、
 「開発行政は格差是正・経済自立を実現させず、国への依存度を深め、原発の固定化を進め、環境を大きく破壊し、失敗であったと総括できる」のではないか、ということである。

 こうした「中央官庁による介入・規制・指導」を打ち返し、自治体の原発マネーへの依存構造からの脱却をはかり、住民の「自己決定権」を確立するには、いったいどうすればよいのだろう。 その具体的かつ現実的なビジョンを、立地自治体の人々とともに考え、構想し、支援することが脱原発派に問われている。
 下の記事にある西と東の「原発銀座」の自治体の「方針」を対比しながら、私たちそれぞれがその「ビジョン」を考え、ともに議論し合うべき時期を迎えているのではないだろうか。 

県内全10基の廃炉要求へ 福島知事が表明
 福島県の佐藤雄平(さとう・ゆうへい)知事は30日の記者会見で、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて年内にまとめる県の復興計画に「国と東電に対して、県内の原発10基すべての廃炉を求める」と明記することを発表した。計画策定後、国と東電に廃炉を要請する。 原発立地県で、県内にあるすべての原発の廃炉を求めるのは初めて。
 佐藤知事は会見で「国、事業者が主張してきた安全神話が根底から覆された」と指摘。「原発を立地して財政的に恩恵を受けてきた以上に、事故は自然、社会、教育に大きな影響を及ぼしている。原子力に依存しない新生福島を創造するとの決断に至った」と述べた。
 廃炉で生じる放射性廃棄物の処理については「県内に最終処分場は認めない」と強調。核燃料税や交付金が失われるなど財政上の問題には「税制を精査して取り組む」とした。加えて原発のある双葉郡など沿岸部の復興のため、原発関連に替わる雇用を生み出す方針も打ち出した。

 佐藤知事が原発から決別する姿勢を明確に示した一方で、政府と東電は、第1原発の1号機から4号機の廃炉方針は決定しているものの、同5、6号機と福島第2原発の4基については、態度を明らかにしていない。 廃炉をめぐっては、福島県議会が10月、全10基の廃炉を求める請願を賛成多数で採択。佐藤知事は「(採択は)本当に重い。第1、第2原発の再稼働はあり得ない」と述べていた。
 県は復興計画の策定にあたり、既に「原子力に依存しない社会を目指す」との「脱原発」の基本理念を決定。佐藤知事は脱原発の実現に向けて、県幹部と協議を重ね、雇用などの地域経済や自治体財政に与える影響を考えた上で、原発のあり方を復興計画にどう記載するか検討していた。 (共同通信)

原発の存続、推進を経産相に要請 県原発所在市町協議会
 4市町でつくる福井県原子力発電所所在市町協議会は29日、枝野幸男経済産業相に安全確保を前提に原発の存続、推進を求める要請書を提出した。計画的な新増設や高経年炉の廃炉と新設を同時に行うリプレース(置き換え)も求めた。 会長の山口治太郎美浜町長をはじめ野瀬豊高浜町長、河瀬一治敦賀市長、時岡忍おおい町長と各市町会議長が参加。年内にも国のエネルギー政策に関する各種の中間報告をまとめるのを前に要望した。

 山口町長は「大前提の安全を確保し、持続的発展のために電源のベストミックスが求められる中、原発の必要性が示され、活用されていくことを望んでいる」と要望。原子力政策の早期明確化や計画的な新増設など9項目を要請した。「脱原発に対するリスク」は何も示されていないとも指摘した。
 枝野経産相は「早くしっかり議論した上で国の方針を固めていきたい」と述べるにとどまった。ただ「国の(原子力)政策の転換があった場合でも(立地自治体に)約束したことへの責任はしっかり果たしていく」と応え、地元の意向に配慮する考えを示した。
 奥村展三文部科学副大臣にも同様の要請をした。要請後、河瀬市長は記者団に「もんじゅを含め要請した内容は理解してもらえたと思う」と話した。 30日は細野豪志原発事故担当相、古川元久国家戦略担当相に要請する。(福井新聞)

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<福島第1原発>1号機燃料85%超落下 東電など解析
 東京電力福島第1原発1号機で、炉心溶融(メルトダウン)によって原子炉圧力容器が破損し、85%以上の核燃料が格納容器に落下したとの解析を、経済産業省所管のエネルギー総合工学研究所が30日発表した。東電の解析でも相当量の核燃料が格納容器に落ちてコンクリートを最大65センチ侵食したと推計した。核燃料は格納容器の外に漏れていないが、事故の深刻さを改めて示す結果で、政府や東電は廃炉作業などに活用する。
 同研究所は、詳細に原子炉内の状況を追跡できる方法を使用し、核燃料の損傷状態を試算した。その結果、1号機では地震による原子炉の緊急停止から5時間31分後に核燃料の被覆管が壊れ、7時間25分後に圧力容器の底が破損。核燃料の85~90%が格納容器に落下したと算出された。2、3号機でも約7割の核燃料が溶けて格納容器に落下した可能性があると推定した。

 また、東電は別の方法で解析。1号機では、溶け落ちた核燃料の量は不明だが、「相当な量」とした。2、3号機も一部の核燃料が落下したと推定。いずれも落下した溶融燃料が格納容器の床のコンクリートを溶かす「コア・コンクリート反応」が起き、1号機では最大65センチ侵食した。燃料から格納容器の鋼板までは最悪の場合、37センチしかなかったことになる。ただし、格納容器の下には厚さ7.6メートルのコンクリートがあり、地盤に達していないとしている。汚染水が大量発生している原因は、配管の隙間(すきま)などから格納容器の外に漏れているためと考えられる。

 一方、2号機での侵食は最大12センチ、3号機で同20センチと推計した。
 今回の解析が冷温停止状態の判断に与える影響について、経産省原子力安全・保安院は「原子炉の温度などの実測値を基にしているので関係ない」と説明。岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「燃料が格納容器の底に落ちていても、水につかって冷やされており原子炉は安定している。さらに情報を集めて解析精度を上げ今後の作業に役立てる必要がある」と提言する。【毎日、河内敏康、西川拓】

電力業界 政界に多額の献金
・全国の電力会社からは、役員らの個人献金や労働組合などの献金の形で、去年までの3年間に少なくとも4億8000万円が政界に。
・「昭和50年代から沖縄電力を除く全国の9つの電力会社では、役員らが、自民党の政治資金団体の「国民政治協会」に毎年、献金」。
・「去年までの3年間に、各電力会社の役員や管理職など少なくともおよそ700人が、合わせて1億1700万円を寄付」。
・「東京電力では、例えば社長が30万円、常務が10万円程度などと相場が決まっていて、執行役員以上の幹部には、総務部の担当者が献金を呼びかけていた」
・「一方、電力各社の労働組合からも政治献金が行われ、民主党の複数の国会議員に、政治団体を通して去年までの3年間に合わせて少なくとも1億円が献金」

・「電力各社の子会社や関連会社では、去年までの3年間で31社が自民党の「国民政治協会」に合わせて2億5800万円を、4社が民主党の政治資金団体「国民改革協議会」に470万円を献金」。
・「こうした献金について、電力各社は「個人などがそれぞれの意思で行っているもので、関知していない」」
・「民主党は「政治献金自体非難されることではなく、党の政策が左右されるという懸念はまったく当たらない」」、「自民党は「寄付はすべて政治資金規正法に従って受けている。献金によって政策がゆがめられることはない」とコメント。(NHK)

玄葉外相、新たな原子力協定締結に前向き
 玄葉光一郎外相は30日の衆院外務委員会で、原発輸出を可能にする原子力協定について「諸外国が希望する場合、核不拡散を確保しながら原子力協力を行うことは意義がある」と述べた。インドやトルコなどを念頭に「交渉を開始、または交渉開始を決めた国についても、原子力協力を行う意義がある」と述べ、新たな協定締結に前向きな姿勢を示した。
 一方、原発輸出に反対する環境NGO「FoEジャパン」の満田夏花理事は同日、国会内で記者会見し、「福島の教訓を踏まえず、国民の多くが反対する中で、税金を投入してまで原発輸出を進めるのは理解できない」と批判した。 (朝日)

「脱原発は困る」 電力労組、民主議員に組織的な陳情
 全国の電力会社や関連企業の労働組合でつくる「電力総連」が、東京電力福島第一原発の事故後、原発存続に理解を得るための組織的な陳情活動を民主党の国会議員に展開していたことが分かった。2010年の政治資金収支報告書によると、全国の電力系労組13団体が組合員らから集めた「政治活動費」は総額約7億5千万円。この資金は、主に同党議員の支援に使われ、陳情活動も支援議員を中心に行ったという。
 同党の有力議員の秘書らは「脱原発に方向転換されては、従業員の生活が困ると陳情を受けた」「票を集めてくれる存在だから、選挙を意識して対応せざるを得ない」と証言。電力総連関係者は「総連側の立場を理解してくれた議員は約80人」と見積もる。豊富な政治資金を持つ電力総連が、民主党側に影響力を行使する実態が浮かび上がった。

 収支報告書などによると、全国の電力10社と関連3社の各労組の政治団体は10年に、組合員ら約12万7千人から会費などの形で約7億5千万円の「政治活動費」を集めた。うち計約6400万円が、電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」に渡っていた。  活動委は同年、東電出身の小林正夫・民主党参院議員(比例区)の関連政治団体と選挙事務所に計2650万円、川端達夫総務相の政治団体に20万円などを献金。小林議員は同年の参院選で再選を果たした。 (朝日)

東電の元顧問2人、退任発表の翌日に嘱託採用
 東京電力が今年5月、経営合理化のために退任させると発表した顧問11人のうち、元執行役員ら2人が、退任翌日から嘱託社員として勤務し報酬を得ていたことが30日、分かった。 東電によると、顧問は5月時点で21人で、計2億1900万円の報酬を得ていたが、経費削減などのため6月28日付で11人を退任させた。同時期に、清水正孝前社長ら3人が新たに顧問に就任したが、無報酬とし、顧問全体の報酬総額は計9800万円に圧縮されたと発表していた。
 ところが、退任した11人のうち、元執行役員販売営業本部副本部長(69)と、原子力部門出身の元理事(68)の2人が、翌29日付で嘱託社員として採用されていた。東電は2人の採用をこれまで明らかにしていなかった。(読売)