2014年2月24日月曜日

「エネルギー基本計画」(素案)を読む(4)

「エネルギー基本計画」(素案)を読む(4)

Ⅰ 「素案」の狙い
 

 原子力ムラにとっての新「エネルギー基本計画」の狙いは、「3・11」以後噴出した脱原発論を抑え込み、「理想的」な「エネルギーミックス論」(電源構成論)の中に、再度明確に原発を位置づけながら、原発再稼働を既定方針化し、さらに「3・11」以前から計画していたものを含め、原発の新規建設に道を開くことにある。

 細かい数字上のことは、今後の「事態の推移」を見守りながら、どうとでも「調整」することができる。重要なことは、法的根拠を持たせる形で、国策としての原発推進を再度確定し、その中で新規建設の可能性を排除しない、国としての基本方針を打ち出すことにある。その意味で、今回の「素案」は、まさに原子力ムラの意を汲んだ、原子力ムラの策略通りのものとなっている。

「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見の骨子(案)」
「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見(案)」

 このような「素案」の狙いは、この文章の構成をみれば明らかである。
 「3・11」で問われたのは、「戦後」日本の「原子力政策」そのものと、それを推進してきた原子力ムラと一体化した国と官僚機構の在り方と責任の所在であったはずだ。しかし、「素案」は論点をそこから完全にズラし、「エネルギーの安定供給」論と「原発の安全」論に、〈問題〉をすり替えているのである。
 「素案」は、まさにそのために、あらゆる「理屈」を引っ張り出そうとする。
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1.我が国のエネルギー需給構造が抱える課題
(1)我が国が抱える構造的課題
(2)東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題

2.エネルギー政策の新たな視点
(1)エネルギー政策の原則と改革の視点
①エネルギー政策の基本的視点の確認
② “多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の構築と政策の方向
 原発再稼動、再エネ導入の進捗の度合い等を見極めつつ、速やかに実現可能なエネルギーミックスを提示

(2)各エネルギー源の位置付け
1)石油  2)天然ガス 3)石炭 4)LPガス 5)原子力 6)再エネ(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス・バイオ燃料)
・・
 上の「各エネルギー源の位置付け」では、なぜ「再エネ」が「原子力」よりも後の最後尾に「位置付け」られているのかも問わねばならないが、さらに読み進めてゆくと、何のことはない、
結局、「素案」が「原子力」中心主義の「エネルギー基本計画」になっていることが明らかになる。
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3.新たなエネルギー需給構造の実現に向けた具体的な取組
(1)原子力政策の基本方針と政策の方向性
2)核燃料サイクル政策の着実な推進
・・
 2
 ところで、前回、私は、原子力ムラにとって「素案」の最も重要な点は、「リプレースメントも含めた新増設」といった「議論」が「素案」の策定を通して可能になった、という点にあると書いた。
 そして、「それは、安倍政権の既定方針を受けているように、一見、思えるかもしれない。しかし、実は「それ以上」のものである」とも書いた。
 なぜ、「それ以上」のもの、なのか? これについては、まず、

①安倍政権が、原発推進・再稼働断行・核燃料サイクル推進を基本方針とはしていても、「中・長期的な原発政策=で、原発をどうするのか?」についての政権としての方針を持たぬまま、それを「基本政策分科会」の議論に丸投げする形になってしまっていることが、本質的で最大の問題としてあることを理解する必要がある。 ところが、
②その「分科会」においても、原発推進・再稼働断行・核燃料サイクル推進を基本方針としているだけで、実際には、全「エネルギー源」に占める原発の構成比率については、まったく議論の埒外に置きながら、これからの「エネルギー政策」と「計画」なるものを議論してきたのである。

 つまり、「原子力」を、「重要な」「電源」として「位置付け」ることには成功した。しかし、実際の国の「エネルギー政策」の策定のためには、「原子力」を含め、「再生エネルギー」、天然ガス、LPガス、石炭、石油などの、各エネルギー源に基づく電力供給の比率を、10年後、20年後、30年後・・・と見据えながら、具体的なビジョンを示さなければならない
 事務局原案としての「素案」には、これがないのである。

 なぜ、こうなるのか? 安倍政権も、経産官僚も、ともにその「ビジョン」を持たないからである
 再稼働に向けた「安全基準」策定とその「審査」も、規制庁に丸投げする格好になり、政権・与党、つまりは国としての政治的判断を下そうとしないからだ。 その結果、どうなるのか?

①規制庁が電力企業に「NO」と言わない既存原発は、最長60年今後も残り続け、
②さらに新規建設についても、「合理的に安全と判断される」ものについては、建設され続けることになる・・・。

 だから、たしかに再稼働を許すか、許さないかは、非常に重要な問題ではあるのだが、新「エネルギー基本計画」(素案)がはらんでいる問題は、決してそれだけはない。 もっと言えば、再稼働問題は「素案」の問題点の一つにすぎないことを、しっかり押さえておくことが肝心である。

(注 2/27  茂木経産相は、27日の衆院予算委員会で、原発への将来的依存度について、「3・11」前の3割よりも下げる、と述べた。先述したように、これは基本政策分科会の中でも「25%」という数字が具体的に出ていることを受けたものと考えるが、茂木経産相のこの言葉には政治的・法的根拠が何もない。この問題については、後日また改めて論じることにしたい。)


Ⅱ 「素案」は「電力完全自由化」と「地域独占解体」を実現するか?

 「素案」の問題は、以上にとどまらない。 「エネルギー基本計画」(素案)を読む(1) の中で、
1、「原子力ムラ」を構成する経産官僚(そこから脱しようとしている、ごく一部の人々が存在することを忘れないようにしたい)と、発送電の「地域独占」と既得権を死守しようとする既存電力大企業の、いわば「戦略的願望」を示したに過ぎないものであること、そして、

2、原発を「重要な」「ベース電源」とするかどうかを含め、これからの日本の「エネルギー計画」の詳細については、現在に至るも何も確定していない、と書いた。

 「素案」をめぐっては、これまで、これが「発送電分離」、「電力(供給)完全自由化」を前提として、既存の電力企業の「地域独占」体制を解体するものであるかのような、あたかもそれが「既定の方針」として確定したものであるかのような「報道」が繰り返されてきた。

 しかし実際には、まさに「現在に至るも何も確定していない」のだ。そのことは、下に紹介する、「制度設計ワーキンググループ」の委員である松村敏弘(東京大学 ・会科学研究所教授) 氏と、山口英(奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科教授)氏の発言を読めば、明らかである。

 原発および再稼働問題についての立場に関し、私自身は両氏とはかなり異なるが、以下に述べられている両氏の見解は、「基本政策分科会」や「制度設計WG」内において、どのような政治力学の元で「議論」が進められてきたかを理解するにあっても、非常に示唆に富んでいる。

 これからの「制度改革」なるのものの柱の一つとされている「広域的運営推進機関」問題について、両氏の見解を参照しながら、考えてみていただきたい。

⇒ 「エネルギー基本計画」(素案)を読む(5) ---「安定供給」・「完全自由化」という神話」につづく


【参考資料】
①「広域的運営推進機関の発足に向けた検討状況」「電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ」第五回会合(1月20日)の事務局提出「資料5」より。




















「電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ」第一回会合(2013年8月2日)における松村敏弘(東京大学 社会科学研究所 教授) 氏の発言(17頁)より。

「基本的な方針から逸脱するということはないと思いますが、私が一番恐れているのは、表面上逸脱していないように見せながら基本的な方針を骨抜きにすることです。
 その骨抜きは、具体的に言うと、広域機関の役割をできるだけ限定的にする、広域機関をできるだけ小さくする、できるだけESCJの看板の架け替えだけで済ませようとする
 骨抜きはおそらくこのような形で出てくると思います。これはシステム改革の、元々の趣旨に大きく反するものだと思います。

 一番わかりやすい骨抜きの動きは、広域機関の役割をできるだけ非常時に限定し、普段は重大な意思決定を伴わないルーティンワークだけしかやらせないようにする、重大な意思決定をするに足る人材を集めるのを阻む、と言う形で現れると思います。
 普段から一定の役割を果たし、情報を集めていない機関が、非常時に役割を果たせるとは思えない。基本方針では役割を非常時のみに限定しない整理になっているはずです。

  具体的に先ほどの議論に出てきましたが、基幹送電線、連系線などの計画は、実際には私はこ
の広域機関が担うべきだと思っており、そのような整理になっていたはずです。
 一応、今回の資料でも建前はそうなっているけれども、各電力会社の送電部門が上げた計画にただ判を押すだけ、綴じて役所に出すだけという機関になってしまう可能性は、どんな法律を整備しても、やる気の無い人や利害関係者が運営すればあり得ると思います。

 あるいは、まるでアリバイ作りのように、毒にも薬にもならないことしか言わない、最後には電気事業者の言いなりになるおとなしい中立者を集めた委員会を形だけ作り、その委員会の提言に従って電気事業者の計画を常にそのまま認めるという、かつてのESCJのような機関にしないように、実際にきちんと各電力会社が持ってきた計画を審査し、連系線が足りないのであれば増強すべきだと言える人材を集め、実質的な計画、審査機能を持たせることが非常に重要だと思います。















③「制度設計ワーキンググループ」第4回会合(2013年12月9日)に提出された、山口 英(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授)氏による「資料」 より。
【論点1】
 第3段階での、発電事業者と小売り事業者の取引所を通さない過度の取引(結託)は、健全な電力卸取引市場の形成を阻害するので、何らかの規制が必要ではないか。

【意見】
 取引所を経由しての卸電力調達には、様々な良い点が見いだすことができる。
 例えば、卸電力の透明なプロセスでの価格決定、地域を越えた電力調達の進展による日本全国での電力供給の最適化、さらに、発電及び小売り領域での新規参入企業の参入障壁低減効果も期待できる。しかし、オープンな取引市場であるからこそ、電力供給に甚大な障害を与えうる事象について、さまざまなセーフティネットが必要になることは言うまでもない。

 取引市場を法定化する大きな理由は、取引所の権能と責任を明確に定め、国民、行政等による取引所の監視と、不正行為の是正を行うことを可能にすることにある。電力卸市場には、取引所経由の調達と、相対契約による調達の2種類がある。
 前回 WGでは、この取引所経由の調達が、全体の3割程度になることを目指すということが、概ね合意された。この3割が、取引所での透明な価格決定プロセスとして扱うに十分かどうかは議論が必要だが、少なくとも、今よりも50倍程度の取引量になることは良いことだ。

 しかし、これまで地域独占型電力会社(東京電力や関西電力といった既存地域電力会社)が存在したことで、第三段階では、各地域には、地域独占型電力会社を出自とした巨大事業者が存在することになる。つまり、 .発電事業者としては、複数の発電設備を持つ単独の大規模発電事業者と、単一または少数の発電設備を持つ小規模発電事業者(複数)が混在。
 小売り事業者としても、巨大な顧客基盤を持つ単独の大規模小売り事業者と、少数の顧客を獲得している小規模小売り事業者(複数)が混在。という状況になることは、容易に想像できる。

 この、地域独占型電力会社を出自とした巨大2者(発電事業者と小売り事業者)が、取引所を介さず電力調達を行い、価格形成、需給調整、運用調整を不透明なまま行う事になると、透明な価格決定機能といった取引所の機能を損なうだけでなく、新規参入事業者に対する影響力行使等の不透明な市場支配が行われてしまうようになるだろう。

 このことを防ぐためには、地域独占型電力会社を出自とした巨大2者(発電事業者と小売り事業者)の取引に一定の規制を設ける(取引所利用の強制)か、あるいは、独占禁止法などの既存法制を用いて過度の相対取引を排除するかなどの強制力の適用が必要になるし、また行政はその規制を実行すべきである。
 また、相対取引も含めた、電力卸取引市場の監視も必須である。このような、制度設計を WGでも議論し、実装すべきである。

【論点2】
 第3段階では、電力卸取引所、広域連携機関、主たる送電事業者、さらに決済機構は、全国をカバーする単一の事業体でなければならない。また、その中立性も厳格に保たれることが必要。
情報システム開発の観点からも、単一事業者が望ましい

【意見】
 電力卸取引所の透明性を持った運用を考えると、わが国全体で単一の取引所が設置されることが望ましい。複数取引所も考えることもできるが、取引商品数、取引プロセス戦略の簡単化、約定プロセスの確実さなどを勘案すると、複数の取引所を国内に用意するメリットは、ほぼ無いと言えるだろう。また、情報システム投資を考えると、複数取引所にするメリットは、皆無である。

 単一の取引所が設置され、約定されうる取引は、その後託送手配が行われなければならない。ところが、この託送手配の確度を向上させるためには、広域連携機関が単一母体であることが望まれ、実際の託送処理をする送電事業者が、全国をカバー範囲として持つことが大切となる。なお、複数事業者が存在し、お互いに競争することは構わない。

 しかし、広域連携機関の運用とは独立して、地域に分断された送電事業者が、託送手配を恣意的に排除するような状況が生まれうるなら、それは取引所の信頼性の毀損にも通じ、取引所の利用を冷やす可能性がある。「約定しうるものは、運ばれることが当たり前」とならなければ、取引所利用への不安が市場に残ってしまう。

 このような状況を排除するためには、送電事業者が全国をカバー範囲とする事業体として成り立っていることが重要となる。地域に分断された送電事業者は、望ましいものではない。これは、システム投資の面からも、地域分割を温存するメリットは少なく、全体最適を目指すべきである。
 さらに、約定された取引を取り扱う決済機構(クリアリング機能)も、その運用の簡単化を果たすために、また処理の効率化を行うためにも、全国で単一の母体であることが、望ましいことは明らかとなる。

 第3段階つまり法的分離後に、地域独占型電力会社の送電部門が9つに分離したまま存在し、単一の広域連携機関の下、送電事業を行うという説もあるが、これは望ましいものではない。
 リスクも大きく、システム投資的にも、合理性の確保が難しい。
 地域最適から全体最適への道も塞ぐものにもなりうる。また、旧来の各種機構(ESCJ, JEPXなど)については、基本的に地域独占型電力会社からの影響力の排除や、中立性/透明性の確保に不安があるので、基本的には全て発展解消することが、妥当ではないか。






















③「電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ 委員名簿」
座長
・横山 明彦  東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授
委員
・稲垣 隆一  稲垣隆一法律事務所 弁護士
・大橋 弘  東京大学大学院 経済学研究科 教授
辰巳 菊子  公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問
・林 泰弘  早稲田大学大学院 先進理工学研究科 教授
・松村 敏弘  東京大学 社会科学研究所 教授
・圓尾 雅則  SMBC日興証券株式会社マネジング ディレクター
山口 英  奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授

専門委員
・中野 春之  東北電力株式会社 執行役員 電力システム部長
・前田 英範  中部電力株式会社 執行役員 営業部長
・野田 正信  関西電力株式会社 執行役員 電力流通事業本部副事業本部長
・瀧本 夏彦  中国電力株式会社 執行役員 経営企画部門部長
・寺島 一希  電源開発株式会社 審議役・流通システム部長
・遠藤 久仁  株式会社エネット 取締役営業本部長
・沖 隆株式会社 F-Power 取締役

⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む(3)
⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む(2)
⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む (1)

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声明:原発再稼働に前のめり? 原子力規制委員会の姿勢を問う
 2014年2月24日 NPO法人 原子力資料情報室

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2/25
・エネルギー基本計画:原発「重要なベースロード電源」明記
 政府は25日、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を決める「エネルギー基本計画」の原案をまとめた。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、一定規模を活用していく方針を明記した。「原発回帰と受け取られかねない」という与党の懸念に配慮し、素案からやや表現を弱めたものの、原発ゼロを目指すとした民主党政権からの方針転換は鮮明だ。
 茂木敏充経済産業相は25日の記者会見で「(素案から)いくつかの変更点はあるが、基本的に方向性が変わったとは認識していない」と述べた。

 政府原案は経産省の審議会が昨年12月にとりまとめた素案をもとに経産省が策定。同日午前の原子力関係閣僚会議で茂木経産相が示した。自民、公明両党との調整を経て年度内に閣議決定する見通し。
 原案は原子力規制委員会の新規制基準をクリアした原発について「再稼働を進める」と明記。再生可能エネルギーの導入促進などで「可能な限り原発依存度を低減させる」(???)とする一方、将来の原発規模を「安定供給、コスト低減などの観点から確保していく規模を見極める」とし、原発の新増設や建て替えにも道を開く内容にした。

 素案では、原発を「基盤となる重要なベース電源」としていたが、与党内の慎重論に配慮し「基盤となる」の文言を削除。「ベース電源」という言葉が原発の重要度を示すわけではないことを強調するため、季節や時間帯に関係なく安定的に出力できるという意味の「ベースロード電源」という専門用語に置き換えた。
 東京都知事選で「脱原発」に注目が集まったことなどもあり、素案に比べ原発をめぐる表現はやや弱まった。しかし、原発を中長期にわたり活用する方針に変わりはなく、東京電力福島第1原発事故を機に「2030年代に原発ゼロを目指す」と脱原発へとかじを切った民主党政権との方針の違いは明らかだ。
 国内の原子力発電所などで保管されている約1万7000トンの使用済み核燃料の問題では「国が前面に立って取り組む」としたものの、具体的な解決策は示されていない。高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の失敗続きなどで行き詰まりが明らかな核燃料サイクルについても「推進」の方向を維持した。(毎日 大久保渉)

・経産相、エネルギー基本計画「丁寧なプロセス経て閣議決定へ」
 茂木敏充経済産業相は25日午前、閣議後の記者会見で、エネルギー基本計画の政府案が決まったことを受けて「国民生活と経済活動に直結する重要な問題なので、いつまでと期限を区切らず丁寧なプロセスを経て(?)閣議決定していきたい」と述べた。計画は原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付けた。

 ベースロード電源は低廉で(?)昼夜を問わず供給できる電源、と説明した。茂木経産相はコストが低く安定供給が可能であるため、安全を確認したうえで再稼働する方針を示したが、併せて原発を可能な限り減らす、との政府の従来方針は「変わりない」(?)とも強調した。

 エネルギー基本計画は25日朝、関係閣僚が集まり、政府案を決めた。太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーについて政府案は「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」と明記した。経産相は「(再生可能エネルギーを)しっかりと推進していく方針を明確に示した」と語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

2/21 
大阪ガスと関西電力、自由化にらみ組織再編
「大阪ガスと関西電力が2016年にも予定される電力・ガス市場の全面自由化をにらんで組織を再編する。大ガスは今春をメドに電力事業の統括組織を新設。関電は20日、4月1日付でエネルギー関連サービスを手掛ける2子会社が合併すると発表した。自由化で電力・ガス市場の地域独占は崩れるとみられ、組織を刷新して競争に備える。・・・」(日経

・電力小売り自由化、7・5兆円市場参入に期待 「安定供給守れない」慎重論も
 自民党の部会が電気事業法の改正案を了承したことで、電力小売りの全面自由化がいよいよ現実味を帯びてきた。開放される電力市場は7・5兆円。新規参入者には大きなビジネスチャンスだが、既存の電力会社や自民党の一部には「原子力発電所の再稼働がないまま自由化すれば、電力の安定供給は守れなくなる」との慎重論もくすぶる。

 経済産業省が電力各社の家庭向け売上高から算出したデータによると、全面自由化でテレビやスマートフォン(高機能携帯電話)市場にほぼ匹敵する7・5兆円分の市場が新たに開放される。
 内訳をみると、東京電力管内が約2・7兆円と最大で、関西電力の約1・2兆円、中部電力の約9600億円が続く。東京ガスは「ビジネス拡大への期待は大きい」(岡本毅社長)として、家庭向け電力販売の検討を始めた。

 一方、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は14日の記者会見で、「(原発停止で)需給不安の中での全面競争は避けたい」と、スケジュールありきの自由化を牽(けん)制(せい)した。
 改正案を了承した自民党内でも、21日の電力システム改革の部会では「本当に電気料金が下がるのか」「ライフラインの電力事業に海外企業の参入を許すのか」など全面自由化への懸念の声が出た。
 原発再稼働の遅れで電力需給の将来像が見通せない中では、国会に改正案が提出されても、政府の思惑通りに法案審議がスムーズに進むかは予断を許さない。(産経 2/22)

・電力システム改革、攻防第2幕 業界の反発根強く
「電力システムの改革が第2ラウンドの攻防に入る。経済産業省は2016年に電力の小売りを全面的に自由化するために約40本の法案の今国会での成立を目指す。
 電力の新たな売り手として7兆円超と見込まれる市場への参入に道筋をつける改革には、既存の電力会社や自民党の一部に慎重論も浮上。先送りや骨抜きを探る動きも出始めた。・・・。」(日経 2/19)

・電力債の優遇 「競争妨げに」 自由化へ向け批判の声
 電力会社が一般企業より有利な条件で社債(電力債)を発行できるルールの見直しを求める声が強まっている。電力会社全財産を返済の担保にできるなど好条件で社債を発行でき、低コストでの資金調達が可能
 家庭向けの電力販売を電力会社以外にも認める2016年の電力小売りの全面自由化後は「新規参入業者との競争条件が不公平になる」との見方があるためだ。(西尾玄司)

 電力債には全財産を担保とし、他の債権より優先的な返済も認める「一般担保」が付く。これは、電気を安定供給するために大規模な設備が必要な大手電力会社の資金調達をしやすくすることを目的にした措置で、電気事業法三七条に規定されている。
 好条件で発行される電力債は「返済が確実」とみられ、無担保が多い一般企業の社債より利率を低く設定できる。関西電力が昨年十二月に募集した一般担保付きの社債(三年債)の利率は年0・527%だった。一六年には大手電力会社以外の事業者にも家庭向けの電力小売りが認められる予定だが、新規参入業者には一般担保付き社債の発行は認められていない。

 「不公平解消」のため政府は一時、電力債に一般担保を付ける措置の見直しを検討。しかし、一月二十日の電力システム改革に関する専門家の作業部会では経済産業省が「継続」を主張し了承された。福島第一原発事故後、信用を失った大手電力会社の資金調達が厳しくなっていることなどが理由だ。
 それでも専門家の間には「優遇」への批判が根強い。大阪大の八田達夫招聘(しょうへい)教授は「国が原発を電力会社から買い取るなど抜本的な対策を取らない限り、大手電力会社の経営環境は良くならない。優遇措置の継続で繕っても厚化粧を上塗りするだけだ」と指摘する。

 経産省は発電と送配電を別々の会社が行うことを認める「発送電分離」を実施する一八~二〇年に、あらためて一般担保の取り扱いを検討したいと主張。送配電部門は大手電力会社の「独占」が続き公共財の色合いが濃いため、新規参入業者の担当者は
 「一般担保付きの社債が発行できるのは送配電部門を担う大手電力会社の関連企業などに限定すべき。公平な競争環境を確保してほしい」と話した。

 電気事業法三七条があるため東電は原発事故の被害者への賠償金より、電力債の返済を優先することになる。政府はこれを「東電を破綻させられない理由」に挙げる。
 こうした中で東電は一六年度中の電力債の発行再開を検討。超党派の国会議員でつくる「原発ゼロの会」は先月末、「三七条」の廃止を求めた。事務局長の阿部知子衆院議員は「三七条は大手電力の経営をいびつにしている」と批判した。(東京新聞 2/4)