2014年2月21日金曜日

「エネルギー基本計画」(素案)を読む (3)

「エネルギー基本計画」(素案)を読む (3)

 経産省・資源エネルギー庁の「基本政策分科会」において、今後の「原子力政策」がまともに議論されたのは、昨年10月16日に開催された第7回会合のみである。
 この会合において、資源エネ庁が「資料」として提出した 「今後の原子力政策について」と題された文書がある。これこそが、その約一カ月半後に公表されることになる、「エネルギー基本計画」(素案)の作文化に向けた〈レジュメを兼ねた資料〉と呼べるものである。

「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見の骨子(案)」
「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見(案)」

 「今後の原子力政策について」は、前回紹介した辰巳菊子氏(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問)が、委員の中で一番まっとうな見解を述べているように私には読めた。(「議事録」の40頁を参照のこと)
・・
 辰巳委員
「・・・ とにかく資料を見せていただいた限り、議論の余地なしという印象を私は持ったということをお伝えしたかったんです。例えば、本日の資料1を拝見する限りですけれども、私が物心ついた頃から営々と国を挙げて築き上げられた日本の原子力政策を説明してくださっているように思えて、「だれが何と言おうとも、もう揺るがないものです」と書かれているように私には思えたんですね。

 ところどころには確かに「国民の声が大事」という表現も散らばってはいますけれども、やはり2011年3月11日のあの福島の事故が起こったことに対する国としての深い反省とか、今も避難
されている人々への思いやり等を微塵も感じることができない資料となっている
のではないかと
私は思いました。・・・。

 いきなり③のところに「国民の信頼回復」と書いてあるんですね。回復ということは、もともとあるところに戻すということですよね。本当にそこまでもともと信頼があって回復すると思っていらっしゃるのかなと思うので─この言葉からはですね。そうすると、私には、やはり相変わらず国だったり原子力政策に取り組んでいる事業者だったりの傲慢さを感じるのですね。その傲慢さを感じることによって、結局は対話が成り立たないと思っております。・・・。

 せめて、せめてなんですけれども、5ページに「できる限り原発依存度を低減させる」という総理のコミットメントをお載せになっているわけで、そのコミットメントに対しての、何でしょうか、この資料のどこかにそれが明確にあらわれているかというと、実を言うと全くないんです。 ・・・。

 政策なんですから、少なくともどういう方法で、どこまで低減させるのかもこの中にもっと具体的に表現していってほしいなと思ったりしております。今日はこれ1回目が出てきて、恐らくまたどこかでバージョンアップしてくださるのではないかと期待しますもので、今、申し上げたような話等も含めて、ぜひぜひ検討を加えていただければと思います。
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 しかし、辰巳氏の「期待」は、「素案」によって見事に裏切られることになる。
 では、「素案」のベースとなった 「今後の原子力政策について」の何が問題なのか。

 第一に、民主政権時に策定された「革新的エネルギー・環境戦略」(2012年9月14日エネルギー・環境会議決定) の全否定により、原発推進・再稼働の政府・経産省としての方針を確定し、(
ここからが重要であるが)、原発の新規建設にも道を開いたことである。

 「基本政策分科会」内の少数派意見を封殺する形で、事務局官僚が強引に「これまでの議論」としている、下の(1)「エネルギーセキュリティー」の1と2を見てほしい。
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1. 日本は非常に(石油に)依存している。我々の脆弱性をどれぐらい低くし得るかということも強く念頭に置いて、その中での原子力の役割とかエネルギー消費の削減とか、そういうものも考えていく。

2. 安全保障がゆえに石油依存・中東依存を下げる努力をし、原子力が位置づけられてきた。その観点から原子力の位置づけを明確にし、リプレースメントも含めた新増設といった議論もすべき原子力を含めて各エネルギーをバランスよく、合理的に維持していくことが重要。
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   「革新的エネルギー・環境戦略」を全否定し、「今後の原子力政策について」はどこに向かおうとしているのか? 多くの読者は「そんなことはありえない」と訝るだろうが、「エネルギー基本計画」の基本方針である。


  


  前回の「エネルギー基本計画」では、
①原発の「積極的な利用拡大を図る」とし、
③電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%(2020 年には約50%以上)とする。(現状34%) 、

④2020 年までに、9基の原発の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008年度)約60%、(1998年度)約84%)。
⑤2030 年までに、少なくとも 14 基以上の原発の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく、 としている。

 もちろん、「3・11」の結果、上の数字の再検討が迫られていることは確かである(「分科会」では、「25%程度」という具体的数字があがっている)。しかし、見過ごしてならないのは、「原子力ムラ」にとって最も重要なことは、「リプレースメントも含めた新増設」といった「議論」が可能になった、という点である。
 それは、安倍政権の既定方針を受けているように、一見、思えるかもしれない。しかし、実は「それ以上」のものである。

 理由は、次回、整理することにしたい。原子力ムラと日本の官僚機構をなめてはいけない。



 

⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む (4)」 につづく

⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む(2)
⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む (1)

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・電事法改正案を了承 自民会議
 自民党の経済産業部会と資源・エネルギー戦略調査会の合同会議は21日、電力小売りの全面自由化を柱とする電気事業法の改正案を了承した。2016年をめどに一般家庭まで含めてだれでも電気を売れるようになる。
 政府は早ければ月内にも法案を閣議決定し、今通常国会での成立をめざす。政府は電力システム改革を進めるため、電事法を3回にわたって改正する方針。今回の法案は2回目の改正となる。(日経

・中電が連動地震評価せず 南海トラフのみで算出
規制委指針 M9.6「影響小さい」
 中部電力浜岡原発(御前崎市)の4号機再稼働に向けた安全審査申請で、原子力規制委員会が津波対策の前提として示した南海トラフと南西諸島海溝との連動による最大マグニチュード(M)9・6の参考値について、中電側は「影響は小さい」として連動地震を事実上評価していないことが分かった。中電が最大で海抜二一・一メートルとした想定津波高は、M9・1の南海トラフ地震のみを前提に算出しており、地震の規模は大きく異なる

 規制委が公開した中電の申請書によると、津波の影響を評価するプレート間地震の対象に駿河湾-日向灘の南海トラフ地震を選んだ。その理由について、津波痕跡の文献調査などを根拠に「南海トラフに加えて南西諸島海溝が津波発生源となることによる(浜岡原発の)敷地への影響は小さいと考えられる」と説明。南海トラフ地震で「代表させる」として、連動地震やM9・6の具体的な影響評価は掲載していない。

 中電はM9・1を前提に海抜二二メートルの防潮堤建設を進めてきたが、地元住民らが中電に運転差し止めを求めた訴訟の控訴審では、規制委が示したM9・6を根拠に住民側が「防潮堤では安全を確保できない」と主張している。中電が安全審査を申請したことを受けて、東京高裁(滝沢泉裁判長)は二十日の進行協議で、中電に対し、住民側主張への反論を含め申請内容を踏まえた準備書面を三月十四日までに提出するよう要求した。

 M値が0・2増えると地震エネルギーが約二倍になるとされ、M9・6はM9・1の五~六倍の規模。規制委は原発の新規制基準に伴う津波対策の指針となる審査ガイドで、太平洋沖の津波発生源の一つに「南海トラフから南西諸島海溝沿いの領域」で起こりうる地震の参考値を最大M9・6と記載した。これに対し、中電はパブリックコメント(意見公募手続き)で「記載しない方が適切」などと異論を唱えた経緯がある。(中日