2014年2月18日火曜日

「エネルギー基本計画」(素案)を読む (2)

「エネルギー基本計画」(素案)を読む (2)

 新「エネルギー基本計画」については、近日中に「素案」に基づく「政府案」が策定され、さらにそれに基づき、閣議決定を経て、3月末までにその「政府案」が決定される見込みである、との報道がなされている。少なくとも、それが自民党の高市早苗政調会長の願望であるようだ。

 どのような「政府案」が登場するかは現時点ではわからないが、以下では、「素案」の問題点を押さえるために、これが「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」の事務局官僚原案として、分科会内の少数派意見を黙殺する形で作文されたものであることを見ておきたいと思う。

「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見の骨子(案)」
「総合エネルギー調査会基本政策分科会エネルギー基本計画に対する意見(案)」

 そのためには、「基本政策分科会 第13回会合」(2013年12月13日)において提出された「各委員から書面で寄せられた御意見」に目を通しておくことが必要である。 これを読むと、読者も「素案」とはまったく異なる分科会・少数派の見解を理解することができるだろう。

 少数派の見解を代表する、辰巳菊子氏(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問) と、植田和弘氏(京都大学大学院経済学研究科教授・研究科長)が会に提出した「素案」に対する見解の全文を紹介する。
 「素案」と少数派、どちらが理に適っているか?
 「政府案」が提出される前に、読者それぞれが判断して頂きたい。

2/20
・原発は「重要電源」 エネ計画政府案、表現残す
 エネルギー基本計画の政府案が19日、明らかになった。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、安全を確認できた場合は再稼働する方針を明確にする。将来的にも「確保する規模を見極める」との文言を盛り込み、当面は一定比率を原発に依存する。「重要」という表現をはずすべきだとの意見もあったが、温暖化対策や安定供給のために原発は欠かせないと判断した。

 与党との最終調整をへて、25日に関係閣僚会議を開き正式に決定する。今年度中の閣議決定を目指す。昨年12月に政府の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(会長は三村明夫・新日鉄住金相談役)がまとめた計画案に国民から寄せられた1万9千件の声や与党の意見を反映した。「基盤となる重要なベース電源」の表現から「基盤となる」の部分は削除する。

 当初案と比べて原発の活用を前面に出す表現は弱めた。公明党に配慮して将来の原発の活用も「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」としていた当初案からは後退させる。一方、電気料金の抑制や、廃炉に必要となる人材・技術水準の維持のためには必要な量を慎重に見極める必要があるため、ぎりぎりの表現(???)を探った。今後の公明党との調整で表現が変わる可能性もある。

 発電しながら消費した以上の核燃料を生み出せるとしてきた高速増殖炉もんじゅは「25年ごろまでの実証炉の実現、50年より前の商業炉の導入」という前回計画に明記した目標を撤回する。核のゴミを減らす「減容化」の研究を進める方針も明記する。
 太陽がエネルギーを放射する原理で発電でき、高レベル放射性廃棄物を発生しないとされる核融合の研究を進めることも新たに追加する。再生可能エネルギーは3年にとどまらず、最大限導入する姿勢を打ち出す。(日経電子版

・・・
◎辰巳菊子

 エネルギー基本計画に対する意見(案)に対し、意見を述べさせていただきます。
(1) 何度か分科会で申し上げた「国民の意見をきちんと聞いて欲しい」という意見は全く反映されず、このまとめに至った経緯は誠に残念です。
  参考までに、12月6日の第12回分科会に参考資料3として出された「国民からの御意見」(平成25年11月28日.平成25年12月5日)を読ませていただくと、原子力に関する意見がほとんどであり、総数44名の個人と1団体からの合計45の御意見でした。

 その内、「原子力が必要」「原子力をある程度残す」という意見は12名(27%)、「再生可能エネルギーに切り替える」「原子力ゼロ」という意見は26名と1団体(60%)、その他が6名(13%)で、いずれも真摯な御意見でした。限定的な期間の国民からの御意見だけですが、かなり比率的に正しく世論を表していると思います。

 こういった国民からの御意見は、このエネルギー基本計画に対する意見(案)の21頁にかろうじて、様々な意見があると一言記載されてはいるが、結果的には原子力の位置づけや方向性には全く反映されてはいない

(2) このエネルギー基本計画に対する意見(案)は、どういう位置づけのものなのですか。
 分科会委員の意見の集約ということで、議決を得たものであるのなら、ひとつの結論もありうるのかもしれませんが、今までの分科会ではそういう議決という過程は一度も踏まれていません
 したがって、少なくとも議論の分かれる原子力関連の部分はその書き方にさらなる検討が望まれます。 例えば、原子力の位置付け、政策の方向性など、16ページに記載されているような内容が、この分科会での意見と結論付けされることに同意できません。

 以下、各文言に対しての意見や加筆修正希望のところです。
●  3頁、第1章、第1節、1の本文5行目。「我が国は資源に乏しく」のところ、我が国の資源は豊富であると考えますので、このように定型文的に書かれることに同意できず、何度か委員会で意見を申し上げております。したがって、「我が国では現状ほとんどのエネルギー源を海外から・・・・」と修
正を希望。

●  3頁、第1章、第1節、1の本文12行目の「エネルギー自給率は19.9%にまで改善・・・」のところ、広く誰もが理解できるために19.9%の説明が必要。

●  5頁、第1章、第2節、2の9行から10行にかけての約3.6兆円の件、前回の説明ではやはり納得が出来ておりません。現状、ベース電源の原子力の代替は、メリットオーダーでの代替なら、安価な水力と石炭が主となり、総発電電力量も需要の削減に合わせ減っていると思います。それでもこのような数値になるのでしょうか。

●  6頁、第1章、第2節、3の(1)最後の段、2013年の現状は、この試算とは異なっていると考えられます。2013年12月の案であり、ここで、記載するにはデータ的には古いと考えます。全ての原発がとまっている現状に置いて、日本は経済成長を続けています。

●  16頁、第2章、第2節、1の(5)原子力の①のところ、重要なベース電源としての位置づけとしている点、1960年代からの経済重点政策と何ら変わりがないこと残念です。
 例えば、これからの50年先、100年先の未来を考えた時、一極集中的発電を行い、長い送電線で各地に運ぶという方式が果たして適切なのか疑問です。既に成熟しきっている日本において、国民の持続可能な暮らしを再優先とした政策を掲げる政府を期待します。

 もちろん核廃棄物問題も国が前面に立つとはいえ、簡単には結論が出る問題ではなく、結局また国民の暮らしを脅かす事になります。そのような爆弾を抱えたままで、本当にベース電源としての原子力が必要なのか、もっと熟慮が必要です。

 ここの文面からは、結局、安全神話時代の原子力の考えから全く脱却出来ておりません。
 したがって、ここには、「一方、既に成熟しきっている日本において、原子力をベース電源とすることに反対の意見もありました」と一言入れて頂けませんか。

●  尚、ここの文面からは、時間軸が明確で無いため、今後、新設やリプレースをするという意味合いが含まれていると取れます。「ここでは、新設やリプレースについては述べていない」という明確な説明をお願いします。

●  16頁、上段に引き続きの ②政策の方向性の「可能な限り低減させる」となっているところ、十分に見極めてからではなく、明確に、何と比較しての低減なのか、また着地点はいつ頃、どのぐらいのところを目指しているのかを、記載する必要があります。PDCAを実行しながら漸次削減ということであっても、まずPは先に立つものです。
 また、「その規模を確保する」という表現は、先に着地点を作る話であり、「可能な限り低減」という文言とは日本語的に相容れないと思います。つまり、「確保する」という言葉はここでは削除することを提案します。

●  引き続き、16頁、「再稼働を進める」の段落のところ、分科会の検討事項ではないと考えます。今後、政府の責任の元、決める内容かと思いますので、ここではこの段落は削除を願います。

●  17頁、(6)①の再生可能エネルギーの位置づけについて、直前の原子力では課題には触れなかったのに、再生可能エネルギーでは記載するという不平等な扱い方に、意図が見えます
 どのエネルギー源にもメリット、デメリットがあるという大前提で、分科会は進行していたはずです。

●  したがって、②政策の方向性のところでも、「今後3年程度」と何故に限定しなければならないのか不明です。まずは、再生可能エネルギーは期限なく最大限導入を加速させる必要があります。3年間と区切ることに反対です。なお、39頁に書かれている(3)固定価格買取制度の在り方のところの書き方には、同意します。

●  21頁からの原子力政策の方針のところは、前述している通りで、先と同じ文面のところは、同様の加筆修正を望みます。

●  40頁第4節以降第5節も含めたエネルギーの消費段階のところ、省エネ、節電の大切さや、新しい技術などの助けによるスマートな暮らし方など記載されていますが、まさに今後30年を待たずに実現する話だと思います。その時の電力需要量などを考えると、省エネ、節電はエネルギーミックスの大きな柱です。この考え方こそ海外への貢献とも繋がる日本の力です。

 一言、10頁の「新興国を中心とした世界的な原子力導入拡大」項のあたりに、「海外に原子力を輸出するのではなく、新しい技術などの助けによるスマートな暮らし方を輸出することこそ、歓迎される」と追加出来ませんか。

●  第9節のところ、ここに記載された双方向コミュニケーションは、原子力をベース電源とするというスタート点からの記載です。まずはエネルギーについて、国民各層の知るべき基本情報は何で、持続可能な暮らしはどういうもので、という基本的な知識が重要であり、自分で考えることができる素地を作るための、フラットな情報提供を、1から考え直すべきであると考えます。

 様々な考え方を知ることが何より重要であり、その結果、自分で、考えることができるようにしなければならないと思っています。電力の全面自由化を目前にして、消費者がどういう視点で、自分の電力を選択するのがいいのかなど、差し迫った情報提供と長期的視点にたった、教育などのコミュニケーションと絶えずシャワーのようなコミュニケーションが必要です。

●  また、電気も今後選択をするということから、ひとつの商品と考えると、その選択のための表示事項などの法制化も全くコミュニケーションの一環であり、視野に入れる必要があると考えます。
 以上です。

◎植田和弘氏 
A. (P18)(1)二次エネルギー構造の中心的役割を担う電気  「引き続き電化率は上がっていくと考えられ」とされているが、震災後定着しつつある節電行動やピーク対策を推進することで、電力の負荷平準化を明確に打ち出すべきではないか。

B. (P21)第3章第1節(2)エネルギー政策における原子力の位置づけと政策の方向性
 最終段落に「安全性の確保を大前提に、・・・・重要なベース電源として引き続き活用していく」となっているが、電源として使用する場合には、安全性の確保に加えて、放射性廃棄物の安全な最終処分ができること被曝労働問題の解決もあわせて大前提にすべきと考える。

 以上のような前提を置くと、「運転コストが低廉」とは言えなくなるし、位置づけも変わらざるを得なくなるのではないか。この場合、運転コストの中に安全対策費、廃棄物対策費、被曝労働対策費を含めるということである。

C. (P22)B.のような前提に立つと原発に依存することは難しくなると考える。
 そのことも踏まえると、「原発依存度については・・・可能な限り低減させる。」とされているが、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化」の程度によって低減の度合いが変わるのではなく、どの水準からどの程度いつまでに原子力依存度を低減させるのか明確にすべきではないか。
 16ページにも同じ記述があるが、それについても同様の意見である。

D. (P23) 2.具体的施策の方向性(3)対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組
 最終段落で「高レベル放射性廃棄物については、国が全面に立って最終処分に向けた取組を進める」となっているが、廃炉に伴って生じる放射性廃棄物については、同じ23ページ第3段落に「発生者責任の原則の下、電気事業者が処分に向けた取り組みを進めることを基本としつつ・・・」となっている。高レベル放射性廃棄物についても、同様の記述を入れるべきと考える。

E. 上記と関連するが全体として、汚染水対策、廃炉、使用済み核燃料、放射性廃棄物対策等のガバナンス、特に責任と費用負担について明確にしておく必要があるのではないか。

F. 核燃料サイクル政策やもんじゅについてはとても「引き続き着実に推進する」という記述が可能な状況ではないと考える。

G. (P27)原発輸出は核不拡散の観点からも問題が多いと考えるが、国がどういう関与をするのか明確にするべき

H. (P47)1.電気をさらに効率的に利用するためのコージェネレーションの拡大や蓄電池の導入促進
 「熱と電力を一体として活用することで高効率なエネルギー利用を実現するコージェネレーションは、・・・・導入支援策の推進とともに、コージェネレーションにより発電される電気の取引の円滑化等を検討する。また、利便性の高い電気を貯蔵することで、いつでもどこでも利用できるようにする蓄電池は、・・・引き続き、技術開発、国際標準化等により低コスト化・高性能化を図って いくことで、蓄電池の導入を促進していく。」

 の部分は、コージェネレーションの推進と蓄電池の推進の記載を分けて、コージェネレーションによる熱の有効利用の視点と、蓄電池による効用の視点を明確化した方よい。

 また、コージェネレーションにより発電される電気(電源構成の多様化・分散化、災害に対する強靭性を持つ)の取引の円滑化・電力系統ネットワーク地域コミュニティでの融通利用等ネットワークを活用した電力融通視点についても明確に記載すべきと考える。

I. 全体として、エネルギーの安定供給に留意しつつも、CO2削減対策を豊富化・明確化する必要がある。この点で、天然ガスの高度利用を推進することは、今後のエネルギー政策において不可欠である。 産業用熱需要を中心に、即効性があり、かつ省エネルギー・省CO2の費用対効果が高い。
 エネルギー基本計画の「天然ガスの政策の方向性」や、「産業部門等における省エネルギーの加速」に、天然ガスの高度利用を位置づけるべきである。
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⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む (3) 」へ
⇒「「エネルギー基本計画」(素案)を読む (1)」より

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規制委:優先原発絞り込み 再稼働審査、2〜3週間後に
 原子力規制委員会は19日の定例会で、再稼働に向けた安全審査の申請が出ている10原発17基のうち、審査を優先する原発を2〜3週間後に絞り込む方針を決めた。
 今のところ、活断層リスクの少ない九州電力玄海(佐賀県)や川内(鹿児島県)のほか、関西電力大飯、高浜(福井県)、四国電力伊方(愛媛県)などが優先候補に挙がっている。

 規制委によると、2〜3週間後に審査を優先する原発を絞り込んだ上で、これまでの審査結果に基づく「審査書案」を作成。立地自治体からの意見を聞く地元公聴会と、科学技術的な意見を一般から募集する「パブリックコメント」を経て最終的にまとめる。
 規制委の安全審査をめぐっては、茂木敏充経済産業相が「審査の見通しを示すべきだ」と注文をつけているほか、立地自治体からも「安全審査の説明責任を果たすべきだ」(福井県)などの不満が出ていた。(毎日 中西拓司)

・原子力規制庁:福島原発同型「沸騰水型」専門の審査チーム
 原子力規制庁は18日、原発の再稼働に向けた安全審査で、東京電力福島第1原発と原子炉が同じ型の「沸騰水型(BWR)」を専門に扱う審査チームを発足させたと発表した。昨秋からBWRの安全審査の申請が相次いだが、別タイプの原発の審査チームが掛け持ちで担当していたため、審査が遅れる可能性が指摘されていた。
 新チームは9人体制。BWRと別の「加圧水型(PWR)」の審査を担当してきた約80人のうち、BWRも審査していた9人をそのまま専門チームとした。今後も中途採用などで増員して約20人規模を目指す。
 新チームは、これまでに原子力規制委員会に安全審査を申請したいずれもBWRの
▽東北電力女川2号機(宮城県)
▽東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)
▽中部電力浜岡4号機(静岡県)
▽中国電力島根2号機(島根県)−−の4原発5基の審査を担当する。(毎日 鳥井真平)

・原子力規制委:大飯原発「活断層ない」 有識者報告を了承
 原子力規制委員会は12日、関西電力大飯原発(福井県)の重要施設「非常用取水路」を横切る断層「F−6破砕帯」について、活断層ではないとする有識者調査団の報告書を了承した。規制委が断層調査を進める6施設のうち、調査団の報告書を了承するのは、原子炉建屋直下に活断層があると判断した日本原子力発電敦賀原発(同)に続いて2例目。活断層なしとしたのは大飯原発が初めて。

 非常用取水路は3、4号機の原子炉冷却に必要な海水を送る施設で、敷地内をほぼ南北に走るF−6破砕帯が横切っている。原発の新規制基準では、活断層の真上に重要施設を設置することを禁じており、F−6破砕帯が活断層か否かが焦点となってきた。報告書は「将来活動する可能性のある断層等には該当しない」との表現で活断層説を否定した。

 大飯原発の断層問題は東日本大震災後の2012年7月、規制委の前身である経済産業省原子力安全・保安院が全原発の断層を再点検して浮上した。関電の提出資料が不十分であることなどから保安院は「活断層の可能性を否定できない」と関電に再調査を指示。
 業務を引き継いだ規制委は3回にわたって、現地に有識者調査団を派遣し、関電の調査結果の妥当性を検討した。その結果、調査団は昨年9月に「活断層ではない」との見解で一致。規制委は保留していた大飯3、4号機の再稼働に向けた安全審査を再開した。(毎日 岡田英)