リビアへの武力攻撃開始
米英仏など5カ国からなる多国籍軍は、19日午後(日本時間20日未明)、内戦状態が続くリビアへの軍事介入を容認した国連安全保障理事会決議に基づき、同国の最高指導者カダフィ大佐側の軍部隊や防空施設などに対する攻撃を開始。
もう無茶苦茶だ。何もかも無茶苦茶だ。
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20日のカイロ発のAP電によると、リビアへの武力行使を承認した先週の国連安保理決議を支持したアラブ連盟が、多国籍軍の武力攻撃を非難した。同様に、ロシアも反対していることがすでに報道されている。
理由はどこにあるのか。リビアの「文民」をカダフィの暴政や抑圧から「保護」するために行うとされた今回の武力攻撃が、実際には「文民」=一般市民を巻き添えにし、死者を出し、「保護」するものになっていないからだ。具体的に言えば、アラブ連盟は、「リビア空軍による反政府軍の拠点に対する空爆・攻撃を阻止するための飛行禁止空域の強制を支持したのであって、実際に行われている武力攻撃がその目的を遥かに超えた軍事行動になってしまっている」ことを批判したのである。
'Amr Moussa says the military operations have gone beyond what the Arab League backed. Moussa has told reporters Sunday that "what happened differs from the no-fly zone objectives." He says "what we want is civilians' protection not shelling more civilians."
しかし、こうなることは決議を採択する以前から、わかりきっていたことだ。アラブ連盟にせよ、ロシアにせよ、安保理決議に反対を表明せずに、その決議の履行=武力攻撃による一般市民の犠牲をもって武力攻撃の「やり方」を非難するというのは欺瞞もはなはだしい。とりわけアラブ連盟に関して言えば、多国籍軍の「やりすぎ」をなじっているにすぎないのである。
ではなぜ、「わかりきっていたこと」なのか。軍事戦略上の飛行禁止空域の強制とは、空軍をはじめとする全カダフィ軍の反撃能力の解体を最終目標とする、最初の集中攻撃となるからである。第一波の集中攻撃の規模が大きくなければ、カダフィ軍に壊滅的打撃を与えることはできず、そうなれば多くの一般市民の犠牲を当然、招くことになる。また逆に、カダフィ軍に壊滅的打撃を与えることができなければ、多国籍軍とカダフィ軍との戦争、カダフィ軍と反政府軍との内戦は長期化し、これも多くの一般市民を巻き込むことになる。どちらにしても、一般市民の犠牲は甚大になる・・・。
カダフィの暴虐から一般市民を「保護」するための武力介入は、短期決戦で構えるにせよ、長期戦になることを予め想定するにせよ、一般市民を「保護」しない。
要するに、ダメなのだ。
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リビアへの武力介入の正当性を問う
・Dancing with Qaddafi ---カダフィを愛した国々
・武力「介入の責任」に動き出す英仏
・フランス、リビア空爆を検討---EU緊急首脳会議で打診
・リビア空爆と「保護する責任」‐‐リビアへの「人道的介入」にNO!という責任
・「軍事介入はまだ早い」?---日本の新聞メディアの蒙昧
・国連安保理のリビア制裁決議について考える
・「保護する責任」は「文民」を保護しない---リビア情勢ではっきりしたこと
「「保護する責任」にNO!という責任」関連
・「保護する責任」にNO!という責任--人道的介入と「人道的帝国主義」
・人道的帝国主義とは何か---「保護する責任」と二一世紀の新世界秩序
・ヒューマンライツ・ウォッチ(HRW)とオクスファム(Oxfam)が理解できていないこと
・「保護する責任」を推進するNGOの何が問題なのか?
・「虐殺を見過ごすことは許されない」?
・「人道主義+介入主義=人道的帝国主義」---なぜ、この足し算が難しいのか
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・Al Jazeera English: Live Stream
5月
・リビア反体制派への財政支援協議 連絡調整グループ会合
反体制派と政府軍の攻防が続くリビア情勢をめぐり、欧米やアラブ諸国による「連絡調整グループ」の外相級会合が5日、ローマで開かれた。ANSA通信によると、会合冒頭のあいさつでイタリアのフラティニ外相は「反体制派への一時的な財政支援の枠組み創設」を提案した。 フラティニ外相によると、リビア反体制派「国民評議会」が内戦の政治的解決を目指して作成した「ロードマップ(工程表)」や、国民評議会が支配するリビア北東部からの原油輸出についても協議した。 ロイター通信によると、国民評議会側は医薬品や食料などのため15億ドル(約1200億円)の緊急支援を要請している。【ローマ共同】
4月
・米、無人機でリビア初攻撃=詳細非公表、作戦関与深める
米国防総省当局者は23日、リビアで米軍無人攻撃機プレデターを使って、初めて攻撃を実施したことを明らかにした。オバマ政権はリビア作戦への限定的な関与を主張しているが、無人機による空爆実施で介入を深めた形だ。 ゲーツ国防長官は21日にリビアの軍事作戦について、政府軍が群衆に紛れ込み、市民や反政府勢力との識別が困難になっているとして、低空飛行で精密攻撃できる無人機プレデターの投入をオバマ大統領が承認したと発表していた。【ワシントン時事】
・「リビア軍の市民攻撃は犯罪」国連人権高等弁務官が警告
リビア政府軍が反体制派を包囲し、激しい戦闘が続く西部ミスラタをめぐり、ピレイ国連人権高等弁務官は20日、市街地への無差別の攻撃は国際法に違反すると警告する声明を発表した。 ピレイ氏は声明で、非人道性が指摘されるクラスター爆弾が病院のそばで爆発したとの情報があるとし、「病院を狙った攻撃は戦争犯罪だ」と強調。「市民への無差別攻撃も国際人道法に違反する」と指摘した。「軍の司令官たちが下す命令は、今後の(国際司法裁判所の)捜査の対象になる」と警告した。(朝日・ジュネーブ=前川浩之)
・「カダフィ退陣まで軍事行動」 米英仏首脳が連名で寄稿
対リビア軍事介入をめぐって、オバマ米大統領、サルコジ仏大統領、キャメロン英首相が連名で、15日付の各国新聞紙上に寄稿した。カダフィ政権が退陣するまで、北大西洋条約機構(NATO)による軍事行動を続ける方針を表明している。 寄稿はインターナショナル・ヘラルド・トリビューン、仏フィガロ、英タイムズの各紙に掲載された。「カダフィ(大佐)が権力を握ったままのリビアの未来は想像できない」とし、カダフィ政権退陣による民主化移行を目指す3カ国の考えを強調している。 だが、ベルリンで15日に閉幕したNATOの外相会合では、攻撃強化を求める英仏に対し、米国は消極姿勢を保ったとされる。空爆をめぐる足並みの乱れが指摘されており、共同寄稿の背景には、結束を演出する狙いもありそうだ。(朝日・ベルリン=望月洋嗣)
・国連、リビアPKOの検討開始
国連報道官は13日、反体制派と政府軍が攻防を続けるリビアで、停戦が合意された場合の国連平和維持活動(PKO)部隊派遣や復興策について、国連内部で検討を始めたことを明らかにした。 潘基文事務総長が同日、リビア情勢をめぐりカタールで開かれた連絡調整グループの外相級会合で語った内容として紹介した。 潘氏は、戦闘開始からこれまでに約49万人がリビア国外に脱出し、国内避難民は約33万人に上ると指摘、最悪の場合、360万人に人道支援が必要になるとした。しかし、国連の緊急支援要請額3億1千万ドル(約260億円)のうち39%しか集まっていないとして国際社会に協力を求めた。【ニューヨーク=共同】
・リビア空爆強化をNATOに要求 英仏外相
北大西洋条約機構(NATO)加盟国から12日、リビア空爆のさらなる強化を求める声が上がり始めた。NATOは先週末から空爆を強化したが、戦況は足踏み状態にある。13日にはカタールで、14日からはドイツで関係諸国の会議が相次いで開かれ、攻撃のあり方が議論になりそうだ。 ロイター通信によると、フランスのジュペ外相は12日、ラジオ番組で「NATOの軍事行動は不十分だ」と発言し、現在の戦況に不満を示した。英国のヘイグ外相も同日、欧州連合(EU)外相会合のために訪れたルクセンブルクで、NATOの攻撃をさらに強化するよう求めた。
これに対し、NATOのユム准将は12日の会見で「成果は十分、上がっている」と反論した。 NATOは激戦地の西部ミスラタなどに先週末から集中的な空爆を続けており、カダフィ軍は「混乱の兆候を示している」(ブシャール司令官)という。 NATOは「空爆のテンポを上げている」と強調しているが、カダフィ政権軍の抵抗は根強く、戦況が大きく改善する状態には至っていない。(朝日・ブリュッセル=野島淳)
・多国籍軍が反体制派を誤爆か 関与政策に厳しさ
【カイロ大前仁、ベンガジ(リビア北東部)杉尾直哉】国内の戦闘が泥沼化するリビアで、北大西洋条約機構(NATO)が主軸となる多国籍軍は1日夜、北東部マルサエルブレガ周辺で「友軍」となる反体制派の車両や救急車を爆撃し、少なくとも13人が死亡した。AFP通信によると殺害されたのは市民4人と反体制派兵士9人。爆撃された車両の生存者は、儀式の「祝砲」として上空へ発砲した直後に爆撃されたと証言しており、誤爆の可能性が高い。国際社会では多国籍軍の軍事介入への批判が根強く、欧米のリビア関与政策が厳しくなることは避けられない。 NATO報道官は事実関係の調査を始めたと語った。
AP通信によると、この地域では儀式の際に上空へ発砲する習慣があり、生存者の男性は搬送先の医師に「祝砲」の一環として発砲した後に爆撃されたと証言。中東の衛星テレビ局アルアラビーヤは、反体制派兵士10人が爆撃され死亡したと報じた。 ただ、ロイター通信によると、政府軍の戦闘員が反体制派の車両に紛れ込み、上空を旋回する多国籍軍機に向けて対空砲を発射していたとの情報もある。
米仏英などの多国籍軍は先月19日にリビアで軍事作戦を始めて以降、空爆や艦船からの爆撃の対象をリビア政府軍や軍施設に限定してきたと説明。NATOによると、先月31日に米軍から空爆の指揮権を受けた後の24時間で、178回軍用機を出撃させ、うち74回で空爆を実施した。
一方でリビア政府軍は、標的になりやすい戦車などを捨て、反体制派民兵組織と同様、四輪駆動車に兵器を積んで攻撃する作戦を取っているとされる。 このため、多国籍軍側は空からの政府軍・民兵の識別が困難になっているとみられ、リビア政府は多国籍軍側の空爆で民間人に犠牲が出ていると主張。リビア国営テレビは2日、病院で手当てを受ける女性や子供の映像を放映し、「西部ミスラタでNATOの空爆を受け、負傷した」などと報じた。
このような状況下で、首都トリポリに在住するカトリック教会の関係者は先月31日、近郊住民の証言を集めた結果、少なくとも民間人40人が被弾し死亡したとの見解を発表。NATOは同案件について調査に乗り出した。また英BBCは、マルサエルブレガ在住の医師の証言として、多国籍軍が爆撃した政府軍車両に爆薬が積まれていたことから、周辺の家屋に被害が及び、住民32人が死傷したと報じた。
欧米諸国はリビアにおける「民間人保護」を根拠として、軍事作戦に踏み切ったが、反体制派へ武器供与を検討し始めるなど、深入りする様子をみせている。一方で先月29日にロンドンで開いたリビア問題に関する国際会議で、国連安保理理事国のロシアが欠席するなど、国際社会の足並みは一致していない。(毎日)
・オバマ大統領、リビア反体制勢力支援へ秘密命令
ロイター通信は30日、オバマ大統領がリビア最高指導者カダフィ氏の放逐に向け、反体制勢力をひそかに支援することを承認する秘密命令に署名したと報じた。 命令は、大統領が中央情報局(CIA)による秘密工作を承認する際に必要な法的手続きで、2、3週間前に署名されたという。(⇒I Knew it, I knew it!)
米CNNテレビやニューヨーク・タイムズ紙も、CIAがリビア国内で反体制勢力との接触を開始したと報じている。ただ、米国が反体制勢力に活動資金や武器を提供するには、改めてホワイトハウスから許可を得ることが必要という。カーニー大統領報道官は声明で、報道の確認は避けつつも、「反体制勢力に対する武器供与をめぐる決定は下されていない」と強調。
・リビア決議 武器供与 割れる解釈(3月31日)
リビアの反体制派への武器供与が可能かどうかをめぐり、軍事介入に際して採択した国連安全保障理事会決議の解釈が問題となっている。決議1970号が「武器禁輸」を定める一方、決議1973号は「市民保護のためあらゆる手段が可能」とし、武器供与は合法、違法どちらともとれるためだ。米国は供与に積極的で、英仏も同調しつつあるが、ロシアや中国が「拡大解釈」と反発する可能性がある。 米が武器供与に積極的な解釈を示す背景には、最高指導者カダフィ大佐派の戦車などによる激しい攻撃で、多くの市民が巻き添えになっていることがある。市民の保護には、兵力を地上戦に投入するのが最も効果的だが、安保理決議1973号は、地上軍の投入を禁じている。
クリントン米国務長官は27日、米CBSテレビに「武器禁輸はカダフィ派を対象としたものだ」と主張。その上で「1973号はいわば例外規定で、多国籍軍や国際機関が認めれば、武器供与は可能だ」と述べた。 これに対し、英国は当初否定的な見解を示していたが、キャメロン首相が30日、「武器供与の可能性を排除しない」と発言。フランスのジュペ外相も同日「現状では違法なものの今後の議論の用意がある」と積極的な姿勢を表明した。 しかし、北大西洋条約機構(NATO)は「両勢力どちらも支援しない」(ラスムセン事務総長)との立場。武器禁輸の国連決議については「リビア全体を指し、反体制派も対象」との解釈が一般的な見解で、英BBC放送によると、国連安保理の外交筋は「強引な解釈で武器供与にお墨付きを与えれば、政治的な信用を失いかねない」と指摘している。【東京新聞・ロンドン=有賀信彦】
リビア政権移行へ対話窓口設置へ 関係国が会合
ロンドンで29日開かれたリビア問題に関する関係国会合は、カダフィ政権に正当性はないとの認識で一致し、政権移行を具体化するためにリビア反体制派との対話窓口となる「連絡調整グループ」を設置することを決めた。また、主導的な立場にある米英仏は、反体制派への武器供与やカダフィ大佐に亡命を促すことなどの検討に入った。 会合の議長を務めたヘイグ英外相は29日の記者会見で「カダフィ(大佐)とその政権は完全に正当性を失っており、自らの行動の責任を負うという認識で一致した」と述べ、各国・機関が国連安全保障理事会の決議に基づく軍事介入の妥当性を再確認したことを明らかにした。また、8万人に達するとみられる国内避難民などへの人道的支援を急ぐことでも合意した。
政権移行を促すための「連絡調整グループ」の構成は固まっていないが、ジュペ仏外相は「約15カ国に国連、欧州連合(EU)、アフリカ連合(AU)、アラブ連盟を加えた規模」になると述べた。アラブ諸国の協力が重要であることを示す意味も込めて、できるだけ早い時期にカタールで初会合を開く。 「カダフィ後」の政権の受け皿としては、反体制派でつくる国民評議会を「唯一の代表」とはせず、「重要な仲介者」と位置づけることで合意したという。
国民評議会の代表者は、会合参加国との個別協議で武器の提供を要請。これに対しクリントン米国務長官は会見で「結論は出していない」としながらも、安保理決議上は「合法」と解釈できるとの見解を示した。ジュペ氏も「参加国と議論の用意がある」と話すなど、今後、反体制派に対する軍事協力を進める可能性を示唆した。 カダフィ氏の亡命による事態収拾に関して、クリントン氏は「彼(カダフィ氏)が国を去ることも議題になるかもしれない」と視野に入れていることを明らかにした。これについては、英仏も前向きな姿勢を示している。 【朝日・ロンドン=稲田信司】(⇒こうなることは目に見えていた)
・米大統領、リビア介入の成果強調 今後は非軍事で圧力
オバマ米大統領は28日、リビア情勢について国民向けに演説し、多国籍軍による軍事行動で「カダフィ政権の破壊的な進軍を止めた」と成果を強調した。ただ、米国は武力による「カダフィ政権退陣」は目指さず、今後は反体制派の支援や国際的な制裁の強化などに力を注ぐ意向を示した。 ワシントンの国防大学で演説したオバマ大統領は、軍事行動を決断した理由について、カダフィ政権が反体制派の拠点都市ベンガジで市民を虐殺するおそれが高かった事情を説明。「米国はそうした事態に目をつぶっていることはできない」と述べ、欧州やアラブ諸国も参加する国際的な軍事行動である点を強調した。
また、カダフィ政権は「国民の信頼を失い正当性がない」とし、即時退陣を改めて要請。ただ、フセイン政権打倒を目的としたイラク戦争の泥沼化を念頭に「軍事的な任務に体制打倒を含めることは過ちだ」と指摘。今後は、反体制派への支援を強めるとともに、国連安全保障理事会の決議に基づく武器禁輸やカダフィ政権の資産凍結といった非軍事の圧力で、民主化を後押しする考えを示した。 今回の軍事行動を主導した米軍の役割についても、指揮権が30日に米国から北大西洋条約機構(NATO)に移った後は、偵察や補給などの側面支援が中心になると表明。「この結果、米国の納税者の負担も、米兵の危険も大幅に減る」とし、多額の出費を伴う軍事行動に懐疑的な米国民に理解を求めた。
19日に始まった軍事行動「オデッセイの夜明け」については、米議会から「オバマ政権の説明が不十分」「米国益との関連が不明瞭」などの批判が出ている。 またオバマ大統領は28日、リビア情勢をめぐって29日にロンドンで開かれる関係国会合を前に英仏独の首脳と電話で協議し、カダフィ政権の退陣を求める方針で一致した。【朝日・ワシントン=望月洋嗣】
・NATO軍に対リビア全指揮権、本格地上攻撃へ
北大西洋条約機構(NATO)は27日、大使級理事会を開き、多国籍軍が行ってきた対リビア軍事作戦の全指揮権を米軍から引き継ぐことで合意した。 リビアの最高指導者カダフィ氏率いる政府軍の地上部隊に対する直接攻撃は、後方に下がりたい米国に代わり、軍事機構NATOが前面に出ることで、本格化する。米英仏主導だった軍事介入は新局面に移る。 NATOのラスムセン事務総長は理事会後に声明を出し、「我々の目的は、カダフィ体制からの攻撃の脅威にさらされている市民や居住地を保護することにある」と述べ、「市民の保護」を目的に、カダフィ派地上戦闘部隊への空爆を本格化させる姿勢を示した。 国連安保理決議に基づき、これまで多国籍軍が行ってきた
〈1〉武器禁輸のための海上封鎖
〈2〉飛行禁止空域の維持管理
〈3〉市民の保護――に関する軍事作戦は、すべてNATO指揮下に入る。ロイター通信によると、実際の指揮権移譲には最長3日間が必要という。【読売・ブリュッセル=工藤武人】
・UAEが参戦撤回 欧米に痛手
リビアへの軍事作戦に関し、アラブ首長国連邦(UAE)が当初表明していた戦闘機参加を取りやめたと、UAE紙「ナショナル」(電子版)が22日伝えた。近隣のバーレーン情勢に関する欧米諸国との見解の不一致が原因という。今後は、リビア国民への人道支援などにとどめるとしており、リビア攻撃でアラブ諸国との一体感を演出したい欧米諸国には痛手となる。 同紙が伝えた元空軍幹部の話によると、バーレーンでは2月中旬からイスラム教シーア派住民らのデモが続き、イランの関与で情勢が悪化。欧米諸国はこうした事態の深刻さを理解せず取り組みが不十分だとしている。
一方で、バーレーンのシーア派住民の間では、サウジアラビア軍のバーレーン介入や市民弾圧を黙認して混乱を招いているのはむしろ米国だとの見方が強い。こうした中、欧米諸国によるバーレーン情勢への深入りは難しく、UAEの翻意を促すのは困難とみられる。アラブ諸国では、ほかにカタールがリビア攻撃への軍事参加を表明している。【毎日・マナマ鵜塚健】
・ドイツ軍機、アフガン派遣へ リビア攻撃を間接的に支援
ドイツ政府は23日、ドイツ連邦軍の空中警戒管制機(AWACS)をアフガニスタンへ派遣することを閣議決定した。ドイツはリビアへの軍事介入に慎重な姿勢を貫き、国連安保理決議を棄権したため、フランスなど北大西洋条約機構(NATO)の同盟国から批判を受けていた。アフガンでの追加負担に応じることで、リビアへ介入しているNATO諸国の負担を減らし、間接的に支援する形だ。 ドイツがリビア軍事介入に参加しなかったのは、海外での軍事行動に懐疑的な世論を意識した国内事情が大きい。リビアは事態が泥沼化するとの見方が強く、NATOの主要国として軍事貢献を求められることへの懸念が大きかった。ただ、安保理決議棄権で、西側主要同盟国から孤立する結果(?)になり、国内からも「同盟国の信頼を損なった外交の失敗」との批判が相次いでいた。 【朝日・ベルリン=松井健】
・カダフィ氏「人間の盾」か 標的そばに市民、空爆中止に
多国籍軍による軍事行動が続くリビアで、カダフィ政権が空爆を防ぐため民間人を「人間の盾」に使っていると、在外の反体制派幹部が朝日新聞に証言した。英軍機が爆撃を一時中止するなど多国籍軍の作戦にも影響が出ており、反体制派は反発を強めている。
空爆が始まった19日以降、首都トリポリのカダフィ氏の邸宅がある施設前には多くの市民がいる。在ジュネーブの反体制派幹部によると、政府軍が市民の家を壊して住人を連れてきたり、孤児や家政婦らを強制的に集めたりしているという。 政府軍は、反体制派が掌握する西部の都市ミスラタに進攻する際にも、近郊の町から多数の市民を動員。反体制派の反撃を防ぐため、戦車や装甲車に乗せたとされる。反体制派幹部は「我々が市民に発砲できないことを知り、人間を盾に使っている」と政府軍を批判。
多国籍軍は21日もリビアへの攻撃を実施したが、英国防省は、20日夜からの攻撃では「標的近くに多数の市民がいる」として、戦闘機トルネードによる空爆を中止したと発表した。ロイター通信によるとゲーツ米国防長官は22日、「民間人の犠牲を避けるため、人口の少ない地域の防空施設を狙っている」と述べた。 一方、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは多国籍軍機が22日、反体制派の拠点のベンガジへ向かっていた政府軍機を攻撃したと伝えた。また、リビア北東部で21日夜、米軍のF15戦闘機が故障のため墜落したが、パイロット2人は無事に救出されたという。【朝日・カイロ=伊東和貴】
・軍事作戦 指揮権で調整難航
・リビアへの欧米諸国の軍事作戦について、オバマ大統領は、現在米軍が持つ作戦の指揮権を、数日中にNATOに移し、ヨーロッパ主導に切り替えたい考え。しかしNATO内では作戦の指揮にどう関わるのか意見が分かれており、難しい調整が続くことが予想される。
・オバマ大統領。21日、訪問中のチリで。「米軍の戦線は世界各地に広がり負担も多い。負担を減らすためにも、国際社会からは航空機やパイロットなど具体的な協力を求める」。
・一方、イギリスのキャメロン首相。21日、議会下院。「軍事作戦の指揮権は米国からNATOに移されるだろう」と述べ、作戦に伴う負担は一部の国が負うのではなく、ヨーロッパなどが多国間で分け合うべきだとの考えを示した。
・これに対し、NATO加盟国の間では、軍事作戦に主導的な役割を担うことについてトルコが強く反対、ドイツも慎重な姿勢。カダフィ政権が反政府勢力への攻撃を続けるなか、軍事作戦の長期化も踏まえ、作戦の指揮にどう関わるのかを巡って各国間で難しい調整が続くことが予想される。
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・U.S. and Allies Strike Libya--Qaddafi Pledges ‘Long War’ Against West/ NYTimes
・米艦から巡航ミサイル124発 リビアの軍事施設を攻撃 リビアに対する軍事介入を開始した米英仏などの多国籍軍は19日夜(日本時間20日未明)、米軍が地中海上の艦船から20カ所以上のリビア軍事施設に向けて巡航ミサイル「トマホーク」を124発撃ち込むなど軍事作戦を本格化させた。一方、リビア最高指導者のカダフィ大佐は徹底抗戦の構えをみせている。
19日午後にサルコジ仏大統領が軍事介入の開始を宣言した後、オバマ米大統領も訪問先のブラジリアで「米軍に限定的な軍事行動の開始を許可した」と発表した。攻撃は、リビア上空の飛行禁止空域を確保するため、リビア政府軍の防空網を破壊するのが目的。これによって政府軍による反体制派攻撃を食い止められるかが焦点になる。
ロイター通信によると、米軍は20日、戦闘機によるリビア政府軍の地上部隊などに対する空爆を実施。多国籍軍の軍事行動は2日目に入った。 米国防総省によると、今回の軍事作戦名は「オデッセイの夜明け」。19日時点で米英仏とイタリア、カナダが参加している。 米統合参謀本部のゴートニー海軍中将は「(リビア東部)ベンガジを中心とするリビア国民や反体制派への攻撃を防ぎ、飛行禁止空域の条件を整えること」が攻撃の目的だと説明。今回の攻撃は「複数段階にわたる軍事作戦の第1段階」との位置づけで、米アフリカ軍司令部が指揮をとったが、今後、多国籍軍に指揮権を移すという。
リビア側が受けた打撃は明らかになっていないが、ロイター通信によると、マレン米統合参謀本部議長は20日、米テレビのインタビューで「昨日の作戦は非常にうまくいった。飛行禁止空域は整った」と語った。 カダフィ大佐は20日未明、国営テレビを通じて多国籍軍の攻撃は「十字軍による残忍で正義のない侵略行為」と非難し、「地中海が戦場になる」と報復を示唆した。ロイター通信はリビア当局者の話として、市民を含む64人が死亡したと伝えた。【朝日・ワシントン=望月洋嗣、カイロ=貫洞欣寛】
・米英仏などの軍事攻撃支持 松本外相が談話
松本外相は20日、米英仏などがリビアに対する軍事行動を開始したことについて「日本政府は、リビアによる自国民に対する暴力の即時停止を求める立場から、国連安全保障理事会決議にのっとり加盟国が措置することを支持する」との談話を発表。
談話では、「リビアが国際社会の呼び掛けにもかかわらず、国民に暴力を継続していることを強く非難する」と強調。「リビアにおける攻撃の脅威の下にある文民と居住地域を保護することが目的」として軍事行動を支持した。同時に「即時停戦を目的として、あらゆる外交努力が行われるべきだ」とも指摘。国連やアフリカ連合(AU)、アラブ連盟などによる外交努力継続に期待を示した。