ノーマルを装いながら、アブノーマルな日常を生きる
⇒【福島原発】フォトジャーナリストが緊急現地報告
1
この二、三日だろうか、測定された放射線量の数値に言及する枝野官房長官の記者会見のニュースやキャスターたちの表現で、「人体/健康に直ちに影響を与えるレベルではない」の「直ちに」がやたらと耳に障るようになった。 「直ちに」という日本語が、その瞬間、瞬間において、福島原発で起こっていることに対する政府や東電の責任を免罪するかのように強調されている、そう聞こえてしまうのである。私だけだろうか?
今週、首都圏の私たちは、
①朝起きたときには、福島原発正門前と周辺、都庁や各県庁が公表する放射能値を「チェック」し、
②一日中、数十分おきに襲う強い余震に何度もビクッ!とさせられながら(夜中に目覚めたりしながら)、
③寝る前には輪番停電制のために、ご丁寧なことにも東電がわざわざグループ分けまでしてくれた、自宅と職場のグループ番号の「分担」時間帯と、
④JR、私鉄、地下鉄やバスの運行状況を「確認」する、という生活パターンを早くも「習得」した(北関東や千葉の一部地域では、鉄道機関の運休状態が今でも続いている地域がある)。
みんな人生で初めての経験だ。核と地震は人間を差別しない。
人間とは不器用な生きものだが、「慣れる」ということを覚えてしまう動物でもある。逞しくもあり、恐ろしくもある。そして私たちはいま、身体の芯にたまるような疲労/徒労感を飼い殺そうとfranticにもがいている。
2
「直ちに」が、やたら耳に障って仕様がないのは、私がきわめて不健康な輩で、疲労/徒労が身体の芯のそのまた芯にまでたまるように感じてしまう、何とも軟弱な人間にすぎないからなのだろう。
そんな私が、「直ちに」により「イラッ!」とすることがあった。文科省がプロ野球セ・リーグの公式戦の開幕日の延期を、日本野球機構(NPB)に事実上、命令したことだ。この国の政治家や官僚は、いまこの国に必要なのは、ノーマルを装いながらアブノーマルな日常を生きること、そのことを理解できないのである。
「いかにも政治家/官僚らしい」としか表現しようがないが、見かけだけの「自粛」ムードの演出、予定されたスポーツ・娯楽・イベントを中止するという発想ほど、いまの日本に害になるものはない。停電を恐れるなら、具体的数値をあげてその分、節電をすればよいだけだし、それでも現実的に厳しいというなら、阪神の新井選手が声明を出したようにデイゲームにすればよい。ただそれだけのことだ。国が介入し、中止命令を出す性格のことではない。
そういう国の挙動の一つ一つ、その背後で動く官僚の透けて見える狙い、何も心に響いてこない「要人」たちの言葉や釈明の数々が、疲れている私たちを余計に苛立たせるのである。
私は感傷を好まない。
この国/私たちは、現場作業員=一般の労働者を先頭に、国家・地方公務員としての自衛隊員・機動隊・消防隊員が続く形で、かれらが被曝し、死んだとしても、その非業な被爆/死に、国/私たちのサバイバルを託すという、まさに狂気の世界を生きている。聞くも語るも、おぞましいが、それがリアリティである。「被曝して死んでもよいから国を破滅から救え」--。この国の防衛大臣が昨日自衛隊に「指示」したのは、そういうことだったのではないだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・
・「速やかに放水やらねば処分」国の指示か 都知事が抗議(3月21日)
石原慎太郎・東京都知事が21日、首相官邸の菅直人首相を訪ね、東京消防庁による福島第一原発への放水作業に関連し、国の対応に抗議。政府関係者が「速やかにやらなければ処分する」と同庁隊員に指示し、長時間放水した結果、放水車が壊れたなどとしている。都関係者によると、この政府関係者は海江田万里経済産業相という。海江田氏周辺は「そのような発言の事実はない」と否定。
・・・・・・・・・・・・・・
3
この異様さと異常さを、ひとときでも忘れることのできるスポーツ・娯楽・イベントは、被災した人々にも私たちにも必要だ。少しでも経済と金を回し、雇用を作る役割をも果たすという意味では、それ自体がいまもっとも重要な経済活動の一つでもある。
すでに単なる統計上の値として抽象化され、「記録」を「更新」し続ける死者の「数字」に恐れ、おののくべき私たちの神経は、完全に麻痺してしまっている。しかし、いま現に進行過程にあるからこそ見過ごされているのは、これから大震災がもたらすであろう社会・経済的「二次災害」である。その犠牲者は、大震災のそれを数十倍上回る統計上の数値となって、いずれ私たちの視界に入ってくることになるだろう。
アブノーマルな日常を生き、耐え、働きながら私たちは、予想よりも早く日本を襲撃するであろうハイパー・スタグフレーションにも備えなければならない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・造幣局「桜の通り抜け」を4時間短縮 被災者に配慮
独立行政法人・造幣局(大阪市北区)は28日、春の恒例行事「桜の通り抜け」を4月14~20日に開催すると発表。東日本大震災の被災者への配慮や東京電力の計画停電を踏まえ(?)、ライトアップを中止。夜は例年より4時間短縮し、午後5時までとする。 造幣局は中止を検討したものの、「多くの人に親しまれた行事」として開催を決定した。過去5年は期間中に平均約70万人が訪れたが、ライトアップ中止で見物客が2~3割減る可能性があるという。 会場は大阪市北区天満1丁目の造幣局南門(天満橋側)から北門(桜宮橋側)への一方通行(約560メートル)。128品種352本で、今年は白色の花を咲かせる「伊豆最福寺枝垂(いずさいふくじしだれ)」が加わった。平日は午前10時~午後5時、土・日は午前9時~午後5時。問い合わせはハローダイヤル(050・5548・8686、午前8時~午後9時)。会場には、東日本大震災の被災者支援を目的とした募金箱が設置される。(朝日・瀬戸口和秀)
・8月の東京湾大華火祭は中止
東京の夏の風物詩となっている東京湾大華火祭(中央区など主催、朝日新聞社など後援)の今年の開催中止が22日、決まった。東日本大震災を考慮した。中止は、強風の影響で開催できなかった1997年の第10回以来2回目。
今年は8月13日に予定していた。中央区の矢田美英区長は「現在、31万人にのぼる避難者が厳しい生活を強いられている。こうした被災地の状況を考慮(?)し、中止することにした」との談話を発表。昨年は晴海ふ頭などで実施。約1万2千発が上がり、約70万人の人出。
・長野マラソン中止 世陸女子代表選考は海外レースか
長野マラソン大会組織委員会は22日、来月17日に開催予定だった第13回大会の中止を発表。東北地方太平洋沖地震、長野県北部地震、福島原発事故の被害などを考慮した上で、安全かつスムーズな運営ができないとして、中止の判断に。なお、参加予定だった8973人分の参加費7627万500円は、被災地への義援金とし、完走者へ贈られる予定だったタオルなどの記念品も被災地に届けられる予定。今大会が世界選手権(8月・韓国)の女子代表選考代替レースの候補となっていた。日本陸連は今大会が中止の場合、海外のレースを選考会とする方針。
・セ・リーグも延期、29日開幕に 今シーズンは延長なし
プロ野球セ・リーグは19日、3月25日に決めていた公式戦の開幕を同29日に延期すると発表した。全体の日程は動かさず、25~27日の計9試合を後ろに回すなどして対応する。文部科学省から東京電力、東北電力管内でのナイター試合の開催自粛などを要請されたことを受け、6球団の代表者が東京都内に集まって協議した。今季は延長戦を行わないなどの対応策も打ち出した。
29日の開幕から4月3日までは東京電力、東北電力管内である9試合をすべてデーゲームで開催する。その後はナイター開催を予定しているが、照明を減らすなど大規模な節電策を講じるとした。 さらに今季は延長戦は一切行わず、9回打ち切りとする。夏場はできるだけデーゲームにする方針も発表した。
セ・リーグは17日、当初の予定通り25日開幕の決行を決めたが、翌18日に文科省が加藤良三コミッショナー宛てにナイター自粛などの要請を出した。25日開幕に反対していた日本プロ野球選手会も、改めて再考を要望。それらを受けて、各球団幹部は19日、対応に追われた。
25日開幕を発表した時点で、加藤コミッショナーは政府・監督官庁の指示には従う、としていた。セの各球団も「監督官庁に従うのは間違いない」(中日・西脇球団代表)という姿勢を変えていない。当初の日程のままでは25日の開幕戦で、東京電力管内にある東京ドーム(巨人―横浜)と神宮球場(ヤクルト―阪神)がナイターを開催することになる。東京ドームに関しては、デーゲームに変更しても電力消費量は大きく変わらない。25日に開幕を強行するのは、極めて難しい状況に追い込まれていた。
・<センバツ>時間短縮や応援自粛方針発表 大震災被害に配慮
第83回センバツの大会事務局は19日、ナイター試合回避を目指した時間短縮や、応援自粛に関する変更点を発表した。18日の臨時運営委員会で、東日本大震災の被害に配慮する方針を決めたのに伴うもの。主な変更点は以下の通り。
▽開会式(23日午前9時)は、入場行進を行わない代わりに、事前に外野に整列し1校ずつマウンド方向へ前進
▽試合前のシートノックは例年の各校7分から5分に短縮
▽アルプス席での応援では、原則として太鼓やブラスバンド、応援リーダーの笛、チアリーダーのポンポンは使用しない。メガホンの使用や人文字を描くことは可能(毎日新聞 3月19日)。(⇒まったくのナンセンス、意味不明の「自粛」である)
・・・・・・・・・・・・・・・・・