「保護する責任」は「文民」を保護しない---リビア情勢ではっきりしたこと
NATOがリビアの24時間監視体制に入ったとCNNが伝えている。
⇒NATO starts 24/7 surveillance of Libya
本格的なリビアの民衆蜂起が始まって1月近く経つ。犠牲者は確認されているだけで1000人を超え、負傷した人々は限りない。出稼ぎ労働者を含む難民・国内避難民は40万人を突破しただろうか。
この間、米英仏やEU/NATO諸国など、「保護する責任」や「人道的介入」を推進してきた国々は何をしてきたのか。一般市民の犠牲を増やさないために、紛争を調停し、戦闘行為を即時停止させる、そのために何をしてきただろう。自国の経済的権益を守り、武力介入のための国際的・国内的合意形成をはかる、それだけではなかったか。
おそらくこのブログの読者の中には、「保護する責任」や「人道的介入」論に関心を持つ研究者やその卵、学生、NGO関係者の人もいることと思うが、これらに対する少しは予備知識を持つ者の結論として言えば、「保護する責任」は紛争の犠牲になる人々を保護しない。その決定的な理由は、内戦などの国家内の武力紛争が起こった際に、国連や地域機構が紛争調停能力もその意思も持たないからである。
国連に紛争調停機能やそのための組織がないわけではない。しかし事実上、まったく機能していない。そして国連事務局・事務総長、安保理、常任理事国のすべてが「外野席」からカダフィに攻撃をやめろだの、辞任しろだのを叫ぶだけである。
国連や関係諸国は、武力紛争が起きたときに、「文民保護」において最も重要な、調停による戦闘行為の中止のために全力を尽くそうとしない。本来一番最初にやるべきことを、やろうとしない。「文民」を見殺し状態のまま、放置する。武装勢力への軍事援助を含めた、武力「介入の責任」を果たすために時間稼ぎをし、そこに論点を飛躍させようとする。 これが「保護する責任」の「第二の柱」から「第三の柱」への移行過程のリアル・ポリティクスである。
理論としても現実政治に照らしても、it doesn't work!
これが私の結論である。
⇒Hallelujah John Cale
2011.3.8
中東の衛星テレビ、アルジャジーラは8日までに、リビアの最高指導者カダフィ大佐が反体制派に対し、自らと家族の安全の保証と、反体制デモに対する弾圧について罪に問われないことを条件に権限を移譲する退陣提案を行ったが、反体制派が7日に拒否したと報じた。
欧米諸国から退陣を求められ、国際刑事裁判所(ICC)による訴追も必至の情勢下で、カダフィ氏が「名誉ある撤退」を模索している可能性もあるが、真偽は定かではない。反体制派はあくまでもカダフィ氏の無条件での即時退陣を求めている。
カダフィ政権は国会に当たる全人民会議を開き、「条件付き退陣案」について詳細を話し合う計画を反体制派に伝えたという。政権側は首都トリポリや地中海沿岸の中部にあるカダフィ氏の出身地シルトを守るため、反体制派が掌握した都市の奪還を狙い攻撃を続けているが、激しい抵抗に遭っている。(共同)
2011.3.7
7日付の英紙インディペンデントは、米政府がサウジアラビアに対し、リビアの反体制派へ武器を提供するよう水面下で依頼していたと報じた。同紙によると、米政府は反体制派がカダフィ政権の部隊に対抗するため対戦車ロケット弾や地対空ミサイルなどを必要としているとサウジ側に打診。これまでのところ、サウジ側は依頼に応じていない。
サウジ側が武器を提供すれば、米国は長期化するリビアでの攻防に直接の介入を回避でき、飛行禁止区域の設定を求める圧力も弱まる、との狙いがあるとしている。(共同)
飛行禁止の決議案に着手 英米仏、リビア上空に
【ロンドン共同】ヘイグ英外相は7日、英国などがリビア上空に飛行禁止区域を設定する国連安全保障理事会決議の草案作成に着手したことを明らかにした。議会で表明した。米CNNテレビは同日、英国と米国、フランスが作成作業を開始したと報じた。安保理常任理事国の間で対応が分かれる飛行禁止区域設定をめぐり、決議案作成に向けた具体的な動きが明らかになったのは初めて。
ヘイグ氏は「安保理のパートナーと緊密な協議を行っている」と述べた。 飛行禁止区域の設定は、カダフィ政権側による反体制派拠点などへの空爆を阻止するための最も重要な措置。反体制派がつくる「国民評議会」も国際社会に対し設定を求めている。 しかし、リビアの制空権確保の難しさやそれに伴う軍事力行使などを理由に慎重論や反対論も根強い。