2011年3月26日土曜日

「自主避難」と「風評被害」

福島第一原発とプルトニウム
プルトニウムとは何か〉
①人体への影響が極めて大きいアルファ線放出。呼吸などで体内に入ると骨や肺に沈着、強い発がん性帯びる。ただし原子炉が爆発しない限り、遠くまで飛ぶ恐れなし(空気中では3センチも進めないとされている。しかし水には溶けるので土壌中から地下水に溶け込む)。
 同位体のうち代表的なプルトニウム239半減期約2万4千年。体内に入ると放射線を出し続け、排出されにくい。核兵器の材料に。アルファ線は、人体に入ったときの影響力はヨウ素などから出るガンマ線の約20倍。放射性障害のほか化学物質としての毒性があり、腎臓障害などを引き起こすことも。
②原発の使用済みウラン燃料中には主に質量数238~242の5種類のプルトニウムが含まれる。含有量はプルトニウム239、240、241の順に多い。福島第一原発3号機は、プルトニウムにウランを混ぜた混合酸化物(MOX 猛毒性あり)を燃料にするプルサーマル実施。今回検出されたプルトニウムはここから出た可能性大。ただしプルトニウムは他号機の燃料にも使用され現時点では出所不明。
〈高木仁三郎による参考文献〉
・『プルトニウムの恐怖』岩波新書、1981
・『プルトニウムの未来――2041年からのメッセージ』岩波新書、1994
「頼れる仲間プルト君——プルトニウム物語」???
「内部被曝とは」チェルノブイリ周辺で甲状腺癌治療に従事した「菅谷昭」松本市長記者会見の抜粋 (ガジェット通信)

*原子力安全委員会・代谷誠治委員「核燃料は、原子炉の運転が止まっても、使用済みになっても熱がなかなか下がらない」「冷却までは長期間におよぶだろう。年オーダーで考えていただきたい」(2011/3/29)

「原子力安全委員会」提言
1、「屋内退避」区域→「線量が高いと考えられる区域に住む住民に対し積極的な自主的避難を促すことが望ましい」。
2、「これらの区域以外の屋内退避区域に住む住民も、予防的観点から自主的に避難することが望ましい」。
3、「現在の防護区域を変更する必要はない」。
4、「緊急時モニタリングの結果などを踏まえ防護区域の見直しについて適時検討(?)することが肝要。特に、空間線量率が高い値を示している地域は注意(?)する必要がある」。
・「防災計画は、屋内退避がずっと続くことを想定しておらず現状がある程度長く続くとの予想の下、条件が整う(避難できる)人は無理にとどまらなくてもいい(?)ということだ」。
・「全体的に放射線量は低下傾向にある。水や食物の摂取制限を守れば(?)健康に影響はない」
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北西50~60キロで土壌汚染も 仏研究所
 フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)は、福島第1原発事故で大気中に放出された放射性物質が今後1年間に、同原発から北西に向かう帯状の50~60キロの範囲で土壌に強い影響を与える可能性があるとする報告書をまとめた。特に雨に含まれた放射性物質が遠方に拡散し、地上に堆積(たいせき)する危険性を指摘している。
 報告書は、米国が計測したこれまでの放出量などをもとに、土壌汚染が原発から北西50~60キロの範囲で帯状に続き、最高でフランス人の年間平均被ばく量の4~8倍になる可能性があるとした。一方で、放射性物質の中には半減期が短いものがあるため、土壌の汚染度は数週間で低下するとも指摘した。【毎日4/15 パリ福原直樹】
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「自主避難」と「風評被害」


 国や自治体は、私たちが何もしないで放っておいたら、私たちの「生命と財産」を守らない。これが「ボトムライン」だ。

 私たちは、福島第一原発から漏出し、放出される放射能に汚染されずに生きる「権利」がある。しかし、その「権利」は憲法にも法律にも明文化されていない。つまり、国や自治体にはその「権利」を保障する憲法/法律上の「義務」はない。
 私たちは、憲法やいろんな法律の関連条文・条項を引っ張り出し、国・東電・自治体に対して、私たちが放射能に汚染されずに生存する「権利」を保障させるよう、仕向けるしかない。そして国・東電・自治体が果たすべき行政・企業責任を明確にし、被害を受けた場合には、その補償をきちんとさせる。あたりまえの事だ。そのために私たちは政府・自治体に税金を払い、東電に電気代を払い、彼/彼女らすべての、特権的でぜいたくな生活を保証している/かれらが真っ先に、勝手に自分たちに保証することを許しているのだから。

 法律的に言えば、現在私たちは「原子力災害対策特別措置法」が定める「原子力緊急事態宣言」発令後、「原子力緊急事態解除宣言」が発令されるまでの中間期間に生きている。政府がいまやっているのは、「原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む)の拡大の防止を図るため実施すべき応急の対策」ということになる。
 いま政府は、「緊急事態応急対策及びその実施責任」を負っている。逆に言えば、私たちは政府にその「責任」を果たさせなければならない

 政府が果たすべき/政府に果たさせるべき「責任」の内容は、「措置法」第二十六条が規定している。 具体的には、
 一  原子力緊急事態宣言その他原子力災害に関する情報の伝達及び避難の勧告又は指示
 二  放射線量の測定その他原子力災害に関する情報の収集、
 三  被災者の救難、救助その他保護
 四  施設及び設備の整備及び点検並びに応急の復旧、
 五  犯罪の予防、交通の規制その他当該原子力災害を受けた地域における社会秩序の維持
 六  緊急輸送の確保、
 七  食糧、医薬品その他の物資の確保、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去その他の応急措置の実施、
 八  前各号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む)の拡大の防止を図るための措置

 昨日の報道の問題は、「避難の勧告」地域の拡大が、「異常な水準の放射線量」の「検出」が「前提」でなければならないかのように、政府が主張したことに対し、その批判的論評がなかったことだ。(⇒ここで言う「放射線量」とは、第十五条一項が定める「主務大臣が受けた通報に係る検出された放射線量又は政令で定める放射線測定設備及び測定方法により検出された放射線量」のことをさす)
 毎日新聞の記事は、次のように書いている。
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1, 20~30キロ圏内に対する自主避難要請は24日夜、首相官邸の主導で対象の9市町村に伝えられたうえで、枝野幸男官房長官が25日の記者会見で発表。
2, 原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づく避難指示を出せば、放射性物質による汚染拡大を政府が正式に認定することになり、周辺住民の不安に拍車をかけかねない(⇒完全なる詭弁、欺瞞)。一方、屋内退避の長期化で不自由な生活への不満が住民側に強まっていたため、超法規的な「要請」によって政府批判の緩和を狙った・・・。
3, 原発事故の対応を超えた政治判断は保安院にはできないため、25日に原子力安全委員会の臨時会を開き、放射線のモニタリング結果などを理由に、自主避難が「望ましい」と助言する形をとった・・・。
4, 原災法に基づく避難指示は「異常な水準の放射線量」の検出が前提。自主避難を自治体に要請する根拠法はなく、実際に住民を避難させるかどうかの判断は各市町村に委ねられた。避難先の確保や移動手段なども市町村が考えなければならず、野党からは「中途半端」などの批判がかえって強まっている・・・。
5, 菅直人首相は25日夜、避難指示に切り替えなかったことについて「原子力安全委員会の専門家の判断を尊重した対応」と強調、しかし保安院関係者は「先に判断したのは官邸。避難指示は放射線量が高いまま下がらない場合などに検討する」と語り、官邸指示に従った苦肉の策だと認めた・・・。
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 私は、上の1~5、すべてが無茶苦茶だと思う。
 おそらくこの問題、原発事故をめぐる「被害」と「避難」の問題は、「原爆訴訟」や「水俣訴訟」と同様に、今後半世紀以上をかけた対東電、国賠訴訟へと発展してゆくだろう。


 毎日新聞は今日(3/26)の社説で、こう書いている。
 「原発から20~30キロ圏の人々は長期にわたる屋内退避を指示されたまま、日常生活が困窮している。被ばくを恐れ、外部からの物資も届かない。こうした状況は、かねて指摘してきたように、一刻も早く解消すべきだった。
 政府は25日になって、この地域に「積極的な、自主的避難」を呼び掛けた。なんともあいまいな表現だが、政府や自治体は住民がスムーズに避難できるよう、手立てを尽くしてほしい。事情があって後に残る人々への手当てにも、責任を持ってもらいたい。(⇒政府が「責任」をとろうとしないから「あいまいな表現」にしようとするのである)。
 放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない(?)こともわかってきた。原発の北西約35キロでも一日中外にいると一般人に定められた1年間の線量限度を超える地点が出てきている。 政府は、まず、各地域の放射線量の積算値や増減傾向を地図上で示してほしい。さらに、今後の「注意予測」を、地域ごとに示してほしい。そうした情報があってこそ、自治体も住民も行動計画が立てられる」。

 「こうした状況は、かねて指摘してきたように」と書いているが、私は毎日新聞が「自主避難」地域の撤廃→避難地域の拡大を社説で「指摘」した事実を知らない。もちろん、私が見落としているだけかもしれないが、事故発生後、朝日、読売、産経の社説でそのような主張をしたものは一つもない。日経や東京新聞の社説に関する記憶もない。
 おそらくこれが、大地震による災害報道と原発による災害報道の決定的違いだろう。メディアの「眼」が、放射能汚染の拡大に焦点があてられ(首都圏への「影響拡大」など)、現場周辺地域で汚染や被曝の被害を受ける人々の存在に向わないのだ。原発事故被災者の「見捨て/見殺し」の構図である。

 「放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない」というのも、私には意味がわからない。これは放射性物質が第一原発から同心円状=均一的に拡散しないという、当たり前の事後的調査の結果をもってそう言っているだけのことであって、避難地域を拡大しないことの正当化にはなりえない。どこにどれだけ放射能被害が現れるかを事前に予想することはできないからだ。つまり、避難区域は同心円的に拡大する以外に方法はない。それをした上で、被害が集中している地域をモニタリングによって特定し、その地域に対する重点的救援・支援を実施する責任が国にはあるのである。
 

 「原子力災害対策特別措置法」は国、原子力安全委員会、原発電力会社に都合のよい法であり、今回の事故により明らかになったことを教訓化し、より被災者と潜在的被災者(=私たち)の視点に立ち、全面的に改正される必要がある。
 問題点は多々ある。しかしここでは〈原子力安全委が言う「空間線量率」ではダメだ〉という点に限定し指摘しておきたい。「空間線量率」から〈総合線量率〉への転換である。

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千葉北部の一部、葉物野菜の出荷停止検討 地域は限定(朝日・4月2日)
 食品の放射能汚染問題で、農林水産省などは近く、千葉県北部の一部地域について原子力災害特別措置法に基づき、葉物野菜の出荷停止を指示する方向で検討を始めた。県単位以外の制限は初。千葉県は首都圏への野菜の大供給地であることも配慮し、地域を限定する。
 千葉県は3月25日、旭市や多古町のホウレンソウや同市のシュンギク、パセリなどで暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと発表。31日には新たに香取市のホウレンソウで超えたほか、旭市でも引き続き超えた。ただ、千葉市以南では1件も超えていない。  このため農水省などは、千葉県北部の市町村や農協単位で、ホウレンソウなどの葉物野菜の出荷を止める方針だ。現在でも千葉県は旭市などに出荷自粛を要請し、市場に出ていないが、法的根拠を示して確実に止める必要があると判断した。
 一方で、検査で繰り返し基準を下回った場合、現在制限されている福島など4県の一部地域について、制限を解除する検討もしている。  農水省の2008年の統計では、千葉県は全国シェアでホウレンソウは15%、シュンギクが16%でともに全国1位。東京都中央卸売市場の10年の取り扱い実績では、ホウレンソウ、ハクサイなどの「葉茎菜類」で千葉県産は全体の8%。福島、茨城、栃木、群馬の4県を加えると全体の54%

IAEA勧告要請、安全委「国内判断問題なし」」(3/31)
 原子力安全委員会「国内では総合的に判断しており、現状の判断に問題ない」。代谷誠治委員「我々は、人体に直接的に影響を与える所を評価しているので、より正確である」。
 経産省原子力安全・保安院「(累積放射線量を試算した結果)いま避難する必要性はない」。

飯舘村で高放射線、長期間なら避難指示も 枝野長官
 枝野官房長官、31日午前の記者会見。「直ちにそういった(指示を出す)ことではない性質のものだが(?)、必要があれば(?)対応したい」。飯舘村は福島第一原発から北西に約40キロ。「土壌の放射線値が高いということは、蓄積していけば、長期的には(健康に)影響を与える可能性はある(?)」。(⇒「蓄積」しない保証と対応策を政府・東電は持っているのか? 無茶苦茶な答弁だ)
飯舘村、避難基準超す 日本にIAEA勧告
東日本大震災に伴う福島第1原発事故で、同原発から約40キロ離れた福島県飯舘村で測定された放射線レベルが、国際原子力機関(IAEA)の避難基準を超えていたことが30日、分かった。IAEAはウィーンでの記者会見で、同原発から20キロ以内を避難指示圏に設定している日本政府に対し、状況を「注意深く」評価するよう勧告したことも明らかにした。
 IAEAのフローリー事務次長は会見で、飯舘村での放射線レベルの測定値が「IAEAの作業上の避難基準のひとつを上回った」と述べた。その上で「我々は(日本政府に)状況を注意深く評価するよう勧告し、日本は既に評価中であることを示唆している」とも述べた。日本に対し事実上、地元住民への避難指示圏の見直しを促したものとみられる。 IAEAのこうした見解は、福島第1原発からどこまでの範囲の住民に避難指示を出すべきかを巡り、新たな議論を呼びそうだ。
 IAEAの専門家の説明によると、飯舘村の土壌で測定された放射性物質の濃度は、1平方メートル当たり約200万ベクレルで、IAEAの避難勧告基準の約2倍に相当するという。ただ、飯舘村の測定値は1カ所のみで測られた散発的なデータで、あくまで初期的な評価であることを強調した。
 飯舘村は、避難指示圏の外側に設けられた屋内退避指示圏(福島第1原発から20~30キロ)のさらに外側にある。福島第1原発から遠く離れた場所で放射線レベルが突出していることについて、日本の文部科学省は「地形や風向きの影響と考えられる」としていた。 一方、天野之弥事務局長は30日の会見で、原発の安全対策などに関する初めての高官級会議を6月20~24日にウィーンで開催すると発表した。IAEA加盟国の首相や外相などに招待状を送るという。【毎日・ウィーン樋口直樹】

セシウム基準、妥当と評価=引き上げの余地残す-食品安全委
 食物に含まれる放射能セシウム134、同137から受ける人体への影響に関し、内閣府の食品安全委員会は29日、厚生労働省が暫定規制値の根拠とした年間許容量の5ミリシーベルトについて、「かなり安全側に立ったものである」とし、現状で妥当とする評価をまとめた。 暫定規制値をめぐっては、農畜産物の出荷などを制限された自治体から、見直しを求める緊急要望が政府に提出されている。これに対し、蓮舫消費者担当相は、「食品安全委員会の中で結論を出したい」としていた。同委は放射性ヨウ素131の暫定規制値についても、現行の基準を妥当と判断したことから、厚労省は規制値引き上げについて、当面は慎重な判断を下すとみられる。 ただ、食品安全委は放射性セシウムについて、緊急時には年間10ミリシーベルトとしても差し支えないとの見解を示しており、将来的な引き上げについては余地を残した。(時事)

放射性物質の基準「厳格さ求めすぎ」 民主・岡田幹事長
 民主党の岡田克也幹事長は27日、農産物の出荷停止や摂取制限の目安となる放射性物質の基準値について、「少し厳格さを求めすぎている」と述べ、風評被害を招かないためにも見直しが必要との認識を示した。青森県八戸市で記者団に語った。 現在適用されている食品衛生法の基準値は暫定的な数値で、食品安全委員会が体内に取り込んでも健康に問題がない数値について議論している。岡田氏は「心配ないものは心配ないときちっと言えることが必要だ。科学的な厳格さを求めすぎれば(?)風評被害になる」と指摘した。(朝日)(⇒この人は「科学的な厳格さ」など存在しないことが問題であることを理解しようとしない。「基準」に対する政治的介入の始まり)

20~30キロの自主避難要請、最大2万人が対象
 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、同原発から半径20~30キロの「屋内退避」圏内の住民に自主的に避難するよう求めた政府の25日の要請は、福島県内のいわき市や南相馬市など9市町村に住む最大約2万人が対象となる見通し。  9市町村の総人口は約50万人。ただ、すでに自主的に避難した住民や、人口約34万人のほとんどが屋内退避圏外に住むいわき市が含まれていることなどから対象者が少なくなっているとみられる。
 屋内退避圏内に残っている住民が最も多いのは南相馬市で、30キロ圏外の住民も含めて市内には約2万人が残っている。このうち屋内退避圏内には「1万~2万人が残っている」(桜井勝延市長)といい、市が確認を進めている。 ほかの8市町村の圏内についても正確な数字は把握されていないが、県は「1500~1600人ほどが残っているのでは」と見ている。
 政府の住民に対する「圏外への避難指示」は、11日に3キロ圏、12日朝に10圏、同日夕に20キロ圏と広がった。全域が20キロ以内に入る避難指示圏は双葉、大熊、富岡の3町。15日に屋内退避の指示が出た20~30キロ圏内にかかる9市町村のうち、浪江町、広野町、楢葉町、葛尾村、川内村の5町村はすでに30キロ圏外の他の自治体に役場機能を移転した。  枝野幸男官房長官は25日の記者会見で自主避難の要請について「避難を希望する人が増加するとともに、商業・物流に停滞が生じ、社会生活の維持、継続が困難となりつつある」と理由を説明。

放射性物質:食品や飲料水、規制値緩和へ 食品安全委
 食品や飲料水に含まれる放射性物質について、内閣府の食品安全委員会は25日、暫定規制値の根拠となっている健康への安全性の許容範囲を広げる方針を固めた。これを受け、厚生労働省は現在より緩やかな規制値を策定する見通し。暫定規制値は厚労省が17日に急きょ策定。原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」を用い、水や食品から1年間に摂取するヨウ素を50ミリシーベルト以下、セシウムを5ミリシーベルト以下としている。【毎日・小島正美、中西拓司】

放射性物質:風評被害作物も「補償の対象に」…鹿野農相
 鹿野道彦農相は25日の閣議後会見で、東京電力福島第1原子力発電所の事故による農産物の放射能汚染について「事故との間に相当の因果関係が認められれば補償の対象になる」と述べ、政府が指示した出荷制限などによる直接的な損害に加え、対象品目外の農産物が風評被害のため販売できなくなった場合なども、東電や政府による補償の対象になりうるとの考えを明らかにした。 原子力災害の風評被害をめぐっては、99年に茨城県で起きた核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所の臨界事故で補償が行われた前例がある。【毎日・行友弥】

福島の全農家に作付けの延期を要請 原発事故で県
 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故を受け、福島県災害対策本部は25日、県内の全農家に田植えや種まきなどの農作業を当面延期するよう求めた。県内各地で土壌汚染の恐れがあるためだ。国と協力して土壌の分析を進め、農地が安全かどうかを判断したうえで作付けの指示を出す。 農協(JA)などの組織を通じて農家に伝える。また、25日から県のホームページなどで県内の全農家に作付けの延期を呼びかけ始めた。農家が被る損失は、国や東京電力に補償を求める方針だ。
 福島県内では4月以降に田植え作業が本格化するが、県はできるだけ遅らせることを要請した。また、大豆やソバなどの畑作物も種まき時期を遅らせること、花類も露地栽培について作付け準備を遅らせることを求めている。畑を耕す作業は放射性物質が広がる恐れがあるため、取り組まないことも求めた。
 政府は福島県に対し、葉物野菜などの摂取制限や出荷停止を指示している。農家には出荷できない野菜がたまっているが、県は焼却処分などをすると放射性物質が拡散する恐れがあるとして、そのまま保管するよう求めた。
 福島県で栽培が盛んな桃や梨などの果樹は病害虫防除などの管理をしないと翌年以降の収穫に影響するため、樹木の管理は例年通り取り組むことを認めた。
 福島県はコメ生産が全国4位と盛んで、農業産出額は全国11位の農業県。しかし、放射能漏れ事故の影響で、原発から半径20キロ圏内は避難指示が出ており、農作業に手がつけられないままだ。20キロ圏外でも県内各地で葉物野菜から放射性物質の検出が相次ぎ、農家から「作付けはどうすればよいのか」との声が相次いでいた。(朝日・中川透、村上晃一)