大学研究と軍事研究 2015
-日本型軍産学複合体の台頭
日本型軍産学複合体が、いよいよ本格的に起動したようだ。 防衛省が、文科省や経産省と密接に連携し、大学や独法系研究機関、大学ベンチャーを巻き込みながら、「軍民両用」(デゥアル・ユース)の軍事技術・兵器開発に乗り出したのだ。 そのための仕組みを、「安全保障技術研究推進制度」と言うが、防衛省はこれに本年度3億円の予算を確保し、一件あたり最大3000万円の研究資金供与を餌に、研究者を釣ろうとしているのである。これは、「戦後」日本の大学史上、初のことである。
防衛省によれば、「安全保障技術研究推進制度」とは次のようなものである。
・・
防衛省では、装備品への適用面から着目される大学、独立行政法人の研究機関や企業等における 独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成するために、平成27年度から競争的資金制度※である 安全保障技術研究推進制度を開始します。
本制度は、防衛省が掲げた研究テーマに対して、 広く外部の研究者の方からの技術提案を募り、優れた提案に対して研究を委託するものです。得 られた成果については、防衛省が行う研究開発フェーズで活用することに加え、デュアルユース として、委託先を通じて民生分野で活用されることを期待しています。
※資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点 を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金。
⇒平成27年度版 安全保障技術研究推進制度パンフレット [366KB]
・・
朝日新聞など一部メデイアも、22日付けでこの動きを報じている。
ポイントをまとめるなら、次のようになる。
・7月8日に募集を始め、8月12日に締め切って10件程度を選ぶ
・成果は「将来装備に向けた研究開発」で活用
・実用化の場として「我が国の防衛」 「災害派遣」 「国際平和協力活動」の三分野
日本型軍産学複合体の台頭と軍学共同の軍事技術・兵器開発の動向については、このブログでも再三にわたり取り上げてきた。昨年以降では、「大学研究と軍事研究 2014 」(2014,5/2)、「動き始めた日本の軍産学複合体 」(7/7)、「軍事化を深める日本の「国際協力」とODA 」(7/11)などを参照していただきたい。
問題は、大学や研究現場の反応である。
私は、安倍「安保法案」に反対する大学や独法系研究機関の研究者は、この「安全保障技術研究推進制度」に対しても、明確に反対する立場を表明すべきだ、と考えている。けれども、実際には、大学や研究現場の反応には寒々しいものがあるといわねばならない。
軍学共同に反対する運動を展開してきた理論物理学者、池内了氏も幾分悲観的にみえる。あるアンケート調査によれば、大学研究者の実に三分の一は、軍学共同研究を「よし」としているらしいことも、現場を知る氏を憂鬱にさせている一因なのかもしれない。
・・
第2次世界大戦以降、日本の学術界は総じて軍事目的に資する研究を放棄し、大学の多くは、違法ではないのだが、軍事関連の研究を徹底的に排除してきた。現在、一部の教授はこうしたプロジェクトに協力し、大学や科学研究機関はこれらの教授に一段の自由裁量を与えている。
国会は近く、戦後初めて防衛省から大学に直接支給される研究基金制度案を承認する見通しだ。これは安倍政権が着手した、民間研究と軍事研究を分ける境界線をあいまいにする2つの政策のひとつだ。
3億円という金額は小さい。ただ、名古屋大学の池内了名誉教授(宇宙物理学専攻)にとって、これはルビコン川を渡ったことを意味する。
池内氏は京都の自宅で行われたインタビューで、「戦争に勝った国は、戦争のために科学を使っている」とした上で、「しかし、日本は戦争に負けて軍国主義を反省し、結果としてとても健全な国だったと思う」と述べた。
それでも、池内氏を含む学者らが昨年オンライン上に開設した「軍学共同(大学・研究機関における軍事研究)反対アピール」には約800人の署名しか集まっていない。池内氏は「反応が鈍いので憂いている」と話した。
⇒「崩れる「軍学共同」のタブー、人材求める安倍政権」(WSJ/時事)
・・
憲法学者や政治学者などの「安保法案」反対論においては、法案を軍学共同に見られる日本型軍産学複合体の本格的台頭、つまり今、大学の研究現場で起こっていることにつなぎ合わせて分析する議論が、あまりに少なく、希薄であるように見受けられる。
「安保法案には反対するが、軍学共同には賛成する」では研究者として論理/倫理矛盾をきたしてしまうように思えるのだが、大学や研究現場からの異議申し立ての声はとても小さくて、「象牙の塔」の外には聞こえない。
日本型軍産学複合体の台頭を考える資料を、二つ紹介しておこう。
一つは、「科学と社会を巡る問題」 と題された池内氏による講演レジュメ、もう一つは二ヶ月程前の、「科学技術・イノベーション推進特別委員会」における民主党・長島議員による質疑からの抜粋である。
前者は、レジュメではあるが、「多忙な教員と不安定身分のポスドク・助教 現場に疎くなった教員、未来を危ぶむ若手」 など、現在の大学・研究現場を取り巻く環境と支配的空気をとてもよく伝えている。
後者は、日本型軍産学複合体の形成をめぐる安倍政権と民主党(内の一部勢力)の考え方が、とてもよく伝わってくるやり取りになっている。さらに言えば、民主党がこれからどこへ行くのか、何をしようとしているのか、杞憂を深めさせてくれる資料にもなっている。いずれも、「必読文献」である。
////////////////////////////////////////////////////////////
【参考資料 ①】
⇒「科学と社会を巡る問題」
2014年8月31日
大学評価学会第44回研究会・公開シンポジウム「科学・社会・大学」
池内 了
「現代の科学と社会」三題噺
(Ⅰ)福島原発事故ー再稼働-大飯原発判決
(Ⅱ)科学倫理ーSTAP細胞騒動ー不正行為
(Ⅲ)軍学共同ー棲み分け(DARPA方式)ー防衛省 ー総合科学技術会議
(Ⅰ)福島原発事故
(1)科学者・技術者
(1)科学者・技術者の社会的責任
・限界(妥協、割り切り)の中の技術であることの自覚・責任
クリフエッジ(基準地震動)
・反倫理性を孕む科学・技術の行使
過疎地、労働者、未来世代への「押しつけ」
・御用学者が蔓延る分野(政治との結びつき、.企業との癒着)
原子力、放射線防護、地震学、医学(患者の認定)・・・
科学・技術の社会的受容まで考え伝えるのが科学者の社会的責任
(2)再稼働
(2)事故の詳細が究明されないままの再稼働の動き
・原子力規制委員会の限界
技術的側面に限定、多重防護(IAEA指針)違反
・無責任体質(委員長と首相の見事なすれ違い)
「世界一厳しい基準、安全性が証明された」
・原子力ムラの暗躍・原子力一家の無反省
放射線被曝基準(国際原子力ムラ)、原発の輸出
・大飯原発差し止め訴訟の画期的判決
人格権を前面に、科学論争も行う、さて今後は??
(3)トランスサイエンス
(3)科学に問うことはできるが、 科学のみでは答えることができない問題群
・共有地の悲劇を招く問題
・初めから反倫理性を孕む問題
・明確な科学知が得られない(複雑系の科学)問題
・確率でしか論じられない問題
・コストの担い手とベネフィットの受け手が異なる問題
新たな論理の導入
予防措置原則、少数者・被害者・弱者の立場の尊重
未来世代が担うべき負担、功利主義の徹底(?)
(Ⅱ)科学倫理
(1)-STAP細胞騒動
(1)STAP細胞騒動ー広く倫理問題
・科学者のマナー教育・科学倫理教育の欠如
科学の犯罪(捏造、改竄、盗用)、実験ノートの完備、資料整理
・教授の多忙化(倫理教育ができないー能力的にも)
所内・所外会議、審査会、書類書き、多人数の院生、国際会議
・若手研究者の不安定雇用(.不正行為)
・大学・研究機関の窮状
運営費交付金の減少、補助金行政、独法化
ES細胞、iPS細胞、出生前(受精卵)診断などの倫理問題が山積
(2)科学の不正行為
不正行為の頻発
・研究資金が多い分野(医学・薬学・生物学)に多い
ノバルティス、J-SDNI1,2、10年以上の改竄事件
・商業主義と競争的資金の獲得競争
特許(論文より先)、秘密主義(小保方問題)
・多忙な教員と不安定身分のポスドク・助教
現場に疎くなった教員、未来を危ぶむ若手
・企業と科学者の癒着
製薬会社と医学者、電力業界(原発メーカー)と原子力専門家
(3)科学の過去と未来
現代科学を客観的に見て「異様さ」を反省する(これも科学倫理)
科学のこれまで
・要素還元主義に慣れた思考
・「新発見」の過大な評価ーマンモス化するビッグサイエンス
・「役に立つ」科学への傾斜
・科学の国家への従属
科学のこれから
・複雑系の科学(要素還元主義からの脱却)
・科学者の評価の視点の転換、トランスサイエンス問題
(Ⅲ)軍学共同
(1)棲み分け(DARPA)
(1)科学者の軍事研究
・第2次世界大戦中
民間(大学・研究機関)から特殊プロジェクトへ組織的動員
マンハッタン計画、レーダーやジェット機開発・・・
・戦争後
軍事研究所に軍事専門の科学者を雇用(世界中で70万人)
武器の開発
軍事転用が可能な民間技術の発掘し資金援助する
DARPA(国防高等研究計画局)方式(動員ではない)
(2)防衛省技術研究本部
「技術交流」
・2006年から2013年まで11件
東工大、横国大、理化学研究所、慶応、東洋大、
九州大学、JAXA、情報処理推進機構・・・
・2014年5件
帝京平成大学「爆薬検知技術」
千葉工大「ロボット技術」
海洋研究開発機構(JAMSTEC)「水中無人探査機」(国会)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)「赤外線センサ」
情報通信研究機構「サイバーセキュリティ」
(3)閣議決定と防衛省
政府と防衛省の連携プレー
・2013年12月閣議決定「平成26年度防衛計画大綱」
「大学や研究機関との連携の充実により、
防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技 術)の 積極的な活用に努める」
.2013年4月 防衛省「技術管理班」設置ー共同研究体制
.2014年6月 防衛省が「防衛生産・技術基盤戦略」を策定し
「大学や研究機関・企業への防衛省独自の競争的資金提供制度創設を検討」
.2014年8月
軍事技術発掘のため1年20億円の基金制度を概算要求
(4)その他の動き
(4)具体的な動きが始まっている
・2014年5月第2回「宇宙に関する包括的日米会議」
国防省、NASA、防衛省、JAXAなどが参加、遠隔操作技術
・2014年5月防衛省C2次期輸送機の不具合問題
東大教授へ依頼ー東大憲章から協力拒否ー東大教授は個人参加
・2014年5月総合科学技術会議「革新的研究開発推進プログラム」
(⇒革新的研究開発推進プログラム(ImPACT))
概要に「米国のDARPAのモデルを参考にする」と表示
プログラムマネージャー12名の選出
・2015年6月米国防総省主催ロボットコンテストに経産省が仲立ち 3チーム(東大、産総研、東大・千葉工大・阪大・神大)が参加予定 (⇒終了。悲惨なる惨敗! 引用者による注)
名目は「ロボット技術の災害現場への応用」だが軍事利用も示唆
(Ⅲ)軍学共同(5)-反対の動きは?
(5)反対運動が少しずつ広がり始めている
・日本学術会議への申し入れ
1950年、1967年の総会声明
・平和憲章・非核宣言した24大学・研究機関(維新の攻撃)
1982年~1990年:名大、原研、小樽商大、電総研、新潟大学等
・2014年4月日本科学者会議東京支部常任幹部会声明
・2015年5月東大職員組合声明
・2014年7月31日記者会見
軍学共同反対ーアピールと署名運動開始
(6)今後予想される展開
今後の問題点
防衛省からの競争的資金に研究者は群がるのか?
・「学問の自由」である、「国立大学は国に恩義がある」
・デュアルユースは当たり前ー「罪の意識」が薄れる
自分は民生研究、防衛省が軍事研究だから問題ない
・Publish or Perish 座して死を待つより、死ぬよりはマシ
特定秘密法(研究の非公開、漏らすと秘密漏洩罪)ー学問の不自由
大学の荒廃ー戦争のための科学を学生が当たり前として受け取る
真実と・平和を希求する人間の養成と真っ向から矛盾
デュアルユース:民生利用.軍事利用
・ロボット:人工知能とIC技術と電子回路の組み合わせ
遠隔操作、認知・認証・認識機能の利用
ロボット兵器、無人爆撃機、水中無人探査機(魚雷)、
遠隔操作(「はやぶさ」)、赤外線センサ(CCDの開発)
・ナノテクノロジー:小型化学・生物・放射性同位元素兵器
蚊や蠅タイプの兵器ー内部にナノテクによる毒物・病原菌を封入
ばら撒くのではなく、小型兵器+遠隔操作で自在に操る
インフルエンザウイルス:伝染力と致死性を強化
「科学と社会」の現状
科学・技術は、ますます社会と密接な関係を結ぶようになった
.科学教育における社会的視点の重要性
.科学の倫理教育は必須
.科学の国際性への確信
しかしながら
科学の教員にその知識・能力がない
教員は多忙で勉強する暇がない
競争が激しく成果を挙げるのに必死で、そんな教育はムダである
市民科学研究所(定年後の教師の集団で)がその教育を引き受ける
市民の科学への「理解と批判」が不可欠
・科学に関心を寄せ続け動向を把握すること(市民の科学リテラシー)
サイエンスカフェ、科学館、科学の祭典、オープンキャンパスなど
口車に乗せられないこと(5重の防護への子どもの疑問)
・科学者・技術者の社会的責任を問うこと
科学・技術の限界、マイナス要素、予想される難点、
未来に対する問題点を常に語らせる
・「発明は必要の母」ではないか絶えず見直すこと
欲望と技術に振り回され、怠け者になっていないか?
科学・技術の成果への禁欲心(必要性への批判)
【参考資料 ②】
「第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号(平成27年5月19日(火曜日))」
○*長島(昭)委員*(民主党)
技術というのは、もちろん、デュアルユース、あるいは軍事目的、安全保障目的というものを最初から志向している場合もあれば、研究開発を進めていった結果、まあ、利用については、つまり出口については恐らくオープンだと思うんですね。このImPACTのプロセスを通じて、恐らく情報は政府内でも共有される、あるいは産業界とも共有される、そういう中で、こういう素材、こういう技術はもしかしたら安全保障にも役立つんじゃないか、こういうことというのはあり得ると思うんです。
ImPACTの仕組み、制度の中で、各省いろいろな技術陣がいると思いますけれども、そういうところと連携しながら、そういう結果をピックアップして、それぞれの用途につなげていくというような、そういう仕組み、システムというのはビルトインされているんでしょうか。
○*山口国務大臣*
特に顕在的にビルトインという話ではありませんが、科学技術のいわゆる研究の進展の中で、いろいろなところが、これはうちにも使えるというふうな話が出てくるのは当然で、先ほど御指摘いただきましたたんぱくの鈴木先生のお話も、例えば高機能な防弾服に転用できるというか利用できるというようなお話ももう出てきておりますので、経過の中で、先ほど申し上げましたように、もちろん排除するものではございませんので、ともどもに研究を進めていくというふうなことになろうかと思います。
○*長島(昭)委員*
先ほど大臣もおっしゃっていましたけれども、技術分野というのは、興味が尽きないというか、本当に夢があるんです。例えば、ロボットとか、自動運転技術とか、センサー、セラミック、あるいは、ボルトとかナットを使わないで接合するような技術、それから炭素繊維とか、これは本当にいろいろな用途に使われる可能性を持っている、つまりスピンオンの可能性を秘めた素材なんじゃないかというふうに私は思うんです。
そういう意味でいうと、その司令塔機能を担う総合科学技術・イノベーション会議、この構成メンバーはもう既に決まっているわけですけれども、正規のメンバーにそろそろ防衛大臣も入れてしかるべきだと私は思うんです。大臣、いかがでしょうか。
○*山口国務大臣*
総合科学技術・イノベーション会議のメンバーにというようなお話ですが、今のところ、そういうことは考えておりません。 ただ、例えば、宇宙基本計画を作成する経過においても防衛省とも当然協議はしておりますし、今回、第五期科学技術基本計画にしても、やはり防衛省等々からのお話も聞きながら進めていくというふうな格好でやっておりまして、特に防衛大臣から強い御要望があれば、また私なりに考えてみたいとは思いますが、今のところはそういう状況ではございません。
○*長島(昭)委員*
防衛省、きょう来ていますね。どうですか、防衛省として。技術本部とか。
当然のことながら、特に軍事だとか民生だとかというこれまでの既成概念にこだわらずに、防衛大臣が入ると、何か全部、研究自体が物騒な方向に持っていかれるみたいな、そういう既成概念はそろそろ払拭すべきときが来ている。そういうふうにしても、別に国策を誤ることはない。私は、国会もあるし、行政もしっかりしているし、日本はそろそろそういう方向に踏み出す時期が来ているんじゃないかと思いますが、防衛省はいかがですか。
○*外園政府参考人*
お答え申し上げます。委員御指摘のとおり、科学技術に色はないということでございまして、デュアルユース、また、山口大臣からもマルチユースという御指摘がございましたように、現在、総合科学技術・イノベーション会議で推し進められていますImPACTにつきましては、事務方レベルで非常に十分な意見交換、情報交換をさせていただいていまして、先ほどまさに御指摘のありましたクモの糸につきましても、御指摘どおり、高機能な耐弾材料等に使用可能であるということで、我々も非常に注視をさせていただいております。
引き続き、こういった現状を踏まえまして、事務方で意見交換をしつつ、科学技術を防衛省の安全、安心の技術に取り入れていきたいというふうに思っております。
・・・
○*長島(昭)委員*
次に、防衛省にまたお伺いしたいと思います。我が国はこれまで、防衛装備品の調達先、マーケットが自衛隊に限られていましたので、企業は軍事技術の研究開発には余り積極的ではなかった、こういうことが言えると思います。
ちょうど私たちが政権のときに、武器輸出原則の緩和を、まず第一弾をやりました。そして、国際共同研究、共同開発、そして生産、こういう方向へ日本が参画できる、そういう道筋をつけました。その後、安倍政権になって、それを引き継いでいただきまして、さらにそれを発展させて、新しい武器輸出原則というのをつくってきました。そういう中で、装備品に係る輸出規制というのが大幅に緩
和をされた。もちろん賛否両論あると思いますけれども、この分野の可能性が大きく広がったということだと思います。
それを受けて、防衛省がいよいよ今年度から新しい制度を実施する。安全保障技術研究推進制度、予算はまだ三億でしたか、非常に小さなところからスタートしているようでありますが、この制度の概要、狙い、現状を防衛省の方から説明していただけますか。
○*外園政府参考人*
お答え申し上げます。 委員御指摘のとおり、近年の科学技術の著しい発展を背景にいたしまして防衛技術と民生技術のボーダーレス化が進展する状況におきまして、防衛に応用可能な先進的な民生技術、いわゆるデュアルユース技術を積極的に活用することが重要であると防衛省として考えております。
このため、防衛省では、大学、独立行政法人の研究機関や企業などにおける独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成するため、今年度から、競争的資金制度である安全保障技術推進制度を開始いたします。
現在、この開始に向けまして最終的な調整を行っておりまして、早ければ今月中にこの制度を発足させたいというふうに考えております。 また、この制度に必要な経費といたしまして、約三億円を平成二十七年度予算に計上させていただいております。
防衛省といたしましては、こういった制度を通じまして、大学、独立行政法人の研究機関や企業などが有するすぐれた先進的技術を効果的、効率的に取り込み、将来装備品の研究開発に活用したいというふうに考えております。
・・・
・イージス艦装備へ国内企業初参加 NSC、米に輸出承認
政府は23日、国家安全保障会議(NSC)を開き、イージス艦の戦闘指揮所に置かれ、戦術情報を表示するディスプレーシステムのソフトウエアなど装備の一部を日本の企業が独自開発し米国に輸出することを承認した。多数の目標を探知し、瞬時に情報処理して同時に対処するイージスシステム製造への国内企業の参加は初めて。
イージス艦を導入するオーストラリアなど第三国も利用可能となる。昨年4月に武器禁輸政策を見直し新たに定めた防衛装備移転三原則に基づく承認は4例目。
政府は2015年度予算でイージス艦1隻の建造費を計上。18年度までにもう1隻調達する予定だ。(共同)
-日本型軍産学複合体の台頭
日本型軍産学複合体が、いよいよ本格的に起動したようだ。 防衛省が、文科省や経産省と密接に連携し、大学や独法系研究機関、大学ベンチャーを巻き込みながら、「軍民両用」(デゥアル・ユース)の軍事技術・兵器開発に乗り出したのだ。 そのための仕組みを、「安全保障技術研究推進制度」と言うが、防衛省はこれに本年度3億円の予算を確保し、一件あたり最大3000万円の研究資金供与を餌に、研究者を釣ろうとしているのである。これは、「戦後」日本の大学史上、初のことである。
防衛省によれば、「安全保障技術研究推進制度」とは次のようなものである。
・・
防衛省では、装備品への適用面から着目される大学、独立行政法人の研究機関や企業等における 独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成するために、平成27年度から競争的資金制度※である 安全保障技術研究推進制度を開始します。
本制度は、防衛省が掲げた研究テーマに対して、 広く外部の研究者の方からの技術提案を募り、優れた提案に対して研究を委託するものです。得 られた成果については、防衛省が行う研究開発フェーズで活用することに加え、デュアルユース として、委託先を通じて民生分野で活用されることを期待しています。
※資金配分主体が、広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点 を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金。
⇒平成27年度版 安全保障技術研究推進制度パンフレット [366KB]
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朝日新聞など一部メデイアも、22日付けでこの動きを報じている。
ポイントをまとめるなら、次のようになる。
・7月8日に募集を始め、8月12日に締め切って10件程度を選ぶ
・成果は「将来装備に向けた研究開発」で活用
・実用化の場として「我が国の防衛」 「災害派遣」 「国際平和協力活動」の三分野
日本型軍産学複合体の台頭と軍学共同の軍事技術・兵器開発の動向については、このブログでも再三にわたり取り上げてきた。昨年以降では、「大学研究と軍事研究 2014 」(2014,5/2)、「動き始めた日本の軍産学複合体 」(7/7)、「軍事化を深める日本の「国際協力」とODA 」(7/11)などを参照していただきたい。
問題は、大学や研究現場の反応である。
私は、安倍「安保法案」に反対する大学や独法系研究機関の研究者は、この「安全保障技術研究推進制度」に対しても、明確に反対する立場を表明すべきだ、と考えている。けれども、実際には、大学や研究現場の反応には寒々しいものがあるといわねばならない。
軍学共同に反対する運動を展開してきた理論物理学者、池内了氏も幾分悲観的にみえる。あるアンケート調査によれば、大学研究者の実に三分の一は、軍学共同研究を「よし」としているらしいことも、現場を知る氏を憂鬱にさせている一因なのかもしれない。
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第2次世界大戦以降、日本の学術界は総じて軍事目的に資する研究を放棄し、大学の多くは、違法ではないのだが、軍事関連の研究を徹底的に排除してきた。現在、一部の教授はこうしたプロジェクトに協力し、大学や科学研究機関はこれらの教授に一段の自由裁量を与えている。
国会は近く、戦後初めて防衛省から大学に直接支給される研究基金制度案を承認する見通しだ。これは安倍政権が着手した、民間研究と軍事研究を分ける境界線をあいまいにする2つの政策のひとつだ。
3億円という金額は小さい。ただ、名古屋大学の池内了名誉教授(宇宙物理学専攻)にとって、これはルビコン川を渡ったことを意味する。
池内氏は京都の自宅で行われたインタビューで、「戦争に勝った国は、戦争のために科学を使っている」とした上で、「しかし、日本は戦争に負けて軍国主義を反省し、結果としてとても健全な国だったと思う」と述べた。
それでも、池内氏を含む学者らが昨年オンライン上に開設した「軍学共同(大学・研究機関における軍事研究)反対アピール」には約800人の署名しか集まっていない。池内氏は「反応が鈍いので憂いている」と話した。
⇒「崩れる「軍学共同」のタブー、人材求める安倍政権」(WSJ/時事)
・・
憲法学者や政治学者などの「安保法案」反対論においては、法案を軍学共同に見られる日本型軍産学複合体の本格的台頭、つまり今、大学の研究現場で起こっていることにつなぎ合わせて分析する議論が、あまりに少なく、希薄であるように見受けられる。
「安保法案には反対するが、軍学共同には賛成する」では研究者として論理/倫理矛盾をきたしてしまうように思えるのだが、大学や研究現場からの異議申し立ての声はとても小さくて、「象牙の塔」の外には聞こえない。
日本型軍産学複合体の台頭を考える資料を、二つ紹介しておこう。
一つは、「科学と社会を巡る問題」 と題された池内氏による講演レジュメ、もう一つは二ヶ月程前の、「科学技術・イノベーション推進特別委員会」における民主党・長島議員による質疑からの抜粋である。
前者は、レジュメではあるが、「多忙な教員と不安定身分のポスドク・助教 現場に疎くなった教員、未来を危ぶむ若手」 など、現在の大学・研究現場を取り巻く環境と支配的空気をとてもよく伝えている。
後者は、日本型軍産学複合体の形成をめぐる安倍政権と民主党(内の一部勢力)の考え方が、とてもよく伝わってくるやり取りになっている。さらに言えば、民主党がこれからどこへ行くのか、何をしようとしているのか、杞憂を深めさせてくれる資料にもなっている。いずれも、「必読文献」である。
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【参考資料 ①】
⇒「科学と社会を巡る問題」
2014年8月31日
大学評価学会第44回研究会・公開シンポジウム「科学・社会・大学」
池内 了
「現代の科学と社会」三題噺
(Ⅰ)福島原発事故ー再稼働-大飯原発判決
(Ⅱ)科学倫理ーSTAP細胞騒動ー不正行為
(Ⅲ)軍学共同ー棲み分け(DARPA方式)ー防衛省 ー総合科学技術会議
(Ⅰ)福島原発事故
(1)科学者・技術者
(1)科学者・技術者の社会的責任
・限界(妥協、割り切り)の中の技術であることの自覚・責任
クリフエッジ(基準地震動)
・反倫理性を孕む科学・技術の行使
過疎地、労働者、未来世代への「押しつけ」
・御用学者が蔓延る分野(政治との結びつき、.企業との癒着)
原子力、放射線防護、地震学、医学(患者の認定)・・・
科学・技術の社会的受容まで考え伝えるのが科学者の社会的責任
(2)再稼働
(2)事故の詳細が究明されないままの再稼働の動き
・原子力規制委員会の限界
技術的側面に限定、多重防護(IAEA指針)違反
・無責任体質(委員長と首相の見事なすれ違い)
「世界一厳しい基準、安全性が証明された」
・原子力ムラの暗躍・原子力一家の無反省
放射線被曝基準(国際原子力ムラ)、原発の輸出
・大飯原発差し止め訴訟の画期的判決
人格権を前面に、科学論争も行う、さて今後は??
(3)トランスサイエンス
(3)科学に問うことはできるが、 科学のみでは答えることができない問題群
・共有地の悲劇を招く問題
・初めから反倫理性を孕む問題
・明確な科学知が得られない(複雑系の科学)問題
・確率でしか論じられない問題
・コストの担い手とベネフィットの受け手が異なる問題
新たな論理の導入
予防措置原則、少数者・被害者・弱者の立場の尊重
未来世代が担うべき負担、功利主義の徹底(?)
(Ⅱ)科学倫理
(1)-STAP細胞騒動
(1)STAP細胞騒動ー広く倫理問題
・科学者のマナー教育・科学倫理教育の欠如
科学の犯罪(捏造、改竄、盗用)、実験ノートの完備、資料整理
・教授の多忙化(倫理教育ができないー能力的にも)
所内・所外会議、審査会、書類書き、多人数の院生、国際会議
・若手研究者の不安定雇用(.不正行為)
・大学・研究機関の窮状
運営費交付金の減少、補助金行政、独法化
ES細胞、iPS細胞、出生前(受精卵)診断などの倫理問題が山積
(2)科学の不正行為
不正行為の頻発
・研究資金が多い分野(医学・薬学・生物学)に多い
ノバルティス、J-SDNI1,2、10年以上の改竄事件
・商業主義と競争的資金の獲得競争
特許(論文より先)、秘密主義(小保方問題)
・多忙な教員と不安定身分のポスドク・助教
現場に疎くなった教員、未来を危ぶむ若手
・企業と科学者の癒着
製薬会社と医学者、電力業界(原発メーカー)と原子力専門家
(3)科学の過去と未来
現代科学を客観的に見て「異様さ」を反省する(これも科学倫理)
科学のこれまで
・要素還元主義に慣れた思考
・「新発見」の過大な評価ーマンモス化するビッグサイエンス
・「役に立つ」科学への傾斜
・科学の国家への従属
科学のこれから
・複雑系の科学(要素還元主義からの脱却)
・科学者の評価の視点の転換、トランスサイエンス問題
(Ⅲ)軍学共同
(1)棲み分け(DARPA)
(1)科学者の軍事研究
・第2次世界大戦中
民間(大学・研究機関)から特殊プロジェクトへ組織的動員
マンハッタン計画、レーダーやジェット機開発・・・
・戦争後
軍事研究所に軍事専門の科学者を雇用(世界中で70万人)
武器の開発
軍事転用が可能な民間技術の発掘し資金援助する
DARPA(国防高等研究計画局)方式(動員ではない)
(2)防衛省技術研究本部
「技術交流」
・2006年から2013年まで11件
東工大、横国大、理化学研究所、慶応、東洋大、
九州大学、JAXA、情報処理推進機構・・・
・2014年5件
帝京平成大学「爆薬検知技術」
千葉工大「ロボット技術」
海洋研究開発機構(JAMSTEC)「水中無人探査機」(国会)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)「赤外線センサ」
情報通信研究機構「サイバーセキュリティ」
(3)閣議決定と防衛省
政府と防衛省の連携プレー
・2013年12月閣議決定「平成26年度防衛計画大綱」
「大学や研究機関との連携の充実により、
防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技 術)の 積極的な活用に努める」
.2013年4月 防衛省「技術管理班」設置ー共同研究体制
.2014年6月 防衛省が「防衛生産・技術基盤戦略」を策定し
「大学や研究機関・企業への防衛省独自の競争的資金提供制度創設を検討」
.2014年8月
軍事技術発掘のため1年20億円の基金制度を概算要求
(4)その他の動き
(4)具体的な動きが始まっている
・2014年5月第2回「宇宙に関する包括的日米会議」
国防省、NASA、防衛省、JAXAなどが参加、遠隔操作技術
・2014年5月防衛省C2次期輸送機の不具合問題
東大教授へ依頼ー東大憲章から協力拒否ー東大教授は個人参加
・2014年5月総合科学技術会議「革新的研究開発推進プログラム」
(⇒革新的研究開発推進プログラム(ImPACT))
概要に「米国のDARPAのモデルを参考にする」と表示
プログラムマネージャー12名の選出
・2015年6月米国防総省主催ロボットコンテストに経産省が仲立ち 3チーム(東大、産総研、東大・千葉工大・阪大・神大)が参加予定 (⇒終了。悲惨なる惨敗! 引用者による注)
名目は「ロボット技術の災害現場への応用」だが軍事利用も示唆
(Ⅲ)軍学共同(5)-反対の動きは?
(5)反対運動が少しずつ広がり始めている
・日本学術会議への申し入れ
1950年、1967年の総会声明
・平和憲章・非核宣言した24大学・研究機関(維新の攻撃)
1982年~1990年:名大、原研、小樽商大、電総研、新潟大学等
・2014年4月日本科学者会議東京支部常任幹部会声明
・2015年5月東大職員組合声明
・2014年7月31日記者会見
軍学共同反対ーアピールと署名運動開始
(6)今後予想される展開
今後の問題点
防衛省からの競争的資金に研究者は群がるのか?
・「学問の自由」である、「国立大学は国に恩義がある」
・デュアルユースは当たり前ー「罪の意識」が薄れる
自分は民生研究、防衛省が軍事研究だから問題ない
・Publish or Perish 座して死を待つより、死ぬよりはマシ
特定秘密法(研究の非公開、漏らすと秘密漏洩罪)ー学問の不自由
大学の荒廃ー戦争のための科学を学生が当たり前として受け取る
真実と・平和を希求する人間の養成と真っ向から矛盾
デュアルユース:民生利用.軍事利用
・ロボット:人工知能とIC技術と電子回路の組み合わせ
遠隔操作、認知・認証・認識機能の利用
ロボット兵器、無人爆撃機、水中無人探査機(魚雷)、
遠隔操作(「はやぶさ」)、赤外線センサ(CCDの開発)
・ナノテクノロジー:小型化学・生物・放射性同位元素兵器
蚊や蠅タイプの兵器ー内部にナノテクによる毒物・病原菌を封入
ばら撒くのではなく、小型兵器+遠隔操作で自在に操る
インフルエンザウイルス:伝染力と致死性を強化
「科学と社会」の現状
科学・技術は、ますます社会と密接な関係を結ぶようになった
.科学教育における社会的視点の重要性
.科学の倫理教育は必須
.科学の国際性への確信
しかしながら
科学の教員にその知識・能力がない
教員は多忙で勉強する暇がない
競争が激しく成果を挙げるのに必死で、そんな教育はムダである
市民科学研究所(定年後の教師の集団で)がその教育を引き受ける
市民の科学への「理解と批判」が不可欠
・科学に関心を寄せ続け動向を把握すること(市民の科学リテラシー)
サイエンスカフェ、科学館、科学の祭典、オープンキャンパスなど
口車に乗せられないこと(5重の防護への子どもの疑問)
・科学者・技術者の社会的責任を問うこと
科学・技術の限界、マイナス要素、予想される難点、
未来に対する問題点を常に語らせる
・「発明は必要の母」ではないか絶えず見直すこと
欲望と技術に振り回され、怠け者になっていないか?
科学・技術の成果への禁欲心(必要性への批判)
【参考資料 ②】
「第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号(平成27年5月19日(火曜日))」
○*長島(昭)委員*(民主党)
技術というのは、もちろん、デュアルユース、あるいは軍事目的、安全保障目的というものを最初から志向している場合もあれば、研究開発を進めていった結果、まあ、利用については、つまり出口については恐らくオープンだと思うんですね。このImPACTのプロセスを通じて、恐らく情報は政府内でも共有される、あるいは産業界とも共有される、そういう中で、こういう素材、こういう技術はもしかしたら安全保障にも役立つんじゃないか、こういうことというのはあり得ると思うんです。
ImPACTの仕組み、制度の中で、各省いろいろな技術陣がいると思いますけれども、そういうところと連携しながら、そういう結果をピックアップして、それぞれの用途につなげていくというような、そういう仕組み、システムというのはビルトインされているんでしょうか。
○*山口国務大臣*
特に顕在的にビルトインという話ではありませんが、科学技術のいわゆる研究の進展の中で、いろいろなところが、これはうちにも使えるというふうな話が出てくるのは当然で、先ほど御指摘いただきましたたんぱくの鈴木先生のお話も、例えば高機能な防弾服に転用できるというか利用できるというようなお話ももう出てきておりますので、経過の中で、先ほど申し上げましたように、もちろん排除するものではございませんので、ともどもに研究を進めていくというふうなことになろうかと思います。
○*長島(昭)委員*
先ほど大臣もおっしゃっていましたけれども、技術分野というのは、興味が尽きないというか、本当に夢があるんです。例えば、ロボットとか、自動運転技術とか、センサー、セラミック、あるいは、ボルトとかナットを使わないで接合するような技術、それから炭素繊維とか、これは本当にいろいろな用途に使われる可能性を持っている、つまりスピンオンの可能性を秘めた素材なんじゃないかというふうに私は思うんです。
そういう意味でいうと、その司令塔機能を担う総合科学技術・イノベーション会議、この構成メンバーはもう既に決まっているわけですけれども、正規のメンバーにそろそろ防衛大臣も入れてしかるべきだと私は思うんです。大臣、いかがでしょうか。
○*山口国務大臣*
総合科学技術・イノベーション会議のメンバーにというようなお話ですが、今のところ、そういうことは考えておりません。 ただ、例えば、宇宙基本計画を作成する経過においても防衛省とも当然協議はしておりますし、今回、第五期科学技術基本計画にしても、やはり防衛省等々からのお話も聞きながら進めていくというふうな格好でやっておりまして、特に防衛大臣から強い御要望があれば、また私なりに考えてみたいとは思いますが、今のところはそういう状況ではございません。
○*長島(昭)委員*
防衛省、きょう来ていますね。どうですか、防衛省として。技術本部とか。
当然のことながら、特に軍事だとか民生だとかというこれまでの既成概念にこだわらずに、防衛大臣が入ると、何か全部、研究自体が物騒な方向に持っていかれるみたいな、そういう既成概念はそろそろ払拭すべきときが来ている。そういうふうにしても、別に国策を誤ることはない。私は、国会もあるし、行政もしっかりしているし、日本はそろそろそういう方向に踏み出す時期が来ているんじゃないかと思いますが、防衛省はいかがですか。
○*外園政府参考人*
お答え申し上げます。委員御指摘のとおり、科学技術に色はないということでございまして、デュアルユース、また、山口大臣からもマルチユースという御指摘がございましたように、現在、総合科学技術・イノベーション会議で推し進められていますImPACTにつきましては、事務方レベルで非常に十分な意見交換、情報交換をさせていただいていまして、先ほどまさに御指摘のありましたクモの糸につきましても、御指摘どおり、高機能な耐弾材料等に使用可能であるということで、我々も非常に注視をさせていただいております。
引き続き、こういった現状を踏まえまして、事務方で意見交換をしつつ、科学技術を防衛省の安全、安心の技術に取り入れていきたいというふうに思っております。
・・・
○*長島(昭)委員*
次に、防衛省にまたお伺いしたいと思います。我が国はこれまで、防衛装備品の調達先、マーケットが自衛隊に限られていましたので、企業は軍事技術の研究開発には余り積極的ではなかった、こういうことが言えると思います。
ちょうど私たちが政権のときに、武器輸出原則の緩和を、まず第一弾をやりました。そして、国際共同研究、共同開発、そして生産、こういう方向へ日本が参画できる、そういう道筋をつけました。その後、安倍政権になって、それを引き継いでいただきまして、さらにそれを発展させて、新しい武器輸出原則というのをつくってきました。そういう中で、装備品に係る輸出規制というのが大幅に緩
和をされた。もちろん賛否両論あると思いますけれども、この分野の可能性が大きく広がったということだと思います。
それを受けて、防衛省がいよいよ今年度から新しい制度を実施する。安全保障技術研究推進制度、予算はまだ三億でしたか、非常に小さなところからスタートしているようでありますが、この制度の概要、狙い、現状を防衛省の方から説明していただけますか。
○*外園政府参考人*
お答え申し上げます。 委員御指摘のとおり、近年の科学技術の著しい発展を背景にいたしまして防衛技術と民生技術のボーダーレス化が進展する状況におきまして、防衛に応用可能な先進的な民生技術、いわゆるデュアルユース技術を積極的に活用することが重要であると防衛省として考えております。
このため、防衛省では、大学、独立行政法人の研究機関や企業などにおける独創的な研究を発掘し、将来有望な研究を育成するため、今年度から、競争的資金制度である安全保障技術推進制度を開始いたします。
現在、この開始に向けまして最終的な調整を行っておりまして、早ければ今月中にこの制度を発足させたいというふうに考えております。 また、この制度に必要な経費といたしまして、約三億円を平成二十七年度予算に計上させていただいております。
防衛省といたしましては、こういった制度を通じまして、大学、独立行政法人の研究機関や企業などが有するすぐれた先進的技術を効果的、効率的に取り込み、将来装備品の研究開発に活用したいというふうに考えております。
・・・
・イージス艦装備へ国内企業初参加 NSC、米に輸出承認
政府は23日、国家安全保障会議(NSC)を開き、イージス艦の戦闘指揮所に置かれ、戦術情報を表示するディスプレーシステムのソフトウエアなど装備の一部を日本の企業が独自開発し米国に輸出することを承認した。多数の目標を探知し、瞬時に情報処理して同時に対処するイージスシステム製造への国内企業の参加は初めて。
イージス艦を導入するオーストラリアなど第三国も利用可能となる。昨年4月に武器禁輸政策を見直し新たに定めた防衛装備移転三原則に基づく承認は4例目。
政府は2015年度予算でイージス艦1隻の建造費を計上。18年度までにもう1隻調達する予定だ。(共同)