2011年11月27日日曜日

自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?(2)

自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?(2)

 日本における安保をめぐる言説、その神話性は、原発をめぐるそれととてもよく似ている。
 これまで「原発は絶対安全」という神話の下で、「日本のエネルギー政策にとって原発は絶対必要」という二重の神話が作られてきた。それと同じように、安保をめぐっても「在日米軍=抑止力」という神話の下で、「日本の安全保障政策にとって日米安保体制(=米軍の無期限駐留)は絶対必要」という二重の神話が作られてきた。

 前者は「3・11」によって崩壊した。しかし後者は、いまだ日本社会において支配的だ。
 原発神話は「原子力ムラ」と主要メディアの面々がねつ造してきたわけだが、それが満天下に明らかになった今日でも私たちの多く(=「文科系」のアカデミズム主流、主要メディア等々に強い影響を受けている人々、としておこう)は、「安保ムラ」がねつ造する神話から目覚めようとしない。

 どうすれば、この状況を変えることができるのか? 気負った言い方に聞こえるかもしれないが、1960年に改定された現安保条約の歴史とともに生きてきた世代の一人として、自分が生き、死んでゆく時代に自分なりの決着をつけるためにも、おそらく私は死ぬまでこの問いと格闘し続けることになりそうである。

 先週、法政大学で行ったシンポジウムの中で、確か「都の西北」にある某大学の院生が「告発」したように、「保護する責任」批判が、国際関係論・国際政治学・国際法・平和学などの主流では聞くことができない、というのも実はこのこと、すなわち「文科系」のアカデミズム主流、主要メディア等々が、「安保ムラ」がねつ造する神話から目覚めようとせず、むしろその神話を一緒になってねつ造する役割を果たしてきた/いること、と深く関係している。

 しかし、この問題に入る前に、安保と「保護する責任」に深く関係したもう一つの問題、自衛隊の南スーダン国連PKOへの部隊派遣についてその問題点を整理しておこう。
 読者の注意を喚起しておきたいことは、南スーダンへの自衛隊派遣が、ソマリアに対する米仏による本格的な軍事介入の動きと同時一体的に行われようとしていることである。
 まずは、この間の経緯を押さえておこう。

⇒「自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?」(9/26)より

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「国連PKOのハイチからの即時撤退を求める国際署名」(10/17)

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南スーダンPKO、日米連携へ…治安情報を共有
 南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)について、政府は、来年1月から派遣する陸上自衛隊施設部隊の安全を確保するため、アフリカで対テロ作戦を行っている米軍から治安情報の提供を求める方針を固め、米政府と調整に入った。 陸自が連携するのは、米軍のアフリカ軍。日本のPKO部隊が米軍と連携するのは異例だ。
 日本のこれまでのPKOは、いずれも比較的治安が安定した地域への派遣だったが、今回の南スーダンは、武力衝突などに巻き込まれる危険性がなお残るとされている。このため政府は、治安が悪化しているスーダン国境に近い北部情勢などについて、米軍との情報共有を図ることにした。
 陸自部隊の派遣規模は約300人。当初は治安が安定している南部の首都ジュバ周辺で道路補修などのインフラ整備を担う予定だ。ただ、国連は、整備が遅れている北部での活動を日本側に要望しており、既にジュバから約150キロ北のボアなどでの活動を打診している。(読売、11月27日)
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 読売新聞の記者は、「日本のPKO部隊が米軍と連携するのは異例」と言う。確かにそう言えなくはないが、より正確には「日本のPKO部隊が米軍と連携するのは必然」 と書くべきである。しかし、読売新聞を始めとした主要メディアはこのことを報じようせず、今日の国連PKOおよびそれへと自衛隊の参画の問題性を論じようとしない。なぜかと言えば、「国際関係論・国際政治学・国際法・平和学などの主流」がこのことを問題化しようとしないからだ。なぜかと言えば、冷戦崩壊以後のこの20年におよび、自民党政権時代も政権交代以降の民主党も「日本のPKO部隊が米軍と連携する」ことを国家戦略化してきたことに対し、アカデミズム「主流」が批判しない〈状況〉が作られてしまったからである。

 去年上梓した『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の「終章 日米同盟を再考し、日米安保に期限をつけるために」は、その「2 米軍協力としての「国際平和協力」を事業仕分けする」において、まさにこのことを論じている。 (小節の見出しは以下の通り。「「国際平和協力」とは何か/湾岸戦争と「国際平和協力」/掃海艇のペルシャ湾「派遣」/五五年体制崩壊の序曲/「新世界秩序」の中の自衛隊」)

 日米安保条約を無期限に「自動延長」し、在日米軍を無期限に駐留させ、米軍の戦略転換にその都度対応した「日米共同作戦態勢」を構築してきたのであるから、自衛隊の海外展開の一つとしての国連PKO派遣、とりわけブッシュ政権時の米軍のアフリカ司令部設置後のそれが、米軍のアフリカ大陸における作戦展開と「連携」し、いずれはその「後方支援」を担うことになるのは「異様」ではなく、必然である。(米軍のアフリカ司令部については「永遠の安保、永遠の米軍基地、そして永遠のテロル」(3/30,2009)を参照)

 しかし、今日の国連PKOがはらむ構造的・本質的な問題とは、以下の記事で明らかなように、紛争の解決主体としてではなく、武力紛争が継続中の国や地域に国連そのものが紛争当事主体となって軍事的に介入し、紛争長期化の原因を自ら作っているところにある。
 
南スーダンPKO、決まらぬ宿営地 陸自派遣、ずれ込む公算
 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊施設部隊派遣を控え、陸自の活動拠点となる宿営地がまだ確保できていないことが(11月)24日、分かった。首都ジュバでバングラデシュ軍が使用する兵舎を引き継ぐはずだったが、国連が同国軍の活動延長を求めたため、兵舎に空きがなくなった。これにより年明けに予定していた先遣隊数十人の派遣は大幅にずれ込む公算が大きい。 複数の政府高官が明らかにした。
 政府は24日、国連南スーダン派遣団(UNMISS)の司令部要員として陸自隊員2人を28日に出発させると発表したが、政府の調整能力不足は国際社会に不信感を広げている。  南スーダンは7月に分離独立し、旧スーダンでは南北内戦後の包括和平合意に基づき2005年3月から別のPKO部隊が展開している。政府と国連の調整では、バングラデシュ軍が年内で活動を終え、兵舎を陸自に明け渡す予定だった。ところが、国連は11月になって活動延長を要請。バングラデシュもこれに応じる意向を示したため、兵舎明け渡しの時期が白紙に戻ってしまったという。
 政府は、兵舎新設には時間がかかりすぎるため、次善の策として、バングラデシュ工兵部隊より先に活動を終える見通しの同軍歩兵部隊の撤収を待ち、先遣隊を送る検討に入った。だが、先遣隊派遣が遅れれば、2~3月を予定していた施設部隊本隊(200人弱)の派遣も遅れかねない。南スーダンは5月から雨期に入るため、この時期まで本隊派遣がずれ込めば活動が大きく制約される可能性がある。(産経)

南スーダンPKO、ルワンダ軍が陸自を警護
 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊施設部隊の警護は、ルワンダ軍が担うことになる。国連南スーダン派遣団(UNMISS)トップのヒルデ・ジョンソン事務総長特別代表が22日、自民党調査団の中谷元・政調会長代理に明らかにした。
 ジョンソン氏は、南スーダンの首都ジュバで中谷氏と会談し、自衛隊派遣を「各国が好意的に受け止めている」と歓迎した。その上で、自衛隊の警護について「国連本部とルワンダ政府で協議しており、最終段階だ」と説明し、ルワンダ軍の歩兵部隊を充てる方針を表明した。ただ、警護場所などの詳細は明らかにしなかった。
 自衛隊の活動内容は「道路や橋の建設。河川港も期待する」と言及。内戦時代に埋められた地雷の撤去については「地雷撤去は入っていない」と否定した。活動地域は「今のところジュバしか考えていない」と述べ、当面は治安のいいジュバに限定する考えを強調。宿営地はバングラデシュ軍が現在使っているジュバ市内の兵舎跡地を使う方向であることも説明した。
 ただ、自衛隊の活動期間については「(派遣の)更新は1年で、その後は派遣国の意思による」と明言を避けた。「部隊の需要は期間が終わっても続く」とも話し、長期間の派遣に期待感をにじませた。 (朝日)

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・ソマリア:エチオピア軍侵攻 過激派への包囲網強化
 アフリカ東部ソマリアに隣国エチオピア軍が侵攻し、国際テロ組織アルカイダ系とされるイスラム過激派組織「アルシャバブ」への包囲網が強化されつつある。アルシャバブは、首都モガディシオでソマリア暫定政府を防衛する「アフリカ連合」(AU)の派遣部隊との戦闘も継続しており、勢力が分散化しだした可能性もある。
 ケニア軍は10月中旬、ソマリア南部へと侵攻。今月20日までにエチオピア軍がソマリア中部ベレドウェインなどに進軍した。ロイター通信によると25日、エチオピア政府は越境を認めた。

 今月半ばにはケニアとウガンダ、ソマリア暫定政府首脳がケニアの首都ナイロビで非公式会合を開き、アルシャバブ掃討に向けた軍事作戦の協力を確認した。AU部隊の主体となっているウガンダ、ブルンジなどの首脳は部隊増強に向け、緊急的援助をアフリカ各国へと呼びかけた。AU部隊との戦闘でアルシャバブが弱体化しているのを好機とみたケニア、エチオピア両軍が米国など国際社会の意向を受ける形で相次いで侵攻している可能性もある。
 ソマリアは中央政府の崩壊した91年以降、事実上の無政府状態にあり、暫定政府が首都モガディシオの一部を統治しているが中・南部はアルシャバブが実効支配してきた。しかし、ここにきて各地での戦闘でアルシャバブ勢力が分散化し、内部抗争や資金不足に直面しているとの観測も流れ始めている。
 一方、AUも資金難に直面しており、アルシャバブ掃討に向けて、AUが一枚岩となれるかは不透明なままだ。
 エチオピア軍は06年、米国の支持を受け、イスラム原理主義勢力が首都モガディシオを掌握していたソマリアに軍事介入し、エチオピア軍が支援する暫定政府が全土をほぼ制圧したが治安は悪化し、09年に撤退した経緯がある。 【毎日、ヨハネスブルク高尾具成】

・ケニア軍、ソマリア過激派のキャンプを空爆 10人殺害 
 ソマリア南部に進軍中のケニア軍報道官は24日、ソマリア南部でイスラム過激派組織アルシャバーブの三つの軍事キャンプを(11月)23~24日に空爆するなどし、アルシャバーブのメンバー10人を殺害したと発表した。
 一方、ソマリアとの国境に近いケニア北東部マンデラで24日、道路に仕掛けられた爆発物が爆発、トラックでパトロール中のケニア軍兵士1人が死亡、4人が重傷を負った。ロイター通信によると、東部ガリッサでは同日、レストランなどで手りゅう弾によるとみられる爆発が起き、2人が死亡、15人が負傷した。
 ケニア軍は10月中旬、同国東部で9月以降相次いだ外国人誘拐にアルシャバーブが関与したとしてソマリア南部に進軍。その後、ケニア国内では爆発物を使った事件が続発している。(共同)

仏海軍がソマリア爆撃か ケニア軍報道官
 AP通信によると、ソマリア南部に進軍中のケニア軍の報道官は24日までに、フランス海軍がソマリア南部キスマユ近郊を(10月)22日夜に爆撃したと述べた。ケニア軍の作戦には欧米諸国の協力があると指摘されていたが、ケニア当局者が初めて認めた形。ただフランスは爆撃への関与を否定している。
 ケニア東部では9月以降、闘病中のフランス人女性を含む外国人がソマリアに誘拐される事件が続発し、ケニア軍はイスラム過激派組織アルシャバーブが関与したとみて進軍した。フランス海軍はこのフランス人女性の捜索に参加していたが、同国外務省は今月19日、女性の死亡を発表した。
 キスマユはアルシャバーブの拠点の一つで、飛来する米国の無人機が住民に何度も目撃されており、9月には無人機が墜落したと伝えられた。(共同)

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クラスター爆弾:オスロ条約に支持加速も 「骨抜き」廃案
 クラスター爆弾の全面禁止条約(オスロ条約)に規制の緩い条約を対抗させ、骨抜きにしようとした米露中などによる外交工作は失敗に終わった。大半の国が禁止条約に加盟することで大量保有国による兵器の使用を事実上やめさせる、というオスロ条約派の方法論への支持がさらに強化されそうだ。
 「骨抜き条約」は、「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」で提起されたが25日、全会一致の支持が得られず廃案となった。提案理由について米政府高官は、オスロ条約加盟国が「(軍事大国の周囲に)長い壁を作り、爆弾を使うことをためらわせようとしている」と語り、包囲網が米国を外交工作へと突き動かしたことを認めた。

 オスロ条約はクラスター爆弾の8~9割を持つ米露中が加盟せず野放しになっているため、「実効性がない」と批判されてきた。米国はその弱点を突いて規制の緩い条約案をぶつけてきたが、オスロ条約の中核国の結束は固く、廃案まで持ち込んだ。
 しかし、米国などは今回、市民の被害を考えて条約を作ろうとした「実績」を作ったことで、「何もしていない」とのオスロ条約側に反論できる。さらに「オスロ条約加盟国が交渉を妨害した」との論理で、今後の使用が正当化される可能性もある。
 一方、独仏イタリアなど一部の加盟国が骨抜き条約をまとめようと動き、足並みが乱れたのはオスロ条約側には痛手だった。ドイツ外交筋は「大量保有国にも規制をかけ世界全体を安全にするのが長期目標。オスロ条約を阻害する意図はない」と釈明する。  日本は、最後まで骨抜き条約に反対を表明せず、オスロ条約に賛同するまで後手後手に回ったかつての失態をまた繰り返した。【毎日、ジュネーブ斎藤義彦】

・NATO部隊ヘリが越境攻撃、パキスタン兵24人死亡
 パキスタン北西部の部族地域で(11月)26日未明、隣国アフガニスタンに展開する北大西洋条約機構(NATO)主体の国際治安支援部隊(ISAF)のヘリコプターが越境し、パキスタン治安部隊の検問所を攻撃した。軍によると、兵士24人が死亡、13人が負傷した。
 ISAFは攻撃があった地域のアフガン側で最近掃討作戦を始めており、今回は誤って越境したとみられる。だが、パキスタン側では「国家主権に対する攻撃だ」(地元州知事)などと反発が強まっており、同国外務省は実質的にISAFを率いる米国のマンター大使を呼び、抗議した。
 また、パキスタンはISAFの重要補給路だが、政府は国境を封鎖し、補給物資の輸送車の動きを止めた。ISAFは26日午後、アレン司令官が遺族らに哀悼の意を表し、徹底した事実調査を行うと述べたとする声明を出したが、さらなる関係悪化は必至だ。 (朝日)

New Drone Sensor Could Instantly Spot Any Shooter (Nov.23, 2011, WIRED)