壊疽化する社会-- 橋下流?
「大阪はこれから、どうなんねんやろ?」と考えていたら、骨粗鬆症の、「壊疽化する社会」というイメージが浮かんだ。
「イラチ(苛ち)」「イチビリ」「オッチョコチョイ」が融合した「大阪の人間」だから、とにかく橋下市長は何かと注目を浴びる。パフォーマンスに長(た)けている。そして実は、「大阪の人間」の多くは、そういう彼が好きなのだ。
「行きすぎちゃうか?」と感じている人々も、「一理ある」と考えている。そこを勘違いすると、何もかもが間違ってしまう。
今日も、大阪の「教育改革」をめぐり、「反対声明」とかいろいろ出たようだ。
しかし、「そういうレベルの問題ではない」という思いが強くある。「思想・信条の自由」の問題が「既得権護持」の問題に映ってしまう。
組織と運動の歴史を総括し、足元をみつめることが大切ではないか。「大きな既得権」に対して「小さな既得権」が抵抗しても、「既得権そのものが大阪をダメにした」と感じている人々には通じない。
対抗言説は、もっと違うところから発せられないと「大阪の人間」に届かない。
「骨粗鬆症の、壊疽化する社会」とはどういう意味か?
大阪だけの話ではない。また日本だけの話でもない。
〈問題〉はおそらく、「リーマンショック後」の日本、大阪になぜ「橋下イズム」が登場したのか、それをどう考えるかにある。
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・県民所得、高知が最下位…全国平均は279万円
内閣府が29日発表した2009年度の県民経済計算によると、1人あたり県民所得の全国平均は前年度比4・3%減の279万1000円で、2年連続で前年度を下回った。 前年度比でプラスだったのは秋田、島根のみで、横ばいの沖縄も除くと44都道府県がマイナスだった。08年秋のリーマン・ショックの影響が全国に波及した形だ。
1989年度以降は沖縄が最も低かったが、09年度は高知が初の最下位となった。東京と最下位県の所得格差は1・93倍で、前年度(1・99倍)より縮小した。1人あたり県民所得は、都道府県ごとの雇用者報酬、財産所得、企業所得の合計額を人口で割って算出する。東日本大震災の影響で11年度の順位は大きく変わる可能性がある。(読売)
・「大阪維新の会 市長選マニフェスト」より
大阪市は、市民の最貧困化が進んでいます。 大阪市における年収200万円以下の世帯は、約4分の1を占め(32万8千世帯:全世帯数126万世帯)、名古屋市:14万5千世帯(全世帯数96万5000世帯)、横浜市:14万4千世帯(全世帯数149万世帯)と比較して、大阪市が突出しています。 生活保護率についても、大阪市:人口千人あたり56.3人、名古屋市:19.6人、横浜市:17.8人であり、その貧困度は突出しています。
しかも、大阪市の状況の悪化、貧困化は、日に日に進行しています。 すなわち、生活保護者率については、昭和60年時点は、人口千人あたり22.2‰(‰とは千分率です)であるのに対し、平成17年時点では40.2‰であり、約2倍程度も膨れ上がっています。
大阪市民の一人当たりの平均所得についても、平成5年時点で412万1千円であったにもかかわらず、平成20年時点では322万9千円に急落しています。 また、完全失業率についても、昭和60年時点は、5.8%であるのに対し、平成17年時点では11.7%であり、約2倍程度も膨れ上がっています。
また、大阪市の市民一人当たりの借金(地方債残高)は、1人あたり168万円にのぼり、東京都のそれに比べ、約3倍にもなっています。 その他の生活指標についても、悪化の一途を辿っています。 このように大阪市は、他の政令指定都市と比較して、最貧困地域となり、しかもそれが日々進行しています。
その一方で、市民一人当たりが負担する行政経費は、過大を極めています。すなわち、大阪市の市民一人当たりの職員の人件費負担額は、10万1586円であるのに対し、名古屋市:8万5306円、横浜市:5万7354円であって、大阪市民が最も多額の職員人件費を負担させられています。 市民人口1万人あたりの職員数についても、大阪市:150人、名古屋市:118人、横浜市:75人であり、大阪市が突出しています。さらに、大阪市職員の刑法犯罪、薬物事犯等、職員不祥事も後を絶ちません。
つまり、大阪市民は、多額の借金を抱えさせられ、最貧困生活を強いられ、しかもその状況は日々悪化しているにもかかわらず、他方で、税金と借金で過剰な職員を抱え、職員を養っているのが現状です。
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で、どうするのか? 「橋下イズム」がソリューション?
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「Posseが面白い」
"Posse"が、なぜ、どのように「面白い」のかについては、追々説明したい。
釜が崎や、社会空間の文字通りの「壊疽化」が徐々に進行する「環状線の外部」でPosseのようなNGOが、プロジェクトを開始することが期待される。「環状線の外部」には、「絶望の大阪」の「困っている大阪の人間」がいっぱいいる。 協働しうる研究者・学生・「若者たち」も、「大阪の大学」や「大阪の人間」の中に、いっぱいいるはずである。
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・大阪市君が代条例が成立 維新・公明・自民の賛成で
大阪維新の会と公明党、自民党の大阪市議団は28日、教職員に君が代の起立斉唱を義務づける市条例案について、市長提案の原案を修正することで合意した。修正案は同日深夜の市議会本会議で、3会派の賛成多数で可決、成立した。
維新と公明は27日までに、橋下徹市長が提案した条例原案の目的から、公明側の主張に沿って「学校における服務規律の厳格化を図る」の一文を削除することで一致していた。
さらに、自民も加えた3会派は28日の協議で、自民側が主張する「市長及び教育委員会は、(中略)国旗の掲揚及び国歌の斉唱について、適切に行われるための必要な措置を講じなければならない」との条文を追加することで合意。約7時間にわたる修正協議で、3会派の賛成多数で条例が成立する流れが固まった。 (朝日)
・橋下市長提案の国歌起立条例が可決…自公も賛成
橋下徹・大阪市長は、28日開会の市議会に国歌起立条例案を提案した。 与党の大阪維新の会に加え、公明党、自民党が同日、一部を修正することで賛成に回り、同条例は可決・成立した。
国歌起立条例は、国歌斉唱時に教職員の起立を義務づけ、市施設での国旗の常時掲揚を求めている。大阪府では橋下市長が知事時代の昨年6月、同様の府条例が全国で初めて成立した。政令市では初めて。
橋下市長はほかに、在任中の市長給与を42%減の月額82万円、退職金を81%減の751万円に引き下げる条例案なども提案した(⇒見事なパフォーマンス)。会期中には職員基本条例案と教育基本2条例案も追加提案する方針だ。(読売)
・関電、大学に2.9億円寄付 過去10年間で
関西電力は28日、大阪市と大阪府が求めていた経費支出などの情報開示請求に対して回答し、内容を公開した。過去10年で計24件、2億9千万円の大学への寄付を明らかにしたが、政治家のパーティー券購入の実績など全体の3分の1にあたる項目では、一部または全体の開示を拒否した。
大阪市は関西電力の筆頭株主。府市は脱原発依存に向けたエネルギー戦略をまとめ、6月の株主総会で関電に提案する方針だ。どの程度節電すれば原発を再稼働せずに済むかや、関電がどう費用を削減すれば値上げが避けられるかなどを分析するため、関電に関連データの2月末までの開示を求めていた。
府市側が要求した31項目のうち10項目で、関電は一部または全体の回答を拒んだ。大学への寄付については総額を明らかにしたものの、寄付した先の大学名や、関連団体・企業からの寄付は開示しなかった。電力業界の寄付をめぐっては、過去に内閣府原子力安全委員会の委員を務める大学教授らが受け取っていたことが判明している。 (朝日)(⇒豊中市にある大学は?)
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●大田昌秀元沖縄県知事からの便り
大田さんから「大田平和総合研究所」が移転し、今週末(3月3日)に新しくオープンする、とのお便りをいただいた。 「多年にわたって収集して参りました沖縄戦と、文字通りのゼロから復興に立ち上がった戦後沖縄の人びとの苦闘の写真のほか、「人間が人間でなくなるとき」と題してホロコーストや原爆の写真なども常設展示する」とのこと。
「ご来沖の際にはぜひお立ち寄り下さって、ご覧頂けたら何よりも幸甚に存じます」。
・知事「県外実現を」 首相「辺野古が唯一有効」(琉球新報)
●『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの -「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』(綿貫礼子・編)
新評論から贈呈していただいた。綿貫さんの最後の仕事となった。
「科学文明の転換点に立って、「脱」の新しい思想を紡ぐとき」という一節が、重く響く一冊である。
ぜひ、一読を。
【「大阪の教育」についての補足】
橋下「教育改革」に対する「大阪教職員組合共同アピール 2011年11月18日」を読んだ。
私は「教育基本条例案」と「職員基本条例案」、いずれにも反対である。が、その内容が違う。すでに述べた通り、府教組がたとえば、
①「大阪の教育の自治」を掲げ、その障害となる、
②「国と大阪の教育行政における二重の縦割り構造」に反対し、
③「文部科学省・中教審解体」と「阪大・教育大の大阪の教育システムへの統合」を主張するのであれば、私は全面的に支援したいと考えている。
大阪の「公教育」は、「戦後」一貫して、京大と東大、阪大その他の旧帝大七大学を頂点とする日本の偏差値・学歴偏重教育を「現場」で、能動的・主体的に推進してきた。その生き証人がここにもいる。
府教組には、そういう組織と運動の総括、そしてその果ての現状をしっかり見る眼を養ってほしい。
「自分たちをいかに守るか」ではなく。
2012年2月28日火曜日
2012年2月27日月曜日
国立大学改革と地方分権--で、阪大をどうするのか?
国立大学改革と地方分権--で、阪大をどうするのか?
国立大学の入試(前期日程)が始まった。私にも「現場」で「てんやわんや」になっている友人・知人がいる。
国立大学と言えば、ずっと昔から、疑問に思っていたことがある。
それは、仮に国から地方へ「分権」が進んだとして、「で、国立大学はどうなるのか/国立大学をどうするのか?」という問いである。 この問いは、必然的に、今後数十年にわたって続くであろう少子高齢化・人口減少時代の、分権が進んだ「地方」において、「最もふさわしい教育の在り方とはいかなるものか?」という、より本質的で根本的な問いを投げかける。
しかし、大学(研究者)はもちろんのこと、国(文科省-中教審、民主党)も自治体も、そうした問題意識をまったく持っていない。「廃墟となった大学」と「廃墟となった大阪」?を、できるだけつなげる形で、少しこの問題を考えてみたい。
現行の国立大学制度が、実は「地方分権」を阻んでいる、と考えたことはないだろうか。
たとえば、大阪である。「大阪の再生」を「大阪の自治/住民主権の再生」と位置づけ、その中心テーマを、仮に「大阪の教育の再生」に据えるとしたら(私はそのような立場には立たないが)、「国立大学法人としての大阪大学と大阪教育大学をどうするのか?」、という問いは避けられないはずだ。
しかし、「橋本イズム」は、現業の「民営化」と教育委員会・日教組・自治労の解体には熱心だが(「市民感情」から言えば、それにはそれなりの根拠が十分すぎるほどある)、この問いに正面から取り組まない。市大と府大の「統合」こそマニフェストに掲げてはいるが、「教育改革」に関して言えば、「橋下イズム」は「維新」を語りながら、実はきわめて保守的であり、知識エリート主義丸出しなのだ。
(独立行政)法人化した国立大学というのは、いわば文部科学省を始めとする国の官僚機構の延長組織である。地方分権との関係で言えば、国の「出先機関」みたいなもの、ということになる。
ところが。「橋下イズム」は国と地方の「行政の二重構造」=ムダを問題にするが、国と地方の大学行政の二重構造=ムダを問題にしない。 それはなぜか? そこにどのような「利権」が動いているのか? 一度よく考えてみるべきである。
橋下市長は、自分が保守・府立の進学校出身・子だくさんだから「公立の(進学率)復権」をかけ、「現場」への統制と競争を持ち込もうとしているのかも知れない。しかし、「大阪の子どもたち」に必要なのは「愛国心」ではない。「大阪を思う、「愛する」精神」の涵養である。どこの地域でも同じではないか。
それは「愛国心」とはまったく、まったく違うものである。「初等教育」における中教審お墨付きの「公民」教育、この国の官・政・財の下請けカリキュラムでしかない「高等教育」における「公共政策」学、さらには意味のわからない「国際公共政策」学などの抜本的見直しが必要だ。
「大阪の人間」は、ここまで大阪をダメにしたのが、たとえば府立北野高校から京大や東大、阪大や早稲田に進学し、その後、意識的にであれ無意識であれ、生まれ、育った「大阪を捨てた/売った(sell out)大阪の人間」だということに気づかない。 そういう「連中」が、霞が関や丸の内、中之島や北浜界隈に、いっぱいいる。「維新の会」内部にも、「外人・傭兵部隊」にも。「大阪のアジェンダ」ではなく、「自分のアジェンダ」を持ち込んでいる「連中」がいっぱいいる。
ともあれ、そういう「故郷を捨てた/売った連中」「現場を知らない連中」が、実は札幌、仙台、金沢、名古屋、広島、高松、博多、那覇、その他「地方」の県庁所在地にもいっぱいいる。
そう、福島にも。「精神/アイデンティティの根こぎになった連中」が、持続可能な循環型「天下りシステム」と「異動システム」によって、全国を「渡り」歩いているのである。
日本の国立大学制度は、「そういう連中」の養成機関としても位置付けられてきた。これをいかに「改革」するのか? 向こう2年や3年で、どうなる/どうするの話ではない。10年先、20年先を見据えた、とても〈アクチュアルな問題〉であるはずだ。
大阪における国立・公立・私立の「教育の社会的資本過剰」と、「貧困化と格差拡大」が同時進行する「大阪の人間」の「マクロレベルの教育投資過剰」に引きつけ、考えることが重要である。
生身の、あるがままの人間とその社会が奪われてしまう前に、国立大学法人を〈地域〉に還すために。
【参考サイト】
●「「国出先機関の事務・権限移譲に関するメリット等の事例」について」(関西広域連合)
「政府は平成22年12月に、「アクション・プラン~出先機関の原則廃止に向けて~」を閣議決定し、先の第13回地域主権戦略会議においては野田内閣のもとでも改めて広域連合制度の活用を前提に、国出先機関改革を推進することが確認され、今後、政治主導による取組の加速化が大いに期待されているところです・・・。」
↓
「政治主導による取組の加速化が大いに期待されている」と言うのは、「官僚主導」に固執する官僚機構の頑強な抵抗が続いているからである。「関西」などというlocalは、実際には「想像の共同体」に過ぎないが、広域連合に対しては、京大と阪大を始めとする「関西の国立大学をどうするか?」の議論を開始すべきだと提言したい。
もう一点。「大阪の人間」は大阪のことしか考えない。自分は変わらず人を変え、利用しようとする、強烈な「天の邪鬼」である。「転んでも、タダでは起きない人間」である。 広域連合の自治体で生活する人々も自分のところの「自治」を中心に思考し、「大阪の人間」に振り回されないようにすべきかも知れない。
●「大阪維新の会」の「市長選マニフェスト」
「2. 公務員制度を変える 職員基本条例
明治時代から 続いてきた公務員制度を大転換 。特権的な身分制度を排し、府民・ 市民の感覚が反映する公務員制度を構築します。
3. 教育の仕組みを変える教育基本条例
文部科学省を頂点とするピラミッド型の教育委員会制度を一から見直し、委員会が独占している権限を住民に取り戻します。教育行政に住民の意思が反映できる仕組みを構築します」
↓
大阪の「統治機構の改革」という点に限定して言えば、上の2と3に私は賛成である。
が、これだけは「大阪の教育」は何も変わらない。子どもたちが今よりももっと肉体的・精神的に疲弊し、「保護者」の負担が増加するだけである。 阪大・教育大を「大阪に還す」ことが核心的アジェンダである。
●大阪大学「地域社会との連携」
阪大は国と関西・大阪の「産官学連携」ではなく、「大阪の大学システム」の中に埋め込み直される(re-embed)べきである。「なにわの商人」の末裔の一人として言わせてもらえば、今の阪大は懐徳堂はもとより「建学の精神」からもかけ離れた、「大阪の人間」を「上から目線」で睥睨(へいげい)する、「象牙の塔」ならぬ「バベル(混乱)の塔」のように見える。
今、地方の国立大学では首都圏や関西圏の私立大学への「転職」を決断した人や考慮中の人が増えている。将来に対する不安や「やってられない」という意識が蔓延する全国立大学法人の教員・職員の未来のためにも、今から「国立大学を地域に還す議論」を興すことが重要だ。
●「「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ(案))」について」(文部科学省)
↓
法人化後の「現状と課題」を「熟議」するその視座が、国立大学が立地する地域ではなく、どこか宇宙の彼方にブッ飛んでしまっている。機会のある折に検討を加えたい。
●京都大、大阪府立の進学特色10高校と連携へ
京都大学(京都市)は[2月]16日、大阪府立の進学指導特色校10高校と教育連携すると発表した。高校生が大学の研究室を訪ねたり、大学の教員が高校へ出向いて助言したりする関係を築きたいという。
大阪の進学指導特色校は、橋下徹知事(当時)が優秀な生徒を特定の府立高に集めようと発案(⇒まったくの政策ミス)し、昨春からスタート。天王寺、北野、豊中、茨木、大手前、四條畷、高津、生野、三国丘、岸和田の10校で、約1.5億円の追加予算をつけて少人数授業などを行っている(⇒税金のミスユーズ)。昨秋には特色校の生徒約600人が京都大を訪れ、特別講義を受けたり研究発表をしたりした。昨春、10校から京都大に入学した生徒は241人。 (⇒なんで「大阪の子ども」が京大に行かなアカンねん?「大阪の人間」はこれが「大阪の頭脳流出」であることに、いつ気づくのか?)
記者会見で、松本紘・京都大総長は「大勢の優秀な学生が大阪から入ってきている(!)。より深い関係を築けることは意義深い」。中西正人・大阪府教委教育長は「生徒が刺激を受け、知的好奇心や学ぶ意欲が触発されれば」と話した(⇒そういう問題?)。(朝日、筒井次郎)
・・
・東大、インド人留学生獲得に本腰…学食も工夫
東京大学は27日、当地でインド事務所の開所式を行った。 バンガロールは情報技術(IT)などインドの先端産業の中心地で大学も多く、優秀なインド人留学生を獲得するのが狙いだ。
式典後、記者会見した田中明彦副学長は、東大では中国人留学生約1000人が学んでいるのに対しインド人留学生は35人だけだなどと明らかにした上で、「これを契機にインドからの学生を大幅に増やしたい」とアピールした。東大では、英語だけで授業を受けられるコースを拡充、学生食堂にもインドに多いベジタリアン(菜食主義者)やイスラム教徒向けのメニューを増やすなど受け入れ態勢を整えているという。
東大の海外事務所としては2005年に開設した北京に次いで2か所目となる。【読売、バンガロール(インド南部)=新居益】
・論文盗用した元助教の指導教授、停職1カ月 東大
東京大大学院工学系研究科のトルコ人元助教が博士号取得論文で他人の著作物を盗用した問題で、東大は29日、指導教員で学位審査の主査を務めた松村秀一教授について、対応が不適切だったとして24日付で停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。元助教は既に退職し、東大は「懲戒解雇相当」として退職手当を支給していない。
元助教による研究費の不正使用の調査結果も公表し、約105万円がパソコン購入代などに私的に流用された疑いがあるとした。東大は同額分を国などに返還する。(日経)
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・国のやり方恐ろしい…意見交換会欠席の双葉町長
東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉郡の8町村長と、細野環境相、平野復興相が復興について話し合う意見交換会は26日、双葉町の井戸川克隆町長ら3町長が急きょ欠席し中止されるという異例の事態となった。 国との意見交換会を欠席した井戸川克隆・双葉町長は26日、住民らが避難する埼玉県加須市で記者会見し、「信頼関係に問題が生じた」などと国への不信を語った。
「話し合いの場を設けたのに、一方的に決めて説明するということは、あってはならない。やり方が非常に恐ろしい」。井戸川町長は、中間貯蔵施設の用地を国が原発事故前の実勢価格で買い取ることを検討しているとの一部報道を引き合いに、国を批判した。 双葉郡内への同施設建設は「先祖伝来の古里に住めなくなるような決断をする、大変重い話だ」とし、今後の国との意見交換については「もう一度、冷静な判断の下で内容を検討し、会議を設けたい」と話した。(読売)
・野田首相:「来る意味わからない」…県民の不信感根深く
野田佳彦首相の26日の沖縄初訪問は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設への沖縄の理解を得るのが目的だ。27日の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事との会談などを通じて沖縄振興や沖縄の基地負担軽減に努力する姿勢をアピールする構えだが、普天間の県外移設を断念した民主党政権への沖縄の不信感は根深い。沖縄初訪問も県民には「基地押し付け」としか映らず、反発と不信の声が上がった。
県外移設を断念した鳩山由紀夫元首相、辺野古移設を踏襲した菅直人前首相に続き、野田首相は民主党政権の3人目の首相として沖縄入り。26日は沖縄戦犠牲者らの名を刻んだ平和の礎(いしじ)がある平和祈念公園(同県糸満市)などを回り、沖縄県幹部らから説明を受けた。27日の知事との会談では、辺野古回帰の経緯について謝罪すると共に、辺野古移設に理解を求めるとみられる。
しかし、辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協の安次富浩(あしとみ・ひろし)共同代表は、首相の沖縄初訪問に対し「『辺野古はダメ』と言い続けている沖縄に来る意味が全く分からない」と首をひねった。
在沖縄海兵隊の一部を米軍岩国基地(山口県岩国市)へ移転する米側の打診を、政府は拒否。山口側からの反発を受けたためだった。安次富さんは政府の沖縄と山口との対応の違いについて「この根底には、政府の沖縄差別の感情がある。このことを、本土の人ももっと関心を持ってもらいたい」と語気を強めた。【毎日、井本義親、吉永康朗、佐藤敬一】
国立大学の入試(前期日程)が始まった。私にも「現場」で「てんやわんや」になっている友人・知人がいる。
国立大学と言えば、ずっと昔から、疑問に思っていたことがある。
それは、仮に国から地方へ「分権」が進んだとして、「で、国立大学はどうなるのか/国立大学をどうするのか?」という問いである。 この問いは、必然的に、今後数十年にわたって続くであろう少子高齢化・人口減少時代の、分権が進んだ「地方」において、「最もふさわしい教育の在り方とはいかなるものか?」という、より本質的で根本的な問いを投げかける。
しかし、大学(研究者)はもちろんのこと、国(文科省-中教審、民主党)も自治体も、そうした問題意識をまったく持っていない。「廃墟となった大学」と「廃墟となった大阪」?を、できるだけつなげる形で、少しこの問題を考えてみたい。
現行の国立大学制度が、実は「地方分権」を阻んでいる、と考えたことはないだろうか。
たとえば、大阪である。「大阪の再生」を「大阪の自治/住民主権の再生」と位置づけ、その中心テーマを、仮に「大阪の教育の再生」に据えるとしたら(私はそのような立場には立たないが)、「国立大学法人としての大阪大学と大阪教育大学をどうするのか?」、という問いは避けられないはずだ。
しかし、「橋本イズム」は、現業の「民営化」と教育委員会・日教組・自治労の解体には熱心だが(「市民感情」から言えば、それにはそれなりの根拠が十分すぎるほどある)、この問いに正面から取り組まない。市大と府大の「統合」こそマニフェストに掲げてはいるが、「教育改革」に関して言えば、「橋下イズム」は「維新」を語りながら、実はきわめて保守的であり、知識エリート主義丸出しなのだ。
(独立行政)法人化した国立大学というのは、いわば文部科学省を始めとする国の官僚機構の延長組織である。地方分権との関係で言えば、国の「出先機関」みたいなもの、ということになる。
ところが。「橋下イズム」は国と地方の「行政の二重構造」=ムダを問題にするが、国と地方の大学行政の二重構造=ムダを問題にしない。 それはなぜか? そこにどのような「利権」が動いているのか? 一度よく考えてみるべきである。
橋下市長は、自分が保守・府立の進学校出身・子だくさんだから「公立の(進学率)復権」をかけ、「現場」への統制と競争を持ち込もうとしているのかも知れない。しかし、「大阪の子どもたち」に必要なのは「愛国心」ではない。「大阪を思う、「愛する」精神」の涵養である。どこの地域でも同じではないか。
それは「愛国心」とはまったく、まったく違うものである。「初等教育」における中教審お墨付きの「公民」教育、この国の官・政・財の下請けカリキュラムでしかない「高等教育」における「公共政策」学、さらには意味のわからない「国際公共政策」学などの抜本的見直しが必要だ。
「大阪の人間」は、ここまで大阪をダメにしたのが、たとえば府立北野高校から京大や東大、阪大や早稲田に進学し、その後、意識的にであれ無意識であれ、生まれ、育った「大阪を捨てた/売った(sell out)大阪の人間」だということに気づかない。 そういう「連中」が、霞が関や丸の内、中之島や北浜界隈に、いっぱいいる。「維新の会」内部にも、「外人・傭兵部隊」にも。「大阪のアジェンダ」ではなく、「自分のアジェンダ」を持ち込んでいる「連中」がいっぱいいる。
ともあれ、そういう「故郷を捨てた/売った連中」「現場を知らない連中」が、実は札幌、仙台、金沢、名古屋、広島、高松、博多、那覇、その他「地方」の県庁所在地にもいっぱいいる。
そう、福島にも。「精神/アイデンティティの根こぎになった連中」が、持続可能な循環型「天下りシステム」と「異動システム」によって、全国を「渡り」歩いているのである。
日本の国立大学制度は、「そういう連中」の養成機関としても位置付けられてきた。これをいかに「改革」するのか? 向こう2年や3年で、どうなる/どうするの話ではない。10年先、20年先を見据えた、とても〈アクチュアルな問題〉であるはずだ。
大阪における国立・公立・私立の「教育の社会的資本過剰」と、「貧困化と格差拡大」が同時進行する「大阪の人間」の「マクロレベルの教育投資過剰」に引きつけ、考えることが重要である。
生身の、あるがままの人間とその社会が奪われてしまう前に、国立大学法人を〈地域〉に還すために。
【参考サイト】
●「「国出先機関の事務・権限移譲に関するメリット等の事例」について」(関西広域連合)
「政府は平成22年12月に、「アクション・プラン~出先機関の原則廃止に向けて~」を閣議決定し、先の第13回地域主権戦略会議においては野田内閣のもとでも改めて広域連合制度の活用を前提に、国出先機関改革を推進することが確認され、今後、政治主導による取組の加速化が大いに期待されているところです・・・。」
↓
「政治主導による取組の加速化が大いに期待されている」と言うのは、「官僚主導」に固執する官僚機構の頑強な抵抗が続いているからである。「関西」などというlocalは、実際には「想像の共同体」に過ぎないが、広域連合に対しては、京大と阪大を始めとする「関西の国立大学をどうするか?」の議論を開始すべきだと提言したい。
もう一点。「大阪の人間」は大阪のことしか考えない。自分は変わらず人を変え、利用しようとする、強烈な「天の邪鬼」である。「転んでも、タダでは起きない人間」である。 広域連合の自治体で生活する人々も自分のところの「自治」を中心に思考し、「大阪の人間」に振り回されないようにすべきかも知れない。
●「大阪維新の会」の「市長選マニフェスト」
「2. 公務員制度を変える 職員基本条例
明治時代から 続いてきた公務員制度を大転換 。特権的な身分制度を排し、府民・ 市民の感覚が反映する公務員制度を構築します。
3. 教育の仕組みを変える教育基本条例
文部科学省を頂点とするピラミッド型の教育委員会制度を一から見直し、委員会が独占している権限を住民に取り戻します。教育行政に住民の意思が反映できる仕組みを構築します」
↓
大阪の「統治機構の改革」という点に限定して言えば、上の2と3に私は賛成である。
が、これだけは「大阪の教育」は何も変わらない。子どもたちが今よりももっと肉体的・精神的に疲弊し、「保護者」の負担が増加するだけである。 阪大・教育大を「大阪に還す」ことが核心的アジェンダである。
●大阪大学「地域社会との連携」
阪大は国と関西・大阪の「産官学連携」ではなく、「大阪の大学システム」の中に埋め込み直される(re-embed)べきである。「なにわの商人」の末裔の一人として言わせてもらえば、今の阪大は懐徳堂はもとより「建学の精神」からもかけ離れた、「大阪の人間」を「上から目線」で睥睨(へいげい)する、「象牙の塔」ならぬ「バベル(混乱)の塔」のように見える。
今、地方の国立大学では首都圏や関西圏の私立大学への「転職」を決断した人や考慮中の人が増えている。将来に対する不安や「やってられない」という意識が蔓延する全国立大学法人の教員・職員の未来のためにも、今から「国立大学を地域に還す議論」を興すことが重要だ。
●「「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ(案))」について」(文部科学省)
↓
法人化後の「現状と課題」を「熟議」するその視座が、国立大学が立地する地域ではなく、どこか宇宙の彼方にブッ飛んでしまっている。機会のある折に検討を加えたい。
●京都大、大阪府立の進学特色10高校と連携へ
京都大学(京都市)は[2月]16日、大阪府立の進学指導特色校10高校と教育連携すると発表した。高校生が大学の研究室を訪ねたり、大学の教員が高校へ出向いて助言したりする関係を築きたいという。
大阪の進学指導特色校は、橋下徹知事(当時)が優秀な生徒を特定の府立高に集めようと発案(⇒まったくの政策ミス)し、昨春からスタート。天王寺、北野、豊中、茨木、大手前、四條畷、高津、生野、三国丘、岸和田の10校で、約1.5億円の追加予算をつけて少人数授業などを行っている(⇒税金のミスユーズ)。昨秋には特色校の生徒約600人が京都大を訪れ、特別講義を受けたり研究発表をしたりした。昨春、10校から京都大に入学した生徒は241人。 (⇒なんで「大阪の子ども」が京大に行かなアカンねん?「大阪の人間」はこれが「大阪の頭脳流出」であることに、いつ気づくのか?)
記者会見で、松本紘・京都大総長は「大勢の優秀な学生が大阪から入ってきている(!)。より深い関係を築けることは意義深い」。中西正人・大阪府教委教育長は「生徒が刺激を受け、知的好奇心や学ぶ意欲が触発されれば」と話した(⇒そういう問題?)。(朝日、筒井次郎)
・・
・東大、インド人留学生獲得に本腰…学食も工夫
東京大学は27日、当地でインド事務所の開所式を行った。 バンガロールは情報技術(IT)などインドの先端産業の中心地で大学も多く、優秀なインド人留学生を獲得するのが狙いだ。
式典後、記者会見した田中明彦副学長は、東大では中国人留学生約1000人が学んでいるのに対しインド人留学生は35人だけだなどと明らかにした上で、「これを契機にインドからの学生を大幅に増やしたい」とアピールした。東大では、英語だけで授業を受けられるコースを拡充、学生食堂にもインドに多いベジタリアン(菜食主義者)やイスラム教徒向けのメニューを増やすなど受け入れ態勢を整えているという。
東大の海外事務所としては2005年に開設した北京に次いで2か所目となる。【読売、バンガロール(インド南部)=新居益】
・論文盗用した元助教の指導教授、停職1カ月 東大
東京大大学院工学系研究科のトルコ人元助教が博士号取得論文で他人の著作物を盗用した問題で、東大は29日、指導教員で学位審査の主査を務めた松村秀一教授について、対応が不適切だったとして24日付で停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。元助教は既に退職し、東大は「懲戒解雇相当」として退職手当を支給していない。
元助教による研究費の不正使用の調査結果も公表し、約105万円がパソコン購入代などに私的に流用された疑いがあるとした。東大は同額分を国などに返還する。(日経)
・・・
・国のやり方恐ろしい…意見交換会欠席の双葉町長
東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉郡の8町村長と、細野環境相、平野復興相が復興について話し合う意見交換会は26日、双葉町の井戸川克隆町長ら3町長が急きょ欠席し中止されるという異例の事態となった。 国との意見交換会を欠席した井戸川克隆・双葉町長は26日、住民らが避難する埼玉県加須市で記者会見し、「信頼関係に問題が生じた」などと国への不信を語った。
「話し合いの場を設けたのに、一方的に決めて説明するということは、あってはならない。やり方が非常に恐ろしい」。井戸川町長は、中間貯蔵施設の用地を国が原発事故前の実勢価格で買い取ることを検討しているとの一部報道を引き合いに、国を批判した。 双葉郡内への同施設建設は「先祖伝来の古里に住めなくなるような決断をする、大変重い話だ」とし、今後の国との意見交換については「もう一度、冷静な判断の下で内容を検討し、会議を設けたい」と話した。(読売)
・野田首相:「来る意味わからない」…県民の不信感根深く
野田佳彦首相の26日の沖縄初訪問は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設への沖縄の理解を得るのが目的だ。27日の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事との会談などを通じて沖縄振興や沖縄の基地負担軽減に努力する姿勢をアピールする構えだが、普天間の県外移設を断念した民主党政権への沖縄の不信感は根深い。沖縄初訪問も県民には「基地押し付け」としか映らず、反発と不信の声が上がった。
県外移設を断念した鳩山由紀夫元首相、辺野古移設を踏襲した菅直人前首相に続き、野田首相は民主党政権の3人目の首相として沖縄入り。26日は沖縄戦犠牲者らの名を刻んだ平和の礎(いしじ)がある平和祈念公園(同県糸満市)などを回り、沖縄県幹部らから説明を受けた。27日の知事との会談では、辺野古回帰の経緯について謝罪すると共に、辺野古移設に理解を求めるとみられる。
しかし、辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協の安次富浩(あしとみ・ひろし)共同代表は、首相の沖縄初訪問に対し「『辺野古はダメ』と言い続けている沖縄に来る意味が全く分からない」と首をひねった。
在沖縄海兵隊の一部を米軍岩国基地(山口県岩国市)へ移転する米側の打診を、政府は拒否。山口側からの反発を受けたためだった。安次富さんは政府の沖縄と山口との対応の違いについて「この根底には、政府の沖縄差別の感情がある。このことを、本土の人ももっと関心を持ってもらいたい」と語気を強めた。【毎日、井本義親、吉永康朗、佐藤敬一】
2012年2月26日日曜日
3・11原発いらない!福島県民大集会
「3・11」原発いらない!福島県民大集会
日時:3月11日(日)13:00~
会場:郡山市「開成山野球場」
交通:郡山駅西口より5分間隔で路線バス「郡山市役所」下車2分/タクシーで約10分/東北自動車道・郡山ICから車で15分(会場周辺には駐車場はありません)
内容:12:30 開場
13:00 加藤登紀子さんコンサート
14:00 県民大集会(県内の様々な立場の方や大江健三郎さんの発言予定)
14:46 黙とう/集会宣言採択
15:00 パレード出発
主催:県民集会実行委員会
連絡先:実行委員会事務局(TEL:0800‐800‐5702 Fax:0800‐800‐5703)
●県民集会での訴えの内容
・福島県では原子力発電は将来にわたり行わず、福島県を自然エネルギー等再生可能エネルギーの研究・開発の拠点とすること。
・放射能によって奪われた福島県の安全・安心を国と東京電力の責任で実現すること。特に子どもたちを放射能から守ること。
・原発事故に伴うすべての賠償の実現と県民の生活と雇用の保障を実現すること。
↓
福島第一5、6号機、第二の廃炉宣言・要求は?
■詳しくはこちら(実行委ホームページ)http://fukushima-kenmin311.jp/
■記者会見の報告はこちら http://sayonara-nukes.org/2012/02/120224news/
●東京でもアクション
「3.11東京大行進-追悼と脱原発への誓いを新たに-」
日時:3月11日(日)
14:00開始
14:46 黙祷
15:00デモ出発
集合場所:日比谷公園中幸門
主催:首都圏反原発連合
協力:3・11再稼働反対!全国アクション、さようなら原発1000万人アクション
■3.11を中心とする各地のアクションはこちら
http://sayonara-nukes.org/actionweek/
・・・
・「過剰な心配無用」 花粉の放射性セシウム マスクで一層安心
東京電力福島第一原発事故で汚染されたスギの花粉に微量の放射性セシウムが含まれている問題で、花粉症シーズンを控え、県民の一部から不安の声が上がっている。警戒区域などのスギの雄花を調査した林野庁は「健康に影響はないレベル」と分析しており、県は今月、ホームページで同庁の調査結果などの情報提供を始めた。飛散花粉の実態を調査し、安全を確認する動きも出てきた。専門家は「過剰な心配はいらないが、気になる人はマスクを着けて」としている。
■飛散状況測定
「放射性セシウムが含まれる花粉の飛散は来年以降も続く。危険性がないかを確認する必要がある」。茨城大の北和之教授ら日本地球惑星科学連合・放射化学会連携チームは、県内5カ所を含む計11カ所で放射性物質を含むスギ花粉の飛散状況を測定する。
県内は福島、郡山、南相馬、川俣、いわきの5市町で測定。フィルターに付着した花粉などの放射性セシウムの量を4月まで随時調べる。北教授は「花粉の飛散によって大気中の放射性物質の濃度が上がっても、空間放射線量はほとんど変化しないだろう」と安全性を強調している。
東京大アイソトープ総合センターの桧垣正吾助教(放射化学)は今月中にも花粉の吸引状況などの調査に入る方向で検討している。県内などの計50人程度の使用後のマスクを回収し、付着した花粉からの放射線量を測定する。「吸引状況を調べ、問題がないことを確認し、安心材料にしたい」と説明した。
■HPで情報提供
県が放射性セシウムを含む花粉に関してホームページで情報提供を始めたのは、県民から相談が寄せられたのがきっかけだ。健康に影響がないとする林野庁の試算結果などを紹介し、県民の不安払拭(ふっしょく)を目指している。
林野庁は原発事故後、県内132カ所を含む全国182カ所のスギの花粉を作る雄花に含まれる放射性セシウム濃度を調査した。
浪江町で採取された最も高い濃度の1キロ当たり25万3000ベクレルの雄花と同じ濃度の花粉が飛散したとしても、成人の被ばく量は毎時最大0・000192マイクロシーベルトとしている。25日に福島市役所前で県が測定した毎時0・91マイクロシーベルトの約4700分の1に当たる。
■警鐘
林野庁や専門家が安全性を強調しても、原発事故以降、放射線問題に悩まされてきた県民の中には心配を拭い去れない人もいる。
「もし何かあってからでは遅い。できることは対応する」と話すのは福島市の主婦内山智子さん(42)。幼稚園に通う5歳の子どもがおり、花粉シーズンにはマスクを着用させるつもりだ。
同市の会社員鈴木孝一さん(36)は「放射性セシウムが花粉に含まれていると聞くだけで気持ちが悪い」と不快感を示す。原発事故後の昨年5月ごろまでは長時間の外出時にはマスクを着けていたが、空間放射線量が下がり始めたため、現在はやめている。「やっと安心できたのに…。健康に影響はないと聞いてもマスクをすると思う」と打ち明けた。
内部被ばくに詳しい琉球大の矢ケ崎克馬名誉教授(物理学)は「微量とはいえ、もともとアレルギー症状がある人は花粉の放射性セシウムの放射線が加わることで、健康への影響が大きくなる可能性がある。少ないから大丈夫というわけではない」と指摘する。
鼻の中の粘膜に花粉が付着し、セシウムから出た放射線が粘膜の分子を切断することもあり得ると主張し、「花粉症の発症や悪化を招くことも十分考えられる」と警鐘を鳴らす。
■首都大学東京大学院・放射線科学域長 福士政広教授
首都大学東京大学院の放射線科学域長を務める福士政広教授(放射線安全管理学)は福島民報社のインタビューに応じ、「スギ花粉の放射性セシウムが健康被害を及ぼすことはない」と強調した。
-花粉に放射性セシウムが移行する仕組みは。
「原発事故で飛散した放射性セシウムがスギの葉面に付着し、養分として木の内部に吸収された。雄花にも取り込まれ、花粉に含まれるようになった。一方、現時点で放射性セシウムは地表にとどまり、スギの根は地中にあるため、土壌からの吸収はほとんどないと考えられる。しかし、今後、放射性セシウムが土壌に浸透すれば、根から吸収される可能性がある。早期の除染が必要だ」
-葉面からはどの程度の放射性セシウムが吸収されるのか。
「昨年11、12の両月、東京都の奥多摩でスギを調査した。最大で10分の1程度が葉から雄花に移行していることが分かった。花粉には雄花と同程度の放射性セシウムが含まれると考えられる」
-放射性セシウムが含まれる花粉による被ばく量は。
「林野庁が浪江町で実施した調査でスギの雄花1キロ当たり最大25万3000ベクレルが測定された結果から推測すると、仮に花粉シーズンの4カ月間にわたり、24時間、同じ比率で花粉を吸い続けたとしても、被ばく量は0・553マイクロシーベルトにとどまる。健康被害が出るレベルではない。危険性はまったくないと言える」
-対策は不要か。
「可能な限り不必要な被ばく量を抑えるという放射線防護の観点からいえば、マスクなどを着け体内に取り込むのを防ぐことも大切だろう」(福島民報)
・原発事故調、海外専門家から批判続出
福島第1原発の事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が海外の原子力専門家から意見を聞く会合は25日、2日間の日程を終えた。専門家からは、日本の原発事故への備えの甘さや、政府による「冷温停止状態」宣言の拙速さを批判する声が相次いだ。
米原子力規制委員会(NRC)元委員長のリチャード・メザーブ氏は、事故現場で線量計が作業員に行き渡るまで3週間もかかったことを問題視し、「信じられない対応だ。もっと早くそろえられたはずだ」と批判した。
フランス原子力安全局長のアンドレ・ラコスト氏は、1999年の茨城県東海村での臨界事故や、2004年に関西電力美浜原発で起きた配管破裂事故を例に挙げ「日本では5年に一度、事故が起きていた。大事故があるなら日本だと思っていた」と、教訓を十分に生かしてこなかったことが大事故につながったとの認識を示した。
韓国原子力協会長・張舜興(チャンスンフン)氏は、政府の「冷温停止状態」宣言に疑問を呈し「原子炉内の状態を特定せずに、どうして安全と言えるのか」と、拙速さを批判した。
事故調も、安全意識の甘さがなぜまかり通ってきたのか、今夏の最終報告で解き明かす考え。委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は「安全文化という考え方に真正面から向き合わなければならないと感じた」と述べた。(福島民報)
↓
以前にも書いたが、この国に「原発を持てるガバナンス」があるかどうか、一度真剣に考えてみることだ。
これは決して他国にはある、という意味ではない。もしかしたら、すべての原発保有国の一番深刻な〈問題〉かもしれない。
日時:3月11日(日)13:00~
会場:郡山市「開成山野球場」
交通:郡山駅西口より5分間隔で路線バス「郡山市役所」下車2分/タクシーで約10分/東北自動車道・郡山ICから車で15分(会場周辺には駐車場はありません)
内容:12:30 開場
13:00 加藤登紀子さんコンサート
14:00 県民大集会(県内の様々な立場の方や大江健三郎さんの発言予定)
14:46 黙とう/集会宣言採択
15:00 パレード出発
主催:県民集会実行委員会
連絡先:実行委員会事務局(TEL:0800‐800‐5702 Fax:0800‐800‐5703)
●県民集会での訴えの内容
・福島県では原子力発電は将来にわたり行わず、福島県を自然エネルギー等再生可能エネルギーの研究・開発の拠点とすること。
・放射能によって奪われた福島県の安全・安心を国と東京電力の責任で実現すること。特に子どもたちを放射能から守ること。
・原発事故に伴うすべての賠償の実現と県民の生活と雇用の保障を実現すること。
↓
福島第一5、6号機、第二の廃炉宣言・要求は?
■詳しくはこちら(実行委ホームページ)http://fukushima-kenmin311.jp/
■記者会見の報告はこちら http://sayonara-nukes.org/2012/02/120224news/
●東京でもアクション
「3.11東京大行進-追悼と脱原発への誓いを新たに-」
日時:3月11日(日)
14:00開始
14:46 黙祷
15:00デモ出発
集合場所:日比谷公園中幸門
主催:首都圏反原発連合
協力:3・11再稼働反対!全国アクション、さようなら原発1000万人アクション
■3.11を中心とする各地のアクションはこちら
http://sayonara-nukes.org/actionweek/
・・・
・「過剰な心配無用」 花粉の放射性セシウム マスクで一層安心
東京電力福島第一原発事故で汚染されたスギの花粉に微量の放射性セシウムが含まれている問題で、花粉症シーズンを控え、県民の一部から不安の声が上がっている。警戒区域などのスギの雄花を調査した林野庁は「健康に影響はないレベル」と分析しており、県は今月、ホームページで同庁の調査結果などの情報提供を始めた。飛散花粉の実態を調査し、安全を確認する動きも出てきた。専門家は「過剰な心配はいらないが、気になる人はマスクを着けて」としている。
■飛散状況測定
「放射性セシウムが含まれる花粉の飛散は来年以降も続く。危険性がないかを確認する必要がある」。茨城大の北和之教授ら日本地球惑星科学連合・放射化学会連携チームは、県内5カ所を含む計11カ所で放射性物質を含むスギ花粉の飛散状況を測定する。
県内は福島、郡山、南相馬、川俣、いわきの5市町で測定。フィルターに付着した花粉などの放射性セシウムの量を4月まで随時調べる。北教授は「花粉の飛散によって大気中の放射性物質の濃度が上がっても、空間放射線量はほとんど変化しないだろう」と安全性を強調している。
東京大アイソトープ総合センターの桧垣正吾助教(放射化学)は今月中にも花粉の吸引状況などの調査に入る方向で検討している。県内などの計50人程度の使用後のマスクを回収し、付着した花粉からの放射線量を測定する。「吸引状況を調べ、問題がないことを確認し、安心材料にしたい」と説明した。
■HPで情報提供
県が放射性セシウムを含む花粉に関してホームページで情報提供を始めたのは、県民から相談が寄せられたのがきっかけだ。健康に影響がないとする林野庁の試算結果などを紹介し、県民の不安払拭(ふっしょく)を目指している。
林野庁は原発事故後、県内132カ所を含む全国182カ所のスギの花粉を作る雄花に含まれる放射性セシウム濃度を調査した。
浪江町で採取された最も高い濃度の1キロ当たり25万3000ベクレルの雄花と同じ濃度の花粉が飛散したとしても、成人の被ばく量は毎時最大0・000192マイクロシーベルトとしている。25日に福島市役所前で県が測定した毎時0・91マイクロシーベルトの約4700分の1に当たる。
■警鐘
林野庁や専門家が安全性を強調しても、原発事故以降、放射線問題に悩まされてきた県民の中には心配を拭い去れない人もいる。
「もし何かあってからでは遅い。できることは対応する」と話すのは福島市の主婦内山智子さん(42)。幼稚園に通う5歳の子どもがおり、花粉シーズンにはマスクを着用させるつもりだ。
同市の会社員鈴木孝一さん(36)は「放射性セシウムが花粉に含まれていると聞くだけで気持ちが悪い」と不快感を示す。原発事故後の昨年5月ごろまでは長時間の外出時にはマスクを着けていたが、空間放射線量が下がり始めたため、現在はやめている。「やっと安心できたのに…。健康に影響はないと聞いてもマスクをすると思う」と打ち明けた。
内部被ばくに詳しい琉球大の矢ケ崎克馬名誉教授(物理学)は「微量とはいえ、もともとアレルギー症状がある人は花粉の放射性セシウムの放射線が加わることで、健康への影響が大きくなる可能性がある。少ないから大丈夫というわけではない」と指摘する。
鼻の中の粘膜に花粉が付着し、セシウムから出た放射線が粘膜の分子を切断することもあり得ると主張し、「花粉症の発症や悪化を招くことも十分考えられる」と警鐘を鳴らす。
■首都大学東京大学院・放射線科学域長 福士政広教授
首都大学東京大学院の放射線科学域長を務める福士政広教授(放射線安全管理学)は福島民報社のインタビューに応じ、「スギ花粉の放射性セシウムが健康被害を及ぼすことはない」と強調した。
-花粉に放射性セシウムが移行する仕組みは。
「原発事故で飛散した放射性セシウムがスギの葉面に付着し、養分として木の内部に吸収された。雄花にも取り込まれ、花粉に含まれるようになった。一方、現時点で放射性セシウムは地表にとどまり、スギの根は地中にあるため、土壌からの吸収はほとんどないと考えられる。しかし、今後、放射性セシウムが土壌に浸透すれば、根から吸収される可能性がある。早期の除染が必要だ」
-葉面からはどの程度の放射性セシウムが吸収されるのか。
「昨年11、12の両月、東京都の奥多摩でスギを調査した。最大で10分の1程度が葉から雄花に移行していることが分かった。花粉には雄花と同程度の放射性セシウムが含まれると考えられる」
-放射性セシウムが含まれる花粉による被ばく量は。
「林野庁が浪江町で実施した調査でスギの雄花1キロ当たり最大25万3000ベクレルが測定された結果から推測すると、仮に花粉シーズンの4カ月間にわたり、24時間、同じ比率で花粉を吸い続けたとしても、被ばく量は0・553マイクロシーベルトにとどまる。健康被害が出るレベルではない。危険性はまったくないと言える」
-対策は不要か。
「可能な限り不必要な被ばく量を抑えるという放射線防護の観点からいえば、マスクなどを着け体内に取り込むのを防ぐことも大切だろう」(福島民報)
・原発事故調、海外専門家から批判続出
福島第1原発の事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が海外の原子力専門家から意見を聞く会合は25日、2日間の日程を終えた。専門家からは、日本の原発事故への備えの甘さや、政府による「冷温停止状態」宣言の拙速さを批判する声が相次いだ。
米原子力規制委員会(NRC)元委員長のリチャード・メザーブ氏は、事故現場で線量計が作業員に行き渡るまで3週間もかかったことを問題視し、「信じられない対応だ。もっと早くそろえられたはずだ」と批判した。
フランス原子力安全局長のアンドレ・ラコスト氏は、1999年の茨城県東海村での臨界事故や、2004年に関西電力美浜原発で起きた配管破裂事故を例に挙げ「日本では5年に一度、事故が起きていた。大事故があるなら日本だと思っていた」と、教訓を十分に生かしてこなかったことが大事故につながったとの認識を示した。
韓国原子力協会長・張舜興(チャンスンフン)氏は、政府の「冷温停止状態」宣言に疑問を呈し「原子炉内の状態を特定せずに、どうして安全と言えるのか」と、拙速さを批判した。
事故調も、安全意識の甘さがなぜまかり通ってきたのか、今夏の最終報告で解き明かす考え。委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は「安全文化という考え方に真正面から向き合わなければならないと感じた」と述べた。(福島民報)
↓
以前にも書いたが、この国に「原発を持てるガバナンス」があるかどうか、一度真剣に考えてみることだ。
これは決して他国にはある、という意味ではない。もしかしたら、すべての原発保有国の一番深刻な〈問題〉かもしれない。
2012年2月25日土曜日
福島市・伊達市など行政主導の一般(県外)ボランティアによる除染作業についての問題点
福島市・伊達市など行政主導の一般(県外)ボランティアによる除染作業についての問題点
【解説】
以下は、福島の支援活動に関わる、あるNGOスタッフが書いた文章で、昨日、執筆者本人から私宛てに送られてきたものである。すでに東日本大震災の「復興支援」活動に関わるNGOのネットワークの間で公開されており、執筆者も公開を了解しているが、被ばく線量などの個人情報が記載されているので実名は伏せて掲載することにした。
現場の経験に即しながら、福島県内の「ホットスポット」における「除染ボランティア」の問題点と提言がまとめられている。各地の「ホットスポット」の除染を今後いかに進めていくか。私も含め、すべての関係者が「答え」を模索している最中ではないだろうか。それを考えるにあたり、一つの参考になればと思った。
・・
11月13日(日)に福島市の除染ボランティア(市社協がボランティア募集窓口)に参加してきました。除染作業に一般のボランティアを行政(形の上では社協だが)が募る仕組み自体に違和感を覚え●●の●●さんと一緒に体験取材することになりました。
現場は玄米の放射性セシウムが基準値を超えて検出された福島市大波地区の民家の敷地周辺。各自軍手、使い捨てマスク、医療用のディスポグローブと積算線量計そして市社協のビブスを渡されました。マスクは環境省がその手引きで指定しているようなサージカルマスクや防塵マスクでもなくコンビニで売っている普通の風邪用のマスクです。
社協のビブスを着ると傍目には震災支援をしている社協のボランティアにしか見えない。実際は市の除染作業を請け負う業者のやらない部分を作業する除染ボランティア。市の担当者の説明によると屋根や側溝など高所であるとか高線量であるなど危険な作業は業者がやりその他の作業をボランティアにやらせようということらしいです。
線量計はリアルタイムに空間線量を測れるとのことでしたが私のものはモード切替ができませんでした。結果として[私は]12μSv被ばくしました。これまで平均で2、3μSvだったようで市の担当者もちょっと困ったような素振りをみせました。
その日の夜に子ども全国ネットの人たちとも話し合い、いろいろ考えて論点を整理してみました。
1)構造の問題
NGO・NPOの活動は安価な行政サービスとして存在するのではないという原則があります。
今回の福島県の福島市、伊達市のように本来国の事業で専門的知識が必要とされる除染作業を一般を対象に募集したボランティアにさせることに疑問を感じます。
同じことをやるにしても、どこがイニシアティブを取るかで意味が違ってきます。市民が主導で行うボランティア活動と同一に見ることはできません。まさに予算がないから無報酬のボランティアを動員するという考え方はあまりに安易であるばかりではなく、福島のために何かしたいという純粋な善意を利用した悪質な行為だと言えます。
2)命・権利の問題
生活する上で危険なレベルの線量を除染によって下げるから避難する必要はない、安全だと言うための除染は矛盾しています。
危険なレベルだとすればまず安全なレベルに下がるまで避難させるべきです。少なくとも避難する権利を認める必要があります。現状は国際法上も憲法を初めとする国内法にも違反しています。
ちなみに日本では、年間5.2mSvを超えるような場所は「放射線管理区域」として、厳重に管理されなければならないことになっています。除染はあくまで避難とセットで実施されるべきです。
3)安全管理の問題
福島市では市社協がボランティア募集を受け持っています。HPの情報を見て応募するシステムですが、除染作業でのリスクについて十分説明させれているとは言えません。
また一般的に言って除染が必要なほど高線量の場所での活動にも関わらず出産する可能性の高い年齢層の女性を含む若年層の参加に制限も設けていませんし注意を喚起することもしていません。
また作業中は積算線量計を各自携行することになっています。作業中の被ばく量を年間被ばく量に追加する形で計算するとしていますが、この計算は参加者個人に委ねられています。
つまり主催者によって管理はされていません。作業中の被ばく量についても、同じ現場でもどのような場所で多く作業したかによって被ばく量は大きくかわります。[私は]今日の2時間の作業で12μSVも被ばくしました。(多くの参加者は2μSvー5μSvでした)
年間積算線量の計算においても日本独自の複雑な計算方法を用いています。1日のうち屋内にいる時間を16時間とし、その分については「木造家屋の低減効果係数=0.4」を掛けて計算しています。
【一日あたりの線量を「a」として数式化すると((2/3(16時間/24時間)×0.4))a + ((1/3(8時間/24時間)))a = 0.6a】
屋内での線量を6掛けするのは一見正確なように見えますが、そもそも正確を期すためには個人がどのような生活しているかによって被ばく量を割り出す必要があります。被ばく量は生活パターンによって大きく違ってくるからです。そのためには積算線量計で1か月どれほど被ばくしたかを計測し年間被ばく量を割り出す必要があります。
除染において被ばくが許される被ばく量は現行の年間1mSvからその被ばく量と推定される内部被ばく量とを引いた部分です。内部被ばく量も個人の食生活などに大きく依存します。この年間積算被ばく量の計算は複雑になり個別対応は困難です。
どちらにしても1mSvを基本にすることには無理がありますが、とりあえず1mSvを基準にしたところで東日本全体汚染されている現実を見ると被災3県以外でも普通に暮らしていて年間1mSVを超える空間線量の地域は意外に多いのです。言うまでもなく高線量の福島県に居住しているものが除染ボランティアに申し込む資格はもとよりありません。このような説明もHPにはありません。
作業中の防護対策についても十分とは言えません。環境省の基準をも満たしていない使い捨てマスクの使用やゴーグルも準備されず、頭髪を隠すなどの注意喚起もありません。
またさらに重要なことは事前加入のボランティア保険では放射線障害についてはカバーされないということです。このことは除染作業がボランティアの仕事として成立していないということを端的に示しています。行政が行う除染作業については万が一の保障を考えると雇用契約による労災加入が義務付けられるべきだと考えます。最低賃金のみ支給するとしても東京から来るボランティアに交通費を支給したと考えるとかなり割安なものになります。
ただ、労災に加入したからといって晩発性と言われる障がいが自動的にカバーされるわけではなく、むしろ逆で裁判に持って行ったところで勝つ見込みのないでしょう。結論的には最低賃金どころか将来に渡るリスクを引き受けてもらうには一種「危険手当」を予め組み入れた割高な賃金を支払うことしか方法がありません。一般に呼びかける除染ボランティアはこの問題を巧妙に隠しています。
提言としては
・事前にリスクに関する情報を提供したうえでの申込みを受け付けること
・除染と避難を同時に行うこと
・個々の参加者の内部被ばくを含めた年間積算線量と作業中の被ばく量の計算を厳密にした上で参加資格の可否判断も含め主催者が責任を持って管理すること
・作業中の放射線防護対策を徹底すること
・ボランティアではなく最低でも労災加入が義務付けられる雇用契約を結ぶ「除染作業県外協力者」とすること。また除染業務そのものはリスクを引き受けて貰う対価として「危険手当」が加算されるべきである。
追加:
こども全国ネットの●○さんの補足
今回の除染活動が他の震災のボランティア活動と違う点は、
1)東電という一民間企業の起こした公害という人災事故(天災ではない)の被害地域に対する支援活動であるので、単なる被災地ボランティアではないこと
⇒専門的な訓練を備えた専門業者が行うべき作業である。その補助的作業であるからボランティアではなく「放射線防護訓練」を受け、「労災加入」を義務づけ事後の補償を前提とした契約を結ぶ事。
2)除染計画の明示と廃棄物管理計画の策定
線量別の作業計画とボランティアの関われる作業範囲の明示が必要であること。
⇒現在あちこちで除染活動が行われているが、除染地の線量もまちまちで作業方法も統一されていない。少なくとも線量別の作業管理と「一般協力者が請け負える(リスク管理が出来る)作業範囲」の明示が必要。(被曝前提の作業であるため、年齢制限や妊娠前の若い女性など健康上のリスク提示は必須)
⇒除染計画に基づき、「避難の上で除染する計画の徹底」
⇒廃棄物処理計画がはっきりしていない作業が多いと思われる。
公園や近くの空き地での一時保管など二次災害に繋がる処理など現状の作業には課題が多く、人海戦術で対応しても無駄になる、または返って問題を起こす可能性のある除染になることもある。廃棄物処理計画を明確することを求める。
いずれにしても、除染は大変リスクの高い作業であり、効果もまだ未知の領域ですし、国の指針は甘いです。リスク管理の指針づくりにはNPOなど民間からの提案が必須と思われます。
・・
【参考サイト】
●「原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 猪飼周平」
「・・・では、ボランティア主導の除染体制とはどのようなものだと考えればよいであろうか。私の考えでは、次の5点がポイントである。すなわち、
第1に、ボランティアを含め住民支援という目標を共有できる、住民自身、ボランティア、地元業者、専門家、できれば行政からなる連携を構築すること、
第2に、放射線被曝に関する十分な情報がボランティアに提供されること、
第3に、困っている順番に除染することで、行政による除染と補完関係に入ること、
第4に、そのために、個人の除染ニーズに関する情報(行政保健師が相談を通じて収集しつつある)を、行政と市民セクターで共有できる体制を構築すること、
第5に、除染を行う人びとの被曝を最小限に抑える可能な限りの措置を講ずること、である。
なお、最後に除染ボランティアに関して、一点解決すべき深刻な問題があることについては言及しておかなければならないだろう。それは、国が1mSv/y以上の地域の除染について責任を認めている点と関わっている。 現状では、ボランティアが除染をすると国の除染費用の軽減に役立つという構造になっている。だが、ボランティアは被災地の住民を支援したいのであって、原発事故に一義的な責任を負う国を支援したいのではない。現在の状況は、ボランティアが除染に関わることを抑制する状況となっているのである。
したがって、除染ボランティアの十分な活用に際しては、彼らの活動と国の責任とが切り離されるような条件整備が必要となるだろう。たとえば、除染ボランティアの費用が最終的に国に請求され、国からの支払いが住民に還元されるような枠組みができれば、この問題は解決されることになる。このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたいと思う」・・・。
・・
「このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたい」。
・・・
●「原発を問う民衆法廷第1回公判」 (iwakamiyasumi5)
・柏崎刈羽原発、熱交換器建屋で煙 放射能漏れなし 東電、定期検査中の5号機
25日午後11時35分ごろ、定期検査中の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)5号機の熱交換器建屋で煙が発生し、火災報知機が作動した。東電によると、外部への放射性物質漏れは確認されていない。地元消防が出動したが、煙だけで火は確認していないという。
東電によると、原子炉に燃料はなく、使用済み燃料プールに全燃料が入っている。
煙が出たのは、原子炉の冷却に使う熱交換器の配管腐食を防ぐための鉄イオンを注入するポンプの軸受け部分。ポンプは作動していた。 5号機の出力は110万キロワットで、1月下旬から定検入りしていた。同原発は3月26日、全7基のうち唯一稼働している6号機が定検のため停止し、東電管内の全17基が停止する。〔共同〕
・処理装置から高濃度汚染水漏れる…外部流出なし
東京電力は25日、福島第一原子力発電所の汚染水処理装置「サリー」(東芝製)の配管から、約10リットルの高濃度汚染水の水漏れがあり、装置を停止させたと発表した。 昨年8月から運用を始めたサリーで、水漏れが起きたのは初めて。外部への流出はないが、2系列あるサリーの一方は再稼働のめどが立っていないという。
東電によると、同日午前8時半頃、作業員が配管の溶接部付近から1秒に1滴程度の水漏れがあるのを見つけた。汚染水の濃度は、セシウム134が1立方センチ・メートル当たり13万ベクレル、セシウム137が18万ベクレルと高濃度だった。
東電は、溶接部が劣化した可能性があるとみている。停止させた系列の配管を交換して再稼働をめざすが、もう一つある米キュリオン社製の処理装置の稼働率を上げれば全体の汚染水処理に大きな影響はないという。(読売)
↓
そういう問題?
【解説】
以下は、福島の支援活動に関わる、あるNGOスタッフが書いた文章で、昨日、執筆者本人から私宛てに送られてきたものである。すでに東日本大震災の「復興支援」活動に関わるNGOのネットワークの間で公開されており、執筆者も公開を了解しているが、被ばく線量などの個人情報が記載されているので実名は伏せて掲載することにした。
現場の経験に即しながら、福島県内の「ホットスポット」における「除染ボランティア」の問題点と提言がまとめられている。各地の「ホットスポット」の除染を今後いかに進めていくか。私も含め、すべての関係者が「答え」を模索している最中ではないだろうか。それを考えるにあたり、一つの参考になればと思った。
・・
11月13日(日)に福島市の除染ボランティア(市社協がボランティア募集窓口)に参加してきました。除染作業に一般のボランティアを行政(形の上では社協だが)が募る仕組み自体に違和感を覚え●●の●●さんと一緒に体験取材することになりました。
現場は玄米の放射性セシウムが基準値を超えて検出された福島市大波地区の民家の敷地周辺。各自軍手、使い捨てマスク、医療用のディスポグローブと積算線量計そして市社協のビブスを渡されました。マスクは環境省がその手引きで指定しているようなサージカルマスクや防塵マスクでもなくコンビニで売っている普通の風邪用のマスクです。
社協のビブスを着ると傍目には震災支援をしている社協のボランティアにしか見えない。実際は市の除染作業を請け負う業者のやらない部分を作業する除染ボランティア。市の担当者の説明によると屋根や側溝など高所であるとか高線量であるなど危険な作業は業者がやりその他の作業をボランティアにやらせようということらしいです。
線量計はリアルタイムに空間線量を測れるとのことでしたが私のものはモード切替ができませんでした。結果として[私は]12μSv被ばくしました。これまで平均で2、3μSvだったようで市の担当者もちょっと困ったような素振りをみせました。
その日の夜に子ども全国ネットの人たちとも話し合い、いろいろ考えて論点を整理してみました。
1)構造の問題
NGO・NPOの活動は安価な行政サービスとして存在するのではないという原則があります。
今回の福島県の福島市、伊達市のように本来国の事業で専門的知識が必要とされる除染作業を一般を対象に募集したボランティアにさせることに疑問を感じます。
同じことをやるにしても、どこがイニシアティブを取るかで意味が違ってきます。市民が主導で行うボランティア活動と同一に見ることはできません。まさに予算がないから無報酬のボランティアを動員するという考え方はあまりに安易であるばかりではなく、福島のために何かしたいという純粋な善意を利用した悪質な行為だと言えます。
2)命・権利の問題
生活する上で危険なレベルの線量を除染によって下げるから避難する必要はない、安全だと言うための除染は矛盾しています。
危険なレベルだとすればまず安全なレベルに下がるまで避難させるべきです。少なくとも避難する権利を認める必要があります。現状は国際法上も憲法を初めとする国内法にも違反しています。
ちなみに日本では、年間5.2mSvを超えるような場所は「放射線管理区域」として、厳重に管理されなければならないことになっています。除染はあくまで避難とセットで実施されるべきです。
3)安全管理の問題
福島市では市社協がボランティア募集を受け持っています。HPの情報を見て応募するシステムですが、除染作業でのリスクについて十分説明させれているとは言えません。
また一般的に言って除染が必要なほど高線量の場所での活動にも関わらず出産する可能性の高い年齢層の女性を含む若年層の参加に制限も設けていませんし注意を喚起することもしていません。
また作業中は積算線量計を各自携行することになっています。作業中の被ばく量を年間被ばく量に追加する形で計算するとしていますが、この計算は参加者個人に委ねられています。
つまり主催者によって管理はされていません。作業中の被ばく量についても、同じ現場でもどのような場所で多く作業したかによって被ばく量は大きくかわります。[私は]今日の2時間の作業で12μSVも被ばくしました。(多くの参加者は2μSvー5μSvでした)
年間積算線量の計算においても日本独自の複雑な計算方法を用いています。1日のうち屋内にいる時間を16時間とし、その分については「木造家屋の低減効果係数=0.4」を掛けて計算しています。
【一日あたりの線量を「a」として数式化すると((2/3(16時間/24時間)×0.4))a + ((1/3(8時間/24時間)))a = 0.6a】
屋内での線量を6掛けするのは一見正確なように見えますが、そもそも正確を期すためには個人がどのような生活しているかによって被ばく量を割り出す必要があります。被ばく量は生活パターンによって大きく違ってくるからです。そのためには積算線量計で1か月どれほど被ばくしたかを計測し年間被ばく量を割り出す必要があります。
除染において被ばくが許される被ばく量は現行の年間1mSvからその被ばく量と推定される内部被ばく量とを引いた部分です。内部被ばく量も個人の食生活などに大きく依存します。この年間積算被ばく量の計算は複雑になり個別対応は困難です。
どちらにしても1mSvを基本にすることには無理がありますが、とりあえず1mSvを基準にしたところで東日本全体汚染されている現実を見ると被災3県以外でも普通に暮らしていて年間1mSVを超える空間線量の地域は意外に多いのです。言うまでもなく高線量の福島県に居住しているものが除染ボランティアに申し込む資格はもとよりありません。このような説明もHPにはありません。
作業中の防護対策についても十分とは言えません。環境省の基準をも満たしていない使い捨てマスクの使用やゴーグルも準備されず、頭髪を隠すなどの注意喚起もありません。
またさらに重要なことは事前加入のボランティア保険では放射線障害についてはカバーされないということです。このことは除染作業がボランティアの仕事として成立していないということを端的に示しています。行政が行う除染作業については万が一の保障を考えると雇用契約による労災加入が義務付けられるべきだと考えます。最低賃金のみ支給するとしても東京から来るボランティアに交通費を支給したと考えるとかなり割安なものになります。
ただ、労災に加入したからといって晩発性と言われる障がいが自動的にカバーされるわけではなく、むしろ逆で裁判に持って行ったところで勝つ見込みのないでしょう。結論的には最低賃金どころか将来に渡るリスクを引き受けてもらうには一種「危険手当」を予め組み入れた割高な賃金を支払うことしか方法がありません。一般に呼びかける除染ボランティアはこの問題を巧妙に隠しています。
提言としては
・事前にリスクに関する情報を提供したうえでの申込みを受け付けること
・除染と避難を同時に行うこと
・個々の参加者の内部被ばくを含めた年間積算線量と作業中の被ばく量の計算を厳密にした上で参加資格の可否判断も含め主催者が責任を持って管理すること
・作業中の放射線防護対策を徹底すること
・ボランティアではなく最低でも労災加入が義務付けられる雇用契約を結ぶ「除染作業県外協力者」とすること。また除染業務そのものはリスクを引き受けて貰う対価として「危険手当」が加算されるべきである。
追加:
こども全国ネットの●○さんの補足
今回の除染活動が他の震災のボランティア活動と違う点は、
1)東電という一民間企業の起こした公害という人災事故(天災ではない)の被害地域に対する支援活動であるので、単なる被災地ボランティアではないこと
⇒専門的な訓練を備えた専門業者が行うべき作業である。その補助的作業であるからボランティアではなく「放射線防護訓練」を受け、「労災加入」を義務づけ事後の補償を前提とした契約を結ぶ事。
2)除染計画の明示と廃棄物管理計画の策定
線量別の作業計画とボランティアの関われる作業範囲の明示が必要であること。
⇒現在あちこちで除染活動が行われているが、除染地の線量もまちまちで作業方法も統一されていない。少なくとも線量別の作業管理と「一般協力者が請け負える(リスク管理が出来る)作業範囲」の明示が必要。(被曝前提の作業であるため、年齢制限や妊娠前の若い女性など健康上のリスク提示は必須)
⇒除染計画に基づき、「避難の上で除染する計画の徹底」
⇒廃棄物処理計画がはっきりしていない作業が多いと思われる。
公園や近くの空き地での一時保管など二次災害に繋がる処理など現状の作業には課題が多く、人海戦術で対応しても無駄になる、または返って問題を起こす可能性のある除染になることもある。廃棄物処理計画を明確することを求める。
いずれにしても、除染は大変リスクの高い作業であり、効果もまだ未知の領域ですし、国の指針は甘いです。リスク管理の指針づくりにはNPOなど民間からの提案が必須と思われます。
・・
【参考サイト】
●「原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 猪飼周平」
「・・・では、ボランティア主導の除染体制とはどのようなものだと考えればよいであろうか。私の考えでは、次の5点がポイントである。すなわち、
第1に、ボランティアを含め住民支援という目標を共有できる、住民自身、ボランティア、地元業者、専門家、できれば行政からなる連携を構築すること、
第2に、放射線被曝に関する十分な情報がボランティアに提供されること、
第3に、困っている順番に除染することで、行政による除染と補完関係に入ること、
第4に、そのために、個人の除染ニーズに関する情報(行政保健師が相談を通じて収集しつつある)を、行政と市民セクターで共有できる体制を構築すること、
第5に、除染を行う人びとの被曝を最小限に抑える可能な限りの措置を講ずること、である。
なお、最後に除染ボランティアに関して、一点解決すべき深刻な問題があることについては言及しておかなければならないだろう。それは、国が1mSv/y以上の地域の除染について責任を認めている点と関わっている。 現状では、ボランティアが除染をすると国の除染費用の軽減に役立つという構造になっている。だが、ボランティアは被災地の住民を支援したいのであって、原発事故に一義的な責任を負う国を支援したいのではない。現在の状況は、ボランティアが除染に関わることを抑制する状況となっているのである。
したがって、除染ボランティアの十分な活用に際しては、彼らの活動と国の責任とが切り離されるような条件整備が必要となるだろう。たとえば、除染ボランティアの費用が最終的に国に請求され、国からの支払いが住民に還元されるような枠組みができれば、この問題は解決されることになる。このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたいと思う」・・・。
・・
「このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたい」。
・・・
●「原発を問う民衆法廷第1回公判」 (iwakamiyasumi5)
・柏崎刈羽原発、熱交換器建屋で煙 放射能漏れなし 東電、定期検査中の5号機
25日午後11時35分ごろ、定期検査中の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)5号機の熱交換器建屋で煙が発生し、火災報知機が作動した。東電によると、外部への放射性物質漏れは確認されていない。地元消防が出動したが、煙だけで火は確認していないという。
東電によると、原子炉に燃料はなく、使用済み燃料プールに全燃料が入っている。
煙が出たのは、原子炉の冷却に使う熱交換器の配管腐食を防ぐための鉄イオンを注入するポンプの軸受け部分。ポンプは作動していた。 5号機の出力は110万キロワットで、1月下旬から定検入りしていた。同原発は3月26日、全7基のうち唯一稼働している6号機が定検のため停止し、東電管内の全17基が停止する。〔共同〕
・処理装置から高濃度汚染水漏れる…外部流出なし
東京電力は25日、福島第一原子力発電所の汚染水処理装置「サリー」(東芝製)の配管から、約10リットルの高濃度汚染水の水漏れがあり、装置を停止させたと発表した。 昨年8月から運用を始めたサリーで、水漏れが起きたのは初めて。外部への流出はないが、2系列あるサリーの一方は再稼働のめどが立っていないという。
東電によると、同日午前8時半頃、作業員が配管の溶接部付近から1秒に1滴程度の水漏れがあるのを見つけた。汚染水の濃度は、セシウム134が1立方センチ・メートル当たり13万ベクレル、セシウム137が18万ベクレルと高濃度だった。
東電は、溶接部が劣化した可能性があるとみている。停止させた系列の配管を交換して再稼働をめざすが、もう一つある米キュリオン社製の処理装置の稼働率を上げれば全体の汚染水処理に大きな影響はないという。(読売)
↓
そういう問題?
2012年2月24日金曜日
パレットのデブリス①
とりいそぎ、以下の情報を伝えたい。
●Official Transcript of Proceedings NUCLEAR REGULATORY COMMISSION
Title: Japan's Fukushima Daiichi ET Audio File
この情報の発信源は
●Burn: An Energy Journal
今後、政府と国会の「事故調」の「最終報告」がまとめられることになっているが、これは、とりわけ「3・11」直後の日本政府・菅内閣の「原子力緊急事態」への対処が妥当であったかどうかを再検証するにあたり、きわめて貴重かつ重要な「第一次資料」の一つとなるだろう。
BurnがNRCに情報開示を請求し、開示されたものである。
●もう一つは、静岡市の藁科の放射能汚染問題についてである。
昨日、私は、とある「静岡の人間」と丸の内(東京)で話をした。
藁科の放射能汚染問題については、昨年6月に問題になったことがある。
一部の人々が知るように、静岡や神奈川の一部地域の放射能汚染については、福島第一ではなく浜岡原発を発源地とする「風評」が広がってきた。いろんな「状況証拠」や「証言」がそれを裏付けている、ようにみえる。
重要なのは、政府は言わずもがな、県や市(一部周辺自治体)がその事実を知りながら、事実関係と汚染をめぐる情報を隠ぺいしている「疑い」がある(否定できない)、ということだ。
行政に対し、まず徹底した情報開示を求めることが必要である。
●映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』」(UPLINK)
●「「食品の新規制値」決定プロセスで現れた「やらせ」に抗議する 」(市民と科学者の内部被曝問題研究会 代表者 沢田昭二)
●第26回「国際障害者年」連続シンポジウム
「障害者と原発問題 ―福島原発事故以後をどう生きるか― 」
■企画趣旨
この「国際障害者年」連続シンポジウムは、「完全参加と平等」をかかげた国際障害者年の理念をふまえ、国連決議の「企画の段階から決定まで、あらゆることについて心身障害者の参加が重要である」という視点に立ち、様々な社会問題について障害者の立場から問題提起するものです。今回のテーマは「障害者と原発問題」です。
2011 年の東日本大震災は、地震と津波により多大な被害をもたらしました。さらに福島原発の大事故は、原発周辺の人々に深刻で甚大な影響をもたらし続けており、また放射性物質は日本全国に飛散しました。日本で生活する人は、これから先、何十年もの間、見えない危険と不安に悩まされることになります。
大地震と津波、そして原発事故により、被災した障害者はこれまで以上に困難な状況に追い込まれています。避難所や仮設住宅は障害者への配慮が不十分でした。本人の意思に反して入所施設へと送られた障害者も多数います。またヘルパーが家族と避難するなどして、現地に取り残され大変な日常生活を送っている障害者もいます。とりわけ原発周辺の人々は見えない放射能被害に苛まれつつも、支援の手がほとんどそこに行き届かず、深刻で困難な状況の中で日常生活を送っています。そうした福島の障害者たちの現状は県外の人々にはほとんど伝わってきません。
また、放射線による被曝は、すべての人の生命を危険にさらすものです。放射線もその影響も見えないなかで、「障害児や奇形児が生まれるかもしれない」という不安の声があります。そのような恐怖感に基づいて、だから原発に反対だという主張する人々がいます。しかし、このように「障害」のイメージを利用して恐怖を宣伝する語り方は、障害者差別の根底でもある「優生思想」そのものと私たちは考えます。
そこで、今回はまず、福島から「福祉のまちづくりの会」(福島県田村市)の鈴木絹江さんをお招きし、福島における障害者の現状と課題について基調報告をしていただきます。続けてシンポジウムでは、鈴木さんに加えて、東京から反原発運動の中の優生思想を批判してきた堤愛子さん、京都から、環境問題の視点から脱原発に取り組んでこられた槌田劭さん、JCIL で介助者をしながら反原発を訴えている橋本尚樹さんに参加していただき、報告、討論していただきます。
福島の想像を絶する現状と課題しっかりと見据えつつ、これから障害者と健常者が共にどう生きていくのか、脱原発の課題は何かについて、会場のみなさんの意見もまじえながら、議論を深めたいと思います。
・・・
・最高値は年470ミリSv 原発周辺の放射線量、環境省公表
環境省は24日、東京電力福島第1原発事故を受けた警戒区域や計画的避難区域の一部で100メートル四方ごとに実施した放射線量の測定結果を公表した。年間の被ばく放射線量の最高値は、原発の北西に位置する双葉町で計測された470ミリシーベルト。文部科学省が航空機を使って実施した測定結果とほぼ同様、原発から北北西に向かって放射線量が50ミリシーベルトを超える地点が多くなっている。
計測は、昨年11月7日から1月16日にかけて実施した。政府は警戒区域など2区域を4月から三つの区域に再編する方針。
・原子力規制庁人事でルール 幹部は経産、文科に戻らず
細野豪志原発事故担当相は24日、4月に環境省の外局として発足予定の原子力規制庁の人事に関し、経済産業省と文部科学省の出身者は、審議官級以上の「指定職」の幹部に就いた場合は両省に戻らず、課長や参事官以上の「政令職」も原則として両省には戻らないとのルールを決めたと発表した。
内閣官房の準備室によると、指定職は7人、政令職は12人。
環境省内や原子力安全基盤機構などの独立行政法人への異動、出向はあるとしている。
特定のポストを特定の省の指定席とはせず、適性と能力から規制庁長官が決めるとした。(共同)
・・・
*「デブリス」とはdebrisのこと。
●Official Transcript of Proceedings NUCLEAR REGULATORY COMMISSION
Title: Japan's Fukushima Daiichi ET Audio File
この情報の発信源は
●Burn: An Energy Journal
今後、政府と国会の「事故調」の「最終報告」がまとめられることになっているが、これは、とりわけ「3・11」直後の日本政府・菅内閣の「原子力緊急事態」への対処が妥当であったかどうかを再検証するにあたり、きわめて貴重かつ重要な「第一次資料」の一つとなるだろう。
BurnがNRCに情報開示を請求し、開示されたものである。
●もう一つは、静岡市の藁科の放射能汚染問題についてである。
昨日、私は、とある「静岡の人間」と丸の内(東京)で話をした。
藁科の放射能汚染問題については、昨年6月に問題になったことがある。
一部の人々が知るように、静岡や神奈川の一部地域の放射能汚染については、福島第一ではなく浜岡原発を発源地とする「風評」が広がってきた。いろんな「状況証拠」や「証言」がそれを裏付けている、ようにみえる。
重要なのは、政府は言わずもがな、県や市(一部周辺自治体)がその事実を知りながら、事実関係と汚染をめぐる情報を隠ぺいしている「疑い」がある(否定できない)、ということだ。
行政に対し、まず徹底した情報開示を求めることが必要である。
●映画『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』」(UPLINK)
●「「食品の新規制値」決定プロセスで現れた「やらせ」に抗議する 」(市民と科学者の内部被曝問題研究会 代表者 沢田昭二)
●第26回「国際障害者年」連続シンポジウム
「障害者と原発問題 ―福島原発事故以後をどう生きるか― 」
■企画趣旨
この「国際障害者年」連続シンポジウムは、「完全参加と平等」をかかげた国際障害者年の理念をふまえ、国連決議の「企画の段階から決定まで、あらゆることについて心身障害者の参加が重要である」という視点に立ち、様々な社会問題について障害者の立場から問題提起するものです。今回のテーマは「障害者と原発問題」です。
2011 年の東日本大震災は、地震と津波により多大な被害をもたらしました。さらに福島原発の大事故は、原発周辺の人々に深刻で甚大な影響をもたらし続けており、また放射性物質は日本全国に飛散しました。日本で生活する人は、これから先、何十年もの間、見えない危険と不安に悩まされることになります。
大地震と津波、そして原発事故により、被災した障害者はこれまで以上に困難な状況に追い込まれています。避難所や仮設住宅は障害者への配慮が不十分でした。本人の意思に反して入所施設へと送られた障害者も多数います。またヘルパーが家族と避難するなどして、現地に取り残され大変な日常生活を送っている障害者もいます。とりわけ原発周辺の人々は見えない放射能被害に苛まれつつも、支援の手がほとんどそこに行き届かず、深刻で困難な状況の中で日常生活を送っています。そうした福島の障害者たちの現状は県外の人々にはほとんど伝わってきません。
また、放射線による被曝は、すべての人の生命を危険にさらすものです。放射線もその影響も見えないなかで、「障害児や奇形児が生まれるかもしれない」という不安の声があります。そのような恐怖感に基づいて、だから原発に反対だという主張する人々がいます。しかし、このように「障害」のイメージを利用して恐怖を宣伝する語り方は、障害者差別の根底でもある「優生思想」そのものと私たちは考えます。
そこで、今回はまず、福島から「福祉のまちづくりの会」(福島県田村市)の鈴木絹江さんをお招きし、福島における障害者の現状と課題について基調報告をしていただきます。続けてシンポジウムでは、鈴木さんに加えて、東京から反原発運動の中の優生思想を批判してきた堤愛子さん、京都から、環境問題の視点から脱原発に取り組んでこられた槌田劭さん、JCIL で介助者をしながら反原発を訴えている橋本尚樹さんに参加していただき、報告、討論していただきます。
福島の想像を絶する現状と課題しっかりと見据えつつ、これから障害者と健常者が共にどう生きていくのか、脱原発の課題は何かについて、会場のみなさんの意見もまじえながら、議論を深めたいと思います。
・・・
・最高値は年470ミリSv 原発周辺の放射線量、環境省公表
環境省は24日、東京電力福島第1原発事故を受けた警戒区域や計画的避難区域の一部で100メートル四方ごとに実施した放射線量の測定結果を公表した。年間の被ばく放射線量の最高値は、原発の北西に位置する双葉町で計測された470ミリシーベルト。文部科学省が航空機を使って実施した測定結果とほぼ同様、原発から北北西に向かって放射線量が50ミリシーベルトを超える地点が多くなっている。
計測は、昨年11月7日から1月16日にかけて実施した。政府は警戒区域など2区域を4月から三つの区域に再編する方針。
・原子力規制庁人事でルール 幹部は経産、文科に戻らず
細野豪志原発事故担当相は24日、4月に環境省の外局として発足予定の原子力規制庁の人事に関し、経済産業省と文部科学省の出身者は、審議官級以上の「指定職」の幹部に就いた場合は両省に戻らず、課長や参事官以上の「政令職」も原則として両省には戻らないとのルールを決めたと発表した。
内閣官房の準備室によると、指定職は7人、政令職は12人。
環境省内や原子力安全基盤機構などの独立行政法人への異動、出向はあるとしている。
特定のポストを特定の省の指定席とはせず、適性と能力から規制庁長官が決めるとした。(共同)
・・・
*「デブリス」とはdebrisのこと。
2012年2月22日水曜日
「廃墟となった大阪」?
「廃墟となった大阪」?
「橋下イズム」が暴走を始めた。私にはそう見える。
「こうなんのんと、ちゃうか?」と思ってはいたが、想定外の早さと速さだ。
誰かが止めな、アカン。だけど、止めれるのは「大阪の人間」だけである。
これから何度か「橋下イズム」について書くことになるかもしれない。その最初に書いておきたいこと、それがこの 「橋下イズムを止めれるのは「大阪の人間」だけだ」ということである。
できるだけ、「大阪の人間」以外の人にもわかるように書くように努めたい。
「「首都圏の「ホットスポット」の近隣に住む、とある自治会の役員」という「肩書」とは別に、「私は、一九六〇年代を[大阪の]小学生として過ごした世代の人間」という「経歴」を持っている。(『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の「あとがき」より)。「だから」、私は「「六〇年安保」の記憶はカケラもなく、「七〇年安保」についても、生まれ、育った大阪の街を労働者や学生たちが「安保粉砕」「安保廃棄」を掲げてデモ行進していた風景がかすかに記憶に残っている程度である。
これはちょうど、今、二〇歳前後の人々が、「冷戦崩壊の記憶のカケラもなく、九・一一 の映像が記憶にかすかに残っている程度」というのに似ている」・・・、と「あとがき」は続くのだが、ここでは大阪で生まれ、育った人間の一人として、「橋下イズム」について考えてみたい。
1
大阪に住んでいない、そんな「大阪の人間」が、「橋本イズム」を支える「大阪の人間」たちと共有できる思いがある。
①「なんで大阪はこうなってしまったんや。こんなはずやなかったやろ?」(大阪の「地盤沈下」)という思いと、
②「なんでもかんでも「東京」が大阪から持って行きよった。なんでやねん!」(東京への「一極集中」)という思いである。
このような「大阪の人間」の深層心理に深く刻み込まれた「思い」が、歴史的に蓄積されてきたものであることを、大阪以外の人たちは知っておく必要がある。「近年」で言えば、徳川幕藩体制の確立以降、「明治維新」以降、そして「戦後」を三つの節目とする。「大阪/大坂の「自治」」は、これらの「節目」ごとに江戸/東京に奪われてきたからだ。
この「東京」=「国家権力」=霞が関に対する怨念にも近い「大阪の人間の思い」に内在しない、大阪以外の地域や「大阪の人間」以外の人(政治家であれ学者であれ)の「橋下バッシング」は、その意図とは裏腹に、「大阪の人間」の反感を買うだけである。逆効果なのだ。 去年の選挙を総括しよう。「愚民」という言葉は、絶対に使ってはいけない言葉である。どこの人々に対してもそうだが、とりわけ「大阪の人間」には。
「大阪の人間」は、自分は変わらず人を変えようとする。食、言葉、「お笑い」など、「文化」の領域においてそれは最も顕著である。 〈他者〉を受け入れているようでいて、〈他者〉を同化しようとする。自分は、「郷に入って、郷に従う」ことなく〈他者〉に従わせる。これについてゆけなくなった人々は、大阪を「大阪の人間」もろとも嫌いになる。
どこの地方にも、こういう傾向は多かれ少なかれ、ある。間違いなく、ある。私は昨日と今日、所用で(南)房総に行ってきたが、「地域の誇り」はどこも強烈である。(これについては機会のあるときに、また触れたい。)
しかし、大阪のそれはきわめて特殊であり、〈他者〉にとって強烈すぎるほど強烈である。
〈他者〉に嫌われようがどうしようが、「大阪の人間」は意に介さない。自分たちを「地方」と考えておらず、言ってみれば、「自分たちは特別」と考えているからだ。 もっと極端で悪質な場合には、本気で「日本の中心」とまで考えている「連中」がいる。
「大阪の人間」は、そういう「大阪人」や「大阪の在り方」が、ここまで大阪をダメにしてしまった、ということに気づかない。
だから、「大阪問題」と「橋下イズム」の根は、とても深いのである。
・・・
・橋下市長:小中学生に留年検討 大阪市教委に指示
大阪市の橋下徹市長が、小中学生であっても目標の学力レベルに達しない場合は留年させるべきだとして、義務教育課程での留年を検討するよう市教委に指示していたことが分かった。法的には可能だが、文部科学省は年齢に応じた進級を基本としており、実際の例はほとんどないという。
橋下市長は、市教委幹部へのメールで「義務教育で本当に必要なのは、きちんと目標レベルに達するまで面倒を見ること」「留年は子供のため」などと指摘。留年について弾力的に考えるよう伝えた。
文科省によると、学校教育法施行規則は、各学年の修了や卒業は児童生徒の平素の成績を評価して認定するよう定めており、校長の判断次第では留年も可能。外国籍の生徒で保護者が強く望んだ場合などに検討されることがあるという。
市教委も「学校長の判断で原級留置(留年)できる」としているが、実際は病気などで出席日数がゼロでも進級させているという。担当者は「昔は長期の病気欠席などでごくまれにあったと聞いているが、子供への精神的影響も大きい」と話している。 橋下市長は22日に予定されている教育委員との懇談で義務教育課程での留年について提案、意見を求める予定という。【毎日、林由紀子】
・大阪府の職員基本条例と教育基本条例成立へ 府議会開会(朝日)
・橋下市長のメール調査「幹部150人名指しで」(読売)
・大阪市:職員のメール調査 通知せず2万3400人分(毎日)
・大阪市アンケート「違法のおそれ」 府労働委が勧告書(朝日)
【補足】
① 「廃墟となった大学」との関連で言えば、大阪が「地盤沈下」「液状化」「下流社会」「超格差/貧困社会」をさらに超えて、本当に「廃墟」になってしまうかどうかは、「大阪の大学」がこれから何をするか、何とたたかおうとしているのかが、その鍵を握っているという言い方もできる。
大阪市大と府大の「統合」問題については、第一回目の「検討協議会」が今月初旬行われた。
大阪市大当局は、「検討協議会」設立に先立ち、「統合」に関する声明を昨年末発表している。
・・
2.法人統合の意義
◦法人統合により公立大学として最大規模の2大学を擁する大きな法人が誕生し、効率的な運営が図られます。
◦また、公立大学は、国立大学と異なり独自の法を整備されておらず、地方独立行政法人法において借入金ができないなど様々な制約があり自律した運営を妨げていますが、統合を機に、今後の公立大学法人制度の改革へ向け大きな役割を果たしていきたいと考えております。
◦一方、教育や研究に関わっても、これまで本学が重点的に取組んでおります「分野の垣根を越えた複合的な教育研究」について、府立大が身近となり、本学に無い分野の研究者交流も活発になることなどにより、一層発展できるのではないかと考えております。また、単位互換制度の充実や、両大学の学生交流事業等の充実、産学連携やシンポジウムなど合同イベントの開催などを、法人として一元化して取り組むことが可能となります。
◦このように法人統合には、様々な効果が考えられ有効な手法であると考えております。
3.新たな市立大学像
◦本学は、「グローバルな都市研究の創造拠点」として都市の多面的な課題に先端的研究で取り組み、医学部を擁する総合力の高いコンパクトユニバーシティであり、また少人数教育、都市研究拠点といった伝統・特徴があります。こういった特徴を活かして、視野の広い専門人材など社会が求める人材の育成や、多面的な都市研究への迅速な対応といった使命があると考えています。
◦両大学とも、社会が求める人材を育成し、大阪、関西の発展に貢献していきたい強い思いは同じであります。法人統合により、それぞれの大学の強みをさらに強化し、弱みを強みに変えることも可能になると考えています。
◦両大学が、密接な連携とともにそれぞれの伝統や個性を活かしながら切磋琢磨する法人が設立されれば、大阪・関西にとって大きな知的拠点となりその発展に貢献できることとなります。本学としましても、これを機に本学がめざす方向性に沿い、府立大とともにアジアの先端をゆく大学として新たな姿を示していきたいと考えております。
◦なお、今回進めていく方針は、本学の教育研究の更なる発展をめざした経営主体の一元化であり、来年度の本学の入試や教育内容等には何ら影響はありません。
大阪市立大学長 西澤 良記
・・
そういう問題、だろうか?
ここには、「(行政)権力からの大学の自治・自律」という言葉が、空虚/虚空に響く大阪市大の痛々しい姿がある。
「大学としての生き残り」しか頭になく、「〈権力〉とたたかえない大学」の姿がある。それは、これまで一度も〈社会〉にオープンでなかった「大学」の歴史的帰結でもあるのだろう。
それにしても。一般企業でさえ「ありえない」と広く考えられている「相対評価」が「統合」した大学の「現場」に持ち込まれたら、「現場」はどうなるのか?
大阪がまだ「廃墟」でないとしても、「たたかい」を捨てた「現場」から「廃墟」となってゆくことだけは確かだろう。
●「大阪府立大学問題を考えるシンポジウム」
② 「行政改革会議」の「最終報告」(1997年12月)は、「橋本イズム」の「そもそもの始まり」を知るにあたっても、貴重な資料の一つである。
下にある「中央省庁の在り方」は、そっくりそのまま「自治体行政の在り方」や「大学という官僚機構の在り方」についても言えることを念頭に置きながら読んでいただきたい。
問題は、この15年の間に、いったい「中央省庁の在り方」「自治体行政の在り方」「大学という官僚機構の在り方」に、何か「改善」の兆候が確認できるかどうか、にある。読者の「評価」はどうだろう。
引き続き、検討を加えてゆくことにしたい。
・・
Ⅲ 新たな中央省庁の在り方
1 基本的な考え方
中央省庁の再編を中心とする今回の行政改革の基本的な目的は、制度疲労に陥りつつある戦後型行政システムから、21世紀にふさわしい新たな行政システムへ転換していくことにある。
欧米先進国へのキャッチアップを課題とした時期に形作られた現行制度は、今日にあっては、その総合性、機動性、効率性、透明性、国際性等の各側面において様々な機能不全を生じている。
その背景には、各種の社会経済的要因が複合的に存在していることは言うまでもないが、改革を進めるに当たっては、
○ 行政の責任領域の肥大化と重点領域への取組みの遅れ、
○ 政策の企画と事業の実施の渾然一体化に起因する企画・実施双方の機能の硬直化、
○ 客観的政策評価機能の欠如
といった問題点の解決が焦点とならなければならない。
(1) 国の果たすべき役割の見直し
① 21世紀の日本にふさわしい行政組織を構築するには、まず、国家行政の機能とその責任領域を徹底的に見直すことが前提となる。「官から民へ」、「国から地方へ」という原則がその基本とならねばならない。規制緩和や地方分権、官民の役割分担を徹底し、民間や地方にゆだねられるものは可能な限りこれにゆだね、行政のスリム化・重点化を積極的に進める必要がある。
今日、公共性の空間は、もはや中央の官の独占物ではなく、地域社会や市場も含め、広く社会全体がその機能を分担していくとの価値観への転換が求められている。
② 具体的には、国の行政の果たすべき役割を、以下のような観点で見直す必要がある。(詳細は後掲「Ⅳ 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」参照)
ア 官民の役割分担
国の事務・事業は、官民の役割分担の適正化の観点から、行政改革委員会の「行政関与の在り方に関する基準」を基本とし、民間でできるものは民間にゆだねる、市場原理と自己責任原則にのっとり、民間活動の補完に徹する、との基本的な考え方をとるべきである。
具体的には、社会情勢変化などにより存続意義の失われた事務・事業からの撤退、自立的精神と自己責任の原則の下での過度な行政の関与の廃止、特定産業の保護・育成行政からの撤退、所得再配分事業の限定などに努めなければならない。
イ 国と地方の役割分担
国と地方の役割分担の観点から、地方分権を推進し、国の事務・事業は、国家の存立に直接かかわる事務、全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定、真に全国的規模・視点で行われることが必要な施策・事業に純化すべきであり、地域行政は、基本的に地方公共団体の手にゆだねられるべきである。
具体的には、機関委任事務の廃止、国から地方への権限委譲、国の関与や必置規制の廃止・縮小、補助金の整理・縮小、地方財政の自立性の強化などに努めなければならない。
・・
言うまでもなく、ここには「官僚制批判」と、後に「市場原理主義」と批判される理念が混在している。後者を合理化するために前者が持ち出されている、という分析も成り立つだろう。
しかし、注意しなければならないのは、後者を強調するあまりに前者が相対化され、後退してはならないということだ。「橋下イズム」を批判する場合でも、この点を見失ってしまうと、どのような立ち位置で何を問題にしているのか、論点が混乱し、錯綜するだけである。
・・・
・アフガン:米軍がコーラン焼却、全土で抗議デモ
アフガニスタンの首都カブール北方にあるバグラム米空軍基地で20日、イスラム教聖典コーランなどが大量に焼却されたとして、アフガン人2000人以上が抗議デモを実施。デモは22日、アフガン全土に拡大し、ロイター通信によると、暴徒化したデモ参加者とアフガン警察との衝突で住民計3人が死亡、治安部隊と住民数十人が負傷した。
パネッタ米国防長官は21日、聖典焼却の事実を認めて謝罪したが、かえって住民の怒りを増幅した模様だ。カブールでは、抗議デモ参加者が「米国に死を」「カルザイ(大統領)に死を」などと連呼。参加者は、外国人が利用している宿泊所に放火し、カブールの米国大使館職員は施設内に閉じこもった状態という。
一方、中部パルワン州では住民が政府庁舎などを襲撃し、警察の発砲で2人が死亡。デモは東部ジャララバードや西部ヘラートでも起きたという。【毎日、ニューデリー杉尾直哉】
・米国が対シリア政策を転換か、反体制派に武器供与の可能性示唆
米ホワイトハウスと国務省の報道官は21日、反対派への弾圧が続くシリア情勢について、政治的に解決できない場合は他の選択肢も検討するとし、反体制派への武器供与の可能性を示唆した。ホワイトハウスのカーニー報道官は「現在でも政治的に解決されるべきだと考えている。シリアのさらなる軍事化につながるような措置は避けたい」としながらも、「追加措置を排除しない」と語った。また、国務省のヌランド報道官は、反体制派への武器供与について米国が方針を変えたのかとの質問に対して、「(シリアの)アサド大統領がわれわれの圧力に屈しないなら、追加措置を検討する必要があるかもしれない」と述べた。
これまで米国は反体制派への武器供与は行わない方針を強調し、他の選択肢についてもほとんど言及していなかったが、各報道官によるこのような発言は対シリア政策の転換を示唆するものとみられる。
一方、クリントン国務長官は24日、チュニジアの首都チュニスで開催される、関係国による連絡グループ「シリアの友人」の初会合に参加し、約70カ国の代表者らと今後の対シリア対策を協議する。[ワシントン/アンマン 22日 ロイター]
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「「保護する責任」(R2P)と現実政治(power politics)」その他
「橋下イズム」が暴走を始めた。私にはそう見える。
「こうなんのんと、ちゃうか?」と思ってはいたが、想定外の早さと速さだ。
誰かが止めな、アカン。だけど、止めれるのは「大阪の人間」だけである。
これから何度か「橋下イズム」について書くことになるかもしれない。その最初に書いておきたいこと、それがこの 「橋下イズムを止めれるのは「大阪の人間」だけだ」ということである。
できるだけ、「大阪の人間」以外の人にもわかるように書くように努めたい。
「「首都圏の「ホットスポット」の近隣に住む、とある自治会の役員」という「肩書」とは別に、「私は、一九六〇年代を[大阪の]小学生として過ごした世代の人間」という「経歴」を持っている。(『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の「あとがき」より)。「だから」、私は「「六〇年安保」の記憶はカケラもなく、「七〇年安保」についても、生まれ、育った大阪の街を労働者や学生たちが「安保粉砕」「安保廃棄」を掲げてデモ行進していた風景がかすかに記憶に残っている程度である。
これはちょうど、今、二〇歳前後の人々が、「冷戦崩壊の記憶のカケラもなく、九・一一 の映像が記憶にかすかに残っている程度」というのに似ている」・・・、と「あとがき」は続くのだが、ここでは大阪で生まれ、育った人間の一人として、「橋下イズム」について考えてみたい。
1
大阪に住んでいない、そんな「大阪の人間」が、「橋本イズム」を支える「大阪の人間」たちと共有できる思いがある。
①「なんで大阪はこうなってしまったんや。こんなはずやなかったやろ?」(大阪の「地盤沈下」)という思いと、
②「なんでもかんでも「東京」が大阪から持って行きよった。なんでやねん!」(東京への「一極集中」)という思いである。
このような「大阪の人間」の深層心理に深く刻み込まれた「思い」が、歴史的に蓄積されてきたものであることを、大阪以外の人たちは知っておく必要がある。「近年」で言えば、徳川幕藩体制の確立以降、「明治維新」以降、そして「戦後」を三つの節目とする。「大阪/大坂の「自治」」は、これらの「節目」ごとに江戸/東京に奪われてきたからだ。
この「東京」=「国家権力」=霞が関に対する怨念にも近い「大阪の人間の思い」に内在しない、大阪以外の地域や「大阪の人間」以外の人(政治家であれ学者であれ)の「橋下バッシング」は、その意図とは裏腹に、「大阪の人間」の反感を買うだけである。逆効果なのだ。 去年の選挙を総括しよう。「愚民」という言葉は、絶対に使ってはいけない言葉である。どこの人々に対してもそうだが、とりわけ「大阪の人間」には。
「大阪の人間」は、自分は変わらず人を変えようとする。食、言葉、「お笑い」など、「文化」の領域においてそれは最も顕著である。 〈他者〉を受け入れているようでいて、〈他者〉を同化しようとする。自分は、「郷に入って、郷に従う」ことなく〈他者〉に従わせる。これについてゆけなくなった人々は、大阪を「大阪の人間」もろとも嫌いになる。
どこの地方にも、こういう傾向は多かれ少なかれ、ある。間違いなく、ある。私は昨日と今日、所用で(南)房総に行ってきたが、「地域の誇り」はどこも強烈である。(これについては機会のあるときに、また触れたい。)
しかし、大阪のそれはきわめて特殊であり、〈他者〉にとって強烈すぎるほど強烈である。
〈他者〉に嫌われようがどうしようが、「大阪の人間」は意に介さない。自分たちを「地方」と考えておらず、言ってみれば、「自分たちは特別」と考えているからだ。 もっと極端で悪質な場合には、本気で「日本の中心」とまで考えている「連中」がいる。
「大阪の人間」は、そういう「大阪人」や「大阪の在り方」が、ここまで大阪をダメにしてしまった、ということに気づかない。
だから、「大阪問題」と「橋下イズム」の根は、とても深いのである。
・・・
・橋下市長:小中学生に留年検討 大阪市教委に指示
大阪市の橋下徹市長が、小中学生であっても目標の学力レベルに達しない場合は留年させるべきだとして、義務教育課程での留年を検討するよう市教委に指示していたことが分かった。法的には可能だが、文部科学省は年齢に応じた進級を基本としており、実際の例はほとんどないという。
橋下市長は、市教委幹部へのメールで「義務教育で本当に必要なのは、きちんと目標レベルに達するまで面倒を見ること」「留年は子供のため」などと指摘。留年について弾力的に考えるよう伝えた。
文科省によると、学校教育法施行規則は、各学年の修了や卒業は児童生徒の平素の成績を評価して認定するよう定めており、校長の判断次第では留年も可能。外国籍の生徒で保護者が強く望んだ場合などに検討されることがあるという。
市教委も「学校長の判断で原級留置(留年)できる」としているが、実際は病気などで出席日数がゼロでも進級させているという。担当者は「昔は長期の病気欠席などでごくまれにあったと聞いているが、子供への精神的影響も大きい」と話している。 橋下市長は22日に予定されている教育委員との懇談で義務教育課程での留年について提案、意見を求める予定という。【毎日、林由紀子】
・大阪府の職員基本条例と教育基本条例成立へ 府議会開会(朝日)
・橋下市長のメール調査「幹部150人名指しで」(読売)
・大阪市:職員のメール調査 通知せず2万3400人分(毎日)
・大阪市アンケート「違法のおそれ」 府労働委が勧告書(朝日)
【補足】
① 「廃墟となった大学」との関連で言えば、大阪が「地盤沈下」「液状化」「下流社会」「超格差/貧困社会」をさらに超えて、本当に「廃墟」になってしまうかどうかは、「大阪の大学」がこれから何をするか、何とたたかおうとしているのかが、その鍵を握っているという言い方もできる。
大阪市大と府大の「統合」問題については、第一回目の「検討協議会」が今月初旬行われた。
大阪市大当局は、「検討協議会」設立に先立ち、「統合」に関する声明を昨年末発表している。
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2.法人統合の意義
◦法人統合により公立大学として最大規模の2大学を擁する大きな法人が誕生し、効率的な運営が図られます。
◦また、公立大学は、国立大学と異なり独自の法を整備されておらず、地方独立行政法人法において借入金ができないなど様々な制約があり自律した運営を妨げていますが、統合を機に、今後の公立大学法人制度の改革へ向け大きな役割を果たしていきたいと考えております。
◦一方、教育や研究に関わっても、これまで本学が重点的に取組んでおります「分野の垣根を越えた複合的な教育研究」について、府立大が身近となり、本学に無い分野の研究者交流も活発になることなどにより、一層発展できるのではないかと考えております。また、単位互換制度の充実や、両大学の学生交流事業等の充実、産学連携やシンポジウムなど合同イベントの開催などを、法人として一元化して取り組むことが可能となります。
◦このように法人統合には、様々な効果が考えられ有効な手法であると考えております。
3.新たな市立大学像
◦本学は、「グローバルな都市研究の創造拠点」として都市の多面的な課題に先端的研究で取り組み、医学部を擁する総合力の高いコンパクトユニバーシティであり、また少人数教育、都市研究拠点といった伝統・特徴があります。こういった特徴を活かして、視野の広い専門人材など社会が求める人材の育成や、多面的な都市研究への迅速な対応といった使命があると考えています。
◦両大学とも、社会が求める人材を育成し、大阪、関西の発展に貢献していきたい強い思いは同じであります。法人統合により、それぞれの大学の強みをさらに強化し、弱みを強みに変えることも可能になると考えています。
◦両大学が、密接な連携とともにそれぞれの伝統や個性を活かしながら切磋琢磨する法人が設立されれば、大阪・関西にとって大きな知的拠点となりその発展に貢献できることとなります。本学としましても、これを機に本学がめざす方向性に沿い、府立大とともにアジアの先端をゆく大学として新たな姿を示していきたいと考えております。
◦なお、今回進めていく方針は、本学の教育研究の更なる発展をめざした経営主体の一元化であり、来年度の本学の入試や教育内容等には何ら影響はありません。
大阪市立大学長 西澤 良記
・・
そういう問題、だろうか?
ここには、「(行政)権力からの大学の自治・自律」という言葉が、空虚/虚空に響く大阪市大の痛々しい姿がある。
「大学としての生き残り」しか頭になく、「〈権力〉とたたかえない大学」の姿がある。それは、これまで一度も〈社会〉にオープンでなかった「大学」の歴史的帰結でもあるのだろう。
それにしても。一般企業でさえ「ありえない」と広く考えられている「相対評価」が「統合」した大学の「現場」に持ち込まれたら、「現場」はどうなるのか?
大阪がまだ「廃墟」でないとしても、「たたかい」を捨てた「現場」から「廃墟」となってゆくことだけは確かだろう。
●「大阪府立大学問題を考えるシンポジウム」
② 「行政改革会議」の「最終報告」(1997年12月)は、「橋本イズム」の「そもそもの始まり」を知るにあたっても、貴重な資料の一つである。
下にある「中央省庁の在り方」は、そっくりそのまま「自治体行政の在り方」や「大学という官僚機構の在り方」についても言えることを念頭に置きながら読んでいただきたい。
問題は、この15年の間に、いったい「中央省庁の在り方」「自治体行政の在り方」「大学という官僚機構の在り方」に、何か「改善」の兆候が確認できるかどうか、にある。読者の「評価」はどうだろう。
引き続き、検討を加えてゆくことにしたい。
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Ⅲ 新たな中央省庁の在り方
1 基本的な考え方
中央省庁の再編を中心とする今回の行政改革の基本的な目的は、制度疲労に陥りつつある戦後型行政システムから、21世紀にふさわしい新たな行政システムへ転換していくことにある。
欧米先進国へのキャッチアップを課題とした時期に形作られた現行制度は、今日にあっては、その総合性、機動性、効率性、透明性、国際性等の各側面において様々な機能不全を生じている。
その背景には、各種の社会経済的要因が複合的に存在していることは言うまでもないが、改革を進めるに当たっては、
○ 行政の責任領域の肥大化と重点領域への取組みの遅れ、
○ 政策の企画と事業の実施の渾然一体化に起因する企画・実施双方の機能の硬直化、
○ 客観的政策評価機能の欠如
といった問題点の解決が焦点とならなければならない。
(1) 国の果たすべき役割の見直し
① 21世紀の日本にふさわしい行政組織を構築するには、まず、国家行政の機能とその責任領域を徹底的に見直すことが前提となる。「官から民へ」、「国から地方へ」という原則がその基本とならねばならない。規制緩和や地方分権、官民の役割分担を徹底し、民間や地方にゆだねられるものは可能な限りこれにゆだね、行政のスリム化・重点化を積極的に進める必要がある。
今日、公共性の空間は、もはや中央の官の独占物ではなく、地域社会や市場も含め、広く社会全体がその機能を分担していくとの価値観への転換が求められている。
② 具体的には、国の行政の果たすべき役割を、以下のような観点で見直す必要がある。(詳細は後掲「Ⅳ 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」参照)
ア 官民の役割分担
国の事務・事業は、官民の役割分担の適正化の観点から、行政改革委員会の「行政関与の在り方に関する基準」を基本とし、民間でできるものは民間にゆだねる、市場原理と自己責任原則にのっとり、民間活動の補完に徹する、との基本的な考え方をとるべきである。
具体的には、社会情勢変化などにより存続意義の失われた事務・事業からの撤退、自立的精神と自己責任の原則の下での過度な行政の関与の廃止、特定産業の保護・育成行政からの撤退、所得再配分事業の限定などに努めなければならない。
イ 国と地方の役割分担
国と地方の役割分担の観点から、地方分権を推進し、国の事務・事業は、国家の存立に直接かかわる事務、全国的に統一されていることが望ましい基本ルールの制定、真に全国的規模・視点で行われることが必要な施策・事業に純化すべきであり、地域行政は、基本的に地方公共団体の手にゆだねられるべきである。
具体的には、機関委任事務の廃止、国から地方への権限委譲、国の関与や必置規制の廃止・縮小、補助金の整理・縮小、地方財政の自立性の強化などに努めなければならない。
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言うまでもなく、ここには「官僚制批判」と、後に「市場原理主義」と批判される理念が混在している。後者を合理化するために前者が持ち出されている、という分析も成り立つだろう。
しかし、注意しなければならないのは、後者を強調するあまりに前者が相対化され、後退してはならないということだ。「橋下イズム」を批判する場合でも、この点を見失ってしまうと、どのような立ち位置で何を問題にしているのか、論点が混乱し、錯綜するだけである。
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・アフガン:米軍がコーラン焼却、全土で抗議デモ
アフガニスタンの首都カブール北方にあるバグラム米空軍基地で20日、イスラム教聖典コーランなどが大量に焼却されたとして、アフガン人2000人以上が抗議デモを実施。デモは22日、アフガン全土に拡大し、ロイター通信によると、暴徒化したデモ参加者とアフガン警察との衝突で住民計3人が死亡、治安部隊と住民数十人が負傷した。
パネッタ米国防長官は21日、聖典焼却の事実を認めて謝罪したが、かえって住民の怒りを増幅した模様だ。カブールでは、抗議デモ参加者が「米国に死を」「カルザイ(大統領)に死を」などと連呼。参加者は、外国人が利用している宿泊所に放火し、カブールの米国大使館職員は施設内に閉じこもった状態という。
一方、中部パルワン州では住民が政府庁舎などを襲撃し、警察の発砲で2人が死亡。デモは東部ジャララバードや西部ヘラートでも起きたという。【毎日、ニューデリー杉尾直哉】
・米国が対シリア政策を転換か、反体制派に武器供与の可能性示唆
米ホワイトハウスと国務省の報道官は21日、反対派への弾圧が続くシリア情勢について、政治的に解決できない場合は他の選択肢も検討するとし、反体制派への武器供与の可能性を示唆した。ホワイトハウスのカーニー報道官は「現在でも政治的に解決されるべきだと考えている。シリアのさらなる軍事化につながるような措置は避けたい」としながらも、「追加措置を排除しない」と語った。また、国務省のヌランド報道官は、反体制派への武器供与について米国が方針を変えたのかとの質問に対して、「(シリアの)アサド大統領がわれわれの圧力に屈しないなら、追加措置を検討する必要があるかもしれない」と述べた。
これまで米国は反体制派への武器供与は行わない方針を強調し、他の選択肢についてもほとんど言及していなかったが、各報道官によるこのような発言は対シリア政策の転換を示唆するものとみられる。
一方、クリントン国務長官は24日、チュニジアの首都チュニスで開催される、関係国による連絡グループ「シリアの友人」の初会合に参加し、約70カ国の代表者らと今後の対シリア対策を協議する。[ワシントン/アンマン 22日 ロイター]
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2012年2月18日土曜日
千葉県柏市の「明るい未来プロジェクト」
千葉県柏市の「明るい未来プロジェクト」
今日、東大とかいろんなものと一緒に、「ホットスポット」まで「集積」してしまった千葉県柏市で、「シンポジウム 民・公・学で挑む、オール柏の除染計画‐安心へのロードマップ」が開催される。
私は、「首都圏の「ホットスポット」の近隣に住む、とある自治会の役員」として千葉県柏市の動向を注視している。とくに、「除染ボランティア」の動きについて。柏市の行方は東北・首都圏各地の「ホットスポット」の未来を映す鏡となるからである。それが本当に「明るい」ものとなるか、「暗い」ものとなるか・・・を。
・・
講演
・森口祐一教授(東京大学大学院 ) 「放射能汚染の実態に基づく柏スタイルの除染」
・押川正毅教授(東京大学/つながろう柏!明るい未来プロジェクト・アドバイザー)「なぜ柏市で放射線対策が必要か?」
・秋山浩保柏市長 「市の除染計画について」
・川田晃大代表(つながろう柏!明るい未来プロジェクト) 「未来の為に、僕たちができること。」
・・
何か参考になる報告すべきようなことがあるかどうか。「報告」を待って考えたい。
・・
速報
「会場は満席で、ロビーにも入り切れなかった人たちがいた」。
「報告」を要約すると、森口氏の講演は、「「自分は原子力ムラの人間ではない」という自己弁明がくどかった」、押川氏は「「なぜ柏市で放射線対策が必要か?」、とても分かりやすく説明されていた」。
市長と川田氏については、「熱意は伝わった」。ただ、「情報」としては、「とくにネットで公表されている以上のものはなかった」。「除染ボランティア」については「保留」、だそうだ。
結局、「国の除染方針が非現実的なのが問題。以上」。
「写真撮影禁止」だったとか。
・・
「国の除染方針が非現実的なのが問題」というのは理解できる。しかし、私は「柏スタイル」の「除染対策」には、汚染と除染に関する東電、また国と自治体の責任を、結局は、市民の側に転嫁し、負担を強いているという点において問題が残ると考えている。だから、「除染ボランティア」に関しては、「市民が動くしかない」という理屈は十分に理解できるが、やはり、反対である。
今回のシンポジウムで問われていたのは、「民・公・学」の代表者と参加者間での、こうした問題に対する代表者側の立場・意見表明と、会場参加者との意見交換だったのではないかと思えるのだが・・・。
私有地・民家等々の除染費用に関しては、市は他の自治体とも連携しながら、国と東電に請求するとしている。しかし、私の知る限りでは、国も東電も返答を拒否している。しかも、これまでの市の住民説明会では国と東電を代表する者からの謝罪の一言もない、という。毎回、これに対する参加者からの批判が出るが、市は態度を明確にしていない。
つまり、福島県外の「ホットスポット」をめぐる「除染対策」への市民の動員は、当初から「筋違い」という問題をはらんでいるのではないか、と思うのだ。
たとえば、ここに「人事院規則10-13(東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等の除染等のための業務等に係る職員の放射線障害の防止)等の制定に係る放射線障害の防止に関する技術的基準の策定について(諮問)」がある。
除染に関与する国家公務員と地方公務員には、このような「放射線障害の防止に関する技術的基準」が策定される。国や自治体は各「スポット」に派遣する「職員」の「放射線障害の防止に関する技術的基準」を事後的にであれ整備し、動く。逆に言えば、こうした基準が策定されるまでは動かない(だから、市民を動かす?)
では、その場合、一般市民の「放射線障害の防止」の「基準」はどうなるのか? 「障害」が起きないことを誰が保障し、起きた時に誰が補償するのか? 国?東電?自治体?
こういう言い方は、できるならしたくはないが、行政(公務員)というのは(「学」も含めての話だが)、まず「自分たちをいかに守るか」を考える。市民(学生、非常勤職員・講師)、「下々」のことは二の次、三の次になる。と言うより、「考慮の埒外」に置かれるのが常である。(柏市の「ホットスポット」は、周知のように、3月下旬の段階で「発見」されていた。国と市の対応はあまりに遅すぎたと言えるし、「学」の問題で言えば、今、阪大その他の「国立・公立大学法人」で何が起こっているのか、内情を知る人にはわかるはずである。)
柏市の「ここ掘れワンワン隊」の人々を含め、各「ホットスポット」の自治体の「除染ボランティア」を市民の側から組織している人々、また森口・押川両氏などの「学」の代表者は、この問題から解決すべきではないか。私はそう思うのだが、どうだろう。
引き続き、考えたい。
・・
2/29
・千葉・流山市が除染計画 重点調査104市町村で初
千葉県流山市は29日、放射性物質汚染対処特措法に基づく「汚染状況重点調査地域」に指定された東北、関東8県104市町村で初めてとなる除染実施計画を策定し、国に認可されたと明らかにした。
計画によると、子どもが日常的に利用する市内の小中学校や保育所、幼稚園など78施設について、12年度末までにすべて除染を実施。3月中旬にも表土除去などを始める。
「地表からの高さ5センチで0・23マイクロシーベルト未満」とした独自の除染目標値を定め、国の基準(高さ1メートルまたは50センチで0・23マイクロシーベルト以上)で対象外となる施設については、市が費用を全額負担する。【共同通信】
↓
流山市の除染予算は14億円を超える。誰が負担するのか?
2/22
・都立公園で放射線測定…都「除染必要なし」
共産党東京都議団は21日、東京都葛飾区の都立水元公園内の土などから、最高で1キロ・グラムあたり2万3300ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。
同都議団が15~20日、同公園の4か所から土壌や落ち葉を採取し独自に測定した。その結果、野鳥観察舎の入り口の表土から2万1700~2万3300ベクレル、他の3か所も1180~1万4000ベクレルと比較的高い放射線量が検出された。
地上1メートルの空間放射線量は最大で毎時0・74マイクロ・シーベルトだった。文部科学省は除染などの対応が必要な基準を「周辺よりも1マイクロ・シーベルト以上高い数値」の出た場所としており、都環境局は「現段階では除染の必要はないと考えている」としている。(読売)
↓
何かと言えば国と霞が関を批判する石原都政は、除染に関しては国と霞が関の方針を踏襲するのだろうか?
都は都民を守らない?
・福島第1原発事故 個人除染、一転助成 国と福島県「計画策定まで」
東京電力福島第1原発事故で、これまで交付金の対象外だった個人が支出した除染費用について、国と福島県は一転して助成することを決めた。国は昨年9月、助成対象を「自治体が除染した場合」との方針を示したが、すでに先行して除染を進めている住民から方針変更を求める声が出ていた。ただし、「市町村の除染計画策定前まで」(???)との条件付きで、計画策定から本格実施まで時間がかかる中、一層の条件緩和を求める声が強い。
昨年9月に示された国の除染方針では、特に高線量の地域は国の責任で除染、それ以外は自治体が除染するとしたが、個人で除染したケースは考慮されていなかった。 国と県によると、個人が業者に依頼して除染を実施した場合、市町村が業者に委託したとみなして、現行の仕組みの中で交付対象に含めることが可能とした。高圧洗浄機の購入費も対象で、県は4月までに支払いを始める意向だ。
一方、環境省は「計画策定後の個人除染は計画を逸脱した行為で、認め出せば際限がなくなる」として「市町村の除染計画策定前」に限定した。その理由を、計画に基づいた面的除染の方が個人除染よりも効果を期待できる(???)と説明している。 これに対し、昨年9月に県内で初めて除染計画を作った福島市は「策定時期は自治体でばらつきがあり、不公平だ」と主張する。
さらに5年計画で除染する市は「町中心部で始まるのは早くて今年夏以降。自分たちの健康を守るために待てないと、市民が除染した場合は対象にすべきだ」とし、改善を求めていく考えだ。同市はこれまでも個人の除染費用の補償を国や東電に要請していた。 実際に交付事務を担当する県は領収書など除染に関する証明書類をどこまで住民に求めるかなど基準作りにも頭を悩ます。
県は「県民が除染費用を払ったのに戻らないのはおかしい」との立場をとっており、交付対象から漏れたとしても、住民が東電に賠償請求する際に支援できないかの検討も進めている。
個人による除染費が認められることについて、福島市大波地区の住職、佐藤俊道さん(61)は「当たり前のこと」と述べた。
佐藤さんは昨年夏に高圧洗浄機を約4万円で購入。約10万円をかけて市内の清掃業者に除染を依頼した。空間線量は自宅脇の側溝で毎時10マイクロシーベルトから2マイクロシーベルトに下がったが、今は3マイクロシーベルト近くに戻った。
今後は梅雨時などに周辺の山から放射性物質が土砂とともに流れ込み、線量がさらに上昇する可能性がある。 同地区は市による面的除染のモデル地区で、3月末に全戸で除染が完了する見込みだが、佐藤さんは「除染は長く続く闘い。自治体による除染後も、我慢の限度を超えれば個人で除染する人も出てくる」として、除染計画の策定時期で区切る国の姿勢を批判した。(毎日)
↓
千葉県や柏市、その他「ホットスポット」の自治体も、福島県・福島市の方針をモデルとすべきである。
・「線量リアルタイム測定システム」10分ごとの結果公開(福島民友)
2/18
・新たに3カ所で毎時1マイクロシーベルト超え 県立柏の葉公園
県は十六日、柏市の県立柏の葉公園で、毎時一マイクロシーベルト(地上一メートル)を超える空間放射線量が三カ所で新たに計測されたと発表した。周辺を立ち入り禁止にした上で、除染の準備を進めている。
県公園緑地課によると、一マイクロシーベルトを超えたのはいずれも駐車場内の集水口付近で、毎時一・七九~一・〇三マイクロシーベルトだった。同園では十日に地上五十センチで、九カ所から一マイクロシーベルト超を計測していた。 (東京新聞、千葉・堀場達)
・GPS搭載車で線量測定へ 守谷市、地図作成し除染活用
放射線除染計画策定を進める守谷市は16日、汚染マップづくりの基礎データにするため、衛星利用測位システム(GPS)と連動する計測装置を搭載した車による放射線走行測定を20日開始すると発表した。計測装置は、京都大学と民間企業が開発した「KURAMA」で、瞬時にデータ化する特色がある。測定車は、3秒に1回の空間放射線測定(地上1メートル)を繰り返しながら、時速40〜50キロで市内の道路394キロを約2週間かけて走る。
放射線物質汚染退所特措法で、汚染状況重点調査地域に指定されている同市は、走行測定後、放射線量計貸し出しなどで市民から報告される測定値、市が実施している定点測定値を取り込み、3月中に放射線測定図を作成し、除染計画に活用するという。 (茨城新聞)
・放射性物質:食品セシウム新基準 検査機器精度不足に苦慮(毎日)
⇒「つづき」を書く余裕がなくて困っているが、「数値に翻弄される社会」へ。
・「賠償、帰村後も継続検討」細野原発相が川内村住民に
細野豪志原発相は18日、東京電力福島第一原発事故で住民の大半が避難する福島県川内村を視察し、住民と意見交換した。村は4月1日に公共施設を再開して住民の帰宅を進める「帰村宣言」をしている。細野氏は、帰村後も東電からの損害賠償が続くよう検討していることを明らかにした。
住民の帰宅後も東電の賠償が続くかどうかははっきり決まっていないが、細野氏は「帰村で賠償が終わると、帰村の妨げになる。賠償が打ち切られることがないよう政府内で協議している」と説明。「できるだけ早く結論を出したい」とした。住民からは徹底した除染を求める意見も出たが、細野氏は「放射線量が年間2ミリシーベルトなら、住んでも大丈夫と断言する」と語った。(朝日)
↓
国は本当に「放射線量が年間2ミリシーベルトなら、住んでも大丈夫と断言」できるのだろうか? 森口教授の見解を聞いてみたいものである。
・南相馬市で「108万ベクレル」 市民団体、土壌を測定
福島県南相馬市の市民団体「フクシマの命と未来を放射能から守る会」が20日、南相馬市で記者会見し、市内の旧緊急時避難準備区域(昨年9月解除)だった駐車場の土壌を測定した結果、最大で1キログラム当たり約108万ベクレルの高濃度の放射性セシウムを検出したと発表した。
東京電力福島第1原発事故で南相馬市には局地的に放射線量が高い「ホットスポット」が点在しており、団体は「放射能の危険が足元に迫っている。早急に状況を把握すべき緊急事態だ」と指摘している。 神戸大の山内知也教授(放射線計測学)が団体から依頼を受け、昨年12月21日に南相馬市内の土壌を採取し測定した。(共同)
・・・
・産官学で政治指導者育成「アカデメイア」誕生へ
産官学の交流を通じて次世代の政治リーダーの育成を目指す組織「日本アカデメイア」(事務局・日本生産性本部)が19日に発足する。
牛尾治朗ウシオ電機会長、緒方貞子国際協力機構理事長、古賀伸明連合会長、浜田純一東大学長らが呼びかけた。政治家と経済人、官僚、学者らのつながりが希薄になっている(???)として、意見交換する交流の場を設け、次の日本を担う政治家を育てるのが目的だ。趣意書によると、「日本の公共を立て直すための各界をつなぐハブ組織で、人材と知と経験の交流の場」を目指すとしている。今後3年間で集中的に活動し、与野党の国会議員や官僚のほか、学生らも交えて意見交換する場を設ける。19日に東京都内のホテルで、交流の場に参加予定の国会議員らを招いて発足懇親会を開く予定だ。(読売)
↓
かの「日本生産性本部」。「全国大学共通学力テスト」と「日本アカデメイア」。
どちらも、「誰が仕掛けているのか?」という問いを中心にして考えるべきである。
今年は、「ポスト民主党」に向けた「政界再編」の動きが本格化する年になる。それを仕掛けているのは誰か?
今日、東大とかいろんなものと一緒に、「ホットスポット」まで「集積」してしまった千葉県柏市で、「シンポジウム 民・公・学で挑む、オール柏の除染計画‐安心へのロードマップ」が開催される。
私は、「首都圏の「ホットスポット」の近隣に住む、とある自治会の役員」として千葉県柏市の動向を注視している。とくに、「除染ボランティア」の動きについて。柏市の行方は東北・首都圏各地の「ホットスポット」の未来を映す鏡となるからである。それが本当に「明るい」ものとなるか、「暗い」ものとなるか・・・を。
・・
講演
・森口祐一教授(東京大学大学院 ) 「放射能汚染の実態に基づく柏スタイルの除染」
・押川正毅教授(東京大学/つながろう柏!明るい未来プロジェクト・アドバイザー)「なぜ柏市で放射線対策が必要か?」
・秋山浩保柏市長 「市の除染計画について」
・川田晃大代表(つながろう柏!明るい未来プロジェクト) 「未来の為に、僕たちができること。」
・・
何か参考になる報告すべきようなことがあるかどうか。「報告」を待って考えたい。
・・
速報
「会場は満席で、ロビーにも入り切れなかった人たちがいた」。
「報告」を要約すると、森口氏の講演は、「「自分は原子力ムラの人間ではない」という自己弁明がくどかった」、押川氏は「「なぜ柏市で放射線対策が必要か?」、とても分かりやすく説明されていた」。
市長と川田氏については、「熱意は伝わった」。ただ、「情報」としては、「とくにネットで公表されている以上のものはなかった」。「除染ボランティア」については「保留」、だそうだ。
結局、「国の除染方針が非現実的なのが問題。以上」。
「写真撮影禁止」だったとか。
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「国の除染方針が非現実的なのが問題」というのは理解できる。しかし、私は「柏スタイル」の「除染対策」には、汚染と除染に関する東電、また国と自治体の責任を、結局は、市民の側に転嫁し、負担を強いているという点において問題が残ると考えている。だから、「除染ボランティア」に関しては、「市民が動くしかない」という理屈は十分に理解できるが、やはり、反対である。
今回のシンポジウムで問われていたのは、「民・公・学」の代表者と参加者間での、こうした問題に対する代表者側の立場・意見表明と、会場参加者との意見交換だったのではないかと思えるのだが・・・。
私有地・民家等々の除染費用に関しては、市は他の自治体とも連携しながら、国と東電に請求するとしている。しかし、私の知る限りでは、国も東電も返答を拒否している。しかも、これまでの市の住民説明会では国と東電を代表する者からの謝罪の一言もない、という。毎回、これに対する参加者からの批判が出るが、市は態度を明確にしていない。
つまり、福島県外の「ホットスポット」をめぐる「除染対策」への市民の動員は、当初から「筋違い」という問題をはらんでいるのではないか、と思うのだ。
たとえば、ここに「人事院規則10-13(東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等の除染等のための業務等に係る職員の放射線障害の防止)等の制定に係る放射線障害の防止に関する技術的基準の策定について(諮問)」がある。
除染に関与する国家公務員と地方公務員には、このような「放射線障害の防止に関する技術的基準」が策定される。国や自治体は各「スポット」に派遣する「職員」の「放射線障害の防止に関する技術的基準」を事後的にであれ整備し、動く。逆に言えば、こうした基準が策定されるまでは動かない(だから、市民を動かす?)
では、その場合、一般市民の「放射線障害の防止」の「基準」はどうなるのか? 「障害」が起きないことを誰が保障し、起きた時に誰が補償するのか? 国?東電?自治体?
こういう言い方は、できるならしたくはないが、行政(公務員)というのは(「学」も含めての話だが)、まず「自分たちをいかに守るか」を考える。市民(学生、非常勤職員・講師)、「下々」のことは二の次、三の次になる。と言うより、「考慮の埒外」に置かれるのが常である。(柏市の「ホットスポット」は、周知のように、3月下旬の段階で「発見」されていた。国と市の対応はあまりに遅すぎたと言えるし、「学」の問題で言えば、今、阪大その他の「国立・公立大学法人」で何が起こっているのか、内情を知る人にはわかるはずである。)
柏市の「ここ掘れワンワン隊」の人々を含め、各「ホットスポット」の自治体の「除染ボランティア」を市民の側から組織している人々、また森口・押川両氏などの「学」の代表者は、この問題から解決すべきではないか。私はそう思うのだが、どうだろう。
引き続き、考えたい。
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2/29
・千葉・流山市が除染計画 重点調査104市町村で初
千葉県流山市は29日、放射性物質汚染対処特措法に基づく「汚染状況重点調査地域」に指定された東北、関東8県104市町村で初めてとなる除染実施計画を策定し、国に認可されたと明らかにした。
計画によると、子どもが日常的に利用する市内の小中学校や保育所、幼稚園など78施設について、12年度末までにすべて除染を実施。3月中旬にも表土除去などを始める。
「地表からの高さ5センチで0・23マイクロシーベルト未満」とした独自の除染目標値を定め、国の基準(高さ1メートルまたは50センチで0・23マイクロシーベルト以上)で対象外となる施設については、市が費用を全額負担する。【共同通信】
↓
流山市の除染予算は14億円を超える。誰が負担するのか?
2/22
・都立公園で放射線測定…都「除染必要なし」
共産党東京都議団は21日、東京都葛飾区の都立水元公園内の土などから、最高で1キロ・グラムあたり2万3300ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。
同都議団が15~20日、同公園の4か所から土壌や落ち葉を採取し独自に測定した。その結果、野鳥観察舎の入り口の表土から2万1700~2万3300ベクレル、他の3か所も1180~1万4000ベクレルと比較的高い放射線量が検出された。
地上1メートルの空間放射線量は最大で毎時0・74マイクロ・シーベルトだった。文部科学省は除染などの対応が必要な基準を「周辺よりも1マイクロ・シーベルト以上高い数値」の出た場所としており、都環境局は「現段階では除染の必要はないと考えている」としている。(読売)
↓
何かと言えば国と霞が関を批判する石原都政は、除染に関しては国と霞が関の方針を踏襲するのだろうか?
都は都民を守らない?
・福島第1原発事故 個人除染、一転助成 国と福島県「計画策定まで」
東京電力福島第1原発事故で、これまで交付金の対象外だった個人が支出した除染費用について、国と福島県は一転して助成することを決めた。国は昨年9月、助成対象を「自治体が除染した場合」との方針を示したが、すでに先行して除染を進めている住民から方針変更を求める声が出ていた。ただし、「市町村の除染計画策定前まで」(???)との条件付きで、計画策定から本格実施まで時間がかかる中、一層の条件緩和を求める声が強い。
昨年9月に示された国の除染方針では、特に高線量の地域は国の責任で除染、それ以外は自治体が除染するとしたが、個人で除染したケースは考慮されていなかった。 国と県によると、個人が業者に依頼して除染を実施した場合、市町村が業者に委託したとみなして、現行の仕組みの中で交付対象に含めることが可能とした。高圧洗浄機の購入費も対象で、県は4月までに支払いを始める意向だ。
一方、環境省は「計画策定後の個人除染は計画を逸脱した行為で、認め出せば際限がなくなる」として「市町村の除染計画策定前」に限定した。その理由を、計画に基づいた面的除染の方が個人除染よりも効果を期待できる(???)と説明している。 これに対し、昨年9月に県内で初めて除染計画を作った福島市は「策定時期は自治体でばらつきがあり、不公平だ」と主張する。
さらに5年計画で除染する市は「町中心部で始まるのは早くて今年夏以降。自分たちの健康を守るために待てないと、市民が除染した場合は対象にすべきだ」とし、改善を求めていく考えだ。同市はこれまでも個人の除染費用の補償を国や東電に要請していた。 実際に交付事務を担当する県は領収書など除染に関する証明書類をどこまで住民に求めるかなど基準作りにも頭を悩ます。
県は「県民が除染費用を払ったのに戻らないのはおかしい」との立場をとっており、交付対象から漏れたとしても、住民が東電に賠償請求する際に支援できないかの検討も進めている。
個人による除染費が認められることについて、福島市大波地区の住職、佐藤俊道さん(61)は「当たり前のこと」と述べた。
佐藤さんは昨年夏に高圧洗浄機を約4万円で購入。約10万円をかけて市内の清掃業者に除染を依頼した。空間線量は自宅脇の側溝で毎時10マイクロシーベルトから2マイクロシーベルトに下がったが、今は3マイクロシーベルト近くに戻った。
今後は梅雨時などに周辺の山から放射性物質が土砂とともに流れ込み、線量がさらに上昇する可能性がある。 同地区は市による面的除染のモデル地区で、3月末に全戸で除染が完了する見込みだが、佐藤さんは「除染は長く続く闘い。自治体による除染後も、我慢の限度を超えれば個人で除染する人も出てくる」として、除染計画の策定時期で区切る国の姿勢を批判した。(毎日)
↓
千葉県や柏市、その他「ホットスポット」の自治体も、福島県・福島市の方針をモデルとすべきである。
・「線量リアルタイム測定システム」10分ごとの結果公開(福島民友)
2/18
・新たに3カ所で毎時1マイクロシーベルト超え 県立柏の葉公園
県は十六日、柏市の県立柏の葉公園で、毎時一マイクロシーベルト(地上一メートル)を超える空間放射線量が三カ所で新たに計測されたと発表した。周辺を立ち入り禁止にした上で、除染の準備を進めている。
県公園緑地課によると、一マイクロシーベルトを超えたのはいずれも駐車場内の集水口付近で、毎時一・七九~一・〇三マイクロシーベルトだった。同園では十日に地上五十センチで、九カ所から一マイクロシーベルト超を計測していた。 (東京新聞、千葉・堀場達)
・GPS搭載車で線量測定へ 守谷市、地図作成し除染活用
放射線除染計画策定を進める守谷市は16日、汚染マップづくりの基礎データにするため、衛星利用測位システム(GPS)と連動する計測装置を搭載した車による放射線走行測定を20日開始すると発表した。計測装置は、京都大学と民間企業が開発した「KURAMA」で、瞬時にデータ化する特色がある。測定車は、3秒に1回の空間放射線測定(地上1メートル)を繰り返しながら、時速40〜50キロで市内の道路394キロを約2週間かけて走る。
放射線物質汚染退所特措法で、汚染状況重点調査地域に指定されている同市は、走行測定後、放射線量計貸し出しなどで市民から報告される測定値、市が実施している定点測定値を取り込み、3月中に放射線測定図を作成し、除染計画に活用するという。 (茨城新聞)
・放射性物質:食品セシウム新基準 検査機器精度不足に苦慮(毎日)
⇒「つづき」を書く余裕がなくて困っているが、「数値に翻弄される社会」へ。
・「賠償、帰村後も継続検討」細野原発相が川内村住民に
細野豪志原発相は18日、東京電力福島第一原発事故で住民の大半が避難する福島県川内村を視察し、住民と意見交換した。村は4月1日に公共施設を再開して住民の帰宅を進める「帰村宣言」をしている。細野氏は、帰村後も東電からの損害賠償が続くよう検討していることを明らかにした。
住民の帰宅後も東電の賠償が続くかどうかははっきり決まっていないが、細野氏は「帰村で賠償が終わると、帰村の妨げになる。賠償が打ち切られることがないよう政府内で協議している」と説明。「できるだけ早く結論を出したい」とした。住民からは徹底した除染を求める意見も出たが、細野氏は「放射線量が年間2ミリシーベルトなら、住んでも大丈夫と断言する」と語った。(朝日)
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国は本当に「放射線量が年間2ミリシーベルトなら、住んでも大丈夫と断言」できるのだろうか? 森口教授の見解を聞いてみたいものである。
・南相馬市で「108万ベクレル」 市民団体、土壌を測定
福島県南相馬市の市民団体「フクシマの命と未来を放射能から守る会」が20日、南相馬市で記者会見し、市内の旧緊急時避難準備区域(昨年9月解除)だった駐車場の土壌を測定した結果、最大で1キログラム当たり約108万ベクレルの高濃度の放射性セシウムを検出したと発表した。
東京電力福島第1原発事故で南相馬市には局地的に放射線量が高い「ホットスポット」が点在しており、団体は「放射能の危険が足元に迫っている。早急に状況を把握すべき緊急事態だ」と指摘している。 神戸大の山内知也教授(放射線計測学)が団体から依頼を受け、昨年12月21日に南相馬市内の土壌を採取し測定した。(共同)
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・産官学で政治指導者育成「アカデメイア」誕生へ
産官学の交流を通じて次世代の政治リーダーの育成を目指す組織「日本アカデメイア」(事務局・日本生産性本部)が19日に発足する。
牛尾治朗ウシオ電機会長、緒方貞子国際協力機構理事長、古賀伸明連合会長、浜田純一東大学長らが呼びかけた。政治家と経済人、官僚、学者らのつながりが希薄になっている(???)として、意見交換する交流の場を設け、次の日本を担う政治家を育てるのが目的だ。趣意書によると、「日本の公共を立て直すための各界をつなぐハブ組織で、人材と知と経験の交流の場」を目指すとしている。今後3年間で集中的に活動し、与野党の国会議員や官僚のほか、学生らも交えて意見交換する場を設ける。19日に東京都内のホテルで、交流の場に参加予定の国会議員らを招いて発足懇親会を開く予定だ。(読売)
↓
かの「日本生産性本部」。「全国大学共通学力テスト」と「日本アカデメイア」。
どちらも、「誰が仕掛けているのか?」という問いを中心にして考えるべきである。
今年は、「ポスト民主党」に向けた「政界再編」の動きが本格化する年になる。それを仕掛けているのは誰か?
2012年2月17日金曜日
「廃墟となった大学」
「廃墟となった大学」
1
受験シーズンたけなわ、である。
昨日、とある大学の教授からメールをいただいた。メールには、昨日報道された「全国大学共通テスト」の記事が添付されていた。
教授はこのように書いていた。「記事を目にして、深い絶望と怒りがこみあげてきました。何もわかっていない連中、現場を知らない連中が、国の意思決定に関わり「改革」だの「維新」だのと愚民を煽る。すぐには無理かもしれませんが、廃墟となった大学のそとで、学問をするための市民的公共空間が必要だと思っています。」
・・
・大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ
日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。
大学生の「能力測定」と位置づけ、年に1回、読解力、論理的思考力、批判的な思考力、文章表現力などを問うことを想定。大学の講義にどれくらい主体的に参加しているかといった学習態度のアンケートも課す。同じ学生が2度受ければ、成長度(?)を「可視化」できると期待する。
対象は全国の大学。大学として参加するかどうか、何人の学生を受験させるかなどは、各大学の判断に任せる。文科省は、伸びが著しい大学の取り組みを公表するよう促すなど、成果重視の仕組みを作る。文科相の諮問機関である中央教育審議会の大学教育部会で具体的な検討を進める。
・・
ほとんど、「何かの冗談?」と思わせる記事だ。
しかし、「現場を知らない連中」は本気である。あるいは、「現場」を知らないから本気になれる、と言うべきか。
私がここに見るのは、「国際競争力の低下の原因=学生の学力低下」という"Disaster"(と「現場を知らない連中」が定義するもの)に「便乗」し、制度的・機構的「自己革新」を図りながら、制度的・機構的な「自己増殖」を企てようとする「教育行政官僚機構」の姿である。
大学にこだわる人たちは、これから「現場」でどこまでこれに「抵抗」するだろう。いや、今、大学を「廃墟」と捉えている大学人、「大学のそとで、学問をするための市民的公共空間」の創出をめざそうとする人々はどれくらいいるのだろうか・・・。
そんなことが、ふと頭によぎったメールだった。
2
日本の大学が「廃墟」になったと認識するか否かは、大学関係者や部外者それぞれの主観の問題である。しかしもしも「廃墟」というなら、「廃墟になる前」の大学像があったはずである。日本の大学は、いつ、「廃墟」に向かって歩み始めたのか。
「行政改革会議」の「最終報告」(1997年12月)。ここで現文部科学省が、当初の構想では「教育科学技術省 」となっていたことに注目したい。どうやら大学の「廃墟化」の起源は、このあたりに辿れそうだ。「失われた10年」の真っ只中、国立大学の(独立行政)法人化の7年前である。
「報告」の「Ⅳ 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」。そこに国立大学「改革」の基本的指針が述べらている。
・・
① 国立大学
ア 国立大学改革の基本的な方向
国立大学は、国際化、少子化、高齢化、情報化、産業構造の変化など社会が大きく変化する中で、教育研究の質的向上や組織・運営体制の整備、各大学の個性の伸長、産業界、地域社会との有機的連携、教育研究の国際競争力の向上等に積極的に取り組むことが必要になっている。
↓
と、 「現場を知らない連中」は言った・・・。以下、同じ。
イ 具体的な大学改革の方策
a 国立大学の自主的改革の推進と情報公開、評価システムの充実
国立大学の多様性にかんがみれば、各大学が主体性と責任を有し、競争的な環境の中で、特性を生かしつつ諸課題に取り組んでいくことが求められる。このためには、各大学ごとの情報公開と透明性の確保、評価システムの充実をさらに推進する必要がある。
↓
大学の「主体性と責任」とは何か?
b 組織・運営体制の整備
各大学が主体性と責任を有し、組織として適切な意思決定を行い、実行に移すためには、組織・運営体制の整備が不可欠である。
具体的には、外部との交流促進も含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要がある。この際、高等教育行政と各大学の関係を見直し、各大学の自主性を高めるための方策として、外部資金の積極的導入、国費投入・配分基準の明確化・透明化、競争的資金の充実等についても早急に検討を行う必要がある。
c 大学組織の権限と責任の明確化、事務組織の見直し
学長、学部長などの執行機関の管理運営機能の強化を図るとともに、評議会や教授会などの審議機関についての在り方を見直し、執行機関との間の権限と責任の明確化、意思決定手続の明確化を早急に行う必要がある。また、事務組織の簡素・合理化、専門化についても、早急に整備する必要がある。
ウ 大学改革の進め方
国立大学については、上記のとおり、高等教育行政の見直しも含めた、組織・運営の在り方の改革を早急に推進する必要がある。
さらに、独立行政法人化は、大学改革方策の一つの選択肢となり得る可能性を有しているが、これについては、大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべきである。また、大学の機能に応じた改組・転換についても、併せて積極的に検討する必要がある。
・・
私はこのブログで、国家・産業との関係において「自治(autonomy)なき大学は自壊する」と書いたことがある。今、この大学「改革」の「基本的方向性」を読めば、「学力低下」が叫ばれる現役の受験生だって大学が「廃墟」になってきた「法的根拠」とその軌跡が理解できるのではないか、改めてそう思う。
問題の核心は、国の「高等教育行政」を司る「教育科学技術省」の、大学との関係における機能や権限とは何かを、大学の側から定義しきれないまま、大学が「独立行政法人化」の道を歩んでしまったことにある。
日本のほとんどの自治体の首長が、「首」を市民ではなく霞が関に向けているように、大学の総長(学長)室・評議会・理事会も霞が関に向けている。「現場を知らない」天下りの「理事」「事務方」が霞が関との「パイプ役」となりながら、目を光らせている。 つまり、大学が学生・「保護者」・納税者に議論を開放し、「官製版大学解体粉砕」を掲げ、国と全面的にたたかう姿勢を見せなかったことが大学の「敗北」→「廃墟」化の根本原因なのだ。(⇒「団塊の全共闘世代」の大学人は何をしていたのだろう。「昇給・身分保障・定年引き上げ」の三点セット?)
各大学は「産学連携」における「利益相反」のガイドラインを、一応、まとめてきた。しかしそれ以前に、大学の「研究・教育」と「教育科学技術省」の大学行政との間の「利益相反」、言わば「官学連携」における「利益相反」を、国大協・各大学(各学部・学科、各研究室、各大学人)の側から定義すべきだったのである。私大協、各私立大学にしても。
ここで、昨年来の、たとえば南米チリやコロンビア、欧米各国の国立大学の学生・教員のゼネストをも含めた「民営化」に対するたたかいを、その分析をもまじえて紹介できればよいのだが、その余裕がない。「全国大学共通テスト」に戻ろう。
3
公立の小学校や中学校じゃあるまいし、国公私立を網羅した「全国大学共通学力テスト」なんて「ありえない」としか思えない私には、これが具体的にどのように実施されるのか、まったくイメージできない。しかし中教審が「検討」に入ったということは、すでに方針化されていることと同義である。 一部大学で「実験」が行われ、数年後には、「九月入学」のように、徐々に徐々に「右にならえ」が増えるだろう。
日本の大学は、いやこの国はどうなってしまうのだろう?
『大学を解体せよ』にはいくつかの論点があった。ここで三つだけあげると、それらは、
①「教育の社会的資本過剰」(⇒マクロレベルの「教育投資過剰」)、
②「大学研究と教育の分離」(「統合」ではなく、徹底した「分離」)、そして、
③「大学教育の社会化」である。
大学人が「その気」になれば、つまり大学研究者・教育者が自らの「主体性と責任」、自治と自律を賭けて、「教育科学技術省としての文部科学省」と「たたかう気」になりさえすれば、①を踏まえた②と③は実現可能であることをこの書の中で述べた。しかし、歴史の教えるところは、そうはならなかった。その結果の一つが、今、「全国大学共通学力テスト」となって現れているのである。これから、「これって冗談?」と思うようなことが次から次にやってくるだろう。「不幸なるかな」は子どもたちだ。
けれども、これは非常に逆説的な事態である。なぜなら、「全国大学共通学力テスト」の導入検討は、「大学教育の社会化」が実は可能であることも示しているからだ。「全国大学共通学力テスト」にしても「大学教育の社会化」にしても、「大学教育における「シヴィル・ミニマム」とは何か?」の定義とその内容抜きには不可能である。、「全国大学共通学力テスト」の内容は、この「大学教育における「シヴィル・ミニマム」」抜きに確定することはできないのである。
『大学を解体せよ』でも提起しているが、要は、「大学教育の社会化」のために、これを研究者・教育者がネットワークを作り、議論し、それぞれの専門領域の「大学知の「シヴィル・ミニマム」」をとりまとめ、社会に提示・公開すればよい。「アウトソーシング」ではなく「オープンソーシング」である。実に簡単なことだ。日本の大学には、これだけ過剰な、過剰すぎるほどの「教科書」とテキストがあるのだから。そして、今、私たちがそう呼んでいる「大学」ではない、〈ローカル〉な「学問をするための市民的公共空間」を創り、さらにそのネットワーク化をはかってゆく・・・。
「想像してごらん、大学のない世界を。あなたも仲間になってくれればいいんだけれど・・・」
4
ソフトバンクの孫氏が、1990年代の初め、米国のとある大学で「カリキュラム」の「オープンソ-ス」化のプログラムを作り、半ば頃にネット上でそれを実地に移そうとしていたことを知る日本人はそう多くはない、というかほとんどいないのではないか。その後、彼はconvertし、現在の彼になり、「サイバー大学」も開設し、「東北復興」に100億円(?)の「ポケットマネー」を寄付する「博愛主義者」になったわけだが、「社会工学」的に言えば、「大学のない社会のプログラミング」それ自体は、そう難しいことではない。
結局残るのは、「「原子力工学」を始めとした「ビッグサイエンス」をどうするか?」、この一点のみである。「ビッグクエスチョン」だ。
しかし、「社会工学」的には可能であるはずの「大学のない社会」を阻んでいるのが、実は「大学という官僚機構」そのものなのである。
〈問題〉は、「convertしてしまった人たちやテクノロジーズを、いかにすれば「大学のない社会」へとinvertできるか」にある。これから何世紀にもわたって続くであろう「末期的資本主義」の「ビッグクエスチョン」の一つである。
・・・
・<東工大>委託事業で研究者がデータ捏造 燃料電池開発
東京工業大(東京都目黒区)は24日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託された燃料電池用触媒の開発研究で、中国籍の男性研究員(35)がデータの改ざんや捏造(ねつぞう)をしていたと発表した。研究者は不正行為を認めており、単独で行ったという。同大は週明けにも研究員と、研究を統括する教授の処分を発表する。
このプロジェクトは、09~12年度に東工大などが委託を受けた、燃料電池開発に関する2事業(事業費総額約14億円)。より安価で発電効率がいい触媒の研究などを行った。 東工大によると、研究員は発電性能を良く見せるためにデータそのものを書き換えるなどした。研究成果を報告した論文は海外の専門誌に掲載され、特許も出願していた。 昨年8月、プロジェクトに参加する企業から指摘を受け、不正が発覚。研究員は大学側に「世界で行われている触媒技術の成果に合わせるような形で捏造をしてしまった」と話しているという。 NEDOは委託事業費の返還を求めるなどの処分を検討している。【毎日、神保圭作】
・学長内定者がまた辞退 東工大の不正経理問題
東京工業大学(東京都目黒区)の次期学長に内定していた岡崎健教授(62)が、自身の研究室で国の補助金をめぐる不正経理があった責任を取り、就任を辞退した。17日、同大が明らかにした。同大では、昨年7月にも当時の学長内定者が不正経理問題で辞退している。
同大によると、岡崎教授は16日夜、学長に内定の辞退届を郵送し、「大学に迷惑をかけた」と話しているという。補助金を交付した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は17日、岡崎教授の研究室を補助金停止(8カ月間)の処分にし、研究費約208万円の返還を求めた。
岡崎教授は昨年10月に学長就任予定だったが、研究室が二つの国の補助金を不正に合算して高性能パソコン(約127万円)を購入した問題が発覚し、文部科学省が調査を指示。弁護士なども参加した同大の調査で、業者に架空発注し研究費を不正にプールする「預け金」も約127万円確認された。岡崎教授自身の関与は特定されていない。 (朝日)
・核燃料輸送容器の検査:寄付企業に有利な基準 審議主導の東工大教授、1485万円を受領(2/12, 毎日)
・・・
・集団的自衛権見直し研究? 外相、イラン問題で言及
玄葉光一郎外相は17日の衆院予算委員会で、イランの核開発疑惑で国際社会が軍事制裁に出た場合の対応を問われ、「わが国は集団的自衛権を保有するが行使しないという(憲法)解釈に立つが、公海上で米艦を防護するとか、そろそろ超えなくてはいけないのではという議論が行われた」と述べた。過去の政府内の議論に触れつつ、イラン問題を機に憲法解釈見直しに意欲を示したともとれる発言だ。
新党きづなの渡辺浩一郎氏が「ホルムズ海峡での国際貢献で集団的自衛権の行使が検討できるか」と質問したのに答えた。公海上の米艦防護など「4類型の研究」をしたのは安倍内閣のことで、玄葉氏は「現時点で野田内閣として行使するという解釈に立つわけではない」と補った。 (朝日)
↓
「わが国は集団的自衛権を保有するが行使しないという(憲法)解釈に立つ」のではない。そういう「解釈」に「立つ」のは、内閣法制局である。そしてその解釈にタダ乗りしてきた歴代自民党(公明党)政権と、民主連立政権であって〈私たち〉ではない。
・ホルムズ海峡封鎖を想定、自衛隊派遣の検討着手
政府は、核開発を続けるイランが米欧の制裁強化に反発してホルムズ海峡を封鎖する事態を想定し、ペルシャ湾への自衛隊派遣の検討に着手した。
イランが海峡に機雷を敷設する事態を念頭に、掃海艇の派遣などを想定している。 これに関連し、田中防衛相は17日の衆院予算委員会で「今までの経験に照らして、法的な根拠があるかどうか、可能性があるかということは、当然頭の体操としてやっている」と述べた。
政府が主要な検討対象としているのは、自衛隊による機雷除去と、ホルムズ海峡封鎖時にタンカーなどの護衛や機雷除去にあたる艦船への給油などの後方支援活動だ。 ただ、政府は、自衛隊が機雷除去に参加する場合、イランが交戦状態に陥っている間では、憲法の禁じる海外での武力行使に該当する可能性が高いとみている。このため、日本から掃海艇を派遣するのは紛争終了後になるとの見方が今のところ強い。(読売)
↓
「法的な根拠」など存在しない。あるのはただ、その「解釈」のみである。
1
受験シーズンたけなわ、である。
昨日、とある大学の教授からメールをいただいた。メールには、昨日報道された「全国大学共通テスト」の記事が添付されていた。
教授はこのように書いていた。「記事を目にして、深い絶望と怒りがこみあげてきました。何もわかっていない連中、現場を知らない連中が、国の意思決定に関わり「改革」だの「維新」だのと愚民を煽る。すぐには無理かもしれませんが、廃墟となった大学のそとで、学問をするための市民的公共空間が必要だと思っています。」
・・
・大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ
日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。
大学生の「能力測定」と位置づけ、年に1回、読解力、論理的思考力、批判的な思考力、文章表現力などを問うことを想定。大学の講義にどれくらい主体的に参加しているかといった学習態度のアンケートも課す。同じ学生が2度受ければ、成長度(?)を「可視化」できると期待する。
対象は全国の大学。大学として参加するかどうか、何人の学生を受験させるかなどは、各大学の判断に任せる。文科省は、伸びが著しい大学の取り組みを公表するよう促すなど、成果重視の仕組みを作る。文科相の諮問機関である中央教育審議会の大学教育部会で具体的な検討を進める。
・・
ほとんど、「何かの冗談?」と思わせる記事だ。
しかし、「現場を知らない連中」は本気である。あるいは、「現場」を知らないから本気になれる、と言うべきか。
私がここに見るのは、「国際競争力の低下の原因=学生の学力低下」という"Disaster"(と「現場を知らない連中」が定義するもの)に「便乗」し、制度的・機構的「自己革新」を図りながら、制度的・機構的な「自己増殖」を企てようとする「教育行政官僚機構」の姿である。
大学にこだわる人たちは、これから「現場」でどこまでこれに「抵抗」するだろう。いや、今、大学を「廃墟」と捉えている大学人、「大学のそとで、学問をするための市民的公共空間」の創出をめざそうとする人々はどれくらいいるのだろうか・・・。
そんなことが、ふと頭によぎったメールだった。
2
日本の大学が「廃墟」になったと認識するか否かは、大学関係者や部外者それぞれの主観の問題である。しかしもしも「廃墟」というなら、「廃墟になる前」の大学像があったはずである。日本の大学は、いつ、「廃墟」に向かって歩み始めたのか。
「行政改革会議」の「最終報告」(1997年12月)。ここで現文部科学省が、当初の構想では「教育科学技術省 」となっていたことに注目したい。どうやら大学の「廃墟化」の起源は、このあたりに辿れそうだ。「失われた10年」の真っ只中、国立大学の(独立行政)法人化の7年前である。
「報告」の「Ⅳ 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」。そこに国立大学「改革」の基本的指針が述べらている。
・・
① 国立大学
ア 国立大学改革の基本的な方向
国立大学は、国際化、少子化、高齢化、情報化、産業構造の変化など社会が大きく変化する中で、教育研究の質的向上や組織・運営体制の整備、各大学の個性の伸長、産業界、地域社会との有機的連携、教育研究の国際競争力の向上等に積極的に取り組むことが必要になっている。
↓
と、 「現場を知らない連中」は言った・・・。以下、同じ。
イ 具体的な大学改革の方策
a 国立大学の自主的改革の推進と情報公開、評価システムの充実
国立大学の多様性にかんがみれば、各大学が主体性と責任を有し、競争的な環境の中で、特性を生かしつつ諸課題に取り組んでいくことが求められる。このためには、各大学ごとの情報公開と透明性の確保、評価システムの充実をさらに推進する必要がある。
↓
大学の「主体性と責任」とは何か?
b 組織・運営体制の整備
各大学が主体性と責任を有し、組織として適切な意思決定を行い、実行に移すためには、組織・運営体制の整備が不可欠である。
具体的には、外部との交流促進も含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要がある。この際、高等教育行政と各大学の関係を見直し、各大学の自主性を高めるための方策として、外部資金の積極的導入、国費投入・配分基準の明確化・透明化、競争的資金の充実等についても早急に検討を行う必要がある。
c 大学組織の権限と責任の明確化、事務組織の見直し
学長、学部長などの執行機関の管理運営機能の強化を図るとともに、評議会や教授会などの審議機関についての在り方を見直し、執行機関との間の権限と責任の明確化、意思決定手続の明確化を早急に行う必要がある。また、事務組織の簡素・合理化、専門化についても、早急に整備する必要がある。
ウ 大学改革の進め方
国立大学については、上記のとおり、高等教育行政の見直しも含めた、組織・運営の在り方の改革を早急に推進する必要がある。
さらに、独立行政法人化は、大学改革方策の一つの選択肢となり得る可能性を有しているが、これについては、大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべきである。また、大学の機能に応じた改組・転換についても、併せて積極的に検討する必要がある。
・・
私はこのブログで、国家・産業との関係において「自治(autonomy)なき大学は自壊する」と書いたことがある。今、この大学「改革」の「基本的方向性」を読めば、「学力低下」が叫ばれる現役の受験生だって大学が「廃墟」になってきた「法的根拠」とその軌跡が理解できるのではないか、改めてそう思う。
問題の核心は、国の「高等教育行政」を司る「教育科学技術省」の、大学との関係における機能や権限とは何かを、大学の側から定義しきれないまま、大学が「独立行政法人化」の道を歩んでしまったことにある。
日本のほとんどの自治体の首長が、「首」を市民ではなく霞が関に向けているように、大学の総長(学長)室・評議会・理事会も霞が関に向けている。「現場を知らない」天下りの「理事」「事務方」が霞が関との「パイプ役」となりながら、目を光らせている。 つまり、大学が学生・「保護者」・納税者に議論を開放し、「官製版大学解体粉砕」を掲げ、国と全面的にたたかう姿勢を見せなかったことが大学の「敗北」→「廃墟」化の根本原因なのだ。(⇒「団塊の全共闘世代」の大学人は何をしていたのだろう。「昇給・身分保障・定年引き上げ」の三点セット?)
各大学は「産学連携」における「利益相反」のガイドラインを、一応、まとめてきた。しかしそれ以前に、大学の「研究・教育」と「教育科学技術省」の大学行政との間の「利益相反」、言わば「官学連携」における「利益相反」を、国大協・各大学(各学部・学科、各研究室、各大学人)の側から定義すべきだったのである。私大協、各私立大学にしても。
ここで、昨年来の、たとえば南米チリやコロンビア、欧米各国の国立大学の学生・教員のゼネストをも含めた「民営化」に対するたたかいを、その分析をもまじえて紹介できればよいのだが、その余裕がない。「全国大学共通テスト」に戻ろう。
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公立の小学校や中学校じゃあるまいし、国公私立を網羅した「全国大学共通学力テスト」なんて「ありえない」としか思えない私には、これが具体的にどのように実施されるのか、まったくイメージできない。しかし中教審が「検討」に入ったということは、すでに方針化されていることと同義である。 一部大学で「実験」が行われ、数年後には、「九月入学」のように、徐々に徐々に「右にならえ」が増えるだろう。
日本の大学は、いやこの国はどうなってしまうのだろう?
『大学を解体せよ』にはいくつかの論点があった。ここで三つだけあげると、それらは、
①「教育の社会的資本過剰」(⇒マクロレベルの「教育投資過剰」)、
②「大学研究と教育の分離」(「統合」ではなく、徹底した「分離」)、そして、
③「大学教育の社会化」である。
大学人が「その気」になれば、つまり大学研究者・教育者が自らの「主体性と責任」、自治と自律を賭けて、「教育科学技術省としての文部科学省」と「たたかう気」になりさえすれば、①を踏まえた②と③は実現可能であることをこの書の中で述べた。しかし、歴史の教えるところは、そうはならなかった。その結果の一つが、今、「全国大学共通学力テスト」となって現れているのである。これから、「これって冗談?」と思うようなことが次から次にやってくるだろう。「不幸なるかな」は子どもたちだ。
けれども、これは非常に逆説的な事態である。なぜなら、「全国大学共通学力テスト」の導入検討は、「大学教育の社会化」が実は可能であることも示しているからだ。「全国大学共通学力テスト」にしても「大学教育の社会化」にしても、「大学教育における「シヴィル・ミニマム」とは何か?」の定義とその内容抜きには不可能である。、「全国大学共通学力テスト」の内容は、この「大学教育における「シヴィル・ミニマム」」抜きに確定することはできないのである。
『大学を解体せよ』でも提起しているが、要は、「大学教育の社会化」のために、これを研究者・教育者がネットワークを作り、議論し、それぞれの専門領域の「大学知の「シヴィル・ミニマム」」をとりまとめ、社会に提示・公開すればよい。「アウトソーシング」ではなく「オープンソーシング」である。実に簡単なことだ。日本の大学には、これだけ過剰な、過剰すぎるほどの「教科書」とテキストがあるのだから。そして、今、私たちがそう呼んでいる「大学」ではない、〈ローカル〉な「学問をするための市民的公共空間」を創り、さらにそのネットワーク化をはかってゆく・・・。
「想像してごらん、大学のない世界を。あなたも仲間になってくれればいいんだけれど・・・」
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ソフトバンクの孫氏が、1990年代の初め、米国のとある大学で「カリキュラム」の「オープンソ-ス」化のプログラムを作り、半ば頃にネット上でそれを実地に移そうとしていたことを知る日本人はそう多くはない、というかほとんどいないのではないか。その後、彼はconvertし、現在の彼になり、「サイバー大学」も開設し、「東北復興」に100億円(?)の「ポケットマネー」を寄付する「博愛主義者」になったわけだが、「社会工学」的に言えば、「大学のない社会のプログラミング」それ自体は、そう難しいことではない。
結局残るのは、「「原子力工学」を始めとした「ビッグサイエンス」をどうするか?」、この一点のみである。「ビッグクエスチョン」だ。
しかし、「社会工学」的には可能であるはずの「大学のない社会」を阻んでいるのが、実は「大学という官僚機構」そのものなのである。
〈問題〉は、「convertしてしまった人たちやテクノロジーズを、いかにすれば「大学のない社会」へとinvertできるか」にある。これから何世紀にもわたって続くであろう「末期的資本主義」の「ビッグクエスチョン」の一つである。
・・・
・<東工大>委託事業で研究者がデータ捏造 燃料電池開発
東京工業大(東京都目黒区)は24日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託された燃料電池用触媒の開発研究で、中国籍の男性研究員(35)がデータの改ざんや捏造(ねつぞう)をしていたと発表した。研究者は不正行為を認めており、単独で行ったという。同大は週明けにも研究員と、研究を統括する教授の処分を発表する。
このプロジェクトは、09~12年度に東工大などが委託を受けた、燃料電池開発に関する2事業(事業費総額約14億円)。より安価で発電効率がいい触媒の研究などを行った。 東工大によると、研究員は発電性能を良く見せるためにデータそのものを書き換えるなどした。研究成果を報告した論文は海外の専門誌に掲載され、特許も出願していた。 昨年8月、プロジェクトに参加する企業から指摘を受け、不正が発覚。研究員は大学側に「世界で行われている触媒技術の成果に合わせるような形で捏造をしてしまった」と話しているという。 NEDOは委託事業費の返還を求めるなどの処分を検討している。【毎日、神保圭作】
・学長内定者がまた辞退 東工大の不正経理問題
東京工業大学(東京都目黒区)の次期学長に内定していた岡崎健教授(62)が、自身の研究室で国の補助金をめぐる不正経理があった責任を取り、就任を辞退した。17日、同大が明らかにした。同大では、昨年7月にも当時の学長内定者が不正経理問題で辞退している。
同大によると、岡崎教授は16日夜、学長に内定の辞退届を郵送し、「大学に迷惑をかけた」と話しているという。補助金を交付した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は17日、岡崎教授の研究室を補助金停止(8カ月間)の処分にし、研究費約208万円の返還を求めた。
岡崎教授は昨年10月に学長就任予定だったが、研究室が二つの国の補助金を不正に合算して高性能パソコン(約127万円)を購入した問題が発覚し、文部科学省が調査を指示。弁護士なども参加した同大の調査で、業者に架空発注し研究費を不正にプールする「預け金」も約127万円確認された。岡崎教授自身の関与は特定されていない。 (朝日)
・核燃料輸送容器の検査:寄付企業に有利な基準 審議主導の東工大教授、1485万円を受領(2/12, 毎日)
・・・
・集団的自衛権見直し研究? 外相、イラン問題で言及
玄葉光一郎外相は17日の衆院予算委員会で、イランの核開発疑惑で国際社会が軍事制裁に出た場合の対応を問われ、「わが国は集団的自衛権を保有するが行使しないという(憲法)解釈に立つが、公海上で米艦を防護するとか、そろそろ超えなくてはいけないのではという議論が行われた」と述べた。過去の政府内の議論に触れつつ、イラン問題を機に憲法解釈見直しに意欲を示したともとれる発言だ。
新党きづなの渡辺浩一郎氏が「ホルムズ海峡での国際貢献で集団的自衛権の行使が検討できるか」と質問したのに答えた。公海上の米艦防護など「4類型の研究」をしたのは安倍内閣のことで、玄葉氏は「現時点で野田内閣として行使するという解釈に立つわけではない」と補った。 (朝日)
↓
「わが国は集団的自衛権を保有するが行使しないという(憲法)解釈に立つ」のではない。そういう「解釈」に「立つ」のは、内閣法制局である。そしてその解釈にタダ乗りしてきた歴代自民党(公明党)政権と、民主連立政権であって〈私たち〉ではない。
・ホルムズ海峡封鎖を想定、自衛隊派遣の検討着手
政府は、核開発を続けるイランが米欧の制裁強化に反発してホルムズ海峡を封鎖する事態を想定し、ペルシャ湾への自衛隊派遣の検討に着手した。
イランが海峡に機雷を敷設する事態を念頭に、掃海艇の派遣などを想定している。 これに関連し、田中防衛相は17日の衆院予算委員会で「今までの経験に照らして、法的な根拠があるかどうか、可能性があるかということは、当然頭の体操としてやっている」と述べた。
政府が主要な検討対象としているのは、自衛隊による機雷除去と、ホルムズ海峡封鎖時にタンカーなどの護衛や機雷除去にあたる艦船への給油などの後方支援活動だ。 ただ、政府は、自衛隊が機雷除去に参加する場合、イランが交戦状態に陥っている間では、憲法の禁じる海外での武力行使に該当する可能性が高いとみている。このため、日本から掃海艇を派遣するのは紛争終了後になるとの見方が今のところ強い。(読売)
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「法的な根拠」など存在しない。あるのはただ、その「解釈」のみである。
2012年2月16日木曜日
原子力ムラと「凡庸な悪」
原子力ムラと「凡庸な悪」
1
国会の「事故調」の第4回委員会が開かれた。班目委員長や寺坂院長の「弁明」を読み、最初に頭に浮かんだのは、一部の人々には非常に陳腐に聞こえるかもしれないが、やはり「凡庸な悪」というハンナ・アレントの言葉だった。
ただ、「凡庸な悪」は、たしかに「組織と個人」の関係一般に敷衍化することはできるが、これを国家・軍隊・官僚機構の問題として論じるときには、人間の「モラル(ハザード)」一般、「善」と「悪」の二元論解釈の循環論法の罠に陥ってしまうことは、厳に警戒する必要がある。
「3・11」直後から何度も指摘してきたように、国・自治体・事業主体の〈法的責任〉が明確になるよう、この国の原子力関連諸法(「指針」のみではない)の体系的かつ抜本的改定に「事故調」の結果がつながらなければ、例によって「誰も責任を取らない、何も変わらない」「大山鳴動し・・・」で終わってしまうことは目に見えている。
ここから話はさらに発展するのだが、今日も私の日常はdisasterだった。
つづきは後日。
・・
・班目委員長「指針に瑕疵」と謝罪 原発事故調で誤り認める
国会に設置された東京電力福島第1原発事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)が15日、都内で開いた第4回委員会で、原子力安全委員会の班目春樹委員長は「指針にいろんな瑕疵があった。おわび申し上げる」と原発の津波対策や全電源喪失に関する指針の誤りを認め、謝罪した。
班目委員長は、全電源喪失対策を想定していなかった理由について「わが国ではやらなくていい、という言い訳、説明ばかりに時間をかけてしまった。抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステムになっている」と述べ、短期間で担当を交代する官僚制度に言及した。 (北海道新聞)
↓
「抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステム」のなかで「凡庸な悪」がはびこる。そして「抵抗があってもやるという意思決定ができにくい」のが「システム」なのである。
・「原発安全審査、不十分だった」 班目・寺坂両氏が謝罪
東京電力福島第一原発事故の原因を検証する国会の事故調査委員会は15日、参考人として、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長から、事故時の対応や原発規制などについて聴取した。両氏は原発の安全審査が不十分だったと認め、謝罪した。
班目氏は、原発の立地基準や設計についてまとめた原子力安全委員会の安全審査指針について、津波や長時間の電源喪失に対する十分な記載がなかったことに言及。「誤りがあったと認めざるを得ない」と陳謝。寺坂氏も「安全規制担当者として、本当に申し訳ない」と語った。
事故調の黒川清委員長は聴取後の記者会見で「(現在の)審査指針は全面的な改定が必要。緊急時の備えができていない」と述べた。 (朝日)
・SPEEDI:班目氏「避難に使えぬ」…国会事故調
東京電力福島第1原発事故に関する国会の事故調査委員会(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)は15日、東京都内で第4回委員会を開いた。会合には原子力安全委員会の班目春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が出席。班目氏はSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)に関し、「計算には1時間必要で、計算前と風向きが変わる場合がある。SPEEDIが生きていたらうまく避難できていたというのが誤解だ」と述べ、住民避難に生かすのは困難だったとの見解を示した。
政府のマニュアルでは事故の場合、保安院が緊急時対策支援システム(ERSS)を起動して放射性物質の放出源情報を把握。SPEEDIで放射性物質がどこに拡散するか予測することになっている。しかし、今回の事故では、地震による原発の外部電源喪失により、ERSSからのデータ送付ができなくなって拡散予測はできず、避難区域設定に活用することもできなかった。
調査委員の質問に、班目氏は「(最も放射性物質の放出量が多かった昨年3月)15日は北の方に吹いていた風が、南、北西に、という風向きになり、北西になったときに雨が降って福島県飯舘村が汚染された。SPEEDIの予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難してもらうようなルールにしておくべきだった」と答えた。
また、安全委によると、仮にERSSからデータが届いていたとしても、今回の事故では水素爆発や炉心溶融などシステムの想定外の出来事が起きていたため、正確な計算ができず間違った予測結果になっていたという。
一方、寺坂氏は事故に関する政府の議事録が作られていなかった問題について、「事故当初に対応できていなかったのは申し訳ない。公文書管理法上も問題がある」と陳謝した。【毎日、岡田英、比嘉洋】
・・
↓
「SPEEDIの予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難してもらうようなルールにしておくべきだった」・・・。
「浜通り」の人々、福島の人々はこの「弁明」をどのように読んだだろうか? 福島県外の「ホットスポット」で生活する人々にしても。
いずれにしても、今立地自治体で進めている「防災対策」をめぐる議論を一からやり直すことが必要である。
・原発避難計画に注文 石川県原子力防災対策部会で首長から
「なぜ石川県内にこだわるのか。富山県とも県境を越えて協力すべきだ」「寝たきりの 弱者らの受け入れをどうする」。16日に県議会で開かれた県原子力防災対策部会では、 志賀原発の重大事故を想定し、原発の半径30キロ圏内で生活する約15万人の緊急避難 先をあらかじめ決めるとした県側の提案に、周辺の市町長らから注文が相次いだ。
緊急避難先の策定は県原子力防災計画の見直しの一環。大規模な事故に備え、町会や集 落単位で避難先を事前に決めておくことで、事故時の混乱を防ぐとともに、近隣の住民同 士や家族がばらばらになるのを防ぐ狙いがある。
県側は、志賀原発の半径30キロ圏外にある県内14市町の897施設で、最大90万 4019人の収容が可能と説明。今月下旬に開く19市町との連絡会議で具体的な割り振 り作業を進める考えを示した。 これに対し、県消防長会の山田弘会長(金沢市消防局長)は「隣県の富山に収容できる 施設があるなら県境を越えて協力を求めるべきだ」と提案。小泉勝志賀町長は、原発の半 径5キロ圏内にある特別養護老人ホームの入所者らの受け入れ先を確保するよう要望した 。杉本栄蔵中能登町長も「寝たきりの弱者らの避難場所を県で仲介してほしい」と求めた 。
武元文平七尾市長は国が原発から半径30キロを目安としている「緊急防護措置区域( UPZ)」の外に放射性物質が拡散した場合の対応を質問。部会長の齊藤実原子力安全基 盤機構防災対策部審議役は「モニタリングポストの測定値に合わせて対応する。圏外の対 策を取らないわけではない」と述べ、避難計画の策定に際し、緊急時迅速放射能影響予測 ネットワークシステム(SPEEDI)のデータも加える考えを示した。 委員からはこのほか、安定ヨウ素剤の服用基準の情報提供や被ばく医療の専門家養成、 緊急時の避難道路の整備を急ぐよう求める意見も出た。(⇒SPEEDI「避難に使えぬ」)
会議では、原子力安全・保安院の渡辺剛英原子力防災課室長が国の防災指針見直しに向 けた取り組み状況を説明した。会議が開かれるのは、昨年12月に続いて2回目。県は国 が3月中にまとめる原子力防災指針の中間報告を見て、4月にも次回会合を開く。(⇒テンポが遅すぎはしないか?)
部会では、志賀原発の半径30キロ圏外への避難指示が出た場合、奥能登の住民6万人 余が孤立化するとのデータが示された。県側は自衛隊や海上保安部などが所有するヘリコ プターや船を使って住民や救援物資などを運び、孤立化を防ぐ対策案を明らかにした。
孤立化する懸念があるのは、珠洲、輪島、穴水、能登の2市2町の住民。30キロ圏外 で屋内退避などの指示が出た場合、長期間にわたって陸路が遮断される可能性がある。県 側は2市2町にある港湾・漁港、能登空港、ヘリポートを使って対応するとし、自衛隊機 や海保の巡視船艇だけでなく、民間のフェリーや漁船にも協力を求める考えを示した。
金沢海上保安部の田原研二次長は「水深が足りず、入れない港もある。受け入れ可能な 港湾を決めておいてほしい」と注文。陸上自衛隊第14普通科連隊の榎木良彦副連隊長は 東日本大震災では避難者の自家用車などでヘリポートが埋まり、着陸できなくなった事例 を紹介した。
小泉町長は30キロ圏外への避難先に珠洲市や輪島市が含まれていることについて「孤 立するところに避難させるのはおかしい。金沢や南加賀に避難させてはどうか」と見直し を求めた。(北国新聞)
↓
避難計画の見直しは、住民説明会を開きながら行うべきである。
・・・
⇒「自主避難」と「風評被害」 (2011/3/26)より
・・・・・ 昨日(3/25)の報道の問題は、「避難の勧告」地域の拡大が、「異常な水準の放射線量」の「検出」が「前提」でなければならないかのように、政府が主張したことに対し、その批判的論評がなかったことだ。(⇒ここで言う「放射線量」とは、(原災法)第十五条一項が定める「主務大臣が受けた通報に係る検出された放射線量又は政令で定める放射線測定設備及び測定方法により検出された放射線量」のことをさす)
毎日新聞の記事は、次のように書いている。
・・
1, 20~30キロ圏内に対する自主避難要請は24日夜、首相官邸の主導で対象の9市町村に伝えられたうえで、枝野幸男官房長官が25日の記者会見で発表。
2, 原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づく避難指示を出せば、放射性物質による汚染拡大を政府が正式に認定することになり、周辺住民の不安に拍車をかけかねない(⇒完全なる詭弁、欺瞞)。
一方、屋内退避の長期化で不自由な生活への不満が住民側に強まっていたため、超法規的な「要請」によって政府批判の緩和を狙った・・・。
3, 原発事故の対応を超えた政治判断は保安院にはできないため、25日に原子力安全委員会の臨時会を開き、放射線のモニタリング結果などを理由に、自主避難が「望ましい」と助言する形をとった・・・。
4, 原災法に基づく避難指示は「異常な水準の放射線量」の検出が前提。自主避難を自治体に要請する根拠法はなく、実際に住民を避難させるかどうかの判断は各市町村に委ねられた。避難先の確保や移動手段なども市町村が考えなければならず、野党からは「中途半端」などの批判がかえって強まっている・・・。
5, 菅直人首相は25日夜、避難指示に切り替えなかったことについて「原子力安全委員会の専門家の判断を尊重した対応」と強調、しかし保安院関係者は「先に判断したのは官邸。避難指示は放射線量が高いまま下がらない場合などに検討する」と語り、官邸指示に従った苦肉の策だと認めた・・・。
・・
私は、上の1~5、すべてが無茶苦茶だと思う。
おそらくこの問題、原発事故をめぐる「被害」と「避難」の問題は、「原爆訴訟」や「水俣訴訟」と同様に、今後半世紀以上をかけた対東電、国賠訴訟へと発展してゆくだろう。
(中略)
「こうした状況は、かねて指摘してきたように」と書いているが、私は毎日新聞が「自主避難」地域の撤廃→避難地域の拡大を社説で「指摘」した事実を知らない。もちろん、私が見落としているだけかもしれないが、事故発生後、朝日、読売、産経の社説でそのような主張をしたものは一つもない。日経や東京新聞の社説に関する記憶もない。
おそらくこれが、大地震による災害報道と原発による災害報道の決定的違いだろう。メディアの「眼」が、放射能汚染の拡大に焦点があてられ(首都圏への「影響拡大」など)、現場周辺地域で汚染や被曝の被害を受ける人々の存在に向わないのだ。原発事故被災者の「見捨て/見殺し」の構図である。
「放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない」というのも、私には意味がわからない。これは放射性物質が第一原発から同心円状=均一的に拡散しないという、当たり前の事後的調査の結果をもってそう言っているだけのことであって、避難地域を拡大しないことの正当化にはなりえない。どこにどれだけ放射能被害が現れるかを事前に予想することはできないからだ。つまり、避難区域は同心円的に拡大する以外に方法はない。それをした上で、被害が集中している地域をモニタリングによって特定し、その地域に対する重点的救援・支援を実施する責任が国にはあるのである。
・・・
・原発政策、結論先送り 自民エネ特命委が中間報告
自民党の総合エネルギー政策特命委員会(委員長・山本一太参院議員)は15日、東京電力福島第1原発事故を受けたエネルギー政策見直しに関する中間報告をまとめた。ただ、焦点だった原発政策については結論を先送りした。
中間報告は今後10年を「原子力の未来を決める10年」と明記。その間に再生可能エネルギーの導入や省エネルギーを推進し、原子力の利用は国民的議論を喚起して「中長期的観点から結論を出す」として明確にしなかった。
定期検査で停止中の原発の再稼働は「万全な安全確保と地元住民の理解、納得を前提」として容認、必要最小限の電力量をまかなうために活用するとした。使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル開発」についても「エネルギー供給と研究開発の観点から議論を展開する必要がある」として結論を見送った。(産経)
・原発再稼働、民主が容認へ 夏の電力不足を懸念
民主党は15日、定期点検で停止中の原発の再稼働を容認する方向で調整を始めた。夏場に電力不足になるとの予想に加え、イランからの原油調達の削減などでエネルギー不足への懸念が広がる中、夏前の再稼働をめざす野田内閣を後押しする狙いがある。
党エネルギープロジェクトチーム(PT)は3月をめどに、ストレステスト(耐性評価)の厳格化や地元同意などを条件として、「原発再稼働なしには今夏、電力不足に陥る可能性がある」との趣旨の報告書をまとめる方針。前原誠司政調会長ら党幹部は再稼働を唱えており、政府が夏までに策定するエネルギー基本計画への反映を目指す。
PTは15日の会合で、原子力安全・保安院が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)のストレステストを「妥当」とした審査書について協議。経団連など経済3団体幹部から、夏場の電力不足や原油高騰への懸念から原発の再稼働を強く要請された。 (朝日)
1
国会の「事故調」の第4回委員会が開かれた。班目委員長や寺坂院長の「弁明」を読み、最初に頭に浮かんだのは、一部の人々には非常に陳腐に聞こえるかもしれないが、やはり「凡庸な悪」というハンナ・アレントの言葉だった。
ただ、「凡庸な悪」は、たしかに「組織と個人」の関係一般に敷衍化することはできるが、これを国家・軍隊・官僚機構の問題として論じるときには、人間の「モラル(ハザード)」一般、「善」と「悪」の二元論解釈の循環論法の罠に陥ってしまうことは、厳に警戒する必要がある。
「3・11」直後から何度も指摘してきたように、国・自治体・事業主体の〈法的責任〉が明確になるよう、この国の原子力関連諸法(「指針」のみではない)の体系的かつ抜本的改定に「事故調」の結果がつながらなければ、例によって「誰も責任を取らない、何も変わらない」「大山鳴動し・・・」で終わってしまうことは目に見えている。
ここから話はさらに発展するのだが、今日も私の日常はdisasterだった。
つづきは後日。
・・
・班目委員長「指針に瑕疵」と謝罪 原発事故調で誤り認める
国会に設置された東京電力福島第1原発事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)が15日、都内で開いた第4回委員会で、原子力安全委員会の班目春樹委員長は「指針にいろんな瑕疵があった。おわび申し上げる」と原発の津波対策や全電源喪失に関する指針の誤りを認め、謝罪した。
班目委員長は、全電源喪失対策を想定していなかった理由について「わが国ではやらなくていい、という言い訳、説明ばかりに時間をかけてしまった。抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステムになっている」と述べ、短期間で担当を交代する官僚制度に言及した。 (北海道新聞)
↓
「抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステム」のなかで「凡庸な悪」がはびこる。そして「抵抗があってもやるという意思決定ができにくい」のが「システム」なのである。
・「原発安全審査、不十分だった」 班目・寺坂両氏が謝罪
東京電力福島第一原発事故の原因を検証する国会の事故調査委員会は15日、参考人として、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長から、事故時の対応や原発規制などについて聴取した。両氏は原発の安全審査が不十分だったと認め、謝罪した。
班目氏は、原発の立地基準や設計についてまとめた原子力安全委員会の安全審査指針について、津波や長時間の電源喪失に対する十分な記載がなかったことに言及。「誤りがあったと認めざるを得ない」と陳謝。寺坂氏も「安全規制担当者として、本当に申し訳ない」と語った。
事故調の黒川清委員長は聴取後の記者会見で「(現在の)審査指針は全面的な改定が必要。緊急時の備えができていない」と述べた。 (朝日)
・SPEEDI:班目氏「避難に使えぬ」…国会事故調
東京電力福島第1原発事故に関する国会の事故調査委員会(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)は15日、東京都内で第4回委員会を開いた。会合には原子力安全委員会の班目春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が出席。班目氏はSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)に関し、「計算には1時間必要で、計算前と風向きが変わる場合がある。SPEEDIが生きていたらうまく避難できていたというのが誤解だ」と述べ、住民避難に生かすのは困難だったとの見解を示した。
政府のマニュアルでは事故の場合、保安院が緊急時対策支援システム(ERSS)を起動して放射性物質の放出源情報を把握。SPEEDIで放射性物質がどこに拡散するか予測することになっている。しかし、今回の事故では、地震による原発の外部電源喪失により、ERSSからのデータ送付ができなくなって拡散予測はできず、避難区域設定に活用することもできなかった。
調査委員の質問に、班目氏は「(最も放射性物質の放出量が多かった昨年3月)15日は北の方に吹いていた風が、南、北西に、という風向きになり、北西になったときに雨が降って福島県飯舘村が汚染された。SPEEDIの予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難してもらうようなルールにしておくべきだった」と答えた。
また、安全委によると、仮にERSSからデータが届いていたとしても、今回の事故では水素爆発や炉心溶融などシステムの想定外の出来事が起きていたため、正確な計算ができず間違った予測結果になっていたという。
一方、寺坂氏は事故に関する政府の議事録が作られていなかった問題について、「事故当初に対応できていなかったのは申し訳ない。公文書管理法上も問題がある」と陳謝した。【毎日、岡田英、比嘉洋】
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「SPEEDIの予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難してもらうようなルールにしておくべきだった」・・・。
「浜通り」の人々、福島の人々はこの「弁明」をどのように読んだだろうか? 福島県外の「ホットスポット」で生活する人々にしても。
いずれにしても、今立地自治体で進めている「防災対策」をめぐる議論を一からやり直すことが必要である。
・原発避難計画に注文 石川県原子力防災対策部会で首長から
「なぜ石川県内にこだわるのか。富山県とも県境を越えて協力すべきだ」「寝たきりの 弱者らの受け入れをどうする」。16日に県議会で開かれた県原子力防災対策部会では、 志賀原発の重大事故を想定し、原発の半径30キロ圏内で生活する約15万人の緊急避難 先をあらかじめ決めるとした県側の提案に、周辺の市町長らから注文が相次いだ。
緊急避難先の策定は県原子力防災計画の見直しの一環。大規模な事故に備え、町会や集 落単位で避難先を事前に決めておくことで、事故時の混乱を防ぐとともに、近隣の住民同 士や家族がばらばらになるのを防ぐ狙いがある。
県側は、志賀原発の半径30キロ圏外にある県内14市町の897施設で、最大90万 4019人の収容が可能と説明。今月下旬に開く19市町との連絡会議で具体的な割り振 り作業を進める考えを示した。 これに対し、県消防長会の山田弘会長(金沢市消防局長)は「隣県の富山に収容できる 施設があるなら県境を越えて協力を求めるべきだ」と提案。小泉勝志賀町長は、原発の半 径5キロ圏内にある特別養護老人ホームの入所者らの受け入れ先を確保するよう要望した 。杉本栄蔵中能登町長も「寝たきりの弱者らの避難場所を県で仲介してほしい」と求めた 。
武元文平七尾市長は国が原発から半径30キロを目安としている「緊急防護措置区域( UPZ)」の外に放射性物質が拡散した場合の対応を質問。部会長の齊藤実原子力安全基 盤機構防災対策部審議役は「モニタリングポストの測定値に合わせて対応する。圏外の対 策を取らないわけではない」と述べ、避難計画の策定に際し、緊急時迅速放射能影響予測 ネットワークシステム(SPEEDI)のデータも加える考えを示した。 委員からはこのほか、安定ヨウ素剤の服用基準の情報提供や被ばく医療の専門家養成、 緊急時の避難道路の整備を急ぐよう求める意見も出た。(⇒SPEEDI「避難に使えぬ」)
会議では、原子力安全・保安院の渡辺剛英原子力防災課室長が国の防災指針見直しに向 けた取り組み状況を説明した。会議が開かれるのは、昨年12月に続いて2回目。県は国 が3月中にまとめる原子力防災指針の中間報告を見て、4月にも次回会合を開く。(⇒テンポが遅すぎはしないか?)
部会では、志賀原発の半径30キロ圏外への避難指示が出た場合、奥能登の住民6万人 余が孤立化するとのデータが示された。県側は自衛隊や海上保安部などが所有するヘリコ プターや船を使って住民や救援物資などを運び、孤立化を防ぐ対策案を明らかにした。
孤立化する懸念があるのは、珠洲、輪島、穴水、能登の2市2町の住民。30キロ圏外 で屋内退避などの指示が出た場合、長期間にわたって陸路が遮断される可能性がある。県 側は2市2町にある港湾・漁港、能登空港、ヘリポートを使って対応するとし、自衛隊機 や海保の巡視船艇だけでなく、民間のフェリーや漁船にも協力を求める考えを示した。
金沢海上保安部の田原研二次長は「水深が足りず、入れない港もある。受け入れ可能な 港湾を決めておいてほしい」と注文。陸上自衛隊第14普通科連隊の榎木良彦副連隊長は 東日本大震災では避難者の自家用車などでヘリポートが埋まり、着陸できなくなった事例 を紹介した。
小泉町長は30キロ圏外への避難先に珠洲市や輪島市が含まれていることについて「孤 立するところに避難させるのはおかしい。金沢や南加賀に避難させてはどうか」と見直し を求めた。(北国新聞)
↓
避難計画の見直しは、住民説明会を開きながら行うべきである。
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⇒「自主避難」と「風評被害」 (2011/3/26)より
・・・・・ 昨日(3/25)の報道の問題は、「避難の勧告」地域の拡大が、「異常な水準の放射線量」の「検出」が「前提」でなければならないかのように、政府が主張したことに対し、その批判的論評がなかったことだ。(⇒ここで言う「放射線量」とは、(原災法)第十五条一項が定める「主務大臣が受けた通報に係る検出された放射線量又は政令で定める放射線測定設備及び測定方法により検出された放射線量」のことをさす)
毎日新聞の記事は、次のように書いている。
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1, 20~30キロ圏内に対する自主避難要請は24日夜、首相官邸の主導で対象の9市町村に伝えられたうえで、枝野幸男官房長官が25日の記者会見で発表。
2, 原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づく避難指示を出せば、放射性物質による汚染拡大を政府が正式に認定することになり、周辺住民の不安に拍車をかけかねない(⇒完全なる詭弁、欺瞞)。
一方、屋内退避の長期化で不自由な生活への不満が住民側に強まっていたため、超法規的な「要請」によって政府批判の緩和を狙った・・・。
3, 原発事故の対応を超えた政治判断は保安院にはできないため、25日に原子力安全委員会の臨時会を開き、放射線のモニタリング結果などを理由に、自主避難が「望ましい」と助言する形をとった・・・。
4, 原災法に基づく避難指示は「異常な水準の放射線量」の検出が前提。自主避難を自治体に要請する根拠法はなく、実際に住民を避難させるかどうかの判断は各市町村に委ねられた。避難先の確保や移動手段なども市町村が考えなければならず、野党からは「中途半端」などの批判がかえって強まっている・・・。
5, 菅直人首相は25日夜、避難指示に切り替えなかったことについて「原子力安全委員会の専門家の判断を尊重した対応」と強調、しかし保安院関係者は「先に判断したのは官邸。避難指示は放射線量が高いまま下がらない場合などに検討する」と語り、官邸指示に従った苦肉の策だと認めた・・・。
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私は、上の1~5、すべてが無茶苦茶だと思う。
おそらくこの問題、原発事故をめぐる「被害」と「避難」の問題は、「原爆訴訟」や「水俣訴訟」と同様に、今後半世紀以上をかけた対東電、国賠訴訟へと発展してゆくだろう。
(中略)
「こうした状況は、かねて指摘してきたように」と書いているが、私は毎日新聞が「自主避難」地域の撤廃→避難地域の拡大を社説で「指摘」した事実を知らない。もちろん、私が見落としているだけかもしれないが、事故発生後、朝日、読売、産経の社説でそのような主張をしたものは一つもない。日経や東京新聞の社説に関する記憶もない。
おそらくこれが、大地震による災害報道と原発による災害報道の決定的違いだろう。メディアの「眼」が、放射能汚染の拡大に焦点があてられ(首都圏への「影響拡大」など)、現場周辺地域で汚染や被曝の被害を受ける人々の存在に向わないのだ。原発事故被災者の「見捨て/見殺し」の構図である。
「放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない」というのも、私には意味がわからない。これは放射性物質が第一原発から同心円状=均一的に拡散しないという、当たり前の事後的調査の結果をもってそう言っているだけのことであって、避難地域を拡大しないことの正当化にはなりえない。どこにどれだけ放射能被害が現れるかを事前に予想することはできないからだ。つまり、避難区域は同心円的に拡大する以外に方法はない。それをした上で、被害が集中している地域をモニタリングによって特定し、その地域に対する重点的救援・支援を実施する責任が国にはあるのである。
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・原発政策、結論先送り 自民エネ特命委が中間報告
自民党の総合エネルギー政策特命委員会(委員長・山本一太参院議員)は15日、東京電力福島第1原発事故を受けたエネルギー政策見直しに関する中間報告をまとめた。ただ、焦点だった原発政策については結論を先送りした。
中間報告は今後10年を「原子力の未来を決める10年」と明記。その間に再生可能エネルギーの導入や省エネルギーを推進し、原子力の利用は国民的議論を喚起して「中長期的観点から結論を出す」として明確にしなかった。
定期検査で停止中の原発の再稼働は「万全な安全確保と地元住民の理解、納得を前提」として容認、必要最小限の電力量をまかなうために活用するとした。使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル開発」についても「エネルギー供給と研究開発の観点から議論を展開する必要がある」として結論を見送った。(産経)
・原発再稼働、民主が容認へ 夏の電力不足を懸念
民主党は15日、定期点検で停止中の原発の再稼働を容認する方向で調整を始めた。夏場に電力不足になるとの予想に加え、イランからの原油調達の削減などでエネルギー不足への懸念が広がる中、夏前の再稼働をめざす野田内閣を後押しする狙いがある。
党エネルギープロジェクトチーム(PT)は3月をめどに、ストレステスト(耐性評価)の厳格化や地元同意などを条件として、「原発再稼働なしには今夏、電力不足に陥る可能性がある」との趣旨の報告書をまとめる方針。前原誠司政調会長ら党幹部は再稼働を唱えており、政府が夏までに策定するエネルギー基本計画への反映を目指す。
PTは15日の会合で、原子力安全・保安院が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)のストレステストを「妥当」とした審査書について協議。経団連など経済3団体幹部から、夏場の電力不足や原油高騰への懸念から原発の再稼働を強く要請された。 (朝日)
2012年2月14日火曜日
関西電力大飯3・4号機ストレステスト審査書提出に抗議する緊急声明
関西電力大飯3・4号機ストレステスト審査書提出に抗議する緊急声明
ストレステスト意見聴取会委員
井野博満・後藤政志
原子力安全・保安院は、本日、関西電力大飯原発3・4号機の一次評価を「妥当」とする審査書を原子力安全委員会に提出しました。私たちは、このような拙速なやり方は、とうてい認められません。
2月8日の第8回意見聴取会では、様々な技術的な課題が残されていることが明らかになりました。原子力安全・保安院も、その場で議論を終了するとは明言しませんでした。当然、継続審議となると思いました。審査書が原子力安全委員会に提出されたことに対して意見聴取会の委員として抗議します。
ストレステスト意見聴取会では、徹底して議論を尽くすことが、国民に対する原子力安全・保安院の責務です。次のような根本的な問題が残っています。
(1)判断基準について、保安院は「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても同原子力発電所のような状況にならないことを技術的に確認する」としています。しかし、津波の想定は11.4メートルで、
福島事故の14メートルよりも低くなっています。そもそも、福島事故は収束しておらず、原因もわからない状態です。
(2)評価の対象、基準の適用について以下の技術的な疑問があります。
① 制御棒の挿入性を検討の対象から外しています。
② 基礎ボルトなど機器の強度については、安全率を削って評価しています。
③ 原子炉建屋などの構造強度に関わる許容値について、耐震バックチェックの基準より甘い許容値を適用することを認めています。
④ 本来の設備は福島原発事故前から改善せず、消防車や非常発電装置などの外部仮設設備だけで安全だとしています。
(3)ストレステストは、過酷事故対策の検証を含めた二次評価と合わせて評価しなければ、地域住民が安全性を判断する上では意味がありません。電力事業者は、原子力安全・保安院の指示により、これを2011年末を目処に提出するはずでしたが、関西電力は二次評価結果を未だに提出していません。
原子力安全・保安院が、現時点で「妥当」としたことは、はじめに再稼働ありきの見切り発車と言わざるを得ません。このような姿勢こそが、福島原発事故を招いた要因です。このように原子力安全・保安院は、規制当局としての役割を十分に果たしていません。まずすべきことは、自らのありようについて根本的な反省をすることです。
本日の審査書の提出は、「安全性に関する総合的評価」とされるストレステスト評価の体をなしていません。
以上
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[関連]『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』より
「ストレステスト意見聴取会>強引な議論打ち切り?」
ストレステスト意見聴取会委員
井野博満・後藤政志
原子力安全・保安院は、本日、関西電力大飯原発3・4号機の一次評価を「妥当」とする審査書を原子力安全委員会に提出しました。私たちは、このような拙速なやり方は、とうてい認められません。
2月8日の第8回意見聴取会では、様々な技術的な課題が残されていることが明らかになりました。原子力安全・保安院も、その場で議論を終了するとは明言しませんでした。当然、継続審議となると思いました。審査書が原子力安全委員会に提出されたことに対して意見聴取会の委員として抗議します。
ストレステスト意見聴取会では、徹底して議論を尽くすことが、国民に対する原子力安全・保安院の責務です。次のような根本的な問題が残っています。
(1)判断基準について、保安院は「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても同原子力発電所のような状況にならないことを技術的に確認する」としています。しかし、津波の想定は11.4メートルで、
福島事故の14メートルよりも低くなっています。そもそも、福島事故は収束しておらず、原因もわからない状態です。
(2)評価の対象、基準の適用について以下の技術的な疑問があります。
① 制御棒の挿入性を検討の対象から外しています。
② 基礎ボルトなど機器の強度については、安全率を削って評価しています。
③ 原子炉建屋などの構造強度に関わる許容値について、耐震バックチェックの基準より甘い許容値を適用することを認めています。
④ 本来の設備は福島原発事故前から改善せず、消防車や非常発電装置などの外部仮設設備だけで安全だとしています。
(3)ストレステストは、過酷事故対策の検証を含めた二次評価と合わせて評価しなければ、地域住民が安全性を判断する上では意味がありません。電力事業者は、原子力安全・保安院の指示により、これを2011年末を目処に提出するはずでしたが、関西電力は二次評価結果を未だに提出していません。
原子力安全・保安院が、現時点で「妥当」としたことは、はじめに再稼働ありきの見切り発車と言わざるを得ません。このような姿勢こそが、福島原発事故を招いた要因です。このように原子力安全・保安院は、規制当局としての役割を十分に果たしていません。まずすべきことは、自らのありようについて根本的な反省をすることです。
本日の審査書の提出は、「安全性に関する総合的評価」とされるストレステスト評価の体をなしていません。
以上
・・・
[関連]『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』より
「ストレステスト意見聴取会>強引な議論打ち切り?」
2012年2月13日月曜日
惨事と軍隊(Disaster Militarism)
惨事と軍隊(Disaster Militarism)
ナオミ・クラインの"The Shock Doctrine――The Rise of Disaster Capitalism"の翻訳、『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』にならうなら、「惨事便乗型ミリタリズム」とでも書くべきかも知れない。
「トモダチ作戦」以降の米軍と国連PKOの動向を見ながら、"Disaster Militarism"の分析をきちんとしなければいけない、と考えてきた。 しかしこのブログのエントリーを見れば明らかなように、それができていない。 とてもじゃないが、できない。福島第一・第二のDisasterのせいで、私の日常もDisasterになってしまった。
私が言う"Disaster Militarism"は、ナオミ・クラインが言う"Disaster Capitalism"と微妙に違う。後者は現代資本主義批判として書かれたものだが、前者は軍隊そのものを特殊な官僚機構として捉え、現代官僚制批判の中に位置付けようとする。
Disasterに「便乗」して制度的・機構的「自己革新」を図りながら、制度的・機構的な「自己増殖」を企てようとする〈現代ミリタリズム批判〉を意図したものである。
シリア情勢が沈黙を許さない状況になっているので、これから順を追ってポイントを整理しようと思う。
1
天災(natural disaster)・「緊急人道支援」・軍隊
たとえば、「トモダチ作戦」以降、日米の「惨事便乗型ミリタリズム」が、「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」の下で、国際NGOと「市民社会」を取り込み(co-opt)しながら、以下のような動きをみせていることをご存知だろうか。
自分の不明を恥じるしかないが、わたしは「トモダチ作戦」が開始されるまで、ピース・ウィンズの「アメリカオフィス」がこのような動きをしていることを知らなかった。
・・
●日米民間団体、政府組織、自衛隊・軍隊間の災害支援共同活動向上のためのイニシアチブ・プログラム
「日米 民軍災害支援対策)による「災害支援対策ワークショップ」
ピース ウィンズ ・アメリカ、在日米国大使館共催
2011 年9 月 27 日- 29 日 場所:在日米国大使館(東京)
ピースウィンズ・アメリカは、在日米国大使館共催のもと、「災害支援対策ワークショップ:政策、手順、協働」を開催する運びとなりました。このワークショップでは、主に民軍間の人道支援/災害救助 (HA/DR)の重要点を中心に、二国間及び多国間との支援活動の調整をどのように向上できるかという点について話し合われる予定です。
予定参加団体は、日米さらに韓国の政府系機関、自衛隊・軍隊、NGO、及び民間企業からの各団体の災害対応・対策担当者となっています。
今回は、いくつかの関連フォーラムやワークショップ形式から構成されている、当団体が行っている表記イニシャチブのプログラムの一部として、各組織の上層部の代表者や現場責任者を対象としています。今回のワークショップでは同じ分野で活躍する人々とのネットワーキング、協働支援政策に取り組む機会、及びトレーニングを提供します。
今回は、HA/DR における主要な問題点である支援対応政策、支援のプロシージャ及び協働支援を中心に取り上げます。被災国(ホストネーション)、二国間、多国間での協働支援における問題点にも触れる予定です。参加者は今回の東日本大震災において、どのような対応がとられたのかを聞く機会があり、さらに環太平洋地域における他の事例についても学ぶことができます。
また、各団体の協働支援体制の向上を促すため、このワークショップでは小グループに分かれてのディスカッションや事例研究も行われます。各種の事例やこれまでの経験で得られた教訓を共有することにより、災害支援対策関連担当者にとって重要なトレーニングの機会となると考えられます。
ピースウィンズ・ アメリカの日米民軍災害支援対策イニシャチブとは、18 ヶ月間のプログラムで、民間と自衛隊・軍隊の災害支援における協働活動の向上において、相互の支援対応能力の向上と改善を目指すものです。今回のワークショップはこのイニシャチブの一部として行われます。ワークショップは日本語と英語の両方で行われます・・・。
・・
この問題を考える予備的情報として、「国家(戦略)とNGOの「利益相反」--JPFという「プラットフォーム」がいったん解体されねばならない理由」を見て頂きたい。
ここに東京財団が一昨年、新米国安全保障センター(米国の軍産学複合体のシンクタンク。プロジェクト・メンバーに米軍の司令官が入っていることに注意)と行った「日米同盟の在り方に関する共同研究プロジェクト」の「報告書」、
●「「従来の約束」の刷新と「新しいフロンティア」の開拓:日米同盟と「自由で開かれた国際秩序」」(2010年10月27日)のリンクがある。 この「プロジェクト」には、大西健丞(ジャパン・プラットフォーム理事、ピースウィンズ・ジャパンおよびシヴィック・フォース・ジャパン代表理事)氏その他が参加している。
「3・11」以前から、自衛隊や国際NGO、「市民社会」を巻き込んだDisaster Militarismは、着々とその「ベース」(基地)を打ち固めていたのである。
「トモダチ作戦」は、まさに「3・11」に「便乗」した軍事作戦だったのだ。
(つづく)
・・・
・多国間共同訓練「コブラ・ゴールド2012」、タイ
「年次の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド(Cobra Gold)」がタイで7日から行われている。2012年は韓国、インドネシア、タイ、米国、シンガポール、日本、マレーシアの7か国から約1万3000人が参加、17日に終了予定となっている」(2/15,AFP)
・シリアへ「共同平和維持軍」、アラブ連盟が要請
アラブ連盟(22か国・機構)は12日、カイロで閣僚会議を開き、政府軍による住民弾圧が続くシリアで「あらゆる暴力行為の即時停止」を求めた上で、国連とアラブ連盟が「共同平和維持軍」を組織し、シリアに派遣して、戦闘停止を監視するよう、国連安全保障理事会に要請する声明を発表した。
国際社会が結束して介入することで、昨年3月以来、約6000人が死亡したとみられるシリア・アサド政権の弾圧を食い止めるための新構想だ。安保理で今月4日、対シリア非難決議案に拒否権を行使したロシアと中国の対応が注目される。
アラブ連盟の声明は「あらゆる種類の政治的・物質的支援を提供する」と踏み込んだ。シリア国民への人道支援だけでなく、政府軍の離反兵らで構成する「自由シリア軍」などへの支援を念頭に置いたものだ。シリア国内外で分裂状態にある反体制勢力に「結束する」ことも求めている。(読売)
・欧米有志国が会合へ UN枠外でアサド政権に圧力(2/9,産経)
・米東海岸で9か国大規模揚陸演習、対イラン戦を想定?(AFP)
・対シリア、米英仏が圧力強化 アラブ連盟と安保理で(1/31, 日経)
ナオミ・クラインの"The Shock Doctrine――The Rise of Disaster Capitalism"の翻訳、『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』にならうなら、「惨事便乗型ミリタリズム」とでも書くべきかも知れない。
「トモダチ作戦」以降の米軍と国連PKOの動向を見ながら、"Disaster Militarism"の分析をきちんとしなければいけない、と考えてきた。 しかしこのブログのエントリーを見れば明らかなように、それができていない。 とてもじゃないが、できない。福島第一・第二のDisasterのせいで、私の日常もDisasterになってしまった。
私が言う"Disaster Militarism"は、ナオミ・クラインが言う"Disaster Capitalism"と微妙に違う。後者は現代資本主義批判として書かれたものだが、前者は軍隊そのものを特殊な官僚機構として捉え、現代官僚制批判の中に位置付けようとする。
Disasterに「便乗」して制度的・機構的「自己革新」を図りながら、制度的・機構的な「自己増殖」を企てようとする〈現代ミリタリズム批判〉を意図したものである。
シリア情勢が沈黙を許さない状況になっているので、これから順を追ってポイントを整理しようと思う。
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天災(natural disaster)・「緊急人道支援」・軍隊
たとえば、「トモダチ作戦」以降、日米の「惨事便乗型ミリタリズム」が、「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」の下で、国際NGOと「市民社会」を取り込み(co-opt)しながら、以下のような動きをみせていることをご存知だろうか。
自分の不明を恥じるしかないが、わたしは「トモダチ作戦」が開始されるまで、ピース・ウィンズの「アメリカオフィス」がこのような動きをしていることを知らなかった。
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●日米民間団体、政府組織、自衛隊・軍隊間の災害支援共同活動向上のためのイニシアチブ・プログラム
「日米 民軍災害支援対策)による「災害支援対策ワークショップ」
ピース ウィンズ ・アメリカ、在日米国大使館共催
2011 年9 月 27 日- 29 日 場所:在日米国大使館(東京)
ピースウィンズ・アメリカは、在日米国大使館共催のもと、「災害支援対策ワークショップ:政策、手順、協働」を開催する運びとなりました。このワークショップでは、主に民軍間の人道支援/災害救助 (HA/DR)の重要点を中心に、二国間及び多国間との支援活動の調整をどのように向上できるかという点について話し合われる予定です。
予定参加団体は、日米さらに韓国の政府系機関、自衛隊・軍隊、NGO、及び民間企業からの各団体の災害対応・対策担当者となっています。
今回は、いくつかの関連フォーラムやワークショップ形式から構成されている、当団体が行っている表記イニシャチブのプログラムの一部として、各組織の上層部の代表者や現場責任者を対象としています。今回のワークショップでは同じ分野で活躍する人々とのネットワーキング、協働支援政策に取り組む機会、及びトレーニングを提供します。
今回は、HA/DR における主要な問題点である支援対応政策、支援のプロシージャ及び協働支援を中心に取り上げます。被災国(ホストネーション)、二国間、多国間での協働支援における問題点にも触れる予定です。参加者は今回の東日本大震災において、どのような対応がとられたのかを聞く機会があり、さらに環太平洋地域における他の事例についても学ぶことができます。
また、各団体の協働支援体制の向上を促すため、このワークショップでは小グループに分かれてのディスカッションや事例研究も行われます。各種の事例やこれまでの経験で得られた教訓を共有することにより、災害支援対策関連担当者にとって重要なトレーニングの機会となると考えられます。
ピースウィンズ・ アメリカの日米民軍災害支援対策イニシャチブとは、18 ヶ月間のプログラムで、民間と自衛隊・軍隊の災害支援における協働活動の向上において、相互の支援対応能力の向上と改善を目指すものです。今回のワークショップはこのイニシャチブの一部として行われます。ワークショップは日本語と英語の両方で行われます・・・。
・・
この問題を考える予備的情報として、「国家(戦略)とNGOの「利益相反」--JPFという「プラットフォーム」がいったん解体されねばならない理由」を見て頂きたい。
ここに東京財団が一昨年、新米国安全保障センター(米国の軍産学複合体のシンクタンク。プロジェクト・メンバーに米軍の司令官が入っていることに注意)と行った「日米同盟の在り方に関する共同研究プロジェクト」の「報告書」、
●「「従来の約束」の刷新と「新しいフロンティア」の開拓:日米同盟と「自由で開かれた国際秩序」」(2010年10月27日)のリンクがある。 この「プロジェクト」には、大西健丞(ジャパン・プラットフォーム理事、ピースウィンズ・ジャパンおよびシヴィック・フォース・ジャパン代表理事)氏その他が参加している。
「3・11」以前から、自衛隊や国際NGO、「市民社会」を巻き込んだDisaster Militarismは、着々とその「ベース」(基地)を打ち固めていたのである。
「トモダチ作戦」は、まさに「3・11」に「便乗」した軍事作戦だったのだ。
(つづく)
・・・
・多国間共同訓練「コブラ・ゴールド2012」、タイ
「年次の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド(Cobra Gold)」がタイで7日から行われている。2012年は韓国、インドネシア、タイ、米国、シンガポール、日本、マレーシアの7か国から約1万3000人が参加、17日に終了予定となっている」(2/15,AFP)
・シリアへ「共同平和維持軍」、アラブ連盟が要請
アラブ連盟(22か国・機構)は12日、カイロで閣僚会議を開き、政府軍による住民弾圧が続くシリアで「あらゆる暴力行為の即時停止」を求めた上で、国連とアラブ連盟が「共同平和維持軍」を組織し、シリアに派遣して、戦闘停止を監視するよう、国連安全保障理事会に要請する声明を発表した。
国際社会が結束して介入することで、昨年3月以来、約6000人が死亡したとみられるシリア・アサド政権の弾圧を食い止めるための新構想だ。安保理で今月4日、対シリア非難決議案に拒否権を行使したロシアと中国の対応が注目される。
アラブ連盟の声明は「あらゆる種類の政治的・物質的支援を提供する」と踏み込んだ。シリア国民への人道支援だけでなく、政府軍の離反兵らで構成する「自由シリア軍」などへの支援を念頭に置いたものだ。シリア国内外で分裂状態にある反体制勢力に「結束する」ことも求めている。(読売)
・欧米有志国が会合へ UN枠外でアサド政権に圧力(2/9,産経)
・米東海岸で9か国大規模揚陸演習、対イラン戦を想定?(AFP)
・対シリア、米英仏が圧力強化 アラブ連盟と安保理で(1/31, 日経)
「数値に翻弄される社会」
●2号機温度90度近くに 「温度計異常」と東電
東京電力は13日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部の温度計が、同日午前5時に89・6度を示し、冷温停止状態の宣言以降の最高値を記録したと発表した。 12日午後2時15分ごろには、保安規定で定めた管理目標上限の80度を超えた82度を示し、経済産業省原子力安全・保安院に「運転上、必要な条件を満たしていない」と報告した。 東電は、一つの温度計の値が短時間で75~90度ほどの間で大きく変動していることや、この温度計以外は低い数値で安定していることから、この温度計に異常があるとみて調査する方針。(共同)
●放射線の健康影響、市民認識と温度差--有識者会議の県民広聴会/栃木(毎日)
・・
「数値に翻弄される社会」
私たちは数値に翻弄されている。
福島第一2号機の格納容器内の温度の推移、放射性物質による汚染状況、「食の安全・安心」の「基準」等々をめぐって。
「冷温停止状態」宣言なんて、最初の最初からすべてがデタラメであることを私たちが知っていて、さらにいわゆる「外部被ばく」や「内部被ばく」に、当然にも、とても神経質になっているからである。
こういう「3・11以後」的状況が、たとえば、4週間後の福島の脱原発県民集会に東京からバスツアーを組むことに対し、「まさか子連れで参加しようなんていう方がいたら、私は絶叫するかもしれません。私には全くもって驚くべきツアー」と人に書かせてしまうのだろう。
また、福島県伊達市の農業委員会の「耕作指導」に対し、「農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話し」とまで書いてしまう人もいる。
私たちは、このような主張を、このような表現になっていても、それが「正論」(の一面)を持っているだけに、やりすごしがちになる。 前者に関しては、すでに触れた。ここでは、「福島県有機農業ネットワーク」理事長の菅野正寿さんから聞いた話も紹介しながら、前回のつづきとして後者について少し考えてみたい。
ポイントは二つある。一つは伊達市の農業委員会の「指導」を批判するにあたって、このような表現をする必要があるのかどうか/なぜこういう表現をしてしまうのか、もう一つは、「農地を再生」する方法として「鋤込み」をどう考えるか、という問題である。
2/16
「数値に翻弄される社会」は、こういう形になって現れる。
・・<放射性物質>食品の新基準値案、認める答申 異例の意見書
厚生労働省の諮問で食品中の放射性物質の新基準値案を審議していた文部科学省の「放射線審議会」(会長・丹羽太貫京都大名誉教授)は16日、新基準値案を批判する異例の意見書をつけつつ、同案を認める答申をした。意見書では、乳児用食品の1キロあたり50ベクレルを100ベクレルに緩めても健康は守られると記したものの、厳しい基準値を堅持する厚労省に歩み寄った。
審議会は昨年12月27日から6回の審議を重ねた。毎回、大半の委員から「国際機関は日本と同じ年間1ミリシーベルトを根拠にしながら、一般食品のセシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルとしているのに、なぜ日本は100ベクレルなのか」「現行の暫定規制値で国民の健康は十分に守られており、基準値の強化は福島の復興の妨げになる恐れがある」「乳児用食品や牛乳に50ベクレルを設ける根拠はない」など、新基準値案を批判する意見が続出した。
しかし「厳しい新基準値でも農産物の流通が滞ることはない」との厚労省の意向は覆せず、「食品の放射性セシウムの濃度は十分に低く、(新基準値が)放射線防護の効果を高める手段にはなりにくい」との批判的な意見書を付けて結局は認めた。
新基準値案は、一般食品100ベクレル▽乳児用食品50ベクレル▽牛乳50ベクレル▽飲料水10ベクレル。4月から実施される。【毎日、小島正美】
・・
下の「放射線審議会」の配布資料に目を通して、私はめまいがした。
「健康」、「食の安全・安心」とは何だろう?
参考サイト
●放射線審議会(第125回、2/2) 配付資料
議題
1.「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部を改正する件について(諮問)」に係る検討について
2.「水道法に規定する衛生上必要な措置等に関する水道水中の放射性物質の目標の設定について(諮問)」に係る検討について
●「実情無視の農地除染」(風のたよりーいわき市議会議員 佐藤かずよし)より
・・・
・福島原発原子炉圧力容器 温度上昇は温度計の不良...東電示す
福島第一原発2号機の原子炉圧力容器の底部温度が80度以上に上昇し、東京電力は原子炉施設保安規定の「運転上の制限」を逸脱していることを発表した。12日17時の会見で説明した。圧力容器底部には、円形の容器の外周に沿って角度で0度、135度、270度の3か所に温度計が設置されている。温度上昇を示したのはそのうちの1つで、0度の場所に設置された温度計だ。2月1日23時の時点で52度だったが、2日頃から緩やかに上昇を始め、12日11時の時点で75.4度に達した。
そのため東電は溶解した核燃料が連続して核分裂を起こす「再臨界」を防止する措置として、同日11時38分から約2時間半ほどホウ酸水の注入を実施。また、原子炉冷却のための注水量を全体で1時間当たり17.4立方mと、それまでの2倍に増加して冷却に努めたが、温度計が示す温度上昇は止まらなかった。
第一原発の当直長は14時15分の時点で82度に達したと判断したが、17時現在でも上昇を続けている。ただ、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「全体的に冷却は順調に進んでおり、冷温停止状態は維持できている」と述べ、再臨界の可能性を否定した。
松本氏はその理由として、格納容器内のガスサンプリングで得られた結果、核分裂で発生するキセノン135が再臨界判定基準(1Bq/cm3)を超えず、検出限界未満で未臨界であると判断できること。放射性セシウム134、137も検出限界未満であることを上げた。また、注水量の増加に伴って、圧力容器周りの他の温度計が示す温度は下がっていることや、温度上昇を示している温度計が示す温度を1秒ごとに取り出してみると、12日正午頃から振幅の幅が10度以上と非常に大きくなっていることなどから「計器の指示不良の可能性が、確信を持っていえるようになってきた」(松本氏)(???)と、話した。
しかし、温度計が故障していると判断できるのは、他の温度計が示す温度との乖離がさらに広がり、上昇をし続けた場合だけだ。今後、注水量の増加に比例して、この温度計の温度が下がり始めた場合は、温度計の故障と断定がし難くなる。
松本氏は「このまま温度がさらに上がり続けるなら他の温度計と比較して不良の可能性が高くなるが、逆に注水量に応じて温度が下がることのほうが判断に悩む」(→F**K YOU!)と、原因の断定には含みを持たせた。原子炉施設保安規定では、圧力容器の底部温度は80度以下に保たなければならないと定めている。実際に温度上昇が続く状態が続く場合、再臨界を起こす可能性もあり、政府が発表した原子炉の冷温停止状態が根本的に崩れる可能性がある。(レスポンス 中島みなみ)
・・
・福島第1原発2号機原子炉温度上昇 野田首相、冷温停止状態に変わりはないと強調
福島第1原発2号機の原子炉で温度上昇が続いている問題について、野田首相は、衆議院予算委員会で、冷温停止状態に変わりはないと強調した。 野田首相は「昨年(2011年)の12月16日に冷温停止状態に到達したことは、まさに、わたしの口から言明させていただきました。基本的には、その状況に変化はないというふうに思っていますし、しっかり留意していきたいと思います」と述べた。
また細野原発担当相も、冷温停止状態との判断に変わりがないとしたうえで、「楽観論に立つのは戒める」と述べ、温度の上昇の原因を分析し、注水以外の方法も検討していることを明らかにした。(FNN)
・2号機原発、温度計は故障=13日午後に「342度」―福島第1
東京電力福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部にある一部の温度計が高い温度を計測した問題で、同社は13日、午後3時前に342.2度という異常な数値を示したと発表した。この温度計は電流の変化で温度を測定しており、同社は断線が原因による故障が考えられるとしている。(時事)
↓
「数値に翻弄される」私がいて、あなたがいる。
沖縄の仲井真知事は防衛官僚の失言という名のホンネに言及することを「口が汚れる」と述べたことがあるが、似たような気分だ。一言だけ。
・・
毎日新聞によれば、「冷温停止前倒し」に関し、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「上部からの注水で十分冷却できており問題ない」と説明したという。
この発言に触れて、私は改めて「なぜ東電の技術屋は、自分たちが過去何度も判断を誤り、前言を翻し、「訂正」を繰り返し、そうすることで日本中を恐怖と不安に叩き込んできたことを顧みようとせず、かくも断定的に物が言えるのか?」と考え込んでしまったものだ。自分たちの判断はまた誤ってしまうかもしれない、慎重には慎重をきす、という姿勢が、どうしても感じられないのである。
横柄とか傲慢という言葉では形容できない、何かが根本的に欠落しているとしか私には思えない、そんな人間の姿を垣間みてしまうのである。
私たちは、「3・11」直後に東電経営陣が、事態の深刻さに怯え、「事態収束」作業から社として逃亡しようとしたことを忘れない。その報道に初めて接したときの、あの脱力感、怒りとかそういう感情を突き抜けたような徒労感を私は忘れない。 その直後だったか、「東電という企業を日本社会がなぜ生み出してしまったのか、私たちは真剣に総括する必要がある」といったような事を、このブログで書いた記憶がある。
私個人に関して言えば、「3・11」のはるか前から東電という企業は「アウト!」だった。しかし「あの瞬間」において、それはもはや何物によっても変わりようがないものになった。
「あぁ、この国は原発という「持ってはいけない物」「持てるはずがなかった物」を持ってしまったんだな、そしてまだ持ってしまっている・・・」という、「実感としての恐怖感」とでも言えばよいのか、そんな思いに襲われたのである。
ここで私が言いたいのは、東電が何を言っても、また言ってることが仮に正しくとも、もう日本人の大半は東電という企業そのものを信用しなくなった、ということだ。東電が私たちをして、そうせしめてしまったのである。
それと同じことが、国についても言える。そして、「3・11」直後から4月初旬ごろまでメディアを席巻した原子力ムラの面々に対しても言えるだろう。
「原発の安全神話」とともに崩壊したのは、それを体現してきた者たちの人間性そのものに対する信頼性の崩壊なのだ。このことを現政権、東電、その他の電力企業、原子力ムラの面々は、どうも未だに理解しない/できないでいる、と思えてならないのである。
一般の私たちの目線から言えば、ポスト「3・11」における原発の「安全性」の基準は、パソコンによって「解析」するような「工学的耐性」にあるのではない。原発というきわめて特殊な発電装置を管理・運営・経営・研究開発している者たちに対する人間性の信頼が、どこまで回復できるかにある。私自身はその可能性に対して、きわめて悲観的だ。
このことは、「原発の工学的耐性と社会的耐性」をまた論じるときに再考したいと思うが、それが完全に崩壊したこと、地に落ちてしまったことを私たちは「これから原発をどうするか?」を考えるにあたり、認識の出発点に据える必要があるだろう。
それは、「科学」的知見で解明したり、説得したりすることはできない。
圧倒的多数の日本人が、もう感じ取ってしまったもの、そして信念化されてしまったようなものだ。
それは、人間の集合的観念の問題である。それはもちろん、とても不合理であり、不条理なものだ。
しかし、だからこそ決定的なものなのだ。
「冷温停止」と「事故収束」を政治的に宣言することは自由である。
だが、それをほとんどの日本人は信用しないだろうということ、少なくともこのことだけは理解できるようになってほしい。 私は、日本に多く存在するであろう、そう切に願う者の一人である。
⇒「政府・東電は、なぜ「冷温停止」を急ぐのか?」(2011/10/8)より
(一部の人々へ。「数値に翻弄される社会」と、2号機の温度上昇と並行して昂じた「黒木メイサバッシング」との関連、その親和性についての私見はこのページと切り離して論じることにしました。)
2/16
・2号機温度計「断線で故障」と報告=東電が保安院に―福島第1
東京電力福島第1原発の2号機原子炉圧力容器底部に3カ所ある温度計のうち、一つの温度計が故障して一時400度超の異常値を示した問題で、東電は16日、経済産業省原子力安全・保安院に「温度計の電気ケーブルがほぼ断線したことが故障原因」と報告したと発表した。この温度計は依然200度台を示す一方、残り二つは30度程度で安定している。
保安院が同報告を評価すれば、東電は現在通常の約2倍に増やしている2号機の注水量を減らす方針。
報告書によると、東電は模型を使った実験で、温度計が海水や蒸気にさらされた状況を再現。実際の温度にかかわらず、測定値が激しく上下し、その後徐々に上昇する傾向がみられることなどから、温度計の電気ケーブルがほぼ断線状態にあると判断した。 (時事)
↓
これはつまり、温度計の数値を根拠に「冷温停止状態」(100度以下?)の政治宣言を発したこと、その根拠が崩れた、ということの宣言ではないのか? 誰も、何もわからない。立証することも、反証することもできない。深刻だ。
・東京湾の水・泥・生物、放射性物質を調査へ
東京湾に流れ込む隅田川と荒川の河口付近で、環境省が17日から、川の水や川底の泥について放射性物質の濃度を調べることがわかった。
文部科学省も4月以降、湾内の海水や海底の泥、生き物の調査を行う。「江戸前の魚を食べても大丈夫か」「子どもを水辺で遊ばせたいが不安」といった住民からの相談が増えていることもあり、実態把握に乗り出す。
環境省が調べるのは、隅田川の両国橋と荒川の葛西橋付近で、3月末までに最初の調査結果を公表する。文科省は東京湾に流れ込む主な河川の河口周辺や沿岸、湾の中央部分で、表層部分の水や海底土を採取し、濃度を調べる。湾内の海洋生物についても地元自治体と協力して調べる方針。
環境省などによると、福島第一原発事故で放出された放射性物質は風に乗って運ばれ、雨とともに関東平野に降下し、河川に入る。専門家は河川を通じて閉鎖性の高い同湾に入った放射性物質が海底で濃縮する可能性があると指摘している。(読売)
東京電力は13日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部の温度計が、同日午前5時に89・6度を示し、冷温停止状態の宣言以降の最高値を記録したと発表した。 12日午後2時15分ごろには、保安規定で定めた管理目標上限の80度を超えた82度を示し、経済産業省原子力安全・保安院に「運転上、必要な条件を満たしていない」と報告した。 東電は、一つの温度計の値が短時間で75~90度ほどの間で大きく変動していることや、この温度計以外は低い数値で安定していることから、この温度計に異常があるとみて調査する方針。(共同)
●放射線の健康影響、市民認識と温度差--有識者会議の県民広聴会/栃木(毎日)
・・
「数値に翻弄される社会」
私たちは数値に翻弄されている。
福島第一2号機の格納容器内の温度の推移、放射性物質による汚染状況、「食の安全・安心」の「基準」等々をめぐって。
「冷温停止状態」宣言なんて、最初の最初からすべてがデタラメであることを私たちが知っていて、さらにいわゆる「外部被ばく」や「内部被ばく」に、当然にも、とても神経質になっているからである。
こういう「3・11以後」的状況が、たとえば、4週間後の福島の脱原発県民集会に東京からバスツアーを組むことに対し、「まさか子連れで参加しようなんていう方がいたら、私は絶叫するかもしれません。私には全くもって驚くべきツアー」と人に書かせてしまうのだろう。
また、福島県伊達市の農業委員会の「耕作指導」に対し、「農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話し」とまで書いてしまう人もいる。
私たちは、このような主張を、このような表現になっていても、それが「正論」(の一面)を持っているだけに、やりすごしがちになる。 前者に関しては、すでに触れた。ここでは、「福島県有機農業ネットワーク」理事長の菅野正寿さんから聞いた話も紹介しながら、前回のつづきとして後者について少し考えてみたい。
ポイントは二つある。一つは伊達市の農業委員会の「指導」を批判するにあたって、このような表現をする必要があるのかどうか/なぜこういう表現をしてしまうのか、もう一つは、「農地を再生」する方法として「鋤込み」をどう考えるか、という問題である。
2/16
「数値に翻弄される社会」は、こういう形になって現れる。
・・<放射性物質>食品の新基準値案、認める答申 異例の意見書
厚生労働省の諮問で食品中の放射性物質の新基準値案を審議していた文部科学省の「放射線審議会」(会長・丹羽太貫京都大名誉教授)は16日、新基準値案を批判する異例の意見書をつけつつ、同案を認める答申をした。意見書では、乳児用食品の1キロあたり50ベクレルを100ベクレルに緩めても健康は守られると記したものの、厳しい基準値を堅持する厚労省に歩み寄った。
審議会は昨年12月27日から6回の審議を重ねた。毎回、大半の委員から「国際機関は日本と同じ年間1ミリシーベルトを根拠にしながら、一般食品のセシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルとしているのに、なぜ日本は100ベクレルなのか」「現行の暫定規制値で国民の健康は十分に守られており、基準値の強化は福島の復興の妨げになる恐れがある」「乳児用食品や牛乳に50ベクレルを設ける根拠はない」など、新基準値案を批判する意見が続出した。
しかし「厳しい新基準値でも農産物の流通が滞ることはない」との厚労省の意向は覆せず、「食品の放射性セシウムの濃度は十分に低く、(新基準値が)放射線防護の効果を高める手段にはなりにくい」との批判的な意見書を付けて結局は認めた。
新基準値案は、一般食品100ベクレル▽乳児用食品50ベクレル▽牛乳50ベクレル▽飲料水10ベクレル。4月から実施される。【毎日、小島正美】
・・
下の「放射線審議会」の配布資料に目を通して、私はめまいがした。
「健康」、「食の安全・安心」とは何だろう?
参考サイト
●放射線審議会(第125回、2/2) 配付資料
議題
1.「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部を改正する件について(諮問)」に係る検討について
2.「水道法に規定する衛生上必要な措置等に関する水道水中の放射性物質の目標の設定について(諮問)」に係る検討について
●「実情無視の農地除染」(風のたよりーいわき市議会議員 佐藤かずよし)より
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・福島原発原子炉圧力容器 温度上昇は温度計の不良...東電示す
福島第一原発2号機の原子炉圧力容器の底部温度が80度以上に上昇し、東京電力は原子炉施設保安規定の「運転上の制限」を逸脱していることを発表した。12日17時の会見で説明した。圧力容器底部には、円形の容器の外周に沿って角度で0度、135度、270度の3か所に温度計が設置されている。温度上昇を示したのはそのうちの1つで、0度の場所に設置された温度計だ。2月1日23時の時点で52度だったが、2日頃から緩やかに上昇を始め、12日11時の時点で75.4度に達した。
そのため東電は溶解した核燃料が連続して核分裂を起こす「再臨界」を防止する措置として、同日11時38分から約2時間半ほどホウ酸水の注入を実施。また、原子炉冷却のための注水量を全体で1時間当たり17.4立方mと、それまでの2倍に増加して冷却に努めたが、温度計が示す温度上昇は止まらなかった。
第一原発の当直長は14時15分の時点で82度に達したと判断したが、17時現在でも上昇を続けている。ただ、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「全体的に冷却は順調に進んでおり、冷温停止状態は維持できている」と述べ、再臨界の可能性を否定した。
松本氏はその理由として、格納容器内のガスサンプリングで得られた結果、核分裂で発生するキセノン135が再臨界判定基準(1Bq/cm3)を超えず、検出限界未満で未臨界であると判断できること。放射性セシウム134、137も検出限界未満であることを上げた。また、注水量の増加に伴って、圧力容器周りの他の温度計が示す温度は下がっていることや、温度上昇を示している温度計が示す温度を1秒ごとに取り出してみると、12日正午頃から振幅の幅が10度以上と非常に大きくなっていることなどから「計器の指示不良の可能性が、確信を持っていえるようになってきた」(松本氏)(???)と、話した。
しかし、温度計が故障していると判断できるのは、他の温度計が示す温度との乖離がさらに広がり、上昇をし続けた場合だけだ。今後、注水量の増加に比例して、この温度計の温度が下がり始めた場合は、温度計の故障と断定がし難くなる。
松本氏は「このまま温度がさらに上がり続けるなら他の温度計と比較して不良の可能性が高くなるが、逆に注水量に応じて温度が下がることのほうが判断に悩む」(→F**K YOU!)と、原因の断定には含みを持たせた。原子炉施設保安規定では、圧力容器の底部温度は80度以下に保たなければならないと定めている。実際に温度上昇が続く状態が続く場合、再臨界を起こす可能性もあり、政府が発表した原子炉の冷温停止状態が根本的に崩れる可能性がある。(レスポンス 中島みなみ)
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・福島第1原発2号機原子炉温度上昇 野田首相、冷温停止状態に変わりはないと強調
福島第1原発2号機の原子炉で温度上昇が続いている問題について、野田首相は、衆議院予算委員会で、冷温停止状態に変わりはないと強調した。 野田首相は「昨年(2011年)の12月16日に冷温停止状態に到達したことは、まさに、わたしの口から言明させていただきました。基本的には、その状況に変化はないというふうに思っていますし、しっかり留意していきたいと思います」と述べた。
また細野原発担当相も、冷温停止状態との判断に変わりがないとしたうえで、「楽観論に立つのは戒める」と述べ、温度の上昇の原因を分析し、注水以外の方法も検討していることを明らかにした。(FNN)
・2号機原発、温度計は故障=13日午後に「342度」―福島第1
東京電力福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部にある一部の温度計が高い温度を計測した問題で、同社は13日、午後3時前に342.2度という異常な数値を示したと発表した。この温度計は電流の変化で温度を測定しており、同社は断線が原因による故障が考えられるとしている。(時事)
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「数値に翻弄される」私がいて、あなたがいる。
沖縄の仲井真知事は防衛官僚の失言という名のホンネに言及することを「口が汚れる」と述べたことがあるが、似たような気分だ。一言だけ。
・・
毎日新聞によれば、「冷温停止前倒し」に関し、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「上部からの注水で十分冷却できており問題ない」と説明したという。
この発言に触れて、私は改めて「なぜ東電の技術屋は、自分たちが過去何度も判断を誤り、前言を翻し、「訂正」を繰り返し、そうすることで日本中を恐怖と不安に叩き込んできたことを顧みようとせず、かくも断定的に物が言えるのか?」と考え込んでしまったものだ。自分たちの判断はまた誤ってしまうかもしれない、慎重には慎重をきす、という姿勢が、どうしても感じられないのである。
横柄とか傲慢という言葉では形容できない、何かが根本的に欠落しているとしか私には思えない、そんな人間の姿を垣間みてしまうのである。
私たちは、「3・11」直後に東電経営陣が、事態の深刻さに怯え、「事態収束」作業から社として逃亡しようとしたことを忘れない。その報道に初めて接したときの、あの脱力感、怒りとかそういう感情を突き抜けたような徒労感を私は忘れない。 その直後だったか、「東電という企業を日本社会がなぜ生み出してしまったのか、私たちは真剣に総括する必要がある」といったような事を、このブログで書いた記憶がある。
私個人に関して言えば、「3・11」のはるか前から東電という企業は「アウト!」だった。しかし「あの瞬間」において、それはもはや何物によっても変わりようがないものになった。
「あぁ、この国は原発という「持ってはいけない物」「持てるはずがなかった物」を持ってしまったんだな、そしてまだ持ってしまっている・・・」という、「実感としての恐怖感」とでも言えばよいのか、そんな思いに襲われたのである。
ここで私が言いたいのは、東電が何を言っても、また言ってることが仮に正しくとも、もう日本人の大半は東電という企業そのものを信用しなくなった、ということだ。東電が私たちをして、そうせしめてしまったのである。
それと同じことが、国についても言える。そして、「3・11」直後から4月初旬ごろまでメディアを席巻した原子力ムラの面々に対しても言えるだろう。
「原発の安全神話」とともに崩壊したのは、それを体現してきた者たちの人間性そのものに対する信頼性の崩壊なのだ。このことを現政権、東電、その他の電力企業、原子力ムラの面々は、どうも未だに理解しない/できないでいる、と思えてならないのである。
一般の私たちの目線から言えば、ポスト「3・11」における原発の「安全性」の基準は、パソコンによって「解析」するような「工学的耐性」にあるのではない。原発というきわめて特殊な発電装置を管理・運営・経営・研究開発している者たちに対する人間性の信頼が、どこまで回復できるかにある。私自身はその可能性に対して、きわめて悲観的だ。
このことは、「原発の工学的耐性と社会的耐性」をまた論じるときに再考したいと思うが、それが完全に崩壊したこと、地に落ちてしまったことを私たちは「これから原発をどうするか?」を考えるにあたり、認識の出発点に据える必要があるだろう。
それは、「科学」的知見で解明したり、説得したりすることはできない。
圧倒的多数の日本人が、もう感じ取ってしまったもの、そして信念化されてしまったようなものだ。
それは、人間の集合的観念の問題である。それはもちろん、とても不合理であり、不条理なものだ。
しかし、だからこそ決定的なものなのだ。
「冷温停止」と「事故収束」を政治的に宣言することは自由である。
だが、それをほとんどの日本人は信用しないだろうということ、少なくともこのことだけは理解できるようになってほしい。 私は、日本に多く存在するであろう、そう切に願う者の一人である。
⇒「政府・東電は、なぜ「冷温停止」を急ぐのか?」(2011/10/8)より
(一部の人々へ。「数値に翻弄される社会」と、2号機の温度上昇と並行して昂じた「黒木メイサバッシング」との関連、その親和性についての私見はこのページと切り離して論じることにしました。)
2/16
・2号機温度計「断線で故障」と報告=東電が保安院に―福島第1
東京電力福島第1原発の2号機原子炉圧力容器底部に3カ所ある温度計のうち、一つの温度計が故障して一時400度超の異常値を示した問題で、東電は16日、経済産業省原子力安全・保安院に「温度計の電気ケーブルがほぼ断線したことが故障原因」と報告したと発表した。この温度計は依然200度台を示す一方、残り二つは30度程度で安定している。
保安院が同報告を評価すれば、東電は現在通常の約2倍に増やしている2号機の注水量を減らす方針。
報告書によると、東電は模型を使った実験で、温度計が海水や蒸気にさらされた状況を再現。実際の温度にかかわらず、測定値が激しく上下し、その後徐々に上昇する傾向がみられることなどから、温度計の電気ケーブルがほぼ断線状態にあると判断した。 (時事)
↓
これはつまり、温度計の数値を根拠に「冷温停止状態」(100度以下?)の政治宣言を発したこと、その根拠が崩れた、ということの宣言ではないのか? 誰も、何もわからない。立証することも、反証することもできない。深刻だ。
・東京湾の水・泥・生物、放射性物質を調査へ
東京湾に流れ込む隅田川と荒川の河口付近で、環境省が17日から、川の水や川底の泥について放射性物質の濃度を調べることがわかった。
文部科学省も4月以降、湾内の海水や海底の泥、生き物の調査を行う。「江戸前の魚を食べても大丈夫か」「子どもを水辺で遊ばせたいが不安」といった住民からの相談が増えていることもあり、実態把握に乗り出す。
環境省が調べるのは、隅田川の両国橋と荒川の葛西橋付近で、3月末までに最初の調査結果を公表する。文科省は東京湾に流れ込む主な河川の河口周辺や沿岸、湾の中央部分で、表層部分の水や海底土を採取し、濃度を調べる。湾内の海洋生物についても地元自治体と協力して調べる方針。
環境省などによると、福島第一原発事故で放出された放射性物質は風に乗って運ばれ、雨とともに関東平野に降下し、河川に入る。専門家は河川を通じて閉鎖性の高い同湾に入った放射性物質が海底で濃縮する可能性があると指摘している。(読売)
2012年2月11日土曜日
福島の〈農〉の再生とそれへの〈支援〉をどう考えるか
●2号機温度、約75度に上昇=冷却水、毎時1トン増で対応―福島第1
東京電力は11日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部に3カ所ある温度計のうち、60度台後半で推移していた温度計が同日夕から再び上昇し始めたため、冷却水の注入量を毎時1トン増やして同14.6トンとした。同温度計は11日午後11時に74.9度を示す一方、同じ高さにある残り2カ所の温度計は35度程度で推移しているという。(時事)→12日午前10時、温度はさらに78・3度に上昇。「格納容器内からは放射性キセノンが検出されていない」「臨界していない」、と東電は言っている。→さらに温度は上昇し82度に。冷却水を毎時3トン増やし、過去最大レベルの同約18トンに。
・・
福島の〈農〉の再生とそれへの〈支援〉をどう考えるか
今日、都内で脱原発の集会とデモがある。
その後、私は、仲間とともに、「福島県有機農業ネットワーク」理事長の菅野正寿さんと会い、お話をきかせて頂くことになっている。その準備をしているところに、以下のようなメールが飛び込んできた。読者はどのような感想や印象を持つだろうか。非常に重要な問題を提起していると思うので、実名は伏せて、掲載しようと思う。
「福島の「〈農〉の再生」には何が必要か、それを〈支援〉するにはどうすればよいか」を考えながら、読んでいただきたい。
メールの執筆者は
・「耕作をせず、とりあえずはそれまで生えていたものもそのままにしておいたほうが、事故が収束した後に、生えているものを刈り取り、土の表面数センチをはぐことで、農地を再生させる可能性が残されるのであって、耕して放射性物質を鋤込むことをしなかったこの判断は、きわめて賢明であったといえます」
・「農家を保護するはずの農業委員会が、こうした「指導」を行うことは、農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話し」
と言う。しかし、ほんとうにそう言えるのだろうか。
一見、「正論」であるように思えるのだが、このような主張には「何か」が欠けていはいないか?
私は、このように断言することに、とてもためらいがある。まさに、今、考えている最中だ。結論を急ぎたくない。それを考えるためにも、菅野さんのお話を聞こうと考えた。
脱原発派は、福島の人々とどのようにつながり、支えようとしているのか?
どうやら〈問題〉はここに行きつくように思われる。
・・
●全国に広がりつつある汚染!!
福島県の伊達市で同市農業委員会が、福島原発事故によって放射能汚染されたため、耕作を見合わせている農家に対して、「農地として適切に利用されていない」として、「耕すように指導」しているという東京新聞の報道を以下にお知らせします。
「指導」を受けているのは、市内の小野寛さん(51)。事故によって田畑は3マイクロシーベルト毎時の放射線値を示すようになったそうです。そのため、 ここで耕作をしても収穫物を食べることはできないと考えて、耕作を断念。さらに被曝を避けるために、それまで植えられていた小麦なども収穫しませんでした。
これは極めて妥当な措置だったと思います。小野さんが懸念したように、放射能汚染された作物を収穫すると、放射性物質が舞い、吸い込んで内部被曝してしまう可能性が強くあります。また土いじりの仕事である農作業は他の様々な面からも、被曝の可能性が高く、汚染地帯での作業は危険性が高いために避けることがのぞましいからです。
また汚染された土地から収穫したものは、当然ながら汚染されてしまうため食べられないとの判断も妥当です。それどころか、耕作をせず、とりあえずはそれまで生えていたものもそのままにしておいたほうが、事故が収束した後に、生えているものを刈り取り、土の表面数センチをはぐことで、農地を再生させる可能性が残されるのであって、耕して放射性物質を鋤込むことをしなかったこの判断は、きわめて賢明であったといえます。
むしろ国や県、各自治体の農業対策室は、こうした判断を昨年3月の時点で示し、耕作中止を呼びかけるべきだったのであり、今回の措置は、そうした失策を振り返らないばかりか、自らの被曝を避け、田畑への放射性物質の鋤込を回避して農家に、被災農地での被曝を伴う耕作を強制するものであって、まったく間違っています。
---以下東京新聞記事より------
・耕作放棄じゃない 除染待つ間に農地利用促す通知(東京新聞 2012年2月8日)
米から国の基準を上回る放射性物質が検出された福島県伊達市で、土壌汚染や被ばくへの懸念から耕作できなかった農家に対し、市農業委員会が田畑を耕作放棄地と扱う通知を出した。「農地として適切に利用されていない」として耕すよう指導。一月中旬に通知を受けた同市の小野寛さん(51)は「耕すと放射性物質が土に混ざる」と困惑している。 (中崎裕)
各自治体の農業委員会は農地法に基づき、年に一度、耕作放棄地を調査。最初の指導通知が届いた時点で耕作放棄地扱いとなり、所有者は原則的に新たな農地取得ができなくなる。同市農業委は今回、二百件ほどの指導通知を出した。小野さんは二千平方メートルの田畑で米と小麦を栽培。主に自家用だが、一部を販売している。米は、秋から育てたライ麦を刈り倒して雑草などを抑える独自の有機栽培をしてきた。
昨年三月の原発事故で、田畑は毎時三マイクロシーベルトと高い線量が検出された。単純計算で年間二〇ミリシーベルトを超え、政府が避難を促す基準を超える値だ。「作っても食べられない」と判断し田植えをやめた。土ぼこりなどを吸って被ばくする懸念があったため、ライ麦と小麦の収穫もせず、田畑はそのままにしていた。「除染さえできれば耕作するつもりだった。放棄したわけじゃない」。小野さんは農業委員会に通知を取り消すよう求めたが、受け入れられな かった。
農地法には、災害時などは耕作放棄地扱いしないとの規定がある。農林水産省の担当者は「農業委に判断は委ねられるが、一般論として原発事故があった福島なら放射線への懸念は災害にあたるだろう」と説明する。しかし、市農業委は「高線量のホットスポット以外の地域は、放射能への懸念があっても特別扱いはしていない」との見解。一方で、伊達市では農地の除染方法を検討中としてまだ決めていない。
小野さんは「耕作すれば放射性物質が混ざり、自然になくなるのを待つしかない。セシウムは半減期が三十年もあるのに、どうすればいいのか」と力なく語る。
<原発事故による耕作規制>
農林水産省は昨年、避難区域と土壌調査で1キログラム当たり5000ベクレルを超える地域の米の作付けを制限。伊達市は対象外だが、避難区域に近い地域では米から国の暫定規制値(1キログラム当たり 500ベクレル)を超えるセシウムが検出された。規制値は1キログラム当たり 100ベクレルに引き下げられる見込みで、農水省は今年も作付け制限を検討。
除染方法は、表土を地中深くに埋めるなど農水省がいくつか案を示しているが、最終的には自治体が方法を決めることになっている。
----以上、東京新聞より---------
農家を保護するはずの農業委員会が、こうした「指導」を行うことは、農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話しです。
先日、京都大学農学部の食料・環境経済学科(かっての農林経済学科)の農学原論講座や経営学講座有志主催の「福島第一原発事故と農業」というシンポジウムに、私も出席しましたが、「今回の福島の放射能の汚染はたいしたものではない」「そもそも、農業経営学や農学原論などの文化系の学問をやっている者には、放射能のことなんか解るはずないから、基準値がどうこうという話題は本日の討議対象から除外します」
・・・などといった、驚くべき発言が、会議の冒頭、司会者の原論講座准教諭の口から、堂々と、飛び出す始末!!農学研究者として失格だなぁ・・と、同大学(かっての同農林経済学科農学原論講座)出身の私は、つくづく情けな く、また恥ずかしく思いました。
まさに、『農学栄えて農業滅ぶ』を、地で行くような、こうしたありさま・・・原子力ムラの体質は、原発関連集団だけでなく、農業関連の生産者・農協や農業委員会など各種農業団体・農学者からなる「農業関連ムラ」にも、今回の原発事故の起こるずっと以前からも、広範に根深く巣くっています。
汚染は、また、福島県外にも、全国的規模で拡散するきざしが鮮明になりつつあります。沖縄でも、東京湾でもセシウムが拡散しています。
・・
「汚染は、また、福島県外にも、全国的規模で拡散するきざしが鮮明になりつつあります。沖縄でも、東京湾でもセシウムが拡散しています」。
その通りである。
で、どうするのか?
⇒「数値に翻弄される社会」につづく。
・・・
原発を問う民衆法廷の大阪学習会の案内
■2月12日(日)14時~エルおおさか504号室
http://l-osaka.or.jp/pages/access.html
■報告:前田朗「原発民衆法廷の今日的意義」
■主催:原発 を問う民衆法廷関西実行委員会
*原発事故で、福島の子ども たちの45%が内部被曝した。少なからぬ 人々が死に追いやられた。多くの人々 が住む家を追われた。福島の人々に降りかかった災厄はいったい誰のせいなのか。体内に入ったヨウ素、セシウム等は「無主物」?大地・ 故郷が放射能で汚染されたのは「津波」のせい? そうではない。
フクシマ事故は人災であり、犯罪だ。その責任の所在は東電、政府以外にはあり得ない。原発は、歴代の日本政府が 推進してきました。このたびの原発事故は、その結果引き起こされたものです。
民衆法廷とは、現在の裁判 所に代わって、市民の運動によって新しい法規範を確立する取り組みです。民衆法廷が出す判決(勧告)は法の正義を実現し、法規範をつくっ ていきます。 原発に関係する法律は、「原子力基本法」や「原子力損害賠償法」などがあります。残念ながら、これらの法律は 原発を推進することを前提にした法体系です。 民衆法廷は、被災者のすべての権利を実現し、原発政策そのものを問いただすため、民衆の知恵と創意で、正義の 法規範につくりかえるために行います。
原発の被害者などから申し 立て(訴え)を受けます。民衆法廷は判事団、代理人、被告で構成します。判事は、日本国憲法、各種の法律、国際法の経験を持つ者です。裁 判は、第1回の東京をスタートに、各地を巡回し 公判を開きます。原発事故と原発政策を推進した政府と電力会社の「原発犯罪」、その責任を法により明確にします。
第1回の東京公判に続い て、各地で公判を開催していき、被災者の避難の権利、損賠賠償、内部被ばく、原発の危険性など、原発の課題を検証し、実際に提訴されてい る裁判に対し、民衆法廷の判決(勧告)、検証の内容などを生か し、支援します。
*原発を問う民衆法廷実行委員会*
第1回公判のご案内
■2012年2月25日(土)午後1時30分~6時30分
(参加傍聴費 一般1000、高校生以下500円)
■定員 250席 先着順
■場所 機械振興会館 東京タワーの向かいの建物
■最寄駅 日比谷線「神谷町」、三田線「御成門」 、浅草線「大門」、JR「浜松町」
■連絡先 090-2466-5184/qqq568d9k@extra.ocn.ne.jp/045-434-4225 (tel/fax)
表面 http://wwwb.dcns.ne.jp/~yaginuma/120204omote.pdf
裏面 http://wwwb.dcns.ne.jp/~yaginuma/120204ura.pdf
東京電力は11日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部に3カ所ある温度計のうち、60度台後半で推移していた温度計が同日夕から再び上昇し始めたため、冷却水の注入量を毎時1トン増やして同14.6トンとした。同温度計は11日午後11時に74.9度を示す一方、同じ高さにある残り2カ所の温度計は35度程度で推移しているという。(時事)→12日午前10時、温度はさらに78・3度に上昇。「格納容器内からは放射性キセノンが検出されていない」「臨界していない」、と東電は言っている。→さらに温度は上昇し82度に。冷却水を毎時3トン増やし、過去最大レベルの同約18トンに。
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福島の〈農〉の再生とそれへの〈支援〉をどう考えるか
今日、都内で脱原発の集会とデモがある。
その後、私は、仲間とともに、「福島県有機農業ネットワーク」理事長の菅野正寿さんと会い、お話をきかせて頂くことになっている。その準備をしているところに、以下のようなメールが飛び込んできた。読者はどのような感想や印象を持つだろうか。非常に重要な問題を提起していると思うので、実名は伏せて、掲載しようと思う。
「福島の「〈農〉の再生」には何が必要か、それを〈支援〉するにはどうすればよいか」を考えながら、読んでいただきたい。
メールの執筆者は
・「耕作をせず、とりあえずはそれまで生えていたものもそのままにしておいたほうが、事故が収束した後に、生えているものを刈り取り、土の表面数センチをはぐことで、農地を再生させる可能性が残されるのであって、耕して放射性物質を鋤込むことをしなかったこの判断は、きわめて賢明であったといえます」
・「農家を保護するはずの農業委員会が、こうした「指導」を行うことは、農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話し」
と言う。しかし、ほんとうにそう言えるのだろうか。
一見、「正論」であるように思えるのだが、このような主張には「何か」が欠けていはいないか?
私は、このように断言することに、とてもためらいがある。まさに、今、考えている最中だ。結論を急ぎたくない。それを考えるためにも、菅野さんのお話を聞こうと考えた。
脱原発派は、福島の人々とどのようにつながり、支えようとしているのか?
どうやら〈問題〉はここに行きつくように思われる。
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●全国に広がりつつある汚染!!
福島県の伊達市で同市農業委員会が、福島原発事故によって放射能汚染されたため、耕作を見合わせている農家に対して、「農地として適切に利用されていない」として、「耕すように指導」しているという東京新聞の報道を以下にお知らせします。
「指導」を受けているのは、市内の小野寛さん(51)。事故によって田畑は3マイクロシーベルト毎時の放射線値を示すようになったそうです。そのため、 ここで耕作をしても収穫物を食べることはできないと考えて、耕作を断念。さらに被曝を避けるために、それまで植えられていた小麦なども収穫しませんでした。
これは極めて妥当な措置だったと思います。小野さんが懸念したように、放射能汚染された作物を収穫すると、放射性物質が舞い、吸い込んで内部被曝してしまう可能性が強くあります。また土いじりの仕事である農作業は他の様々な面からも、被曝の可能性が高く、汚染地帯での作業は危険性が高いために避けることがのぞましいからです。
また汚染された土地から収穫したものは、当然ながら汚染されてしまうため食べられないとの判断も妥当です。それどころか、耕作をせず、とりあえずはそれまで生えていたものもそのままにしておいたほうが、事故が収束した後に、生えているものを刈り取り、土の表面数センチをはぐことで、農地を再生させる可能性が残されるのであって、耕して放射性物質を鋤込むことをしなかったこの判断は、きわめて賢明であったといえます。
むしろ国や県、各自治体の農業対策室は、こうした判断を昨年3月の時点で示し、耕作中止を呼びかけるべきだったのであり、今回の措置は、そうした失策を振り返らないばかりか、自らの被曝を避け、田畑への放射性物質の鋤込を回避して農家に、被災農地での被曝を伴う耕作を強制するものであって、まったく間違っています。
---以下東京新聞記事より------
・耕作放棄じゃない 除染待つ間に農地利用促す通知(東京新聞 2012年2月8日)
米から国の基準を上回る放射性物質が検出された福島県伊達市で、土壌汚染や被ばくへの懸念から耕作できなかった農家に対し、市農業委員会が田畑を耕作放棄地と扱う通知を出した。「農地として適切に利用されていない」として耕すよう指導。一月中旬に通知を受けた同市の小野寛さん(51)は「耕すと放射性物質が土に混ざる」と困惑している。 (中崎裕)
各自治体の農業委員会は農地法に基づき、年に一度、耕作放棄地を調査。最初の指導通知が届いた時点で耕作放棄地扱いとなり、所有者は原則的に新たな農地取得ができなくなる。同市農業委は今回、二百件ほどの指導通知を出した。小野さんは二千平方メートルの田畑で米と小麦を栽培。主に自家用だが、一部を販売している。米は、秋から育てたライ麦を刈り倒して雑草などを抑える独自の有機栽培をしてきた。
昨年三月の原発事故で、田畑は毎時三マイクロシーベルトと高い線量が検出された。単純計算で年間二〇ミリシーベルトを超え、政府が避難を促す基準を超える値だ。「作っても食べられない」と判断し田植えをやめた。土ぼこりなどを吸って被ばくする懸念があったため、ライ麦と小麦の収穫もせず、田畑はそのままにしていた。「除染さえできれば耕作するつもりだった。放棄したわけじゃない」。小野さんは農業委員会に通知を取り消すよう求めたが、受け入れられな かった。
農地法には、災害時などは耕作放棄地扱いしないとの規定がある。農林水産省の担当者は「農業委に判断は委ねられるが、一般論として原発事故があった福島なら放射線への懸念は災害にあたるだろう」と説明する。しかし、市農業委は「高線量のホットスポット以外の地域は、放射能への懸念があっても特別扱いはしていない」との見解。一方で、伊達市では農地の除染方法を検討中としてまだ決めていない。
小野さんは「耕作すれば放射性物質が混ざり、自然になくなるのを待つしかない。セシウムは半減期が三十年もあるのに、どうすればいいのか」と力なく語る。
<原発事故による耕作規制>
農林水産省は昨年、避難区域と土壌調査で1キログラム当たり5000ベクレルを超える地域の米の作付けを制限。伊達市は対象外だが、避難区域に近い地域では米から国の暫定規制値(1キログラム当たり 500ベクレル)を超えるセシウムが検出された。規制値は1キログラム当たり 100ベクレルに引き下げられる見込みで、農水省は今年も作付け制限を検討。
除染方法は、表土を地中深くに埋めるなど農水省がいくつか案を示しているが、最終的には自治体が方法を決めることになっている。
----以上、東京新聞より---------
農家を保護するはずの農業委員会が、こうした「指導」を行うことは、農民と、その農民が生産する農産物、更にはその農民が生産する農産物を体内に摂取する私たち日本国民のいのちを軽視する、ひどい話しです。
先日、京都大学農学部の食料・環境経済学科(かっての農林経済学科)の農学原論講座や経営学講座有志主催の「福島第一原発事故と農業」というシンポジウムに、私も出席しましたが、「今回の福島の放射能の汚染はたいしたものではない」「そもそも、農業経営学や農学原論などの文化系の学問をやっている者には、放射能のことなんか解るはずないから、基準値がどうこうという話題は本日の討議対象から除外します」
・・・などといった、驚くべき発言が、会議の冒頭、司会者の原論講座准教諭の口から、堂々と、飛び出す始末!!農学研究者として失格だなぁ・・と、同大学(かっての同農林経済学科農学原論講座)出身の私は、つくづく情けな く、また恥ずかしく思いました。
まさに、『農学栄えて農業滅ぶ』を、地で行くような、こうしたありさま・・・原子力ムラの体質は、原発関連集団だけでなく、農業関連の生産者・農協や農業委員会など各種農業団体・農学者からなる「農業関連ムラ」にも、今回の原発事故の起こるずっと以前からも、広範に根深く巣くっています。
汚染は、また、福島県外にも、全国的規模で拡散するきざしが鮮明になりつつあります。沖縄でも、東京湾でもセシウムが拡散しています。
・・
「汚染は、また、福島県外にも、全国的規模で拡散するきざしが鮮明になりつつあります。沖縄でも、東京湾でもセシウムが拡散しています」。
その通りである。
で、どうするのか?
⇒「数値に翻弄される社会」につづく。
・・・
原発を問う民衆法廷の大阪学習会の案内
■2月12日(日)14時~エルおおさか504号室
http://l-osaka.or.jp/pages/access.html
■報告:前田朗「原発民衆法廷の今日的意義」
■主催:原発 を問う民衆法廷関西実行委員会
*原発事故で、福島の子ども たちの45%が内部被曝した。少なからぬ 人々が死に追いやられた。多くの人々 が住む家を追われた。福島の人々に降りかかった災厄はいったい誰のせいなのか。体内に入ったヨウ素、セシウム等は「無主物」?大地・ 故郷が放射能で汚染されたのは「津波」のせい? そうではない。
フクシマ事故は人災であり、犯罪だ。その責任の所在は東電、政府以外にはあり得ない。原発は、歴代の日本政府が 推進してきました。このたびの原発事故は、その結果引き起こされたものです。
民衆法廷とは、現在の裁判 所に代わって、市民の運動によって新しい法規範を確立する取り組みです。民衆法廷が出す判決(勧告)は法の正義を実現し、法規範をつくっ ていきます。 原発に関係する法律は、「原子力基本法」や「原子力損害賠償法」などがあります。残念ながら、これらの法律は 原発を推進することを前提にした法体系です。 民衆法廷は、被災者のすべての権利を実現し、原発政策そのものを問いただすため、民衆の知恵と創意で、正義の 法規範につくりかえるために行います。
原発の被害者などから申し 立て(訴え)を受けます。民衆法廷は判事団、代理人、被告で構成します。判事は、日本国憲法、各種の法律、国際法の経験を持つ者です。裁 判は、第1回の東京をスタートに、各地を巡回し 公判を開きます。原発事故と原発政策を推進した政府と電力会社の「原発犯罪」、その責任を法により明確にします。
第1回の東京公判に続い て、各地で公判を開催していき、被災者の避難の権利、損賠賠償、内部被ばく、原発の危険性など、原発の課題を検証し、実際に提訴されてい る裁判に対し、民衆法廷の判決(勧告)、検証の内容などを生か し、支援します。
*原発を問う民衆法廷実行委員会*
第1回公判のご案内
■2012年2月25日(土)午後1時30分~6時30分
(参加傍聴費 一般1000、高校生以下500円)
■定員 250席 先着順
■場所 機械振興会館 東京タワーの向かいの建物
■最寄駅 日比谷線「神谷町」、三田線「御成門」 、浅草線「大門」、JR「浜松町」
■連絡先 090-2466-5184/qqq568d9k@extra.ocn.ne.jp/045-434-4225 (tel/fax)
表面 http://wwwb.dcns.ne.jp/~yaginuma/120204omote.pdf
裏面 http://wwwb.dcns.ne.jp/~yaginuma/120204ura.pdf
ジュマ・ネット共同代表のトム・エスキルセン、バンドルバン県で不当に退去を命じられる
●ジュマ・ネット共同代表のトム・エスキルセン、バンドルバン県で不当に退去を命じられる
今年1月2日、チッタゴン丘陵バンドルバン県を訪れていたジュマ・ネット共同代表のトム・エスキルセンが、同県の軍の諜報機関(DGFI)に不当に同県の退去を命じられました。
トムさんは地元の開発NGOの招待でプロジェクト視察のために訪問中でした。視察終了後、以前お世話になったジャーナリストや活動家の人とお茶を飲み、夕飯を食べていたところ、軍の諜報機関であるDGFIに呼び出され、尋問を受けました。
▽詳細はコチラ▽
http://www.jummanet.org/cht/news/2012/02/post-84.html
●「血と涙のナガランド」出版記念上映会
映画「稲妻の証言」-南アジアにおける戦争と女性への暴力
◆日時:2012年 2月11日(土)14:00~17:00
◆会場:明治学院大学白金校舎 本館10階大会議場
http://www.meijigakuin.ac.jp/access/
<映画の内容>
インド・パキスタン分離独立、そしてバングラデシュ独立運動。英領インドを3つに分割した2度の独立期の戦争や暴動で、女性は性暴力の被害にさらされた。そして・・・
▽つづきはコチラ▽
http://www.meijigakuin.ac.jp/~prime/index.html
今年1月2日、チッタゴン丘陵バンドルバン県を訪れていたジュマ・ネット共同代表のトム・エスキルセンが、同県の軍の諜報機関(DGFI)に不当に同県の退去を命じられました。
トムさんは地元の開発NGOの招待でプロジェクト視察のために訪問中でした。視察終了後、以前お世話になったジャーナリストや活動家の人とお茶を飲み、夕飯を食べていたところ、軍の諜報機関であるDGFIに呼び出され、尋問を受けました。
▽詳細はコチラ▽
http://www.jummanet.org/cht/news/2012/02/post-84.html
●「血と涙のナガランド」出版記念上映会
映画「稲妻の証言」-南アジアにおける戦争と女性への暴力
◆日時:2012年 2月11日(土)14:00~17:00
◆会場:明治学院大学白金校舎 本館10階大会議場
http://www.meijigakuin.ac.jp/access/
<映画の内容>
インド・パキスタン分離独立、そしてバングラデシュ独立運動。英領インドを3つに分割した2度の独立期の戦争や暴動で、女性は性暴力の被害にさらされた。そして・・・
▽つづきはコチラ▽
http://www.meijigakuin.ac.jp/~prime/index.html
2012年2月9日木曜日
福島はどこへゆくのか?
福島はどこへゆくのか?
福島県の「環境創造戦略拠点基本構想検討委員会」の初会合が昨日開かれた。
委員会の会長に、日本原子力学会会長の東大大学院教授田中知氏が選出された。そして「国際原子力機関(IAEA)など国内外の高度な研究機関」の誘致もこれから本格的に始まるようだ。
これで良いのだろうか? 「原発のない社会」をめざす福島の未来のビジョンを検討する委員会の会長の座に、原子力学会会長は適任だろうか。また、原発推進国際機関IAEAの誘致(形式的には「県の意向」を受けたものとされているが、明らかに霞が関主導の計画である)は、あくまでも「除染」技術の研究開発が主目的だと当初から言われているが、これがはたして福島の未来にふさわしいのだろうか。
「脱原発宣言」を発し、福島第一・第二の全号機の廃炉を東電に求めた福島県は、どこに向かうのか?
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える」
「「再生可能エネルギーの一大拠点化」、そのための企業・研究機関誘致についても、どのような再生可能エネルギー、企業、研究機関なのか、が問われねばならないだろう。少なくとも、現在構想され、進められているものは国と自治体の官僚機構主導のものであって、「草の根」のイニシアティブの根をはぐくむようなそれでないことは確認しておく必要があるのではないか。 県と自治体のホームページを見れば明らかなように、「復興計画」はそれぞれ何回かのヒアリングを経ながらも、「市民の声」を反映しているとは言えないのである・・・」
・・
・農地や海の浄化に研究施設
県は、東京電力福島第一原発事故による放射性物質で汚染された環境の回復に向けた環境創造戦略拠点の中核施設として、農地や海域の浄化などを研究する「県農林水産再生研究センター(仮称)」を県内に設ける。整備が決まっている「県環境創造センター(仮称)」とともに、国内外の関連機関を誘致し、拠点づくりを進める。県は拠点整備の基本方針や機能、立地を盛り込んだ基本構想を8月までに策定する。
8日に福島市で開かれた環境創造戦略拠点基本構想検討委員会の初会合で県が示した。拠点づくりは県復興計画に位置付けている。
県農林水産再生研究センターは「農林水産地の再生と安全・安心な農林水産物の生産」を基本方針とし、農地や森林の除染技術の研究・開発、農林水産物の放射性物質対策に取り組み、営農や漁業の再開につなげる。農地の場合、土壌を改良し、安全なコメ生産を目指す。
生活環境の除染などに関する県環境創造センターの概要も示された。基本方針には「環境回復から環境共生・創造の実現」を掲げ、環境放射線モニタリング機能の強化、生活環境にかかわる除染技術の研究・開発、放射性物質対策などを担う。両センターとも国内外に情報を発信し、人材を育成する。
拠点は国際原子力機関(IAEA)など国内外の高度な研究機関の参加を視野に入れ、細野豪志環境相兼原発事故担当相が示した国による除染関連の拠点整備とも連携する。
国は平成23年度第三次補正予算で、県環境創造センターの整備・研究費として80億円、農林水産関連の研究拠点調査費として1億円を予算化。県原子力災害等復興基金に交付する。
委員会は国と県、専門機関の関係者で構成する。環境回復部会、農林水産再生研究部会を設け、それぞれ県環境創造センター、県農林水産再生研究センターについて協議する。委員会と部会を月一回開き、7月までに基本構想の内容をまとめ、県に提言する。県は24年度中に設計に着手、早ければ26年度の開設を目指す。
初会合では会長に田中知日本原子力学会長、副会長に蔦谷栄一農林中金総合研究所特別理事を選んだ。環境回復部会長に渡辺明福島大理事・副学長、農林水産再生研究部会長に蔦谷氏を選出した。
【環境創造戦略拠点の中核施設】
▼県農林水産再生研究センター(仮称)
・汚染された県土と海域を浄化し、農林水産業の復興を目指す。農地や森林の除染技術の研究・開発、農林水産物の放射性物質対策、実証試験などに取り組む。
▼県環境創造センター(仮称)
・放射能に汚染された生活環境を回復し、安心して暮らせる地域を創造する。環境放射線モニタリングの強化、除染技術の研究・開発、除染や放射線に関する情報発信に取り組む。
※両センターを核に国内外から研究・開発機関を集積し、研究拠点として整備する。(福島民報)
・・
・福島第2、震災後初公開 1、2、4号機の復旧作業続く
東京電力は8日、東日本大震災により停止中の福島第2原発(福島県富岡、楢葉町)を、震災後初めて公開した。同日の県の立ち入り調査に合わせて行った。1~4号機のうち3号機を除く3基が津波で原子炉冷却機能を一時失い、現在も復旧作業が続いている。 県の古市正二生活環境部次長らが、原子炉建屋への浸水抑止を目的に震災後に設けられた高さ4メートルの仮設堤防や、高温の原子炉冷却水を冷ます設備を視察した。
津波は海抜15メートルの高さで、海抜12メートルの原子炉建屋とタービン建屋に押し寄せた。建屋は鉄筋コンクリートで大きな被害はなく、被災設備も大半が撤去済みだったが、熱交換器建屋にはたわんだシャッターが残り、津波の威力をうかがわせた。
震災当時は4基とも運転中で、津波を受けて自動停止。震災4日後の昨年3月15日に冷温停止し、放射能漏れはなかった。ただ、海水ポンプが波にのまれて1、2、4号機の冷却機能が一時喪失し、原子炉格納容器の底部が高温状態になった。 古市次長は視察後、「津波や電源喪失への備えはなされている」と語った。原発の増田尚宏所長は「冷却機能の喪失で心配を掛けた。次の津波が来ても確実に冷温停止できるよう務める」と述べた。
東電は1月、同原発の復旧計画を国に提出した。県は福島第1原発(双葉、大熊町)の1~6号機を含む県内10基全ての廃炉を求めている。(河北新報)
・・・
・規制先から報酬 保安院関連の12委員
経済産業省原子力安全・保安院は9日、保安院の審議会などの委員の中に、規制を受ける企業や組織からお金を受け取って活動し、公正性を疑われる可能性がある委員が12人いたと発表した。保安院は「活動内容と、審議する議題には関連が無いことを確認したので問題ない」としている。
こうした例は「利益相反」と呼ばれる。現在、原子力安全に関わる審議会などに委員256人がいるが、過去3年間に原子力関連企業などの依頼で12人が無報酬で、12人が報酬を受けて講演や研究をした、と就任前に自己申告した。
保安院は2009年、「中立性を確保するため」、自己申告制度をつくったが、申告をもとに就任を断った例はない。「問題ない」と判断した委員の詳しい情報も公表していない。(朝日)
【注目記事】
琵琶湖底で異変! 京都、福井の原発銀座を大地震が襲う?
http://d.hatena.ne.jp/byebyegenpatsukyoto/20120209/1328759186
琵琶湖の湖底で不気味な現象が発生している。7日の現代ビジネスが報じた。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターによると、北部の湖底で昨年末から気泡や温水の噴出がかつてない規模で活発化しているという。
■気泡、熱水の噴出の原因は地殻変動
この現象を観察したのは、同センターが湖内の調査に使用している探査ロボット「淡探」。湖底から泥を噴き上げる現象が、北部湖底の広範囲で見られている。20年以上にわたって琵琶湖を観察してきた研究員も、始めて見る現象と語る。昨年来の地殻変動により、湖底の断層に小さな亀裂が入り、湖水がマグマに触れることで沸騰しているのでは、との見方もある。
■大地震で北上してきた琵琶湖
日本列島には、新潟から神戸まで伸びる線上のひずみがある。これまで何度も大きな地震を発生させており、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震も、この線上を震源とする。琵琶湖はもともと三重県伊賀上野近辺にあった。大地震のたびに崩壊した湖岸を飲み込んで北上。現在の位置にたどり着いた。
最近のものでは、1662年(寛文2年)、京都、滋賀県、福井県南西部に甚大な被害をもたらした寛文地震が知られる。この地震により滋賀県で580人、京都で200人あまりが死亡。京都では御所の壁や二条城の石垣が被害を受け、五条大橋が落橋した。
■原発銀座にも大被害
寛文地震では、現在14基の原子力発電所が並ぶ福井県南西部も大きな被害を受けた。美浜町の海岸が7kmにわたって約3mも隆起したことがわかっている。この一帯には、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉「もんじゅ」などもあり、福島第1原発のような事故が発生すれば、さらに激甚な放射能被害が生じる可能性が高い。京都では、昨年1月から劇的に地震が減少した、という報告もある。
大地震発生の前には、スロースリップ現象が発生することが多い。これにより一時的に小さな引っかかりが解消されるため、小規模の地震は激減する。残念ながら、地震について警戒すべきは東日本、東南海などだけではない。日本中が地震とそれによる原発被害について、備えを持つべき、と言えるようだ。
【週刊現代】
これは何の予兆なのか 琵琶湖・富士山・桜島に不気味な異変が起きている
・米、34年ぶり原発建設を認可=スリーマイル島事故後初
【ワシントン時事】 米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社が開発した原子炉を採用した米南部ジョージア州の原子炉建設計画を認可した。建設認可は1978年以来、約34年ぶり。79年のスリーマイル島原発事故以降、凍結してきた原発の新規建設の再開に踏み切った形だ。原発輸出の拡大を目指す日本勢にとり、大きな弾みとなる。
一方、東京電力福島第1原発事故を受けて、世界的に原発見直し機運が高まる中、エネルギー自給の強化を重視した米国の今回の選択は、脱原発の議論に一石を投じそうだ。
今回、建設が認可されたのは米電力大手サザンによるジョージア州での原子炉新設計画。東芝子会社の米ウェスチングハウス(WH)が開発した新型の加圧水型原子炉(PWR)「AP1000」2基が採用されており、NRCは同原子炉の設計については既に昨年末に認可していた。NRCは9日、運転も併せて認可しており、2016年にも稼働開始の見通し。
福島県の「環境創造戦略拠点基本構想検討委員会」の初会合が昨日開かれた。
委員会の会長に、日本原子力学会会長の東大大学院教授田中知氏が選出された。そして「国際原子力機関(IAEA)など国内外の高度な研究機関」の誘致もこれから本格的に始まるようだ。
これで良いのだろうか? 「原発のない社会」をめざす福島の未来のビジョンを検討する委員会の会長の座に、原子力学会会長は適任だろうか。また、原発推進国際機関IAEAの誘致(形式的には「県の意向」を受けたものとされているが、明らかに霞が関主導の計画である)は、あくまでも「除染」技術の研究開発が主目的だと当初から言われているが、これがはたして福島の未来にふさわしいのだろうか。
「脱原発宣言」を発し、福島第一・第二の全号機の廃炉を東電に求めた福島県は、どこに向かうのか?
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える」
「「再生可能エネルギーの一大拠点化」、そのための企業・研究機関誘致についても、どのような再生可能エネルギー、企業、研究機関なのか、が問われねばならないだろう。少なくとも、現在構想され、進められているものは国と自治体の官僚機構主導のものであって、「草の根」のイニシアティブの根をはぐくむようなそれでないことは確認しておく必要があるのではないか。 県と自治体のホームページを見れば明らかなように、「復興計画」はそれぞれ何回かのヒアリングを経ながらも、「市民の声」を反映しているとは言えないのである・・・」
・・
・農地や海の浄化に研究施設
県は、東京電力福島第一原発事故による放射性物質で汚染された環境の回復に向けた環境創造戦略拠点の中核施設として、農地や海域の浄化などを研究する「県農林水産再生研究センター(仮称)」を県内に設ける。整備が決まっている「県環境創造センター(仮称)」とともに、国内外の関連機関を誘致し、拠点づくりを進める。県は拠点整備の基本方針や機能、立地を盛り込んだ基本構想を8月までに策定する。
8日に福島市で開かれた環境創造戦略拠点基本構想検討委員会の初会合で県が示した。拠点づくりは県復興計画に位置付けている。
県農林水産再生研究センターは「農林水産地の再生と安全・安心な農林水産物の生産」を基本方針とし、農地や森林の除染技術の研究・開発、農林水産物の放射性物質対策に取り組み、営農や漁業の再開につなげる。農地の場合、土壌を改良し、安全なコメ生産を目指す。
生活環境の除染などに関する県環境創造センターの概要も示された。基本方針には「環境回復から環境共生・創造の実現」を掲げ、環境放射線モニタリング機能の強化、生活環境にかかわる除染技術の研究・開発、放射性物質対策などを担う。両センターとも国内外に情報を発信し、人材を育成する。
拠点は国際原子力機関(IAEA)など国内外の高度な研究機関の参加を視野に入れ、細野豪志環境相兼原発事故担当相が示した国による除染関連の拠点整備とも連携する。
国は平成23年度第三次補正予算で、県環境創造センターの整備・研究費として80億円、農林水産関連の研究拠点調査費として1億円を予算化。県原子力災害等復興基金に交付する。
委員会は国と県、専門機関の関係者で構成する。環境回復部会、農林水産再生研究部会を設け、それぞれ県環境創造センター、県農林水産再生研究センターについて協議する。委員会と部会を月一回開き、7月までに基本構想の内容をまとめ、県に提言する。県は24年度中に設計に着手、早ければ26年度の開設を目指す。
初会合では会長に田中知日本原子力学会長、副会長に蔦谷栄一農林中金総合研究所特別理事を選んだ。環境回復部会長に渡辺明福島大理事・副学長、農林水産再生研究部会長に蔦谷氏を選出した。
【環境創造戦略拠点の中核施設】
▼県農林水産再生研究センター(仮称)
・汚染された県土と海域を浄化し、農林水産業の復興を目指す。農地や森林の除染技術の研究・開発、農林水産物の放射性物質対策、実証試験などに取り組む。
▼県環境創造センター(仮称)
・放射能に汚染された生活環境を回復し、安心して暮らせる地域を創造する。環境放射線モニタリングの強化、除染技術の研究・開発、除染や放射線に関する情報発信に取り組む。
※両センターを核に国内外から研究・開発機関を集積し、研究拠点として整備する。(福島民報)
・・
・福島第2、震災後初公開 1、2、4号機の復旧作業続く
東京電力は8日、東日本大震災により停止中の福島第2原発(福島県富岡、楢葉町)を、震災後初めて公開した。同日の県の立ち入り調査に合わせて行った。1~4号機のうち3号機を除く3基が津波で原子炉冷却機能を一時失い、現在も復旧作業が続いている。 県の古市正二生活環境部次長らが、原子炉建屋への浸水抑止を目的に震災後に設けられた高さ4メートルの仮設堤防や、高温の原子炉冷却水を冷ます設備を視察した。
津波は海抜15メートルの高さで、海抜12メートルの原子炉建屋とタービン建屋に押し寄せた。建屋は鉄筋コンクリートで大きな被害はなく、被災設備も大半が撤去済みだったが、熱交換器建屋にはたわんだシャッターが残り、津波の威力をうかがわせた。
震災当時は4基とも運転中で、津波を受けて自動停止。震災4日後の昨年3月15日に冷温停止し、放射能漏れはなかった。ただ、海水ポンプが波にのまれて1、2、4号機の冷却機能が一時喪失し、原子炉格納容器の底部が高温状態になった。 古市次長は視察後、「津波や電源喪失への備えはなされている」と語った。原発の増田尚宏所長は「冷却機能の喪失で心配を掛けた。次の津波が来ても確実に冷温停止できるよう務める」と述べた。
東電は1月、同原発の復旧計画を国に提出した。県は福島第1原発(双葉、大熊町)の1~6号機を含む県内10基全ての廃炉を求めている。(河北新報)
・・・
・規制先から報酬 保安院関連の12委員
経済産業省原子力安全・保安院は9日、保安院の審議会などの委員の中に、規制を受ける企業や組織からお金を受け取って活動し、公正性を疑われる可能性がある委員が12人いたと発表した。保安院は「活動内容と、審議する議題には関連が無いことを確認したので問題ない」としている。
こうした例は「利益相反」と呼ばれる。現在、原子力安全に関わる審議会などに委員256人がいるが、過去3年間に原子力関連企業などの依頼で12人が無報酬で、12人が報酬を受けて講演や研究をした、と就任前に自己申告した。
保安院は2009年、「中立性を確保するため」、自己申告制度をつくったが、申告をもとに就任を断った例はない。「問題ない」と判断した委員の詳しい情報も公表していない。(朝日)
【注目記事】
琵琶湖底で異変! 京都、福井の原発銀座を大地震が襲う?
http://d.hatena.ne.jp/byebyegenpatsukyoto/20120209/1328759186
琵琶湖の湖底で不気味な現象が発生している。7日の現代ビジネスが報じた。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターによると、北部の湖底で昨年末から気泡や温水の噴出がかつてない規模で活発化しているという。
■気泡、熱水の噴出の原因は地殻変動
この現象を観察したのは、同センターが湖内の調査に使用している探査ロボット「淡探」。湖底から泥を噴き上げる現象が、北部湖底の広範囲で見られている。20年以上にわたって琵琶湖を観察してきた研究員も、始めて見る現象と語る。昨年来の地殻変動により、湖底の断層に小さな亀裂が入り、湖水がマグマに触れることで沸騰しているのでは、との見方もある。
■大地震で北上してきた琵琶湖
日本列島には、新潟から神戸まで伸びる線上のひずみがある。これまで何度も大きな地震を発生させており、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震も、この線上を震源とする。琵琶湖はもともと三重県伊賀上野近辺にあった。大地震のたびに崩壊した湖岸を飲み込んで北上。現在の位置にたどり着いた。
最近のものでは、1662年(寛文2年)、京都、滋賀県、福井県南西部に甚大な被害をもたらした寛文地震が知られる。この地震により滋賀県で580人、京都で200人あまりが死亡。京都では御所の壁や二条城の石垣が被害を受け、五条大橋が落橋した。
■原発銀座にも大被害
寛文地震では、現在14基の原子力発電所が並ぶ福井県南西部も大きな被害を受けた。美浜町の海岸が7kmにわたって約3mも隆起したことがわかっている。この一帯には、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉「もんじゅ」などもあり、福島第1原発のような事故が発生すれば、さらに激甚な放射能被害が生じる可能性が高い。京都では、昨年1月から劇的に地震が減少した、という報告もある。
大地震発生の前には、スロースリップ現象が発生することが多い。これにより一時的に小さな引っかかりが解消されるため、小規模の地震は激減する。残念ながら、地震について警戒すべきは東日本、東南海などだけではない。日本中が地震とそれによる原発被害について、備えを持つべき、と言えるようだ。
【週刊現代】
これは何の予兆なのか 琵琶湖・富士山・桜島に不気味な異変が起きている
・米、34年ぶり原発建設を認可=スリーマイル島事故後初
【ワシントン時事】 米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社が開発した原子炉を採用した米南部ジョージア州の原子炉建設計画を認可した。建設認可は1978年以来、約34年ぶり。79年のスリーマイル島原発事故以降、凍結してきた原発の新規建設の再開に踏み切った形だ。原発輸出の拡大を目指す日本勢にとり、大きな弾みとなる。
一方、東京電力福島第1原発事故を受けて、世界的に原発見直し機運が高まる中、エネルギー自給の強化を重視した米国の今回の選択は、脱原発の議論に一石を投じそうだ。
今回、建設が認可されたのは米電力大手サザンによるジョージア州での原子炉新設計画。東芝子会社の米ウェスチングハウス(WH)が開発した新型の加圧水型原子炉(PWR)「AP1000」2基が採用されており、NRCは同原子炉の設計については既に昨年末に認可していた。NRCは9日、運転も併せて認可しており、2016年にも稼働開始の見通し。
2012年2月8日水曜日
Posseが面白い
Posseが面白い
Posseをご存知だろうか。この団体が発行する雑誌、「新世代のための雇用問題総合誌」、"Posse".
昨年12月に発行された最新号が面白い。「特集「ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?」」、「震災復興で漁業者にはどのような雇用対策が必要なのか 「漁業再建と被災者雇用をどう考えるか」」に注目した。
ぜひ一読を勧めたい。
ついでにもう一つ。
「「原子力村」の犯罪を告訴する」。「風のたよりーいわき市議会議員 佐藤かずよし」より。
Posseをご存知だろうか。この団体が発行する雑誌、「新世代のための雇用問題総合誌」、"Posse".
昨年12月に発行された最新号が面白い。「特集「ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?」」、「震災復興で漁業者にはどのような雇用対策が必要なのか 「漁業再建と被災者雇用をどう考えるか」」に注目した。
ぜひ一読を勧めたい。
ついでにもう一つ。
「「原子力村」の犯罪を告訴する」。「風のたよりーいわき市議会議員 佐藤かずよし」より。
ペルーの自発的孤立を選んだ先住民族に関する報道
●マヌ国立公園において自律的に生きる先住民族の目撃
AIDESEPのサイトでは、マシュコピロ民族と思われる先住民族のグループの目撃について、違法な伐採業者の存在によって伝来のテリトリーが脅かされていることの証左であろうと指摘している。またこの地域の空域における交通の増加、石油開発などの問題があり、自律して生きている仲間たちは、彼らの邪魔をしないよう配慮を求めているのであろう、と伝えている。
● 日本語ではAFPによっても伝えられており、サバイバル・インターナショナルの情報をベースとして、記事の最後は次のように結んでいる。 「 最近の数か月間、マシコ・ピロ人を目撃したとの情報が急増していることから、同NGOは、国立公園内外での不法伐採や近郊で進むガス・石油開発に関連したヘリコプターの低空飛行などで、マシコ・ピロ人が森林での居住地を追われているのではないかと懸念している。」
⇒「アマゾン森林地帯に未接触部族、ペルー政府が近づかないよう勧告」
●次はサバイバル・インターナショナルのサイト
http://www.uncontactedtribes.org/news/8055
●そして朝日新聞。
一体何を伝えたくて、この記事を掲載しているのであろうか???
・「弓矢で襲われる可能性も」ペルー先住民への接近警告
http://www.asahi.com/international/update/0207/TKY201202070132.html
ペルー南東部にあるアマゾンのジャングルで、現代文明と接触せずに暮らす先住民マシュコ・ピロ族の写真が公開された。一般の人が近づけば、「ウイルスを(先住民の社会に)持ち込んだり、弓矢で襲われたりする可能性もある」としてペルー当局が注意を促している。
写真は1月末、NGO「サバイバル・インターナショナル」がインターネット上で公表した。ブラジルとの国境近くで考古学者らが昨年、撮影したものだとしている。AFP通信などによると、昨秋には、部族に近づいたペルーの森
林警備隊が弓矢で襲われて負傷。食べ物などを届けていた地元住民が殺された例もあるという。
ペルー当局によると、こうした先住民は、ペルーのアマゾン地域に15部族いるという。同NGOは世界中には100部族いる、としている。(サンパウロ=平山亜理)
///
●マヌ国立公園で違法伐採業者の捜索と逮捕
サバイバル・インターナショナルのニュースによると、先日の自発的孤立状態にある先住民族の目撃情報以後、地域の違法伐採業者を捜索、逮捕したとのこと。
Madereros ilegales arrestados tras la publicacio'n de fotos de indi'genas aislados
http://www.survival.es/noticias/8079
開発と権利のための行動センター
青西
AIDESEPのサイトでは、マシュコピロ民族と思われる先住民族のグループの目撃について、違法な伐採業者の存在によって伝来のテリトリーが脅かされていることの証左であろうと指摘している。またこの地域の空域における交通の増加、石油開発などの問題があり、自律して生きている仲間たちは、彼らの邪魔をしないよう配慮を求めているのであろう、と伝えている。
● 日本語ではAFPによっても伝えられており、サバイバル・インターナショナルの情報をベースとして、記事の最後は次のように結んでいる。 「 最近の数か月間、マシコ・ピロ人を目撃したとの情報が急増していることから、同NGOは、国立公園内外での不法伐採や近郊で進むガス・石油開発に関連したヘリコプターの低空飛行などで、マシコ・ピロ人が森林での居住地を追われているのではないかと懸念している。」
⇒「アマゾン森林地帯に未接触部族、ペルー政府が近づかないよう勧告」
●次はサバイバル・インターナショナルのサイト
http://www.uncontactedtribes.org/news/8055
●そして朝日新聞。
一体何を伝えたくて、この記事を掲載しているのであろうか???
・「弓矢で襲われる可能性も」ペルー先住民への接近警告
http://www.asahi.com/international/update/0207/TKY201202070132.html
ペルー南東部にあるアマゾンのジャングルで、現代文明と接触せずに暮らす先住民マシュコ・ピロ族の写真が公開された。一般の人が近づけば、「ウイルスを(先住民の社会に)持ち込んだり、弓矢で襲われたりする可能性もある」としてペルー当局が注意を促している。
写真は1月末、NGO「サバイバル・インターナショナル」がインターネット上で公表した。ブラジルとの国境近くで考古学者らが昨年、撮影したものだとしている。AFP通信などによると、昨秋には、部族に近づいたペルーの森
林警備隊が弓矢で襲われて負傷。食べ物などを届けていた地元住民が殺された例もあるという。
ペルー当局によると、こうした先住民は、ペルーのアマゾン地域に15部族いるという。同NGOは世界中には100部族いる、としている。(サンパウロ=平山亜理)
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●マヌ国立公園で違法伐採業者の捜索と逮捕
サバイバル・インターナショナルのニュースによると、先日の自発的孤立状態にある先住民族の目撃情報以後、地域の違法伐採業者を捜索、逮捕したとのこと。
Madereros ilegales arrestados tras la publicacio'n de fotos de indi'genas aislados
http://www.survival.es/noticias/8079
開発と権利のための行動センター
青西
2012年2月7日火曜日
原発再稼働における「政治主導」とは何か
原発再稼働における「政治主導」とは何か
1
書こう書こうと思いつつ、時間がなくてこれまでずっと書けなかったことがある。それは民主党がよく言う、国の政策決定における「政治主導」とは何か、という問題である。
野田政権は、たとえば停止中原発の再稼働について、最終的に「政治主導」で判断する、と言ってきた。「官僚主導」なのではなく、「政治主導」なのだと。
ここで言う「政治主導」とは、大飯原発の再稼働をめぐる下の福井新聞の記事にあるとおり、原子力安全委の「評価」を経て、「野田佳彦首相ら4閣僚」(官房長官、経済産業相、原発相の関係3閣僚)が協議し、最終判断するという意味だ。
しかし、「専門家」の「科学的知見」や「提言」なるものが再稼働を「可」としたときに、それに対して「専門的知識」を持たない政治家が「政治判断」によって「不可」とするのは、「政治の横暴」もはなはだしい話になりはしないか。
あるいは逆に、「専門家」や「科学者」が「不可」としたものを、政治が「可」とするなどというのは、それこそ「独裁政治」になるのではないか。
もちろん、私(たち)が問題にしているのは、「専門家」と言う場合の、その固有名である。原発推進に立場に立つ「原子力ムラ」の面々、「政治的な科学的知見」を述べる「専門家」なんていらない。 また、原発(再稼働)問題で言えば、「専門家」(科学)も政治(与党)も「不可」を下すことである。
ここで私が言いたいのは、民主党の「政治主導」なるものが、原理的には、「政策の意思決定における「市民」主権」という観点と相いれない、「横暴」や「独裁」的手法にいつでも転化する(すでにそうなっている?)、とても危ういもの、ということである。
ポスト「3・11」状況における原発問題に関する「政治主導」とは、〈それが何年先になるのであれ「脱原発」をまず「政治」が確定することから始まる〉、というのが私(たち)の立場であるが、政府、また党として「で、原発をどうするのか?」の決定を先送りにしたまま、再稼働問題を持ち出す官僚政治に民主党が制動をかけられないことが問題なのである。
2
私(たち)が、唯一、「政治主導」に求めているのは、国と地方の政策決定に対する「市民」の直接的関与が可能となるよう、「官僚専制」「官僚特権」の法的根拠を解体し、政策決定の権限/権原を「市民」に開放し、そうすることによって国と地方の「官僚専制」の「鎖」から「市民」を解放することである。
その意味において、野田政権を通じてほぼ完全に「自民党化」してしまった民主党の存在意義は、私(たち)にとっては無くなってしまったと言える。
ここを理解しないと、政治的傾向としては「日本版新保守主義・ポピュリズム」とも言うべき、「大阪の二重行政の解体→統治機構の改革」を掲げる「橋下イズム」が、なぜこれほどまでに大阪の無党派、とりわけ若い世代に支持されるのかも理解できないだろう。国と地方の「官僚・既成政党・労組の既得権政治」に対する失望と怒り。これが「橋下フィーバー」の原動力なのだと思う。
「国と地方の政策決定に対する「市民」の直接的関与が可能となるよう、「官僚専制」「官僚特権」の法的根拠を解体し、政策決定の権限/権原を「市民」に開放し、そうすることによって国と地方の「官僚専制」の「鎖」から「市民」を解放すること」は、この国において果たして可能だろうか? 安保も原発も、公務員や医療制度改革も消費税・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題も、すべてここに行きつくことになる。
停止中原発の再稼働問題を通じ、それぞれの裁判闘争や市民運動にとって、今年は間違いなくそのことが問われる年になる。 「政治主導」の名において、これから野田民主党が何をするか/しないか、しっかり見極めたい。
3
「原発の国民投票」をめざすある弁護士の人の主張を引用しながら、「原発再稼働の法的根拠とは何か」を考えてほしいと書いた。答えは、読者の多くが知る通り、「法的根拠」など存在しない。
国は自治体の判断に委ね、最終的には自治体は事業主体の決定に委ねる(⇒青森県を見よ)。この形式によって、いずれも政治・行政責任を取らず、「事故」が起こったときには、その事業主体が「無主物」の放射性物質による汚染・被ばくには責任を取らない。この国・自治体・電力企業の総無責任体系が、「国策・民営」の日本の「原子力行政」を支えてきた法の実態であり、現実なのである。
「脱原発法学」は、この実態、現実を変えることを志向すべきであるし、せざるをえない。弁護士や法の研究者は、ぜひこのことを「法の問題」として深刻かつ真剣に考えてほしい。この「総無責任体系」を変えることができなければ、国策や行政の不作為・過誤・失政に対する責任を問うことはおろか、再稼働を阻むことさえできないのである。
ただし。私は引用した弁護士のように「原発の運転が再開されれば、裁判闘争も市民運動も、非常に大きな困難に見舞われることは、火を見るより明らかだと思います」とは思わない。
もちろん、再稼働には反対である。しかし、再稼働によって裁判闘争や市民運動が「大きな困難に見舞われる」のではない。 「火を見るより明らか」なことは、
①「「国策・民営」の日本の「原子力行政」を支える法の実態、現実」を変える展望を切り開くこと、このことをこれまでの原発訴訟や脱原発運動が「戦略化」してこなかったこと、だからこそ、
②ポスト「3・11」状況における脱原発運動にこのことが問われている、ということである。
4
大飯原発の再稼働について
福井新聞の記事。
・・
・大飯原発再稼働の時期予測できず 官房長官「総合的政治判断に」
藤村修官房長官は7日午前の記者会見で、再稼働の前提となるストレステスト(安全評価)の評価手続きが進んでいる福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働時期について「経済産業省原子力安全・保安院でまだ結論を出しておらず、その後に原子力安全委員会でもチェックするため予測できない。具体的な目標を定めて調整することはない」と述べた。
大飯3、4号機の再稼働をめぐり保安院は、関電が提出した安全評価の1次評価に対し「妥当」との審査書案を提示。国際原子力機関(IAEA)の調査団により審査方法の検証も受けた。保安院は近く正式な審査書をまとめ、原子力安全委員会の二重チェックを受ける。
再稼働には地元の同意が必要で(⇒何度か触れてきたが、「地元合意」の法的根拠はない)、最終的には野田佳彦首相ら4閣僚が再稼働を判断することになる。藤村長官は「総合的な政治判断になる」と強調した。
一方、枝野幸男経済産業相も会見で、再稼働の判断時期について「いつまでと期限を切ってやるつもりは全くない」と話した。 また、細野豪志原発事故担当相は会見で「原子力安全・保安院が(再稼働の対応を)やっている。担当していない者が感想めいたことを言うのは望ましくない」(?)と述べ、保安院の判断を見守る姿勢を示した。
・・
私が問題にしているのは、「総合的な政治判断」「いつまでと期限を切ってやるつもりは全くない」「担当していない者が感想めいたことを言うのは望ましくない」といった表現に読み取れる、これまで「官僚主導から政治主導へ」を語ってきた民主党・野田政権の「構え」である。自分は決断せず/責任を取らず、他者に決断を丸投げし/責任を転嫁し、それがまるで他者のためであるかのように振る舞う、しかし実際には「筋書き」は最初から決まっていた・・・という。
それがいかに他者(この場合には、大震災と原発災害の被災者・被害者、福井や関西圏の人々、そして「私たち」であるのだが)を翻弄/愚弄したことなのかに、彼/彼女らは気づかない。
なぜ、日本の「政治」はこうなってしまうのか? これは民主党をこき下ろすだけではどうしようもない、私たち自身が生きてきた「戦後政治」と「戦後日本」の「主体性論」に関わる〈問題〉なのかもしれない。
再稼働の時期については、 「〈脱原発法学〉のために」の中でこのように書いた。
「今、〈私たち〉は国や東電その他の電力会社と、今夏以降の停止中原発の再稼働問題をめぐり「こう着状態」というか「我慢合戦」状況にある。「豪雪・厳冬のエネルギー不足」キャンペンーンに足をすくわれ、私たちが「根気負け」をすれば、停止中原発の再稼働がいつでもできるように、「ストレステスト」→「安全性に問題ない」→再稼働に向けた行政的手続きを、国と電力企業は着実に進めている」。
別の個所では、「おそらくは福島第一原発の「緊急事態」の「解除宣言」以降」とも書いた。
野田政権としては、できうれば、「3・11一周年」から4月、安全・保安院に「間借り」する「原子力規制庁」が発足する直後くらいには「解除宣言」を出し、政府「事故調」の最終報告と「新エネルギー基本計画」が策定される夏頃を目安に、「野田降ろし」→解散→選挙をめぐる政局の動向、世論と脱原発運動の広がりを値踏みしつつ(=「総合的な政治判断」)、再稼働第一弾に踏み切りたい、という思惑を持っているのではないか。
「甘い!」という批判もあるかもしれないが、これが現時点での私の予測である。
・「福井県、再稼働認めぬ姿勢 大飯3、4号耐性評価」(福井新聞、1/19)
・・・
・温度再上昇の2号機原子炉、注水量増やす
東京電力福島第一原子力発電所2号機の原子炉圧力容器底部の温度が再上昇している問題で、東電は7日、原子炉への注水量を毎時約3トン増やし、昨年12月の「冷温停止状態」宣言後では最大となる13・5トンに変更したと発表した。
同日午前4時半頃に注水を増やした後、原子炉の温度は午前5時が72・2度、午前10時は69度で、横ばい状態が続いている。
2号機では、1月下旬以降、冷却水を移送する仮設配管を交換し、2系統ある原子炉注水配管の注水量が段階的に変更されたため、1月27日に45度だった原子炉の温度が70度前後まで上昇した。6日に行った原子炉内の気体分析の結果から、東電は再臨界の恐れはないとみているが、注水を増やすのに先立ち、念のため、核分裂を抑えるホウ酸約1トンを注入した。(読売)
↓
この記事を始め、2号機問題を報じるマスメディアの「報道」にはいろいろ思うところがある。しかし時間がないので、とりあえず以下のページとその前後のページを参照し、昨年11月に専門家が何を言っていたかを思い出してほしい。
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「「冷温停止」状態にある福島第一1、2、3号機で核分裂、臨界、キセノン検出?」(2011/11/2)
・原発自治体に寄付1600億円超
●電気料金制度について議論してきた経済産業省の有識者会議は、「これまでのように費用として認めるべきではない」と指摘。
●公開の義務がないため、実態がよく分からない。
●昭和40年代からこれまでの寄付金総額は、全国で最も多くの原発が立地する福井県が単独で235億円余り、青森県が設立した財団などに192億円余り、青森県東通村で180億円余りなどとなっており、総額は1640億円余り。
●寄付金を巡っては、原発推進を目的に電力会社が申し出るだけでなく、地域振興をねらう自治体側から求めるケースも。
●福井県の敦賀市。日本原子力発電や関西電力、北陸電力などの電力会社が提供した寄付金で、昭和45年以降、劇場や展示場などが入った大型施設が建設されているほか、アニメキャラクターの銅像や市のPRビデオなどの作成、植樹などの事業も。
・福井県敦賀市の河瀬一治市長。平成に入って電力事業者から市への寄付金が多くなっていることについて、「事業者の皆さんが敦賀の街づくりに努力していただいている表れだと思う」「市として、国策で進められてきた原子力に協力してきたし、事業者の皆さんも寄付金という形で地域をよくしようと応援してくれているので、寄付金はなくさないようにしてほしい」。今後も地域振興という位置づけで寄付金の継続を期待。
●静岡県の浜岡原発。平成8年、旧浜岡町が5号機の増設計画に同意する条件として、地域振興への「特段の協力」を求め、中部電力から25億円の寄付を受けたほか、1号機と2号機の廃炉に伴って、平成21年には、静岡県が「国からの交付金を受け取れなくなる」として、代わりに寄付を求め、16億3000万円。
・中部電力に寄付を要請した静岡県の石川嘉延前知事。当時のいきさつについて、NHKのインタビューに対し、「交付金を見込んで計画を立てて始めた工事を、途中でやめると混乱する。ほかの事業にしわ寄せがいかないよう、財源を確保する努力の一環として、中部電力に協力を求めた。寄付金をもらうことで安全の問題に手加減をしたことはない」。
「原発は、ありていに言えば迷惑施設的な要素がある。福島のような大変不幸な事故が絶対ないとは誰も保証できないなかで、寄付金などによる地域振興が、原発を引き受ける要因になっていることは事実だ」。
・今の川勝知事も、毎年、中部電力から寄付金を受け取るたびに、「心から感謝申し上げます。今後とも県政に御理解・御協力をお願いいたします」と謝辞を述べる文書を送り、寄付金で行った工事の詳しい内容を報告。
静岡県は「来年度も中部電力から5億6000万円余りの寄付金を受け取る予定だ」。
●北海道の泊原発。自治体と電力会社が原発推進と地域振興に互いに協力し合った証しとして、北海道電力から泊村に、昭和59年に4億3500万円が、平成13年には8億円。
・原発立地自治体に入った額は
●原発や関連施設のある13の県と北海道、それに30の市町村の、合わせて44の立地自治体を取材したところ、その総額は、原発の建設が始まった昭和40年代から、これまでに少なくとも3兆1120億円。
“重要な財源”
●多くの立地自治体にとって、いわゆる「原発マネー」は重要な財源で、これらが入ってくることを前提に事業を計画。
●内訳は、交付金が9150億円余り、税金が2兆330億円余り、寄付金が1640億円余り。
寄付金の比率は全体の5%余りだが、公開の義務がないため実態は不透明で、実際の金額はこれよりも多い。
また、交付金や税金は、原発が運転を開始したあと、年々減る仕組みになっているため、自治体側が、その代わりに寄付金を電力会社に求めるケースも。電力会社からの寄付金は、公共工事から学校教育や地域振興などソフトな事業まで、原発の立地自治体の裁量で幅広く使えるのが特徴。
●寄付金は、役場の庁舎や公営病院などの大規模な公共工事や、自治体が催すイベントなどの地域振興事業のほか、学生の奨学金など、教育の現場でも使われている。
●国からの交付金は原発の運転が始まると年々金額が減るほか、使いみちが平成15年まで公共施設の建設などに限られていた→このため、自治体の中には、建設した施設の維持費がかさんで、財政負担にあえぐところも→それに比べると寄付金は、原発の立地自治体にとって使い勝手のよいお金で、各自治体が寄付金を求める背景には、こうした事情もある。
寄付は震災・原発事故のあとも
電力会社から原発の立地自治体への寄付は、去年3月、東日本大震災と原発事故が起きたあとも、各地で続けられている。
●中部電力は、静岡県に対し、去年8月、4億6000万円余りを寄付。→静岡県が浜岡原発の1号機と2号機の廃炉に伴って国からの交付金を受け取れなくなった代わりに、中部電力に求めた寄付の一部で、道路の拡幅や小学校の校舎の補修などの工事の費用に。
●中国電力は松江市に対して、去年6月、3000万円を寄付。松江市は、アワビの栽培漁業の振興を目的に、平成17年以降、毎年、この寄付金を。
●日本原子力発電は、去年3月末、福井県敦賀市に対し1億8000万円余りを寄付し、敦賀市は、この寄付金を道路の整備費用に。
●また、震災への復興を目的とした寄付もあり、東北電力は、岩手・宮城の両県とともに、去年3月、福島県に対して1億円を寄付したほか、日本原子力発電は茨城県東海村に500万円を寄付。
・・・
八百長テストで大飯を通すな! 保安院前抗議アクション
~傍聴締め出し撤回と利益相反委員の解任を求めます~
<2月8日(水)>
【1】13時30分~15時30分:聴取会直前アクション
13時30分に経産省別館(保安院)前に集合
(霞ヶ関駅C2出口すぐ、経産省の日比谷公園側の建物)
・30分程度、本館(テントのある側)前と別館前に分かれてチラシ配布→別館正門前にて、アピールやコールなどのアクション(14時よりグリーンピース・ジャパンによる「市民の目」アクションも予定)
【2】18時30分~19時30分:報告&抗議アクション
経産省別館前で、傍聴者による報告も交えた抗議集会
※プラカードや鳴り物など持参歓迎です。なお、意見聴取会は15時~18時30分まで行われます。
<呼びかけ>
福島原発事故緊急会議/東電前アクション/3・11再稼働反対!全国アクション
[連絡先]ピープルズ・プラン研究所
(TEL) 03-6424-5748 (FAX) 03-6424-5749/(E-mail) contact@2011shinsai.info
【当日連絡先】090-6185-4407(杉原携帯)
1
書こう書こうと思いつつ、時間がなくてこれまでずっと書けなかったことがある。それは民主党がよく言う、国の政策決定における「政治主導」とは何か、という問題である。
野田政権は、たとえば停止中原発の再稼働について、最終的に「政治主導」で判断する、と言ってきた。「官僚主導」なのではなく、「政治主導」なのだと。
ここで言う「政治主導」とは、大飯原発の再稼働をめぐる下の福井新聞の記事にあるとおり、原子力安全委の「評価」を経て、「野田佳彦首相ら4閣僚」(官房長官、経済産業相、原発相の関係3閣僚)が協議し、最終判断するという意味だ。
しかし、「専門家」の「科学的知見」や「提言」なるものが再稼働を「可」としたときに、それに対して「専門的知識」を持たない政治家が「政治判断」によって「不可」とするのは、「政治の横暴」もはなはだしい話になりはしないか。
あるいは逆に、「専門家」や「科学者」が「不可」としたものを、政治が「可」とするなどというのは、それこそ「独裁政治」になるのではないか。
もちろん、私(たち)が問題にしているのは、「専門家」と言う場合の、その固有名である。原発推進に立場に立つ「原子力ムラ」の面々、「政治的な科学的知見」を述べる「専門家」なんていらない。 また、原発(再稼働)問題で言えば、「専門家」(科学)も政治(与党)も「不可」を下すことである。
ここで私が言いたいのは、民主党の「政治主導」なるものが、原理的には、「政策の意思決定における「市民」主権」という観点と相いれない、「横暴」や「独裁」的手法にいつでも転化する(すでにそうなっている?)、とても危ういもの、ということである。
ポスト「3・11」状況における原発問題に関する「政治主導」とは、〈それが何年先になるのであれ「脱原発」をまず「政治」が確定することから始まる〉、というのが私(たち)の立場であるが、政府、また党として「で、原発をどうするのか?」の決定を先送りにしたまま、再稼働問題を持ち出す官僚政治に民主党が制動をかけられないことが問題なのである。
2
私(たち)が、唯一、「政治主導」に求めているのは、国と地方の政策決定に対する「市民」の直接的関与が可能となるよう、「官僚専制」「官僚特権」の法的根拠を解体し、政策決定の権限/権原を「市民」に開放し、そうすることによって国と地方の「官僚専制」の「鎖」から「市民」を解放することである。
その意味において、野田政権を通じてほぼ完全に「自民党化」してしまった民主党の存在意義は、私(たち)にとっては無くなってしまったと言える。
ここを理解しないと、政治的傾向としては「日本版新保守主義・ポピュリズム」とも言うべき、「大阪の二重行政の解体→統治機構の改革」を掲げる「橋下イズム」が、なぜこれほどまでに大阪の無党派、とりわけ若い世代に支持されるのかも理解できないだろう。国と地方の「官僚・既成政党・労組の既得権政治」に対する失望と怒り。これが「橋下フィーバー」の原動力なのだと思う。
「国と地方の政策決定に対する「市民」の直接的関与が可能となるよう、「官僚専制」「官僚特権」の法的根拠を解体し、政策決定の権限/権原を「市民」に開放し、そうすることによって国と地方の「官僚専制」の「鎖」から「市民」を解放すること」は、この国において果たして可能だろうか? 安保も原発も、公務員や医療制度改革も消費税・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題も、すべてここに行きつくことになる。
停止中原発の再稼働問題を通じ、それぞれの裁判闘争や市民運動にとって、今年は間違いなくそのことが問われる年になる。 「政治主導」の名において、これから野田民主党が何をするか/しないか、しっかり見極めたい。
3
「原発の国民投票」をめざすある弁護士の人の主張を引用しながら、「原発再稼働の法的根拠とは何か」を考えてほしいと書いた。答えは、読者の多くが知る通り、「法的根拠」など存在しない。
国は自治体の判断に委ね、最終的には自治体は事業主体の決定に委ねる(⇒青森県を見よ)。この形式によって、いずれも政治・行政責任を取らず、「事故」が起こったときには、その事業主体が「無主物」の放射性物質による汚染・被ばくには責任を取らない。この国・自治体・電力企業の総無責任体系が、「国策・民営」の日本の「原子力行政」を支えてきた法の実態であり、現実なのである。
「脱原発法学」は、この実態、現実を変えることを志向すべきであるし、せざるをえない。弁護士や法の研究者は、ぜひこのことを「法の問題」として深刻かつ真剣に考えてほしい。この「総無責任体系」を変えることができなければ、国策や行政の不作為・過誤・失政に対する責任を問うことはおろか、再稼働を阻むことさえできないのである。
ただし。私は引用した弁護士のように「原発の運転が再開されれば、裁判闘争も市民運動も、非常に大きな困難に見舞われることは、火を見るより明らかだと思います」とは思わない。
もちろん、再稼働には反対である。しかし、再稼働によって裁判闘争や市民運動が「大きな困難に見舞われる」のではない。 「火を見るより明らか」なことは、
①「「国策・民営」の日本の「原子力行政」を支える法の実態、現実」を変える展望を切り開くこと、このことをこれまでの原発訴訟や脱原発運動が「戦略化」してこなかったこと、だからこそ、
②ポスト「3・11」状況における脱原発運動にこのことが問われている、ということである。
4
大飯原発の再稼働について
福井新聞の記事。
・・
・大飯原発再稼働の時期予測できず 官房長官「総合的政治判断に」
藤村修官房長官は7日午前の記者会見で、再稼働の前提となるストレステスト(安全評価)の評価手続きが進んでいる福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働時期について「経済産業省原子力安全・保安院でまだ結論を出しておらず、その後に原子力安全委員会でもチェックするため予測できない。具体的な目標を定めて調整することはない」と述べた。
大飯3、4号機の再稼働をめぐり保安院は、関電が提出した安全評価の1次評価に対し「妥当」との審査書案を提示。国際原子力機関(IAEA)の調査団により審査方法の検証も受けた。保安院は近く正式な審査書をまとめ、原子力安全委員会の二重チェックを受ける。
再稼働には地元の同意が必要で(⇒何度か触れてきたが、「地元合意」の法的根拠はない)、最終的には野田佳彦首相ら4閣僚が再稼働を判断することになる。藤村長官は「総合的な政治判断になる」と強調した。
一方、枝野幸男経済産業相も会見で、再稼働の判断時期について「いつまでと期限を切ってやるつもりは全くない」と話した。 また、細野豪志原発事故担当相は会見で「原子力安全・保安院が(再稼働の対応を)やっている。担当していない者が感想めいたことを言うのは望ましくない」(?)と述べ、保安院の判断を見守る姿勢を示した。
・・
私が問題にしているのは、「総合的な政治判断」「いつまでと期限を切ってやるつもりは全くない」「担当していない者が感想めいたことを言うのは望ましくない」といった表現に読み取れる、これまで「官僚主導から政治主導へ」を語ってきた民主党・野田政権の「構え」である。自分は決断せず/責任を取らず、他者に決断を丸投げし/責任を転嫁し、それがまるで他者のためであるかのように振る舞う、しかし実際には「筋書き」は最初から決まっていた・・・という。
それがいかに他者(この場合には、大震災と原発災害の被災者・被害者、福井や関西圏の人々、そして「私たち」であるのだが)を翻弄/愚弄したことなのかに、彼/彼女らは気づかない。
なぜ、日本の「政治」はこうなってしまうのか? これは民主党をこき下ろすだけではどうしようもない、私たち自身が生きてきた「戦後政治」と「戦後日本」の「主体性論」に関わる〈問題〉なのかもしれない。
再稼働の時期については、 「〈脱原発法学〉のために」の中でこのように書いた。
「今、〈私たち〉は国や東電その他の電力会社と、今夏以降の停止中原発の再稼働問題をめぐり「こう着状態」というか「我慢合戦」状況にある。「豪雪・厳冬のエネルギー不足」キャンペンーンに足をすくわれ、私たちが「根気負け」をすれば、停止中原発の再稼働がいつでもできるように、「ストレステスト」→「安全性に問題ない」→再稼働に向けた行政的手続きを、国と電力企業は着実に進めている」。
別の個所では、「おそらくは福島第一原発の「緊急事態」の「解除宣言」以降」とも書いた。
野田政権としては、できうれば、「3・11一周年」から4月、安全・保安院に「間借り」する「原子力規制庁」が発足する直後くらいには「解除宣言」を出し、政府「事故調」の最終報告と「新エネルギー基本計画」が策定される夏頃を目安に、「野田降ろし」→解散→選挙をめぐる政局の動向、世論と脱原発運動の広がりを値踏みしつつ(=「総合的な政治判断」)、再稼働第一弾に踏み切りたい、という思惑を持っているのではないか。
「甘い!」という批判もあるかもしれないが、これが現時点での私の予測である。
・「福井県、再稼働認めぬ姿勢 大飯3、4号耐性評価」(福井新聞、1/19)
・・・
・温度再上昇の2号機原子炉、注水量増やす
東京電力福島第一原子力発電所2号機の原子炉圧力容器底部の温度が再上昇している問題で、東電は7日、原子炉への注水量を毎時約3トン増やし、昨年12月の「冷温停止状態」宣言後では最大となる13・5トンに変更したと発表した。
同日午前4時半頃に注水を増やした後、原子炉の温度は午前5時が72・2度、午前10時は69度で、横ばい状態が続いている。
2号機では、1月下旬以降、冷却水を移送する仮設配管を交換し、2系統ある原子炉注水配管の注水量が段階的に変更されたため、1月27日に45度だった原子炉の温度が70度前後まで上昇した。6日に行った原子炉内の気体分析の結果から、東電は再臨界の恐れはないとみているが、注水を増やすのに先立ち、念のため、核分裂を抑えるホウ酸約1トンを注入した。(読売)
↓
この記事を始め、2号機問題を報じるマスメディアの「報道」にはいろいろ思うところがある。しかし時間がないので、とりあえず以下のページとその前後のページを参照し、昨年11月に専門家が何を言っていたかを思い出してほしい。
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「「冷温停止」状態にある福島第一1、2、3号機で核分裂、臨界、キセノン検出?」(2011/11/2)
・原発自治体に寄付1600億円超
●電気料金制度について議論してきた経済産業省の有識者会議は、「これまでのように費用として認めるべきではない」と指摘。
●公開の義務がないため、実態がよく分からない。
●昭和40年代からこれまでの寄付金総額は、全国で最も多くの原発が立地する福井県が単独で235億円余り、青森県が設立した財団などに192億円余り、青森県東通村で180億円余りなどとなっており、総額は1640億円余り。
●寄付金を巡っては、原発推進を目的に電力会社が申し出るだけでなく、地域振興をねらう自治体側から求めるケースも。
●福井県の敦賀市。日本原子力発電や関西電力、北陸電力などの電力会社が提供した寄付金で、昭和45年以降、劇場や展示場などが入った大型施設が建設されているほか、アニメキャラクターの銅像や市のPRビデオなどの作成、植樹などの事業も。
・福井県敦賀市の河瀬一治市長。平成に入って電力事業者から市への寄付金が多くなっていることについて、「事業者の皆さんが敦賀の街づくりに努力していただいている表れだと思う」「市として、国策で進められてきた原子力に協力してきたし、事業者の皆さんも寄付金という形で地域をよくしようと応援してくれているので、寄付金はなくさないようにしてほしい」。今後も地域振興という位置づけで寄付金の継続を期待。
●静岡県の浜岡原発。平成8年、旧浜岡町が5号機の増設計画に同意する条件として、地域振興への「特段の協力」を求め、中部電力から25億円の寄付を受けたほか、1号機と2号機の廃炉に伴って、平成21年には、静岡県が「国からの交付金を受け取れなくなる」として、代わりに寄付を求め、16億3000万円。
・中部電力に寄付を要請した静岡県の石川嘉延前知事。当時のいきさつについて、NHKのインタビューに対し、「交付金を見込んで計画を立てて始めた工事を、途中でやめると混乱する。ほかの事業にしわ寄せがいかないよう、財源を確保する努力の一環として、中部電力に協力を求めた。寄付金をもらうことで安全の問題に手加減をしたことはない」。
「原発は、ありていに言えば迷惑施設的な要素がある。福島のような大変不幸な事故が絶対ないとは誰も保証できないなかで、寄付金などによる地域振興が、原発を引き受ける要因になっていることは事実だ」。
・今の川勝知事も、毎年、中部電力から寄付金を受け取るたびに、「心から感謝申し上げます。今後とも県政に御理解・御協力をお願いいたします」と謝辞を述べる文書を送り、寄付金で行った工事の詳しい内容を報告。
静岡県は「来年度も中部電力から5億6000万円余りの寄付金を受け取る予定だ」。
●北海道の泊原発。自治体と電力会社が原発推進と地域振興に互いに協力し合った証しとして、北海道電力から泊村に、昭和59年に4億3500万円が、平成13年には8億円。
・原発立地自治体に入った額は
●原発や関連施設のある13の県と北海道、それに30の市町村の、合わせて44の立地自治体を取材したところ、その総額は、原発の建設が始まった昭和40年代から、これまでに少なくとも3兆1120億円。
“重要な財源”
●多くの立地自治体にとって、いわゆる「原発マネー」は重要な財源で、これらが入ってくることを前提に事業を計画。
●内訳は、交付金が9150億円余り、税金が2兆330億円余り、寄付金が1640億円余り。
寄付金の比率は全体の5%余りだが、公開の義務がないため実態は不透明で、実際の金額はこれよりも多い。
また、交付金や税金は、原発が運転を開始したあと、年々減る仕組みになっているため、自治体側が、その代わりに寄付金を電力会社に求めるケースも。電力会社からの寄付金は、公共工事から学校教育や地域振興などソフトな事業まで、原発の立地自治体の裁量で幅広く使えるのが特徴。
●寄付金は、役場の庁舎や公営病院などの大規模な公共工事や、自治体が催すイベントなどの地域振興事業のほか、学生の奨学金など、教育の現場でも使われている。
●国からの交付金は原発の運転が始まると年々金額が減るほか、使いみちが平成15年まで公共施設の建設などに限られていた→このため、自治体の中には、建設した施設の維持費がかさんで、財政負担にあえぐところも→それに比べると寄付金は、原発の立地自治体にとって使い勝手のよいお金で、各自治体が寄付金を求める背景には、こうした事情もある。
寄付は震災・原発事故のあとも
電力会社から原発の立地自治体への寄付は、去年3月、東日本大震災と原発事故が起きたあとも、各地で続けられている。
●中部電力は、静岡県に対し、去年8月、4億6000万円余りを寄付。→静岡県が浜岡原発の1号機と2号機の廃炉に伴って国からの交付金を受け取れなくなった代わりに、中部電力に求めた寄付の一部で、道路の拡幅や小学校の校舎の補修などの工事の費用に。
●中国電力は松江市に対して、去年6月、3000万円を寄付。松江市は、アワビの栽培漁業の振興を目的に、平成17年以降、毎年、この寄付金を。
●日本原子力発電は、去年3月末、福井県敦賀市に対し1億8000万円余りを寄付し、敦賀市は、この寄付金を道路の整備費用に。
●また、震災への復興を目的とした寄付もあり、東北電力は、岩手・宮城の両県とともに、去年3月、福島県に対して1億円を寄付したほか、日本原子力発電は茨城県東海村に500万円を寄付。
・・・
八百長テストで大飯を通すな! 保安院前抗議アクション
~傍聴締め出し撤回と利益相反委員の解任を求めます~
<2月8日(水)>
【1】13時30分~15時30分:聴取会直前アクション
13時30分に経産省別館(保安院)前に集合
(霞ヶ関駅C2出口すぐ、経産省の日比谷公園側の建物)
・30分程度、本館(テントのある側)前と別館前に分かれてチラシ配布→別館正門前にて、アピールやコールなどのアクション(14時よりグリーンピース・ジャパンによる「市民の目」アクションも予定)
【2】18時30分~19時30分:報告&抗議アクション
経産省別館前で、傍聴者による報告も交えた抗議集会
※プラカードや鳴り物など持参歓迎です。なお、意見聴取会は15時~18時30分まで行われます。
<呼びかけ>
福島原発事故緊急会議/東電前アクション/3・11再稼働反対!全国アクション
[連絡先]ピープルズ・プラン研究所
(TEL) 03-6424-5748 (FAX) 03-6424-5749/(E-mail) contact@2011shinsai.info
【当日連絡先】090-6185-4407(杉原携帯)
2012年2月6日月曜日
柏市の「除染実施計画」(案)
柏市の「除染実施計画」(案)
昨日(2/5)、千葉県柏市の「根戸近隣センター」で市の除染計画に関する住民説明会が行われた。(柏市は放射線被曝線量が年間1ミリシーベルト以上の、国が「除染特別地域」に指定した8県102市町村の一つ。国は各地域の民有地・民家・私道等の除染費用に関し、基本的に各自治体がそれぞれ自前で行うこととしている。)
柏市が公表しているデータなど、参考になるかもしれないいくつかの情報を記しておきたい。
1、柏市は、「柏市除染実施計画(案)」 を作成した。これに関し、昨年12月2日から12月8日にかけ、市はパブリックコメントを募集した(44名から205件の意見が寄せらたという)。これを受け市は何点か当初の素案を修正している。その中には肯定的に評価できるものもある。
①除染の最終目標
・・
・「毎時0.23マイクロシーベルト」,「地上50cm~1mの測定位置」は国が示している除染費用の負担のための基準でありますが,科学的な知見からは妥当なものであると考えています。
ただし,市民の方々のご意見等を踏まえ,市独自の方針として,子どもの生活環境である小学校,保育園等は「事故前にできるだけ近づける」,「測定位置として地上5cmも加える」ことなど,さらに踏み込んで除染に取り組むこととします。
・空間線量率が毎時0.23マイクロシーベルトを下回ることで十分個々人の追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトを下回るとの考えから,空間線量率毎時0.23マイクロシーベルトが国の助成基準になっておりますが,小学校,保育園等の子ども生活環境の施設については,毎時0.23マイクロシーベルト未満の場合にも市の独自措置として除染を行い,できるだけ原発事故前の環境に近づけるよう取り組みます。
・最終目標としては,内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないようにすることを目指すこととします。ただし,当面は国の方針に従い外部被ばく分として空間放射線量率が時間あたり0.23マイクロシーベルトを下回ることを目標として除染に取り組むとともに,内部被ばくもできるだけ低減するように食品の放射能濃度の検査体制を強化することとします。内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないという目標の達成のため,継続的な取り組みが重要と考えています。
・・
福島第一原発「事故」の収束以前の段階における「除染」については、その効果・実現可能性・財源・人材などをめぐり、さまざまな懐疑的意見がこれまでもあったし今もある。しかし、実際に汚染が広がり、汚染地域に人が住んでいる以上、除染を進める以外にない、と私は思う。その上で、ここに示した柏市の「除染の最終目標」に関する「基本的考え方」は、「これでも不十分だ」という意見はあると思うが、
●放射線量の測定位置に関し、「市独自の方針として,子どもの生活環境である小学校,保育園等は「事故前にできるだけ近づける」,「測定位置として地上5cmも加える」ことなど,さらに踏み込んで除染に取り組む」、
●「毎時0.23マイクロシーベルト未満の場合にも市の独自措置として除染を行い,できるだけ原発事故前の環境に近づける」、
●「内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないようにする」といった方針は、概ね了承できる内容であるように思う。(もちろん、問題は「その効果・実現可能性・財源・人材」などであることは言うまでもないのだが・・・)
②「除染ボランティア」
パブリックコメントでは「除染の推進主体」に関する「市の役割」について、このような意見が出た。
・除染の主体はあくまでも「公」であるべきです.市として責任を持って除染に取り組むのであれば,まずはボランティアに頼るのではなく,必要な人的コストを支払い,大々的な除染プロジェクトを市として立ち上げることが必要です.
・業者ごとに差が出てしまったりしないよう,柏市が専門家に依頼をして業者に除染指導をしていただき,徹底的な除染を強く求めます。
・高圧噴射機,線量計は,町会に配布か貸与していただいても,結構です。その代わり除染効果の結果を義務付ければいいと思います。
これらに対する市の回答。
・市では,除染の推進のため最大限の努力をしていきますが,市全域の速やかな除染のためには,市民の皆様一人ひとりのご協力が不可欠であると考えております。
・除染を業者等に依頼する場合には,市の職員に除染に関する教育を実施したうえで,各除染作業に関与していくようにします。
・市では,町会やボランティア団体の除染活動等に対する支援について検討をしておりますが,詳細が決まり次第改めてお知らせしてまいります。
国が除染をせず、自治体では対処しきれないときに(と自治体は言うのだが)、「子どもや家族を被ばくから守るために自力で除染する」という考え方は十分理解できるし、柏市ではすでにボランティア組織「ここ掘れワンワン隊」が組織されている。
これをどのように考えるべきか? 東北・関東など8県102市町村におよぶとはいえ、「ホットスポット」はあくまでも「局所的」と捉えられている傾向が強いだけにこれらの自治体内でも関心は決して強くないと思えるが、間違いなく全汚染地域、いや日本全体に突きつけられている問題である。
参考サイト
⇒「放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染廃棄物対策地域、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の指定について」(環境省)
・・・
・2号機原子炉、70度超続く=注水量、さらに増加―福島第1
東京電力は6日、福島第1原発2号機原子炉の圧力容器底部の温度について、冷却水の注入量を増やしたにもかかわらず、依然として70度超の状態が続いていると発表した。ただ、同底部の別の温度計は45度程度で安定しているため、温度計の不具合の可能性もあるという。 東電によると、1日夜時点で52.0度だった同底部の温度計は上昇が続き、5日午後4時に71.7度に上昇。冷却水の注水量を毎時1トン増加した後の同日午後11時時点でも70.3度だったため、東電は6日午前1時29分、注水量をさらに毎時1トン増やし同10.6トンにしたが、6日午前5時時点で70.6度あるという。 (時事)
・放射性セシウム:福島県川内村のミミズから検出(毎日)
・原発再稼働へ「何度でも足運ぶ」=東電社長、柏崎市長らと会談
東京電力の西沢俊夫社長は6日、新潟県を訪れ、同社の柏崎刈羽原発がある柏崎市の会田洋市長、刈羽村の品田宏夫村長と相次ぎ会談した。西沢社長は今後の電力需給について、「冬は何とか乗り切れそうだが春先から夏は非常に厳しい。柏崎刈羽は重要な電源だ」と再稼働への協力に期待感を表明。その上で「地元の懸念、質問に丁寧に答え、理解してもらうまで何度でも足を運んで説明させていただく」と述べ、地元の意向を最大限尊重する考えを示した。
一方、柏崎市の会田市長は会談後、同原発の再稼働について「(福島第1原発事故を踏まえ)安全性がきちんと確認できることが前提。その上でのことになる」と述べた。西沢社長は6日午後、泉田裕彦新潟県知事とも会談する予定。 (時事)
⇒「東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?」(12/6)
・原子力委3人に業界から寄付 5年間で1800万円
東京電力福島第一原発事故後の原子力政策の基本方針(原子力政策大綱)を決めるため内閣府原子力委員会に設けられている会議の専門委員23人のうち、原子力が専門の大学教授3人全員が、2010年度までの5年間に原発関連の企業・団体から計1839万円の寄付を受けていた。朝日新聞の調べでわかった。
会議では、福島の事故後に政府が打ち出した減原発方針が大綱にどう反映されるかが焦点となっている。原子力委の事務局は3人の選定理由を「安全性などの専門知識を期待した」と説明するが、電力会社や原発メーカーと密接なつながりがあったことになる。 3人は東京大の田中知(さとる=日本原子力学会長)、大阪大の山口彰、京都大の山名元(はじむ)の各教授。3人は寄付を認めたうえで、「会議での発言は寄付に左右されない」などと話している。 (朝日)
・・・
・ナノ材料、国が安全評価へ 吸引で健康被害の懸念(朝日)
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「ナノテクノロジーの「リスク」」(2011/3/2)
↓
問題は、ナノテクノロジーに「リスク」があるか否かではなく、それが「管理」できるか否かにある。
昨日(2/5)、千葉県柏市の「根戸近隣センター」で市の除染計画に関する住民説明会が行われた。(柏市は放射線被曝線量が年間1ミリシーベルト以上の、国が「除染特別地域」に指定した8県102市町村の一つ。国は各地域の民有地・民家・私道等の除染費用に関し、基本的に各自治体がそれぞれ自前で行うこととしている。)
柏市が公表しているデータなど、参考になるかもしれないいくつかの情報を記しておきたい。
1、柏市は、「柏市除染実施計画(案)」 を作成した。これに関し、昨年12月2日から12月8日にかけ、市はパブリックコメントを募集した(44名から205件の意見が寄せらたという)。これを受け市は何点か当初の素案を修正している。その中には肯定的に評価できるものもある。
①除染の最終目標
・・
・「毎時0.23マイクロシーベルト」,「地上50cm~1mの測定位置」は国が示している除染費用の負担のための基準でありますが,科学的な知見からは妥当なものであると考えています。
ただし,市民の方々のご意見等を踏まえ,市独自の方針として,子どもの生活環境である小学校,保育園等は「事故前にできるだけ近づける」,「測定位置として地上5cmも加える」ことなど,さらに踏み込んで除染に取り組むこととします。
・空間線量率が毎時0.23マイクロシーベルトを下回ることで十分個々人の追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトを下回るとの考えから,空間線量率毎時0.23マイクロシーベルトが国の助成基準になっておりますが,小学校,保育園等の子ども生活環境の施設については,毎時0.23マイクロシーベルト未満の場合にも市の独自措置として除染を行い,できるだけ原発事故前の環境に近づけるよう取り組みます。
・最終目標としては,内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないようにすることを目指すこととします。ただし,当面は国の方針に従い外部被ばく分として空間放射線量率が時間あたり0.23マイクロシーベルトを下回ることを目標として除染に取り組むとともに,内部被ばくもできるだけ低減するように食品の放射能濃度の検査体制を強化することとします。内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないという目標の達成のため,継続的な取り組みが重要と考えています。
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福島第一原発「事故」の収束以前の段階における「除染」については、その効果・実現可能性・財源・人材などをめぐり、さまざまな懐疑的意見がこれまでもあったし今もある。しかし、実際に汚染が広がり、汚染地域に人が住んでいる以上、除染を進める以外にない、と私は思う。その上で、ここに示した柏市の「除染の最終目標」に関する「基本的考え方」は、「これでも不十分だ」という意見はあると思うが、
●放射線量の測定位置に関し、「市独自の方針として,子どもの生活環境である小学校,保育園等は「事故前にできるだけ近づける」,「測定位置として地上5cmも加える」ことなど,さらに踏み込んで除染に取り組む」、
●「毎時0.23マイクロシーベルト未満の場合にも市の独自措置として除染を行い,できるだけ原発事故前の環境に近づける」、
●「内部被ばくと外部被ばくを合わせて年間1ミリシーベルトを超えないようにする」といった方針は、概ね了承できる内容であるように思う。(もちろん、問題は「その効果・実現可能性・財源・人材」などであることは言うまでもないのだが・・・)
②「除染ボランティア」
パブリックコメントでは「除染の推進主体」に関する「市の役割」について、このような意見が出た。
・除染の主体はあくまでも「公」であるべきです.市として責任を持って除染に取り組むのであれば,まずはボランティアに頼るのではなく,必要な人的コストを支払い,大々的な除染プロジェクトを市として立ち上げることが必要です.
・業者ごとに差が出てしまったりしないよう,柏市が専門家に依頼をして業者に除染指導をしていただき,徹底的な除染を強く求めます。
・高圧噴射機,線量計は,町会に配布か貸与していただいても,結構です。その代わり除染効果の結果を義務付ければいいと思います。
これらに対する市の回答。
・市では,除染の推進のため最大限の努力をしていきますが,市全域の速やかな除染のためには,市民の皆様一人ひとりのご協力が不可欠であると考えております。
・除染を業者等に依頼する場合には,市の職員に除染に関する教育を実施したうえで,各除染作業に関与していくようにします。
・市では,町会やボランティア団体の除染活動等に対する支援について検討をしておりますが,詳細が決まり次第改めてお知らせしてまいります。
国が除染をせず、自治体では対処しきれないときに(と自治体は言うのだが)、「子どもや家族を被ばくから守るために自力で除染する」という考え方は十分理解できるし、柏市ではすでにボランティア組織「ここ掘れワンワン隊」が組織されている。
これをどのように考えるべきか? 東北・関東など8県102市町村におよぶとはいえ、「ホットスポット」はあくまでも「局所的」と捉えられている傾向が強いだけにこれらの自治体内でも関心は決して強くないと思えるが、間違いなく全汚染地域、いや日本全体に突きつけられている問題である。
参考サイト
⇒「放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染廃棄物対策地域、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の指定について」(環境省)
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・2号機原子炉、70度超続く=注水量、さらに増加―福島第1
東京電力は6日、福島第1原発2号機原子炉の圧力容器底部の温度について、冷却水の注入量を増やしたにもかかわらず、依然として70度超の状態が続いていると発表した。ただ、同底部の別の温度計は45度程度で安定しているため、温度計の不具合の可能性もあるという。 東電によると、1日夜時点で52.0度だった同底部の温度計は上昇が続き、5日午後4時に71.7度に上昇。冷却水の注水量を毎時1トン増加した後の同日午後11時時点でも70.3度だったため、東電は6日午前1時29分、注水量をさらに毎時1トン増やし同10.6トンにしたが、6日午前5時時点で70.6度あるという。 (時事)
・放射性セシウム:福島県川内村のミミズから検出(毎日)
・原発再稼働へ「何度でも足運ぶ」=東電社長、柏崎市長らと会談
東京電力の西沢俊夫社長は6日、新潟県を訪れ、同社の柏崎刈羽原発がある柏崎市の会田洋市長、刈羽村の品田宏夫村長と相次ぎ会談した。西沢社長は今後の電力需給について、「冬は何とか乗り切れそうだが春先から夏は非常に厳しい。柏崎刈羽は重要な電源だ」と再稼働への協力に期待感を表明。その上で「地元の懸念、質問に丁寧に答え、理解してもらうまで何度でも足を運んで説明させていただく」と述べ、地元の意向を最大限尊重する考えを示した。
一方、柏崎市の会田市長は会談後、同原発の再稼働について「(福島第1原発事故を踏まえ)安全性がきちんと確認できることが前提。その上でのことになる」と述べた。西沢社長は6日午後、泉田裕彦新潟県知事とも会談する予定。 (時事)
⇒「東電一時「国有化」=(電気料金値上げ+増税)+(柏崎刈羽+福島第二再稼働)?」(12/6)
・原子力委3人に業界から寄付 5年間で1800万円
東京電力福島第一原発事故後の原子力政策の基本方針(原子力政策大綱)を決めるため内閣府原子力委員会に設けられている会議の専門委員23人のうち、原子力が専門の大学教授3人全員が、2010年度までの5年間に原発関連の企業・団体から計1839万円の寄付を受けていた。朝日新聞の調べでわかった。
会議では、福島の事故後に政府が打ち出した減原発方針が大綱にどう反映されるかが焦点となっている。原子力委の事務局は3人の選定理由を「安全性などの専門知識を期待した」と説明するが、電力会社や原発メーカーと密接なつながりがあったことになる。 3人は東京大の田中知(さとる=日本原子力学会長)、大阪大の山口彰、京都大の山名元(はじむ)の各教授。3人は寄付を認めたうえで、「会議での発言は寄付に左右されない」などと話している。 (朝日)
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・ナノ材料、国が安全評価へ 吸引で健康被害の懸念(朝日)
「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「ナノテクノロジーの「リスク」」(2011/3/2)
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問題は、ナノテクノロジーに「リスク」があるか否かではなく、それが「管理」できるか否かにある。
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