2012年2月25日土曜日

福島市・伊達市など行政主導の一般(県外)ボランティアによる除染作業についての問題点

福島市・伊達市など行政主導の一般(県外)ボランティアによる除染作業についての問題点

【解説】
 以下は、福島の支援活動に関わる、あるNGOスタッフが書いた文章で、昨日、執筆者本人から私宛てに送られてきたものである。すでに東日本大震災の「復興支援」活動に関わるNGOのネットワークの間で公開されており、執筆者も公開を了解しているが、被ばく線量などの個人情報が記載されているので実名は伏せて掲載することにした。
 現場の経験に即しながら、福島県内の「ホットスポット」における「除染ボランティア」の問題点と提言がまとめられている。各地の「ホットスポット」の除染を今後いかに進めていくか。私も含め、すべての関係者が「答え」を模索している最中ではないだろうか。それを考えるにあたり、一つの参考になればと思った。
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 11月13日(日)に福島市の除染ボランティア(市社協がボランティア募集窓口)に参加してきました。除染作業に一般のボランティアを行政(形の上では社協だが)が募る仕組み自体に違和感を覚え●●の●●さんと一緒に体験取材することになりました。
 現場は玄米の放射性セシウムが基準値を超えて検出された福島市大波地区の民家の敷地周辺。各自軍手、使い捨てマスク、医療用のディスポグローブと積算線量計そして市社協のビブスを渡されました。マスクは環境省がその手引きで指定しているようなサージカルマスクや防塵マスクでもなくコンビニで売っている普通の風邪用のマスクです。
 社協のビブスを着ると傍目には震災支援をしている社協のボランティアにしか見えない。実際は市の除染作業を請け負う業者のやらない部分を作業する除染ボランティア。市の担当者の説明によると屋根や側溝など高所であるとか高線量であるなど危険な作業は業者がやりその他の作業をボランティアにやらせようということらしいです。
 線量計はリアルタイムに空間線量を測れるとのことでしたが私のものはモード切替ができませんでした。結果として[私は]12μSv被ばくしました。これまで平均で2、3μSvだったようで市の担当者もちょっと困ったような素振りをみせました。
 その日の夜に子ども全国ネットの人たちとも話し合い、いろいろ考えて論点を整理してみました。

1)構造の問題
 NGO・NPOの活動は安価な行政サービスとして存在するのではないという原則があります。
 今回の福島県の福島市、伊達市のように本来国の事業で専門的知識が必要とされる除染作業を一般を対象に募集したボランティアにさせることに疑問を感じます。
 同じことをやるにしても、どこがイニシアティブを取るかで意味が違ってきます。市民が主導で行うボランティア活動と同一に見ることはできません。まさに予算がないから無報酬のボランティアを動員するという考え方はあまりに安易であるばかりではなく、福島のために何かしたいという純粋な善意を利用した悪質な行為だと言えます。

2)命・権利の問題
 生活する上で危険なレベルの線量を除染によって下げるから避難する必要はない、安全だと言うための除染は矛盾しています。
 危険なレベルだとすればまず安全なレベルに下がるまで避難させるべきです。少なくとも避難する権利を認める必要があります。現状は国際法上も憲法を初めとする国内法にも違反しています。
 ちなみに日本では、年間5.2mSvを超えるような場所は「放射線管理区域」として、厳重に管理されなければならないことになっています。除染はあくまで避難とセットで実施されるべきです。

3)安全管理の問題
 福島市では市社協がボランティア募集を受け持っています。HPの情報を見て応募するシステムですが、除染作業でのリスクについて十分説明させれているとは言えません。
 また一般的に言って除染が必要なほど高線量の場所での活動にも関わらず出産する可能性の高い年齢層の女性を含む若年層の参加に制限も設けていませんし注意を喚起することもしていません。
 また作業中は積算線量計を各自携行することになっています。作業中の被ばく量を年間被ばく量に追加する形で計算するとしていますが、この計算は参加者個人に委ねられています。
 つまり主催者によって管理はされていません。作業中の被ばく量についても、同じ現場でもどのような場所で多く作業したかによって被ばく量は大きくかわります。[私は]今日の2時間の作業で12μSVも被ばくしました。(多くの参加者は2μSvー5μSvでした)

 年間積算線量の計算においても日本独自の複雑な計算方法を用いています。1日のうち屋内にいる時間を16時間とし、その分については「木造家屋の低減効果係数=0.4」を掛けて計算しています。
【一日あたりの線量を「a」として数式化すると((2/3(16時間/24時間)×0.4))a + ((1/3(8時間/24時間)))a = 0.6a】

 屋内での線量を6掛けするのは一見正確なように見えますが、そもそも正確を期すためには個人がどのような生活しているかによって被ばく量を割り出す必要があります。被ばく量は生活パターンによって大きく違ってくるからです。そのためには積算線量計で1か月どれほど被ばくしたかを計測し年間被ばく量を割り出す必要があります。
 除染において被ばくが許される被ばく量は現行の年間1mSvからその被ばく量と推定される内部被ばく量とを引いた部分です。内部被ばく量も個人の食生活などに大きく依存します。この年間積算被ばく量の計算は複雑になり個別対応は困難です。
 どちらにしても1mSvを基本にすることには無理がありますが、とりあえず1mSvを基準にしたところで東日本全体汚染されている現実を見ると被災3県以外でも普通に暮らしていて年間1mSVを超える空間線量の地域は意外に多いのです。言うまでもなく高線量の福島県に居住しているものが除染ボランティアに申し込む資格はもとよりありません。このような説明もHPにはありません。

 作業中の防護対策についても十分とは言えません。環境省の基準をも満たしていない使い捨てマスクの使用やゴーグルも準備されず、頭髪を隠すなどの注意喚起もありません。
 またさらに重要なことは事前加入のボランティア保険では放射線障害についてはカバーされないということです。このことは除染作業がボランティアの仕事として成立していないということを端的に示しています。行政が行う除染作業については万が一の保障を考えると雇用契約による労災加入が義務付けられるべきだと考えます。最低賃金のみ支給するとしても東京から来るボランティアに交通費を支給したと考えるとかなり割安なものになります。

 ただ、労災に加入したからといって晩発性と言われる障がいが自動的にカバーされるわけではなく、むしろ逆で裁判に持って行ったところで勝つ見込みのないでしょう。結論的には最低賃金どころか将来に渡るリスクを引き受けてもらうには一種「危険手当」を予め組み入れた割高な賃金を支払うことしか方法がありません。一般に呼びかける除染ボランティアはこの問題を巧妙に隠しています。

提言としては
・事前にリスクに関する情報を提供したうえでの申込みを受け付けること
・除染と避難を同時に行うこと
・個々の参加者の内部被ばくを含めた年間積算線量と作業中の被ばく量の計算を厳密にした上で参加資格の可否判断も含め主催者が責任を持って管理すること
・作業中の放射線防護対策を徹底すること
・ボランティアではなく最低でも労災加入が義務付けられる雇用契約を結ぶ「除染作業県外協力者」とすること。また除染業務そのものはリスクを引き受けて貰う対価として「危険手当」が加算されるべきである。

追加:
こども全国ネットの●○さんの補足
 今回の除染活動が他の震災のボランティア活動と違う点は、
1)東電という一民間企業の起こした公害という人災事故(天災ではない)の被害地域に対する支援活動であるので、単なる被災地ボランティアではないこと
  ⇒専門的な訓練を備えた専門業者が行うべき作業である。その補助的作業であるからボランティアではなく「放射線防護訓練」を受け、「労災加入」を義務づけ事後の補償を前提とした契約を結ぶ事。

2)除染計画の明示と廃棄物管理計画の策定
  線量別の作業計画とボランティアの関われる作業範囲の明示が必要であること。
  ⇒現在あちこちで除染活動が行われているが、除染地の線量もまちまちで作業方法も統一されていない。少なくとも線量別の作業管理と「一般協力者が請け負える(リスク管理が出来る)作業範囲」の明示が必要。(被曝前提の作業であるため、年齢制限や妊娠前の若い女性など健康上のリスク提示は必須)
  ⇒除染計画に基づき、「避難の上で除染する計画の徹底」
  ⇒廃棄物処理計画がはっきりしていない作業が多いと思われる。

 公園や近くの空き地での一時保管など二次災害に繋がる処理など現状の作業には課題が多く、人海戦術で対応しても無駄になる、または返って問題を起こす可能性のある除染になることもある。廃棄物処理計画を明確することを求める。
 いずれにしても、除染は大変リスクの高い作業であり、効果もまだ未知の領域ですし、国の指針は甘いです。リスク管理の指針づくりにはNPOなど民間からの提案が必須と思われます。
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【参考サイト】
●「原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 猪飼周平
 「・・・では、ボランティア主導の除染体制とはどのようなものだと考えればよいであろうか。私の考えでは、次の5点がポイントである。すなわち、
第1に、ボランティアを含め住民支援という目標を共有できる、住民自身、ボランティア、地元業者、専門家、できれば行政からなる連携を構築すること、
第2に、放射線被曝に関する十分な情報がボランティアに提供されること、
第3に、困っている順番に除染することで、行政による除染と補完関係に入ること、
第4に、そのために、個人の除染ニーズに関する情報(行政保健師が相談を通じて収集しつつある)を、行政と市民セクターで共有できる体制を構築すること、
第5に、除染を行う人びとの被曝を最小限に抑える可能な限りの措置を講ずること、である。

 なお、最後に除染ボランティアに関して、一点解決すべき深刻な問題があることについては言及しておかなければならないだろう。それは、国が1mSv/y以上の地域の除染について責任を認めている点と関わっている。  現状では、ボランティアが除染をすると国の除染費用の軽減に役立つという構造になっている。だが、ボランティアは被災地の住民を支援したいのであって、原発事故に一義的な責任を負う国を支援したいのではない。現在の状況は、ボランティアが除染に関わることを抑制する状況となっているのである。

 したがって、除染ボランティアの十分な活用に際しては、彼らの活動と国の責任とが切り離されるような条件整備が必要となるだろう。たとえば、除染ボランティアの費用が最終的に国に請求され、国からの支払いが住民に還元されるような枠組みができれば、この問題は解決されることになる。このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたいと思う」・・・。
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 「このような法技術的な問題に詳しい人にはぜひこの問題の解決策を提案していただきたい」。

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●「原発を問う民衆法廷第1回公判」 (iwakamiyasumi5)

柏崎刈羽原発、熱交換器建屋で煙 放射能漏れなし 東電、定期検査中の5号機
 25日午後11時35分ごろ、定期検査中の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)5号機の熱交換器建屋で煙が発生し、火災報知機が作動した。東電によると、外部への放射性物質漏れは確認されていない。地元消防が出動したが、煙だけで火は確認していないという。
 東電によると、原子炉に燃料はなく、使用済み燃料プールに全燃料が入っている。
 煙が出たのは、原子炉の冷却に使う熱交換器の配管腐食を防ぐための鉄イオンを注入するポンプの軸受け部分。ポンプは作動していた。 5号機の出力は110万キロワットで、1月下旬から定検入りしていた。同原発は3月26日、全7基のうち唯一稼働している6号機が定検のため停止し、東電管内の全17基が停止する。〔共同〕

処理装置から高濃度汚染水漏れる…外部流出なし
 東京電力は25日、福島第一原子力発電所の汚染水処理装置「サリー」(東芝製)の配管から、約10リットルの高濃度汚染水の水漏れがあり、装置を停止させたと発表した。 昨年8月から運用を始めたサリーで、水漏れが起きたのは初めて。外部への流出はないが、2系列あるサリーの一方は再稼働のめどが立っていないという。
 東電によると、同日午前8時半頃、作業員が配管の溶接部付近から1秒に1滴程度の水漏れがあるのを見つけた。汚染水の濃度は、セシウム134が1立方センチ・メートル当たり13万ベクレル、セシウム137が18万ベクレルと高濃度だった。
 東電は、溶接部が劣化した可能性があるとみている。停止させた系列の配管を交換して再稼働をめざすが、もう一つある米キュリオン社製の処理装置の稼働率を上げれば全体の汚染水処理に大きな影響はないという。(読売)
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