2011年11月27日日曜日

自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?(2)

自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?(2)

 日本における安保をめぐる言説、その神話性は、原発をめぐるそれととてもよく似ている。
 これまで「原発は絶対安全」という神話の下で、「日本のエネルギー政策にとって原発は絶対必要」という二重の神話が作られてきた。それと同じように、安保をめぐっても「在日米軍=抑止力」という神話の下で、「日本の安全保障政策にとって日米安保体制(=米軍の無期限駐留)は絶対必要」という二重の神話が作られてきた。

 前者は「3・11」によって崩壊した。しかし後者は、いまだ日本社会において支配的だ。
 原発神話は「原子力ムラ」と主要メディアの面々がねつ造してきたわけだが、それが満天下に明らかになった今日でも私たちの多く(=「文科系」のアカデミズム主流、主要メディア等々に強い影響を受けている人々、としておこう)は、「安保ムラ」がねつ造する神話から目覚めようとしない。

 どうすれば、この状況を変えることができるのか? 気負った言い方に聞こえるかもしれないが、1960年に改定された現安保条約の歴史とともに生きてきた世代の一人として、自分が生き、死んでゆく時代に自分なりの決着をつけるためにも、おそらく私は死ぬまでこの問いと格闘し続けることになりそうである。

 先週、法政大学で行ったシンポジウムの中で、確か「都の西北」にある某大学の院生が「告発」したように、「保護する責任」批判が、国際関係論・国際政治学・国際法・平和学などの主流では聞くことができない、というのも実はこのこと、すなわち「文科系」のアカデミズム主流、主要メディア等々が、「安保ムラ」がねつ造する神話から目覚めようとせず、むしろその神話を一緒になってねつ造する役割を果たしてきた/いること、と深く関係している。

 しかし、この問題に入る前に、安保と「保護する責任」に深く関係したもう一つの問題、自衛隊の南スーダン国連PKOへの部隊派遣についてその問題点を整理しておこう。
 読者の注意を喚起しておきたいことは、南スーダンへの自衛隊派遣が、ソマリアに対する米仏による本格的な軍事介入の動きと同時一体的に行われようとしていることである。
 まずは、この間の経緯を押さえておこう。

⇒「自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?」(9/26)より

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「国連PKOのハイチからの即時撤退を求める国際署名」(10/17)

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南スーダンPKO、日米連携へ…治安情報を共有
 南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)について、政府は、来年1月から派遣する陸上自衛隊施設部隊の安全を確保するため、アフリカで対テロ作戦を行っている米軍から治安情報の提供を求める方針を固め、米政府と調整に入った。 陸自が連携するのは、米軍のアフリカ軍。日本のPKO部隊が米軍と連携するのは異例だ。
 日本のこれまでのPKOは、いずれも比較的治安が安定した地域への派遣だったが、今回の南スーダンは、武力衝突などに巻き込まれる危険性がなお残るとされている。このため政府は、治安が悪化しているスーダン国境に近い北部情勢などについて、米軍との情報共有を図ることにした。
 陸自部隊の派遣規模は約300人。当初は治安が安定している南部の首都ジュバ周辺で道路補修などのインフラ整備を担う予定だ。ただ、国連は、整備が遅れている北部での活動を日本側に要望しており、既にジュバから約150キロ北のボアなどでの活動を打診している。(読売、11月27日)
 ↓
 読売新聞の記者は、「日本のPKO部隊が米軍と連携するのは異例」と言う。確かにそう言えなくはないが、より正確には「日本のPKO部隊が米軍と連携するのは必然」 と書くべきである。しかし、読売新聞を始めとした主要メディアはこのことを報じようせず、今日の国連PKOおよびそれへと自衛隊の参画の問題性を論じようとしない。なぜかと言えば、「国際関係論・国際政治学・国際法・平和学などの主流」がこのことを問題化しようとしないからだ。なぜかと言えば、冷戦崩壊以後のこの20年におよび、自民党政権時代も政権交代以降の民主党も「日本のPKO部隊が米軍と連携する」ことを国家戦略化してきたことに対し、アカデミズム「主流」が批判しない〈状況〉が作られてしまったからである。

 去年上梓した『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』の「終章 日米同盟を再考し、日米安保に期限をつけるために」は、その「2 米軍協力としての「国際平和協力」を事業仕分けする」において、まさにこのことを論じている。 (小節の見出しは以下の通り。「「国際平和協力」とは何か/湾岸戦争と「国際平和協力」/掃海艇のペルシャ湾「派遣」/五五年体制崩壊の序曲/「新世界秩序」の中の自衛隊」)

 日米安保条約を無期限に「自動延長」し、在日米軍を無期限に駐留させ、米軍の戦略転換にその都度対応した「日米共同作戦態勢」を構築してきたのであるから、自衛隊の海外展開の一つとしての国連PKO派遣、とりわけブッシュ政権時の米軍のアフリカ司令部設置後のそれが、米軍のアフリカ大陸における作戦展開と「連携」し、いずれはその「後方支援」を担うことになるのは「異様」ではなく、必然である。(米軍のアフリカ司令部については「永遠の安保、永遠の米軍基地、そして永遠のテロル」(3/30,2009)を参照)

 しかし、今日の国連PKOがはらむ構造的・本質的な問題とは、以下の記事で明らかなように、紛争の解決主体としてではなく、武力紛争が継続中の国や地域に国連そのものが紛争当事主体となって軍事的に介入し、紛争長期化の原因を自ら作っているところにある。
 
南スーダンPKO、決まらぬ宿営地 陸自派遣、ずれ込む公算
 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊施設部隊派遣を控え、陸自の活動拠点となる宿営地がまだ確保できていないことが(11月)24日、分かった。首都ジュバでバングラデシュ軍が使用する兵舎を引き継ぐはずだったが、国連が同国軍の活動延長を求めたため、兵舎に空きがなくなった。これにより年明けに予定していた先遣隊数十人の派遣は大幅にずれ込む公算が大きい。 複数の政府高官が明らかにした。
 政府は24日、国連南スーダン派遣団(UNMISS)の司令部要員として陸自隊員2人を28日に出発させると発表したが、政府の調整能力不足は国際社会に不信感を広げている。  南スーダンは7月に分離独立し、旧スーダンでは南北内戦後の包括和平合意に基づき2005年3月から別のPKO部隊が展開している。政府と国連の調整では、バングラデシュ軍が年内で活動を終え、兵舎を陸自に明け渡す予定だった。ところが、国連は11月になって活動延長を要請。バングラデシュもこれに応じる意向を示したため、兵舎明け渡しの時期が白紙に戻ってしまったという。
 政府は、兵舎新設には時間がかかりすぎるため、次善の策として、バングラデシュ工兵部隊より先に活動を終える見通しの同軍歩兵部隊の撤収を待ち、先遣隊を送る検討に入った。だが、先遣隊派遣が遅れれば、2~3月を予定していた施設部隊本隊(200人弱)の派遣も遅れかねない。南スーダンは5月から雨期に入るため、この時期まで本隊派遣がずれ込めば活動が大きく制約される可能性がある。(産経)

南スーダンPKO、ルワンダ軍が陸自を警護
 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊施設部隊の警護は、ルワンダ軍が担うことになる。国連南スーダン派遣団(UNMISS)トップのヒルデ・ジョンソン事務総長特別代表が22日、自民党調査団の中谷元・政調会長代理に明らかにした。
 ジョンソン氏は、南スーダンの首都ジュバで中谷氏と会談し、自衛隊派遣を「各国が好意的に受け止めている」と歓迎した。その上で、自衛隊の警護について「国連本部とルワンダ政府で協議しており、最終段階だ」と説明し、ルワンダ軍の歩兵部隊を充てる方針を表明した。ただ、警護場所などの詳細は明らかにしなかった。
 自衛隊の活動内容は「道路や橋の建設。河川港も期待する」と言及。内戦時代に埋められた地雷の撤去については「地雷撤去は入っていない」と否定した。活動地域は「今のところジュバしか考えていない」と述べ、当面は治安のいいジュバに限定する考えを強調。宿営地はバングラデシュ軍が現在使っているジュバ市内の兵舎跡地を使う方向であることも説明した。
 ただ、自衛隊の活動期間については「(派遣の)更新は1年で、その後は派遣国の意思による」と明言を避けた。「部隊の需要は期間が終わっても続く」とも話し、長期間の派遣に期待感をにじませた。 (朝日)

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・ソマリア:エチオピア軍侵攻 過激派への包囲網強化
 アフリカ東部ソマリアに隣国エチオピア軍が侵攻し、国際テロ組織アルカイダ系とされるイスラム過激派組織「アルシャバブ」への包囲網が強化されつつある。アルシャバブは、首都モガディシオでソマリア暫定政府を防衛する「アフリカ連合」(AU)の派遣部隊との戦闘も継続しており、勢力が分散化しだした可能性もある。
 ケニア軍は10月中旬、ソマリア南部へと侵攻。今月20日までにエチオピア軍がソマリア中部ベレドウェインなどに進軍した。ロイター通信によると25日、エチオピア政府は越境を認めた。

 今月半ばにはケニアとウガンダ、ソマリア暫定政府首脳がケニアの首都ナイロビで非公式会合を開き、アルシャバブ掃討に向けた軍事作戦の協力を確認した。AU部隊の主体となっているウガンダ、ブルンジなどの首脳は部隊増強に向け、緊急的援助をアフリカ各国へと呼びかけた。AU部隊との戦闘でアルシャバブが弱体化しているのを好機とみたケニア、エチオピア両軍が米国など国際社会の意向を受ける形で相次いで侵攻している可能性もある。
 ソマリアは中央政府の崩壊した91年以降、事実上の無政府状態にあり、暫定政府が首都モガディシオの一部を統治しているが中・南部はアルシャバブが実効支配してきた。しかし、ここにきて各地での戦闘でアルシャバブ勢力が分散化し、内部抗争や資金不足に直面しているとの観測も流れ始めている。
 一方、AUも資金難に直面しており、アルシャバブ掃討に向けて、AUが一枚岩となれるかは不透明なままだ。
 エチオピア軍は06年、米国の支持を受け、イスラム原理主義勢力が首都モガディシオを掌握していたソマリアに軍事介入し、エチオピア軍が支援する暫定政府が全土をほぼ制圧したが治安は悪化し、09年に撤退した経緯がある。 【毎日、ヨハネスブルク高尾具成】

・ケニア軍、ソマリア過激派のキャンプを空爆 10人殺害 
 ソマリア南部に進軍中のケニア軍報道官は24日、ソマリア南部でイスラム過激派組織アルシャバーブの三つの軍事キャンプを(11月)23~24日に空爆するなどし、アルシャバーブのメンバー10人を殺害したと発表した。
 一方、ソマリアとの国境に近いケニア北東部マンデラで24日、道路に仕掛けられた爆発物が爆発、トラックでパトロール中のケニア軍兵士1人が死亡、4人が重傷を負った。ロイター通信によると、東部ガリッサでは同日、レストランなどで手りゅう弾によるとみられる爆発が起き、2人が死亡、15人が負傷した。
 ケニア軍は10月中旬、同国東部で9月以降相次いだ外国人誘拐にアルシャバーブが関与したとしてソマリア南部に進軍。その後、ケニア国内では爆発物を使った事件が続発している。(共同)

仏海軍がソマリア爆撃か ケニア軍報道官
 AP通信によると、ソマリア南部に進軍中のケニア軍の報道官は24日までに、フランス海軍がソマリア南部キスマユ近郊を(10月)22日夜に爆撃したと述べた。ケニア軍の作戦には欧米諸国の協力があると指摘されていたが、ケニア当局者が初めて認めた形。ただフランスは爆撃への関与を否定している。
 ケニア東部では9月以降、闘病中のフランス人女性を含む外国人がソマリアに誘拐される事件が続発し、ケニア軍はイスラム過激派組織アルシャバーブが関与したとみて進軍した。フランス海軍はこのフランス人女性の捜索に参加していたが、同国外務省は今月19日、女性の死亡を発表した。
 キスマユはアルシャバーブの拠点の一つで、飛来する米国の無人機が住民に何度も目撃されており、9月には無人機が墜落したと伝えられた。(共同)

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クラスター爆弾:オスロ条約に支持加速も 「骨抜き」廃案
 クラスター爆弾の全面禁止条約(オスロ条約)に規制の緩い条約を対抗させ、骨抜きにしようとした米露中などによる外交工作は失敗に終わった。大半の国が禁止条約に加盟することで大量保有国による兵器の使用を事実上やめさせる、というオスロ条約派の方法論への支持がさらに強化されそうだ。
 「骨抜き条約」は、「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」で提起されたが25日、全会一致の支持が得られず廃案となった。提案理由について米政府高官は、オスロ条約加盟国が「(軍事大国の周囲に)長い壁を作り、爆弾を使うことをためらわせようとしている」と語り、包囲網が米国を外交工作へと突き動かしたことを認めた。

 オスロ条約はクラスター爆弾の8~9割を持つ米露中が加盟せず野放しになっているため、「実効性がない」と批判されてきた。米国はその弱点を突いて規制の緩い条約案をぶつけてきたが、オスロ条約の中核国の結束は固く、廃案まで持ち込んだ。
 しかし、米国などは今回、市民の被害を考えて条約を作ろうとした「実績」を作ったことで、「何もしていない」とのオスロ条約側に反論できる。さらに「オスロ条約加盟国が交渉を妨害した」との論理で、今後の使用が正当化される可能性もある。
 一方、独仏イタリアなど一部の加盟国が骨抜き条約をまとめようと動き、足並みが乱れたのはオスロ条約側には痛手だった。ドイツ外交筋は「大量保有国にも規制をかけ世界全体を安全にするのが長期目標。オスロ条約を阻害する意図はない」と釈明する。  日本は、最後まで骨抜き条約に反対を表明せず、オスロ条約に賛同するまで後手後手に回ったかつての失態をまた繰り返した。【毎日、ジュネーブ斎藤義彦】

・NATO部隊ヘリが越境攻撃、パキスタン兵24人死亡
 パキスタン北西部の部族地域で(11月)26日未明、隣国アフガニスタンに展開する北大西洋条約機構(NATO)主体の国際治安支援部隊(ISAF)のヘリコプターが越境し、パキスタン治安部隊の検問所を攻撃した。軍によると、兵士24人が死亡、13人が負傷した。
 ISAFは攻撃があった地域のアフガン側で最近掃討作戦を始めており、今回は誤って越境したとみられる。だが、パキスタン側では「国家主権に対する攻撃だ」(地元州知事)などと反発が強まっており、同国外務省は実質的にISAFを率いる米国のマンター大使を呼び、抗議した。
 また、パキスタンはISAFの重要補給路だが、政府は国境を封鎖し、補給物資の輸送車の動きを止めた。ISAFは26日午後、アレン司令官が遺族らに哀悼の意を表し、徹底した事実調査を行うと述べたとする声明を出したが、さらなる関係悪化は必至だ。 (朝日)

New Drone Sensor Could Instantly Spot Any Shooter (Nov.23, 2011, WIRED)

「自主」避難者に、正当で幅広い「損害賠償」を!

「自主」避難者に、正当で幅広い「損害賠償」を!
・避難費用実費を賠償すべき
・一律の、雀の涙の「見舞金」など許されない!!
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-cdf5.html
第一次締め切り 12月2日(金)、第二次締め切り 12月9日(金)
◆署名フォーム1(PC対応): http://goo.gl/2HQzW
◆署名フォーム2(PC、携帯対応):
https://pro.form-mailer.jp/fms/795bfc1624252

 11月25日に開催された原子力損害賠償紛争審査会では、自主避難者・残留者を問わず、すべて一律同額の賠償とする方向で議論が進められました。このままでは、避難に伴う生活費の増加や何度も往復する交通費、子どもや妊婦の付き添いで必要な家族の避難にかかわる費用など、避難に関わる実費を算入することができなくなります。結果的に、一律の見舞金的なものとして、実際に避難にかかった費用に比べて大幅な減額となる可能性が出てきます。

 審査会での「一律同額」の根拠は、行政手続きが煩雑になるということでしたが、これは理由になっていません。中間指針に示されている避難区域内の避難者への賠償と同様、被害者からの実費の請求で済む話です。区域内からであろうと、区域外からであろうと、賠償は同様であるべきです。
 また、賠償が支払われる期間があまりに短すぎます。審査会では、草間委員から、「緊急時避難準備区域が解除された9月まで」という驚愕の発言がとびだし、結果的には12月という方向が示されていますが、除染に2年かかる、すなわちそれまでには線量が十分さがらないということを考えれば、賠償を認める期間は最低でも2年とし、それ以降も検討できるようにすべきです。

 さらに「第二期」(事故後一定期間が経過したのちの期間)は子ども・妊婦本人しか賠償の対象にしないなど、賠償の範囲があまりに限定的です。子ども・妊婦への配慮は、基本的な賠償の範囲を決めて、さらに追加的に賠償範囲を広げる議論の中でなされるべきものであり、賠償範囲を限定するために持ち出されるべきではありません。私たちは、これらの問題を指摘するとともに、原子力損害賠償紛争審査会に、とりわけ以下を要請します。
●一律一括の金額ではなく、避難費用の実費がカバーできる賠償とすること
賠償期間は、少なくとも2年間とすること、また、
●東京電力に対しては審査会の議論がどうあれ、自主避難にかかった実費を完全に補償することを求めます。

(呼びかけ)
国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
問い合わせ先:
国際環境NGO FoE Japan 満田/090-6142-1807
福島老朽原発を考える会 阪上/090-8116-7155

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⇒「県内全域で賠償を 原発自主避難精神的損害」(12/9,福島民友)
⇒「クローズアップ2011:避難区域外の原賠審指針 避難の実費、認めず」(12/7,毎日)
⇒「「自主避難」と「風評被害」」(3/26)より
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 国や自治体は、私たちが何もしないで放っておいたら、私たちの「生命と財産」を守らない。これが「ボトムライン」だ。

 私たちは、福島第一原発から漏出し、放出される放射能に汚染されずに生きる「権利」がある。しかし、その「権利」は憲法にも法律にも明文化されていない。つまり、国や自治体にはその「権利」を保障する憲法/法律上の「義務」はない。
 私たちは、憲法やいろんな法律の関連条文・条項を引っ張り出し、国・東電・自治体に対して、私たちが放射能に汚染されずに生存する「権利」を保障させるよう、仕向けるしかない。そして国・東電・自治体が果たすべき行政・企業責任を明確にし、被害を受けた場合には、その補償をきちんとさせる。あたりまえの事だ。そのために私たちは政府・自治体に税金を払い、東電に電気代を払い、彼/彼女らすべての、特権的でぜいたくな生活を保証している/かれらが真っ先に、勝手に自分たちに保証することを許しているのだから。

 法律的に言えば、現在私たちは「原子力災害対策特別措置法」が定める「原子力緊急事態宣言」発令後、「原子力緊急事態解除宣言」が発令されるまでの中間期間に生きている。政府がいまやっているのは、「原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む)の拡大の防止を図るため実施すべき応急の対策」ということになる。
 いま政府は、「緊急事態応急対策及びその実施責任」を負っている。逆に言えば、私たちは政府にその「責任」を果たさせなければならない

 政府が果たすべき/政府に果たさせるべき「責任」の内容は、「措置法」第二十六条が規定している。 具体的には、
 一  原子力緊急事態宣言その他原子力災害に関する情報の伝達及び避難の勧告又は指示
 二  放射線量の測定その他原子力災害に関する情報の収集、
 三  被災者の救難、救助その他保護
 四  施設及び設備の整備及び点検並びに応急の復旧、
 五  犯罪の予防、交通の規制その他当該原子力災害を受けた地域における社会秩序の維持
 六  緊急輸送の確保、
 七  食糧、医薬品その他の物資の確保、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去その他の応急措置の実施、
 八  前各号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む)の拡大の防止を図るための措置

 昨日の報道の問題は、「避難の勧告」地域の拡大が、「異常な水準の放射線量」の「検出」が「前提」でなければならないかのように、政府が主張したことに対し、その批判的論評がなかったことだ。(⇒ここで言う「放射線量」とは、第十五条一項が定める「主務大臣が受けた通報に係る検出された放射線量又は政令で定める放射線測定設備及び測定方法により検出された放射線量」のことをさす)
 毎日新聞の記事は、次のように書いている。
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1, 20~30キロ圏内に対する自主避難要請は24日夜、首相官邸の主導で対象の9市町村に伝えられたうえで、枝野幸男官房長官が25日の記者会見で発表。
2, 原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づく避難指示を出せば、放射性物質による汚染拡大を政府が正式に認定することになり、周辺住民の不安に拍車をかけかねない(⇒完全なる詭弁、欺瞞)。一方、屋内退避の長期化で不自由な生活への不満が住民側に強まっていたため、超法規的な「要請」によって政府批判の緩和を狙った・・・。
3, 原発事故の対応を超えた政治判断は保安院にはできないため、25日に原子力安全委員会の臨時会を開き、放射線のモニタリング結果などを理由に、自主避難が「望ましい」と助言する形をとった・・・。
4, 原災法に基づく避難指示は「異常な水準の放射線量」の検出が前提。自主避難を自治体に要請する根拠法はなく、実際に住民を避難させるかどうかの判断は各市町村に委ねられた。避難先の確保や移動手段なども市町村が考えなければならず、野党からは「中途半端」などの批判がかえって強まっている・・・。
5, 菅直人首相は25日夜、避難指示に切り替えなかったことについて「原子力安全委員会の専門家の判断を尊重した対応」と強調、しかし保安院関係者は「先に判断したのは官邸。避難指示は放射線量が高いまま下がらない場合などに検討する」と語り、官邸指示に従った苦肉の策だと認めた・・・。
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 私は、上の1~5、すべてが無茶苦茶だと思う。
 おそらくこの問題、原発事故をめぐる「被害」と「避難」の問題は、「原爆訴訟」や「水俣訴訟」と同様に、今後半世紀以上をかけた対東電、国賠訴訟へと発展してゆくだろう。


 毎日新聞は今日(3/26)の社説で、こう書いている。
 「原発から20~30キロ圏の人々は長期にわたる屋内退避を指示されたまま、日常生活が困窮している。被ばくを恐れ、外部からの物資も届かない。こうした状況は、かねて指摘してきたように、一刻も早く解消すべきだった。
 政府は25日になって、この地域に「積極的な、自主的避難」を呼び掛けた。なんともあいまいな表現だが、政府や自治体は住民がスムーズに避難できるよう、手立てを尽くしてほしい。事情があって後に残る人々への手当てにも、責任を持ってもらいたい。(⇒政府が「責任」をとろうとしないから「あいまいな表現」にしようとするのである)。
 放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない(?)こともわかってきた。原発の北西約35キロでも一日中外にいると一般人に定められた1年間の線量限度を超える地点が出てきている。 政府は、まず、各地域の放射線量の積算値や増減傾向を地図上で示してほしい。さらに、今後の「注意予測」を、地域ごとに示してほしい。そうした情報があってこそ、自治体も住民も行動計画が立てられる」。

 「こうした状況は、かねて指摘してきたように」と書いているが、私は毎日新聞が「自主避難」地域の撤廃→避難地域の拡大を社説で「指摘」した事実を知らない。もちろん、私が見落としているだけかもしれないが、事故発生後、朝日、読売、産経の社説でそのような主張をしたものは一つもない。日経や東京新聞の社説に関する記憶もない。
 おそらくこれが、大地震による災害報道と原発による災害報道の決定的違いだろう。メディアの「眼」が、放射能汚染の拡大に焦点があてられ(首都圏への「影響拡大」など)、現場周辺地域で汚染や被曝の被害を受ける人々の存在に向わないのだ。原発事故被災者の「見捨て/見殺し」の構図である。

 「放射性物質の拡散の仕方をみると、同心円状の避難対策では対応しきれない」というのも、私には意味がわからない。これは放射性物質が第一原発から同心円状=均一的に拡散しないという、当たり前の事後的調査の結果をもってそう言っているだけのことであって、避難地域を拡大しないことの正当化にはなりえない。どこにどれだけ放射能被害が現れるかを事前に予想することはできないからだ。つまり、避難区域は同心円的に拡大する以外に方法はない。それをした上で、被害が集中している地域をモニタリングによって特定し、その地域に対する重点的救援・支援を実施する責任が国にはあるのである。
 

 「原子力災害対策特別措置法」は国、原子力安全委員会、原発電力会社に都合のよい法であり、今回の事故により明らかになったことを教訓化し、より被災者と潜在的被災者(=私たち)の視点に立ち、全面的に改正される必要がある。
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福島第1原発:08年に津波可能性 本店は対策指示せず
 2008年に東京電力社内で、福島第1原発に想定を大きく超える津波が来る可能性を示す評価結果が得られた際、原発設備を統括する本店の原子力設備管理部が、現実には「あり得ない」と判断して動かず、建屋や重要機器への浸水を防ぐ対策が講じられなかったことが27日、分かった。東電関係者が明らかにした。
 12月に中間報告を出す政府の事故調査・検証委員会も経緯を調べており、研究の進展で得た津波リスク評価の扱いや対応が適切だったかが焦点となる。

 東電関係者によると、社内研究の成果である新たな津波評価を受け、原子力・立地本部の幹部らが対応策を検討した。その際、設備を主管する原子力設備管理部は「そのような津波が来るはずはない」と主張。評価結果は学術的な性格が強く、深刻に受け取る必要はないとの判断だったという。同本部の上層部もこれを了承した。  原子力設備管理部は、06年に発覚したデータ改ざんの再発防止のため実施した07年4月の機構改革で「設備の中長期的な課題への計画的な対応や設備管理の統括をする」として新設された。部長は発足時から昨年6月まで吉田昌郎現福島第1原発所長が務めた
 東電は08年春、明治三陸地震が福島沖で起きたと仮定、想定水位5.7メートルを大幅に超え、最大で水位10.2メートル、浸水高15.7メートルの津波の可能性があるとの結果を得た。東電関係者は「評価結果をきちんと受け止めていれば、建屋や重要機器の水密性強化、津波に対応できる手順書作りや訓練もできたはずだ」と指摘している。

 東電広報部は「自主的に試算した内容については、土木学会に審議してもらい、設備に反映させていくつもりだった。学会に審議を要請したのは08年10月で、軽視や放置をしていたわけではない」としている。(毎日)

2011年11月22日火曜日

11/20シンポジウム「日本の「国際協力」と人道的介入」報告

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 11月20日、法政大学(市ヶ谷キャンパス)で、シンポジウム「日本の「国際協力」と人道的介入」を開催した。
 主催者としては、休日の大学での企画、またこのような非常に「マイナー」なテーマにもかかわらず計40人ほどの参加を得て、成功裏に終了することができたと考えている。休日の午後の貴重な時間を割き参加していただいた方々に、改めて感謝の言葉を贈りたい。
 
 成功裏に終えることができたと考えるのは、人数だけではない。理由の一つは、写真をみても理解していただけるように、法政大学だけでなく、他大学の学部・院生から年配の人々まで、またNGOのスタッフから大学研究者まで、多様な世代と立場の人々の参加を得たことである。
 もう一つは、一部と二部のそれぞれの終わりに設けた質疑応答の時間に出た参加者からの質問・意見とパネリストそれぞれのそれらへの応答を通じて、シンポジウム全体の内容を深めることができたことである。パネリストの一人としては、非常に濃密な時間が持てたのではないかと思っている。

 シンポジウムの雰囲気を伝えるために、参加者の皆さんにお願いしたアンケート(19人回答)結果と、感想の一部を紹介しておこう。
 全体的評価としては、「とてもよかった」が13人、「よかった」が5人、「どちらともいえない」が1人と、おおむね好評だった。感想の中には、こんなものがあった。

・「重要なテーマについての問題提起ありがとうございました。NGOスタッフとしてしっかり受け止めることができました。私も含めて国際協力NGOのスタッフの中で、R2Pを知っている人がどれだけいるか、それ以前に国際政治、国際法の動きにどれだけ知識・関心を持って活動しているか、反省が必要だと思いました。
 この状態をどう変えるか、急いで考えます」
・「研究者、NGOという包括的な視点で考えることができました。また、保護する責任(人道的介入)に対する批判は主流(国際関係)では聞くことができず、今回聞けてとてもよかったです」
・「言葉と実態の違いへのいら立ちと不快感を感じ続けていたので、今回のシンポジウムでずいぶんスッキリしました」
・「それぞれの話をしっかり結びつけていて、コーディネーターやパネリストの質の良さが目立った。
 たくさんの事を学ばせてもらって助かりました」
・「この会に出席してよかったと思う。大分啓蒙していただいた」

 私が行った発題、「「保護する責任」にNO!と言う責任」に引きつけ、上にある「保護する責任(人道的介入)に対する批判は主流(国際関係)では聞くことができず」という、ある意味では現役学生の「告発」とも解釈しうる感想について少し考えてみたい。「国際関係」のみでなく、たとえば「国際法」や「国際政治学」、あるいは「平和学」等々の分野においても、「主流」では「保護する責任(人道的介入)に対する批判は聞くことができず」、だからこそ「言葉と実態の違いへのいら立ちと不快感を感じ続け」なければならない学生や国際NGOのスタッフが増えている、と思うからである。

⇒「自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?(2)」と、
〈リビア以後〉における「保護する責任」に関する発展的議論のために~「北朝鮮における『人道に対する罪』を止める国際NGO連合」をめぐって」につづく。

2011年11月21日月曜日

徹底討論!「原発輸出」――政府がメディア取材を理由に交渉拒否

みなさま
 FoE Japanの満田です。
 11月21日に開催を予定している「緊急討論!:原発輸出」ですが、政府側 (外務省・経産省・財務省)が「ネット中継+メディアへのオープンするならば政府交渉への出席をしない」と言ってきました。曰く、「メディアがいる場では、腹をわって話せない」と。
 当方は、「多くの国民が関心をもっている。政府は原発輸出に関して説明責任を果たすべき」と交渉しましたが、とくに外務省が難色をしめし、経産省、財務省がそれに便乗する形で、応じませんでした。
 質問状への政府の回答をききたいところではありますが、政府に妥協してメディアをシャットアウトすれば、悪しき前例をつくることとなりますし、密室の場でのやりとりは政府側に責任をもった回答を求めることは無理だと判断し、今回は政府交渉をとりやめることといたしました。結果的に、事実上の政府の交渉拒否となりました。

 よって21日は公開セミナーに政府を招聘し、コメントを求めることとしました(交渉中)。
 公開セミナーでは、ベトナムの原発建設予定地の現地調査報告、タイなどの周辺国の状況、ヨルダンの情勢および原子力協定、公的融資などに関する最新の情報をもとに、議論を進めたいと考えています。一方で、説明責任を堂々と果たそうとしない政府の立場を問うていくとともに、今回提出した公開質問への回答を改めて求めていきます。
※政府宛の公開質問状はこちら
http://dl.dropbox.com/u/23151586/111114_export_nuc.pdf
改めて、公開セミナーの修正版をご案内します。ぜひ、ご参加いただければ幸いです。
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【緊急院内セミナー】徹底討論:「原発輸出」
11月21日(月)14:00~17:00 @衆議院第二議員会館第一会議室
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-5ae9.html
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◆日時:2011年11月21日(月) 14:00~17:00
○公開セミナー(予定) 14:00~16:00
「原発輸出すべきでない、これだけの理由」
-ベトナムの事例(現地調査報告)
-周辺国の状況~タイ・ラオスの現状から
-ヨルダンの事例と原子力協定
-公的資金と原発輸出
-政府側コメント(交渉中)
-質疑 +議論

○今後に向けて:論点整理+参加者による戦略会合 16:00~17:00
◆場所:衆議院第二議員会館第一会議室(定員120名)
(東京都千代田区永田町1-7-1)
最寄駅:東京メトロ・国会議事堂前、永田町駅 徒歩5分
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kokkaimap.htm
◆主催:国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
◆要申込:下記よりお申込みください。
https://pro.form-mailer.jp/fms/7f19434f23905
◆資料代:500円(主催団体会員は無料)
◆連絡先:国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
TEL:03-6907-7217
E-mail:finance@foejapan.org

・・・
3.11後の暮らしと子どもたちの未来を考えるフォーラム-- みんなでつくろう!緑の党
(2011.11.20 13:00~16:30 東京YMCAアジア青少年センター)
http://www.ustream.tv/recorded/18633150
●開会あいさつ/共同代表:松本なみほ
●応援あいさつ/ドイツ緑の党ジルビア・コッティング=ウール連邦議会議員
●基調提言「2013年緑の党が政治を変える」/共同代表:すぐろ奈緒
資料: http://greens.gr.jp/pdf/20111120kityou.pdf
●パネルディスカッション①「経済成長神話にサヨナラ~脱成長こそ環境と雇用・生活を守る
論点提起・コーディネ―ト/共同代表:中山均
資料: http://greens.gr.jp/pdf/20111120datuseityou.pdf
パネラー/飯田哲也、満田夏花、松本哉、星野泉
http://www.ustream.tv/recorded/18634966
●パネルディスカッション②「サヨナラおまかせ民主主義~大事なことはみんなで決めよう
論点提起・コーディネート/運営委員:渡辺さとこ
資料: http://greens.gr.jp/pdf/20111120minnsyusyugi.pdf
パネラー/平田仁子、白井和宏、畑山敏夫
●脱原発アピール
①へびいし郁子・郡山市議/滝田はるな・郡山市議
②みどりの未来脱原発担当:杉原浩司
http://www.ustream.tv/recorded/18635992
http://www.ustream.tv/recorded/18636031
http://www.ustream.tv/recorded/18636031
●ゲストスピーチ/ジルビア・コッティング=ウール連邦議会議員
●ユースチームからのアピール
●賛同者・メッセージの紹介(いしだ壱成、鎌仲ひとみ、星川淳、他)
●閉会あいさつ/共同代表:八木さとし
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2011年11月18日金曜日

政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである(2)

11/20
福島第1原発:3号機で毎時1600ミリシーベルトを計測
 東京電力は20日、福島第1原発3号機の原子炉建屋1階で毎時約1600ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表した。3号機では最も高い。14日にも付近で毎時1300ミリシーベルトが検出されていた。原子炉格納容器内から漏れたとみられる少量の水のふき取り作業とともに再計測した。ロボットによるふき取り作業は難航しているという。【毎日・奥山智己】

福島原発2号機は揺れで損傷か 専門家が解析
 東京電力福島第1原発2号機で、原子炉格納容器下部の圧力抑制プールが地震の揺れで早期に損傷したか、劣化した可能性が高いとする解析結果を19日までに、原子力安全の専門家がまとめた。
 東電は、地震による原子炉の明らかな損傷はなく、津波による電源喪失が事故原因との立場。揺れで損傷していれば、福島第1と同様に従来の耐震基準が適用されている他の原発への影響も必至だ。東電や政府の事故調査・検証委員会の調査結果が注目される。
 解析したのは日本原子力研究開発機構の元研究者で、社会技術システム安全研究所(茨城県ひたちなか市)の田辺文也所長。(共同)
・・

 「年内達成ありきで冷温停止判断がなされてはならない」・・・。
 その通りだと私は思うし、読者も異論はないだろう。
 しかし、細野原発担当相(つまり、野田政権)はそう語りながら、「冷温停止」前倒し宣言がすでに破たんしていることを認めようとしない。 そればかりか、いまだに「冷温停止」→「ステップ2の年内達成」が「可能と考えている」と述べているらしい。

 一方、東電の相沢善吾副社長は、昨日の記者会見で「謝罪」したという。

 が、相澤副社長(=東電)は、いったい何を謝罪したのか?
 昨夜遅く帰国し、時差ぼけ頭に悩まされている人間には、まったくわからない。
 相沢副社長と言えば、本ブログの読者には、原子力委員会の「新大綱策定会議」(第6回)での「福島第一原発は止まった」発言でおなじみの人であるが、何がどうなっているのか。
 まずは、「政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである」(11/6)以降の状況をじっくり把握することから始めよう。


・・
年内の冷温停止に自信 細野担当相が福島第1原発の工程表改定で
 福島第1原発事故で、政府と東京電力の統合対策室は17日、事故収束に向けた工程表の改定版を公表した。放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられているとの見方を示した。
 1-3号機の原子炉圧力容器底部の温度は全て70度を下回って安定しているが、会見した細野豪志原発事故担当相は、原子炉の「冷温停止」を最大目標とする工程表「ステップ2」の達成宣言には踏み込まず、「ステップ2の年内達成は可能と考えている」(???)と述べるにとどめた。

 改訂版では、格納容器から新たに放出されている放射性物質の量は毎時0・6億ベクレルと、先月の同約1億ベクレルからさらに減少していると報告。これによる敷地境界での年間被ばく量は約0・1ミリシーベルトと、目標値(1ミリシーベルト)を大幅に下回っているとした。  また、圧力容器底部の温度は、1号機37度、2号機69度、3号機59度と100度以下で安定、損傷した核燃料が容器内に漏れだしていたとしても、十分に冷却されて蒸気発生が抑えられ、格納容器からの放射性物質の放出の危険も無いとの認識を示した。
 ただ、細野担当相は「年内達成ありきで冷温停止判断がなされてはならない」と慎重姿勢を強調。循環注水冷却システムの安定運転が確保されていることなどを評価したうえで「冷温停止宣言」をし、年内の「ステップ2」完了につなげる考えを示した。(産経)

「冷温停止」先送り 「避難域解除方針出ず、宣言できないのが実情」か
 17日に改訂された福島第1原発の事故収束に向けた工程表で、年内の最大目標である「冷温停止状態」の宣言は見送られた。冷温停止は避難区域の解除の前提でもあり、宣言を待ち望む人は多い。すでに1~3号機とも、9月末には冷温停止状態の条件を達成した(?)が、なぜ宣言が行われないのか。
 矛盾する説明に、民主党政権が重視する「政治主導」が垣間見える。(原子力取材班)
■あとは何が必要?
 「故障や地震などが発生しても現状を維持できるか慎重に評価している(?)ところだ」。細野豪志原発事故担当相は記者会見でそう述べ、冷温停止状態の宣言はしなかった。
 しかし、冷却装置などのバックアップ体制は強化されている。東京電力が示した工程表ステップ2以降の「施設運営計画」についても、原子力安全・保安院は「妥当」と評価する。政府や東電の従前の説明に照らすと、今回宣言を見送った理由は見当たらない。
■矛盾する説明
 政府・東電の説明には矛盾もある。2号機では11月2日、原子炉から放射性キセノンが検出され、核分裂が連鎖する臨界の可能性が浮上した。結果的に否定されたが、原子炉の状況が、今も把握できていないことが浮き彫りとなった。
 2号機に設置された「ガス管理システム」により判明した事実だが、1、3号機にはまだ設置されていない。東電は設置を急いでいるものの「冷温停止の判断には関連しない」(東電)(???)としている。臨界の有無など原子炉の状況把握につながる装置の完成を待たずに冷温停止宣言に持ち込む構えは、「慎重判断」の姿勢とは対照的だ。
■パフォーマンス
 こうした対応について、政府・東電統合対策室のある幹部は「冷温停止宣言はいつでも出せるが、それとセットの避難区域解除の方針がまだ決まっておらず、宣言したくてもできないのが実情」と明かす。
 だが、冷温停止の「年内達成」は是が非でも実現させたいのが政府の本音。年内の設置が間に合いそうにないガス管理システムを、冷温停止の条件に加えないのもそのためとも取れる。
 エネルギー総合工学研究所・原子力工学センターの内藤正則部長は「冷温停止の判断は周辺住民の安心・安全にも関わり、技術的に判断すべきこと。政治パフォーマンスで決められたら、たまったものではない」と話している。(産経)

福島第1原発:3号機北東側で1300ミリシーベルト
 東京電力は(11月)16日、福島第1原発3号機の原子炉建屋1階の北東側で、毎時約1300ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表した。3号機の原子炉建屋内で計測された中で最も高い
 14日、格納容器入り口にあるコンクリート製扉を動かすレールにたまった水をロボットがふきとった際、床面から高さ10~20センチで検出された。ロボットは、格納容器内の気体を浄化して外部に放出する「ガス管理システム」の取り付け作業の準備で投入した。松本純一原子力・立地本部長代理は「事故で格納容器内の圧力が高くなって、放射性物質が漏えいした可能性がある」と語った。
 1号機の原子炉建屋では8月に毎時5000ミリシーベルト超が計測されている。【毎日・久野華代】

福島2、3号機の手順書公開 長時間無電源に対応不能
 経済産業省原子力安全・保安院は16日、東京電力福島第1原発2号機と3号機の事故時運転操作手順書を公開した。10月の1号機に続き、個人名を除いて黒塗りの部分はほとんどなかった。
 公開したのは、原子炉停止や全電源喪失時の対応など今回の事故に直接関係する部分で、全体の約1割。手順書と実際の対応を比較した東電の資料も公開した。
 1号機と同様に、長期間の電源喪失を想定せず、今回のような事故には対応できない内容。保安院は「今後の事故調査の中で、専門家の意見も聞きながら分析する」としている。【共同通信】

・・・
大飯4号機の安全評価提出 関西電力、全国3例目
 関西電力は17日、定期検査で停止中の大飯原発4号機(福井県おおい町)について、再稼働の前提となる「安全評価」の1次評価結果を、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。関電の大飯3号機、四国電力伊方3号機に次ぎ、全国で3例目。
 関電は10月、大飯3号機について、想定する揺れの強さ(700ガル)の1・8倍、津波は想定の4倍の11・4メートルまでは核燃料が損傷せずに耐えられる(?)との1次評価結果を提出。構造がほぼ同じ4号機についても、評価を進めていた。 【共同通信】

福島第一、タンクの森 増える汚染水を保管
 東京電力福島第一原発の敷地内で、森林を伐採して放射能汚染水をためるタンクの設置が進められている。17日現在で容量は11万トンを超えた。上空から見ると、青色や灰色のタンクがずらりと並ぶ。汚染水は増える一方で、東電はタンクの増設に追われている。
 原子炉を冷やした水や地下水が建屋地下に流れ込み汚染水としてたまり続けている。東電は汚染水を浄化処理などしてタンクにためている。タンク置き場は、かつては「野鳥の森」と呼ばれた敷地内の森林。東京ドームの8倍もの広さに相当する37万平方メートルを切り開いてつくった。
 タンクの容量の8割にあたる約9万トンにすでに汚染水が入れられた。現時点で1~4号機の建屋地下に約8万トン残っている。東電はたまった汚染水を浄化処理して減らし、年内にゼロにする計画だった。しかし、地下水などの流入が予想外に多く、実現のめどは立っていない。

環境省:送られた汚染土壌、職員が空き地に投棄…自宅近く
 細野豪志環境相は17日会見し、福島市内で採取されたとみられる放射性物質を含む土壌が今月、環境省に2度送りつけられ、そのうち1回分の土壌を同省職員が埼玉県内の空き地に投棄していたことを明らかにした。細野氏は「除染の役割を担っている環境省として決してあってはならないこと。国民に深くおわび申し上げる」と謝罪した。
 同省によると8日午前9時ごろ、A4コピー用紙入りの箱よりも一回り小さい段ボール箱が送られてきた。中にはビニール袋入りの土と「福島市の自宅で採取した土で、環境省で保管、処分してほしい」という趣旨の手紙が添えられ、送り主の記載もあった。手紙には自宅周辺の放射線量のデータも記載されていたという。 放射線量は、0.8メートル離れた時点で1時間当たり0.18マイクロシーベルト、ビニール袋の外側で0.6マイクロシーベルト。放射性物質濃度は推定で1キロ当たり約4000ベクレルだった。

 この土壌の処分法を検討する過程で、官房総務課長が「送ってくる住民の気持ちは分かる。線量は低いので、千葉県柏市の自宅の庭で処分しようか」と話したため、同課職員が12日に埼玉県内の自宅に持ち帰り、翌日、近くの空き地にすてたという。  16日にも、同一人物と思われる送り主から前回より小さい箱が送られてきたため細野氏ら同省幹部に報告、不適切な処分が発覚した。この箱は品名欄に「灰」と書かれており、開封せずに線量を測定した結果、前回と同程度だった。
 細野環境相は、「何人も汚染土壌をみだりに投棄してはならない」と定めた福島第1原発事故による放射性物質汚染の対処に係わる特別措置法(来年1月施行)に違反する可能性があり、極めて不適切として、官房総務課長を異動させるなど、関係職員の処分を検討、自身の監督責任も検討中としている。【毎日・江口一、藤野基文】

九電原発再稼働「認めない」 枝野氏、経営姿勢を問題視
 枝野幸男経済産業相は17日の参院予算委員会で、九州電力が経営姿勢を改めない限り原発を再稼働させない考えを明らかにした。社民党の福島瑞穂党首の質問に、「自ら委託した第三者委員会の報告書を受け止めず、メンバーとトラブルになっているガバナンス(企業統治)の状況では、到底(原発の)再稼働を認めることができる会社ではない」と答えた。
 枝野氏はこれまで、記者会見などで「やらせメール」問題をめぐる九電の対応を批判してきたが、国会で批判するのは初めて。枝野氏は真部利応社長の続投方針などに不快感を繰り返し示しており、事実上、第三者委の見解を受け入れた上で、経営陣を刷新してガバナンスを見直すよう求めたものと見られる。
 また、福島氏が「傲岸不遜(ごうがんふそん)な九電の態度を見ていると(電力会社の)地域独占が問題だと思う」と指摘したのに対し、枝野氏は「九電に対する評価は全く同感だ」と応じた。

 第三者委の委員長を務めた郷原信郎弁護士ら3人の元委員もこの日、福岡市内で記者会見を開き、九電のトップが暴走しているとして経産省が適切に指導、監督するよう要望した。郷原氏は、真部氏は第三者委の見解を受け入れず、細部の反論にこだわっているとして「自分たちの組織を変えるつもりがなく、原発を運営する事業者として信頼は得られない」と述べた。 (朝日)

・・・
馬毛島の開発許可取り消し検討 鹿児島県知事
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は18日の定例記者会見で、西之表市馬毛島の開発をめぐり県の現地調査を拒否しているタストン・エアポート(東京)に対し、開発許可の取り消しを検討する意向を明らかにした。「調査拒否は許可条件に違反する」としている。
 馬毛島は米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地で、同社が島の大半を所有している。滑走路整備に無許可開発の疑いなどがあり、県は2回にわたって現地調査の実施を要請したが、拒否されている。  伊藤知事は「一般的に、調査をさせてもらえないなら開発許可もストップになる。その手順をどうするか、丁寧に考えていきたい」と述べた。 (南日本新聞)
⇒「馬毛島の軍事施設化を許さない屋久島の会
⇒「特集 米軍移転計画」(南日本新聞)

与那国「民意」二分 陸自説明会紛糾
 夜の公民館に怒号が飛び交った。「誘致ありきじゃないか」「町民無視だ」―。
 17日、与那国島への自衛隊部隊配備について防衛省と与那国町が開いた住民説明会。賛成派を上回る町民556人の署名を集め、誘致は町民全体で合意されていないとする反対派町民に対し、2009年の町長選で民意は示されたとする外間守吉町長の主張は平行線。島内を二分したまま、配備が着々と進み島民の反発と危機感が強まっている。(又吉嘉例)

 説明会冒頭。反対派町民でつくる与那国改革会議の崎原正吉議長が、防衛省職員の紹介を制し「町民全体の議論がなされていない。町民の合意を基に、防衛省が説明するのが筋だ」と発言。「どうして誘致か、町長が説明会を持て」「誘致反対の署名数をどう受け止めるのか」と続いた。
 外間町長は「誘致について町長選と別に民意を問うつもりだったが、皆さん(反対派)が争点にして私が当選した。すでに民意は出ている。町として説明することは何もない」と拒否。
 与党多数の町議会9月定例会で、自衛隊誘致活動の中止を求める要請決議案が否決されたことも挙げ「(否決は)誘致に向けて頑張ってくれ、という意思表示だ」と述べた。

 反対派町民は「防衛省の説明を受けたら、既成事実づくりになる」と数十人が退席。公民館の外で集会を開き、「町長は住民の声を聞け」「防衛省は帰れ」と気勢を上げた。
 崎原議長は「町民全員が納得した上で説明会をやったと思われたらたまらない。賛成、反対はあっても議論に基づき決めるのが民主主義のルール。町民を無視したやり方で進めるのはおかしい」と町側を批判。
 集会では牧野トヨ子さん(88)が「沖縄戦では与那国も空襲を受けた。何もないところに弾は飛んでこない。平和な島に自衛隊はいらない」と訴えた。
 集会に参加した与那国中学校の2年生は「島の将来を守るのは僕たち中学生。自衛隊に任せるのはおかしい」と誘致を疑う。 一方、集会後に与那国防衛協会の金城信浩会長は「賛成派、反対派が話し合う機会ができてよかった。皆さん納得したと思う」と配備計画が進むよう期待した。(沖縄タイムス)

2011年11月17日木曜日

原発を問 う民衆法廷実行委員会への賛同・協力をお願いします

原発を問う民衆法廷実行委員会への賛同・協力をお願いします。

 福島第一 原子力発電所事故は、国際評価尺度レベル7の重大事故であり、いまだに収束せずに放射能汚染を拡大し続けています。深刻な放射能汚染は今 後数十年の長期にわたり、私たちの生活と生命をおびやかし続けます。人類が経験したことのない重大な福島原発事故に対し、「原発犯罪」と いう言葉が用いられるようになってきました。民衆にとって「原発犯罪」は理解できる概念です。

 そもそも 人間がコントロールできない原発を「安全神話」で国策として推進してきたこと、情報操作・隠蔽、腐敗した利権構造。その結果としての重大事故、地域・生活破壊、食品汚染、不十分な賠償。これらの責任を誰が取るのでしょうか、不処罰でよいのでしょうか。避難・被害者の権利実 現は、賠償・補償はどのようになされるべきでしょうか。今、法の正義が問われているのです。事故責任の解明も、反省・処罰もなく、原発再稼動がすすめられてはなりません
 残念なが ら、原子力基本法や原子力損害賠償法など原発に関わる現行法は、原発推進の法体系です。今まで司法権力が原発に関連して下した判決は、原発推進を後押しするものでした。法の正義が実現されないとき、民衆が立ち上がり原発をめぐる法規範を確立するのが必然です。

 原発を問 う民衆法廷は、歴代政府の原発推進政策から今回の事故について、将来の賠償・補償も含めトータルに把握し、個別の犯罪だけでなく、全体と しての原発犯罪の構造を明らかにしたいと考えます。そのために、民衆の知恵と創意を集め原発民衆法廷実行委員会を構成し、現代世界におけ る正義の規範を打ち立てる運動としていきます。
 原発民衆 法廷実行委員会は、みなさんの賛同・参加を得て2011年内に発足し、原発に関す る申立て(訴え)を受けながら、判事団を構成し、全国各地で巡回法廷(公判)を持ち、法的決定(勧告)を出していきます。被災者の避難、 除染、賠償・補償や、原発再稼動問題など緊急性を求められる事項から解明していきます。最終的には国策としての原発推進政策そのものを憲法レベルから裁く憲法裁判所の役割を果たしたいと考えます。
 原発民衆 法廷実行委員会は、実際の原発に関するすべての訴訟と連携し、支援する運動となりながら、また、被災者のすべての権利実現の諸活動に貢献 できるように、法理論の構築を目指していきたいと思います。

 以上の目的を遂行し、原発・放射能の恐怖を子どもたちの未来に残さないために、原発を問 う民衆法廷の実行委員会への参加・賛同を呼びかけるものです。

2011年11月

よびかけ人
青柳行信 (人権・正義と平和連帯フォーラム代表)
足立昌勝(関東学院大学教授)
阿部浩己(神奈川大学教授)
上原公子(元国立市長)
河合弘之(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会議代表)
黒田節子(原発いらない福島の女たち~100人以上の座り込み[世話人])
澤野義一(大阪経済法科大学)
谷 百合子(無防備平和のまちをつくる札幌市民の会)
田部知江子(弁護士)
新倉 修(青山学院大学教授)
新村繁文(福島大学教授)
萩尾健太(弁護士)
布施哲也(反原発自治体議員市民連盟)
渕上太郎(経産省前テントひろば・9条改憲阻止の会)
武藤類子(ハイロアクション福島原発40年実行委)ほか

原発民衆法廷顧問:
河合弘之(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会議代表)ほか

◆連絡先:
矢野秀喜(090-2466-5184)、
Email: qqq568d9k@extra.ocn.ne.jp

<お知らせ>
●12月17日(土)午後1:30より 第1回実行委員会
●場所:明治大学リバティータワー(神田駿河台校舎)20階120C教室

*********************

原発を問う 民衆法廷実行委員会に賛同します。 

●賛同金 1口千円(何口でも結構です)
●氏名(団体名) 
●(氏名公表:可・不可)
●住所・連絡先

2011年11月6日日曜日

政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである

政府・東電は「冷温停止」前倒し宣言を撤回し、謝罪すべきである

 福島第一原発3号機の原子炉建屋1階の最大放射線量が、最大毎時620ミリシーベルトであることが確認された。「格納容器ガス管理システム」設置前の準備調査で計測されたのである。
 下の時事通信の記事によると、東電の松本原子力・立地本部長代理は5日の記者会見において、1~3号機への「格納容器ガス管理システム」の設置は年内いっぱいかかる、と言ったという。

 これによって、これまで政府・東電が宣言してきた「冷温停止」の年内前倒し宣言は、事実上、破綻した。なぜなら、「格納容器ガス管理システム」の設置と、その後の一定期間におけるガス内の放射性物質の分析抜きに、1~3号機の原子炉の再臨界の可能性がなくなった、とは言えなくなったからだ。

 松本氏は、「線量が高いため、設置作業の前には遮蔽(しゃへい)や除染が必要になる」と言ったらしい。しかし、問題はそんなことにあるのではない。問題は、最大毎時620ミリシーベルトの放射線量値が、「小規模」「局所的」であれ、3号機の再臨界の可能性を示唆しているところにある。遮蔽も除染も必要だが、それ以前に放射性物質の早急な分析が求められているのである。

 一方、細野原発相は、5日の浜松市内での講演において、2号機で放射性キセノンが検出されたにもかかわらず、「(原子炉の『冷温停止状態』を目指す)工程表の『ステップ2』の年内に達成という方針を変える必要はない」と「強調」したという(読売)。2号機のキセノン検出は、再臨界ではなく自発核分裂だと断定したのは東電であって、最終的な分析結果はまだ出ていないはずだ。
 つまり、細野氏は、「冷温停止」前倒し宣言を見直なすべき事態に直面しているのに、その事実に目をそむけ、ただ前倒しを政府として宣言してしまった、ただそれだけの理由で見直さないと強弁しているに過ぎないのである。

 私たちは、改めて政府・東電に対して、「冷温停止」前倒し宣言の撤回を要求しなければならないだろう。政府・東電は、面子にこだわらず、宣言を撤回し、国際社会と全国民に謝罪すべきである。
 それと同時に、1~3号機の格納容器内の状態について、何を、どこまで把握しているか/何が把握できていないか(何も把握していない?)、そのすべてを情報公開することも、併せて要求しなければならないだろう。

 また、新聞メディアを含むマスコミに対しても、東電の発表を鵜呑みし、垂れ流すのではなく、政府・東電がきちんと説明責任を果たすことを強く要求すべきであること、このことを指摘しておかねばならないだろう。

 マスコミも私たちも、もう少し事態を深刻に受け止めたほうがよさそうだ。

・・・ 
11/7
臨界判定基準見直し 東電方針 キセノン検出を反映
 東京電力は六日、福島第一原発の臨界判定基準を見直す方針を明らかにした。経済産業省原子力安全・保安院に先月提出した報告書では、半減期の短い希ガスが検出されないことを条件としていたが、今月二日に2号機で自発核分裂により発生したとみられる放射性キセノンを検出。実態と合わなくなり、修正を余儀なくされた
 二日にキセノンを検出した際、東電は「臨界の可能性がある」と発表したが、その後、検出量が少なかったことなどから「自発核分裂によるものだった」と訂正していた。 東電の川俣晋原子力品質・安全部長は、六日の記者会見で「再臨界かどうかでは、大変心配をおかけした。報告書の改訂版を準備している。その中で見解を示す」と述べた。
 十月十七日に保安院に提出していた「中期的安全確保」に関する報告書では、キセノンなど半減期の短い希ガスが検出されないことが臨界判定基準だった。(東京新聞)
 ↓
 政府(安全・保安院)と東電は.「中期的安全確保の考え方」において、
①放射性物質の放出抑制・管理、
②崩壊熱の適切な除去、
③臨界防止、
④水素爆発防止、の四つを「冷温停止」後の、次のステップに進む際の「安全確保」の4つの指標としていた。つまり、政府・東電の「冷温停止」前倒し宣言は、上の①から④がすでに達成されているという、まったく誤った(能天気な)認識の下で発せられていた、ということである。
 もしも2号機のキセノン検出が、「小規模」かつ「局所的」なものであれ臨界状態を示したものであれば、①から③のすべてに政府・東電は失敗したことになり、とてもじゃないが「冷温停止」など程遠いことが歴然となる。

 ここで注意しておきたいことは、1、「臨界防止」は①と②の蓄積された結果であって、①から③が独立しているのではないこと、また2、「自発核分裂」は、確かに起こりうるが、その可能性はきわめて低いこと(3%程度と言われている)、である。
 1、3号機からのキセノン検出の危機に陥った東電は、当初自らが定義した「臨界要件」からキセノン検出を除外し、あくまでも「冷温停止」前倒し宣言に、姑息に固執する腹積もりらしい。 ここまで来れば、もう「語るに落ちた」というべきで、まともに取り合う気力も萎えてしまう。

 しかし、これが「冷温停止」の政治的定義とその政治的宣言のリアリティなのである。

.玄海原発の低レベル廃棄物、青森・六ヶ所村へ
九州電力は6日、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で発生した低レベル放射性廃棄物を日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)に運ぶための船積みを行った。
 九電によると、輸送は昨年に続き、11回目。今回は3、4号機の部品だった金属類やプラスチックなどをセメントで固め、容量200リットルのドラム缶440本分。放射能測定の結果、缶表面は基準値を下回った。
 缶は8本ずつ鋼鉄製の輸送容器(縦約3・2メートル、横約1・6メートル、高さ約1・1メートル)に収容し、原発専用港に停泊中の専用輸送船「青栄丸」(約4000トン)にクレーンで積み込んだ。( 読売)

11/6
3号機建屋内、依然高線量=ガス管理装置、年内設置―福島第1
 東京電力福島第1原発事故で、東電は5日、ロボットを使った3号機原子炉建屋1階の調査で、最大毎時620ミリシーベルト(!)の高い線量を確認したと発表した。
 調査は、格納容器内の空気を抜き出し、フィルターで浄化した後に外部に放出する「格納容器ガス管理システム」設置準備の一環として実施。2、3日の両日、ロボット3台を使って同建屋1階北東側の床面に散乱するがれきなどを移動させた後に測定した。その結果、作業場所に最も近い地点で毎時215ミリシーベルト、約3メートル離れた地点で同620ミリシーベルトを記録した。
 同システムは、格納容器内の気体の採取も可能なため、既に設置されている2号機では水素濃度の確認や核分裂反応を示す半減期の短い放射性物質の検知に用いられており、東電は1、3号機でも設置を急いでいる。
 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は5日の会見で、「線量が高いため、設置作業の前には遮蔽(しゃへい)や除染が必要になる」と説明。1号機も含め、同システムの設置完了は年内いっぱいかかるとの見通しを示した。 

低線量被曝の健康影響調査…原発相が方針
 細野原発相は5日、浜松市内で講演し、東京電力福島第一原子力発電所事故に関連し、放射性物質の年間20ミリ・シーベルト程度の低被曝ひばく線量が健康に及ぼす影響を解明するため、内閣官房に有識者による作業部会を作り調査する方針を明らかにした。
 細野氏は「100ミリ・シーベルト以下の影響は学問的にも最終的にすべて解明し切れていない部分がある」と語った。その上で、より広い範囲で影響を調べるため、国際放射線防護委員会(ICRP)が事故収束時の住民の被曝限度の目安としている20ミリ・シーベルト程度の低被曝線量を対象に、内閣官房の放射性物質汚染対策顧問会議の下に作業部会を新設するとした。

 また、細野氏は、福島第一原発の事故収束に向けた工程表について、同原発2号機で放射性キセノンが検出されても、「(原子炉の『冷温停止状態』を目指す)工程表の『ステップ2』の年内に達成という方針を変える必要はない」と強調した。(読売)

・・・
電力2社から計157億円 青森・東通村、使途明かさず
 青森県東通村が、村内で原発を立地・建設中の東京電力と東北電力から、約30年間に計約157億円を受け取っていたことが分かった。電力2社は「寄付金」や「負担金」として支出したと説明するが、村はこれらの資金を予算の「雑入」に分類して見えなくしていた。使い道の詳細も明らかにせず、不透明な財政運営を続けていた。
 東通原発では、東電と東北電が2基ずつ建設する計画で、東北電は2005年に1号機の運転を開始した。電力2社の資金に、国が原子力施設の立地自治体に支払う電源三法交付金を加えると、02年度は計41億円に達し、村予算の38%を占めた。村は潤沢な原発マネーを使い、94億円を投じた東通小・中学校の建設など施設整備を進めている。
 電力2社によると、資金提供は村の要請に応じて1983年度から始まり、2社が受益者となるインフラの整備に充てるための「負担金」と、地域振興向けの「寄付金」として支出。会社関係者によると、東電と東北電の負担割合は2対1。自治体への資金提供では最大規模とみられる。
 一方、村はその使途について、道路や上下水道などの整備費、漁業施設の建設費などに充てたとだけ説明し、個別の事業費などを公表していない。(朝日)

2011年11月5日土曜日

で、私たちは東電をどうするのか?(3)

で、私たちは東電をどうするのか?

 東電に対する野田政権の基本姿勢は、はっきりしている。
①東電を、公的資金を投入しながら、救済する、
②東電が「原子力事業」を継続することを承認する、
③資金投入分は、消費税導入・増税・電気料金値上げによって回収・補填する。

 私は、税金を投入し、東電を救済することに反対である。また、東電が柏崎刈羽を含め原子力事業を継続することにも反対である。被災者・被曝者の賠償・補償に税金が投入されることは、やむなしとする者だが、そのためには最低上の二点と、今回の原発災害に対する政府・東電・自治体の行政的・法的な責任を明確にする、ということが条件になる。
1、福島第一原発の5、6号機と第二原発の廃炉を正式に決定し、
2、東電から原子力事業を切り離し、柏崎を国の管轄下に置き、その将来的処遇は「広域的住民投票」で決定する、
3、賠償・補償については東電に「無限責任」を課すことを基本とし、「電力自由化」を経て東電が倒産するなら国=税金で補填する、という考え方えである。
 私個人は「電力自由化」そのもには、さして関心を持たないが、上の1から3を方針化しないから「自由化」も進行しないのである。 
 さて、読者は東電をどうすべきだと考えるだろう。
 原子力事業をかかえたままの東電の救済を支持するだろうか?

⇒「福島第一原発は「止まった」か?」更新

「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「福島原発大災害の賠償/補償と政府-自治体・東電の責任-- ①で、私たちは東電をどうするのか?」(4/5)
⇒「で、私たちは東電をどうするのか?(2)」(5/15)

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東電援助、8900億円決定 経産相、事業計画認める
 野田政権は4日、東京電力による福島第一原子力発電所の事故の賠償を円滑に進めるために作った「緊急特別事業計画」を認めた。東電が政府に8900億円の援助を求め、年度内に5900億円のリストラをすることなどが柱。電気料金の値上げは今回の計画に盛り込まず、来春以降につくる総合特別事業計画で検討する。

 計画は、東電と原子力損害賠償支援機構が共同で作り、10月28日に政府へ提出。本格的な賠償を進めるにあたり適切な内容かどうかを経済産業省などが確認していた。政府は4日午前、「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」の初会合を開き、機構担当の枝野幸男経産相が計画認定を決めた。
 枝野氏は、閣議後の記者会見で、「国民のお金を一時的とはいえ預かる責任を十分踏まえ、徹底した合理化をするよう(東電や機構に)伝えた」と述べた。
 東電は今回の計画で、当面の賠償に必要な金額を約1兆円と見積もった。政府の保険制度で1200億円を受けとれるため、差額の8900億円を当面の賠償資金として援助を要請。東電が将来的に返していく。 (朝日)

東電歴代役員に1兆円賠償求める 一部株主が代表訴訟へ
 福島原発事故で東京電力が巨額の損失を出したのは、経営陣が津波や地震への安全対策を怠ったためだとして、一部の株主が歴代役員に計約1兆1千億円の賠償を求める株主代表訴訟を起こす方針を固めたことが4日、関係者への取材で分かった。
 関係者によると、訴訟を起こすのは脱原発を求める株主ら約30人。東電が8月に発表した原発事故の損失見込み額約1兆1千億円を賠償するよう、勝俣会長ら過去20年の役員約60人に求める。請求額は増える可能性がある。 11月中に東電の監査役に訴訟を起こすよう求めるが、応じない可能性が高い。60日以内に応じなかった場合、株主代表訴訟に移行する。 【共同通信】
 ↓
 私はこの要求を当然のことだと考えている。全面的に支持する。

東電:終身年金3割カット 10年で経費削減2.5兆円超
 東京電力と原子力損害賠償支援機構が策定した「緊急特別事業計画」(仮称)の全容が27日、明らかになった。福島第1原発の賠償資金を捻出するため、退職者も含めて企業年金を見直し、80歳以上に支払う「終身年金」の給付額を3割カットするなど経営合理化を徹底。今後10年間で総額2兆5000億円超の経費を削減し、新たに約5800億円の資金援助を政府に申請する。

 東電と支援機構は計画を月内に枝野幸男経済産業相に提出し、11月上旬の認定を目指す。認定後に政府から賠償資金の援助を受け、合理化による資金と合わせて原発事故の被害者救済を急ぐ。
 2013年3月末までに約4兆5000億円と試算される賠償費用のうち、当面の必要額は政府援助約5800億円と原子力損害賠償法に基づき申請した政府補償分1200億円を合わせた約7000億円で賄う。対象とする賠償期間は、原子炉をより安定的に冷却し冷温停止状態に持ち込む「ステップ2」の終了までを目安とする。

 経営合理化では、11年度内に約2400億円の経費を削減。年金見直しでは、65歳以上80歳未満に支払う「有期年金」も、会社が保証する運用利回りを最低2・0%から1・5%に引き下げ、削減効果を10年間で総額1000億円超と見込む。見直しには労働組合の同意や、退職者の3分の2以上の同意が必要となる。
 合理化の具体的なペースや達成期限、手順などを明示する「工程表」を策定。東電と支援機構の首脳や実務者レベルの作業部会を設置し、工程表の進捗(しんちょく)状況を確認する。
 東電と被害者の賠償交渉が難航して訴訟に発展する事態を避けるため、東電が「原子力損害賠償紛争解決センター」の和解仲介案を尊重することを明記。センターに実質的な強制力を持たせる。(毎日)
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 読者は、これで十分と考えるだろうか?

三菱重、トルコ原発に意欲 仏アレバと共同参入を示唆
 トルコ英字紙ヒュリエト・デーリー・ニューズ(電子版)は4日までに、同国の黒海沿岸シノップの原子力発電所建設計画について、三菱重工業の有原正彦執行役員が「計画への参画に関心を抱いている」と述べ、受注に向けた意欲を示したと伝えた。
 同紙によると、有原氏は、フランス原子力大手アレバと共同で受注を目指す可能性を示した。また、三菱重工が手掛ける加圧水型(PWR)原子炉を運用する関西電力が、運営主体として参入する可能性にも言及したという。【カイロ共同】

原発地元に匿名寄付500億円 福井、大半は電力業界か
 全国最多の原発15基(1基は解体中)を抱える福井県と県内立地4市町に、匿名を希望する大口寄付が2010年度までに少なくとも計502億円寄せられていたことが、自治体への情報公開請求などでわかった。朝日新聞の今回の取材で、約3割の150億円は、同県内に原発をもつ関西電力など電力事業者からと特定できた。
 自治体関係者は「電力事業者以外に大口寄付はほぼない」と語っており、残りも電力業界からの可能性がある。福井県と原発近くの県内市町には1974~2009年度に、電気利用者が払う電気料金を原資とした「電源三法交付金」が国を通して計3245億円交付されているが、ほかにも巨額の金が利用者に見えない形で地元に入っていた。
 判明した匿名寄付は、福井県・計197億5千万円(92~10年度)▽敦賀市・計133億1千万円(69~10年度)▽おおい町・計102億4千万円(81~10年度)▽高浜町・計13億4千万円(80~10年度)▽美浜町・計55億3千万円(91~10年度)。千万円以上を計上し、電力事業者からと判明した匿名寄付は小口分も含めた。
(朝日)

原発事故自主避難の411世帯、東電に賠償請求
 東京電力福島第一原発事故を受け、政府が指定した避難対象区域外から自主的に避難した福島県内の住民らが(8月)12日、東電に転居費用や慰謝料など計約11億7000万円の賠償を求める請求書を提出した。
 支援団体によると、請求したのは、すでに自主避難したり自主避難を検討したりしている同県や宮城、茨城両県などの計411世帯。
 政府の原子力損害賠償紛争審査会が今月5日に決定した中間指針では、自主避難した住民は賠償の対象に盛り込まれず、今後も議論されることになった。
 請求書と同時に提出した要請書で、住民らは「現状では、自主的に避難した住民は賠償などを得られる保証がない。東電は責任を持って自主避難者への賠償を明言するべきだ」と訴えた。これに対し、東電は「紛争審査会の検討を待ちたい」と回答したという。(2011年8月12日 読売)

⇒「11/5 避難の権利集会 in 東京 ~自主的避難に賠償を!~
1.「自主的」避難と東電賠償~原子力損害賠償紛争審査会の最新の議論より
2.区域外の福島で、生じていること~渡利問題の今
3.自主避難者の訴え
4.渡利からのアピール

2011年11月2日水曜日

「冷温停止」状態にある福島第一1、2、3号機で核分裂、臨界、キセノン検出?

「冷温停止」状態にある福島第一1、2、3号機で核分裂、臨界、キセノン検出?

11/3 ①
 キセノン検出について、東電は「自発核分裂」と断定し、この報告を受け、安全・保安院が東電の断定が妥当を否かを判断する、ということになった。NHKニュース
・原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監。「自発核分裂の可能性は高いと思うが、科学的に見て、局所的な臨界の可能性をすべて否定できるわけではないので、東京電力の調査内容を含めて専門機関の分析結果を見て評価したい。さまざまなリスクを分析したうえで、ホウ酸水の注入など、万一の事態に備えた設備面での対応ができているかどうか、東京電力に確かめていきたい」。

 つまり、現時点では東電の断定が妥当かどうか分からない、「福島第一1、2、3号機で核分裂、臨界、キセノン検出?」状態が継続している、ということだ。しかし、小規模・局所的な臨界が発生したのであれ、自発核分裂であれ、事態の深刻さは変わらないと私は考えている。

 なぜなら、もしも前者であれば、これまでの東電、というよりも統合対策本部の原子炉・格納容器の監視体制そのものが問われるからであり(統合対策本部は、なぜ3月の途中で中性子の動きを制御するホウ酸水の注入をやめてしまったのか?その判断の根拠は何だったのか? いつだったかは調べてみないと分からないが、私はこのブログで「ホウ酸注入はどうなったんだ?」と書いたことがある)、
 後者であれば、今後の監視体制をより一層厳しく、かつ入念にする必要があるからだ(自発核分裂→中性子放出→連鎖的核分裂の阻止)。

 各検索サーバーのトップページやニュース欄、また一部新聞メディアの記事を地球の反対側から流し読みすると、何か東電が「自発核分裂」と断定したことに安堵感というか、「大した、深刻な問題ではなくて胸をなでおろした→安心した/安心せよ」とでもいったような、今回の事態を過小評価するような雰囲気が漂ってくるのだが、そのような受け止め方は、福島第一原発の現状を判断する基本姿勢において、明らかに間違っている。
 事実は、こうだ。「東日本大震災:福島2号機、キセノン検出 原子炉内、なお不安定 「冷温停止」黄信号」(毎日新聞)を引用しながら、問題点を整理しておこう。
・「小林圭二・元京都大原子炉実験所講師によると、圧力容器底部の温度低下によって水の密度が高まり、効率よく核分裂させる中性子が生じやすくなることなどによって、臨界が起きた可能性がある」「核燃料の場所も把握できていない。事故収束を議論する以前の問題だ」。

・「ガス管理システムを導入した際1%だった2号機の格納容器内の水素濃度は、10月30日には2・7%まで上昇した。4%まで高まると爆発する恐れがある。
 東電は「格納容器内の水素がガス管理システムで吸引された可能性がある」として、窒素ガスの注入量を上げるなどした。今回のキセノン検出でも、東電は2日未明にホウ酸水を注入したが、ともに対症療法に終始した。
 ↓
 「対症療法に終始」と言うより、「対症療法」しかできず、それをしっかりやる以外に(再)臨界を阻む手はない、ということだ。濃度が「低い」としても(つまり、「この程度」のキセノンの検出は、もともと核燃料総量に含まれるプルトニウム総量から言えば、検出されて「当然」だと仮に言えたしても、これまでの「対症療法」に落ち度があったということの方が重大であり、深刻なのである。 

・九州大の工藤和彦特任教授(原子炉工学)。「キセノン濃度は低く、核分裂の規模は極めて小さいと考えられる。政府と東電は原子炉から外部に出ている放射性物質の管理に全力を挙げるべきだ」
 ↓
 重要なことは、福島第一原発から依然として放射性物質が「外部に出ている」という事実認識をしっかり持つ、ということだろう。 もっと分かりやすい言い方をすれば、「レベル7」の「深刻な事故」を起こした福島第一原発は、依然として、
①「放射性物質の少量の外部放出」がメルクマールとされる「レベル4」の「所外への大きなリスクを伴わない事故」状態と、
②「放射性物質の極めて微量の外部放出」=「レベル3」の「異常事態」の間を浮遊する、
極めて不安定な状態にある。
 「核分裂炉」の物理的解体作業に着手するまで(最短でも30数年後? ということは40年後もありうる?)、「対症療法」と「原子炉から外部に出ている放射性物質の管理に全力を挙げ」る以外に、道はないのである。

⇒「福島第一原発は「止まった」か?」を更新 

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2号機「臨界」 情報開示さらに徹底を
 福島第一原発の2号機で核分裂が連続する「臨界」が起きた可能性が濃厚だ。東京電力や政府の見通しの甘さの証しといえる。今回の事態を軽く見ず、詳しい情報の開示をさらに徹底すべきである。
 メルトダウン(炉心溶融)した2号機の核燃料がどんな状態なのか、実は誰も分からない。溶け出した核燃料が、原子炉の圧力容器や格納容器の底に堆積しているとみられている。そこに大量の水を注ぎ込んでいるのは、核燃料を冷やし、安定させるためだ。
 ところが、格納容器内の気体の状態を調べる装置から、キセノン133と同135と推定される放射性物質が検出された。自然界に存在せず、核分裂に伴って生成される物質だ。 しかも、半減期はキセノン135の場合だと、約九時間である。つまり核分裂反応が連鎖的に続く「臨界」が局所的に起きた可能性が高いとして、東電は核分裂を抑えるホウ酸水を注入したのだ。

 最悪のシナリオを描けば、冷却水が沸騰したり、核燃料が露出したりすると、破損した原子炉から外部に大量の放射性物質がばらまかれる恐れが出てくる。
 経済産業省原子力安全・保安院は「大規模な臨界が起きる可能性はほとんどない」「全体として安定した状態だ」とコメントしているが、本当に信用できるのか。実はキセノン131は八月中旬にも検出されていたが、「原発事故当時のものだ」と軽視していたのだ。今回の結果は、原子炉がいまだ極めて不安定な状態にあることを示すものだといってよい。
 まず取り組むべきことは、原発周辺に住んでいた人々に事態を丁寧に説明することだ。緊急時避難準備区域が解除されてから、自宅に帰還している住民たちがいる。原発に不安定な疑いが出た段階で、早めに手を打たないと、再び被ばくを広げる結果を招きかねない。日本のみならず、全世界が注視している問題でもある。
 原発の循環注水冷却システムが万全かどうか再点検も必要になる。水素爆発を起こした1号機や3号機でも「臨界」が起きている可能性も否定できず、さらに精緻な調査が求められよう。
 原子炉を年内に「冷温停止状態」にするという工程表は、もはや信頼性を失ったも同然である。「状態」というあいまいな用語で冷温停止を宣言しても、全国の原発再稼働ありきを前提にした“見切り発車”だと誰もが見破る。(中日新聞社説 11/3)

「批評する工房のパレット」内関連ページ
⇒「「内省に欠ける国」の避難準備区域解除」(10/3)
⇒「「原子力緊急事態宣言」解除前の「緊急避難準備区域」の解除?」(10/4)


11/3 ②
 2号機に続き、1、3号機も核分裂→臨界(「小規模」だから問題ない?)の「可能性」が出てきた。 
 とりいそぎ、事実と報道を記録し、私たちの記憶に刻むために、主要な記事をクリップしておこう。
 果たして、福島第一原発は、「止まった」と言えるのか? 記事を読みながら、この問題も併せて考えていただきたい。
 状況は、仮に「危険が迫っているような状態」(経産省原子力安全・保安院は)ではないにしても、「科学的」にも政治的にも、かなり深刻である。

・・
1、3号機も小規模臨界の可能性 福島原発、分析進める
福島第1原発2号機で核分裂が生じ一部で小規模な臨界が起きた可能性がある問題で、東京電力は2日、2号機格納容器から吸い出した気体を再分析し、臨界があったかどうかを確かめる作業を進めた。東電は「1、3号機についても同様のことが起きている可能性がある」としており、早期に燃料の状態を把握する必要がある。
 また政府、東電が年内に目指している「冷温停止」状態の達成について、専門家からは危ぶむ声が出ている。 東電によると、2号機に設置した格納容器内から気体を吸い出し浄化する装置で、1日に採取した 気体に放射性キセノン133、135が含まれていることを示す兆候があった。 (共同)

福島2号機の核分裂ほぼ確実 キセノン確認、臨界調査中
 東京電力福島第1原発2号機でのキセノン検出に関し、経済産業省原子力安全・保安院は2日、日本原子力研究開発機構の評価でキセノンが確認されたと発表、核分裂が起きたことがほぼ確実となった。
 東電が同日、2号機格納容器の気体浄化装置に新たに取り付けたフィルターからも微量の放射性キセノンが検出された。小規模な臨界が起きたかどうかは引き続き調査する。
 細野豪志原発事故担当相は「データは安定しており臨界はないと考えている」(???)と述べ、連鎖的な核分裂反応には否定的な見方を示した。さらに政府、東電が目指す年内の冷温停止は「達成できる」と強調(!)した。(共同)

福島第1原発:キセノン検出確認 「長時間臨界」は否定
 東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内で、核分裂によって生じる放射性キセノン133やキセノン135とみられる気体がごく微量検出された問題で、経済産業省原子力安全・保安院は2日、検出されたのはキセノン133と135だったと発表した。また、東電も同日、キセノンとみられる気体を検出した気体を再度測定した結果、同程度の濃度のキセノンとみられる気体が含まれている可能性があると発表。保安院は「核分裂反応が起きキセノンが発生した可能性は高い」と話している。
 東電は、日本原子力研究開発機構に気体の詳細分析を依頼。同機構がキセノンの検出を確認した。

 東電は容器内の気体について、格納容器内の気体を浄化して外部に放出する「格納容器ガス管理システム」(10月28日稼働)を使って1日午後に採取して測定した気体を再測定した。その結果、1回目の測定と同様にキセノン133とみられる気体を1立方センチあたり100万分の1ベクレル程度、キセノン135とみられる気体を1立方センチあたり10万分の1ベクレル検出した。
 さらに、2日昼にも気体を採取して測定。キセノン133とみられる気体は検出できなかったが、同濃度のキセノン135とみられる気体を検出した。
 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「2度も同じような値が出たので核分裂が起きた可能性は高い。ただ、核分裂が起きていたとしても小さいレベルで、大量のエネルギーを出している状況ではないので問題はない」(???)と説明。圧力容器の温度や圧力のデータに大きな変化はなく、臨界が長時間続いた可能性を否定した。このため、これまでもホウ酸水の注水は「事故発生直後などは念のため入れてきた」(東電の松本氏)が、継続的には実施してこなかったという。

 2号機の格納容器内の気体については、8月にも今回と別の方法で調査を実施。この時も2種類のキセノンがごく微量発生していた可能性があったが、検出できる濃度の限界値が高かったため検出されず、再臨界の可能性も低いとして詳しい測定をしていなかった。
 保安院の森山善範原子力災害対策監は会見で「キセノンが検出されたことから、核分裂が起きた可能性は高い。局所的な臨界も否定できない」と述べた。【毎日・奥山智己、関東晋慈、久野華代】

2号機で核分裂 一時臨界の可能性
 東京電力は2日、福島第1原発2号機で原子炉格納容器内の気体に放射性キセノン133と135が含まれている可能性があり、核分裂が起きている恐れが否定できないとして、核分裂を抑えるホウ酸水を原子炉に注水した。原子力安全・保安院は同日、分析の結果、キセノンが確認されたと発表した。半減期の短いキセノンが検出していたことで、直近に核分裂反応が起きていたことになる。
 東電は、核分裂が連鎖する再臨界については、原子炉温度や圧力が安定しており、「一時的、局所的に発生した可能性はあるが臨界が続いている状況ではない」とした。
 原子炉の温度や圧力、放射線量を測定する敷地周囲のモニタリングポストの値には変動はなく、保安院の森山善範原子力災害対策監は「局所的な臨界が起きた可能性は否定できないが、全体的には安定した状態にある」としている。
 2号機には原子炉内の気体を吸い出す装置があり、1日に採取した気体を分析したところ、キセノンとみられる物質をごく微量検出し、日本原子力研究開発機構に分析を依頼していた。 キセノンが発生したことで、
(1)再臨界が起きた
(2)単発的に中性子が放射性物質に衝突した
(3)放射性物質が自ら分裂する「自発核分裂」が起きた-
の3通りの可能性が考えられるといい、東電は再臨界が起きたかどうかを評価している。(キセノンとは? 半減期5日と9時間 ウランが核分裂する際にできる希ガス)(産経)

福島第1原発:“臨界”連絡遅れ保安院長に厳重注意
 藤村修官房長官は2日の記者会見で、東京電力福島第1原発2号機で臨界が一時的に起きた可能性がある問題について、首相官邸や経済産業相への連絡が遅かったとして、枝野幸男経産相が深野弘行原子力安全・保安院長に厳重注意したと発表した。
 藤村氏は「原発事故収束の取り組みは政権の最優先の事案で、場合によっては核分裂反応に発展している可能性があるという情報だった。速やかに伝達すべきだった」と語った。

 核分裂で発生する放射性キセノンが検出されたのは1日午後。保安院は1日夜の段階で東電から連絡を受けたが、藤村氏は「(保安院は)温度や圧力のデータからただちに危険を生じる事態でないということで、翌朝に官邸や経産相に報告すると判断したと聞いた」と経緯を説明した。
 保安院は首相秘書官に2日午前7時過ぎに連絡し、野田佳彦首相には秘書官から報告が入った。その後、枝野氏に伝わり、藤村氏が報告を受けたのは午前9時ごろだった。【毎日・小山由宇】
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11/2
 東電は今日(11月2日)、福島第一原発2号機の格納容器内のガスから、2種類の放射性物質キセノンを検出したと発表した。 東電は、原子炉内で核分裂が起きている「可能性がある」(?)と言い、中性子を吸収して核分裂を止めるホウ酸水を注入し始めたという。
 これに対し、経産省原子力安全・保安院は、「2号機の原子炉の温度や周辺の放射線量に大きな変化はなく、危険が迫っているような状態(?)ではない」(読売新聞)とのコメントを発表した。(キセノン133は半減期約5日、同135は半減期約9時間)。

 ところで、政府・東電によれば、福島第一原発は、もちろん2号機を含め、事実上「冷温停止」状態にあるのではなかったか? 「冷温停止」状態にある原子炉が、「危険が迫っているような状態」であるかどうかが問題になるとは、いったいどういうことか。
 ほんの2週間ほど前、政府・東電が何を言っていたか、思い出してみよう。
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「冷温停止状態、発表出来る状況」…平野復興相
 平野復興相は(10月)18日、福島県二本松市で開かれた民主党の会合で、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束に向けた工程表に関連し、「ステップ2」の柱である原子炉の冷温停止状態は事実上、達成済みとの認識を示した。
 平野氏は「明日にでも冷温停止状態を発表しようと思えばできるが、警戒区域(の縮小など)をどうするか、セットで出すべきだということで、発表を差し控えている状況だ」と説明した。政府と東電は17日に改訂した工程表で、冷温停止状態の達成時期を「年内」と明記している。(読売)
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 「原子炉の冷温停止状態は事実上、達成済み」?
 「明日にでも冷温停止状態を発表しようと思えばできるが、発表を差し控えている」?
 平野復興相は、2号機の核分裂→キセノン検出をどのように受け止めたか、記者会見を開き、明らかにすべきだろう。こういう、およそ「科学的知見」を持たないとしか思えない人には、とても「復興大臣」は務まらないと思えるので、釈明をきちんとしてもらった上で、辞任してもらうのが適切かも知れない。

 一方、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は、「冷温停止前倒し」宣言に関し、「上部からの注水で十分冷却できており問題ない」と説明していた。これに対して私は「政府・東電は、なぜ「冷温停止」を急ぐのか?」の中で、次のように指摘した。
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 この発言に触れて、私は改めて「なぜ東電の技術屋は、自分たちが過去何度も判断を誤り、前言を翻し、「訂正」を繰り返し、そうすることで日本中を恐怖と不安に叩き込んできたことを顧みようとせず、かくも断定的に物が言えるのか?」と考え込んでしまったものだ。自分たちの判断はまた誤ってしまうかもしれない、慎重には慎重をきす、という姿勢が、どうしても感じられないのである。
 横柄とか傲慢という言葉では形容できない、何かが根本的に欠落しているとしか私には思えない、そんな人間の姿を垣間みてしまうのである。
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 東電は、また一つ、判断を誤ってしまったようだ。
 自分たちの判断は、今後もまた誤ってしまうかもしれない、慎重には慎重をきす、という姿勢を忘れないでいてほしいものである。

1、政府・東電は、何を置いてもまず「冷温停止年内前倒し」宣言を撤回すべきである。
2、そして、なぜこの時期になって2号機が核分裂を起こし、新たに放射性物質を放出しているのか、その解明をなし、情報をすべて開示すべきである。

私たちは、玄海原発4号機の再稼働を深刻に受け止めるべきである

 それともう一つ、玄海原発4号機の再稼働問題。
 私たちはこれを深刻に受け止めるべきである。その理由を二つだけ、あげておこう。
 一つは、福島第一原発災害後初の停止中原発の再稼働に関し、国が「政治判断を下さない、という政治判断」を下し、「地元合意」を無視した九電の再稼働見切り発車、いわば暴走を容認したことである。

 もう一つは、玄海原発4号機の再稼働は、実は福島第一原発が「止まった」という認識、つまり福島第一原発のメルトダウン→メルトスルーは、
①M8クラス、震度7の地震によってもたらされたものではなく、「誰も予想だにしなかった天変地異としての巨大津波」によるもの、という認識に基づいた、
②非常にアリバイ的な、できあいの「緊急安全対策」なるものによって原発の「安全性」は保証されているという前提に基づき、強行されたことである。

 一点目に関して言えば、「地元合意」を無視した九電の見切り発車、暴走が、きわめて意図的で、計画的なものであることを見抜いておく必要がある。
 NHKのニュース、「原発交付金 多くの自治体申請」によれば、先月末段階で、原発や関連施設がある全国44の自治体のうち40の自治体が例年どおり申請を行い、「脱原発」などを理由に申請を取りやめたのは4自治体にとどまった。
 つまり、「地元合意」も何も、佐賀県にしろ玄海町にしろ、「原発マネー」を政府(および九電)から受け取ります、とすでに宣言していたわけである。(NHKニュースによれば、
①「原発の建設が計画されている福島県南相馬市と浪江町が「脱原発」を理由に交付金の申請を辞退したほか、鹿児島県と薩摩川内市が、今後、増設する予定の九州電力川内原発3号機について申請を行わな」かった。
②「このほか、立地自治体の周辺の合わせて66の自治体も例年どおり申請」。
③「立地自治体と周辺自治体が申請した交付金の総額は、今年度の上期だけでもおよそ700億円」。
④「また、ほとんどの自治体が、来年度以降も引き続き交付金を受け取る意向で、原発事故のあとも多くの自治体が、国からの交付金を求めている実態が浮き彫りに」なった)

 要するに、九電にしろ国にしろ、こうした全国各地の原発立地・周辺自治体の状況を踏まえた上で見切り発散、暴走し、それを黙過するという「政治判断」を下したわけである。「立地・周辺自治体から反対は出ないだろう」という判断の下で。国と自治体の行政のレベルでは、すでに「合意」は取られていたということだ。
 だからこそと言うべきか、住民/市民の総意思を反映しない、国・自治体行政・電力業界の暴走に歯止めをかけるためにも、「広域的住民投票制度」の導入が必要なのである。
 
 二点目。 これについては、まず原子力安全・保安院が、6月9日、佐賀県に対して提出した「緊急安全対策の対応状況等に関するご質問へのご回答を読んでほしい。
 この中で、佐賀県の「①緊急安全対策は津波対策だけだが、福島第一原子力発電所の事故は地震動で起きたのではないか」という質問に対し、保安院fは次のような見解を「まとめ」として示していたのである。

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・数千ページにおよぶプラントパラメータ等の科学的データに基づき、以下の確認結果から、地震発生時に「止める」、「冷やす」、「閉じこめる」の各安全機能が正常に動作していたことを確認。

地震発生時に運転中のプラントは正常に自動停止するとともに、外部電源喪失後に非常用ディーゼル発電機は正常に起動し、機能していること
冷却機能についても、各原子炉の状態に応じた機器が作動し、正常に機能していること
津波の到来により、全交流電源を失った後に、バッテリー、配電盤等の電源系が被水・冠水したため、電源喪失期間が長期に渡り、深刻な状態に至ることとなったこと
 なお、地震が安全機能に関わる機器以外のどのような機器等に影響したかについては、今般の地震被害を正確に把握し、今後の安全規制に必要に応じて反映する観点から、更なる調査を引き続き実施することが重要である。 
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 分かりやすく言えば、福島第一は地震には耐えたのであり、何も問題はなかった、しかし地震の後に誰も予想できなかった大津波の襲来によって「事故」へと至った。だから、「事故」後の全国の原発の「緊急安全対策」としては津波対策だけで十分なのだ(しかし、実際上はきわめて不十分なそれ)、と保安院は言っているのである。 
 かくして、玄海原発4号機は、定期検査→「ストレステスト」に入る直前において、東日本大震災レベルの「複合災害」への「安全対策」を持たぬまま、再稼働が強行されたわけである。

⇒「福島第一原発は「止まった」か?」につづく

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福島第一原発2号機、核分裂の可能性 ホウ酸水を注入
 東京電力は2日未明、福島第一原発2号機の原子炉内で溶けた燃料が核分裂反応を起こしている疑いがあるとして、反応を抑えるためにホウ酸水を注入した。核分裂反応が連鎖的に続く臨界が局所的に起こった可能性もあるという。発電所周辺の放射線量の測定値に異常な変動はみられないという。状況によっては年内の事故収束を目指している工程表に影響する恐れがある。
 2号機では、放射性物質の放出を抑えるため、格納容器内の気体を浄化するガス管理システムが10月28日から稼働していた。東電によると、処理した気体を1日に調べた結果、放射性キセノン133、135とみられる放射性物質を検出した。ほかの物質が間違えて検出された可能性があるので、現在、研究機関で再評価をしている。

 放射性キセノンはガス状で、炉内で燃料のウランが核分裂する際にできる。放射性物質の量が半分になる半減期は、キセノン133が約5日、135が約9時間と短い。検出されたとすれば、事故直後のものとは考えにくく、今も溶けた燃料で核分裂反応が起きていることを示すものだ。
 これを受け、東電は2日午前2時48分から、原子炉を冷却するための水にホウ酸を混ぜて核分裂反応を抑える措置をとった。ただし、採取した気体からは核分裂でキセノンと一緒に生じる放射性ヨウ素は検出されなかった。また建屋周辺で核分裂の際に出る中性子線は検出限界以下だった。 (「と、東電は言っている」という話である。)(朝日)

危険大、伊方原発差し止め提訴へ 四国と広島の住民ら 
 日本最大級の断層帯・中央構造線に近い四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は大地震による事故の危険があるとして、四国4県と広島県の住民らの団体が1~3号機の運転差し止めを求める訴訟を松山地裁に起こすことが1日、訴訟関係者への取材で分かった。 3日に松山市で開く集会で訴訟参加を募り、12月上旬にも提訴する方針。
 伊方原発は、現在1、3号機が定期検査中で停止しており、2号機も来年1月に定検に入る見通し。四電は3号機の早期再稼働を目指している。 同原発をめぐっては、73年に住民らが全国初の原発訴訟として1号機原子炉の設置許可取り消しを求める訴訟を起こしたが敗訴。【共同通信】

保安院、東電に装備提供させる 防護服、線量計など
 東京電力福島第1原発事故が発生して以降、規制当局の経済産業省原子力安全・保安院が、現場の原子力保安検査官用の防護服や全面マスク、アラーム付きデジタル線量計といった被ばく対策装備を、すべて東電に無償で提供させていたことが2日、保安院関係者への取材で分かった。
 被ばく対策を含めた東電の事故対応を厳しくチェックする側の規制当局が、最低限の装備でさえ電力会社に依存していた形。保安院は10月、ようやくデジタル線量計30個を自力で調達したが、電力会社との癒着体質があらためて浮き彫りになった。【11/3 共同通信】

2011年11月1日火曜日

玄海原発が危ない!(3)

11/3

⇒「再検証・玄海原子力発電所」(佐賀新聞)
⇒「<佐賀・玄海原発>4号機再稼働 市民の声を聞け 九電に4団体抗議」(毎日)

11/1

 玄海原発が、危ない。いよいよ、危ない。
 この期に及んで「再稼働に地元の同意など必要ない」と居直る九電。
 その幾分悲惨とも言える姿に、とんでもないいたずらをしでかし、家族みんなに叱られ、「もう二度としません」と反省文を書いたはずの子どもが、あまりにみんなの追求が厳しいものだから、憔悴の果てに勝手に逆ギレし、暴れまくり、実は反省も何もしていなかったことが明らかになるという、そんな子どもの姿を思い浮かべてしまうのは、私だけだろうか。電力業界の面々、原子力ムラの面々は、どうしてこうなのだろう?

 そして、原発再稼働は「地元の同意事項ではなく、国の判断に異論を挟むのは難しい」と語る岸本英雄玄海町長はと言えば、相変わらずのようだ。この人は、原発立地自治体の長として、この7ヶ月半、福島での事態の推移を見ながら、いったい何を学んだのだろう?
 ともあれ。「連中」はがむしゃらで、必死である。私たちは、理性を失うことなく、必死になろう。 

アップデート
 先ほど読んだ毎日新聞の記事によると、九電は、玄海原発4号機について、「自社の判断で再稼働させることを玄海町の岸本英雄町長に正式に伝えた」という。九電は、明日にも再稼働し、今週中にも通常運転に移行させるつもりであるらしい。
 これに対する岸本町長の弁。「国が安全と言ったので納得している」。
 一方、「やらせメール問題」などで満身創痍の古川康知事。「国の責任で安全管理をやってもらうという話なので、それを全く否定することではない」「国がどう考えているか確認したい」・・・。

 原発災害と再稼働における自治体の責任とは何か?
 私たちは、もう一度一から議論をし直したほうがよさそうだ。、

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玄海原発4号機を再稼働 佐賀、知事と町長が容認
 九州電力は1日、人為的ミスによるトラブルで停止した玄海原発(佐賀県玄海町)4号機について、同日午後11時に原子炉を再稼働し、2日午後に発電を再開すると発表。東京電力福島第一原発の事故後、トラブルで停止した原発の再稼働は初。周辺住民への十分な説明がないまま再稼働を強行する姿勢に、反発が広がりそうだ。
 佐賀県の古川康知事は1日午後、県庁で記者団に「国が十分に審査し判断したことなら受け入れる」とし、再稼働を容認。玄海町の岸本英雄町長も容認姿勢を示した。 九電によると、玄海4号機は4日ごろ通常運転に復帰する予定。ただし、12月中旬には定期検査で再び停止する。 【共同通信】

玄海4号機再稼働 地元の同意なく広がる波紋(佐賀新聞)

玄海4号機、数日で再稼働へ 九電「準備でき次第、通常運転」
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)4号機が人為的ミスによるトラブルで自動停止した問題で、九電は10月31日、「準備ができ次第、通常運転に復帰し、(当初予定通り)12月に定期検査に入る」とするコメントを発表し、数日中にも再稼働させることを明らかにした。九電関係者によると、同日夜、再開準備の作業に入った。
 原発の安全性をめぐる議論が続く中、地元理解を得ることなく再稼働を表明したことに批判が集まることは確実。玄海原発をめぐるやらせメール問題も決着しておらず、社内からも疑問の声が出ている。(共同)

玄海4号機運転再開へ 九電、地元同意「必要ない」
 九州電力玄海原発4号機(東松浦郡玄海町)が人為的ミスによるトラブルで自動停止した問題で、経産省原子力安全・保安院は31日、九電が提出していた原因分析と再発防止を明記した報告書に対して「おおむね妥当」と評価した。これを受け、九電は運転再開の方針を発表。
 「運転再開は事業者判断」とした保安院の見解を根拠に、立地自治体の首長の同意は「必要ない」として、同日夜から運転操作の準備に入った。地元同意もないままの再稼働には批判が出そうだ。  

 保安院は、九電が10月21日に提出した報告書について「原因が適切に推定され、対策が取られている。おおむね妥当」(?)と評価した。4号機は定期検査で停止した原発の再稼働条件としている安全評価(1次評価)の「対象外」とし、「運転再開は事業者判断」としている。  
 九電は国の評価を受け、県と玄海町に12月中旬に予定している定期検査前に、いったん運転を再開する意向を伝えた。10月21、22日には同町内の全戸に原因と再発防止策を記したチラシを配布。「住民への理解活動は進めてきた」として、立地自治体の首長の同意は「必要ない」としている。4号機は高温停止状態で、運転操作開始後、早ければ1日で発電を再開、4、5日で通常運転に復帰する。
 4号機は10月4日、誤った補修作業の手順書に沿って復水器を真空状態に保つ蒸気元弁の部品交換を行った結果、空気が入って自動停止した。  

 岸本英雄玄海町長は「地元の同意事項ではなく、国の判断に異論を挟むのは難しい(?)。ただ、国が大丈夫というからすぐに運転再開というのはいかがなものか」と疑問を呈し、1日にも国に対して「妥当」と判断した理由を確認する考えを示した。
 福島第1原発事故を受け、国内の原発54基は定期検査で順次停止し、現在、稼働しているのは玄海1号機など10基となっている。 (佐賀新聞)

玄海3号機「耐震安全性に影響ない」 九電、国に報告
 九州電力は31日、耐震安全性評価でデータの入力ミスがあった玄海原発3号機について、正しいデータによる解析を行い、「耐震安全性に影響はない」とする評価結果を経産省原子力安全・保安院に報告した。同様の入力ミスがあった4号機は解析作業が遅れており、11月21日までに報告する。 

 玄海3号機は今年7月、2008年、09年に提出した中間報告と最終報告で、復水タンクの屋根の重量に関するデータなど3カ所で入力ミスが発覚。安全上、重要な建物や機器、配管などの耐震安全性を正しいデータ(?)で解析した。
 同1、2号機の報告書についても合わせて再点検した結果、新たに15カ所の転記ミスが見つかった。九電は「実際のデータは正確で、安全に問題はない」としている。
 九電は2、3号機で再稼働の条件となる安全評価(1次評価)を進めており、早期に評価結果を国に提出した考え。国が妥当と判断すれば、3号機は地震関連のテストに入ることになるが、「やらせメール」問題が収束していない中で、厳しい見通しとなっている。(佐賀新聞)

被爆者団体が九電に抗議へ やらせメール問題
 長崎市の被爆者5団体は10月31日、九州電力本店(福岡市)を4日に訪問し、玄海原発の再稼働をめぐるやらせメール問題などに抗議すると発表した。 真部利応社長宛ての抗議文を同社に提出し、運転開始から35年以上が経過した玄海原発1号機の廃炉も求めるという。 
 5団体はやらせメール問題について「長年の独占体制による利用者無視ともいえる行為だ」と厳しく批判。東京電力福島第1原発事故後も、老朽化した玄海1号機が稼働し続けることに危機感を感じたとしている。  長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長は「稼働する原発を止め、再生可能エネルギーに転換していくべきだ」と話した。 (佐賀新聞)

野田首相:原発再稼働に前向き…英紙インタビューに
 野田佳彦首相は31日までに英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに応じ、運転停止中の原発について「(安全評価を原子力安全委員会などがチェックする)一連のプロセスを踏み、再稼働できるものは再稼働していく。政治が前面に立って説明する」と述べ、再稼働に前向きな考えを示した。来夏の電力需給については「節電や電力供給の主体を多様化するなどの対応が必要」と強調した。【毎日・中井正裕】
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「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「玄海と川内が危ない!」(2011/7/5)
⇒「玄海と川内が危ない!(2)」(2011/7/7)

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野田首相:原発新増設一部容認の発言 島根原発など背景か
 野田佳彦首相が(10月)17日の毎日新聞のインタビューで、原子力発電所の新増設を一部容認する姿勢を示した背景には、中国電力が建設中の島根原発3号機(松江市)の工事の進捗(しんちょく)状況が、4月末時点で約93%に達した事情を踏まえた現実的な判断がある。ただ首相は「全くまっさらなところから新しいものを作るのは極めて困難」とも指摘。新増設を推進する考えとは一線を画す考えも強調した。
 首相は原発の新増設について「中国地方などで進んでいるものもある。そういうものも含めて個別の判断になっていく」と述べた。あえて「中国地方」に言及し、島根原発が念頭にあることを示唆した形だ。首相は原発の再稼働についても「地元の理解や国民感情などを踏まえて政治判断する」と述べており、来夏の電力不足などをにらみ、短期的に原発に依存するのは避けられないと判断したようだ。

 島根原発3号機は05年に着工、4月末現在で93.6%まで工事が進んでいる。中国電力は当初、来年3月の営業運転開始を予定していたが、東京電力福島第1原発事故を受け、中国電力は5月、津波対策強化のため営業開始の延期を発表した。3号機は震災前の今年2月、制御棒の動作で不具合が判明したため運転開始を3カ月遅らせて来年3月に延期しており、延期は2回目となる。
 中国電力の苅田知英社長は9月16日の記者会見で、3号機について「発電に関わる機器の据え付けもほぼ終わっている」と述べ、地元の理解を得て営業運転を開始したい意向を示していた。
 このほかに現在、新規立地で建設中または計画が具体的に進んでいるのは、Jパワー(電源開発)、東電、中国電力など4カ所で計6基ある。いずれも震災発生を受け、工事や計画は中断したままだ。

 Jパワーが建設中の大間原発(青森県大間町)は37.6%まで工事が進んでいた。東電は青森県東通村で、東通原発1号機の17年3月の稼働を目指して建設中で、20年度以降に稼働予定の2号機も計画を進めていた。中国電力は上関原発1、2号機(山口県上関町)の建設に向けて、陸地の造成や海面の埋め立てなどの工事を行っていた。【毎日・野原大輔、久野華代】

野田首相:インタビュー要旨(10/18毎日、抜粋)
▽TPP交渉参加
 アジア太平洋地域は経済成長のエンジンで、高いレベルの経済連携は日本にとってプラス。一方、農業再生との両立などの懸念を一つ一つきちんと説明していくのが大事。特定の時期に特定の結論ありきでなく、幅広く議論し、なるべく早い時期に結論を出す。

▽普天間飛行場移設
 日米合意にのっとり、沖縄の負担軽減を図りながら、沖縄の理解をいただく。

▽原発の再稼働と新増設
 再稼働はストレステストなどを経て、地元の了解や国民感情などを踏まえて政治判断する。現時点で新増設は全体的には困難。ただ既に建設が相当進んでいるものは個々に判断する。まっさらな所から新しいものを作るのは極めて困難だ。

▽原発輸出
 2国間の信頼を損なわないことに留意し、(国会審議中の)ロシア、韓国、ヨルダン、ベトナムの原子力協定は進める。ただ、新たに違う国と協定交渉や原発輸出をするかどうかという議論は違う。原発事故の検証などを見ながら結論を出す。

▽復興増税
 (復興債の)償還期間や税目は、与野党協議で取り入れられるものは取り入れる。償還期間は将来世代に先送りせず、今を生きる世代が分かち合う。たばこ税は公明党が決して反対でない。償還期間は10年が基本だが、よく話を聞いて対応する。60年では従来の建設国債と同じで、それはいくらなんでも違う。

スロースリップ:房総沖でプレート滑り、群発地震誘発も
 防災科学技術研究所(茨城県つくば市)は(10月)31日、千葉県の房総半島沖で、フィリピン海プレート(岩板)と陸側プレートの境界面がゆっくり滑り(スロースリップ)を起こしていると発表した。広瀬仁主任研究員は「群発地震の誘発も考えられる」と説明している。
 この場所のスロースリップは約30年間観測が続いており、前回までの5回は平均6年間隔で起こっていた。今回は07年8月以来4年2カ月ぶりで、間隔は過去最小。東日本大震災の影響で早まった可能性もあるという。07年には、スロースリップに誘発されたとみられる群発地震が房総半島周辺で発生した。

 防災科研が全国に整備した、地盤のわずかな傾きも検知する高感度地震観測網のうち、房総半島6地点のデータを分析。最大の動きは、10月26~30日の5日間に深さ約20キロで約6センチ滑ったと推定した。
 国土地理院(同)も31日、房総半島の電子基準点観測データから、スロースリップを確認したと発表した。今給黎(いまきいれ)哲郎・地理地殻活動総括研究官は「過去の現象と似ている」と説明。巨大地震の前兆の可能性については「現時点で結びつきを示すものはない」としている。
 筑波大の八木勇治准教授(固体地球物理学)は「前兆ではないが、スロースリップの間隔が短くなり、今後、巨大地震が起こりやすくなったことは言える」と話している。【毎日・安味伸一】

「原発輸出許さない」 日印原子力交渉再開に被爆者5団体が反発
 福島第1原発事故以降に中断していた日本とインドの原子力協定締結交渉を進展させることが、(10月)29日の両国外相会談で合意され、野田政権が継続を表明した「原発輸出」は現実味を帯びてきた。本県の被爆者5団体は31日、記者会見し「(原発)輸出は断じて許せない」と反発。田上富久長崎市長も「NPT(核拡散防止条約)体制がなし崩しになる」とあらためて反対の姿勢を明確にした。
 インドはNPT未加盟国。NPTは加盟国にだけ原子力の平和利用を認め、未加盟国への核技術移転を禁じている。実質的な核兵器保有国インドとの原子力協定をめぐっては、県や同市が「NPT体制の崩壊につながる」として原発事故前から政府に抗議してきた。田上市長は31日の定例会見で「NPTに加盟しなくても原子力の平和利用ができる仕組みに(日本が)参画することになる。理屈が合わないし反対のスタンスは変わらない。広島も同じ(意見)だと思う」と述べた。

 被爆者5団体は同日、海外輸出に反対する文書を野田佳彦首相らに送付した。文書では「原発への信頼が根底から失われているにもかかわらず、輸出しようとする政府や企業の常識を疑わざるを得ない。人間としてあるまじき行為だ」と痛烈に非難。原発事故が収束しない中、政府がやるべきことはエネルギー政策の転換だと訴えている。
 土山秀夫元長崎大学長は「他国がインドへの原発の売り込みに成功している現状がある。日本も乗り遅れたくないのだろう」と分析。「いくら経済のためとはいえ、日本は非核三原則を掲げておきながら国の倫理に反する行為をしようとしている」と政府の対応を批判し、被爆地から反対の声を上げるべきだと主張した。 (長崎新聞)