自衛隊は何をしに南スーダンに行くのか?
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自衛隊が南スーダンに行く。南スーダン南部に位置する「比較的治安が安全な」首都ジュバを拠点にしながら、道路整備や新生南スーダンのインフラ建設に貢献するために行くらしい。
野田首相は、国連本部で現地時間の21日夕、潘基文国連事務総長と会談し、南スーダンPKO参加に向け、「日本の得意分野で新しい貢献をしていきたい」と述べた上で、国連南スーダン派遣団(UNMISS)がジュバに設置した司令部に陸自から要員2人を送る方針を表明した。
これを受け、一川防衛相が統合・陸海空幕僚長に司令部要員の派遣準備を指示する一方、防衛省・外務省・内閣府から計30人が派遣に先立つ調査と称して現地入りした。来月には、南スーダンばかりでなく周辺諸国の「調査」のため、第二陣の調査団が組織されるという。
ところが。日本が日本としてどのような政治目的の下で、何を具体的な目標にして自衛隊を南スーダンに「派遣」するのかがわからない。
報道によれば、当初の計画を前倒しして、早ければ来月にも「先遣隊」を送り込みながら、来年初頭までには300人の陸上自衛隊員を「派遣」するというが、「調査」の結果が報告される前に、なぜ派遣規模を決めることができるのか? この点ひとつをとってみても、今回の「派遣」が/も、先に「派遣ありき」の実にいい加減な代物であることがわかるはずだ。
2011年9月現在の南スーダンは、きわめて不安定かつ不透明な政治的状況に直面している。9月25日付のSouth Sudan News Agencyのこの記事、New Rebel Movement Emerges in South Sudan; Calls For The Overthrow Of The Government(「南スーダンに新たな反政府武装勢力登場~現政権打倒を呼びかける」)を読んでほしい。
ここで「新たな」というのは、先月の独立国家宣言式典直前に、現政権との停戦に合意した南スーダン解放戦線とは別に、という意味であるが、武装闘争路線を支持する/しないとは別の問題として(私は支持しない)、少なくとも記事にあるマニフェストを読むかぎり、その主張:
1. Rampant Corruption(現政権にはびこる腐敗)、
2. Insecurity、
3. Tribalism and Nepotism(種族主義と同族登用)、
4. Treatment of Foreigners in Juba、
5. The Spiralling Inflationの内容は、かなり正当なもののように見受けられる。
この新たに登場した南スーダン民主戦線が、解放軍(と一般民衆)に対し、武装解除し国軍に統合されるのではなく、現政権打倒に向け統一戦線を組もう、と呼びかけているわけである。
ともあれ。現政権は政権内の腐敗一掃に向け、具体的措置を取ると約束してはいるが、現政権の腐敗は万人が認めるところであり、問題は、そうした政権を米英仏を中心とする国連が軍事的・政治的・経済的にバックアップするという構図が、独立以前から出来上がってしまっていることだ。
独立はした。しかし国内の恒久的な和平が実現したとは、とてもじゃないが言いがたい。これが南スーダンの現実である。で。国連は何をするのか、日本は何をするのか? 自衛隊は何をしに行くのか? 日本が新生国家建設に「貢献」していることを国際的に「アピール」するために? ただの存在証明として?、それとも石油・威厳の確保?
いや、そもそも自衛隊を出す前に、国連PKOの存在以前に、国連も日本政府も、もっとやるべきことがあるのではないのか。イラク、アフガニスタン、ソマリアへの国際的介入の破綻を、私たちは再び南スーダンにおいて繰り返すのだろうか。国連はまたしても一国の内戦的事態に対して介入し、自らが紛争の当事者となってしまうのだろうか?・・・・・・
書き出せば、切りがない。この問題についてはもっと議論しなければならないことがあるので、今後、折に触れて書き足してゆくことにしたい。
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今日、紹介したいのは、一見、自衛隊「派遣」問題とは無関係に思いがちな、しかし実は根っこのところで関係している、南スーダンを始めとするアフリカ諸国のLand Grabbingについての情報である。
*Land Grabbing-日本語では「大規模な土地強奪」とでも訳せばよいだろうか。ただの土地強奪ではない。きわめて大規模な土地強奪のことを言う。アフリカ大陸全域では、すでにフランス一国の国土に匹敵する土地が強奪された、と言われている。
誰に? 多国籍企業? もちろん、それも含まれる。しかし、そればかりではない。ハーバードを筆頭とする米国の「有名大学」である。その事実を商業紙として報じたのがガーディアン紙の記事、US universities in Africa 'land grab'である。(同様の記事は、BBCでも報じられた。いずれも記事の主なソースは、Oakland Institute である。)非常に興味深い記事なので、まずは目を通してほしい。
南スーダンに触れているところを引用するなら次の通りである。
The largest land deal in South Sudan, where as much as 9% of the land is said by Norwegian analysts to have been bought in the last few years, was negotiated between a Texas-based firm, Nile Trading and Development and a local co-operative run by absent chiefs.
南スーダンの国土の9%が、テキサスの企業、Nile Trading and Development によって強奪されている。Nile Trading and Developmentは、南スーダンの他にも各地で「土地強奪」を行っているのだが、こうして土地がある日突然強奪されることによって、もともとその土地に住んでいた人々、農民、先住民族が土地を追われ、強制移住させられる。それによって土地をめぐる「紛争」が、当然、起こる。
私が今いるグァテマラも、まさにその渦中にある国のひとつなのだが、南スーダン(とスーダン)も同じなのだということを、ここで押さえておこう。(国連スーダンミッションは何のために存在し、自衛隊は何のために、何をしに行くのだろう?)
しかし、上の記事(つまり、元々のレポート)が興味深いのは、こうした多国籍企業やヘッジファンド(あるいは中国、韓国、サウジアラビア等々・・・のように国家そのもの)のみならず、というかその背後に、25%という莫大なハイリターンを求め、自己資金を拡大をめざした米国の「有名」大学の投機的行為がある、ということを暴露している点である。記事の核心部分。
The new report on land acquisitions in seven African countries suggests that Harvard, Vanderbilt and many other US colleges with large endowment funds have invested heavily in African land in the past few years. (つまり、リーマン・ショック以降ということ)
Much of the money is said to be channelled through London-based Emergent asset management, which runs one of Africa's largest land acquisition funds, run by former JP Morgan and Goldman Sachs currency dealers.(つまり、米国の多くの大学が、リーマン・ショックに責任を負いながら、(いつも)米国政府によって訴追を免れるウォール・ストリートの「罪人」たちが拠点をロンドンに移し設立した土地強奪会社に資金を流し、ボロ儲けをしてきた、ということ)
アフリカ大陸をはじめ世界的規模で展開されてきたこの土地強奪に、日本のヘッジファンド、多国籍企業に老舗の商社、政府・自治体、そして大学がどの程度関与しているのか?
誰か、調べてみてはどうだろう。
なお、land grabbingに関する日本語の翻訳・情報サイトとしては、「農地は誰のものか? 」を薦めたい。
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11月
・PKO決定の南スーダン 治安、病気との闘い
国連平和維持活動(PKO)で、陸上自衛隊の施設部隊を派遣することが一日に閣議決定された南スーダン。七月九日にアフリカ五十四番目の国家としてスーダンから独立し四カ月近くが経過した。だが、今も反政府武装勢力による襲撃が続き、陸自部隊が活動する首都ジュバから離れた地域では治安情勢に大きな不安もある。
二〇〇五年まで二十年以上続いた内戦は、南スーダンを疲弊させ道路や電気などのインフラ整備は遅れたままだ。日本政府は内戦終結後、無償資金協力でジュバ周辺のインフラ整備を進めてきたが、本格的な整備は今後の課題になる。
陸自派遣で懸念されるのは、まず南スーダンの治安問題。北部の国境に近いユニティ州マヨムでは先月二十九日、反政府武装勢力と政府軍の戦闘が起き、市民十五人を含む約七十五人が死亡したとされる。ジュバ北方約百二十キロにあるジョングレイ州では八月、家畜の盗難をめぐって二つの部族間の衝突があり約六百人が死亡したと伝えられ、その後も衝突が発生している。
治安が安定しているジュバでも国連南スーダン派遣団(UNMISS)幹部が滞在先ホテルで警官に暴行される事件があった。
南スーダンはUNMISSの仲介などで反政府武装勢力と和解を進める。だが、スーダンとの国境にある産油地帯アビエイ周辺には複数の武装勢力が残存、政府軍との交戦が絶えない。産油地帯の国境画定が未解決なため、原油利権をめぐるスーダンとの関係悪化も懸念材料といえる。 また、熱帯特有のマラリアに感染するケースも多く、十分な医療体制が整っていないジュバでの活動は病気との闘いでもある。
南スーダンのキール大統領は先月九日、スーダンのバシル大統領と共同会見を開き「われわれが内戦に戻ることはない」と強調。しかし、両国とも、国境付近を拠点とする反政府武装勢力を支援していると非難し合っており、治安安定までには時間がかかりそうだ。 【東京新聞・ロンドン=小杉敏之】
・南スーダンPKO、陸自部隊派遣を政府が決定
政府は(11月)1日午前、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊の施設部隊を派遣する方針を正式決定した。藤村官房長官が閣議で派遣方針を表明し、一川防衛相ら関係閣僚に準備に入るように求めた。 派遣規模は約300人で、部隊は「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」の要員として、同国の首都ジュバを拠点に道路や空港の補修などのインフラ整備を担う。 民主党政権下でのPKOへの陸自部隊派遣は、2010年2月のハイチ復興支援以来、2回目。
政府は今後、PKO協力法に基づく実施計画と関係政令を策定し、年内に閣議決定する。年明けの1月にも第1次要員約200人を派遣し、来春までに順次、「300人態勢」に近づける。(読売)
10月
・戦闘で80人死亡=武装集団が町を襲撃-南スーダン
日本政府が陸上自衛隊施設部隊の派遣を検討中の南スーダンで29日、大規模な戦闘が発生、現地からの報道によると、約80人が死亡した。戦闘があったのは北部のユニティ州で、自衛隊派遣が検討されている南部の首都ジュバとは数百キロ離れている。しかし、不安定な国情が浮き彫りになった形で、検討作業にも微妙な影響を与えそうだ。
AFP通信によると、同州北部の町マヨムを29日早朝、武装集団が襲撃した。南スーダン政府は「逃げる住民を撃ち殺した」と非難する一方、「民兵60人以上を殺害した」と発表し、市民の犠牲者は15人にとどまったと強調した。また「事態を掌握しており、反乱兵を追跡中だ」とも主張している。
武装集団は、7月に悲願の独立を果たしたばかりの南スーダンで、主流派となったスーダン人民解放軍(SPLA)の分派「南スーダン解放軍(SSLA)」とみられている。SSLAは28日、国連や援助団体に対しユニティ州から撤退するよう通告。さらに、ロイター通信によると、29日には戦闘後に声明を出し、隣接するワラプ州にも戦闘を拡大すると警告した。【ロンドン時事】(2011/10/30)
・南スーダン:武装組織が町襲撃75人が死亡
南スーダン北部マヨムで(10月)29日、反政府武装組織が町を襲撃し、政府軍と交戦。武装組織60人、市民ら15人が死亡した。ロイター通信などが伝えた。 黒人で伝統宗教やキリスト教の信者が主体の南スーダンは7月、アラブ系のイスラム教徒が主体のスーダンから分離独立したばかり。国内には、北部のスーダンとの内戦を率いてきた現与党「スーダン人民解放運動」への反発があるほか、民族対立も抱えており、様々な武装組織と政府軍の対立が散発的に起きている。
日本政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)としてインフラ整備にあたる陸上自衛隊施設部隊約300人を現地に派遣する方針を固めている。【毎日・服部正法】
9月
・南スーダンPKO、政府調査団30人出発 首都での活動、日中韓争奪戦
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊施設部隊派遣で、日本政府が中韓両国と活動地域をめぐる争奪戦を繰り広げていることが(9月)24日、分かった。石油など資源獲得への思惑から派遣に積極的な中韓両国を抑えて、治安が比較的安定しアピール度の高い首都・ジュバで活動するには早期の派遣決断が不可欠として、部隊派遣表明を来月前半に前倒しすることも視野に入れている。
陸自施設部隊の派遣に向け、政府は24日夕、現地調査団を出発させた。外務、防衛両省と陸自、内閣府国際平和協力本部事務局の約30人で、25日にスーダン入りし、1週間でジュバなど2カ所で治安情勢やインフラ整備のニーズ、燃料の補給ルートなどを調べる。
首相がニューヨークで国連の潘基文(パンギムン)事務総長に施設部隊派遣の意欲を示したのは日本時間22日。2日後に調査団を出発させたのは、派遣の政治決断が遅れればジュバより治安の悪い地域に回されかねないからだ。
国連は7月、南スーダン派遣団(UNMISS)の展開を決め、道路の整備などにあたる施設部隊について日本や中韓など9カ国に派遣を打診した。300人規模の部隊を3地域に展開させる計画で、治安情勢とアピール度からジュバが最善の活動地域だとされる。
複数の政府高官によると、中韓も活動地域の調整に入っているが、国連は実績に評価の高い陸自への期待感が強い。陸自は正当防衛や緊急避難時に限るという武器使用権限の制約を抱え、ジュバでなければ派遣しにくいという日本の事情にも理解を示している。
8月に潘氏が来日し菅直人首相(当時)らに派遣を要請する前から、国連側は「早期の意思表明」をジュバ割り当ての条件として提示していた。調査団派遣はそれに応じたもので、潘氏の出身国で10月に調査団派遣を検討している韓国に先んじて調整を進める。
中国は、新スーダン軍と南スーダン系武装勢力などとの戦闘が激化している国境地帯が担当地域に決まっても部隊を派遣する方針だという。旧スーダン産出原油の過半を輸入してきた中国だけに、油田の8割が集中する南スーダンに地歩を築く狙いがあるためだ。
【用語解説】日中韓3国のPKOへの貢献度
6月末のまとめで、日本は4件のPKOに260人(世界50位)を派遣しているが、11件に2041人派遣(同15位)の中国、9件に639人派遣(同33位)の韓国に水をあけられている。自衛隊の施設部隊派遣は平成4年からのカンボジア、14年からの東ティモール、22年からのハイチがある。(産経新聞 9月25日)
・PKO武器使用の緩和、前原氏「与野党協議を」
民主党の前原誠司政調会長は25日、国連平和維持活動(PKO)における自衛隊の武器使用基準を緩和することについて「法改正が必要なので与野党で議論していただくことが大事だ」と述べ、与野党協議を呼びかけた。南スーダンへのPKO派遣が検討される中、自民党は前向きだが公明党には慎重論が強く、協議の行方は不透明だ。
PKO協力法は、武器使用を要員防護のための必要最小限に限定している。前原氏は25日のNHK番組で「他国の軍隊に守られながら自衛隊は(他国部隊を)守れない。現場に相当フラストレーション(不満)がたまっている」と指摘した。 そのうえで前原氏は武器使用基準の緩和について「党内でも政府内でもかなり煮詰まった議論までいっている」と述べ、早急な見直し議論が必要との認識を示した。自民党の石破茂政調会長も同じ番組で「極めて正しい。武器の使用権限は本当に今のままでいいのか。きちんと議論して結論を出したい」と同調した。 (朝日新聞)