2011年6月30日木曜日

原発再稼働における自治体の責任を問う

原発再稼働における自治体の責任を問う


 原発は安全だから再稼働されるのではないし、危険だから再稼働をストップできるのでもない。国は何も保証なんてできないのに、「安全を保証する」と語り、国からその言葉を引き出すことによって、立地自治体は再稼働決定における自らの行政責任を放棄し、国に丸投げしようとする。その結果、おざなりにされるのは、いつも地域住民の安全と安心である。

 下の佐賀県知事と玄海町長の発言をよく読んで欲しい。立地自治体にとっては、原発の安全性の「科学的」根拠よりも、国が現地に訪れ「安全であるぞ」とお墨付きを与えることの方が重要であるらしい。国が御宣託を垂れ、それを首長が恭しく拝聴するという、「お上」が「お神」になる瞬間、とでも言えばよいのだろうか。「霊感商法」(橋本大阪府知事)と言うより、かつてのオウム真理教もビックリするような、新興宗教にも似た、この怪しい再稼働に向けた「通過儀礼」を、私たちはどのように考えればよいのだろう。

 ともあれ。これまでがずっとそうであったように、今回もまた同じことがくり返されようとしている。伝えなければならないことは、山のようにあるが、とりいそぎ、立地自治体の動きを押さえておこう。
 玄海の次は川内、そして柏崎刈羽が危ない。想定しうる、ありとあらゆる手段を駆使し、立地自治体の再稼働決定に最後まで介入しよう。 

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佐賀知事、玄海原発再開容認の姿勢 「安全性クリア」
 停止中の九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開問題で、同県の古川康知事は29日、海江田万里・経済産業相との会談後、「安全性の確認はクリアできた」(???)と話し、再開を容認する姿勢を示した。県議会の議論などを踏まえて最終判断する。運転再開すれば、東京電力福島第一原発の事故後、検査で停止している原発では全国初となる。 古川知事は、全国の原発の緊急安全対策は適切だと認めながら(→まったく「適切」ではない)中部電力浜岡原発(静岡県)だけに停止を要請した国に「納得できない」と説明を求めていた。
 この日、県の要請に応じて来県した海江田経産相は古川知事との会談で「危険性のない所は政治の判断で動かす、本当に危ない所は責任を持って止める」と強調。「玄海2、3号機の安全性には国が責任を持つ」と再開に理解を求めた。

海江田経産相と古川知事のやりとり
 古川知事 安全性が確認されたはずの浜岡原発は止めましょうということになった。保安院の説明で浜岡は(30年以内に震度6強以上の地震が)87%の確率。玄海は0・0%。しかし福島も0・0%だった。数字を使わずに説明を。
 海江田経産相 状況が全く違う。玄海の活断層では横揺れで津波を起こさない。福島や東海地震のような津波の可能性は低い
 古川知事 (停止要請は)大臣が判断されたのか。総理の決断は。
 海江田経産相 事務次官を通じ状況を調べ、最終的な判断をした。本当に危ないところはしっかりと、政治が止める、その代わり危険性のないところは政治の判断で動かす
 古川知事 菅総理がどう考えているのかは、明確ではない。
 海江田経産相 昨日、総理に話をしてきた。総理は「うまくやってくれ」ということで、任されているという気持ちで参った。安全性の確保は新しい知見が得られたら追加したい。だが、2号、3号機の安全性は国が責任を持つと重ねて申し上げたい。

再開へ「保証」「支援」要求 経産相 佐賀入り 玄海町長「安全確認できた」 唐津市長「住民不安払拭を」
 停止中の九州電力玄海原発(玄海町)2、3号機をめぐり、海江田万里経済産業相と会談した同町の岸本英雄町長は29日、「安全が確認された(???)」と述べ、停止中の原発立地自治体首長として初めて正式に再開容認の考えを示した。一方で、会談に同席した唐津市の坂井俊之市長は「福島原発事故で住民の不安は高まっている」と指摘し、九電との安全協定締結に向け国の支援を求めた。
 海江田経産相は玄海原発を視察後、町役場で会談に臨み、「九州の経済活動には電力は必要。自治体にとって厳しい判断だと思うが、ぜひ再稼働を了解してほしい」と要請した。 これに対し、岸本町長は「国が安全を保証するなら、電力会社に(同意すると)答えたい」と再開容認を表明。「国が監視し、ヒューマンエラーのない体制を構築してほしい」と注文を付けた。
 市域の一部が原子力防災対策重点地域(半径10キロ、EPZ)圏内に入る唐津市の坂井市長は「20キロ圏では市街地が入り、住民の不安が高まっている。市として電力会社と安全協定を結ばせていただきたい」と述べた。 会談後の記者会見で、岸本町長は「(九電に)運転再開を伝える時期に来ている」と説明。坂井市長は「(容認するかどうか)判断する立場にはないが、私としては慎重論。国には住民の不安を払拭する努力を続けてもらいたい(→はぁ~???)」と語った。(西日本新聞
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 坂井市長は、九電・国・佐賀県に対し、唐津市に「再稼働を容認するかどうか判断する」法的な権原を与えよ、と要求すべきである。「原子力防災対策重点地域」制度の抜本的見直しを要求せずして、唐津市当局は「万が一」の際に、どうやって市民の安全・安心を守ると言うのか?
 再稼働、建設再開、新規建設に向けた「広域的住民投票」制度導入の可能性は、「3・11」の総括に基く、この「原子力防災対策重点地域」制度の抜本的見直しの可能性の中に潜んでいるのである。

川内原発の再稼働巡り住民説明会開催へ
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は30日、定期検査中の九州電力川内原子力発電所1号機の再稼働に関し、検査終了後の7月下旬から8月にかけて、立地する同県薩摩川内市など複数か所で公開の住民説明会を開く考えを明らかにした。 数百人~1000人を公募する。原子力安全・保安院側にも出席を要請しているという。
 再稼働の条件として、伊藤知事は国による安全性の保証と住民説明会の開催などを挙げている。原発から20~30キロ圏の自治体での開催も想定。事前に一般から質問を募る。 伊藤知事は、川内原発の安全性について「津波の問題はクリアされつつある」(???)としたうえで、「福島規模の地震でも安全であることを(保安院側が)どう説明するかが課題」と述べ、再稼働の時期は「コメントできる状況にない」とした。(読売)

宮城県知事、「脱原発」への急展開は拙速
 宮城県の村井嘉浩知事は28日の定例記者会見で、29日に予定されている東北電力の株主総会に一部市民団体が原子力発電からの撤退を提案していることに関し、宮城県が東北電力の株主として「反対」で議決権を行使することを明らかにした。 村井知事は「『脱・原発』を進めるかどうかは国がエネルギー政策のなかで決めること(→はぁ~???)」と指摘。そのうえで「足元の電力供給の安定性を考慮すると、脱原発に一気にかじを切るのは拙速」との見解を示した。
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 自衛隊官僚出身のこの知事には、当事者意識がまったく欠けていると言わざるをえない。

増設中止し、脱原発を 福井県越前市が意見書
 福井県越前市議会は29日、日本原電敦賀原発増設計画の中止や、期限を定めた原発の漸減、廃止を国に求める意見書を全会一致で可決した。同市中心部は敦賀原発から20キロ余りしか離れていない。 意見書は「福島第1原発事故は市民に衝撃と不信、不安を与えた」として、老朽化した原発の運転中止や原発からの撤退による住民の安全・安心確保を求めた。 このほか
(1)東日本大震災を踏まえて原発の安全基準を強化
(2)国の原子力防災指針で、防災対策を重点的に実施する地域の範囲を(現行の半径8~10キロから)少なくとも半径20キロに広げる-なども要望した。(→京都府も20キロへの拡大を決定したが、「3・11」は、この程度ではダメだということを明らかにしたのではなかったか?)

福井県知事「脱原発と言い切れない」
 東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、国内外で「脱原発」の動きが広がっていることについて、福井県の西川一誠知事は28日の定例県議会で「資源が乏しい日本にとって、原子力発電は将来のエネルギー確保や産業政策、地球環境保護のために重要で、簡単に脱原発と言い切れるものではない」と述べ、脱原発の動きには県としてくみしない考えを表明した。 公明党の石橋壮一郎議員らの一般質問に対する答弁。
 西川知事は「福島第1原発の事故は、あれだけの大災害だから、様々な声が出ることはやむを得ない」と脱原発の意見に一定の理解を示しつつ、原発の今後のあり方について「冷静に問題を直視し、長い目で考えなければならない」と述べた。 その一方で「福島の事故は一つのエネルギー源に過度に頼ることの危うさを示した」と指摘。県として、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギー・新エネルギーの普及などエネルギー源の多角化を積極的に進める考えを改めて強調した。
 日本では福島県の佐藤雄平知事が27日、7月末にまとめる復興ビジョンに基本理念として「脱原発」を盛り込む考えを明らかにした
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 官僚出身の西川福井県知事には・・・・。

知事「脱原発」表明/転換を迫られる地域振興策
◇「ただ「脱原発」は「原発との共生」をうたった県総合計画とは相反する考え方だ。総合計画の見直しは必至で、県の地域振興策にも大きな影響を与えることになる。
 第1原発事故で避難を強いられている原発立地地域の住民の中にも、政策が変わることで雇用など地域経済に影響が出るといった不安を感じている人が少なくない。広く県民が納得するような新たな振興策が求められるだろう」(29日付の福島民友新聞の社説より抜粋)
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 この下りは、脱原発派もともに考えなければならない、とても重要なテーマである。ある意味、これまでの脱原発運動に一番欠落していたテーマだと言ってもよいだろう。

電力株下落、自治体困った…都は配当25億円減
 東京電力福島第一原発の事故を契機に、原発への不安や業績悪化への懸念から、全国の電力会社の株価がほぼ軒並み下落、大株主に名を連ねる自治体への配当も減る可能性が出てきた。 各社は28、29日に株主総会を終えたが、東電の配当は当面「ゼロ」となり、約4300万株を保有する東京都は年25億円以上の配当を失う
 各自治体は、法律に基づき保有株を額面で資産経常しているが、あてにしていた“副収入”が減額になれば将来の事業計画の見直しを迫られる可能性もあり、担当者からは戸惑いの声が上がっている。 電力会社の業績が悪化すれば、株価も配当も下がる。大株主の自治体などにも余波が及びかねない。

 東京都は地下鉄やバスを運行する交通局で東電株を保有する。戦前は、同局の前身である東京市電気局が路面電車の運行や電気供給を担っていたが、1941年の配電統制令施行に伴い、電気供給事業を国策会社に譲渡する代わりに株を取得、その後も割当増資に応じてきた。 配当はこの10年ほどは毎年25億円以上あり、11年度予算でも同額を見込んでいた。
 都交通局は「額面(簿価)で資産計上しており、株価下落で資産が目減りするわけではない」と強調するが、都バスの路線の3分の2が赤字で、配当で穴埋めしてきただけに、無配当の影響は大きい。同局では300億円以上の積立金があり、当面運賃を上げる予定はないが、担当者は「何年かかるか分からないが、都バスの黒字化を目指し経営努力を続ける」と話した。(読売)
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 関電筆頭株主の大阪市の配当金は、年間50億円である。大阪市長の「脱原発宣言」の「真価」はいくら?

被災県内避難者 世帯4割「収入ゼロ」自立生活困難琉球新報

長野県松本市で震度5強、5分後にも震度4
 気象庁によると、30日午前8時16分ごろ、長野県中部を震源とする地震があり、同県松本市で震度5強、山形村で震度4を観測した。震源はごく浅く、地震の規模はマグニチュード5.5と推定される。 その5分後にも、近くを震源とする地震があり、松本市で震度4を観測した。

新燃岳が噴火 噴石や火砕流は確認されず
 鹿児島地方気象台は29日午前10時27分、霧島連山・新燃岳の噴火を観測した。噴煙量は中量で、火口の真上に高さ1千メートルまで上がり、北の方向に流れた。噴石や火砕流は確認されていない。1千メートル以上の噴煙は4月18日以来。噴火は午後9時現在も続いており、降灰は北に約50キロ離れた熊本県五木村でも確認された。
核開発の拠点に迫る炎 米ロスアラモス、1万人に避難命令
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⇒「嘉手納統合案「受け入れられず」 知事、明確に反対」(琉球新報)(→原発立地自治体の知事も再稼働に「明確に反対」の姿勢を示して欲しいものである)

2011年6月28日火曜日

福島県知事と沖縄県知事の決断

福島県知事と沖縄県知事の決断

 佐藤福島県知事が、脱原発へと大きく踏む込む発言した
 「原発の安全神話は根底から覆されたと思っている」「私自身も、県として原子力に依存しない社会を目指すべきであるとの思いを強く持つに至った」。昨日の県議会での知事の発言である。

 また、仲井真沖縄県知事も政府に対し、普天間問題をめぐりかなり踏み込んだ発言をした。琉球新報によると、知事は「日米安全保障協議委員会(2プラス2)で普天間飛行場の代替施設として名護市辺野古にV字形滑走路を建設するとした日米合意を撤回し、県外移設を検討するよう求めた」。
 具体的には、①目に見える基地負担軽減の実現、②米軍施設の返還を米軍再編のパッケージから切り離して実行すること―などを求めたという。

 佐藤知事の「脱原発」表明(「宣言」とまでは言えない)については「余りに遅すぎる」という批判はありえるだろうし、最終的に県の「復興ビジョン」がどのようにまとまるかについても未知数のところがある。しかし、自民党県連も「脱原発」を表明した以上、もう後戻りはできないだろう。当然と言えば当然の表明ではあるのだが、それでも原発立地自治体の首長としての「脱原発」表明の意義は大きい。高く評価し、支持したい(福島県の南相馬市と白河市も、「脱原発」に賛成の手続きを進めている)。

 一方、仲井真知事の発言についても、これ自体「当然」であり、何か新しい内容があるわけではない。しかし今この時期に、「日米合意の撤回」、「米軍施設の返還(→基地撤去)」を「米軍再編のパッケージを切り離す」ことを政府に突きつけた意義ははかりしれなく大きい。
 福島(原発)と沖縄(安保)、両知事の決断を受け、これから菅政権が何をするか/しないか、また両知事が、一方では「原子力複合体」の、他方では日米安保族からの有形無形の圧力に抗しきれるか否かを、しっかり見届ける必要がある。

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玄海原発の再稼働問題 佐賀県、7月8日に説明会
 玄海原発2、3号機の再稼働問題で、佐賀県は28日、県主催の県民向け説明会を7月8日に同県多久市内で開くと発表した。県内の全20市町を通じて参加者550人を募集し、2時間程度の予定。経済産業省の担当者が説明し、古川康知事も出席する方向で調整中。 佐賀県では26日、経産省が原発立地県で初めて説明会を開いたが、参加県民を7人に絞り、時間も1時間半だったことに批判が続出。古川知事が県主催で改めて開くと表明していた。

経産相、玄海原発の再開要請へ 佐賀知事と29日会談
 運転停止中の九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働問題で、海江田万里経済産業相が29日に佐賀県を訪問することが28日、分かった。玄海町の岸本英雄町長、同県の古川康知事と会談、再稼働を直接要請する。現在、日程の最終調整を進めている。東京電力福島第1原発の事故後、停止中の原発の再稼働を求めて経産相が立地自治体を訪れるのは初めて。 関係者によると、海江田経産相には経産省と原子力安全・保安院、資源エネルギー庁の幹部も同行する方向で調整している。

 経産相らは29日午前、まず玄海町を訪れ岸本町長や町議会幹部らと会談。午後に佐賀県庁を訪問し、古川知事らと会談する予定。経産相は会談で、玄海原発は政府が停止を要請した中部電力浜岡原発とは違って大規模地震の切迫性が少なく、運転再開しても支障はないとの見解を改めて強調。盛夏期の電力不足への懸念なども伝え、玄海2、3号機の再稼働について両首長の理解を求めるとみられる。 経産相の来県は佐賀県側が要請。経産相も28日午前の閣議後の記者会見で「正式な話があれば、私の望むところなのでお邪魔をして話したい」と述べ、佐賀県の訪問に積極的な姿勢を示していた。(日経)

埋め立て免許延長認めず 上関原発で知事が表明(山口新聞)
東電株主総会:相次ぐ厳しい質問 会場外で抗議行動も(毎日)
怒号飛び交う東電株主総会、議長不信任動議も(読売)
◇「東京電力は28日、都内で開いた定時株主総会で原子力発電からの撤退を定款に盛り込むように求めた株主提案の賛成票は8%だったと発表した。新規の増設をせず、原子炉は古いものから順次廃炉にするように求めたが、総会での採決は否決だった。 提案の反対票は89%、無効・白票は3%だった。(日経)
中電株主総会過去最長、株主提案すべて否決(読売)
◇「株主からは、東京電力福島第一原発の事故を受け、「第2の東京電力とならないよう浜岡原発を即刻停止すべき」などの意見が相次いだ。浜岡原発停止による収益悪化の懸念から株価が下落していることについて不満も出た」
◇「一方、個人株主93人から浜岡原発の全号機の廃炉などを求める株主提案6議案が提出されたが、すべて否決された。株主総会には過去最多の2688人が出席。3時間40分に及び、07年の3時間39分を抜いて過去最長となった」
総会で「脱原発」発言へ 関電筆頭株主の大阪市長(大阪日日)

⇒「「連載・原発崩壊」」(福島民報
⇒「“脱原発”意見書を撤回 敦賀市会・特別委」(福井新聞)
・「委員会後、高野委員長は「議論が足りなかったといわれればそうなる。持ち帰って会派で検討してもらうという選択肢もあった。敦賀市にとって何がよりベターなのか、市会として議論を深める必要がある」と弁明した。意見書提出を提案した今大地晴美議員は「これが原発と生きてきた街の現状だなとあらためて認識した」と話し、本会議に再提出を目指すという。
⇒「原発ニュース」(福井新聞)
福島第1原発:循環注水冷却、稼働直後に停止(毎日)
◇「そもそも、循環注水冷却の実施は、政府と東電の「希望的観測」で遅れた。東電が4月に発表した最初の工程表には循環注水冷却ではなく、格納容器全体を水で満たして冷却する「冠水(水棺)」が収束の決め手として明記された。
◇「ところが、その後の分析で、格納容器に穴が開いていると判明。注水するほど汚染水が発生することが裏付けられた。メルトダウン(炉心溶融)や格納容器の損傷はないとしてきた政府と東電の対応が、初動対応を遅らせた。」
◇「日本原子力学会のチームは、事故から約2週間後の3月28日に循環注水冷却を提言した。チーム代表の奈良林直・北海道大教授は「冠水にこだわり時間をロスした。データを分析すれば格納容器の損傷は当初から明らかだったはずだ」と話す。」
・「六ケ所原燃PRセンター」の「反原発シール事件」で26日、青森県野辺地署が「建造物侵入」の「疑い」で新たに一人逮捕。
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阪大、学内に企業研究所OK カネカなど利用決定
 大阪大学は学内に企業の研究所を設置できる新制度を設けた。企業が社員を常駐させ、将来、阪大と共同で取り組む可能性があるテーマを研究する。共同研究に進む前でも、企業は大学の専門家と交流しながら独自テーマに単独で取り組める。カネカなどが新制度の利用を決めた。企業側の自由度を広く認めた学内組織は珍しい。
 企業の研究者が大学に常駐する場合、一般的には大学との共同研究が前提となる。企業が自主的なテーマに取り組むことはできず、自由がきかなかった。(→当然のことじゃないの? 民間企業の商品開発のための研究と「学問の自由」と「真理探究」のための国立大学の研究との間には「利益相反」があるのだから。)
 阪大の新制度では企業ごとに「協働研究所」を学内に設け、所長に阪大の専門家を据える。実際に研究するのは企業側の人員だけでよく、10~20人程度を常駐させられる。阪大が吹田キャンパス(大阪府)に新設したテクノアライアンス棟を使える。利用料は1平方メートルあたり3000円。期間は3~10年。カネカや日東電工などが新制度を利用する。 将来、阪大との共同研究の可能性さえあれば、企業が単独で進めることを認める(???)。また、共同の成果を事業化する最終段階の研究にも取り組める。阪大は共同成果に加え、学内でのインターンシップによる学生の育成に役立つと期待している。(日経)
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 今、この問題について論じる余裕がない。ここでは一言だけ。この新制度の導入は、阪大だけでなく医・理工系大学院博士課程をもつ全大学の、今後の「研究・開発」を変える「画期的」な「事件」である。「協働研究所」というのが「ミソ」だ。これを仕掛けているのが、文部科学省と経済産業省であることを忘れぬように。
 旧帝大系を軸に「国際産学連携」が制度化されてきた基盤の上に立つなら、これで阪大は「理論的」には、グローバル軍事・原子力産業との「協働研究所」を学内に設置し、ロボット兵器・無人戦闘機・第三世代原子炉の「安全性向上」・第四世代原子炉の「研究・開発」ができるようになった。あとは、「大学で行う研究はあくまでも「平和のための研究」」と言い張ればよいだけである。
 時代は、さらに変わってゆく。

 「国家(官僚機構)、産業(資本)、大学(知)のトライアングルの関係から言えば、資本主義体制下の大学が、官僚機構による大学行政を通じて国家戦略と産業戦略に奉仕すべく位置づけられてしまうのは必然であり、それが大学の宿命でもあるだろう。だから大学研究や教育の、ある要素/側面が国家戦略や産業戦略と一体化すること、そのことのみをもって「大学無用」論や「大学解体」論を主張しても意味がないし、虚しいだけである。
 しかし、上のトライアングルが「鉄のトライアングル」と化し、そのことに対する批判をいろんな「大学利権」に既得権、自らの職業・立場の安定と安全を考慮するあまりに、大学研究・教育者がしない/できない状況になっているとしたら、どうだろう? 

 大学(院)研究と軍産複合体の研究開発の「利益相反」は、後に述べるように、軍事に転用されるテクノロジーと産業部門の「イノベーション」に転用されるテクノロジーの境界線が「融合」しているところで派生する。
 現在の大学院の「最先端融合科学」研究が、軍事と産業の「両用技術」開発を担っている/担わされてきたところに根本的な問題があるのだ。この傾向は、いわゆる「武器輸出(禁止)三原則」の「規制緩和」⇒撤廃に向けた動きと連動し、今後さらに進展するだろう」(「続・大学を解体せよ--人間の未来を奪われないために」より)

2011年6月26日日曜日

ストップ!玄海原発、対九電行動 関連情報

ストップ!玄海原発、対九電行動 関連情報

原発とめよう!九電本店前ひろば: 第67日目報告
あんくるトム工房
玄海原発は爆発する佐賀県の住民無視
長崎・土居智典さん
・玄海原発 申し入れ賛同人募集⇒連名で申し入れ人になってくれる人大募集。賛同いただける方は、名前と住所は県名だけでけっこうですので、私の方に直接御連絡下さい。
◇賛同あて先 → doiltl@yahoo.co.jp (名前と都道府県名のみでOK) 
上記送信出来ないとき tdoi@tc.nagasaki-gaigo.ac.jp

昨日の佐賀県への要請行動
豊島耕一(佐賀大学理工学部物理科学科)さん
・「佐賀県庁に戒厳令?
http://www.news-pj.net/
「説明会」の詳細(メールアドレス:kenmin@kikitai.jp ファックス:0952-27-1010)
◎抗議先→・佐賀県くらし環境本部 原子力安全対策課(ファックス:0952-25-7269 電話:0952-25-7081)メールアドレス: genshiryokuanzentaisaku@pref.saga.lg.jp

【6.28九電株主総会】デモコースのマップ(10:00より混成デモスタート!) 
◎九電 原発廃炉に向け、6・28九電株主総会へ
呼びかけ: 九電の原発廃炉を求める連絡会 九州電力消費者株主の会 
脱原発の九州電力消費者株主の会は4議案を提出
①既設原発(玄海4基、川内2基)について古い発電所から順次、停止・廃炉の措置をとり、新規立地、増設を行わない。
②自然エネルギー発電本部を立ち上げる。
③地震・津波・火山活動がもたらす影響・危険性について、地元住民代表・消費者代表を含む調査検討委員会を早急に設置する。
④危険なプルサーマル発電を中止する
◎九電経営陣・株主・市民に脱原発のアピールを
日時:6月28日(火)
8:00:九電本店前集合、行動、注意事項等の確認の後、会場のニューオータニ前に移動
8:15:会場前で株主向けチラシ配布(ex.「九電が脱原発に舵を切れば株価は戻る」)
*トラクター部隊・・デモ行進で会場に到着
9:00:「人間の鎖」⇒総会会場のニューオータニの周囲を埋め尽くす。参加者の人数により、「人間の鎖」の範囲を判断。株主総会参加者を中心に、来場する株主・周辺市民向けにリレーメッセージ(株主の会メンバーの入場は9:40~)*トラクター隊・会場周辺を周回デモ。
10:00:総会開始*総会前行動を終了し、デモに移行。トラクター(10台程度)を一定の間隔(参加者数による)を置いて走らせ、その間を人がゆっくり歩く⇒この間に各種のパフォーマンス⇒豊富なアイデアを!)
12:00:トラクター・人デモ終了。隊列は九電本社前に移動 *歌や踊りのパフォーマンスで総会終了を待つ。 
13:00頃 総会終了見込み *報告集会
◎Twitter フェイスブック ミクシーで【拡散希望】
【九電経営陣・株主・市民に脱原発のアピールを! 6月28日(火)午前8時、九電本店前ひろば集合。会場のホテルニューオータニ(本店向かい)を人の鎖で取り囲もう!連絡先080-6420-6211(青柳)】

◎原発とめよう!九電本店前ひろぱ
・毎日 午前10時から午後5時 
・場所:九電本店前(福岡市中央区渡辺通2丁目1-82)  
・【呼びかけ人】(6月25日13名、総数1024名)(メールでの呼びかけ人賛同の方、青柳まで)
・(ひろば現場)の専用携帯番号 090-1324-8588
・Twitter フェイスブック ミクシーで拡散してくださる方は 以下をお使いください。★☆ 原発とめよう!九電本店前ひろば ★☆毎日午前10時から午後5時 ♪ みなさん、一緒に座って・語り合いませんか☆場 所:九州電力本店前 福岡市中央区渡辺通2丁目1-82地図:http://www.denki-b.co.jp/company/map19.html
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〒812-0041 福岡市博多区吉塚5-7-23
青柳 行信(電話 080-6420-6211 Eメ-ル:y-aoyagi@r8.dion.ne.jp)
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2011年6月25日土曜日

ベント「失敗」?---東電の刑事責任追及の可能性

ベント「失敗」?---東電の刑事責任追及の可能性

 福島第一原発1、2号機のベントに東電が失敗していた「可能性」がある、そんなニュースが昨日流れた。その「可能性」は、かなり高い確率で事実であるようだ。

 東電のベント失敗の「可能性」については、3月12日以降、さまざまな媒体で「噂」されていた。しかし、確証がつかめない。そもそもベントの成功/失敗の判断基準は、原子炉や建屋の爆発を回避するに足る、十分な原子炉内の圧力低下がはかれたかどうかにあるのであって、それを計る計器が故障していたのでは、話にならないからである。

 ベントとは、いわば原発のメルトダウン→メルトスルーを回避する、最後の、そのまた最後の手段であり、これに失敗するということは、東電や日本の電力会社には、「最悪の事態」が起こったときに、メルトダウン→メルトスルーを回避する術、テクノロジーを持たない、ということになる。 これが何を意味するか、読者は当然、理解すると思う。

 しかしそれにしても、東電と保安院は、次から次に私たちの常識的理解を超える「情報」を「開示」してくれるものだ。 で、東電を保安院をどうするか? かなり信憑性の高い、ベント失敗の「可能性」を伝える報道に触れて、もう一度、一から考え直す必要性を私は感じている。こんなことが許され、放置されてよいはずがないからだ。

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福島第1原発:1号機のベント「失敗」 問われる説明責任
 東京電力福島第1原発1号機のベント(排気)が失敗していた可能性が高いことが判明し、これまで「成功」と言い続けてきた東電や、それを追認してきた国の説明責任が改めて問われることになりそうだ。併せて、特に重大事故への対応策として整備されてきたベントの「失敗」は、国の安全対策に大きな疑問を投げかける。

 ベントが行われた3月12日、東電は弁の操作で格納容器の圧力が低下した点を重視し、午後3時ごろ「成功」と発表。だが、低下したとされる圧力は上限値(427キロパスカル)を上回ったままで、発表直後には緩やかな上昇に転じていた。
 さらに、放射性物質の放出を示す構内のモニタリングポストに兆候はなく、東電関係者によると弁の開放を示す「リミットスイッチ」にも変化はなかった。 「成功」を見直す材料や機会はあったのに、国は3カ月近くもチェックしないまま今月7日、国際原子力機関(IAEA)への報告書に東電の見解をそのまま記載して提出。事故を真摯(しんし)に検証する姿勢はうかがえない

 ベントは安全対策(アクシデントマネジメント)の一環として92年から旧通産省(現経済産業省)が電力各社に整備を求めた。福島第1原発も98~01年に耐圧性能を強化したベントの整備を完了。だが、今回の1号機だけでなく、東電は2号機でも「ベントの成否は不明」としている。

 地震や津波の想定だけでなく、これまでの原発事故への備えは本当に十分だったのか(→「十分」だったはずがないではないか)。事故調査・検証委員会での議論が待たれる(→現状では、待っても何も出てこないか、出てきたとしても何もできないだろう)。【毎日・町田徳丈、杉本修作】
2号機水位計測できず 高温で蒸発予想以上
2号機圧力容器の損傷裏づけ(いずれも毎日)
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〈東電の刑事責任追及の可能性〉
 ない。現状では、ない。不可能である。
 まず、2002年11月、当時の小泉政権下の経産官僚がまとめた「東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する政府答弁書」を熟読してほしい。くり返しになるが、熟読してほしい。

・「以上の調査結果を踏まえ、同年十月一日、経済産業大臣は、東京電力に対し厳重注意を行い、再発防止策を講ずるよう求めるとともに、今後、東京電力に対する定期検査の内容をより厳格なものとすること等を通告した」。

 この結果が、「3・11」→ベント「失敗」→水素爆発→メルトダウン→メルトスルーである。
 東電に対する刑事告発については、上の「原発トラブル隠し」に対する安全・保安院の調査結果を不十分とし、真相解明を求めた「原子力資料情報室」を含む団体・個人が、9年前に検討したことがある。「トラブル隠し」から派生するトラブルを隠すために、当時の保安院が情報を隠蔽していたことは明らかだったからである。

 当時、「自主検査」をめぐる29件にもおよぶ東電の不正が暴露され、炉心隔壁のひび割れ隠しなど6件の法令違反、格納容器の気密データの不正操作等々の事実、すなわち、東電を刑事告発する十分な根拠があったにもかかわらず保安院=国は「行政処分」のみで決着をつけてしまったのだ。

 今回の事態についても、東電の刑事責任を問うべしという「世論」は「3・11」直後から強くある。しかし、この国の「原子力行政」は、「シビアアクシデント(過酷事故)」を起こしたとしても、電力会社の刑事責任は追及しない/できない「システム」になっているのである。

 この「前例」を突破する/させないためには、どうすればよいか?
 そのことが「調査」を含む法的権限を「事故調査・検証委員会」に持たせるか否かにかかっていた/いるのである。

〈「事故調査・検証委員会」の実態〉
⇒「事故調査・検証委員会委員長 畑村洋太郎 記者会見」(6月22日 日本記者クラブ)
◎6月7日の第一回委員会で話した8項目
①畑村の考えで進める
②子孫のことを考え100年後の評価に耐えられるものにする
③国民が持っている疑問に答える
④世界の人々が持っている疑問に答える
⑤責任追及は目的としない
⑥起こった事象そのものを正しくとらえる
⑦起こった事象の背景を把握する
⑧再現実験と動態保存が必要である。

◎強制力がない委員会の調査で嘘をつかれないか?
・「(ヒアリングする人が)もし隠していたことがあとでわかると、その人の名誉にかかわる。それぞれの人には誇りがある。きっと嘘はつけない(???)」
・「隠したり嘘をつけば、矛盾が出てくる。時系列の進行を正確にとらえていけば、嘘はつけない」
・「政治家にも誇りがあるから、評価に耐えるようやってくれるだろう(???)」

「知りたいときに知りたいことがわかる、という文化を日本にも作らなければならない。それがないから、日本中が自信をなくしている。事故調査委員会も事故から1週間から10日ぐらいで発足しているべきだった

⇒「国内原子力発電所トラブル情報等の登録状況並びに水平展開実施状況」(3月末日まで)ニューシア
⇒「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律

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経産省が佐賀で原発説明番組 安全対策十分「ご理解を」
 定期検査で停止中の九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開を目指し、経済産業省が主催する「説明番組」が26日、佐賀市のケーブルテレビスタジオで撮影、ネットなどで中継された。同省担当者は福島第1原発事故後、玄海原発の安全対策が「十分行われた」と重ねて強調し、再稼働に理解を求めた。
 政府による原発立地自治体の住民向け説明活動の第1弾。原子力安全・保安院と資源エネルギー庁の担当者が説明者となり、地元広告代理店が作った候補者リストを基に政府が選出した県民7人が出演。高村昇長崎大教授(放射線疫学)がオブザーバーを務めた。

 保安院の黒木慎一審議官が原発事故後の緊急安全対策や玄海原発の安全性について冒頭に説明。県民からは「政府が中部電力浜岡原発にだけ停止を求めた説明が不十分」「(高経年化が進んでいる)玄海1号機に本当に問題点はないのか」と厳しい質問が相次いだ。

 放送開始前には、ケーブルテレビ局前で、玄海原発の再開に反対する佐賀県の市民団体メンバー約150人が抗議行動。正門前で「地獄の帝王プルサーマルよ去れ!」などと書いた横断幕を掲げ「原発反対」とシュプレヒコール。 「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表(59)は「玄海原発の再稼働を容認するための番組だ。納得できない」と批判した。(共同)

株主総会は「脱原発」提案が焦点 電力各社、事故で状況一変
 東京電力など原発を持つ電力9社が28、29日に定時株主総会を開く。このうち、6社の株主が総会に「脱原発」を求める議案を提出した。同種の提案は毎回否決されてきた。しかし、東京電力福島第1原発の事故で、安全性の問題に加え、事故が発生した場合の損失の大きさから収益面でも原発事業に対する不信が高まり、状況は一変。

 6電力の総会でどこまで賛成票が集まるかが焦点だ。 脱原発関連の株主提案が出されたのは東北、東京、中部、関西、中国、九州の6電力。 株主提案では定款の一部変更を求める形で「原発の廃止」(東北)、「原発から撤退」(東京)などを要求している。【共同】⇒北電、北陸電、四国電力の株主たちはどうしたのだ?

自民党:谷垣総裁「原発の再稼働は必要」
 自民党の谷垣禎一総裁は25日、鹿児島市内で記者会見し、停止中の原発再稼働について「時間がたつと全ての原発が止まってしまう。動かさなくていいという前提をつくれば電力供給は回らなくなる」と述べ、再稼働は必要との認識を示した。 その上で「国が責任を持って安全を確認しなければならない」とも指摘した。(毎日)

ベントの影響評価、東電が公表せず…1万1千枚の保安院公表資料で判明
 福島第1原発事故で、東京電力が事故直後の3月12~13日に、1~3号機の原子炉格納容器内の蒸気を外部放出する「ベント」をした場合の周辺地域に与える被曝(ひばく)線量の評価を実施し、経済産業省原子力安全・保安院に送付していたが、公表していなかったことが24日、保安院が公開した資料で明らかになった。東電は「当時の担当が不在で、なぜ公表しなかったかコメントできない(???)」とした。

 保安院は24日夜、事故直後から5月末にかけ、東電からファクスで受け取った文書など計約1万1千枚をホームページに公開した。 このうち、3月12日午前3時半ごろの第1原発所長名の文書では、2号機でベントした場合、外部に出る放射線量を予測。「前提条件」として燃料破損を意味する「重大事故(Fuel破損あり)」と手書きされている。その後、翌13日にかけて計5回、1~3号機のベント時の周辺の放射線量の評価も行っていた。 また、15日時点ですでに、東電が1~3号機が70~25%炉心損傷したと評価していたことも資料で判明。炉心損傷をめぐっては、東電は4月6日になってこの値を公表、後に炉心溶融していたと発表した。

柏崎刈羽の防潮壁、設置取りやめ検討…東電
 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けた津波対策で、東京電力が、柏崎刈羽原発1~4号機(新潟県)の原子炉建屋周囲に設置すると発表した「防潮壁」について、設置をやめる方向で検討していることが24日分かった。 建屋の通気口を鉄製の止水板でふさぐ案が浮上しており、既に1号機では工事が進められている。

 東電は、止水板が壁の代わりになるかどうか検証した上で最終判断するとしつつも、「浸水を防ぐには止水板で十分。コストや工事の時間が少なくて済む」(同原発広報部)とみている。 東電は壁とは別に、海岸に防潮堤も造ると発表しているが、「防潮堤については変更ない」(同)という。 新潟県の泉田裕彦知事は24日、記者団に「(福島第一原発の事故の)原因もよく調べず、(安全対策を)打ち上げておいて、一方的に撤回された」などと不信感を示した。(読売)

東電の再生計画、政府の第三者委が策定へ
 東京電力の経営状況と資産を調査する政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の第2回会合が24日開かれ、東電が短期、長期的に実施すべき経営再建策をまとめた事実上の「再生計画」を策定することを決めた。

 計画は、政府が設立を目指す原子力損害賠償支援機構が東電に資金援助する際、東電とともに策定する「特別事業計画」に引き継がれる方向だ。長期的な問題として、発電会社と送電会社に分離して新規参入を促す発送電分離など電力システム改革も検討範囲となる見通しだ。
 調査委はこの日の会合で、調査対象の範囲を決め、売却に向けた資産査定や給与削減などの短期的なリストラ策だけでなく、電気料金の値上げ回避や電力業界の競争のあり方、電力の安定供給策など長期的な課題も検討することにした。(読売)

東電、人員削減に初めて言及 年末までに規模詰める
 東京電力は24日、福島第一原発事故の損害賠償に充てる資金をまかなうため、グループ全体で約5万2千人いる従業員の削減を検討することを明らかにした。事故の収束や賠償の事務を担う社員の確保を前提に、年末までに削減規模を詰める。

 同日あった「東電に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の聞き取り調査に出席した勝俣恒久会長が、合理化策として示した。一般社員の年収20%削減役員報酬返上などで年約540億円の人件費削減は5月に公表したが、24日の説明資料では、「人員削減の実施も検討(年内に詳細公表)」などと初めて言及した。 また、委員から見直しの声が出ている企業年金について、勝俣会長は委員会の終了後、記者団の質問に対し、「年金は法律で守られているが、(運用の)利率をどうするかなど、委員会の意見を十分に受け止めたい」と述べ、制度見直しに踏み切る考えも示した。(朝日)

東京電力:第三者委に合理化策「不動産以外5000億円」
 東京電力は24日、同社の資産査定を行う第三者委員会に対し、現行の合理化策の詳細を提出した。保有不動産については厚生施設や賃貸物件を中心に売却し、1000億円程度の資金を確保すると説明した。グループ全体で保有する319銘柄(3月末現在)の株式や、子会社など計265社のうち電気事業と直接関連がない事業を可能な限り売却。不動産以外で5000億円以上の確保を目指す。(毎日)

政府賠償金「福島第二の分も出すべき」…経産相
 海江田経済産業相は24日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故による政府の賠償金負担について、「二つの発電所分で2400億円を出すべきだ」と述べ、福島第二原発と合わせた額を政府が負担すべきだとの考えを示した。 原子力損害賠償法では、原発1か所につき、上限で1200億円を政府が拠出することになっている。

 東電は4月、政府が負担する第一原発分の1200億円を原資に被災者への仮払いを始めたが、今月中にも底をつく見込みだ。
 経産相の発言は、東電が仮払いを続けるため、政府が第二原発分も負担せざるを得ないとの認識を示したものだ。ただ、第二原発は放射能漏れ事故を起こしておらず、避難区域も大半が第一原発と重なっているため、財務省は満額拠出に難色を示している。(読売)

日立製作所:福島原発対応「万全の支援」「重要な事業」
 日立製作所の中西宏明社長は24日、東京都内で開いた株主総会で、一部設備の建設を担当した東京電力福島第1原発の事故対応について「当事者として万全の支援をしたいと強い決意を固めている」と述べ、技術者の派遣などを通じ、事態収拾に向け全面協力する姿勢を強調した。
 中西社長は、原発事業の方針に関する株主からの質問に「日立グループにとって原発は非常に重要な事業部門だ」と述べ、継続する方針をあらためて表明した。安全性の向上などを通じて原発が社会的に認められる努力を強化すると説明した。

楽天:経団連退会 発送電分離、慎重姿勢に不満?
 インターネット通販大手の楽天は23日、経団連に同日付で退会届を送付したことを明らかにした。理由について楽天は「製造業などの業態の違う企業が多く入会しており、方向性や哲学が違う」と説明している。
 三木谷浩史社長は5月下旬、東京電力福島第1原発事故後の経団連の対応に関連し、短文投稿サイトのツイッターで「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などと書き込み、退会を検討していることを明らかにしていた。
 退会届の提出は、電力会社の発送電分離などに慎重な姿勢を示す経団連への不満の表れとみられる。 楽天は2004年に経団連に入会していた。【毎日・乾達】

中部電力 浜岡原発停止の支援の一環で政府から1000億円の融資
 中部電力は浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止による政府からの支援策の一環として、6月末をめどに日本政策投資銀行から1000億円の融資を受ける。原発停止をカバーするために稼働を増やす火力発電所用燃料の調達費用に充てる。
 中部電は浜岡原発の停止を決める際、費用負担増に対する政府の支援を要請していた。東日本大震災の被災企業を対象にした低金利融資を活用して資金負担を軽減する。 燃料コストは浜岡原発を代替する火力発電所の稼働増により、年間2500億円程度増える見込み。政府の支援決定により、中部電は民間金融機関と融資交渉も始めた。

もんじゅ「復旧」も状況厳しく 原子力機構幹部「安全対策優先」
 原子炉容器内に落下してから約11カ月ぶりに引き抜かれた高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)の炉内中継装置。23日の引き抜き開始は大幅に遅れたものの、開始後は順調に作業が進み、24日未明に完了した。近藤悟所長は「トラブルの復旧に向け一つの大きなステップを乗り越えることができた」としたが、原子力機構幹部は「福島原発の事故対応で安全対策を優先する。
 再稼働は、その次の段階になる」と、今後の40%出力試験に向け厳しい状況にあることを示した。

 中継装置の引き抜き開始当日の23日は、順調に作業が進むとみられたが、最終準備段階で部品の一部が損傷するトラブルで本体引き抜きが予定より約6時間遅くなり、開始したのは、同日午後8時50分。 原子力機構燃料環境課の江橋政明課長が「ただいまより炉内中継装置引き抜き作業を始めます」と号令し、本体引き抜きを開始。1分間に6センチのペースで途中、休憩を挟みながら作業を進めた。

 県は、原子力安全対策課の職員1人を派遣し、作業状況を見守った。石塚博英・県安全環境部長は「細心の注意を払ってもらいたい」と現場からの報告を待っていた。 24日午前4時55分、「装置引き抜き作業完了」のアナウンスが流れると、作業員らは「良かった」と声を掛け合い握手、大きな拍手と歓声があがった。原子力機構は今秋の復旧と今年度内の40%出力試験を行い、平成25年度内の本格稼働に結びつけたい考えだ。

 だが、海江田万里経産相が20日、国際原子力機関(IAEA)本部の会見で「福島第1と第2原発、もんじゅは稼働させるわけにはいかない」と発言するなど、もんじゅを取り巻く環境は厳しさを増している。(産経

太平洋の放射能濃度、昭和30年代の3分の1 原子力機構が1年後予測
 日本原子力研究開発機構は24日、東京電力福島第1原発事故から約1年後の太平洋の放射能濃度は、最高でも世界各国が核実験を繰り返した昭和30年代の約3分の1にとどまる(???)との予測を発表した。平均的な日本人が太平洋産の海産物を1年間摂取した場合の内部被曝(ひばく)線量は、30年代とほぼ同水準になるという。

 汚染水の海洋流出と爆発による大気放出で、計8・45ペタベクレル(1ペタは10の15乗)の放射性物質セシウム137が4月1日に福島沖で拡散したと仮定。太平洋を約200キロ四方の格子状に区切り、水平・上下両方向の拡散をシミュレーションした。

 太平洋の海水中のセシウム濃度は1年後、最も高い海域で1リットル当たり0・023ベクレルとなることが分かった。事故前(同0・0017ベクレル)の約14倍だが、30年代のピークだった32年の同0・080ベクレルの約3分の1に相当する。以後、濃度はさらに薄まっていく。

 この結果から、平均的な日本人が平成24年4月から1年間、最も放射能濃度の高かった海域の海産物を摂取した場合の内部被曝線量を年間約1・8マイクロシーベルトと算出。昭和30年代の同約1・7マイクロシーベルトとほぼ同水準となった。一般人の内部被曝限度である同1ミリシーベルトの約500分の1で、人体への影響は問題ないレベルという。
 セシウムを含む水塊は、黒潮や北太平洋海流で拡散しながら東に移動し、放出から3年後にハワイ、5年後に北米西海岸に到達すると予測した。(産経)

SPRINTARS (Spectral Radiation-Transport Model for Aerosol Species)

「福島第1原子力発電所から出された物質のグローバルな輸送をもたらした低気圧とジェット気流」

 「東北地方太平洋沖地震」による津波で被災した福島第1原子力発電所からは、3 月12~16 日に大量の放射性物質が大気中に放出された。

 我々は、大気微粒子の広域輸送モデルを用いたコンピュータシミュレーションを実施し、原発近傍から出された微粒子が上空の強い偏西風ジェット気流に乗って数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した様子を、観測のタイミング通りに再現することに成功した。

 また、輸送される距離とともに物質の濃度が人体に影響のないレベルにまで急速に希釈される様子も、ほぼ観測通りに再現された。原発からは 3 月 14~16 日に特に大量の放射性物質が放出されたが、偶然 14~15 日に東日本を通過した低気圧に伴う上昇気流により地表付近から上空に巻き上げられたため、太平洋、さらには大西洋を越えて輸送されてしまった。なお、原発北西方向へ大量の放射性物質を運んだ地表付近の南東風も、この低気圧がもたらしたものである」
 ↓
 ある種の虚しさを前提に言えば、例えば、上のSPRINTARSの観測結果に関する論文の中の 「人体に影響のないレベルにまで」は、挿入する必要のない表現である。
 この情報は、3月段階で海外の研究機関が発表していた内容を裏付けるものだが、むしろ問題は「原発近傍から出された微粒子」が「上空の強い偏西風ジェット気流に乗って」、たった「数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した」という、その事実にある。

 また、「低気圧に伴う上昇気流」の起こり方次第で、「大量の放射性物質」が各地に飛散する在り方も、どうとでも変化しえた(現状よりもっと悪くなる可能性もあった)ということの方が重要だろう。

 さらに、上にある「日本原子力研究開発機構」による「昭和30年代の約3分の1にとどまる」論についても「とどまる」という日本語は「科学的」に不必要な表現である。つまり、いずれも研究者の「価値判断」が強く作用した表現ということだ(→研究者の思想と倫理の問題であり、「3・11」から大学・独法系・企業の研究者・技術者が何を学んだか、学ぼうとしてきたかの問題である。「もんじゅ」の「復旧」→再稼働問題にしても)。 

アリューシャン列島M7.2の地震 沿岸に一時津波警報(朝日)

2011年6月24日金曜日

子どもと妊婦に「バッジ式線量計」を配布するのは正しいか?

子どもと妊婦に「バッジ式線量計」を配布するのは正しいか?

 福島県が、15歳未満の子どもと妊婦、計30万人(!!)に被曝量を計測する「バッジ式線量計」を配布するという。
 しかも、「バッジ式線量計」では被曝量を把握できないので、各市町村が線量計を「1カ月半程度の周期で個人から回収し、専門機関の検査結果を保護者らに通知する」のだという。県は、「バッジ式線量計は1回あたりの検査費と線量計のレンタル費で2500円。今年度中に6回検査を行うと、1万5000円に相当する。 市町村が個別に補助を上乗せすれば、デジタル式の線量計を配ることもできる仕組み」と説明しているということだ。
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福島第1原発:15歳未満、妊婦に線量計 30万人に配布
 東京電力福島第1原発事故を受け、福島県は24日、15歳未満の子ども28万人と妊婦2万人に、個人が受ける放射線量を測るバッジ式線量計を配布することを決めた。1人あたり1万5000円を上限に各市町村に補助する。大気中の放射線量を測るサーベイメーター約5000台を約500の小学校区に配る事業と合わせ、費用は約60億円としている。佐藤雄平知事は導入時期について「できるだけ急いでやりたい」と話した。
 県によると、デジタル式線量計なら、個人が受けた放射線量が数値で示されるが、バッジ式線量計はそのままでは線量を把握できない。このため各市町村はバッジ式線量計を1カ月半程度の周期で個人から回収し、専門機関の検査結果を保護者らに通知することにしている。 県の説明では、バッジ式線量計は1回あたりの検査費と線量計のレンタル費で2500円。今年度中に6回検査を行うと、1万5000円に相当する。 市町村が個別に補助を上乗せすれば、デジタル式の線量計を配ることもできる仕組み(???)にし、配布を既に決めている福島市、伊達市なども補助の対象にした。県外に避難した子どもの分の予算も確保した。【毎日・高瀬浩平】
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 これは違うのではないか。私には、意味がさっぱり分からない。
 おそらく県としては、線量計の配布を子どもと妊婦の「健康管理」のための措置だと言いたいのだろう。福島市と同じように。しかし、「事故収束」の展望が見えず、第一原発から日常的に放射能が放出されている状況にあって、子どもと妊婦に線量計を持たせることが、何の「健康管理」につながるのだろう。現に、県内の「ホットスポット」は増加の一途を辿っているのである。

 仕事の都合や収入確保その他諸々の事情によって、県外に避難したくともできない人が多くいることは、みんなわかっている。そういう人々や子どものために、線量計を配布するという発想は理解できないわけではない。
 しかし、条件さえ整うなら、子どもを学童疎開させたい・自分も疎開したい、と考えている人が多くいることも事実なのだ。妊婦であるなら、なおさらのこと。 行政の責任としては、一方で国と東電に対してそのための費用を、賠償請求という形で捻出することを追求しながら、他方で、疎開先の確保を進め、それこそ希望する人々に対して斡旋する準備を進めることにあるのではないか。

 くり返しになるが、来年一月中旬までの「冷温停止」→放射能汚染ゼロの展望など、現状ではない。 少なくとも、福島県や県内の市町村は、県民の自力の「自主避難」、市民組織・NGO・個人の疎開支援に依存することなく、全国の自治体に対し、正式の救援要請を発すべきではないか。学童疎開や妊婦の受け入れ、出産・産後のケアまでを含めた支援要請である。これから何がどうなってゆくのか、誰も何も保証出来ないことを大前提とし、行政の果たすべき責任とは何かを考えるべきである。

 昨日、今日と猛暑となった。これから梅雨が来て、暑い夏が来る。福島は東北地方だが、都市部は暑い! 避難所への、猛暑・高湿度対策(グッズの差し入れ)も必要になるが、夏休みが来る前に、子どもや妊婦の疎開先の確保に向け、具体的な行動を県と自治体は取るべきである。

⇒「「父母たちの要請にYesを!」~20ミリシーベルト撤回
⇒「子どもたちが「積算被曝量計測器」を持たされる日
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7月
福島の子ども45%甲状腺被ばく 精密検査不要と安全委
 福島第1原発事故で、原子力安全委員会は5日までに、国と福島県が3月下旬に実施した15歳までの子ども約千人を対象にした調査で、約45%の子どもが甲状腺被ばくを受けていたことを明らかにした。ただいずれも微量で、安全委は「政府として精密検査の必要はないと判断した」と説明している。 調査は3月26~30日、福島県いわき市、川俣町、飯舘村の0~15歳の1080人にサーベイメーターで実施。実測値のほとんどは毎時0・04マイクロシーベルト以下で、年間被ばく線量に換算できないレベルだった。【共同通信】

線量気にせず夏休み 県内外で受け入れ拡大
 もうすぐ夏休みが始まる。本来なら、屋外やプールで遊ぶ子どもたちの姿であふれる季節だが、今年は放射線の影響を心配する保護者も多く、夏休みをどう過ごさせるかに頭を悩ます。そんな中、子どもたちに思い切り遊べる場を提供しようという支援の輪が拡大している。九州など県外や放射線量が低い会津などで夏休みに子どもや親子を受け入れる事業が相次いでいる。自治体側も、子どもたちを林間学校に招待したり、屋内プールや体育館を開放したりと、外遊びができないことで生じるストレスの解消を図る。(福島民友
⇒「被災福島の児童ら沖縄に 県教委、夏休みツアー実施」(琉球新報)
・「日本の放射能問題は深刻=元内閣官房参与・小佐古氏」(ウォール・ストリート・ジャーナル 7/2)
地域分断に不満 伊達市で避難勧奨後初の説明会
 政府が局地的に空間放射線量が高い「ホットスポット」の住民に避難を勧める「特定避難勧奨地点」の指定を4地区の113世帯が受けた伊達市は4日、指定後初の対象地区への説明会を全10世帯中6世帯が指定された月舘町相葭(あいよし)地区の住民を対象に開いた。同地区では、放射線に関する説明会が一度も開かれていないこともあり、住民は、指定の設定や今後の生活に対する不満と不安の声を市にぶつけた。
 10世帯から代表者12人が出席した。住民は「1度の調査で指定住居を決めるのはおかしい」「線量が高いのを知らず、作物を畑の下に処分してしまった。その畑でまた作れるのか」「残る世帯には、どんな支援があるのか」などの声が上がった。(福島民友)

避難勧奨地点、福島・伊達住民「全世帯指定を」 市長に近く要望
◇「支援の有無、不公平」
 東京電力福島第1原発事故で局所的に年間被ばく線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあるとして、国から一部の世帯が「特定避難勧奨地点」に指定された福島県伊達市霊山(りょうぜん)町の上小国、下小国両地区の住民が、全世帯を指定するよう仁志田昇司市長に文書で近く要望する。住民たちは「避難したくても指定世帯だけが経済的支援を受けられるのは不公平。地域がバラバラになり崩壊する」と反発している。
 特定避難勧奨地点は高線量の「ホットスポット」に合わせて住居単位で国が指定し、避難を支援する制度。6月30日に伊達市内4地区で計113世帯が初めて指定された。このうち上小国、下小国両地区での指定は計426世帯のうち86世帯
 両地区の関係者によると、5日夜に緊急住民集会を開き、全世帯の指定を求めていくことを確認。認められなかった場合でも、未指定世帯が避難する際の住宅提供や子供の学校・幼稚園への送迎などを求める。世帯によっては自主的な除染で放射線量を下げた後に国が線量を測って指定されなかったケースもあり、住民たちは調査手法も疑問視している。 地元小学校のPTA会長を務める高橋裕一さん(41)は「指定世帯だけが経済的支援を受けられる不平等な制度だ」と批判。市は指定世帯に、8日までに避難するかどうかの回答を求めている。【毎日・高瀬浩平】

6月
福島・伊達、避難勧奨地点に指定 30日にホットスポットの90戸
 政府の原子力災害現地対策本部は29日、福島県伊達市の4地区約90戸について、警戒区域、計画的避難区域などの外でも放射線量が局地的に高い「ホットスポット」に当たるとして、30日に避難希望者を支援する「特定避難勧奨地点」に指定することを決めた。 政府、県、伊達市の3者は29日、伊達市役所で最終調整を行い、対象住居を絞り込んだ。 対象は霊山町石田、霊山町上小国、霊山町下小国、月館町相葭の4地区で、年間積算線量20ミリシーベルトを超えると推定される住居。子どもや妊婦のいる住居は、20ミリシーベルトを超えないとしても指定する。(共同)

特定避難勧奨地点、一部指定に小国地区住民疑問
 伊達市は、30日にも政府の特定避難勧奨地点に指定されるとみられる同市霊山町小国地区の住民を対象に28日、説明会を同市で開いた。指定される住居は、29日の国、県、市の協議で決まる見通し。指定直前に設けられた市と意見を交わす最後の機会に、住民はさまざまな疑問を投げ掛けた
 市内では霊山町石田、上小国、下小国、月館町相葭(あいよし)の4地区で100戸前後が指定されるとみられる。上小国、下小国は合わせて「小国地区」としてコミュニティーを形成しており、一部の住居を指定するという国の方針に不満を持つ地元住民が多い。(福島民友)
避難勧奨地点:住民任せ…募る不信感 指定疑問視する声も(毎日)

月内に伊達市内の避難地点指定 経産政務官
 福島第1原発事故の影響で放射線量が年間20ミリシーベルトを超えると推定される「ホットスポット」に関し、原子力災害現地対策本部長の田嶋要・経済産業政務官は24日、福島県伊達市内の「特定避難勧奨地点」の対象を、月末をめどに指定する考えを示した。同市の仁志田昇司市長と会談後、記者団に明らかにした。
 仁志田市長は田嶋本部長に対し、住居単位で指定する特定避難勧奨地点について、地域のつながりや妊産婦、子どもに配慮して指定するよう求めた。田嶋本部長は「市や市民の要望になるべく沿う形で実現させたい。母子の健康への不安を解消するため、どのようなルールにするか、検討する必要がある」と一定の理解を示した。【毎日・駒木智一】
 ↓
 もっとも重要なことは、精確な放射線量の測定・情報公開の徹底化と、避難体制の準備を国と市が始めることである。 

福島第1原発:「学校疎開」仮処分申請へ…郡山市の保護者
 東京電力福島第1原発の事故で、福島県郡山市の市立小中学校に通う児童・生徒7人の保護者が24日午後、学校生活で国際放射線防護委員会(ICRP)が示す平常時の上限を超えた被ばくの可能性が高いとして、同市に対し、学校の「疎開」を求める仮処分を福島地裁郡山支部に申し立てる。子どもへの健康影響について保護者の不安が高まっており、事故を理由に法的手段に訴える初のケースとみられる。
 ICRPは一般住民の健康影響を減らす目安として、原子力施設が平常時の場合に年間1ミリシーベルト、事故からの復旧期で年間1~20ミリシーベルトとしている。弁護団は、現状では学校生活で年間1ミリシーベルトを上回る可能性があり、生徒・児童の人格権侵害に当たると主張している。
 文部科学省は福島県内の学校などでの児童・生徒の被ばく線量の上限を当初、年間20ミリシーベルトとしたが、基準が高すぎるという保護者らの不安から年間1ミリシーベルト以下を目標とした。【毎日・八田浩輔】
⇒「福島第1原発:13校・園の屋外活動制限 文科省」(毎日)
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福島第一原発事故避難促進・自主避難者支援を求める対政府交渉
 ~「避難の権利」確立を求めて~

 福島の父母たちの訴えおよびそれを支える市民運動によって、文部科学省は5月27日、今年度の学校における被ばく量を「年1ミリシーベルトを目指す」としました。しかしこれは、学校外の被ばく、事故直後の3月の被ばく、内部被ばくを考慮したものではありません。既に、子どもたちの被ばく量は1ミリシーベルトの数倍にも達しており、福島県内でも、早急に避難・疎開、夏休みの前倒し等の被ばくの低減を、行政が主導して行うべきだという声が高まっています。
 福島には、避難をしたくてもできない人たちがたくさんいますが、避難を阻んでいる大きな理由の一つが、「自主」避難のむずかしさや限界にあります。住民の「避難の権利」、すなわち自らの被ばくのリスクを知る権利や、自主避難した場合に補償等が受けられる権利を確立させていくための措置が必要です。 今回、日本政府に、避難を促進していくことを求める要請を行います。ぜひ、みなさんもご参加ください。一緒に声を上げていきましょう!

日時:2011年6月30日(木) 午後
場所:参議院議員会館1F 講堂
◆スケジュール
12:30 参議院議員会館ロビー集合
13:00~14:00 市民の事前打ち合わせ
14:00~16:00 要請書提出・交渉 ※12:30~13:30までロビーで入館証を配布します。
◆申込み:下記フォームよりお申込みください
◆主催
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、国際環境NGO FoE Japan、グリーン・アクション、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
◆問い合わせ
・福島老朽原発を考える会 阪上 携帯:090-8116-7155
・国際環境NGO FoE Japan 満田(みつた)携帯:090-6142-1807
事前質問書案内チラシ
国際環境NGO FoE Japan
〒171-0014 東京都豊島区池袋3-30-8-1F
Tel: 03-6907-7217  Fax: 03-6907-7219
福島の子どもたちを守るための署名(避難・疎開の促進と法定1ミリシーベルトの順守を)

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知人の細川弘明さんから
(一部内容既報、ツイッター既報、複数のMLにも配信しますので、重複してご覧になる方、ごめんなさい)
◎5月13日(月曜)放映の「ニュースJAPAN」(FNN全国ネット、首都圏ではフジテレビ、近畿では関西テレビ、ほか)で、小生も参加しておこなわれた福島市での「放射能除染・回復プロジェクト」の作業のようすが紹介されました。FNNのサイトで(3日間限定、木曜まで)録画を御覧いただけます
◎前回(5月26日と27日)の放送の録画は、下記で御覧いただけます。
http://bit.Ly/josen526 http://bit.Ly/josen527
 ぜひ御覧いただき、お気づきの点やご感想などお知らせください。現地の皆さん(とりわけ、小さいお子さんをお持ちの若いお母さん・お父さんたち)へのメッセージもありましたら、ぜひどうぞ!

 プロジェクトでは、5月と6月の実験をふまえ、市民のための放射能除染マニュアルDVD(+資料)を作成し、多くの方に呼びかけていく予定です。類似の活動・実践をすすめている他の市民グループとの連携もとっていきます。もちろん、一方で、避難・学童疎開の必要性・緊急性についても、認識をひろめていきたいと考えています。「除染活動をすること」は必ずしも「避難しなくてもなんとかなる」という考え方を前提にしたものではありません
 現在のところ、「放射能除染・回復プロジェクト」は全くの手弁当でおこなっているプロジェクトです(とりわけ山田國廣先生個人の金銭的負担が多大! 福島市民の皆さんの時間と労力の貢献も多大!!)。今後、なんらかの助成金なり補助金を得ていく必要がありますが、仮に得られなくても、継続していく所存です。カンパはもちろん大歓迎ですが、受け入れ口座などまだ整っていませんので、またあらためて呼びかけをさせて下さい。
 所要経費としては、交通費、宿泊費、放射線測定器の購入費、除染用資材(PVA液、不織布、防護服、はしご、脚立、土嚢袋、ビニール袋類などなど)の購入費、土壌サンプルの郵送費、撮影費用、通信費などなど。放射線測定データや土壌汚染濃度のデータについては、個人宅・私有地での計測ということもあり、不特定多数への情報公開はいたしませんが、お問い合わせいただければ、プライバシーに配慮する措置をとったうえで、適宜、提供いたします。皆さまの応援・ご支援をよろしくお願いします。ご助言、アイデアもぜひ!

細川 弘明 拝 <(_ _)>http://twilog.org/ngalyak
◎被災地救援 ↓ 活動展開中☆応援よろしく http://bit.ly/999parcic
(PARCの緊急物資調達の取り組みは4/23をもって終了しました。姉妹組織 PARCIC の現地支援は、中長期モードに組み直して、継続中)
高木仁三郎市民科学基金の緊急取り組みについてはこちら

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【抜粋】
電気新聞「時評」福島第一原子力発電所-計画避難
日本原子力技術協会最高顧問 石川 迪夫

◇ こと子供の健康となると、日本世論は神経質だ。保護一辺倒で逆らえない。広島、長崎は別として、我々は中国の大気核実験で、これ以上の放射線被ばくを経験済みなのだが、その記憶は風化させて、20ミリシーベルトの実体を見つめることなく、心配ばかりしているように見える
◇ ICRPの勧告線量には、大人と子供の区別がない。その是非については、医者でない僕は判断できない。だが、いやしくも国際的な学術論議の末に合意された勧告だ。確たる根拠のある結論であるに相違ない。20~100ミリシーベルト/年という勧告範囲の中では、健康に対する放射線影響は同じとICRPが判断していることは、断言できる。
 健康影響に差がないから、制限値は各国の事情で決めて良いと、幅を持たせたのだ。20を採ろうが100を選ぼうが、それは国の事情、裁量の範囲だ。日本政府は最低値を採用した。 その選択は、放射線影響に対する厳格な姿勢で、国民健康を配慮した決定と、概ね好意的に受け止められている。だが僕は、この決定を、ここまで厳しくやっていますとの責任逃れのパーフォーマンスと見る。さらに非常時への政治的配慮に欠けているから、落第点を付ける

◇ 具体的に示そう。いま計画避難で揺れる飯館村、3月15日の環境放射能測定値は40マイクロシーベルト/時以上もあったのに、避難命令はなかった。警戒区域に指定された4月22日は、放出放射能は沃素131(半減期約8日)の減衰による効果で、5マイクロシーベルト/時までに下がっていた。この状況で一年間(約9000時間)生活したとすると、村民の被曝線量は20ミリシーベルト/年を若干上回る計算となる。従って、飯館村は警戒区域であり、住民は計画避難の対象となる。 だが仮に、政府の選択が50ミリシーベルトであれば、飯館村の大部分は警戒区域でなくなる。避難の必要はないし、牛との辛い別れもない。100ミリシーベルトならば更なりで、疎開中の原子力避難者の多くが、自宅に戻れる

◇ 大気中への放射能はもう出尽くしている。環境汚染も減衰の一途だ。不自由な避難生活は止めるに限る。帰宅できない理由は、政府が20ミリシーベルトを選んだところにある。 提案だが、100ミリシーベルトまでの範囲で、希望者の帰宅を認めてはどうか。帰宅者の健康診断は原子力従事者並みに実施すればよい。家業に励んで貰って.生産品を買い上げればよい。これが住民に希望を与え、地域の活性化に繋がる道と思うのだが。(2011/6/20)

2011年6月23日木曜日

安保と原発のPolitical Technology(政治工学)

 安保と原発のPolitical Technology(政治工学)


 安保と原発に共通しているのは、両者とも国策として推進されてきたことだ。そして両者とも「地方」に犠牲を強いてきたことである。
 もちろん、米軍基地は東京にも神奈川にもある。しかし沖縄の一極集中状況とその他の「地方」が日米安保体制の実体を担わされてきたことに変わりない。
 そして福島と福井の「原発銀座」。青森なんて、原発の集積基地と化すと同時に、米軍基地も押し付けられてきた、稀にみる自治体である。こんなところが世界のどこにあるだろう。

 交付金と地域振興策によって、つまり札束をちらつかせながら、時には頬っぺたを札束ではたきながら、危険な国策を地方に押し付けるというのは、うまいやり方だ。必ず、「受け入れよう」と言い出す人たちが現れるからだし、地方で何が起ころうと、大都市圏のサイレント・マジョリティは「我関せず」でいるからである。1億3000万分の100万や200万、いや1000万、2000万人を切り捨てたところで、国の政治の大勢に影響は出ない。

 サイレント・マジョリティとは、たいてい国策とか国家が持ち出されると黙り込む、保守派の代名詞である。国策に抵抗する地元のたたかいは、長期戦になればなるほど、孤立化し、分裂し、サイレント・マジョリティに黙殺され、負けてしまう。それでも、国策と国家に対してたたかい続ける地方の者たちは、静かな怒りをやがて冷たい敵意に変え、その冷たいまなざしは、自分たちの叫びや呼びかけに耳もかさない大都会のサイレント・マジョリティに向けるようになる・・・。

 10代の頃、だいたいそんな風に、私は考えていた。
 しかし、「そうではないのだ」と、教えてくれた人がいる。日高六郎という人である。
 また古い話になって恐縮だが、今から30年ほど前、日高さんを招いて小さな企画をやったことがある。その企画の後、二人で話す機会があった。何を話していたかは詳しく覚えていないが、そのとき日高さんは「権力が支配を維持するためには、人民の15%ほどを掌握していればよい」みたいな事を言ったのである。
 今思えば、「なぜ15%なのか?」と訊けばよかったのだが、この話は当時の私には「目から鱗」もので、痛く衝撃を受けたのを覚えている。

 サイレント・マジョリティが「権力」を支持しなくとも、「権力」は自らを維持できる。サイレント・マジョリティがひたすら現状維持と安定を好む保守派、などというのは偏見と妄想であって、彼/彼女らは潜在的反逆者でさえあるかも知れないのである。「その時代のもっとも支配的なイデオロギー」を信奉する者は、マジョリティではなく、15%程度で十分なのである。
 「15%」が社会学的に正しい値なのかどうか、当時も今も私には分からない。社会学者の日高さんが言うのだから学説的に根拠のない話でもないのだろう、その程度に考え、痛く若かった私は納得したものである。 
 

 日高六郎の「15%」を思い出したのは、先週末、"Political technology": why is it alive and flourishing in the former USSR? というOpen Democracyに掲載されたテキストを読んだからである。

 旧ソ連時代の共産党の「支配の政治学」やレーニン像倒壊後のロシアの政治過程に関心がある人は、原文を読んで欲しい。ここでは、Political technologyとは、要するに、日高六郎言うところの「15%」の「政治工学」のこと、と理解することにしたい。私としては、そう考えることで沖縄・安保・原発問題から、アフガニスタン・リビア・パレスチナまで、ここ最近のいろんな事象の謎解きをする、一つの「鍵」を得た思いがしたからである。 

(つづく)

2011年6月23日を記憶する---OkinawaとFukushima、安保と原発

2011年6月23日を記憶する---OkinawaとFukushima、安保と原発


 糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われた「沖縄全戦没者追悼式」。つけっぱなしのラジオから流れる式典の様子を聞いていた。 
 琉球新報が報じた仲井真知事の「平和宣言」(要旨)の中では、このように語られている。

 「[沖縄は]二度と戦争の悲劇を繰り返さないこと、平和こそ何物にも替え難いものであることを深く学んだ。
 県民は依然として過重な米軍基地負担を強いられており、基地から派生する事件や事故、騒音に悩まされている。安全・安心な県民生活はいまだに実現していない。基地負担の大幅な軽減と、危険な普天間飛行場を一日も早く県外に移設すること、日米地位協定を抜本的に見直すことを日米両政府に強く訴えていく」

 これに対し、菅首相は「あいさつ」でこう応えている
 「東日本大震災と原子力発電所の大事故という未曽有の困難の中で慰霊の日を迎えることに、私は特別な感慨を覚える。・・・・。いつの時代も、人間の尊厳と生命を守ることこそ政治の任務であることを心に刻んでいる。
 沖縄には米軍基地が集中し、皆さまに大きなご負担をおかけしている。本土復帰から39年が過ぎたにもかかわらず、沖縄だけ負担軽減が遅れていることは、ざんきに堪えない。今後、米軍基地に関わる沖縄の負担軽減と危険性除去への取り組みについて最大限努力する。

 政府としては現行の沖縄振興計画の総仕上げをしっかり行う。沖縄の優位性や潜在力を最大限に生かし、沖縄の自立的発展のみならず、わが国およびアジア太平洋地域の発展に寄与しうる新たな振興策に取り組む。一括交付金県が主体となる計画への支援、跡地利用に関する法律の制定、出先機関の見直しなど、地元の方々の声に耳を傾けながら、さまざまな制度について実現していく。

 今日の日本の平和と繁栄は、戦没者の尊い犠牲の上に築かれている。わが国は、二度と国民を戦争という不幸に陥れない不戦の誓いを堅持し、国際社会の一員として国際平和の実現を不断に追求していく」

 この菅首相の「あいさつ」を、さらに11年前(2000年)の森元首相の「あいさつ」と比べてみる。
 「世界の恒久平和を考えるためにも、私たちは戦争の悲惨さや皆様の悲しみを深く心に刻み、直視しなければならない」。
 「政府として沖縄の特性を生かした産業の振興、南の国際交流拠点の形成に努める」。
 「負担を軽減すべく、皆様の理解と協力を得ながら整理・統合・縮小に向けてSACO最終報告の着実な実施に努めたい」。
 「沖縄に夢と希望にあふれた明るい未来を築き、世界平和の確立と豊かな社会実現のために全力を尽くしたい」。

 仲井真知事の「平和宣言」には、米軍基地の(段階的)全面撤去を求める沖縄の人々との思いとはズレがある。しかし、そのズレ以上に、知事の「平和宣言」と首相の「あいさつ」の間には埋めようのない「断層」がある。そして、民主党政権の「あいさつ」は、11年前の自民党政権の「あいさつ」と、ほとんど何も変わらない。 これが、「戦後66年」目を迎えたOkinawaの現実である。

・・・
知事、「辺野古」「普天間」二択論を批判
 仲井真知事は23日、米軍普天間飛行場の移設について「沖縄のせいで固定化だと言われてもとんでもない話」だと強調。日米の一部に根強い、名護市辺野古への移設を受け入れなければ普天間が固定化されるとの二択論をけん制した。那覇空港での菅直人首相との懇談後、記者団に語った。 その上で仲井真知事は「どうして元の案にいつも回帰しなければならないか、どうも理解不能だ」とも述べ、再び従来のV字案に回帰した先の日米安全保障協議委員会(2プラス2)合意を批判、普天間飛行場はあくまで県外移設されるべきだとの考えを示した。
 懇談は政府側の求めで設定され、午後1時50分すぎから約30分間、昼食を交えて行われた。出席者によると、知事は中国から沖縄経由の入国を優遇する数次ビザ創設や黒糖の品質表示問題など、最近の政府による沖縄への配慮に謝意を述べ、継続的な支援を求めた。 菅首相からは特別な発言はなく、普天間移設や2プラス2については首相、知事双方とも言及しなかったという。福山哲郎官房副長官、上原良幸、与世田兼稔の両副知事らが同席した。(沖縄タイムス

普天間移設:超党派議員が沖縄訪問 仲井真知事と面談へ
 民主党の前原誠司前外相や自民党の中谷元・元防衛庁長官ら与野党の議員約10人が7月9~11日、沖縄県を訪れ、仲井真弘多知事らと会談することが分かった。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり、米議会内で同県名護市辺野古への移設計画に見直し論が出ているため、現行案への理解を要請する。
 訪問するのは超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」のメンバーで、公明党の佐藤茂樹衆院議員らも参加。政府・民主党内でも「現行案の実現は難しい」との声が出ているため、現行案を推進する前原氏が呼び掛けた。9日に辺野古を視察し、10日夜に仲井真知事と会談する予定。【毎日・大貫智子】
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 これが「普天間問題」の「解決」をはかるという日米安保族のpolitical technology(政治工学)の一形態である。

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 昨日(6/22)、大阪の橋本知事や平松市長の「脱原発宣言」に触れて、「政策の不在」と「地元への視線の不在」を書いていた。両氏の「宣言」を評価し、歓迎している人々(私もその一人なのだが)の中には、「コイツは何を言っているのか?」と思った人もいたかもしれない。
 そう感じた人に、考えてみてほしいのは、上の仲井真知事や菅首相の言葉が、どれだけ「米軍基地の(段階的)全面撤去を求める沖縄の人々」の心の琴線に触れたものであるか、ということである。


 大阪府と大阪市の「脱原発宣言」が「本物」であるかどうか(少なくとも大阪市のそれは「本物」とはとても思えない)、また関西広域連合が大阪府・市の「宣言」に対して、どのような態度を取るかについては、今週の連合の会議から、7月半ばくらいまでには判明するだろう。
 私の「違和感」は、府と市の「宣言」が関電の「15%節電要請」(今では「11%以上」)に対するリアクションとして出てきたこと、企業の節電は必要なしとしてきたこと、関電の筆頭株主の大阪市に至っては、株主総会に対して脱原発を提起する意思を持たないと表明したこと、等々にその要因があった。しかし、国と電力会社がどこまで本気で再稼働に踏み切るか(法的には立地自治体の承諾は必要ない)についても不透明な状況になってきたので、しばらく様子をみることにしよう。

6/24
関西経済5団体、関電に原発再稼働求める
 関西経済連合会や大阪商工会議所など関西の経済5団体は24日、関西電力に対して緊急要望を申し入れた。定期検査で停止している原子力発電所の再稼働に向けて努力を促すほか、中小企業には15%の節電要請の目標引き下げなど配慮するよう訴えた。要望後、佐藤茂雄・大商会頭は「関西でも十分な電力が得られないと日本経済が混乱する。(原発再稼働は)緊急措置として申し入れた」と述べた。
 関電の八木誠社長は記者団に対し、約7000件の大口顧客を半数訪問し、6割が10%程度の節電協力にとどまったことを明かした。八木社長は15%は節電の目標水準だとし、「中小企業については個々の事情に配慮したい」と話した。(日経)
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 関西財界の再稼働要請に対し、大阪府と市、また関西広域連合がどのように介入し、逆転をはかるか。これが知事、市長の「脱原発宣言」の本気度をはかる、当面の指標である。
 いずれにしても、私たちは、デモや集会に合わせた対政府・対電力会社行動だけでなく、自治体の意思決定への介入の手段、方法を真剣に考えねばならない段階に来ていると言えるだろう。
6/26
関西広域連合、関電に原子力安全協定申し入れへ
 2府5県でつくる広域行政組織「関西広域連合」は25日、大阪市内で開いた委員会で、福井県内の原発再稼働についての原子力安全協定を結ぶよう関電に申し入れる方針を決めた。具体的な内容を詰め、来月にも関電に提示する。連合長を務める兵庫県の井戸敏三知事は「情報提供のほか、電力確保策、代替エネルギーまで含めた包括的なものになるだろう」と述べ、立地県との協定とは、異なる内容を検討することを明らかにした。 協定締結は、滋賀県の嘉田由紀子知事が「万一の事故の際の琵琶湖への影響などは関西全体の問題」などとして提案した。
 原子力安全協定は、電力事業者と自治体が結ぶ任意協定。内容は原発の増設・再開に関する事前承認権調査権防災対策の協力などさまざまで、原発や核燃料サイクル施設を抱える自治体と結ぶ例が多い。
 国内最多の原発14基を抱える福井県に隣接する京都府は今月23日、関電に協定締結を求め、協議会を設けることで合意。鳥取県も島根原発がある中国電力に県や近隣自治体と協定を結ぶよう申し入れているが、広域連合としては、現段階では関電との協定締結に絞って検討する方針。
 この日開かれた広域連合議会の全員協議会には、関西電力の八木誠社長も非公開で参加。八木社長は、一律15%程度の節電要望の際に、「説明の仕方に不手際があった」と謝罪したうえで、節電への協力を改めて要請した。 広域連合側は、安全協定締結についてこの日の要望は見送ったが、協議会終了後、八木社長は「この問題は国で検討し、原子力防災協定を見直している最中。そうした動きを見ながら検討したい」と述べた。
 広域連合はこの日、産業や経済分野に悪影響を及ぼさないよう家庭やオフィスを中心に平常時5%、ピーク時10%を目標に節電に取り組むことを正式に決定。 電力需給が逼迫(ひっぱく)した場合、大阪府の橋下徹知事が提唱する家庭でのエアコン停止など、さらなる節電を呼びかける。 また、広域連合内の新エネルギー開発の研究会に関電にも参加するよう呼びかけ、新しいエネルギー対策のあり方を共同検討していくことも決めた。(産経)
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・「青森、岩手で震度5弱 M6.7、一時津波注意報
・「ぬかるむ被災地 東北・あすまで大雨の恐れ」(河北新報)
・「「安全委、原発指針抜本改定へ 見直し着手
「原発事故「レベル7」の正体 「想定外」ゆえ大ざっぱ」(毎日)
・「原発被災者「国策の被害者」と明記 政権の取り組み方針」(朝日)
・福島第一原発「1号機設置許可の無効求めた訴訟、国が争う姿勢」(読売)
枝野氏、原発再稼働「できない」
 枝野幸男官房長官は23日午前、共産党の志位和夫委員長と首相官邸で会談し、海江田万里経済産業相が停止中の原発の再稼働を促したことに立地県の知事が反発していることについて「一般社会の常識から考えても、県知事が『絶対反対』といっているものを稼働させることはできない」と述べ、再稼働に否定的な見解を示した。枝野氏に再稼働要請の撤回を求めた志位氏が、会談後の記者会見で明らかにした。(産経)
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 「立地県の知事」は「絶対反対」と言っているのだろうか? 「社会の常識」では再稼働などありえないのに、「国家の常識」で再稼働を要請していることが問題なのではないのか? この政権は何がしたいのか? 

・「原発安全協定、京都府と協議 関電社長が山田知事と会談」(京都新聞)
◎山田知事は八木社長に、府が福井県に隣接することを理由に、原発再稼働時は府に了解を求めるなど福井県並みの権限を認める協定を結ぶよう求めた。
◎これに対し、八木社長は「国の原子力防災指針の見直しなど全体を踏まえる必要がある」としながらも、府と協議の場を設けることは受け入れた。
◎山田知事に先立ち大津市の滋賀県庁で会談した嘉田知事は、運転開始から40年を超える美浜原発1号機について「老朽化している美浜原発1号機はできるだけ早く卒業してほしい」と廃炉を求めたが、八木社長は「高経年化で福島第1原発事故が起きたと思っていない。技術的な保全計画を立て、国に安全を認めてもらって運転している」と安全性を強調した。

・・・
・「アフガン撤収、来夏までに3万3千人 米大統領が演説」(朝日)→単に、2009年の増派分を引き上げる、という話。
「グアムと沖縄は植民地」 沖縄出身の教授、国連で演説
 国連本部で21日に開かれた脱植民地化特別委員会で、沖縄県出身の松島泰勝・龍谷大教授(48)が、グアム政府代表団の一員として異例の演説をした。「グアムと沖縄は今も植民地。地域のあり方や行く末を決めるのは住民ではなく本土政府だ」と訴えた。
 沖縄県出身者がグアム政府代表に加わるのは、今回が初めて。松島さんが今年2月、学生を連れてグアムを訪れた際に、NGO代表でグアム大講師のリサ・ナティビダッドさん(40)と米軍基地問題について意見交換したのがきっかけで、グアム政府から代表団入りを求められた。
 グアム政府代表団5人のうち4番目に発言した松島さんは「沖縄の人々は米軍基地の撤去を求めているのに、日米両政府は一方的に押しつけている。グアムの人々も、これ以上の基地負担を望んでいない。沖縄とグアムは軍事的にも政治的にも経済的にも植民地で、兄弟姉妹の関係だ」と述べ、沖縄だけでなくグアムの米軍基地負担も軽減させるため、日米両政府へ圧力をかけるよう国際社会に求めた。(朝日)
・・・

2011年6月21日火曜日

脱原発派の試練

 脱原発派の試練


 今週末から、国(経産大臣)の「停止中原発の再稼働行脚」が始まる。その第一弾は、立地自治体の首長が再稼働を容認している玄海原発をかかえる佐賀県になりそうだ。
 国が、つまり県ではなく、県民に対する再稼働にむけた「説明会」を開き、その「結果」を受けて、知事が再稼働承認・不承認の判断を下すというのである。
⇒「軽水炉原発、特に玄海原発1号機の照射脆化・脆性破壊に関する検討」(原子力資料情報室)

 しかし、下の佐賀新聞の記事を読むと、再稼働をめぐる地元自治体としての意思決定のための手続きを、佐賀県が国に丸投げしていることがわかるはずだ。県として、県民の意思を十分に汲み取る方法を考えもせず、国が選んだ「4、5人」の「県民」へのヒアリングをもって「県民向け説明会」とし、その様子を知事が傍聴し、最終決定の判断材料とする、というのだから。
・・
原発 国の佐賀県民向け説明会が26日に (佐賀新聞
 停止中の玄海原発2、3号機の再稼働問題に絡み、古川康佐賀県知事は20日の県議会一般質問で、国に要請していた原発の安全性についての県民向け説明会が26日午前に開かれることを明らかにした。古川知事は議会後、記者団に「直接説明を受けて住民がどう反応するか、非常に関心がある」と述べ、再稼働の判断材料にする考えも示した。 国主催の県民説明会は、古川知事が「県民の気持ちに応えるには、国として分かりやすい説明を行う必要がある」として経産省に要請していた。 
 説明会の方式は国が調整中だが、混乱を避ける(???)ため、県民4、5人が経産省原子力安全・保安院と資源エネルギー庁の担当者から説明を受け、疑問点や不安に思う点などを質疑する予定。やり取りはケーブルテレビとインターネットで生中継し、視聴者からの質問もファクスや電子メールで同時に受け付ける。 
 質問する県民の人選は国が行う(!!!)が、古川知事は「早く再稼働しろという人たちを集めてやっても仕方ない。素朴に疑問に思っている人やよく分からないと感じている普通の人が一番いい」と述べた。説明会について「一定の理解(???)を得られるのか、それとも逆になるのか非常に関心がある。感覚的に見てみたい」と語り、「県民理解」を判断する際に重視する構えだ。 
 立地自治体に再稼働を要請すると表明した海江田万里経産相の来県については、福島第1原発事故の地震の影響や、過酷事故対策を保安院に確認した上で「浜岡原発の停止理由を含め、国の考え方を大臣に会ってきちんと聞きたい」と述べた。時期については明言せず、記者団にも「国が説明会をした上で、その反応も見ながらになる」と答えるにとどめた。  また、自民県議が経済のために早期の再稼働決断を求めたことに対し、古川知事は「電力需給も全く無関心でいいことではない。九州や日本全体の経済、社会の中で今回の再稼働をどう考えるかが求められている」と答弁した。 
 一方、県議会原子力安全対策等特別委員会は理事会を開き、定例議会閉会後の同委員会に、内閣府の原子力安全委員会を参考人招致することを決めた。国際原子力機関(IAEA)に政府が報告した28項目の事故の教訓とその対応策などについて質疑する予定。日程は1日の委員会終了後の理事会で決める。 経産相の来県日程が判明次第、緊急理事会を開いて対応を協議することも確認。木原奉文委員長は、経産相の再稼働要請について「政府が腹を固めた感じ(???)を受けた。大臣がIAEAから帰ってきてどういう動きをするか注目したい」と話した。
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 佐賀県を皮切りに強行される、アリバイ的な国の再稼働全国行脚。しかし、この行脚にも莫大な税金が浪費されることを忘れてはならない。そんな金があるなら、例えば佐賀新聞なら佐賀新聞に、広域的世論調査を国なり県なりが依頼し、再稼働の是非、稼働中原子炉の稼働継続/段階的停止の是非を問えばよい。国民投票なんて国(官僚)はやる意思など毛頭ないし、民主党にも自民党にもない。ゆえに、現状不可能である。また、広域的住民投票の実施についても、時間的に間に合う/合わない以前に、それをやる意思さえ自治体にはない(だからこそ、国民投票以前にこの議論を今しっかりやっておく必要があるのである)。

 ともあれ。再稼働をめぐる住民/市民の意思を、まともに聞こうともしない、そういう国と県、また立地自治体とは何なのか、市民の「安全・安心」を本気で考えているのか(→現状、「考えている」とはとても思えない)、と市民/住民は不安を募らせる一方になる。

 国が打ち出した3月末の「緊急安全対策」と今月初旬の「過酷事故対策」。これらはいずれもメルトダウン→メルトスルーを想定した原発「事故」の対策になっていない/なりようがない(補足的説明は後日)。ここに根本的な問題がある。しかしそれ以上に、国の「対策」に基づいた「安全」措置さえ完了していないというのに、再稼働要請を国がし、一部自治体が場合によっては受け入れるかのような曖昧な姿勢を示していることが地域住民の不安を、いっそうかきたてているのである。


「緊急安全対策」と「苛酷事故対策」をめぐる混乱

 そこで、マスコミ報道や人の話を聞いて、ひとつはっきりさせておく必要がある、と思ったことがある。それはなぜ自治体が、一様に国の浜岡原発停止要請問題を持ち出すのか、についてである。
 原発を抱える道県、市町村の立地自治体は、再稼働を「拒否」しているのではない。自治体は、自治体として再稼働を承諾/拒否する「条件」が整っていないと言っているのである。

 浜岡のように国が正式に停止要請し、静岡県や御前崎市のように額が減ったとしても「原発マネー」が道県・立地自治体に流れることを国が確約すれば(→現状では、国はしない)、できれば停止する方向で考えたい、という思いが自治体にないわけではない。しかし、国が浜岡とそれ以外の原発を区別/差別するから、態度を明確に打ち出せないでいる、ただそれだけのことなのだ。裏返して言えば、「万が一」が起こったときに、自治体の力を超える行財政責任において国が全面的に責任を負い、保障/補償する、その言質が欲しいのである。だから、停止中原発の再稼働問題について言えば、自治体の判断基準になっているのは、「緊急安全対策」と「過酷事故対策」が市民の「安心」を保障するか否かではなく、承諾/拒否した場合に国がどうでるかにある。国からの「原発マネー」がどうなるか、雇用減少分をカバーする対策を国が打ち出してくれるか否か、その展望を示してくれるか否か、にある。 

 自治体の行政マインドとしては、税収と財源の安定化をはかり、一定の市民に対する福利厚生をはかることができれば、それでよい。「法令」に則ったことをやっていれば、それでよい。私たちが何を何と言おうが、国が法令改正などで動くのでなければ、基本的に自治体は聞く耳を持たない。なぜなら、そういう自治体(「地方自治」)を国(霞が関)がつくってきたからである。国と自治体との慣習的関係から言えば、こうした「お国まかせ」的な自治体の在り方は、至極当然の姿勢である。佐賀県と県知事の、またその他自治体の無責任極まりないとしか思えない態度にも、それなりの根拠と理由があるということだ。


 考えてもみてほしい。もしも「3・11」が佐賀県や福井県、あるいは愛媛県で起こったとしたらどうなっていたか。九電、関電、四国電力に「レベル7」の「原子力緊急事態」に対処する技術的・財政的・人材的能力があるかどうか、国との「統合対策本部」が機能していたかどうか・・・。「事態」が、今以上にひどくなっていたであろうことは、誰にだって予測できることではないだろうか。

 だから本来、稼働中原子炉を冷温停止せず、停止中原子炉の再稼働を国が要請したり、それを自治体が受け入れるなんてこと自体があってはならない、信じられないことである。
 けれども、現実はそれと真逆の方向に向って進んできた。原発は「3・11」以後も、現に動いているし、立地自治体では、市民の生命の「安心」以上(?)に、原発を止めれば自治体財政の「安心」が危機に陥ってしまうからである。つまり、原発立地自治体は、「原発マネー」と「原発雇用」に代わる、財源と雇用政策上の対案が存在しない現実にあっては、再稼働を受け入れる以外の選択肢を持たないのである。この状況を脱原発を主張する〈私たち〉がどうするか/できるか。とても一筋縄ではいかない問題である。エネルギー消費において原発なしでもやれる/やれない、とは次元の違う問題であるからだ。

 国の再稼働要請を受け入れても地獄、拒否しても地獄。承諾して、万が一にも「第二の3・11」が襲来すれば、文字通りの地獄になるし、拒否すれば少子高齢化がもっとも進行し、多数の「限界集落」を抱えている「地方」は、今以上の地獄をみることになる。「3・11」以前に、地域経済・医療・社会保障制度の崩壊、「夕張市問題」などで私たちが何を議論していたか、思い出してほしい。「原発マネー」の減少に直面した御前崎市が最初にやったことが市民に対する行政サービスのカットであったことを、忘れてはならないだろう。

 「緊急安全対策」と「苛酷事故対策」をめぐる混乱は、この「どっちにころんでも地獄」を理解しないところで生まれているように私には思える。再稼働問題が工学的というか技術的な問題(のみ)に焦点があてられ、論じられる傾向が強いからである。問題の所在が「対策」が対策になっているか否かにあるかのように言う自治体と、一部マスコミの報道が、一般市民/住民の混乱を広げているのである。 

 「どっちにころんでも地獄」を何とかするためには、何をどうすればよいのか? ただ「原発止めろ!」と言うだけではどうにもならないし、どうにもできない。例えば札幌、例えば博多というように、電気やエネルギーを地域において一番消費している「大都市圏と地元をつなぐ議論」をもっと行う必要がある、と私が主張する理由はそこにある。
⇒「脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を(2)」より


〈大都市圏の責任: 大阪と東京の対応を考える〉 

 「第二の3・11」が、もしも起こったとしても、この国は私たちを守らないし、守れない。
 もうこのことは、議論の余地がないほど、はっきりしたと思う。

 であるなら、稼働中原発が全国各地に存在し、しかも国が明確に停止中原発の再稼働の意思を示している今、私たちは自治体が「地域主権」を国に対して行使し、段階的廃炉に向けた自治体としての意思を示すよう、要求せざるをえない。つまり自治体が、「市民参加」の下で、自治体としての「段階的脱原発の青写真」を示すよう、要求するのである。何年、何10年、かかってもよい。早ければ早いに越したことはないが、せめて2050年くらいまでには、日本のすべての自治体が完璧に「原発フリー」になれば、素晴らしいと思う。

 その第一歩として、「非核都市宣言」を数多くの自治体が発してきたように、まず自治体としての「脱原発都市宣言」を発するよう働きかける/運動を起こすことも妙案の一つかもしれない。
 世界の〈核廃絶〉運動の「大本山」とも言うべきHiroshimaとNagasakiは、「脱原発都市宣言」を発するべき第一の都市だと思えるが、広島市・長崎市はどのように言うだろうか。「核兵器はNOだが、原発はOK」と言うだろうか? 今年の「8・6」と「8・9」に、両市はどんな宣言や声明を発するだろう。そこでFukushimaと原発問題はどのように言及されるだろう・・・。

 いずれにしても、憲法上何の根拠もない「エネルギー政策は国の専管事項」という官僚機構の恫喝的独断専行を「地方主権」と「自治」の観点から突き崩してゆかないと、再稼働問題も段階的廃炉問題も、何も進まず、解決しない。この点から考えてみると、この間の再稼働をめぐる議論の中で、一番見過ごされてきたのは、原発を抱えていない自治体の原発問題と再稼働問題の両方に対する「様子見」の姿勢であることが、より際立ってくるのではないだろうか。

 圧倒的多数の自治体(都府県、市町村)は、これらに対する明確な態度表明をしていない。つまり、どこか原発を抱える自治体の「苦悩」を、他人事のように捉えているフシがある。マスコミも私たちも、それを問題にしようとしてこなかった。なぜだろう。

 その中でも、東京に次ぐ人口を抱える大阪については、府に続き大阪市も「脱原発」を打ち出した。⇒「特集ワイド:橋下・大阪府知事、脱原発の本気度」(6/21 毎日) しかし問題がないわけではない。

6/22
 「問題」は二つある。一つは、政策の欠如である。府なら府、市なら市として、「脱原発」宣言を具体的な「公共政策」の中に織り込むのでなければ、単なる首長のパフォーマンスに終わってしまうからである。
 「脱原発予算」を付け、プロジェクトチームを立ち上げ、短・中・長期の行動計画を策定し、また必要に応じて条例化する、そうした府・市としての政策的意思を、府民・市民に対して示すことが重要だ。それが、自治体サイドからの、原発事業を基軸とする関電の経営方針の抜本的転換を迫るアクションや、「地域独占」の経営形態の段階的解体を仕掛けるモーションと結合してはじめて、「脱原発」宣言は現実性を持ちうるのだから。

 報道されている内容から判断するかぎり、橋本知事の脱原発宣言は、「節電による再稼働ストップ」(これ自体、非常に重要ではあるのだが)の域を超えるものではない。また平松市長のそれも、脱原発の確固たるビジョンに基くと言うより、自然・再生可能エネルギーの比率を高めるという菅内閣的なものにとどまっている。今後、知事と市長からこれら以上のものが出てくるのどうか、それとも秋の市長選をにらんだ集票パフォーマンスに終わるかどうか、現状では判断することができないが、問題は「政策の欠如」にとどまらない。「西の原発銀座、福井」の最大の恩恵を受けてきた自治体の首長の発言として、福井県民や立地自治体の市民/住民に対する「視線の欠如」に、私は強い違和感を持った。これが二点目の問題である。

「2011年6月23日を記憶する---OkinawaとFukushima、安保と原発」へ 
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「照射脆化・脆性破壊」
 原子炉運転中に高速中性子の照射を受け、圧力容器鋼材が破壊に対する抵抗力が低下する(「中性子照射脆化」)という指摘や懸念に対し、東電を含む電力会社は、「脆化」や「脆性破壊」を防止するため、「監視試験片」を予め炉心の近くに装荷し、定期的に点検しているので、圧力容器の「健全性」は常に保たれている、としてきた。柏崎刈羽原発のこの問題に関する、昨年6月の東電の回答がその一例である。
⇒「「冷温停止」の政治と科学:  研究者のモラルが試される時
⇒「脱原発の〈思想〉と〈科学〉が試される時(1)

ザ・るぽ 原子力施設密集・下北半島を歩く 覚悟と恐れの間で」(毎日)
滋賀県知事「将来は原発卒業を」 もんじゅと美浜原発視察
 滋賀県の嘉田由紀子知事は22日、関西電力美浜原発と日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を視察した。東京電力福島第1原発事故を受けた安全対策に関し、老朽化の影響などは「すぐには評価できない」とする一方、将来的には原発から「卒業」して代替エネルギーによる安定的な電力供給を考えるべきだという「卒原発」の考えを示した。 滋賀県知事の原発視察は初めて。美浜原発から同県境までは十数キロ、琵琶湖までは二十数キロしか離れておらず、滋賀県地域防災計画見直しの参考にしようと現場を訪れた。
 関電美浜原子力PRセンターで知事は冒頭「滋賀県は福井県に隣接。琵琶湖は関西の水源で、1400万人の命の水源を預かっている。最悪のことを考え、万一の事態に備えてほしい」と述べた。その後、美浜3号機の使用済み燃料プールや、津波対策として海抜32メートルに配備した電源車などを確認した。 視察後、嘉田知事は記者団に対し「原発は強大で複雑なシステムの中で電気を生み出している」と作業員らに謝意を表した上で「地震や津波などをどう想定するか。安全の仕組み(が有効か)はすぐには証明できない」と述べ、停止中の原発の再稼働に懸念を示した。
 ただ、数十年間続いてきた原発からのエネルギー転換は「そう簡単には答えは出ない」とも言及。関電に定期的な協議の場を提案し「もっと情報を出してもらい、議論を盛り上げていきたい」と語った。 もんじゅでは、原子炉容器に落下した炉内中継装置の回収作業などを確認した。(福井新聞
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 知事は「懸念」を持つのに、再稼働停止を要請しないのだろうか。それは滋賀県民のみならず福井県民に対しても無責任ではないのか。「そう簡単には答えは出ない」なら、いつ、どのような「情報」が出揃ったら「答え」を滋賀県として出すのか、それを明確にすべきではないだろうか。「美浜原発から同県境までは十数キロ、琵琶湖までは二十数キロ」の自治体の首長として。

7月10日の原発再稼働困難も 愛媛知事、伊方3号機で
 愛媛県の中村時広知事は22日、四国電力の千葉昭社長と県庁で会談し、定期検査中の伊方原発(同県伊方町)3号機の再稼働への同意について、定期検査を終え、再稼働が可能になる7月10日に合わせた判断にはこだわらない考えを示した。7月10日の再稼働は困難となる可能性が出てきた。
 伊方原発の耐震性強化を求めてきた中村知事は四電の安全対策に一定の評価をしながらも「国の新しい安全基準、地元の意向と合わせ、トータルに判断する現時点では白紙だ」と強調した。 その上で「原発はそれぞれ違うのだから、全国まとめてではなく、海江田万里経済産業相に自らの言葉で地元に語ってもらうのが最低条件。7月10日に縛られることはない」と、判断が先送りになることを示唆した。
 会談では、千葉社長が原子炉の耐震性を国の基準より大幅に高くするなどの安全対策について報告。プルサーマル発電をしている伊方3号機のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16本を「安全に推移してきた」として24日から再装荷すると表明。ただ、再稼働時に新たに5本を追加する予定だったが見送りにした。 千葉社長は会談終了後、記者団に「(予定通りの)再稼働に向け最大限努力したい」と話した。(共同)

福井知事「海江田経産相の安全と経済の二者択一論おかしい」 再稼働拒否
 全国最多の原発14基が立地する福井県の西川一誠知事は20日の定例記者会見で、海江田万里経産相が停止中の原発は震災の追加対策で安全が担保され、再稼働に問題はないとしたことに関連し、「ざっと見た限りだが、県が要請したことへの答えになっていないように思う。状況は変わっていない」と述べ、現段階で再稼働を認めない考えを改めて示した。 また、海江田経産相が再稼働要請の理由として、電力不足や経済面での懸念をあげたことには「(安全と経済の)二者択一で論じる問題ではない。安全が損なわれたのでは、元も子もない」とした。 西川知事は東京電力福島第1原発事故を踏まえた新しい安全基準や、中部電力浜岡原発のみを停止させ、他の原発は安全としている理由の提示を国へ求めている。

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〈原子力委員会と安全委員会の責任→解体的改組〉問題の補足

 法を改正したからといって、すべてが変わるわけではないし、市民の「安全・安心」が保障/保証されるわけでもない。しかし現行法体系ではどうしようもない。私たちが理解しなければならないのは、国と自治体の「行政」は、すべて官僚による法(の解釈)を根拠にしているという意味で、法を改正しなければ何も変わらない、ということである。

 「私は何だったのか?」発言で、一躍「国民的名声」を得た斑目原子力安全委員長。当初、この人と委員会に対して「国民」が抱いていた怒りは、この人の「原子力安全委員会には権限がない」発言によって、ある種の「憐憫」に変わってしまったと言ってよいだろう。結局、原子力安全委員会なんて単なる官僚機構の「飾りもの」に過ぎず、何もすることはできないのだ、そういうそれ自体は正しい分析と認識が、この委員会/委員長以下各委員の責任問題を不問にし、免罪する空気をつくってしまったのである。

(つづく)
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安全対策「有効性検証を」 原子力安全委員長
 原子力安全委員会の班目春樹委員長は20日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故を受けて電力各社などがまとめた緊急安全対策について「どれぐらい有効か、時間がかかるかもしれないが原子力安全・保安院に評価を求めたい」と述べ、長期的視野に立った検証が必要との認識を示した。
 班目委員長は「従来の安全対策には大きな穴が開いていた」と指摘。事故を受け保安院が要請した対策は評価できるとした上で「穴をふさぐのにどれくらい有効だったかという観点からのまとめも必要だ」とした。 海江田万里経済産業相が、停止中の原発の再稼働を急ぐ意向を表明したことについては「運転管理段階にある原子炉の規制は、規制行政庁がすべきことで、何か言うつもりはない(???)」と明言を避けた。

保安院、来年にも独立 / 経産相が意向表明
 海江田万里経済産業相は20日、国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合の会場で記者団に対し、原子力安全・保安院の経済産業省からの分離、独立について「2012年は一つのめど」と語り、来年を念頭に組織改革をする意向を明らかにした。 IAEAの天野之弥事務局長が会合の冒頭演説で、規制当局の機能などを評価するチームを日本に来年派遣すると述べたことを受け、質問に答えた。【ウィーン共同】⇒「分離、独立」とは、経産省所管の「独立」行政法人化のこと?

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(注)このページに掲載されている写真は、「批評する工房のパレット」所蔵のものです。本サイトに掲載されている写真・文は、出典が明記・リンクされているものを除き、すべて著作権・知的所有権を放棄したものです。自由にお使い下さい。

2011年6月19日日曜日

馬毛島の軍事施設化に反対する署名のお願い

馬毛島の軍事施設化に反対する署名のお願い

 森の旅人:高田健太&奈央さんより

 みなさんにお願いがあります。
 屋久島の隣に位置する馬毛島に、米軍の施設が建設される計画が進められています。
 今、世界中で使われている争うためのエネルギーを、みんなが幸せになるために使うことができるのなら…。 時間やお金、不安や恐怖などによる束縛から解放されれば、人は本来の光り輝ける存在となるでしょう。

 署名の締め切りは、6月20日です。できるだけ多くの友人・知人の方々へお知らせください。
 よろしくお願いします。みんなで、真の平和な世界を目指していきましょう。
 ご協力に感謝致します。
 ありがとうございます。
 
馬毛島の軍事施設化に反対する署名

内閣総理大臣 管 直人  殿
防衛大臣   北澤 俊美 殿
外務大臣    松本 剛明 殿

 5月15日、空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)を馬毛島(屋久島の北、 種子島の西約12キロ)で実施する方向で防衛省が最終調整に入ったとの報道がなされました。そして6月8日、防衛副大臣が鹿児島県庁を訪れ、伊藤知事にFCLPの馬毛島への移転を正式に伝え、6月21日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で移転方針を正式合意したい考えを伝えました。

 FCLPが馬毛島へ移転されれば、昼夜にわたって集中的、連続的に実施される訓練による騒音被害はもちろん、事故の危険性、生態系への悪影響、農業および漁業、観光業といった地域経済へのダメージなど、種子島、屋久島に及ぼす負担は甚大なものがあります。

 私たち屋久島の住民にとっては、世界自然遺産地の美しい森や里の上空を激しい爆音を伴って飛んでいく黒い戦闘機の姿は、決して目にしたくない光景です。このような重大なことが、地元にはなんの相談もなく一方的に推進されようとしていることは、住民無視の信じられない暴挙というしかありません。

 私たちから静穏な日々と静かな夜を奪う権利は誰にもありません。熊毛の美しい自然と平穏な環境、貧しくとも必死でがんばっている地域の営みを守るため、馬毛島の軍事施設化に断固として反対を表明します。

 お手数ですが、署名はこちらのほうでダウンロードした後、フアックスや郵送で送って下さい。(http://www.realwave-corp.com/01top/04/2011061501.doc) 詳細につきましてはこちらを御覧ください。(http://www.realwave-corp.com/01top/04/2011.06.htm
 1日でも早く、この地球上に真に平和な世界が訪れますように☆

 森の旅人:高田健太&奈央

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7月
馬毛島の位置と飛行経路(朝日)

馬毛島訓練移転、地元市民団体から初の賛成表明
 在日米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)移転候補地として日米共同文書に鹿児島県西之表市・馬毛島(まげしま)が明記されたことについて、同市の市民団体「自衛隊訓練施設設置の推進を求める会」(中原勇代表)が15日、施設整備を求める陳情書を同市と市議会に提出した。 移転に賛成を表明した団体は初めて。 同会は退職自衛官や漁業者、建設業関係者ら約20人で組織している。
 一方、同市など地元1市3町の首長と議長でつくる「米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会」は移転反対を表明しており、会長の長野力市長は「反対の考えに変わりはない」と述べた。
 「求める会」が出した陳情書では、防衛省がFCLPについて種子島での騒音は新幹線車内並みの70デシベル未満に収まり、住民の健康や農林水産業などへの影響は少ないと説明したことを指摘。〈1〉将来、馬毛島を米軍基地化しない〈2〉事故などで不安を与えない〈3〉漁業補償を適切に行う――ことなどを条件に整備推進を求めた。(読売)

米機馬毛島訓練 島守れ、怒りの拳200人が抗議/西之表
 防衛省の小川勝也副大臣が地元説明に訪れた西之表市役所には2日、種子島、屋久島の反対派住民ら約200人が詰め掛け、騒然となった。 市役所前の道路脇には「住民軽視、頭越し対応 絶対許さず」「日米合意を撤回せよ」などと書かれた横断幕やプラカードを掲げた住民が列をなし、小川副大臣を乗せた車の到着を待った。黒塗りの車が近づくにつれ、取り囲むように詰め寄り、「米軍反対」と繰り返した。
 説明会の間も多くの住民が居残り、抗議の声は3階の説明会会場まで響いた。終了後も車に乗り込もうとする小川副大臣に「基地反対」などとシュプレヒコールを浴びせ、拳を突き上げた。 長野力市長は玄関に姿を現し、反対の意思をあらためて伝えたことを報告。住民からは激励するかのように「市長」コールがわき起こった。警察官約10人が警戒に当たり、トラブルはなかった。 急きょ「馬毛島を守る女性の会」を立ち上げ、8日に反対集会を開く同市の目迫エミ子さん(73)は「説明を聞くこと自体反対だったが居ても立ってもいられず来た」。 屋久島から約30人で訪れた「馬毛島の軍事施設化を許さない屋久島の会」の古居智子会長は「種子島の団体と交流し、一緒に活動していきたい」と決意をにじませた。(南日本新聞

馬毛島訓練移転、地元首長ら「今後も反対貫く」
 在日米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)を巡り、鹿児島県西之表市・馬毛島を移転候補地とする防衛省の説明後、地元の首長らは2日、同市役所で記者会見に臨み、「全く理解できない」「今後も反対を貫く」などと改めて反対の姿勢を示した。 同省の小川勝也副大臣と2時間近く向き合ったが、議論は平行線のまま終わった。
 この日、種子島の西之表市役所を訪れた小川氏は、長野力・同市長ら地元の首長や議長を前に、「(FCLP移転の)有力な検討対象として考えている」と明言。さらに、南北方向の滑走路を備えた自衛隊の訓練場とし、支援物資などを備蓄することで大災害や離島侵攻が起きた場合には集結拠点とする構想を説明した。 地元側からは「馬毛島を選んだ理由は」「騒音の影響をどう考えるのか」といった質問が相次ぎ、「農林水産、畜産、観光業で一生懸命生きている。訓練移転を軽く考えているなら許せない」と長野市長が口調を強める場面も。(読売)

小川副防衛相 艦載機の馬毛島訓練移転 地元首長に説明
 小川勝也副防衛相ら防衛省幹部は2日、鹿児島県・種子島の西之表市を訪れ、東京都の硫黄島で行っている米空母艦載機部隊の陸上空母離着陸訓練(FCLP)を馬毛島(まげしま=同市)へ移転させる計画を、地元の種子島・屋久島1市3町の首長らに説明し、受け入れに理解を求めた。防衛省側は、訓練移転に伴う地元自治体への交付金が約250億円になると説明した。
 防衛省が地元の種子島で説明するのは初めてだが、地元は先月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書で、馬毛島が移転の「検討対象」と明記されたことに反発。地元1市3町の各議会も反対決議をしており、同意の見通しは立っていない。 小川氏は、南西諸島における防衛強化策として、馬毛島に新たな自衛隊訓練施設を建設し、米軍と共同使用してFCLPを実施する方針を表明。米軍厚木基地(神奈川県)の艦載機部隊が移転する米軍岩国基地(山口県)から約400キロの距離にあり、無人島であることなどが理由とみられる。馬毛島から約12キロの種子島での米軍機による騒音データなどを示し、理解を求めた。
 質疑の中で「自治体への交付金が250億円との報道があったが、本当か」と問われ、防衛省側が「他の例を参考に算出すると、それくらいになる」と答えた。また「騒音が問題になるレベルの地域の人口はゼロ」として地元の理解を求めた。 会談は午前9時すぎから始まり、西之表市▽中種子町▽南種子町▽屋久島町の首長と議長でつくる「米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会」(会長、長野力・西之表市長)の要請で、報道陣に全面公開された。 小川氏は6月8日、鹿児島県の伊藤祐一郎知事に検討状況を伝えた。知事は国の構想には一定の理解を示しつつ「地元の意向が最も重要だ。その意向に添って対応したい」と、慎重姿勢を示している。【毎日・村尾哲】

6月
馬毛島訓練 西之表市長が反対運動協力要請
 防衛省が馬毛島(西之表市)への米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)移転を検討している問題で、西之表市は17日夜、自治会長や各種団体の代表者に対し、移転問題に関する経過報告会を市民会館で開催した。長野力市長は反対運動への協力を要請、出席者から同調する意見が相次いだ
 21日にはワシントンで外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が予定され、FCLPの移転先についても協議する見通し。

馬毛島訓練移転 反対決議相次ぐ
 防衛省が馬毛島(西之表市)への米軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)移転を検討している問題で、南種子町議会は15日、FCLP反対を全会一致で決議。14日の中種子、屋久島両町議会に続き、西之表市を含む熊毛1市3町すべての議会が反対で足並みをそろえた。馬毛島に近い南大隅町議会も15日、反対の意見書案を可決し、移転阻止の機運は県本土にも広がりをみせた。(南日本新聞より
・・・
⇒「オスプレイ、伊江島で陸上着艦訓練 恒常化確実に」(琉球新報)
⇒「空爆で市民9人死亡と批判 リビア、調査中とNATO」(共同)→ボシャールNATO司令官「兵器システムの障害により攻撃が目標を外れ、市民の犠牲者を出したようだ」と誤爆を確認。「無実の市民の命が失われたことを遺憾に思う」
⇒「「保護する責任」は「文民」を保護しない---リビア情勢ではっきりしたこと
⇒「永遠の安保、永遠の米軍基地、そして永遠のテロル

ポスト「3・11」の世界と平和構築

ポスト「3・11」の世界と平和構築

 いろいろ先に説明をきちんとしなければいけないのだけれど、その余裕がない。なので、紹介だけ先にしておこうと思った。

①昨年10月来、このブログでも何度か紹介してきたジャン・ブリクモンの『人道的帝国主義』が翻訳出版(菊池昌実訳)される。
②私も編集に関わった『脱「国際協力」: 開発と平和構築を超えて』が近々、出版される。7月末から8月頃、配本になる予定である。(版元のサイトで公表される前に、一部の「ネット書店」で宣伝が開始されているようだ。)

 以下の文章は、私が担当した『脱「国際協力」: 開発と平和構築を超えて』の序章の一節である。まだ草稿段階だけれども、本が完成すれば序章は全文を公開したいと考えている。(2011/6/21)
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 【ポスト「3・11」の世界と平和構築】

 貧しい国の開発を援助し、戦争や紛争の絶えない世界に平和を構築する・・・。
 これまでずっと、これが繁栄を謳歌し、自由と平和を享受する欧米や日本などの先進諸国の使命であり、責任なのだと語られてきた。先に進んだ者が、後からやってくる者を助けてやる、という理屈である。
 「先進」と「後進」の定義や指標、「低開発」や「開発途上」という表現に隠れた西洋中心主義など、問題は古くからさまざま指摘されてきた。しかし平たく言えば、要するにそういうことになる。

 五年前に出版した『国家・社会変革・NGO』は、このような開発や平和構築に潜んでいる政策上の矛盾と理念上の偽善を批判した。先に進んだ者は、自分たちが常に先に進み、自分たちだけが自由、繁栄、平和を享受できるようにルールを決め、それを後からやってくる者に強い、歩む力を奪ってきたからこそ先に進むことができたのではないか?
 同書は、それまで多くの人が論じてきたそうした認識を継承しつつ、対テロ戦争と同時進行する開発や平和構築を国家や国連機関と「パートナーシップ」を組みながら行うNGOの具体的な活動やプロジェクトの問題性や限界を論じた。戦争に対する立場を明確にせず、戦時下の「国際協力」「平和構築」「軍民協力」「NGO」論を主張するNGOや研究者が国際的に台頭する中で、そうした時代的趨勢を〈市民社会とNGOの危機〉と捉え、一石を投じようとしたのである。

 あれから5年。状況はさほど変わっていない。というのも、「リーマンショック」とその余震が世界中に広がる一方で、その影響が今度は逆津波となり、まだショックから立ち直っていない欧米諸国や日本に押し寄せ、第二派のショックとなってG8やG20と呼ばれる世界の主要国の土台、社会基盤を大きく揺さぶり始めているからである。
 中東・アラブ・イスラーム社会の「民主化」のうねり、「民主化支援」の名によるまた再びの軍事介入、そして日本を襲った「3・11」の大激震――。
 米国にせよEUや日本にせよ、世界や他国の貧困をなくし、平和を構築する前に、私たちは自分の国の貧困をなくし、税金を食う軍隊の海外派兵をやめさせ、平和を守らねばならない、そのような現実に直面するようになったのである。

 財政緊縮と社会保障制度の解体的危機に瀕する中で、援助大国は軍事予算の削減を渋りながら、真っ先にODA予算を切り捨てようとする。ODAの「戦略」化は、これまでのODAがはらんでいた問題をますます増幅させるだけになると思えるが、NGOはただ「予算を減らすな」と言うだけで良いのか。それではNGOが「援助ビジネス」や「人道支援ビジネス」の肩棒を担ぐだけではないか・・・。
 『国家・社会変革・NGO』から五年、グローバル経済・社会・政治すべてにわたる状況変化の中で、〈市民社会とNGOの危機〉は思いもよらぬ形で深まってしまったのである。

〈対テロ戦争時代の開発と平和構築を超える〉
 対テロ戦争の勃発から11年目を迎える今日、私たちは目的(「テロ対策」)は手段(武力行使)を正当化しないこと、また目的そのものが妥当性を喪失していることを、改めて議論する必要に迫られている。なぜなら、和解と和平なき目的の絶対化と、文字通りの国家テロまでを行うという手段を選ばない戦争の永続化が、これに抵抗する武装闘争の永続化をもたらしているからである。
 さらに、本来、粘り強い当事者間の努力と意思、そして同じく粘り強い国際社会の原則的関与がありさえすれば、解決できるはずのその他の紛争をも、対テロ戦争の永続化がその解決をより困難にしているからである。

 対テロ戦争の国際的承認は、正当な要求を掲げて闘う民衆の運動に対して、国家が「テロ対策」の名の下に軍や武装警察を動員し、武力弾圧することを放置し、黙認する国際的環境を生み出してきた。何でもかんでも「テロリスト」や「イスラーム原理主義」のせいにすれば、どれだけ腐敗した抑圧的国家や軍隊が何をやっても許されるかのように。イスラエルのパレスチナに対する占領・入植政策・ガザへの武力攻撃にせよ、ロシアや中国の「テロ対策」による少数民族の運動に対する弾圧にせよ、開発や土地収奪に対する先住民族の抵抗運動に対する国家の弾圧にせよ。
 私たちは何を誤ってきたのか? 対テロ戦争時代の「平和の構築」を語る外務省の主張を見ながら考えてみよう。

〈外務省の「平和の定着」「復興開発」論〉
 「平和の構築」を「ODA重点政策」の一つとして位置付ける外務省は、「紛争と開発」のページの冒頭、確信に満ちた様子でこう述べている。

 平和と安定の持続(平和構築と読め)は開発の前提条件であり、国際社会の更なる繁栄及び国際的な開発目標の達成には不可欠です。

 私たちが「超え」なければならないと考えるのは、このような開発の目的であると同時にその手段でもあるような平和構築観である。平和構築を開発の「前提条件」と捉え、その開発によって世界の「繁栄」を実現することが平和構築につながるという、その開発中心主義的発想である。
 外務省は続けて言う。

 「開発途上国における国内・地域紛争では、政治的対立に加え貧困が紛争の終結とその後の平和の定着を困難にしています。すなわち、腐敗や統治能力のない政府に対する不満が反対勢力の台頭を生み、また、十分な社会サービスを受けられず、収入も乏しい貧困層が反対勢力の兵員として取り込まれ、国内紛争を助長する傾向があります。したがって、政治的和解だけでなく、ODAにより元兵員を含む多くの人々の生活を改善し、平和の恩恵を実感させることが、平和構築の進展のために重要な意義があります。

 こうした事情を踏まえて、予防や紛争下の緊急人道支援とともに、紛争の終結を促進するための支援から、日本は「平和の定着」と「国づくり」のための支援まで紛争終結のための政治的プロセスとともに復興開発への支援に対して積極的に継ぎ目のない支援に取り組んできました。」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/conflict/index.html 強調は引用者による)

 それとして意識しなければ、読み流してしまうような文章だが、ここに外務省的(ということは「国連的」でもあるのだが)な平和構築を超えなければ、今後何10年たっても世界に平和は定着しない理由が潜んでいる。

〈紛争解決なき「復興開発」?〉
 引用した「紛争と開発」の末尾にある「継ぎ目のない支援」という言葉に注目しよう。外務省はここで、「紛争予防」「緊急人道支援」「和解」「紛争終結(解決)」「復興開発」など、それぞれが固有の定義と課題を持ち、とても困難で長いプロセスを伴う概念をすべて一緒くたにして語っている。
 とりわけ問題なのは、「緊急人道支援」という、きわめて時限的かつ限定的であるべき活動から「継ぎ目」なく「復興開発」へと移行できるかのように論じている点である。

 ある国・地域が「紛争下」にあるなら、「復興開発」のプロセスは、あくまでその紛争を終結させてから始めるべきである。外務省が意識しているのはイラクやアフガニスタンなどでの「復興開発」「人道支援」であるが、「テロとの戦い」も紛争の一形態であるのに変わりはなく、その例外であってはならないはずである。

 一国に対する多国籍軍の武力攻撃が政権転覆と新政権樹立を目的として行われ、暫定政権の樹立と同時に武装勢力との内戦状況に突入したにもかかわらず、これを「国際社会」が内戦とも紛争とも捉えず、新政権を支えながら「テロリスト」集団を殲滅するという構図がつくられてきた。

 つまり「国際社会」全体が軍事・非軍事両面にわたって一国の内戦に介入し続け、紛争の当事者になるという錯綜した事態を招いてしまったのである。もちろん、戦争当事国をかかえる国連安保理をはじめ、戦争に協力してきた国連機関も日本政府もこのようには考えない。このような対テロ戦争の総括は、そもそもの初めからこの戦争は間違っていたという正論を立証することになるからである。

 武力紛争が難民や紛争の犠牲者を生みだすのは避けられない。だから、紛争当事者から独立した組織や機関による「緊急人道支援」は必要だと言えるかもしれない。しかし紛争下にある国や地域において、「緊急」の人道支援と同時平行的に「復興開発」を行うことや、人道支援の延長線上で「継ぎ目」なく活動を「復興開発」に切り替える、という考え方は間違っている。このことが確認できるなら、紛争をまず当事者間で政治的に解決し、和解すること、そして戦闘行為の中止と「復興開発」に向かう合意を、紛争の犠牲者をも交えてはかることが平和構築の大原則でなければならないという理解も共有できるはずである。

 外務省が言う「開発途上国」の「紛争地域」で活動する国連機関やNGOは、この大原則に立とうとしない。これを忘れてしまえば、すべてが無原則状態まま、紛争がいたずらに長期化し、「緊急人道支援」が慢性化してしまう。対テロ戦争の勃発以前から活動していたのではなく、勃発後に初めて「現地」に入り、「緊急人道支援」を行ってきたNGOは、この「慢性化症候群」に陥ってきた。いつ果てるとも知れない破壊と殺りく、再建と人道支援のくり返し。この「悪魔のサイクル」をいつか、どこかで断ち切らねばならない。国家がその意思を持たないなら、持たせるようにできるのは市民・社会運動とNGOだけではないだろうか。

〈NGOの責任〉
 かつて国境なき医師団は、イラク戦争後の「復興人道支援」活動に触れ、国際法に則り米軍を占領軍規定し、「イラクにおける人道支援の第一の責任主体は米国にある」と主張したことがある。内戦/紛争下のNGOの責任に照らして言えば、この国境なき医師団のスタンスの取り方はとても示唆深い。医師団はこのように主張することによって、また国家と国連機関からの資金フローに依存せず「自前」のプロジェクトを展開することによって国家・国際機関からの独立性と自律性を内外にアピールしようとしたのである。

 とりわけても国家財政や国連財政から資金供与を受け内戦/紛争下で活動するNGOは、現場の被災者・難民ばかりでなく、自国の納税者や国際社会に対しても自らの活動およびその報告に責任を負うという自覚が必要である。紛争解決の具体的進展や展望が何も確認できない国々での「復興開発」や「人道支援」に税金を投入し続けることは、文字通り税金のムダであり、納税者への背徳行為であるからだ。

 国家、国連、武装勢力を問わず、中立的立場からあらゆる形態の武力行使・戦闘行為に反対し、あくまでも調停・交渉を通じた「紛争」=内戦的事態の政治的解決をはかる「アクター」の一翼を担うこと、そして恒久和平の実現を第一の目的とすること。無論、異論はさまざまあるだろうし、議論はもっと必要だろう。しかしこのことが「テロとの戦い」を含むどのような「紛争」に対しても、活動分野を問わず、NGOが採用すべき行動原則であり規範であるべきだと私たちは考えている。

 内戦/紛争の責任当時諸国、武装勢力、国連機関の紛争解決策が妥当かどうか、自組織の分析に基づき評価を下し、状況の改善・打開に向けて関係諸国や国連機関に提言し、その内容を公開する。これはいわゆる活動の「インパクト」評価や財政報告などとは別のものであり、NGOの政治的独立性や中立性を担保する重要な活動である。たとえば、オックスファムはこうした観点に基づき比較的定期的に「レポート」を公表している国際NGOの一つであるが、ピース・ウィンズを始めとした「ジャパン・プラットフォーム」を含め、日本のNGOはこの点における責任意識が全体的に希薄であると言わざるをえない。復興開発・人道支援を担うNGOの責任とは何か、その定義が問われている。

〈結語として
――「NGO共和国」をつくらないために〉

 誰が最初に言い出したのかは分からないが、「NGO共和国」という言葉がある。世界の「貧しい」国々に自然大災害や紛争が起こったときに、世界中からNGOが国連PKOや多国籍軍と一緒にやってきて、国家や地方の行政機構をバイパスし、直接その国の人々のケアやサービスデリバリーを行うようになる様子をさした言葉である。

 人々は自分たちが国に統治されているのか、それともブルーヘルメットを被った外国人の軍隊やNGOに統治されているのか、分からなくなってしまうのである。だから「NGO共和国」では、人々の不満や鬱憤はたいてい外国軍や国連やNGOに向うという特徴がある。「共和国」とまでは行かなくとも、「NGO村」や「キャンプ」なら世界にゴマンとある。

 東日本大震災とその後の遅々として進まない復旧・復興支援に引き付けて考えると、「NGO共和国」がなぜつくられてしまうのか、理由の一端が浮かび上げってくる。
 大震災では、自治体の市庁舎や役場が被災し、自治体行政が機能不全に陥り、被災した住民を十分にケアし、必要な行政サービスを提供できなくなるという事態が随所にみられた。状況をさらに悪化させたのが、「官僚主導」「前例主義」「縦割り行政」の病に冒された国の対応の遅れだった。この時、本来国や自治体が責任をもって担うべき被災者支援や復旧・復興作業を、国が動かず自治体が動けない状況の中で担ったのが国内外のNGOとボランティアだった。

 しかし私たちは、NGOが国や自治体に取って代わることはできないし、そうなるべきではないと、ごく当然のこととして考えている。国や自治体は、自然災害が起きたときに、まず被災者がでないようにする事前の災害対策をする行政責任があり、それでも被災者が出た場合には国と自治体が共同で被災者支援と復興活動にあたる行政責任があると私たちが考えているからだ。なぜなら、そのために私たちは税金を国と自治体に対して払っているのだから。

 「NGO共和国」では、そうはいかない。国ははるか昔、白人がやってきてからずっと貧しい。白人の次には日本人が来て、近頃では韓国人や中国人の顔も見える。人々は国が頼りにならないことを知っているし、自治体なんてあって無きが如くのようで、何をしているのかも分からない。人々に言わせれば、国はここ10年や20年で破綻したのではなく、それ以前からずっとそうなのだ。白人がやってきた頃の名残が今もあちらこちらに確認できる。

 「紛争予防から復興開発」まで、日本政府は白人の政府や軍隊と一緒になって「平和の構築」を掲げながら「継ぎ目のない」支援を行うのだという。「文民」の「緊急人道支援」部隊がその核となり、できるだけ多くのNGOが「軍民協力」の「民」を担うことが期待されている。英語ではこの部隊をcivic forceと呼ぶらしい。

 けれども、それでいま以上に「NGO共和国」や「NGO村」が世界に構築されたとして、人々の暮らしが良くなり、幸せになるのだろうか? 「NGO共和国」から、人々が自らを治める共和国や村をつくるにはどうすれば良いのか?

 本書を読みながら、読者も一緒に考えていただければ幸いである。

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7月
「南スーダン」9日に誕生 石油収入の分配課題
 南部独立が九日に迫ったスーダンの南北境界線の周辺で、中央政府軍と南部の武装勢力との戦闘が依然続いている。アフリカで五十四番目となる新国家「南スーダン」は南北対立を抱えたまま緊迫した雰囲気の中で分離独立を迎えることになりそうだ。
 最大の原油生産地アビエイ地区に隣接する地域には、二〇〇五年までの南北内戦で、南部側と共闘した山岳民族ヌバ人の約四万人の武装勢力が残存。南北は国連などの仲介で山岳地域に非武装地帯を設けることでいったん合意したが、スーダンのバシル大統領(67)は今月一日、「武装勢力を一掃するまで軍事作戦をやめない」と表明。中央政府軍はこの地域で空爆に踏み切り、六万人以上が避難する事態になっている。 国境線上のアビエイ地区は五月に戦闘が発生し、南北は同地区を非武装地帯にすることで合意。国連安全保障理事会は六月、アビエイに平和維持活動(PKO)部隊を派遣することを決めた。
 一方、独立後の南スーダンは国民の大半が一日一ドル以下で暮らす世界で最も貧しい国の一つだ。南部にはスーダンの油田の四分の三が集中。ただ、石油精製施設や輸出のためのパイプラインは北部が所有し、南部が石油収入を得るには、北部との経済交渉を急ぐ必要があり、今後はどう分配するかが課題だ。 それでも悲願の独立を選んだ南スーダンの首都になるジュバでは住民の期待は高まる。東アフリカ専門の民間研究所リフト・バレイのアリ・ベリジー主任研究員は本紙の取材に「住民は独立で生活が一変すると思っている。すぐには何も変わらないと分かった後の半年、一年後に国民の不満をどう抑えるかが重要になる」と語った。

<南スーダン> 1983年にスーダンのヌメイリ政権(当時)がスーダン全土にイスラム法を導入し、反発した同国南部のキリスト教徒を主体とするスーダン人民解放軍(SPLA)との戦闘が激化し内戦状態に陥った。2005年の包括和平合意までに200万人以上が死亡したとされる。
 和平合意に基づき、今年1月に南部独立を問う住民投票が実施され、98%以上の賛成で分離・独立が決定。南スーダンの初代大統領には、和平合意後に発足した南部自治政府の大統領キール氏が就任する。【東京新聞・ロンドン=松井学

経済危機のベラルーシ、「無言の抗議」広がる
 経済危機が続くベラルーシで、ルカシェンコ政権に反発する市民が黙って町を歩く「無言の抗議」活動が広がっている。 インターネットのソーシャル・ネットワークを通じて組織された非暴力運動だ。「アラブの春」のような反政府運動への発展を恐れる当局は徹底弾圧する構えで、地元報道によると、6日夜に全国各地で行われた抗議運動では約380人が拘束された。
 5月末ごろに始まった抗議運動は、「ソーシャル・ネットワークによる革命」を名乗る組織が、「フェイスブック」に似たロシアのネット・サービスを通じて参加を呼びかけているもの。最近は毎週水曜日に首都ミンスクなどで自然発生的に実施されており、参加者も増えているという。【読売・モスクワ=貞広貴志】

テロ援助の組織や個人、リスト公表…露政府系紙
 ロシアの政府系ロシア新聞は6日、テロ活動への資金援助や資金洗浄に関与する国内外の組織や個人のリストを公表した。 同紙によると、リスト公開は初。露外務省と司法省が情報提供したもので、国際テロ組織アル・カーイダや、北カフカスを拠点とするイスラム武装勢力のドク・ウマロフ指導者など150団体、約1900人の拠点や生年月日を明記した。【読売・モスクワ=寺口亮一】

6月
国連、陸自の派遣打診 南部スーダンPKO
 スーダン南部が7月に分離独立し新国家を樹立するのを受け、再編成される国連平和維持活動(PKO)部隊に関して、国連が日本政府に対し、陸上自衛隊施設部隊の派遣ができないか非公式に打診していることが18日、分かった。国連外交筋が明らかにした。
 しかし、東日本大震災の復旧・復興への対応や、派遣先のスーダン南部の治安状況が十分確保されていないことなどから、日本政府関係者は「かなり難しい」と否定的な考えを示している。 潘基文事務総長の提案では、市民保護を担う部隊インフラ整備のための施設部隊など約7千人に、警察約900人を加えた8千人規模。

潘氏、陸自スーダン派遣に期待 原発の安全強化も
 国連の潘基文事務総長は22日、来年1月からの続投が正式に決まったことを受け、共同通信など主要な国際通信社と会見した。潘氏はスーダン南部が7月に分離・独立するのに合わせ、再編成される国連平和維持活動(PKO)部隊に関し「日本を含め、加盟国が施設部隊や後方支援を提供してくれれば歓迎する」と述べ、陸上自衛隊施設部隊の派遣に期待感を示した。 潘氏は福島第1原発事故を受けた原発安全基準の強化の必要性について「フクシマの悲劇的な結果を見れば、世界は団結するべきだ」と強調。国際原子力機関(IAEA)はそうした作業の「中心であるべきだ」と述べた。【ニューヨーク共同】

陸自部隊は「能力高い」 PKO打診で国連当局者
 スーダン南部が7月に分離・独立するのに合わせ再編成される予定の国連平和維持活動(PKO)部隊に関し、国連が日本に陸上自衛隊施設部隊の派遣を非公式に打診したことについて、国連PKO局当局者は28日「日本はハイチ大地震後に部隊を派遣し、極めて高い能力を示した」と理由を説明した。 国連は日本のほか、韓国やノルウェーにも派遣を打診しているという。 また、別の当局者は、施設部隊による「道路などのインフラ整備」が独立後のスーダン南部の復興に非常に重要だと強調。支援物資輸送のための空港施設拡張工事も需要が高いという。
 一方、現地の治安状況については「比較的安定している都市部を除き、多くの武装勢力が活発に活動しており、多くの問題を抱えている」と指摘。日本が施設部隊を派遣する場合には「原則として、自らの安全は自分で守ってもらう」と説明した。(共同)

仏、リビア反体制派に武器供与 NATO加盟国で初
 フランス国防省報道官は29日、同国がリビアの反体制派に対し、上空からパラシュートを使って武器を供与していることを認めた。リビアへ軍事介入している北大西洋条約機構(NATO)加盟国で武器供与を公に認めたのはフランスが初めて。
 報道官によると、武器を供与している相手は首都トリポリ南方の山中に展開する反体制派部隊。カダフィ政権部隊に包囲されていたため、当初は食料など人道援助物資をパラシュートで投下していたが、6月以降「さらに戦況が悪化したため」対戦車ミサイルや小銃、機関銃、弾薬などの投下も始めたという。 29日付フランス紙フィガロは、武器供与により、反体制派側が徐々に首都に向けて進攻、トリポリ南方約60キロの戦略上の重要拠点ガリヤンの町に迫っていると報じた。(共同)

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を(2)

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を(2)

首相、安全確認し原発再稼働 「停止は影響大」
 菅直人首相は19日、自然エネルギーに関する国民との「オープン対話」を官邸で開き、電力不足を回避するため、定期検査などで停止中の原発について再稼働を急ぐ考えを示した。「全ての原子炉を止めれば経済に対する影響があまりにも大きい。安全性が確認されたものは稼働していく」と強調した。
 福島第1原発事故を機に、既存の電力会社が発電から送電、小売りまで独占的に担う電力事業の在り方を見直す考えも表明。「巨大な発電をしている自分の会社に有利になるような送電の使い方は改めなければならない」と述べた。ただ退陣とも絡み、発送電分離については実現の見通しがあるわけではない。【共同通信】
⇒「原発廃炉推進が82% 全国世論調査、3人に2人新増設反対」(中国新聞)
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 経産省の停止中原発の再稼働要請に、立地自治体が揺れている。「揺れている」というのは、自治体としては国と電力会社からの「原発マネー」と雇用をキープしたいという思いがあり、基本的には再稼働のGO!サインを出したいのだが、「緊急安全対策」では出すに出せないという状況が続いているからである。

 注目すべきは、揺れる原発立地自治体に対して、新潟日報などの「地元」紙が脱原発に大きく論調をシフトし、自治体も脱原発の態度表明をすべきだと提言を行うようになったことである。これは「3・11」以前にはありえなかったことだ。その意味で、画期的な現象であり、高く評価し、支持したいと私個人は考えている。全国紙が「脱原発」を一般的に語るのと、地元紙がそう語るのは「重み」が全然違うからだ。
 また、福島民友新聞も、厳しい県の実情を踏まえながら、論調としては「脱原発」に傾斜しつつ、そのための具体的なプラン作りを県は急げ、と提言しているように読める。 まず、両紙の「提言」に目を通してほしい。
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福島県「脱原発」 世界的な論議に広げねば
 「福島が脱原発と言わないでどこが言うのか。世界中が注目している」「原発への姿勢を明確にしないと復興ビジョンは始まらない」。委員たちは力を込めて語ったという。 福島第1原発の事故を受け、復興の考え方を福島県に提言する有識者会議「復興ビジョン検討委員会」が基本理念の原案を取りまとめ、柱に「脱原発」を打ち出した。 既に廃炉が決まっている第1原発1~4号機に加えて5、6号機、さらには第2原発も含め県内に立地する合計10基の原発全てを廃炉にすべきだとの意思表明である。 福島県民、全国の原発立地自治体、そして世界への問い掛けであり、呼び掛けであろう。 原発で大事故が起きれば、放射能汚染は地元にとどまらず、全国、地球規模へと拡散する。 検討委の間からは「知事にはビジョンを国連や国際原子力機関(IAEA)などに届けてほしい」と国際社会への発信を求める声も出た。
 検討委は7月末に最終提言を行い、県はこれを踏まえて年末までに具体的な復興計画を策定する段取りだ。 ところが、佐藤雄平知事は「脱原発」を柱に据えた今回の基本理念案に対してコメントを避けた。 事故後、佐藤知事は東電や国に対し「裏切られた気持ちでいっぱいだ。県民の怒りと不安は頂点に達している」と憤りをあらわにしていた。 福島原発に関しては、4月に県庁を訪れた東電の清水正孝社長に対して「再開なんてあり得ない」と伝えた。 だが、この範囲が第1原発5、6号機や第2原発を含むのかが判然としない。会見などでも「事態の一刻も早い収束を」と述べるにとどめている。

 佐藤知事が胸の内に秘めているものは何なのか。 福島原発では東電や協力会社の社員ら約1万人が雇用され、家族を含めれば約3万人の生計を支えてきたとされる。地域は電源3法交付金や核燃料税、固定資産税などの膨大な原発マネーにも頼ってきた。 しかし、原発マネーは地域づくりに貢献するどころか、安易なハコモノ行政に注ぎ込まれた。その維持費が財政を圧迫しているのが実情だ。 原発が生み出す雇用といっても、事故で一時約10万人が避難し、農地や工場などが汚染され、自殺者まで出して何の雇用だろうか
 脱原発を掲げた基本理念案の問い掛けを、福島県のみならず日本全体が真摯に受け止めねばならない。原発に依存するエネルギー政策でいいのか、世界的な論議が必要だ。日本にはそれを仕掛けていく責務がある。(新潟日報2011年6月17日

復興検討委原案/県の覚悟問われる「脱原発」
 東京電力福島第1原発事故を抱える本県の復興に向けた基本理念を県に提言する有識者会議「復興ビジョン検討委員会」が、「脱原発」の姿勢を打ち出す原案をまとめた。 多くの住民が避難生活を強いられ、避難区域以外でも高い放射線量を計測するなど、影響やダメージは継続し拡大もしている。事故収束のめどがいまだに立たないどころか、原発敷地の地下水汚染など新たな問題・課題も相次いでいる。 こうした現状を踏まえると、検討委が県に対して原発からの脱却を求める方向となったのは、当然の成り行きといえる。原発に替わる新たな産業の創出というテーマも含めて、県の覚悟が問われることになる。
 政府は原子力を主要なエネルギー源の一つとする姿勢を変えていないが、今回の事故で原発の「安全神話」が覆された影響は極めて大きい。 確かに、日本全国で即座に原発を停止あるいは廃止するのはエネルギー政策面で現実的でなく、原発による電力供給は今後も続くだろう。 ただ、国際尺度で「レベル7」という最悪の事態となり、世界的にも動向が注目されている事故原発を抱える本県にもその方針、政策を当てはめるわけにはいかない。

 そうした中で、本県が原発への考えをはっきりさせるのは避けて通れず、検討委座長の鈴木浩福島大名誉教授は「原発へのスタンス(姿勢)を明確にしないと福島の復興ビジョンは始まらない」と語っていた。 さらに、検討委メンバーの山川充夫同大教授は「福島が脱原発と言わないでどこが言うのか」と話したように、今後は原子力に依存しない県土づくりを目指すのは納得し得る判断といっていいだろう。
 一方で、脱原発を基本にした社会づくりと一口に言っても、40年にわたり原発と共存してきた本県や立地地域にとって、その道は決して平たんではない。 放射線や土壌改良、自然エネルギーの研究拠点を誘導するなどの案が出ているものの、東電や協力会社による1万人にも及ぶ雇用の受け皿づくりがまず第一の課題となる。 国の全面的なバックアップはもちろん必要だが、原発稼働を受け入れてきた県もその責任を自覚して検討、対応しなければならない。 福島第1原発では1~4号機は廃炉が決まっているが、5、6号機や第2原発4基の計6基は運転再開の余地がまだ残っている。県は、これら6基の再開は認めていないものの、最終的な対応は示していない。 県民の意見を広く聞き、十分にくみ取る作業も残っているが、検討委の提言が県の復興計画に反映されるのは必至の情勢といわれている。国策により甚大な被害を受けた地元として、主体性を持って将来像を形づくることを県には求めていきたい。(福島民友新聞6月17日)
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⇒「脱原発派の試練」へ
⇒「脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を」(4/28)より
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福島原発、2号機の扉開放 微量の放射性物質放出
 東京電力は19日、福島第1原子力発電所2号機で原子炉建屋内の湿気を減らすため、屋外につながる二重扉を開いた。扉の開放によって微量の放射性物質が大気中に放出されるが、東電は周辺への影響は少ないと説明している。外気を入れて100%近い内部の湿度を下げ、計器類の調整や水素爆発防止のための窒素封入に取りかかる。 経済産業省原子力安全・保安院と地元自治体の了承を得たうえで19日午後8時51分に扉を開き、作業員が中へ入った。約8時間かけて全開する。
 2号機では核燃料が溶け落ちる炉心溶融が起き、原子炉格納容器の一部である圧力抑制室が破損したとみられる。建屋内には放射性物質を含んだ蒸気がたちこめて湿度が高く、長時間の作業は難しい。11日から換気装置で建屋内の放射性物質の濃度を下げたうえで扉の開放に踏み切った。
 扉を開いたことにより放射性物質が大気中に放出されるが、東電の試算では人体への影響は原発の敷地内でも最大1マイクロシーベルト程度。一般人の年間被曝限度の1ミリシーベルトに比べて十分に小さいとしている。 一方、高濃度汚染水の浄化システムが停止した問題では、東電は19日も原因の解明を続けた。ただ詳しい原因は依然不明で、再稼働のメドは立っていない。汚染水は1日約500トンずつ増えており、現在は1号機の復水器などに移しているが、再稼働が遅れれば移送先も満杯になる。外部への流出を防ぐため、原因究明と再稼働を急ぐ。(日経)

古川知事「国の意思明確になった」 原発再稼働要請
 海江田万里経産相が18日、定期検査などで停止している原発について、立地自治体を訪れて再稼働を促す考えを鮮明にした。玄海原発2、3号機(東松浦郡玄海町)の再稼働問題で、安全性を議論している古川康佐賀県知事は「再稼働への国としての意思が明確に示されたと受け止めている」とした上で、「県議会でも議論されている。その議論なども踏まえて判断していきたい」とコメントした。 
 県は国主催による説明会開催を要請中。国の安全対策の説明について古川知事は県議会で、科学的データをもとにした国の説明内容を内部検討し「一定の理解」を示す一方、浜岡原発(静岡県)の停止理由には「理解できない」として、経産相による説明を求めている。17日の県議会では「時期が来れば来県してもらうが、まだその段階に至っていない」と答弁しており、経産相の来県時期が焦点となりそうだ。 
 既に再稼働に同意する意向を示している地元玄海町の岸本英雄町長は「再稼働に向けて大きな判断材料になる。国がようやく責任を明確にして踏み出した感じだ」と歓迎した。その上で「エネルギー政策の見直しについても、国民に向けてしっかり方向を示してほしい」と注文した。 一方、脱原発を訴える市民団体は国への不信感を一層募らせた。玄海原発プルサーマル裁判の会の石丸初美代表は「事故が収束もしていない段階で、今の原発に安全などと言えないはず。安全宣言どころか、電気のために国民は危険を覚悟してくれ宣言だ。とんでもないことで、大臣が来ると言っても追い返したい」と怒りをあらわにした。(佐賀新聞)

海江田経産相「再稼働を」 立地道県知事、批判噴出
 海江田万里経済産業相が18日、原発再稼働の要請方針を示したことに対し、毎日新聞が原発立地道県の知事に姿勢を尋ねたところ、「適切」とした安全対策への疑問の声が噴出、現時点での受け入れを表明する知事はいなかった。原発の運転に関して知事に法的権限は無いが、電力会社と道県などの協定もあり、知事の同意無しの稼働は困難とみられる。経産相は近く福井県と九州を訪問する方針だが、慎重姿勢を見せる知事の説得など、各地で紛糾するのは必至の情勢だ。
 取材に応じなかった福井県知事と連絡が付かなかった茨城、鹿児島両県知事を除く10道県知事が取材に応じた。現在、国内の商業用原発54基のうち37基が停止中(調整運転を含む)。運転中のうち5基が8月末までに定期検査に入る予定で電力需給の逼迫(ひっぱく)が懸念されている。海江田経産相は同日の会見で、シビアアクシデント(過酷事故)対策に関し、適切との評価結果を公表した。
 適切と判断した根拠の説明を求める知事は多く、溝口善兵衛島根県知事は「国が指示し、電力会社が実施する安全対策で十分かチェックする必要がある」と国の方針をうのみにできないとの姿勢を堅持。新潟県の泉田裕彦知事は「安全性について論評に値する内容が無い」とコメント。「本県の技術委員会の質問に国は回答していない」と不快感も示した。 原発事故の現場となった福島県の佐藤雄平知事は「再稼働はあり得ない」と従来通り断言。菅直人首相判断で運転停止となった静岡県の浜岡原発は、今回の経産相方針でも対象外とみられ、川勝平太知事は「再開のさの字も出る状況ではない」と現状を語った。
 浜岡原発と他の原発との違いについて説明を求める知事も複数いた。福井県は、県幹部が「原発の高経年化対策や、浜岡原発のみに停止を命じた判断根拠などが示されなければ、定期検査中の原発の再稼働は了解できない」と慎重な姿勢を示した。 原発の建設や運転の許認可権は国にあるが、道県と市町村、電力会社は安全協定を結び、施設増設などは地元の了解を取る▽自治体の安全措置要求の受け入れ--などを約束している。経産相の発言を巡っては橋下徹大阪府知事も「時期尚早。経産相や経産省のみなさんが原発周辺に住めばよい」と話している。

■道県知事のコメント
◇北海道 高橋はるみ知事
 過酷事故対策が適切と評価した根拠も含め、国は責任ある説明が必要。説明を踏まえ対応を検討したい
◇青森県 三村申吾知事 
 県原子力安全対策検証委員会での検証結果、県議会での議論などを踏まえ、慎重に、かつ厳しく対処していく
◇宮城県 村井嘉浩知事 
 一定の理解は示すが、不安の声があるのも事実で安全対策を万全にしてほしい。女川原発にはコメントできない
◇福島県 佐藤雄平知事
 原発が立地している県の知事は安全確認の証左(???)がなければと言っている。(福島第2原発の)再稼働はあり得ない
◇新潟県 泉田裕彦知事
 本県の技術委員会の質問に国は回答していない。原発の安全性について論評に値する内容を何も含んでいない
◇石川県 谷本正憲知事
 経産相の判断は一つの考え方だが、浜岡原発と他の原発の違いを十分説明していただかないと判断は難しい
◇静岡県 川勝平太知事
 (浜岡原発が含まれないのは)当然だ。完全な対策だと確認できない限り、再開のさの字も出る状況ではない
◇島根県 溝口善兵衛知事
 国の指示内容が、福島原発事故の原因を踏まえた安全対策として十分かチェックしていく必要がある
◇愛媛県 中村時広知事
 再稼働の必要性に理解を求めたのだろうが詳細は分からない。伊方原発の稼働は白紙であることに変わりはない
◇佐賀県 古川康知事
 再起動への国の意思が明確に示されたと受け止める。玄海原発の再起動は、県議会での議論も踏まえ判断したい (毎日
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「安心は無視か」 経産相「再稼働を」に怒りあらわ(毎日より抜粋)
◎北海道電力泊原発(北海道泊村)
 3基ある原発のうち、現在1号機が定期検査で停止している。3号機は試験運転中で営業運転再開のめどが立っておらず、8月下旬には2号機も定期検査に入る予定だ。2基が稼働しなければ「冬場がピークとなる電力供給が逼迫(ひっぱく)する」(北電)恐れがあり、泊村の牧野浩臣村長は「国が安全性を確認し(再稼働に向け)指針を示してくれたことはよかった」と歓迎しつつ「北電には引き続き安全の重視を求めたい」と付け加えた。

◎全7基のうち3基が停止中の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)。
 立地自治体である新潟県刈羽村の品田宏夫村長も「科学的根拠があっての判断ならば、原発の運転再開は良いと思う。むしろ中部電力浜岡原発の停止について、判断基準が示されておらず納得できない」と述べた。
・「柏崎刈羽原発反対地元3団体」共同代表の高橋新一さん(63)。
 「福島県民や国民の気持ちをどう思っているのか。福島の事故が収束した段階ならば分かるが、多くの避難者がいつ帰れるかわからない中で目先の電力需要だけを考えるのか。運転再開の前に、事故の収束や補償などやることがあるはずだ」。

◎関西電力高浜原発(1~4号機)の1号機が停止中の福井県高浜町の野瀬豊町長。
 「立地市町として国に求めている原発の新しい安全基準や避難道の整備などについて、何らかの答えをもらえるなら意味があるが、ただ『動かしてほしい』だけでは難しい」とクギを刺す。さらに「政府のいう再生エネルギー計画なども位置づけが不明確で、ムードとしてしか語られていない」と疑問を投げかけた。
・福井県内の市民団体「原子力発電に反対する福井県民会議」の小木曽美和子事務局長。
「原発事故を受けた新たな安全基準や耐震設計審査指針などを具体的に何も示さず、なぜ運転を再開できると言えるのか」と海江田経産相を厳しく批判した。

◎核燃料再処理工場がある青森県六ケ所村
 地元に住む60代女性。「脱原発の流れが世界で高まっているのに、違和感を覚える。今後、核燃料が再処理工場へどんどん運ばれてくることになり恐ろしい」。

◎九州電力玄海原発2、3号機の運転再開問題を抱えている佐賀県玄海町。
 町議会の大半が既に運転再開を認め、岸本英雄町長も近く容認を表明する意向だ。
・玄海原発でのプルサーマル発電に反対する「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」の野中宏樹世話人(48)。
 「根本的な事故の解明が出来ておらず、安全性の根拠も希薄な中での経産相の発言は、立地自治体の再開容認へのプレッシャーとなる」と危機感を強め「立地自治体の首長は目先の問題より100年先の子供の命を考えてほしい」と訴えた。

「相馬野馬追」 規模縮小し開催へ
 福島県相馬地方で1000年以上続く国重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の執行委員会は18日、祭りの中心行事「甲冑(かっちゅう)競馬」と「神旗争奪戦」を今年は実施せず、規模を縮小して開催することを決めた。東京電力福島第1原発事故で、会場の一部が警戒区域や緊急時避難準備区域に含まれるため。
 相馬野馬追は7月下旬に3日間行われ、初日は相馬市から南相馬市まで約30キロを甲冑姿の武士が馬で練り歩く「武将行列」、2日目には甲冑競馬と神旗争奪戦、最終日に奉納用の馬を素手で捕らえる「野馬懸」がある。執行委員会では、武将行列を相馬市内だけで行うことや、野馬懸が行われる相馬小高神社(南相馬市小高区)が警戒区域内のため、別の場所で簡素化して実施することも報告された。【毎日・神保圭作】