ベント「失敗」?---東電の刑事責任追及の可能性
福島第一原発1、2号機のベントに東電が失敗していた「可能性」がある、そんなニュースが昨日流れた。その「可能性」は、かなり高い確率で事実であるようだ。
東電のベント失敗の「可能性」については、3月12日以降、さまざまな媒体で「噂」されていた。しかし、確証がつかめない。そもそもベントの成功/失敗の判断基準は、原子炉や建屋の爆発を回避するに足る、十分な原子炉内の圧力低下がはかれたかどうかにあるのであって、それを計る計器が故障していたのでは、話にならないからである。
ベントとは、いわば原発のメルトダウン→メルトスルーを回避する、最後の、そのまた最後の手段であり、これに失敗するということは、東電や日本の電力会社には、「最悪の事態」が起こったときに、メルトダウン→メルトスルーを回避する術、テクノロジーを持たない、ということになる。 これが何を意味するか、読者は当然、理解すると思う。
しかしそれにしても、東電と保安院は、次から次に私たちの常識的理解を超える「情報」を「開示」してくれるものだ。 で、東電を保安院をどうするか? かなり信憑性の高い、ベント失敗の「可能性」を伝える報道に触れて、もう一度、一から考え直す必要性を私は感じている。こんなことが許され、放置されてよいはずがないからだ。
・・
・福島第1原発:1号機のベント「失敗」 問われる説明責任
東京電力福島第1原発1号機のベント(排気)が失敗していた可能性が高いことが判明し、これまで「成功」と言い続けてきた東電や、それを追認してきた国の説明責任が改めて問われることになりそうだ。併せて、特に重大事故への対応策として整備されてきたベントの「失敗」は、国の安全対策に大きな疑問を投げかける。
ベントが行われた3月12日、東電は弁の操作で格納容器の圧力が低下した点を重視し、午後3時ごろ「成功」と発表。だが、低下したとされる圧力は上限値(427キロパスカル)を上回ったままで、発表直後には緩やかな上昇に転じていた。
さらに、放射性物質の放出を示す構内のモニタリングポストに兆候はなく、東電関係者によると弁の開放を示す「リミットスイッチ」にも変化はなかった。 「成功」を見直す材料や機会はあったのに、国は3カ月近くもチェックしないまま今月7日、国際原子力機関(IAEA)への報告書に東電の見解をそのまま記載して提出。事故を真摯(しんし)に検証する姿勢はうかがえない。
ベントは安全対策(アクシデントマネジメント)の一環として92年から旧通産省(現経済産業省)が電力各社に整備を求めた。福島第1原発も98~01年に耐圧性能を強化したベントの整備を完了。だが、今回の1号機だけでなく、東電は2号機でも「ベントの成否は不明」としている。
地震や津波の想定だけでなく、これまでの原発事故への備えは本当に十分だったのか(→「十分」だったはずがないではないか)。事故調査・検証委員会での議論が待たれる(→現状では、待っても何も出てこないか、出てきたとしても何もできないだろう)。【毎日・町田徳丈、杉本修作】
・2号機水位計測できず 高温で蒸発予想以上
・2号機圧力容器の損傷裏づけ(いずれも毎日)
・・
〈東電の刑事責任追及の可能性〉
ない。現状では、ない。不可能である。
まず、2002年11月、当時の小泉政権下の経産官僚がまとめた「東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する政府答弁書」を熟読してほしい。くり返しになるが、熟読してほしい。
・「以上の調査結果を踏まえ、同年十月一日、経済産業大臣は、東京電力に対し厳重注意を行い、再発防止策を講ずるよう求めるとともに、今後、東京電力に対する定期検査の内容をより厳格なものとすること等を通告した」。
この結果が、「3・11」→ベント「失敗」→水素爆発→メルトダウン→メルトスルーである。
東電に対する刑事告発については、上の「原発トラブル隠し」に対する安全・保安院の調査結果を不十分とし、真相解明を求めた「原子力資料情報室」を含む団体・個人が、9年前に検討したことがある。「トラブル隠し」から派生するトラブルを隠すために、当時の保安院が情報を隠蔽していたことは明らかだったからである。
当時、「自主検査」をめぐる29件にもおよぶ東電の不正が暴露され、炉心隔壁のひび割れ隠しなど6件の法令違反、格納容器の気密データの不正操作等々の事実、すなわち、東電を刑事告発する十分な根拠があったにもかかわらず保安院=国は「行政処分」のみで決着をつけてしまったのだ。
今回の事態についても、東電の刑事責任を問うべしという「世論」は「3・11」直後から強くある。しかし、この国の「原子力行政」は、「シビアアクシデント(過酷事故)」を起こしたとしても、電力会社の刑事責任は追及しない/できない「システム」になっているのである。
この「前例」を突破する/させないためには、どうすればよいか?
そのことが「調査権」を含む法的権限を「事故調査・検証委員会」に持たせるか否かにかかっていた/いるのである。
〈「事故調査・検証委員会」の実態〉
⇒「事故調査・検証委員会委員長 畑村洋太郎 記者会見」(6月22日 日本記者クラブ)
◎6月7日の第一回委員会で話した8項目
①畑村の考えで進める
②子孫のことを考え100年後の評価に耐えられるものにする
③国民が持っている疑問に答える
④世界の人々が持っている疑問に答える
⑤責任追及は目的としない
⑥起こった事象そのものを正しくとらえる
⑦起こった事象の背景を把握する
⑧再現実験と動態保存が必要である。
◎強制力がない委員会の調査で嘘をつかれないか?
・「(ヒアリングする人が)もし隠していたことがあとでわかると、その人の名誉にかかわる。それぞれの人には誇りがある。きっと嘘はつけない(???)」
・「隠したり嘘をつけば、矛盾が出てくる。時系列の進行を正確にとらえていけば、嘘はつけない」
・「政治家にも誇りがあるから、評価に耐えるようやってくれるだろう(???)」
「知りたいときに知りたいことがわかる、という文化を日本にも作らなければならない。それがないから、日本中が自信をなくしている。事故調査委員会も事故から1週間から10日ぐらいで発足しているべきだった」
⇒「国内原子力発電所トラブル情報等の登録状況並びに水平展開実施状況」(3月末日まで)ニューシア
⇒「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」
・・・
・経産省が佐賀で原発説明番組 安全対策十分「ご理解を」
定期検査で停止中の九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開を目指し、経済産業省が主催する「説明番組」が26日、佐賀市のケーブルテレビスタジオで撮影、ネットなどで中継された。同省担当者は福島第1原発事故後、玄海原発の安全対策が「十分行われた」と重ねて強調し、再稼働に理解を求めた。
政府による原発立地自治体の住民向け説明活動の第1弾。原子力安全・保安院と資源エネルギー庁の担当者が説明者となり、地元広告代理店が作った候補者リストを基に政府が選出した県民7人が出演。高村昇長崎大教授(放射線疫学)がオブザーバーを務めた。
保安院の黒木慎一審議官が原発事故後の緊急安全対策や玄海原発の安全性について冒頭に説明。県民からは「政府が中部電力浜岡原発にだけ停止を求めた説明が不十分」「(高経年化が進んでいる)玄海1号機に本当に問題点はないのか」と厳しい質問が相次いだ。
放送開始前には、ケーブルテレビ局前で、玄海原発の再開に反対する佐賀県の市民団体メンバー約150人が抗議行動。正門前で「地獄の帝王プルサーマルよ去れ!」などと書いた横断幕を掲げ「原発反対」とシュプレヒコール。 「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表(59)は「玄海原発の再稼働を容認するための番組だ。納得できない」と批判した。(共同)
・株主総会は「脱原発」提案が焦点 電力各社、事故で状況一変
東京電力など原発を持つ電力9社が28、29日に定時株主総会を開く。このうち、6社の株主が総会に「脱原発」を求める議案を提出した。同種の提案は毎回否決されてきた。しかし、東京電力福島第1原発の事故で、安全性の問題に加え、事故が発生した場合の損失の大きさから収益面でも原発事業に対する不信が高まり、状況は一変。
6電力の総会でどこまで賛成票が集まるかが焦点だ。 脱原発関連の株主提案が出されたのは東北、東京、中部、関西、中国、九州の6電力。 株主提案では定款の一部変更を求める形で「原発の廃止」(東北)、「原発から撤退」(東京)などを要求している。【共同】⇒北電、北陸電、四国電力の株主たちはどうしたのだ?
・自民党:谷垣総裁「原発の再稼働は必要」
自民党の谷垣禎一総裁は25日、鹿児島市内で記者会見し、停止中の原発再稼働について「時間がたつと全ての原発が止まってしまう。動かさなくていいという前提をつくれば電力供給は回らなくなる」と述べ、再稼働は必要との認識を示した。 その上で「国が責任を持って安全を確認しなければならない」とも指摘した。(毎日)
・ベントの影響評価、東電が公表せず…1万1千枚の保安院公表資料で判明
福島第1原発事故で、東京電力が事故直後の3月12~13日に、1~3号機の原子炉格納容器内の蒸気を外部放出する「ベント」をした場合の周辺地域に与える被曝(ひばく)線量の評価を実施し、経済産業省原子力安全・保安院に送付していたが、公表していなかったことが24日、保安院が公開した資料で明らかになった。東電は「当時の担当が不在で、なぜ公表しなかったかコメントできない(???)」とした。
保安院は24日夜、事故直後から5月末にかけ、東電からファクスで受け取った文書など計約1万1千枚をホームページに公開した。 このうち、3月12日午前3時半ごろの第1原発所長名の文書では、2号機でベントした場合、外部に出る放射線量を予測。「前提条件」として燃料破損を意味する「重大事故(Fuel破損あり)」と手書きされている。その後、翌13日にかけて計5回、1~3号機のベント時の周辺の放射線量の評価も行っていた。 また、15日時点ですでに、東電が1~3号機が70~25%炉心損傷したと評価していたことも資料で判明。炉心損傷をめぐっては、東電は4月6日になってこの値を公表、後に炉心溶融していたと発表した。
・柏崎刈羽の防潮壁、設置取りやめ検討…東電
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けた津波対策で、東京電力が、柏崎刈羽原発1~4号機(新潟県)の原子炉建屋周囲に設置すると発表した「防潮壁」について、設置をやめる方向で検討していることが24日分かった。 建屋の通気口を鉄製の止水板でふさぐ案が浮上しており、既に1号機では工事が進められている。
東電は、止水板が壁の代わりになるかどうか検証した上で最終判断するとしつつも、「浸水を防ぐには止水板で十分。コストや工事の時間が少なくて済む」(同原発広報部)とみている。 東電は壁とは別に、海岸に防潮堤も造ると発表しているが、「防潮堤については変更ない」(同)という。 新潟県の泉田裕彦知事は24日、記者団に「(福島第一原発の事故の)原因もよく調べず、(安全対策を)打ち上げておいて、一方的に撤回された」などと不信感を示した。(読売)
・東電の再生計画、政府の第三者委が策定へ
東京電力の経営状況と資産を調査する政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の第2回会合が24日開かれ、東電が短期、長期的に実施すべき経営再建策をまとめた事実上の「再生計画」を策定することを決めた。
計画は、政府が設立を目指す原子力損害賠償支援機構が東電に資金援助する際、東電とともに策定する「特別事業計画」に引き継がれる方向だ。長期的な問題として、発電会社と送電会社に分離して新規参入を促す発送電分離など電力システム改革も検討範囲となる見通しだ。
調査委はこの日の会合で、調査対象の範囲を決め、売却に向けた資産査定や給与削減などの短期的なリストラ策だけでなく、電気料金の値上げ回避や電力業界の競争のあり方、電力の安定供給策など長期的な課題も検討することにした。(読売)
・東電、人員削減に初めて言及 年末までに規模詰める
東京電力は24日、福島第一原発事故の損害賠償に充てる資金をまかなうため、グループ全体で約5万2千人いる従業員の削減を検討することを明らかにした。事故の収束や賠償の事務を担う社員の確保を前提に、年末までに削減規模を詰める。
同日あった「東電に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の聞き取り調査に出席した勝俣恒久会長が、合理化策として示した。一般社員の年収20%削減や役員報酬返上などで年約540億円の人件費削減は5月に公表したが、24日の説明資料では、「人員削減の実施も検討(年内に詳細公表)」などと初めて言及した。 また、委員から見直しの声が出ている企業年金について、勝俣会長は委員会の終了後、記者団の質問に対し、「年金は法律で守られているが、(運用の)利率をどうするかなど、委員会の意見を十分に受け止めたい」と述べ、制度見直しに踏み切る考えも示した。(朝日)
・東京電力:第三者委に合理化策「不動産以外5000億円」
東京電力は24日、同社の資産査定を行う第三者委員会に対し、現行の合理化策の詳細を提出した。保有不動産については厚生施設や賃貸物件を中心に売却し、1000億円程度の資金を確保すると説明した。グループ全体で保有する319銘柄(3月末現在)の株式や、子会社など計265社のうち電気事業と直接関連がない事業を可能な限り売却。不動産以外で5000億円以上の確保を目指す。(毎日)
・政府賠償金「福島第二の分も出すべき」…経産相
海江田経済産業相は24日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故による政府の賠償金負担について、「二つの発電所分で2400億円を出すべきだ」と述べ、福島第二原発と合わせた額を政府が負担すべきだとの考えを示した。 原子力損害賠償法では、原発1か所につき、上限で1200億円を政府が拠出することになっている。
東電は4月、政府が負担する第一原発分の1200億円を原資に被災者への仮払いを始めたが、今月中にも底をつく見込みだ。
経産相の発言は、東電が仮払いを続けるため、政府が第二原発分も負担せざるを得ないとの認識を示したものだ。ただ、第二原発は放射能漏れ事故を起こしておらず、避難区域も大半が第一原発と重なっているため、財務省は満額拠出に難色を示している。(読売)
・日立製作所:福島原発対応「万全の支援」「重要な事業」
日立製作所の中西宏明社長は24日、東京都内で開いた株主総会で、一部設備の建設を担当した東京電力福島第1原発の事故対応について「当事者として万全の支援をしたいと強い決意を固めている」と述べ、技術者の派遣などを通じ、事態収拾に向け全面協力する姿勢を強調した。
中西社長は、原発事業の方針に関する株主からの質問に「日立グループにとって原発は非常に重要な事業部門だ」と述べ、継続する方針をあらためて表明した。安全性の向上などを通じて原発が社会的に認められる努力を強化すると説明した。
・楽天:経団連退会 発送電分離、慎重姿勢に不満?
インターネット通販大手の楽天は23日、経団連に同日付で退会届を送付したことを明らかにした。理由について楽天は「製造業などの業態の違う企業が多く入会しており、方向性や哲学が違う」と説明している。
三木谷浩史社長は5月下旬、東京電力福島第1原発事故後の経団連の対応に関連し、短文投稿サイトのツイッターで「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などと書き込み、退会を検討していることを明らかにしていた。
退会届の提出は、電力会社の発送電分離などに慎重な姿勢を示す経団連への不満の表れとみられる。 楽天は2004年に経団連に入会していた。【毎日・乾達】
・中部電力 浜岡原発停止の支援の一環で政府から1000億円の融資
中部電力は浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止による政府からの支援策の一環として、6月末をめどに日本政策投資銀行から1000億円の融資を受ける。原発停止をカバーするために稼働を増やす火力発電所用燃料の調達費用に充てる。
中部電は浜岡原発の停止を決める際、費用負担増に対する政府の支援を要請していた。東日本大震災の被災企業を対象にした低金利融資を活用して資金負担を軽減する。 燃料コストは浜岡原発を代替する火力発電所の稼働増により、年間2500億円程度増える見込み。政府の支援決定により、中部電は民間金融機関と融資交渉も始めた。
・もんじゅ「復旧」も状況厳しく 原子力機構幹部「安全対策優先」
原子炉容器内に落下してから約11カ月ぶりに引き抜かれた高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)の炉内中継装置。23日の引き抜き開始は大幅に遅れたものの、開始後は順調に作業が進み、24日未明に完了した。近藤悟所長は「トラブルの復旧に向け一つの大きなステップを乗り越えることができた」としたが、原子力機構幹部は「福島原発の事故対応で安全対策を優先する。
再稼働は、その次の段階になる」と、今後の40%出力試験に向け厳しい状況にあることを示した。
中継装置の引き抜き開始当日の23日は、順調に作業が進むとみられたが、最終準備段階で部品の一部が損傷するトラブルで本体引き抜きが予定より約6時間遅くなり、開始したのは、同日午後8時50分。 原子力機構燃料環境課の江橋政明課長が「ただいまより炉内中継装置引き抜き作業を始めます」と号令し、本体引き抜きを開始。1分間に6センチのペースで途中、休憩を挟みながら作業を進めた。
県は、原子力安全対策課の職員1人を派遣し、作業状況を見守った。石塚博英・県安全環境部長は「細心の注意を払ってもらいたい」と現場からの報告を待っていた。 24日午前4時55分、「装置引き抜き作業完了」のアナウンスが流れると、作業員らは「良かった」と声を掛け合い握手、大きな拍手と歓声があがった。原子力機構は今秋の復旧と今年度内の40%出力試験を行い、平成25年度内の本格稼働に結びつけたい考えだ。
だが、海江田万里経産相が20日、国際原子力機関(IAEA)本部の会見で「福島第1と第2原発、もんじゅは稼働させるわけにはいかない」と発言するなど、もんじゅを取り巻く環境は厳しさを増している。(産経)
・太平洋の放射能濃度、昭和30年代の3分の1 原子力機構が1年後予測
日本原子力研究開発機構は24日、東京電力福島第1原発事故から約1年後の太平洋の放射能濃度は、最高でも世界各国が核実験を繰り返した昭和30年代の約3分の1にとどまる(???)との予測を発表した。平均的な日本人が太平洋産の海産物を1年間摂取した場合の内部被曝(ひばく)線量は、30年代とほぼ同水準になるという。
汚染水の海洋流出と爆発による大気放出で、計8・45ペタベクレル(1ペタは10の15乗)の放射性物質セシウム137が4月1日に福島沖で拡散したと仮定。太平洋を約200キロ四方の格子状に区切り、水平・上下両方向の拡散をシミュレーションした。
太平洋の海水中のセシウム濃度は1年後、最も高い海域で1リットル当たり0・023ベクレルとなることが分かった。事故前(同0・0017ベクレル)の約14倍だが、30年代のピークだった32年の同0・080ベクレルの約3分の1に相当する。以後、濃度はさらに薄まっていく。
この結果から、平均的な日本人が平成24年4月から1年間、最も放射能濃度の高かった海域の海産物を摂取した場合の内部被曝線量を年間約1・8マイクロシーベルトと算出。昭和30年代の同約1・7マイクロシーベルトとほぼ同水準となった。一般人の内部被曝限度である同1ミリシーベルトの約500分の1で、人体への影響は問題ないレベルという。
セシウムを含む水塊は、黒潮や北太平洋海流で拡散しながら東に移動し、放出から3年後にハワイ、5年後に北米西海岸に到達すると予測した。(産経)
・SPRINTARS (Spectral Radiation-Transport Model for Aerosol Species)
「福島第1原子力発電所から出された物質のグローバルな輸送をもたらした低気圧とジェット気流」
「東北地方太平洋沖地震」による津波で被災した福島第1原子力発電所からは、3 月12~16 日に大量の放射性物質が大気中に放出された。
我々は、大気微粒子の広域輸送モデルを用いたコンピュータシミュレーションを実施し、原発近傍から出された微粒子が上空の強い偏西風ジェット気流に乗って数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した様子を、観測のタイミング通りに再現することに成功した。
また、輸送される距離とともに物質の濃度が人体に影響のないレベルにまで急速に希釈される様子も、ほぼ観測通りに再現された。原発からは 3 月 14~16 日に特に大量の放射性物質が放出されたが、偶然 14~15 日に東日本を通過した低気圧に伴う上昇気流により地表付近から上空に巻き上げられたため、太平洋、さらには大西洋を越えて輸送されてしまった。なお、原発北西方向へ大量の放射性物質を運んだ地表付近の南東風も、この低気圧がもたらしたものである」
↓
ある種の虚しさを前提に言えば、例えば、上のSPRINTARSの観測結果に関する論文の中の 「人体に影響のないレベルにまで」は、挿入する必要のない表現である。
この情報は、3月段階で海外の研究機関が発表していた内容を裏付けるものだが、むしろ問題は「原発近傍から出された微粒子」が「上空の強い偏西風ジェット気流に乗って」、たった「数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した」という、その事実にある。
また、「低気圧に伴う上昇気流」の起こり方次第で、「大量の放射性物質」が各地に飛散する在り方も、どうとでも変化しえた(現状よりもっと悪くなる可能性もあった)ということの方が重要だろう。
さらに、上にある「日本原子力研究開発機構」による「昭和30年代の約3分の1にとどまる」論についても「とどまる」という日本語は「科学的」に不必要な表現である。つまり、いずれも研究者の「価値判断」が強く作用した表現ということだ(→研究者の思想と倫理の問題であり、「3・11」から大学・独法系・企業の研究者・技術者が何を学んだか、学ぼうとしてきたかの問題である。「もんじゅ」の「復旧」→再稼働問題にしても)。
・アリューシャン列島M7.2の地震 沿岸に一時津波警報(朝日)
福島第一原発1、2号機のベントに東電が失敗していた「可能性」がある、そんなニュースが昨日流れた。その「可能性」は、かなり高い確率で事実であるようだ。
東電のベント失敗の「可能性」については、3月12日以降、さまざまな媒体で「噂」されていた。しかし、確証がつかめない。そもそもベントの成功/失敗の判断基準は、原子炉や建屋の爆発を回避するに足る、十分な原子炉内の圧力低下がはかれたかどうかにあるのであって、それを計る計器が故障していたのでは、話にならないからである。
ベントとは、いわば原発のメルトダウン→メルトスルーを回避する、最後の、そのまた最後の手段であり、これに失敗するということは、東電や日本の電力会社には、「最悪の事態」が起こったときに、メルトダウン→メルトスルーを回避する術、テクノロジーを持たない、ということになる。 これが何を意味するか、読者は当然、理解すると思う。
しかしそれにしても、東電と保安院は、次から次に私たちの常識的理解を超える「情報」を「開示」してくれるものだ。 で、東電を保安院をどうするか? かなり信憑性の高い、ベント失敗の「可能性」を伝える報道に触れて、もう一度、一から考え直す必要性を私は感じている。こんなことが許され、放置されてよいはずがないからだ。
・・
・福島第1原発:1号機のベント「失敗」 問われる説明責任
東京電力福島第1原発1号機のベント(排気)が失敗していた可能性が高いことが判明し、これまで「成功」と言い続けてきた東電や、それを追認してきた国の説明責任が改めて問われることになりそうだ。併せて、特に重大事故への対応策として整備されてきたベントの「失敗」は、国の安全対策に大きな疑問を投げかける。
ベントが行われた3月12日、東電は弁の操作で格納容器の圧力が低下した点を重視し、午後3時ごろ「成功」と発表。だが、低下したとされる圧力は上限値(427キロパスカル)を上回ったままで、発表直後には緩やかな上昇に転じていた。
さらに、放射性物質の放出を示す構内のモニタリングポストに兆候はなく、東電関係者によると弁の開放を示す「リミットスイッチ」にも変化はなかった。 「成功」を見直す材料や機会はあったのに、国は3カ月近くもチェックしないまま今月7日、国際原子力機関(IAEA)への報告書に東電の見解をそのまま記載して提出。事故を真摯(しんし)に検証する姿勢はうかがえない。
ベントは安全対策(アクシデントマネジメント)の一環として92年から旧通産省(現経済産業省)が電力各社に整備を求めた。福島第1原発も98~01年に耐圧性能を強化したベントの整備を完了。だが、今回の1号機だけでなく、東電は2号機でも「ベントの成否は不明」としている。
地震や津波の想定だけでなく、これまでの原発事故への備えは本当に十分だったのか(→「十分」だったはずがないではないか)。事故調査・検証委員会での議論が待たれる(→現状では、待っても何も出てこないか、出てきたとしても何もできないだろう)。【毎日・町田徳丈、杉本修作】
・2号機水位計測できず 高温で蒸発予想以上
・2号機圧力容器の損傷裏づけ(いずれも毎日)
・・
〈東電の刑事責任追及の可能性〉
ない。現状では、ない。不可能である。
まず、2002年11月、当時の小泉政権下の経産官僚がまとめた「東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する政府答弁書」を熟読してほしい。くり返しになるが、熟読してほしい。
・「以上の調査結果を踏まえ、同年十月一日、経済産業大臣は、東京電力に対し厳重注意を行い、再発防止策を講ずるよう求めるとともに、今後、東京電力に対する定期検査の内容をより厳格なものとすること等を通告した」。
この結果が、「3・11」→ベント「失敗」→水素爆発→メルトダウン→メルトスルーである。
東電に対する刑事告発については、上の「原発トラブル隠し」に対する安全・保安院の調査結果を不十分とし、真相解明を求めた「原子力資料情報室」を含む団体・個人が、9年前に検討したことがある。「トラブル隠し」から派生するトラブルを隠すために、当時の保安院が情報を隠蔽していたことは明らかだったからである。
当時、「自主検査」をめぐる29件にもおよぶ東電の不正が暴露され、炉心隔壁のひび割れ隠しなど6件の法令違反、格納容器の気密データの不正操作等々の事実、すなわち、東電を刑事告発する十分な根拠があったにもかかわらず保安院=国は「行政処分」のみで決着をつけてしまったのだ。
今回の事態についても、東電の刑事責任を問うべしという「世論」は「3・11」直後から強くある。しかし、この国の「原子力行政」は、「シビアアクシデント(過酷事故)」を起こしたとしても、電力会社の刑事責任は追及しない/できない「システム」になっているのである。
この「前例」を突破する/させないためには、どうすればよいか?
そのことが「調査権」を含む法的権限を「事故調査・検証委員会」に持たせるか否かにかかっていた/いるのである。
〈「事故調査・検証委員会」の実態〉
⇒「事故調査・検証委員会委員長 畑村洋太郎 記者会見」(6月22日 日本記者クラブ)
◎6月7日の第一回委員会で話した8項目
①畑村の考えで進める
②子孫のことを考え100年後の評価に耐えられるものにする
③国民が持っている疑問に答える
④世界の人々が持っている疑問に答える
⑤責任追及は目的としない
⑥起こった事象そのものを正しくとらえる
⑦起こった事象の背景を把握する
⑧再現実験と動態保存が必要である。
◎強制力がない委員会の調査で嘘をつかれないか?
・「(ヒアリングする人が)もし隠していたことがあとでわかると、その人の名誉にかかわる。それぞれの人には誇りがある。きっと嘘はつけない(???)」
・「隠したり嘘をつけば、矛盾が出てくる。時系列の進行を正確にとらえていけば、嘘はつけない」
・「政治家にも誇りがあるから、評価に耐えるようやってくれるだろう(???)」
「知りたいときに知りたいことがわかる、という文化を日本にも作らなければならない。それがないから、日本中が自信をなくしている。事故調査委員会も事故から1週間から10日ぐらいで発足しているべきだった」
⇒「国内原子力発電所トラブル情報等の登録状況並びに水平展開実施状況」(3月末日まで)ニューシア
⇒「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」
・・・
・経産省が佐賀で原発説明番組 安全対策十分「ご理解を」
定期検査で停止中の九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の運転再開を目指し、経済産業省が主催する「説明番組」が26日、佐賀市のケーブルテレビスタジオで撮影、ネットなどで中継された。同省担当者は福島第1原発事故後、玄海原発の安全対策が「十分行われた」と重ねて強調し、再稼働に理解を求めた。
政府による原発立地自治体の住民向け説明活動の第1弾。原子力安全・保安院と資源エネルギー庁の担当者が説明者となり、地元広告代理店が作った候補者リストを基に政府が選出した県民7人が出演。高村昇長崎大教授(放射線疫学)がオブザーバーを務めた。
保安院の黒木慎一審議官が原発事故後の緊急安全対策や玄海原発の安全性について冒頭に説明。県民からは「政府が中部電力浜岡原発にだけ停止を求めた説明が不十分」「(高経年化が進んでいる)玄海1号機に本当に問題点はないのか」と厳しい質問が相次いだ。
放送開始前には、ケーブルテレビ局前で、玄海原発の再開に反対する佐賀県の市民団体メンバー約150人が抗議行動。正門前で「地獄の帝王プルサーマルよ去れ!」などと書いた横断幕を掲げ「原発反対」とシュプレヒコール。 「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表(59)は「玄海原発の再稼働を容認するための番組だ。納得できない」と批判した。(共同)
・株主総会は「脱原発」提案が焦点 電力各社、事故で状況一変
東京電力など原発を持つ電力9社が28、29日に定時株主総会を開く。このうち、6社の株主が総会に「脱原発」を求める議案を提出した。同種の提案は毎回否決されてきた。しかし、東京電力福島第1原発の事故で、安全性の問題に加え、事故が発生した場合の損失の大きさから収益面でも原発事業に対する不信が高まり、状況は一変。
6電力の総会でどこまで賛成票が集まるかが焦点だ。 脱原発関連の株主提案が出されたのは東北、東京、中部、関西、中国、九州の6電力。 株主提案では定款の一部変更を求める形で「原発の廃止」(東北)、「原発から撤退」(東京)などを要求している。【共同】⇒北電、北陸電、四国電力の株主たちはどうしたのだ?
・自民党:谷垣総裁「原発の再稼働は必要」
自民党の谷垣禎一総裁は25日、鹿児島市内で記者会見し、停止中の原発再稼働について「時間がたつと全ての原発が止まってしまう。動かさなくていいという前提をつくれば電力供給は回らなくなる」と述べ、再稼働は必要との認識を示した。 その上で「国が責任を持って安全を確認しなければならない」とも指摘した。(毎日)
・ベントの影響評価、東電が公表せず…1万1千枚の保安院公表資料で判明
福島第1原発事故で、東京電力が事故直後の3月12~13日に、1~3号機の原子炉格納容器内の蒸気を外部放出する「ベント」をした場合の周辺地域に与える被曝(ひばく)線量の評価を実施し、経済産業省原子力安全・保安院に送付していたが、公表していなかったことが24日、保安院が公開した資料で明らかになった。東電は「当時の担当が不在で、なぜ公表しなかったかコメントできない(???)」とした。
保安院は24日夜、事故直後から5月末にかけ、東電からファクスで受け取った文書など計約1万1千枚をホームページに公開した。 このうち、3月12日午前3時半ごろの第1原発所長名の文書では、2号機でベントした場合、外部に出る放射線量を予測。「前提条件」として燃料破損を意味する「重大事故(Fuel破損あり)」と手書きされている。その後、翌13日にかけて計5回、1~3号機のベント時の周辺の放射線量の評価も行っていた。 また、15日時点ですでに、東電が1~3号機が70~25%炉心損傷したと評価していたことも資料で判明。炉心損傷をめぐっては、東電は4月6日になってこの値を公表、後に炉心溶融していたと発表した。
・柏崎刈羽の防潮壁、設置取りやめ検討…東電
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けた津波対策で、東京電力が、柏崎刈羽原発1~4号機(新潟県)の原子炉建屋周囲に設置すると発表した「防潮壁」について、設置をやめる方向で検討していることが24日分かった。 建屋の通気口を鉄製の止水板でふさぐ案が浮上しており、既に1号機では工事が進められている。
東電は、止水板が壁の代わりになるかどうか検証した上で最終判断するとしつつも、「浸水を防ぐには止水板で十分。コストや工事の時間が少なくて済む」(同原発広報部)とみている。 東電は壁とは別に、海岸に防潮堤も造ると発表しているが、「防潮堤については変更ない」(同)という。 新潟県の泉田裕彦知事は24日、記者団に「(福島第一原発の事故の)原因もよく調べず、(安全対策を)打ち上げておいて、一方的に撤回された」などと不信感を示した。(読売)
・東電の再生計画、政府の第三者委が策定へ
東京電力の経営状況と資産を調査する政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の第2回会合が24日開かれ、東電が短期、長期的に実施すべき経営再建策をまとめた事実上の「再生計画」を策定することを決めた。
計画は、政府が設立を目指す原子力損害賠償支援機構が東電に資金援助する際、東電とともに策定する「特別事業計画」に引き継がれる方向だ。長期的な問題として、発電会社と送電会社に分離して新規参入を促す発送電分離など電力システム改革も検討範囲となる見通しだ。
調査委はこの日の会合で、調査対象の範囲を決め、売却に向けた資産査定や給与削減などの短期的なリストラ策だけでなく、電気料金の値上げ回避や電力業界の競争のあり方、電力の安定供給策など長期的な課題も検討することにした。(読売)
・東電、人員削減に初めて言及 年末までに規模詰める
東京電力は24日、福島第一原発事故の損害賠償に充てる資金をまかなうため、グループ全体で約5万2千人いる従業員の削減を検討することを明らかにした。事故の収束や賠償の事務を担う社員の確保を前提に、年末までに削減規模を詰める。
同日あった「東電に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)の聞き取り調査に出席した勝俣恒久会長が、合理化策として示した。一般社員の年収20%削減や役員報酬返上などで年約540億円の人件費削減は5月に公表したが、24日の説明資料では、「人員削減の実施も検討(年内に詳細公表)」などと初めて言及した。 また、委員から見直しの声が出ている企業年金について、勝俣会長は委員会の終了後、記者団の質問に対し、「年金は法律で守られているが、(運用の)利率をどうするかなど、委員会の意見を十分に受け止めたい」と述べ、制度見直しに踏み切る考えも示した。(朝日)
・東京電力:第三者委に合理化策「不動産以外5000億円」
東京電力は24日、同社の資産査定を行う第三者委員会に対し、現行の合理化策の詳細を提出した。保有不動産については厚生施設や賃貸物件を中心に売却し、1000億円程度の資金を確保すると説明した。グループ全体で保有する319銘柄(3月末現在)の株式や、子会社など計265社のうち電気事業と直接関連がない事業を可能な限り売却。不動産以外で5000億円以上の確保を目指す。(毎日)
・政府賠償金「福島第二の分も出すべき」…経産相
海江田経済産業相は24日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故による政府の賠償金負担について、「二つの発電所分で2400億円を出すべきだ」と述べ、福島第二原発と合わせた額を政府が負担すべきだとの考えを示した。 原子力損害賠償法では、原発1か所につき、上限で1200億円を政府が拠出することになっている。
東電は4月、政府が負担する第一原発分の1200億円を原資に被災者への仮払いを始めたが、今月中にも底をつく見込みだ。
経産相の発言は、東電が仮払いを続けるため、政府が第二原発分も負担せざるを得ないとの認識を示したものだ。ただ、第二原発は放射能漏れ事故を起こしておらず、避難区域も大半が第一原発と重なっているため、財務省は満額拠出に難色を示している。(読売)
・日立製作所:福島原発対応「万全の支援」「重要な事業」
日立製作所の中西宏明社長は24日、東京都内で開いた株主総会で、一部設備の建設を担当した東京電力福島第1原発の事故対応について「当事者として万全の支援をしたいと強い決意を固めている」と述べ、技術者の派遣などを通じ、事態収拾に向け全面協力する姿勢を強調した。
中西社長は、原発事業の方針に関する株主からの質問に「日立グループにとって原発は非常に重要な事業部門だ」と述べ、継続する方針をあらためて表明した。安全性の向上などを通じて原発が社会的に認められる努力を強化すると説明した。
・楽天:経団連退会 発送電分離、慎重姿勢に不満?
インターネット通販大手の楽天は23日、経団連に同日付で退会届を送付したことを明らかにした。理由について楽天は「製造業などの業態の違う企業が多く入会しており、方向性や哲学が違う」と説明している。
三木谷浩史社長は5月下旬、東京電力福島第1原発事故後の経団連の対応に関連し、短文投稿サイトのツイッターで「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などと書き込み、退会を検討していることを明らかにしていた。
退会届の提出は、電力会社の発送電分離などに慎重な姿勢を示す経団連への不満の表れとみられる。 楽天は2004年に経団連に入会していた。【毎日・乾達】
・中部電力 浜岡原発停止の支援の一環で政府から1000億円の融資
中部電力は浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止による政府からの支援策の一環として、6月末をめどに日本政策投資銀行から1000億円の融資を受ける。原発停止をカバーするために稼働を増やす火力発電所用燃料の調達費用に充てる。
中部電は浜岡原発の停止を決める際、費用負担増に対する政府の支援を要請していた。東日本大震災の被災企業を対象にした低金利融資を活用して資金負担を軽減する。 燃料コストは浜岡原発を代替する火力発電所の稼働増により、年間2500億円程度増える見込み。政府の支援決定により、中部電は民間金融機関と融資交渉も始めた。
・もんじゅ「復旧」も状況厳しく 原子力機構幹部「安全対策優先」
原子炉容器内に落下してから約11カ月ぶりに引き抜かれた高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)の炉内中継装置。23日の引き抜き開始は大幅に遅れたものの、開始後は順調に作業が進み、24日未明に完了した。近藤悟所長は「トラブルの復旧に向け一つの大きなステップを乗り越えることができた」としたが、原子力機構幹部は「福島原発の事故対応で安全対策を優先する。
再稼働は、その次の段階になる」と、今後の40%出力試験に向け厳しい状況にあることを示した。
中継装置の引き抜き開始当日の23日は、順調に作業が進むとみられたが、最終準備段階で部品の一部が損傷するトラブルで本体引き抜きが予定より約6時間遅くなり、開始したのは、同日午後8時50分。 原子力機構燃料環境課の江橋政明課長が「ただいまより炉内中継装置引き抜き作業を始めます」と号令し、本体引き抜きを開始。1分間に6センチのペースで途中、休憩を挟みながら作業を進めた。
県は、原子力安全対策課の職員1人を派遣し、作業状況を見守った。石塚博英・県安全環境部長は「細心の注意を払ってもらいたい」と現場からの報告を待っていた。 24日午前4時55分、「装置引き抜き作業完了」のアナウンスが流れると、作業員らは「良かった」と声を掛け合い握手、大きな拍手と歓声があがった。原子力機構は今秋の復旧と今年度内の40%出力試験を行い、平成25年度内の本格稼働に結びつけたい考えだ。
だが、海江田万里経産相が20日、国際原子力機関(IAEA)本部の会見で「福島第1と第2原発、もんじゅは稼働させるわけにはいかない」と発言するなど、もんじゅを取り巻く環境は厳しさを増している。(産経)
・太平洋の放射能濃度、昭和30年代の3分の1 原子力機構が1年後予測
日本原子力研究開発機構は24日、東京電力福島第1原発事故から約1年後の太平洋の放射能濃度は、最高でも世界各国が核実験を繰り返した昭和30年代の約3分の1にとどまる(???)との予測を発表した。平均的な日本人が太平洋産の海産物を1年間摂取した場合の内部被曝(ひばく)線量は、30年代とほぼ同水準になるという。
汚染水の海洋流出と爆発による大気放出で、計8・45ペタベクレル(1ペタは10の15乗)の放射性物質セシウム137が4月1日に福島沖で拡散したと仮定。太平洋を約200キロ四方の格子状に区切り、水平・上下両方向の拡散をシミュレーションした。
太平洋の海水中のセシウム濃度は1年後、最も高い海域で1リットル当たり0・023ベクレルとなることが分かった。事故前(同0・0017ベクレル)の約14倍だが、30年代のピークだった32年の同0・080ベクレルの約3分の1に相当する。以後、濃度はさらに薄まっていく。
この結果から、平均的な日本人が平成24年4月から1年間、最も放射能濃度の高かった海域の海産物を摂取した場合の内部被曝線量を年間約1・8マイクロシーベルトと算出。昭和30年代の同約1・7マイクロシーベルトとほぼ同水準となった。一般人の内部被曝限度である同1ミリシーベルトの約500分の1で、人体への影響は問題ないレベルという。
セシウムを含む水塊は、黒潮や北太平洋海流で拡散しながら東に移動し、放出から3年後にハワイ、5年後に北米西海岸に到達すると予測した。(産経)
・SPRINTARS (Spectral Radiation-Transport Model for Aerosol Species)
「福島第1原子力発電所から出された物質のグローバルな輸送をもたらした低気圧とジェット気流」
「東北地方太平洋沖地震」による津波で被災した福島第1原子力発電所からは、3 月12~16 日に大量の放射性物質が大気中に放出された。
我々は、大気微粒子の広域輸送モデルを用いたコンピュータシミュレーションを実施し、原発近傍から出された微粒子が上空の強い偏西風ジェット気流に乗って数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した様子を、観測のタイミング通りに再現することに成功した。
また、輸送される距離とともに物質の濃度が人体に影響のないレベルにまで急速に希釈される様子も、ほぼ観測通りに再現された。原発からは 3 月 14~16 日に特に大量の放射性物質が放出されたが、偶然 14~15 日に東日本を通過した低気圧に伴う上昇気流により地表付近から上空に巻き上げられたため、太平洋、さらには大西洋を越えて輸送されてしまった。なお、原発北西方向へ大量の放射性物質を運んだ地表付近の南東風も、この低気圧がもたらしたものである」
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ある種の虚しさを前提に言えば、例えば、上のSPRINTARSの観測結果に関する論文の中の 「人体に影響のないレベルにまで」は、挿入する必要のない表現である。
この情報は、3月段階で海外の研究機関が発表していた内容を裏付けるものだが、むしろ問題は「原発近傍から出された微粒子」が「上空の強い偏西風ジェット気流に乗って」、たった「数日の間に米国上空を経て欧州上空にまで達した」という、その事実にある。
また、「低気圧に伴う上昇気流」の起こり方次第で、「大量の放射性物質」が各地に飛散する在り方も、どうとでも変化しえた(現状よりもっと悪くなる可能性もあった)ということの方が重要だろう。
さらに、上にある「日本原子力研究開発機構」による「昭和30年代の約3分の1にとどまる」論についても「とどまる」という日本語は「科学的」に不必要な表現である。つまり、いずれも研究者の「価値判断」が強く作用した表現ということだ(→研究者の思想と倫理の問題であり、「3・11」から大学・独法系・企業の研究者・技術者が何を学んだか、学ぼうとしてきたかの問題である。「もんじゅ」の「復旧」→再稼働問題にしても)。
・アリューシャン列島M7.2の地震 沿岸に一時津波警報(朝日)