2011年4月28日木曜日

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を

脱原発への道筋: 大都市圏と「地元」をつなぐ議論を

 脱原発の「理想論」から「現実論」への一歩は、原発による電力供給地域と需要地域をつなぐ、行政レベルと市民レベル両方の「フォーラム」をつくり、せめて「2050年くらいまでには「原発のない日本」を実現するために何が必要か」を議論することにある。
 もちろん、2050年よりは2040年、2040年よりは2030年の方が望ましいのに決まっている。しかし、現状では2030年までに日本から原発をなくすことは不可能であり、2040年でもかなり困難である。だから、「せめて2050年までには」と現実的なラインで構想する以外にない。いずれにせよ、その「フォーラム」において、

①首都圏や京阪神など原発の電力供給に依存する大都市圏の電力需要・消費のあり方と、
②原発の利益誘導にがんじがらめ状態となり、原発なくして地域経済も公共事業も成り立たなくさせられてきた「地元」の活性化をいかにしてはかるか、この二つを一体のものとして議論し、
③「原発のない日本」へ向けた具体的・現実的指針や諸政策をまとめる、という構想になる。

 名称を何にするのであれ、こうした「フォーラム」=政治的・行政的枠組みを作ること抜きに、政財官一体で国策として推進され、産官学連携の「原子力複合体」が構築してきたこの国の原発政策を抜本的に転換することは、とてもじゃないができないだろう。とりわけ重要なことは、「原発推進と一体化した自然/再生エネルギー強化」論を論破しうる政策内容を脱原発派がしっかり打ち出すことである。
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橋下知事「脱原発」構想、関西広域連合で提案へ
 東日本大震災による福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故を受け、大阪府の橋下徹知事は27日の記者会見で、関西に電力を供給する原発の新設や運転期間の延長をストップさせるとした「脱原発」構想を明らかにした。28日に大阪市内で開かれる関西広域連合の会合で、原発に頼らないための代替エネルギー開発や節電対策を検討するよう、各知事に提案する。
 橋下知事は「まず原発1基を止めるためには何をするべきかを示したい。節電は住民の相当な負担となるが、関西の府県民の総力を挙げて今こそ真剣に考える時期だ」と述べた。自動販売機やパソコンの節電などを業者や府民に求めていく考え。既存の原発の即時廃止は求めず、ライトアップなどの観光施策や産業に支障を及ぼさない案を考えるという。また橋下知事は、関西電力なども交えて、代替エネルギーなどについて協議していく意向も示した。
 関電は福井県内に11基の原発を持ち、自社発電量に占める原発の割合が54%に上るほか、同県の日本原子力発電敦賀原発1、2号機からも供給を受けている。(読売)
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 私は、この間の「橋本路線」に対しては異論も多々あるが、大阪出身の人間の一人として上の「脱原発」構想には賛同する。
 しかし、少なくとも新聞報道を読む限り、橋本脱原発構想には、原発漬けにされてきた「地元」の「原発からの解放と自立」が論点に含まれていない。つまり、関電の原発による電力供給の最大の「恩恵」を受けてきた大阪、神戸、京都など関西の大都市圏が福井県など「地元」のために何をするのか/できるのか、そういう視点が欠落しているのである。これでは「地元」の反発を招くだけだ。その意味においても、関西広域における行政主導の「脱原発」構想に対する、市民サイドの関与と批判を含めた対案の提示が関西の脱原発運動には求められている。

 脱原発をお題目、スローガン一般に終わらせずに、説得力のある議論を積極的に打ち出すことができるかどうか。脱原発派の「絶好のチャンス」と受け止めたい。

〈首都圏における脱原発の具体的・現実的議論を〉
 関西圏もさることながら、問題は首都圏だ。というより、東京である。東京都政と都民の原発依存体質をどうするか。「脱原発なんてできっこない」と断言してはばからない、再選された石原都政に関して言えば、状況はきわめて絶望的だ。

①〈脱原発の政治的受け皿の不在〉をどうするか? 


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浜岡原発3号機:7月に再開…中部電力計画、実現は不透明
 中部電力は28日、定期検査中の浜岡原発3号機(静岡県御前崎市)を7月に運転再開することを前提にした12年3月期の業績予想を発表した。地元自治体などからは、福島第1原発事故の深刻化を受けて浜岡原発の津波対策などを不安視する声も高まっており、実現できるかどうかは不透明だ。
 浜岡3号機は昨年11月下旬に定期検査に入り、当初は4月中の運転再開を目指していた。しかし、東日本大震災による福島第1原発事故後、国は全国の原発に緊急安全対策の実施などを要求。同社は高さ15メートル以上の防波壁設置や非常用電源の確保など総額300億円規模の緊急対策をまとめ、5月上旬の国による評価後の運転再開を目指していた。
 水野明久社長は会見で「企業として業績見通しを示すことも責務」と述べ、浜岡3号機を再稼働せず既存の火力発電所に偏った電力供給を続けた場合は、1カ月当たり約60億円の負担増になるとの試算を公表。その一方で、水野社長は「スケジュールありきではない」とも語った。 運転再開時期を7月に設定したのは、夏場の電力需要が高まることに加え、電力不足に陥る東京電力への火力発電所用液化天然ガス(LNG)の融通などを考慮したため。中電がまとめた緊急安全対策への国の承認が得られれば、3号機の運転再開に地元自治体の同意などは法的に必要ない。ただ、同社が今後新たな建設を目指す浜岡6号機などの着工には静岡県などの同意が必要で、地元の意向を無視して3号機を再開させるのは事実上不可能。【毎日・工藤昭久】

停止原発の再起動、国指針ないと困難 立地9知事
 川勝平太知事は26日、全国知事会に先立って開かれた原発立地9道県知事の非公開会合で、定期点検中の浜岡原発3号機など停止中の原発の取り扱いがテーマになったことを明かし、「国の指針が出ないと再起動もできないというのが共通認識だった」と述べた。原発立地自治体で独自の検査機関を設立する必要性でも一致したとし、「中立的な立場から今回の原発事故の検証をしっかり行わなければならない」と強調した。
 このほか、川勝知事は全国知事会の席上、東日本大震災発生後に知事会から県に支援派遣の指示があるまで6日間を要したと指摘し、経緯の説明を求めるとともに、「指揮系統が明確でないと、支援したくてもかえって混乱を増幅することになりかねない」と体制の見直しを要望した。知事会の山田啓二新会長は「指揮系統と割り振りがあやふやだった。検証して来るべき災害に備えたい」と応じた。(静岡新聞)

原発津波対策「堤防だけでは済まぬ」 御前崎市長
 東日本大震災で被災した原発立地町村の首長らを訪問している御前崎市の石原茂雄市長は26日、女川原発のある宮城県女川町を視察した。甚大な津波被害を受けた町の姿を目の当たりにし、「すさまじい被害。(今後は御前崎市も)防災を最優先に考える」と強調。津波対策として中部電力が浜岡原発(同市佐倉)に建設を計画している高さ12メートル以上の防波壁については「12メートルでいいというわけにはいかない。堤防だけでは済まない」と、さらなる対策の必要性を指摘した。
 石原市長は女川町内を訪れ、安住宣孝町長と面会した。「(津波が来た時は)庁舎の屋上にいたが、流された家や船が庁舎にぶつかってきた」などと安住町長から震災当時の状況や現在の町の様子を聞いた。
 面会後は、同行する市の防災関係者とともに辺り一面の建物が倒壊した町内を視察した。海岸近くに市街地のある御前崎市を踏まえ、「高台への住宅の建て替えの推進など、津波対策を早急に進める」と力を込めた。
 石原市長は同日、福島県会津若松市に避難している大熊町の渡辺利綱町長も訪ねて、東京電力福島第1原発を抱える同町の避難状況などについて意見を交わした。面会後、原発の安全対策について「国がもう少し力を発揮して進めるべき」と話し、全国の原発立地市町村でつくる「全国原子力発電所所在市長村協議会(全原協)」で国に要望していく方針を示した。(静岡新聞)

原発新設凍結など山内氏公約発表
 5月19日告示の知事選に出馬予定の民主党県連幹事長・山内崇氏が27日、選挙公約を発表した。「県政刷新」をスローガンに、基本政策4分野13項目と緊急アピール5項目を示した。原発新設凍結のほか、県病が念頭の「がんセンター」設置や小中学生の医療費無料化など、社会保障分野に重点を置いた。
 青森市の後援会事務所で記者会見した山内氏は「8年間の現県政で青森県は停滞してきた。この閉塞(へいそく)感を打ち破っていく」と強調。基本政策として農林水産業再生、短命県の返上、全国最高水準の子育て支援、地元中小企業対策を掲げた。 社会保障分野では、ドクターヘリ2機体制実現のほか、小中学生の就学援助や保育料軽減に県費を投入する-と明言。農林水産業では「原発事故に伴う風評被害防止対策と補償措置の明確化」、中小企業対策として「信用保証枠の大幅拡大」などを挙げた。
 このほか緊急アピールとして、地域医療総合特区の推進、青森港の物流拠点港化、八戸市への屋内スケート場建設を打ち出した。屋内スケート場については「復興のシンボルとして10年スパンで整備することが大きな目標」と述べた。 2011年度予算の全面組み替えや事業仕分けで事業の財源を捻出するほか、電源3法交付金や核燃料物質等取扱税(核燃税)を震災、雇用、社会保障分野に重点活用する-とした。(東奥日報)
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 この記事からも民主党が「脱原発」政党ではないことがはっきりと理解できる。

韓国、原発5自治体の首長が初会議 安全対策徹底を要求
 韓国で原発がある5自治体の首長が26日、南部の慶州(キョンジュ)市に初めて集まり、原発事故に備えた安全対策の徹底や情報公開を政府に求める意見書を採択した。韓国初の原発で、故障で運転停止している古里(コリ)1号機を抱える釜山市機張(キジャン)郡の郡守(首長)が呼びかけた。 意見書では、設計寿命の30年を超えて古里1号機の運転を延長した際の判断材料となった評価報告書の公開などを政府に求めた。機張郡の呉奎錫(オ・ギュソク)・郡守は「国内の技術者だけでなく、国際機関の点検も受けることで国民は安心できる」と述べた。
 ソウルでは同日、今月半ばに福島で調査した市民団体が現地の様子を報告。福島の経験をもとに、原発事故に備えた新たな安全対策づくりを国会に求めていく方針を示した。自宅から約27キロの場所に原発がある慶州環境運動連合の李相洪(イ・サンホン)さん(36)は「福島で目に見えず、においもしない放射能の怖さを感じた。韓国でも事故時の避難対応策をつくり、周辺住民に知らせるべきだ」と話した。(朝日・ソウル=中野晃)
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 「安全対策徹底」がはかられない中、浜岡原発をはじめ停止中原発の再稼働化が画策されている日本にあっても、経産省・保安院、原子力安全委による「評価報告書」の全面的情報公開は絶対に欠かせない課題になっている。

東電事故、電力各社の決算に影響 原発再稼働見通せず
 東京電力の原発事故が、ほかの電力会社の経営に影響を与えている。原発への不安の高まりから、定期検査で止まっている原発の再稼働時期を見通せないためだ。27日から始まった電力会社の決算発表では、3社のうち2社が、2012年3月期の業績予想を明確には公表できなかった。 九州電力は、12年3月期の業績予想の公表を断念した。業績予想の公表を始めた89年以来、初めてのことだ。記者会見で真部利応社長は「玄海原発の再開見通しが立たないことが一番大きい」と説明した。
 玄海原発2、3号機は震災前から定期検査中で、3月下旬~4月上旬に順次運転を再開する計画だった。そこに東京電力の原発事故が発生。「地元の理解を得るのが難しい」ため、運転再開の見通しが立たない。 原発の停止中は火力発電の量を増やすため、1日6億円のコスト増になる見込み。中東情勢の悪化で原油価格は上昇しており、影響額が拡大する恐れもある。電力需要が増える夏場には供給力が不足する恐れもあり、真部社長は「非常に厳しい状況」と話す。
 北陸電力は、11年3月期決算は販売電力量が過去最高で、増益増収だった。しかし、志賀原発の再稼働が見込めず、12年3月期の業績予想を出せなかった。
 関西電力は、12年3月期の業績予想を発表した。「猛暑で過去最高だった販売電力量が落ち込む」(広報)として、営業利益は前期比30.6%減と予想したが、原発の稼働率は震災前の想定より2%しか下げていない。 八木誠社長は記者会見で「信頼回復、安全対策をしっかりやって、原発を立ち上げることに専念している」と強調した。ただ、関電内部には「定期検査中の原発は、一応どこかで立ち上がるとみて決めた。計画どおりとは限らない」(幹部)という声もある。(朝日)
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〈で、東電をどうするか?〉問題
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・東電役員報酬 経産相「50%カットでは足りない」
 海江田万里経済産業相は28日の閣議後会見で、福島第1原子力発電所の事故を受け、東京電力が打ち出した役員報酬の最大50%カットについて、「まだカットの仕方が足りないと思っている」と述べた。 海江田経産相は会見で、役員の中で報酬額に大きな差があることを指摘し、「かなり高額の報酬をもらっている方々が、さらにカットすることは当然」とした。一部で役員報酬はゼロにすべきとの声があることについては、「今の世論、国民感情も考えていただきたい」と述べるにとどめた。
 東電は25日、勝俣恒久会長や清水正孝社長ら常務以上の役員報酬を50%カットし、執行役員は40%カットしたうえ、一般職員の年収も約20%カットする人件費削減策を発表した。(産経)
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 私も、「まだカットの仕方が足りないと思っている」。
 しかし、それを政府の立場で言う場合には、政府としての具体案を提示しなければ、無責任の謗りを避けることはできないだろう。東電社員の報酬に関し、私は以前、このように書いた
 「国と東電には、「全執行役員の無給化・資産凍結→差し押さえ、全管理職以上の大幅減給・一切の賞与無し、全社員の最低でも給与据え置き→減給、ボーナス無し」を同時に決定してもらわねばならないだろう。これを「超法規的措置」で断行する必要がある。
 これは非常に、非常に重要な問題だ。「東電ショック」は「リーマン・ショック」どころの話ではない。いずれ近いうちに、東電の破産宣言→日航に続く「公的資金投入」問題→国有化問題(東電をどうするか)が浮上するだろう」。

 なぜ「超法規的措置」が必要になるのか。①「全執行役員の無給化・資産凍結→差し押さえ」は、現行法によってはできないからである。また、②「全管理職以上の大幅減給・一切の賞与無し」が当然のことだとしても、一般労働者の「最低でも給与据え置き→減給、ボーナス無し」を実行するためには、労働組合との関係がでてくるからだ。
 もちろん、国が具体案を提示し、組合との交渉を通じて解決するのが基本である。しかし組合が、とくに「減給」の割合、「ボーナス無し」(もちろん期限付き措置)に対して抵抗を続けることが十分に予想され、それに対する「措置」が必要になるからである。

 数兆円、もしかしたら五兆円を越えるかもしれないと言われている大事故を起こした一般企業が、数十年という歳月をかけて災害被害者に補償・賠償をしなければならないときに、その企業の経営陣が、無給で事故の収拾にあたり、同時に自らの資産を投げ打ってまでも最後まで社会的責任をまっとうするのは、当たり前のことだ。
 また、管理職クラスが「大幅減給・ボーナス無し」となるのも、本人の家族以外に反対する人は誰もいないだろう。これまでの報酬額、その累積を考慮すれば、「月給五割以上カット、ボーナス無し」がごくごく妥当なラインではないか。
 問題は一般社員の処遇である。「年収二割カット」が妥当かどうか。私は、東電の労働組合は「認識が甘い」と言う。読者はどのように考えるだろう?

〈国と自治体の責任〉はどこに消えたのか?
 東電を一企業体として残すかどうか、「発電と供給の分離」問題など、議論しなければならないことは多い。
 しかしその前に、はっきりさせておかねばならないことがある。福島第一原発災害に関する国と自治体の責任問題だ。これはいったいどこに消えたのか?

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枝野氏、賠償支払い上限設定「あり得ない」 東電負担には議論
 枝野幸男官房長官は28日午前の閣議後記者会見で、福島原発事故に関する賠償金支払いに上限を設けることは「被害者との関係ではあり得ない」と述べ、賠償は東京電力と国が責任を持って行う考えをあらためて強調した。金融機関や東電が求めている東電の負担の上限設定に関しては明言しなかった。
 枝野氏は27日の会見で、賠償金について「東電と国の間の負担割合がどうあるべきかは議論がある」と述べ、政府内で調整が難航していることを示唆した。
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 いわゆる「原子力ムラ」=「原子力複合体」とは何か
 産官学連携の「原子力複合体」の基本的組織構造とは、次のような仕組みになっている。
①内閣府
A 原子力委員会
B 原子力安全委員会

②経済産業省
A 資源エネルギー庁
B 原子力安全・保安院→原子力安全基盤機構
C 総合資源エネルギー調査会→原子力部会、原子力安全・保安部会
  
③文部科学省
A 日本原子力研究開発機構
B 日本原子力研究所
C 核燃料サイクル開発機構

④民間原子力業界組織
A 電気事業連合会  
B 日本原子力産業協会
C 日本原子力技術協会
D 日本原燃
E 国際原子力開発

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(つづく)