脱原発の〈思想〉と〈科学〉が試される時
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脱原発の〈思想〉と〈科学〉が試されている。
原発は「安全」だから建設されてきたのではないし、「危険」だから廃止できるのでもない。
その意味で、これまで原発の「安全神話」を批判し、原発の「危険性」を主要な論点としてきた反/脱原発派は、ポスト「3・11」情況のなかで何を「反/脱」の論理とするのかが問われていると言える。とくにこれからのムーブメントを担うべき若い世代の人々は、これまでの反/脱原発運動に何が欠けていたのか、また何が誤っていたのかを、歴史をさかのぼり、ぜひそれぞれ検証してほしいと思う。そういう過去を省察する営みが、今、最も大切なことだと思うからだ。
思想という意味では、30年近く前の吉本隆明の『反核異論』ではないが、「3・11」直後から流布されてきた、ありとあらゆる類の「脱原発異論」に対し、どのような〈思想〉を対置するかという問題がある。それを考えるキッカケとして、たとえばここに「特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! 文芸評論家・吉本隆明さん」(毎日新聞)というテキストがある。演習として、吉本が30年近く前、そしてポスト「3・11」情況のなかで語っている発言、固陋の大家に何が言えるかを考えてほしい。かなり難題だと思う。
・・
・「その「本質」は自然の解明が、分子・原子(エネルギイ源についていえば石油・石炭)次元から一次元ちがったところへ進展したことを意味する。この「本質」は政治や倫理の党派とも、体制・反体制とも無関係な自然の「本質」に属している。(略)自然科学的な「本質」からいえば、科学が「核」エネルギイを解放したということは、即自的に「核」エネルギイの統御(可能性)を獲得したと同義である」
・「原子力は核分裂の時、莫大(ばくだい)なエネルギーを放出する。原理は実に簡単で、問題点はいかに放射性物質を遮断するかに尽きる。ただ今回は放射性物質を防ぐ装置が、私に言わせれば最小限しかなかった。防御装置は本来、原発装置と同じくらい金をかけて、多様で完全なものにしないといけない。原子炉が緻密で高度になれば、同じレベルの防御装置が必要で、防御装置を発達させないといけない」
・「動物にない人間だけの特性は前へ前へと発達すること。技術や頭脳は高度になることはあっても、元に戻ったり、退歩することはあり得ない。原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう。今のところ、事故を防ぐ技術を発達させるしかないと思います」
・「人類の歴史上、人間が一つの誤りもなく何かをしてきたことはない。さきの戦争ではたくさんの人が死んだ。人間がそんなに利口だと思っていないが、歴史を見る限り、愚かしさの限度を持ち、その限度を防止できる方法を編み出している。今回も同じだと思う」
・・
「マルクス主義」を齧ったことがある人の眼から言えば、吉本隆明という人は、事が科学論におよぶやそのスタンスが、マルクスよりもむしろエンゲルスに近くなるということになるのだろうが、ここで吉本が言っていることは明らかに誤っている。「科学が「核」エネルギイを解放した」ことは、「「核」エネルギイの統御(可能性)を獲得したと同義」ではないからだ。永遠に「同義」には、ならない。
ここでのポイントは、吉本が「科学」を主語にし、「即自的」(また小難しい話になって恐縮だが、「即自」の「自」は科学をさす。非常にヘーゲル的な用法である)という言葉を使っているのが「ミソ」、ということにあるのだけれど、「科学的」=理論的な可能性(統御)は、現実社会においては、常に政治(国策)と経済(利潤の最大化)によって歪められ、不可能性(統御不能)へと変質してしまうからである。
福島第一原発のメルトダウンはこの仮説を「立証」したことになる。
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けれども、ここで反/脱原発派が理解すべきことがある。それは、原発の「安全神話」が「3・11」によって崩壊したことは、かならずしも原発廃絶論の追い風にはならないこと、まして「原子力科学」の凋落を何ら意味するものではない、ということである。
原発が存続するかぎり、反/脱原発派は原発と放射能汚染の「危険」を訴え続けねばならない。これ自体、実にアンフェアなことだ。なぜなら、推進派が原発の「安全・安心」を、反対派や判断保留派が十分に納得しうるまで「科学的に論証」する責任を負うのでなく、推進派の主張に対する反証責任、つまり原発の「不安全・不安心」の論証責任を反/脱原発派が負わされるというのは、本末転倒というか「筋違い」もはなはだしいからである。
ここのことは原発建設を含む、あらゆる国家プロジェクトとたたかう市民・住民運動に共通する問題である。原発問題に関して言えば、この「反証責任」は、「科学としての脱原発」を唱える研究者たちに、膨大なるエネルギーと時間の消費を強制する。だからせめて・・・と話が長くなるので、これはこれとして機会を改めて論じることにしたい。
原発の「安全神話」の崩壊が、かならずしも反/脱原発の追い風にはならないという理解を共有しうるのであれば、ポスト「3・11」における反/脱原発論が、「安全神話批判」論よりもっと「本質的」かつ「現実的」なレベルで、その論理を練り上げてゆくことが問われている、という認識も共有できると思う。
たとえば、吉本がいう「原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう」「歴史を見る限り、愚かしさの限度を持ち、その限度を防止できる方法を編み出している」という「科学信仰」の思想に対し、どう立ち向かうか。この吉本の発言は、科学と技術一般の問題からさらに「人間とは何か」という存在論の問題までが絡んでくるだけに、かなり強面(こわもて)の原発・原子力科学擁護論となっている。
言い方を換えるなら、こういうことである。「科学も人間も誤りを常に正しながら、未来に向かって進歩するのであり、それは原発も同じである」という論理が、今後、停止中原発の再稼働や中断されている原発建設の再開、さらにはニュータイプの原発建設を合理化する論理として出てきた場合に、それに対してどのような対抗言説を編み出せるか? この問いを吉本の主張は〈私たち〉に突きつけているのである。
吉本隆明その人について言えば、世情が反/脱原発に一挙に流れた中で、反時代的な言説をと思想家として考えたのかもしれない。しかしここで吉本が言っていることは、「3・11」以後、「原子力ムラ」(学会)の学者を始め、政・官・財の原発推進派が口を揃えて言ってきたことと完全に符号している。だから、あえて「演習」として取り上げてみた。
もっと言えば、一方における「科学と政治(イデオロギー)は別」論と、他方における「資本主義と社会主義(旧ソ連や中国)は別」論の下で、戦後日本の科学者・思想家の大半が、「日本の未来を照らす光=原子力」論への批判を素通りしてきたことをどのように考えるかと問題がある。さらに、「戦後政治」の問題で言えば、冷戦時代の野党第一党の社会党は原発推進派と反対派の寄り合い所帯だったし、共産党は昔も今もバリバリの「科学主義」者の集団である。
こうした戦後科学・思想・政治の「総括」が、ほとんど何もなされぬまま「3・11」が起こり、脱原発運動がかつてない広がりを見せる一方で、「脱原発異論」も同時に台頭するという情況がある。包囲したと思っていたのが、いつのまにか包囲される側になっているという。だから過去を検証し、省察する営みが欠かせないと言いたいのである。
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ともあれ、「3・11」直後から沈黙し、今は「なり」を潜めている連中も「ほとぼり」がさめた頃を見計らい、何食わぬ顔で「地上がダメなら地下原発を」「第4世代原発は安全で安心」論を吹聴するようになるだろう。原発が「金のなる樹」であることは「3・11」以後においても何も変わらず、樹には利権という名の実がいっぱいぶら下がっている。
こういう「何食わぬ」派が大手を振るいながら登場するに連れて、これまでがそうであったように、今後の原発推進論も、思想や科学とは実は無縁であるにもかかわらず、思想や科学の名において正当化されてゆくだろう。
要は、「いま、なぜ反/脱原発なのか?」をそれぞれが今一度、考えてみることだ。「過去の敗北」から何を学ぶか、「安全で安心な原発」であれば認めるのかどうか、いったい原発の何に反対しているのかを。
これまでがそうであったように、これからも「安全神話批判」論(だけ)では日本で原発を止めることはできないだろう。そこで、まず反/脱原発の「牙城」は、これまでがそうであったように、これからも原発の安全/不安全とは無縁の論理によって、地方から崩されてゆくことを、しっかり見極めることが肝腎だと思うのだ。
「牙城」を死守し、ここから先にゆく、これまでとは違う〈思想〉と〈科学〉が求められている。
危機感を持とう。形勢は、すでに危うくなりかけている。
〈「だからせめて・・・」の続き〉
・・・だからせめて、准教/助教クラス以上の身分が保障されている研究者は、どうか一歩踏み出して発言/行動して欲しい。「個人研究」の領域を調整すれば、時間とエネルギーは何とかなるのではないか。発言し行動する、「専門」を超えた新しい世代の研究者が増えなければ、新しい世代の脱原発運動の「持続可能な発展」は望めない。それだけです。
⇒「「冷温停止」の政治と科学: 研究者のモラルが試される時」
・・・
・「原発安全基準見直しを」 九州地方知事会
東日本大震災による東京電力福島第一原発での事故を受け、九州、沖縄、山口の9県の知事でつくる九州地方知事会は6日、原発の安全基準の見直しなどを国に求める特別決議をした。 広瀬勝貞会長(大分県知事)は記者会見で、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)などの運転再開について「国がもう少し責任を持って説明をすべきだ」と語った。
政府は事故後、原発に対し、津波への緊急安全対策を指示。5月6日には各原発の対策は「適切」で、運転は安全上支障がないとしたが、事故後これまでに運転を再開した原発はない。このため、決議では地震動による重要施設の損傷の有無を示すことや、緊急安全対策を「適切」としながら中部電力浜岡原発に停止を要請した理由を早急に説明することなどを求めた。(朝日)
・玄海原発、再開巡り地元自治体が苦悩 判断に温度差
定期検査後に停止している九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡り、地元自治体が苦悩を深めている。国と九電から事実上、再開の是非の判断を委ねられているにもかかわらず、安全かどうかを判断する基準や根拠を見いだせないためだ。玄海町が再開への同意に傾くなど温度差も出始めた。再開の行方はなお不透明だ。
「九電は節電を持ち出す前に、原発の安全性について説明を尽くすべきだ」 「原発から30キロ以上離れた場所でも放射性物質を測定するなど、県民を安心させる具体策を打ち出してほしい」
佐賀県市長会と町村会が2日、九電幹部と県の担当者を招いて開いた意見交換会。県内20市町のうち18の首長が参加し、玄海原発の安全性について九電と県に質問や要望をぶつけた。 定期検査後の原子炉再稼働に対する地元自治体の了解は法的には不要だが、九電は東京電力福島第1原発の事故で広がった不安を受け、玄海2、3号機の再開には「地元の理解を得ることが必要」との姿勢。意見交換会は、自治体側が判断材料を得ようと開いた。
参加した坂井俊之・唐津市長は「福島第1原発の事故の原因は津波といわれながら、揺れで壊れたとの話も出てきて、今も分かっていない。その中で、玄海原発が安全かを判断するには材料があまりにも少ない」と嘆く。
佐賀県も頭を抱える。古川康知事は3日の県議会原子力安全対策等特別委員会で「福島の事故と地震の揺れとの因果関係」「停止した中部電力浜岡原発と他原発の安全性についての違い」など3項目について「国から回答がない」と答弁。「県民の理解を得られるような説明があるかが重要だ」と強調した。 ただ、知事は「国の回答で即、再起動を認めるとはいえない」とも発言。さらに専門家の意見聴取や議会での議論が必要との認識を示した。時間がかかっても「安全」を最優先する姿勢だ。ただ、ある県幹部は「震災後の原発再開が全国初になれば何を言われるか分からない。一番は避けたいのが本音」とも漏らす。
一方、玄海原発が立地する玄海町は、九電幹部や国の担当者らを町議会に招致。3回にわたる議論を経て1日、町議の3分の2に当たる8人が再開に賛成した。岸本英雄町長は今月中旬までに、再開了解の意向を九電に伝えるとみられる。
九電が「地元」の範囲を必ずしも明確に示さないことが混乱を広げた側面もある。2日の意見交換会で、その範囲を聞かれた九電幹部は「地元自治体は当然だが、やはり九州全域の皆さんに理解してもらう努力をする必要がある」と述べ、明確な“定義”は避けた。 重い責任を背負わされた格好の自治体。「原発はそもそも国のエネルギー政策。地方に責任を投げるべきではない(???)」(佐賀県議)との声も上がる。
九電は代替となる火力発電用の燃料を8月上旬分まで確保し、当初15%が目標だった節電要請の圧縮を検討するが、猛暑などで電力不足に陥る懸念は消えない。玄海の再開問題に結論が出る見通しが立たないまま、暑い夏が目前に迫っている。(日経)
・浜岡原発:運転停止などを求める訴訟 来月1日に提訴へ
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の1~4号機の運転差し止めを求める訴訟(東京高裁で審理中)の原告側弁護団と、静岡県内の弁護士らは5日、東京都内で協議し、中部電を相手取り、浜岡原発の運転停止と廃止などを求める訴訟を来月1日、静岡地裁に起こす方針を決めた。 原告団は弁護士7人と三上元・静岡県湖西市長、地元住民ら。
菅直人首相の要請で中部電が運転を停止した3~5号機(1、2号機は廃炉手続き中)の運転再開の差し止めと、厳格な廃止措置を講じるよう求める。 浜岡原発をめぐっては周辺住民のグループが5月27日、中部電を相手取り、運転の永久停止を求める訴訟を静岡地裁浜松支部に起こしている。【毎日・西嶋正信】
・青森知事に三村氏3選確実 民主推薦候補ら破る
任期満了に伴う青森県知事選は5日投票、即日開票の結果、無所属で現職の三村申吾氏(55)=自民、公明推薦=が、無所属の元県議山内崇氏(56)=民主、国民新推薦=と、共産党の県書記長の吉俣洋氏(37)の2新人を破り、3選を確実にした。
民主党は4月の統一地方選の与野党対決型3知事選で全敗したのに続く敗北。菅直人首相の早期退陣を求める圧力は一層強まりそうだ。 知事選では、福島第1原発事故を受け、青森県内の原発施設への対応が争点に浮上。三村氏は新設する委員会で県独自に原発の安全対策を検証すると訴えた。【共同通信】⇒「検証」して早期認可?
・青森県知事選:原発推進派勝利 「誰がやっても無くなんね」(毎日)
・大熊の若手職員が原発廃炉の町将来像描く
1~4号機の廃炉が決まっている東京電力福島第1原発の立地町、大熊町は3日、会津若松市の同町会津若松出張所で復興構想策定へ向けた検討委員会の初会合を開いた。20~40代の若手町職員が委員となり、町の将来像を描くための第一歩を踏み出した。7月には町の全世帯を対象としたアンケートも実施し、町民の意見を反映させる。原発との共生から一転、廃炉問題を抱える町の復興策が注目される。
委員は庁内各課から選抜された12人。初会合では渡辺利綱町長が「先が見えない閉塞(へいそく)感が漂う現状に風穴を開ける思いで、将来構想を描いてほしい」と述べた。この後、委員が意見交換。複数の委員が「まずは町の現状を知り、そこから将来何ができるのか考えていくべき」という意見を述べた。また、「理想を描くだけでなく、具体性のある希望を示すことが必要」などの声が上がった。(福島民友ニュース)
・七尾市も「安全協定を」 北電と締結、市長求める
石川県七尾市の武元文平市長は二日の定例会見で、運転停止中の北陸電力志賀原発(同県志賀町)について、北電との間で安全協定を締結したいと表明した。 市域の多くが原発から半径二十キロ圏内に入るが、石川県と志賀町、北電の三者で結んだ安全協定では、七尾市は羽咋市や中能登町とともに「立会人」となっているだけ。
トラブルなどで停止中の志賀原発の運転再開に当たっては通常、協定を締結する県と志賀町の同意だけで済むため、武元市長は「あいまいな立会人の立場では市民の声や要望を伝える手続きとしては弱い」と不満を唱えた。その上で「今の協定では県におまかせという形。七尾市も協定の当事者として安心安全な状況を求めていきたい」と協定締結へ意欲を示した。
福島第一原発の汚染分布を受け、武元市長は原発から同心円を描いた距離で対策の濃淡を分けてきた方式に改善を訴え、「偏西風によって、富山県氷見市なども七尾市同様に風下になる。同心円の距離で対処するには限界がある。土地の形状や風といったものを総合的に捉えないといけない」と話した。
志賀原発の半径十キロ内と定められている防災対策を重点的に充実する地域(EPZ)についても「国でもっと早く見直してほしい」と要望した。 原発の運転再開に向けては、中能登町の杉本栄蔵町長も「同意に加わって、北電に厳しく言いたい」との考え。羽咋市の山辺芳宣市長は「県が周辺自治体にも意見を聞いてほしい」と注文するが、県は「まずは北電が話しをすること」と関与しない立場を強調している。 (中日新聞・倉形友理)
・北陸電の志賀原発2号機、定期検査に遅れ 作業員確保滞る
北陸電力は1日、志賀原子力発電所(石川県志賀町)2号機の定期検査が1カ月半程度遅れる見通しだと発表した。発電開始時期は未定という。作業員の確保や部品調達が滞ったため。当初は7月中旬までに定期検査を終える計画だった。志賀原発では、1号機も再循環ポンプの不具合で運転を停止しており、原発再稼働による電力安定供給の見通しは立っていない。
東日本大震災の発生で、日立製作所が請け負っている点検工事の作業員のうち東北出身者が一時帰郷したため、作業員が予定通りに確保できなかったという。ピーク時の作業員は約1500人の計画に対して約1300人にとどまる。被災地で生産していたベアリング、パッキンなどの部品調達にも支障が出た。 当初は損傷していたタービン部品交換を5月末までに完了させる計画だったが、現時点で完了していないため、作業の遅れを公表したという。(日経)
・玄海原発再開、町長「了解伝える」
九州電力玄海原発を抱える佐賀県玄海町の岸本英雄町長は1日、定期検査で停止中の同原発2、3号機の運転再開について、「6月中旬頃、九電に町として運転しても差し支えないと伝える」と語り、再開を認める考えを示した。
同日開かれた町議会原子力対策特別委員会の後、読売新聞の取材に答えた。特別委では、「安全性に対する国の担保がとれた」など再開を容認する意見が多数を占めており、議会の意向を踏まえた判断とみられる。
運転再開にあたり、九電は地元の玄海町や佐賀県の了解を重視しており、同町の容認方針が固まったことで再開に向けた一つの条件が整った。ただ、佐賀県の古川康知事はこれまで再開への慎重姿勢を崩していない。特別委では、委員長を除く11人のうち、運転再開について容認7人、慎重・反対4人だった。
・原発の早期運転再開を、福岡経済同友会が緊急声明
九州電力の半数の原発がストップしたまま運転再開のめどが立たない問題で、福岡経済同友会が31日、「早期再開」を求める緊急アピールを発表し、経済界に電力不足への懸念が強まっている。玄海原発を抱える佐賀県の古川康知事ら原発立地道県の知事は、政府や電力会社の対応に不満を持ち、慎重な姿勢を崩していない。再開か、停止継続か。夏場の電力不足が現実味を帯びる中、市民には困惑が広がる。
九電の玄海原発と川内原発(鹿児島県)は、計6基のうち3基が定期検査で停止中。再開のめどがたたず、九電は最大で「15%節電」を要請する方針を示している。同友会の緊急アピールは、定期検査の終了後、原発の早期再開のため、国と九電に、地元の理解を得るよう要請する一方、地元にも再開への理解を呼びかけた。6月中に、古川知事ら地元首長に提出する予定という。
この日、福岡市内のホテルで開かれた記者会見には、同友会代表幹事の石原進・JR九州会長と、貫正義・九州電力副社長の2人が臨み、「エネルギーは経済や社会活動の基本であり、安定供給が大事」「原発が動かなければ国民生活は厳しい状況になり、(東日本大震災からの)復興にもダメージを与える」と強調した。(読売)
・御前崎市 6億円大幅減額補正
中部電力浜岡原発を抱える御前崎市は1日、東京電力福島第一原発の事故の影響で今年度の一般会計当初予算で見込んだ原発関連交付金が入らなくなったとして、約6億円を減額した補正予算案を市議会に提出した。小中学校で更新予定だったパソコンの購入を先送りするなど各分野で影響が出る。
中電は福島第一原発事故で、浜岡原発6号機の着工先送りを決定。さらに4号機のプルサーマル計画も延期した。このため、同市が予定していた国の初期対策交付金9億8千万円が1億4千万円に減額になったほか、県の核燃料サイクル交付金4800万円は全額入らなくなった。
この日、市が提出した補正予算案は約161億9400万円。財政調整基金1億2570万円を繰り入れるなどしたが、3月に可決した予算からは約5億8600万円を減額した。 この影響で、市は御前崎総合病院の空調施設改修などに充てる予定だった7700万円を取りやめた。さらに消防車2台(約1500万円)の購入を先送りし、小中学校のパソコン更新費2600万円も削った。
石原茂雄市長は本会議で、「市の経済などに多くの問題が発生した。国に支援を要望しており、大幅な減額補正予算案を理解して欲しい」と説明。閉会後には「教育や子育て、福祉の予算は減らしたくなかったがやむを得ない。原発交付金に頼らない、自立した街づくりを目指すいいきっかけになる」と語った。同議会は14、15日に一般質問があり、24日に議案採決の予定。
・大震災、M5以上余震500回 史上最多の更新続く
東日本大震災のマグニチュード(M)5以上の余震回数が、本震から3カ月足らずの2日午前8時までに500回に達したことが、気象庁の観測で分かった。誘発されたとみられる内陸の地震は、この中に含まれていない。
これまで国内の地震で最多だった1994年の北海道東方沖地震(M8・2)の本震から80日で126回を大幅に上回り、観測史上最多記録の更新を続けている。 同庁によると、M6以上が81回、M7以上は5回。本震発生当日の3月11日だけでM5以上が158回に達し、5月以降は1日当たり0~4回となっている。(共同)
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脱原発の〈思想〉と〈科学〉が試されている。
原発は「安全」だから建設されてきたのではないし、「危険」だから廃止できるのでもない。
その意味で、これまで原発の「安全神話」を批判し、原発の「危険性」を主要な論点としてきた反/脱原発派は、ポスト「3・11」情況のなかで何を「反/脱」の論理とするのかが問われていると言える。とくにこれからのムーブメントを担うべき若い世代の人々は、これまでの反/脱原発運動に何が欠けていたのか、また何が誤っていたのかを、歴史をさかのぼり、ぜひそれぞれ検証してほしいと思う。そういう過去を省察する営みが、今、最も大切なことだと思うからだ。
思想という意味では、30年近く前の吉本隆明の『反核異論』ではないが、「3・11」直後から流布されてきた、ありとあらゆる類の「脱原発異論」に対し、どのような〈思想〉を対置するかという問題がある。それを考えるキッカケとして、たとえばここに「特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! 文芸評論家・吉本隆明さん」(毎日新聞)というテキストがある。演習として、吉本が30年近く前、そしてポスト「3・11」情況のなかで語っている発言、固陋の大家に何が言えるかを考えてほしい。かなり難題だと思う。
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・「その「本質」は自然の解明が、分子・原子(エネルギイ源についていえば石油・石炭)次元から一次元ちがったところへ進展したことを意味する。この「本質」は政治や倫理の党派とも、体制・反体制とも無関係な自然の「本質」に属している。(略)自然科学的な「本質」からいえば、科学が「核」エネルギイを解放したということは、即自的に「核」エネルギイの統御(可能性)を獲得したと同義である」
・「原子力は核分裂の時、莫大(ばくだい)なエネルギーを放出する。原理は実に簡単で、問題点はいかに放射性物質を遮断するかに尽きる。ただ今回は放射性物質を防ぐ装置が、私に言わせれば最小限しかなかった。防御装置は本来、原発装置と同じくらい金をかけて、多様で完全なものにしないといけない。原子炉が緻密で高度になれば、同じレベルの防御装置が必要で、防御装置を発達させないといけない」
・「動物にない人間だけの特性は前へ前へと発達すること。技術や頭脳は高度になることはあっても、元に戻ったり、退歩することはあり得ない。原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう。今のところ、事故を防ぐ技術を発達させるしかないと思います」
・「人類の歴史上、人間が一つの誤りもなく何かをしてきたことはない。さきの戦争ではたくさんの人が死んだ。人間がそんなに利口だと思っていないが、歴史を見る限り、愚かしさの限度を持ち、その限度を防止できる方法を編み出している。今回も同じだと思う」
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「マルクス主義」を齧ったことがある人の眼から言えば、吉本隆明という人は、事が科学論におよぶやそのスタンスが、マルクスよりもむしろエンゲルスに近くなるということになるのだろうが、ここで吉本が言っていることは明らかに誤っている。「科学が「核」エネルギイを解放した」ことは、「「核」エネルギイの統御(可能性)を獲得したと同義」ではないからだ。永遠に「同義」には、ならない。
ここでのポイントは、吉本が「科学」を主語にし、「即自的」(また小難しい話になって恐縮だが、「即自」の「自」は科学をさす。非常にヘーゲル的な用法である)という言葉を使っているのが「ミソ」、ということにあるのだけれど、「科学的」=理論的な可能性(統御)は、現実社会においては、常に政治(国策)と経済(利潤の最大化)によって歪められ、不可能性(統御不能)へと変質してしまうからである。
福島第一原発のメルトダウンはこの仮説を「立証」したことになる。
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けれども、ここで反/脱原発派が理解すべきことがある。それは、原発の「安全神話」が「3・11」によって崩壊したことは、かならずしも原発廃絶論の追い風にはならないこと、まして「原子力科学」の凋落を何ら意味するものではない、ということである。
原発が存続するかぎり、反/脱原発派は原発と放射能汚染の「危険」を訴え続けねばならない。これ自体、実にアンフェアなことだ。なぜなら、推進派が原発の「安全・安心」を、反対派や判断保留派が十分に納得しうるまで「科学的に論証」する責任を負うのでなく、推進派の主張に対する反証責任、つまり原発の「不安全・不安心」の論証責任を反/脱原発派が負わされるというのは、本末転倒というか「筋違い」もはなはだしいからである。
ここのことは原発建設を含む、あらゆる国家プロジェクトとたたかう市民・住民運動に共通する問題である。原発問題に関して言えば、この「反証責任」は、「科学としての脱原発」を唱える研究者たちに、膨大なるエネルギーと時間の消費を強制する。だからせめて・・・と話が長くなるので、これはこれとして機会を改めて論じることにしたい。
原発の「安全神話」の崩壊が、かならずしも反/脱原発の追い風にはならないという理解を共有しうるのであれば、ポスト「3・11」における反/脱原発論が、「安全神話批判」論よりもっと「本質的」かつ「現実的」なレベルで、その論理を練り上げてゆくことが問われている、という認識も共有できると思う。
たとえば、吉本がいう「原発をやめてしまえば新たな核技術もその成果も何もなくなってしまう」「歴史を見る限り、愚かしさの限度を持ち、その限度を防止できる方法を編み出している」という「科学信仰」の思想に対し、どう立ち向かうか。この吉本の発言は、科学と技術一般の問題からさらに「人間とは何か」という存在論の問題までが絡んでくるだけに、かなり強面(こわもて)の原発・原子力科学擁護論となっている。
言い方を換えるなら、こういうことである。「科学も人間も誤りを常に正しながら、未来に向かって進歩するのであり、それは原発も同じである」という論理が、今後、停止中原発の再稼働や中断されている原発建設の再開、さらにはニュータイプの原発建設を合理化する論理として出てきた場合に、それに対してどのような対抗言説を編み出せるか? この問いを吉本の主張は〈私たち〉に突きつけているのである。
吉本隆明その人について言えば、世情が反/脱原発に一挙に流れた中で、反時代的な言説をと思想家として考えたのかもしれない。しかしここで吉本が言っていることは、「3・11」以後、「原子力ムラ」(学会)の学者を始め、政・官・財の原発推進派が口を揃えて言ってきたことと完全に符号している。だから、あえて「演習」として取り上げてみた。
もっと言えば、一方における「科学と政治(イデオロギー)は別」論と、他方における「資本主義と社会主義(旧ソ連や中国)は別」論の下で、戦後日本の科学者・思想家の大半が、「日本の未来を照らす光=原子力」論への批判を素通りしてきたことをどのように考えるかと問題がある。さらに、「戦後政治」の問題で言えば、冷戦時代の野党第一党の社会党は原発推進派と反対派の寄り合い所帯だったし、共産党は昔も今もバリバリの「科学主義」者の集団である。
こうした戦後科学・思想・政治の「総括」が、ほとんど何もなされぬまま「3・11」が起こり、脱原発運動がかつてない広がりを見せる一方で、「脱原発異論」も同時に台頭するという情況がある。包囲したと思っていたのが、いつのまにか包囲される側になっているという。だから過去を検証し、省察する営みが欠かせないと言いたいのである。
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ともあれ、「3・11」直後から沈黙し、今は「なり」を潜めている連中も「ほとぼり」がさめた頃を見計らい、何食わぬ顔で「地上がダメなら地下原発を」「第4世代原発は安全で安心」論を吹聴するようになるだろう。原発が「金のなる樹」であることは「3・11」以後においても何も変わらず、樹には利権という名の実がいっぱいぶら下がっている。
こういう「何食わぬ」派が大手を振るいながら登場するに連れて、これまでがそうであったように、今後の原発推進論も、思想や科学とは実は無縁であるにもかかわらず、思想や科学の名において正当化されてゆくだろう。
要は、「いま、なぜ反/脱原発なのか?」をそれぞれが今一度、考えてみることだ。「過去の敗北」から何を学ぶか、「安全で安心な原発」であれば認めるのかどうか、いったい原発の何に反対しているのかを。
これまでがそうであったように、これからも「安全神話批判」論(だけ)では日本で原発を止めることはできないだろう。そこで、まず反/脱原発の「牙城」は、これまでがそうであったように、これからも原発の安全/不安全とは無縁の論理によって、地方から崩されてゆくことを、しっかり見極めることが肝腎だと思うのだ。
「牙城」を死守し、ここから先にゆく、これまでとは違う〈思想〉と〈科学〉が求められている。
危機感を持とう。形勢は、すでに危うくなりかけている。
〈「だからせめて・・・」の続き〉
・・・だからせめて、准教/助教クラス以上の身分が保障されている研究者は、どうか一歩踏み出して発言/行動して欲しい。「個人研究」の領域を調整すれば、時間とエネルギーは何とかなるのではないか。発言し行動する、「専門」を超えた新しい世代の研究者が増えなければ、新しい世代の脱原発運動の「持続可能な発展」は望めない。それだけです。
⇒「「冷温停止」の政治と科学: 研究者のモラルが試される時」
・・・
・「原発安全基準見直しを」 九州地方知事会
東日本大震災による東京電力福島第一原発での事故を受け、九州、沖縄、山口の9県の知事でつくる九州地方知事会は6日、原発の安全基準の見直しなどを国に求める特別決議をした。 広瀬勝貞会長(大分県知事)は記者会見で、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)などの運転再開について「国がもう少し責任を持って説明をすべきだ」と語った。
政府は事故後、原発に対し、津波への緊急安全対策を指示。5月6日には各原発の対策は「適切」で、運転は安全上支障がないとしたが、事故後これまでに運転を再開した原発はない。このため、決議では地震動による重要施設の損傷の有無を示すことや、緊急安全対策を「適切」としながら中部電力浜岡原発に停止を要請した理由を早急に説明することなどを求めた。(朝日)
・玄海原発、再開巡り地元自治体が苦悩 判断に温度差
定期検査後に停止している九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開を巡り、地元自治体が苦悩を深めている。国と九電から事実上、再開の是非の判断を委ねられているにもかかわらず、安全かどうかを判断する基準や根拠を見いだせないためだ。玄海町が再開への同意に傾くなど温度差も出始めた。再開の行方はなお不透明だ。
「九電は節電を持ち出す前に、原発の安全性について説明を尽くすべきだ」 「原発から30キロ以上離れた場所でも放射性物質を測定するなど、県民を安心させる具体策を打ち出してほしい」
佐賀県市長会と町村会が2日、九電幹部と県の担当者を招いて開いた意見交換会。県内20市町のうち18の首長が参加し、玄海原発の安全性について九電と県に質問や要望をぶつけた。 定期検査後の原子炉再稼働に対する地元自治体の了解は法的には不要だが、九電は東京電力福島第1原発の事故で広がった不安を受け、玄海2、3号機の再開には「地元の理解を得ることが必要」との姿勢。意見交換会は、自治体側が判断材料を得ようと開いた。
参加した坂井俊之・唐津市長は「福島第1原発の事故の原因は津波といわれながら、揺れで壊れたとの話も出てきて、今も分かっていない。その中で、玄海原発が安全かを判断するには材料があまりにも少ない」と嘆く。
佐賀県も頭を抱える。古川康知事は3日の県議会原子力安全対策等特別委員会で「福島の事故と地震の揺れとの因果関係」「停止した中部電力浜岡原発と他原発の安全性についての違い」など3項目について「国から回答がない」と答弁。「県民の理解を得られるような説明があるかが重要だ」と強調した。 ただ、知事は「国の回答で即、再起動を認めるとはいえない」とも発言。さらに専門家の意見聴取や議会での議論が必要との認識を示した。時間がかかっても「安全」を最優先する姿勢だ。ただ、ある県幹部は「震災後の原発再開が全国初になれば何を言われるか分からない。一番は避けたいのが本音」とも漏らす。
一方、玄海原発が立地する玄海町は、九電幹部や国の担当者らを町議会に招致。3回にわたる議論を経て1日、町議の3分の2に当たる8人が再開に賛成した。岸本英雄町長は今月中旬までに、再開了解の意向を九電に伝えるとみられる。
九電が「地元」の範囲を必ずしも明確に示さないことが混乱を広げた側面もある。2日の意見交換会で、その範囲を聞かれた九電幹部は「地元自治体は当然だが、やはり九州全域の皆さんに理解してもらう努力をする必要がある」と述べ、明確な“定義”は避けた。 重い責任を背負わされた格好の自治体。「原発はそもそも国のエネルギー政策。地方に責任を投げるべきではない(???)」(佐賀県議)との声も上がる。
九電は代替となる火力発電用の燃料を8月上旬分まで確保し、当初15%が目標だった節電要請の圧縮を検討するが、猛暑などで電力不足に陥る懸念は消えない。玄海の再開問題に結論が出る見通しが立たないまま、暑い夏が目前に迫っている。(日経)
・浜岡原発:運転停止などを求める訴訟 来月1日に提訴へ
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の1~4号機の運転差し止めを求める訴訟(東京高裁で審理中)の原告側弁護団と、静岡県内の弁護士らは5日、東京都内で協議し、中部電を相手取り、浜岡原発の運転停止と廃止などを求める訴訟を来月1日、静岡地裁に起こす方針を決めた。 原告団は弁護士7人と三上元・静岡県湖西市長、地元住民ら。
菅直人首相の要請で中部電が運転を停止した3~5号機(1、2号機は廃炉手続き中)の運転再開の差し止めと、厳格な廃止措置を講じるよう求める。 浜岡原発をめぐっては周辺住民のグループが5月27日、中部電を相手取り、運転の永久停止を求める訴訟を静岡地裁浜松支部に起こしている。【毎日・西嶋正信】
・青森知事に三村氏3選確実 民主推薦候補ら破る
任期満了に伴う青森県知事選は5日投票、即日開票の結果、無所属で現職の三村申吾氏(55)=自民、公明推薦=が、無所属の元県議山内崇氏(56)=民主、国民新推薦=と、共産党の県書記長の吉俣洋氏(37)の2新人を破り、3選を確実にした。
民主党は4月の統一地方選の与野党対決型3知事選で全敗したのに続く敗北。菅直人首相の早期退陣を求める圧力は一層強まりそうだ。 知事選では、福島第1原発事故を受け、青森県内の原発施設への対応が争点に浮上。三村氏は新設する委員会で県独自に原発の安全対策を検証すると訴えた。【共同通信】⇒「検証」して早期認可?
・青森県知事選:原発推進派勝利 「誰がやっても無くなんね」(毎日)
・大熊の若手職員が原発廃炉の町将来像描く
1~4号機の廃炉が決まっている東京電力福島第1原発の立地町、大熊町は3日、会津若松市の同町会津若松出張所で復興構想策定へ向けた検討委員会の初会合を開いた。20~40代の若手町職員が委員となり、町の将来像を描くための第一歩を踏み出した。7月には町の全世帯を対象としたアンケートも実施し、町民の意見を反映させる。原発との共生から一転、廃炉問題を抱える町の復興策が注目される。
委員は庁内各課から選抜された12人。初会合では渡辺利綱町長が「先が見えない閉塞(へいそく)感が漂う現状に風穴を開ける思いで、将来構想を描いてほしい」と述べた。この後、委員が意見交換。複数の委員が「まずは町の現状を知り、そこから将来何ができるのか考えていくべき」という意見を述べた。また、「理想を描くだけでなく、具体性のある希望を示すことが必要」などの声が上がった。(福島民友ニュース)
・七尾市も「安全協定を」 北電と締結、市長求める
石川県七尾市の武元文平市長は二日の定例会見で、運転停止中の北陸電力志賀原発(同県志賀町)について、北電との間で安全協定を締結したいと表明した。 市域の多くが原発から半径二十キロ圏内に入るが、石川県と志賀町、北電の三者で結んだ安全協定では、七尾市は羽咋市や中能登町とともに「立会人」となっているだけ。
トラブルなどで停止中の志賀原発の運転再開に当たっては通常、協定を締結する県と志賀町の同意だけで済むため、武元市長は「あいまいな立会人の立場では市民の声や要望を伝える手続きとしては弱い」と不満を唱えた。その上で「今の協定では県におまかせという形。七尾市も協定の当事者として安心安全な状況を求めていきたい」と協定締結へ意欲を示した。
福島第一原発の汚染分布を受け、武元市長は原発から同心円を描いた距離で対策の濃淡を分けてきた方式に改善を訴え、「偏西風によって、富山県氷見市なども七尾市同様に風下になる。同心円の距離で対処するには限界がある。土地の形状や風といったものを総合的に捉えないといけない」と話した。
志賀原発の半径十キロ内と定められている防災対策を重点的に充実する地域(EPZ)についても「国でもっと早く見直してほしい」と要望した。 原発の運転再開に向けては、中能登町の杉本栄蔵町長も「同意に加わって、北電に厳しく言いたい」との考え。羽咋市の山辺芳宣市長は「県が周辺自治体にも意見を聞いてほしい」と注文するが、県は「まずは北電が話しをすること」と関与しない立場を強調している。 (中日新聞・倉形友理)
・北陸電の志賀原発2号機、定期検査に遅れ 作業員確保滞る
北陸電力は1日、志賀原子力発電所(石川県志賀町)2号機の定期検査が1カ月半程度遅れる見通しだと発表した。発電開始時期は未定という。作業員の確保や部品調達が滞ったため。当初は7月中旬までに定期検査を終える計画だった。志賀原発では、1号機も再循環ポンプの不具合で運転を停止しており、原発再稼働による電力安定供給の見通しは立っていない。
東日本大震災の発生で、日立製作所が請け負っている点検工事の作業員のうち東北出身者が一時帰郷したため、作業員が予定通りに確保できなかったという。ピーク時の作業員は約1500人の計画に対して約1300人にとどまる。被災地で生産していたベアリング、パッキンなどの部品調達にも支障が出た。 当初は損傷していたタービン部品交換を5月末までに完了させる計画だったが、現時点で完了していないため、作業の遅れを公表したという。(日経)
・玄海原発再開、町長「了解伝える」
九州電力玄海原発を抱える佐賀県玄海町の岸本英雄町長は1日、定期検査で停止中の同原発2、3号機の運転再開について、「6月中旬頃、九電に町として運転しても差し支えないと伝える」と語り、再開を認める考えを示した。
同日開かれた町議会原子力対策特別委員会の後、読売新聞の取材に答えた。特別委では、「安全性に対する国の担保がとれた」など再開を容認する意見が多数を占めており、議会の意向を踏まえた判断とみられる。
運転再開にあたり、九電は地元の玄海町や佐賀県の了解を重視しており、同町の容認方針が固まったことで再開に向けた一つの条件が整った。ただ、佐賀県の古川康知事はこれまで再開への慎重姿勢を崩していない。特別委では、委員長を除く11人のうち、運転再開について容認7人、慎重・反対4人だった。
・原発の早期運転再開を、福岡経済同友会が緊急声明
九州電力の半数の原発がストップしたまま運転再開のめどが立たない問題で、福岡経済同友会が31日、「早期再開」を求める緊急アピールを発表し、経済界に電力不足への懸念が強まっている。玄海原発を抱える佐賀県の古川康知事ら原発立地道県の知事は、政府や電力会社の対応に不満を持ち、慎重な姿勢を崩していない。再開か、停止継続か。夏場の電力不足が現実味を帯びる中、市民には困惑が広がる。
九電の玄海原発と川内原発(鹿児島県)は、計6基のうち3基が定期検査で停止中。再開のめどがたたず、九電は最大で「15%節電」を要請する方針を示している。同友会の緊急アピールは、定期検査の終了後、原発の早期再開のため、国と九電に、地元の理解を得るよう要請する一方、地元にも再開への理解を呼びかけた。6月中に、古川知事ら地元首長に提出する予定という。
この日、福岡市内のホテルで開かれた記者会見には、同友会代表幹事の石原進・JR九州会長と、貫正義・九州電力副社長の2人が臨み、「エネルギーは経済や社会活動の基本であり、安定供給が大事」「原発が動かなければ国民生活は厳しい状況になり、(東日本大震災からの)復興にもダメージを与える」と強調した。(読売)
・御前崎市 6億円大幅減額補正
中部電力浜岡原発を抱える御前崎市は1日、東京電力福島第一原発の事故の影響で今年度の一般会計当初予算で見込んだ原発関連交付金が入らなくなったとして、約6億円を減額した補正予算案を市議会に提出した。小中学校で更新予定だったパソコンの購入を先送りするなど各分野で影響が出る。
中電は福島第一原発事故で、浜岡原発6号機の着工先送りを決定。さらに4号機のプルサーマル計画も延期した。このため、同市が予定していた国の初期対策交付金9億8千万円が1億4千万円に減額になったほか、県の核燃料サイクル交付金4800万円は全額入らなくなった。
この日、市が提出した補正予算案は約161億9400万円。財政調整基金1億2570万円を繰り入れるなどしたが、3月に可決した予算からは約5億8600万円を減額した。 この影響で、市は御前崎総合病院の空調施設改修などに充てる予定だった7700万円を取りやめた。さらに消防車2台(約1500万円)の購入を先送りし、小中学校のパソコン更新費2600万円も削った。
石原茂雄市長は本会議で、「市の経済などに多くの問題が発生した。国に支援を要望しており、大幅な減額補正予算案を理解して欲しい」と説明。閉会後には「教育や子育て、福祉の予算は減らしたくなかったがやむを得ない。原発交付金に頼らない、自立した街づくりを目指すいいきっかけになる」と語った。同議会は14、15日に一般質問があり、24日に議案採決の予定。
・大震災、M5以上余震500回 史上最多の更新続く
東日本大震災のマグニチュード(M)5以上の余震回数が、本震から3カ月足らずの2日午前8時までに500回に達したことが、気象庁の観測で分かった。誘発されたとみられる内陸の地震は、この中に含まれていない。
これまで国内の地震で最多だった1994年の北海道東方沖地震(M8・2)の本震から80日で126回を大幅に上回り、観測史上最多記録の更新を続けている。 同庁によると、M6以上が81回、M7以上は5回。本震発生当日の3月11日だけでM5以上が158回に達し、5月以降は1日当たり0~4回となっている。(共同)