2011年6月7日火曜日

Think Fukushima, Act Local

Think Fukushima, Act Local

 国は最初から、被災者と被害者の救済よりも、東電をどうすれば救済できるかを考えてきた。東電を救済しなければ、地域独占の電力会社総体の基盤が崩壊しかねないからである。
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定検中の原発、経産相が地元説明へ 7月稼働へ環境整備
 海江田万里経済産業相は7日の記者会見で、定期検査中の原発の7月再稼働へ向け、立地自治体に直接説明する考えを明らかにした。海江田経産相は「電力需要のピークは7月。そのことは私の頭の中に入っている。私が直接赴いて考えを伝え、地元の意見も聞いて再稼働できる環境づくりをしたい」と述べた。
東電の法的整理を強く否定…枝野長官
 枝野官房長官は6日午後の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所の賠償問題について、「政府が発表した枠組みのもとで東電が賠償責任を果たし、原発(事故の)の収束に向けた努力を進めてもらいたい」と強調した。東電の賠償を支援するため「原発賠償機構(仮称)」を設立する法案の国会への提出時期については、「鋭意作業している。出来るだけ早く成立させるよう進めたい」と述べた。
 また、東電に会社更生法などの法的整理を適用する可能性については、「大変な問題が生じることを政府は一貫して危惧している」と強く否定した。枝野氏は、福島第一原発の事故処理に携わる事業者や取引先の中小企業などは東電から債権を回収する優先権を持たないため、会社更生法などを活用した場合、東電からの支払いが滞ったり、カットされたりする可能性も指摘した。(読売)
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 ここで枝野氏が言っていることは、すべて「現行法に基づけば」という条件付のことだ。「レベル7」の「原子力緊急事態」を招いた国と東電の責任を、国がどう捉えるかによって、法の運用の在りかたは、法改正をも含めて、いくらでも変わりうるし可能になる。問題の根源にあるのは、菅内閣の意思という形で表現される〈国家意思〉の在り様である。それを決めているのは誰か? そこをよく考えて欲しい。
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 しかし、三つの原子炉がメルトダウンするという「レベル7」級の原発災害において、国が電力会社を救済するのは、災害の共同責任主体としての〈国〉(統治機構)の責任を曖昧にし、自らを救済しようとすることに他ならない。
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福島原発事故調査委が初会合 年内に中間報告
 東京電力福島第一原子力発電所の事故原因の解明のために菅政権が設置した「事故調査・検証委員会」(委員長・畑村洋太郎東大名誉教授)の初会合が7日、東京都内で開かれた。年内に中間報告をまとめ、事故収束後の来年夏にも最終報告を出す方針だ。 菅直人首相は冒頭、「従来の原子力行政から独立して公開のもとで調査し、原子力村といわれる閉鎖的なグループや法制度など、包括的に検討して欲しい」とあいさつ。畑村委員長は「原子力は危険なものだ。安全なものと扱われてきたことが間違いだった」としたうえで、「責任追及は目的としない」などの基本方針を示した。今月中にも現地視察をするという。
 委員会には「社会システム」「事故原因」「被害拡大防止対策」「法規制のあり方」の4チームを設置。法規制チームでは、原子力を推進する経済産業省から原子力安全・保安院を分離することや、原子力安全委員会との統合なども議論する見通しだ。
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 この委員会には個人的に面識のある人もいるので、しっかり「調査」してもらいたいとは思っている。が、「責任追及=責任の所在の究明」をしない「事故」の調査など、あるのだろうか? 「原子力村といわれる閉鎖的なグループや法制度」に「事故」の原因があるなら、当然「グループ」の責任や「法制度」をつくった連中の責任が問われねばならないはずだ。委員会が「事故」の「責任の所在」を明確にする責任を負わずして、いったい誰が負うというのか。要するに、来年夏まで(!)に最終報告書をまとめるという、法的権限のない委員会による法的拘束力を持たない「報告書」の存在理由と意義そのものが問われているのである。
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 一方、自治体は「原発は国策」「国を信じてきたのに・・・」と、この期に及んでも、何から何まで全て国の責任にし、自らの行政責任を曖昧にする。具体的には、知事・道府県庁官僚機構・議会、そして市町村レベルの首長・官僚機構・議会が、すべてそれぞれのレベルでの責任を国に「丸投げ」してしまうのである。(⇒「脱原発の〈思想〉と〈科学〉が試される時(1)」にある記事を通観すれば、「問題の所在」をほぼ網羅的に理解することができるだろう)

 こうしたこの国の「かたち」によって、国策や国家プロジェクトが引き起こす「事故」や災害の犠牲者・被害者の救済問題が曖昧にされ、おざなりにされる。これまでもそうであったし、このままでは、これからも変わらない。今起こっている「事態」から、一個人/一市民/一納税者として何を学習するか、というより、少しはこの国の「かたち」の無責任体系を学習し、どうにかするということを考えなければならないと思うのだ。 私が学生だったはるか昔から、この国の無責任体系は何も変わっていない。今変えることを考えなければ、今後半世紀程度、この無責任体系がそのまま続くことになるだろう。

 「万が一」が再び起こったときに、その犠牲になるのはいったい誰か? このことを常に念頭に置きながら、「ポスト菅」に向けた政治のドタバタ劇を観る必要がある。無責任なこの国のシステムが、政治家にせよ官僚にせよ、政党にせよ国の機関にせよ、固有名を持つ誰一人さえ具体的で法的な責任を取らぬことによっていっそう無責任なものにされてゆく、その様をしっかり見届け、少しは学習することを覚えよう。過去の過ちを洞察し、「敗北」の根拠を省察しながら。
 そう思います。ホントに。

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 ⇒ドイツの脱原発デモ。「原発を直ちに停止せよ! もう、たくさんだ!」

〈Think Fukushima, Act Local〉 

「地方公共団体」の意思と市民の意思

 国にとって、自治体とは「団体」に過ぎない。自治体の「自治」は名ばかりで、自らのことを自ら「治める」法的権限を自治体は〈保障〉されていない。その権原、法源がない。だから、前に書いた「地方自治」から地方の「主権」概念を言葉もろとも抹消しようとする民主・自民の合意は、国策を「国家主権」の名において強行する国に対する自治体の「主権」を法的に抑圧し、否定する政治的狙いがあるということを、ここでもう一度押さえておきたいと思う。「地方主権」の骨抜きは、実際に今後の原発推進路線への軌道修正過程、その他「国策」の決定過程において、そのような役割をはたすことになる。

 この国の統治制度の下では、国家との関係において私たち「市民」は、「団体に所属する団員」程度の、あるのかないのかも分からない「権利」しか保障されていない。このことは、停止中原発の再稼働をすでに国が方針決定し、その国の決定に基づき自治体が再稼働を認めた場合に、それを認めない私たちが一市民として具体的に何ができるかを考えてみれば、誰にだって理解できることだろう。再稼働をストップできなければ、建設中断中の原発も建設再開されてしまう。最悪のパターンである。
 では、どうすればよいのか? 自治体の方針決定のプロセスに介入するしかない。 あらゆる手段を尽くして介入するしかない。 「ローカルに行動する」とは「地元で行動する」という地理的な行動の場所性を意味しているのではない。私たちは「地元」を離れても、「地元」の方針決定にローカルに介入することができるし、することを余儀なくされている。専門家/研究者にしろ、私のようなただの素人にせよ。

原発の「安全基準」と市民の「安心基準」
 国と電力会社は、3月の「緊急安全対策」に基づき、それをクリアしたと言って再稼働に乗り出そうとする。「3・11」事態を前提した「安全基準」では、二度と再稼働・建設再開ができないからである。
⇒「原発の「安全基準」と市民の「安心基準」」につづく

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原発事故報告書 この内容では納得できない6/8 福井新聞
 東京電力福島第1原発事故で政府の原子力災害対策本部は、国際原子力機関(IAEA)に提出する事故報告書をまとめ、発表。1~3号機の一部で原子炉圧力容器の底に開いた穴から核燃料が格納容器に落下して堆積する「メルトスルー(溶融貫通)」が起きている可能性を指摘した。メルトダウン(炉心溶融)より深刻な事態である。報告書は事故状況や対応、放射性物質の放出、教訓などを明記し、「原子力のあり方に国民的な議論が必要」とした。
 国際的評価尺度で最悪「レベル7」の重大事故である。他の原発への安全対策も示しているが、まだ収束にほど遠い状況の中で、立地自治体が停止中の原発再稼働に「問題なし」と言えるだけの根拠は希薄である。不安解消へ丁寧な説明が必要だ。 本県などは暫定的な安全基準を示すよう何度も国に要求してきた。これに対し海江田万里経産相は「緊急安全対策は既に示した通り。事故の教訓を踏まえた安全対策は今後も適切に取る」と説明。紋切り型の対応に、本県は「安全対策が不十分」として反発してきた。 今回の報告書では、空冷式ディーゼル発電機など多様な非常用電源の確保や使用済み燃料プールの確実な冷却機能の確保、耐震性の強化などを明記した。 さらに過酷事故を防ぐアクシデントマネジメント対策を、従来の「自主保安」から「法規制上の要求にする」と一歩踏み出している。複数炉の連鎖事故につながった反省から、炉ごとの独立性も確実にするとした。多くの既存原発に共通する根本的な課題と解決策に触れ、安全規制行政の体制強化や法体系の整備、安全文化の徹底なども打ち出していることで、県は一定の理解を示したようだ。

 しかし、これまでの原子力行政の怠慢が引き起こしたともいえる今回の事故である。一連の安全対策は既に構築されていなければならなかった。県が厳しく求めてきた地震の炉への影響や高経年化の影響はまだ不明だ。中部電力浜岡原発だけがなぜ危険で、他は安全なのかも答えようとしていない。 報告書でも地震の影響について詳細調査が必要と認めた。津波対策も一律9・5メートルのかさ上げで済まそうとする非科学的対応は理解できない。また防災対策の強化も掲げているが、肝心の住民避難をどうするのか、具体的な防災指針の改善策を示しておらず県民が納得できる段階にはない。 この日は、政府が設置した「事故調査・検証委員会」が初会合、原因究明に乗り出した。軌を一にして、海江田経産相が会見で7月までに停止中原発の再稼働を目指す考えを示した。ここでひと区切り付け、夏場の電力不足解消に躍起となる政府の焦りがありありである。
 事故調は、聖域を設けず、対応が後手に回った東電や官邸の初動のまずさ、原子力安全・保安院、原子力安全委員会の規制機関が緊急時対応できなかった経緯と問題点も検証すべきだ。こうした専門家集団が形成してきた「原子力ムラ」の実態が白日の下にさらされなければ、事故の本質に迫れないだろう。

玄海原発 玄海町長月内にも再開同意へ 佐賀知事の判断焦点
 九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開問題で、同町の岸本英雄町長は7日、安全対策の強化などを条件に、運転再開に同意する意向を明らかにした。時期については「6月中、遅くとも7月初めまで」としている。東日本大震災後、点検で停止中の原発の運転再開に立地自治体が同意するのは全国で初めて。 九電は安全協定を結んでいる同町と佐賀県の同意を運転再開の条件としており、今後は古川康知事の対応に焦点が移る
 岸本町長は、九電がテロ攻撃や集中豪雨対策の強化、地元住民の理解を得るように努力することなどを条件に口頭で同意を伝える。理由として「全町議の意見が既に表明されており、判断を先延ばしにすることで町民に不安を与えたくない。九州全体の夏場の電力需要期も近づいている」と説明。多くの町民から運転再開を望む声が届いていることも明らかにした。 経済産業省原子力安全・保安院は9日、古川知事にあらためて玄海原発の安全性を説明。県議会は7月1日、原子力安全対策等特別委員会を開く予定。(西日本新聞

原子力防災で九州3県の連携会議 広域避難など検討
 福島第1原発事故を受け、佐賀、福岡、長崎3県の防災担当者が意見交換する初めての「原子力防災3県連携会議」が7日、佐賀県庁で開かれた。玄海原発(東松浦郡玄海町)で事故が起きた場合の広域避難や避難経路の確保、要援護者支援、医療体制など多くの課題を挙げ、具体的な連携策について検討していくことを確認した。 福島第1原発事故ではEPZ(防災対策の重点実施地域、半径10キロ)圏外にも避難指示が出たため、玄海原発事故を想定した防災対策では、より広域の連携が必要として隣接する3県で会議を開いた。 
 玄海原発から20キロ圏内に避難指示が出た場合、3県で13万人、30キロ圏内なら28万5千人が避難対象になる。長崎県の坂谷朝男危機管理監はEPZ拡大となれば松浦市の鷹島や福島、壱岐で全島避難の可能性があると指摘。「避難する際、佐賀や福岡に入る可能性があり、計画策定時は連携したい」と述べた。 
 福岡県の山野謙総務部長は避難者の移送手段や受け入れ可能施設などについて具体化する必要性を強調し、「広域避難には情報共有、相互協力が欠かせない」と訴えた。 佐賀県の山崎忠文総合防災統括監は避難場所について県内での確保が原則とする一方、「キャパの問題で両県に依頼することもある」と協力を要請。EPZに関しては「拡大すると、社会的な混乱や風評といった副作用も起こる。科学的知見に基づき、冷静な議論が必要(???)」と述べた。 3県は今後も事務レベルで協議を続け、議論を踏まえて各県で独自のマニュアル策定を進める。(佐賀新聞

第二原発の低濃度汚染水、浄化後に海へ放出検討
 東京電力は8日、福島第二原子力発電所の原子炉建屋などの地下階にたまった低濃度汚染水約3000トンについて、浄化処理をした後、海へ放出する方針で、関係省庁や地元自治体と相談を始めたことを明らかにした。 同原発では、津波で流れ込んだ海水に、配管類のさびなどから出たとみられる放射性物質のコバルト60や、約10キロ北の福島第一原発から飛来したと考えられるセシウム137、134などが混ざった汚染水がたまっている。汚染濃度は、海への放出が認められている濃度限界の10~30倍程度。 東電は汚染水を敷地内のタンクに貯蔵しており、水質浄化装置で濃度限界未満まで除染してから海へ放出する計画だが、水産庁などが難色を示しているという。

2号機原子炉建屋の二重扉開放へ、環境影響は?
 東京電力は8日、福島第一原発の2号機原子炉建屋内の放射線濃度と湿度を下げて作業環境を改善するため、原子炉建屋とタービン建屋の接続部にある二重扉を今月後半にも開放する計画を明らかにした。 大気中に放射性物質が放出される可能性があるため、経済産業省原子力安全・保安院は東電に、具体的な作業手順と、予想される環境影響を報告するよう求めた。
 建屋内の空気の放射性物質濃度は1立方センチあたり0・16ベクレルで、湿度は99・9%。放射線は1号機で二重扉を開放した際の4・8ベクレルの20分の1程度だが、作業員が入るためには濃度をさらに一けた下げる必要があるという。
 東電によると、放射性物質を低減させるフィルターと湿度を下げる電気ヒーターを備えた空気清浄機を新たに設置し、建屋の内部で空気を循環させる形で3日間運転した後、二重扉を開放する計画。7日から機器の搬入を始め、11日には換気装置を設置する見通しだ。(読売)

「電力発生県の鹿児島は節電対象外に」 九電要請に知事
 九州電力川内原子力発電所を抱える鹿児島県の伊藤祐一郎知事は7日、九電が予定している夏場の節電要請について、原発の立地県は節電対象から外すよう求める考えを示した。 伊藤知事は同日、山口県下関市で九州地域戦略会議に出席後、報道陣に「電力発生県だから、うちの電力は絶対カットするなと言いたい」と主張。「一生懸命鹿児島で電力つくって、他と一緒に節電かけられちゃたまらない。誰も言わないのは不思議だが、機会を見て言います」と述べた。
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 以前にも書いたが、独占的な発送電を事業内容とする電力会社が、原発を止めたからといって消費者に節電を強要するということ自体が、無茶苦茶である。あらゆる場合を想定し、必要量に応じた送電を行うのが公共的事業体としての電力会社の社会的責任であるからだ。その責任が果たせなければ、一企業として失格であり、「市場」から撤退してもらうしかない。これが基本である。
 しかし一方で、国と電力会社が「停電の可能性」を文句(恫喝)に、停止中原発の稼働再開を正当化しようとしていることに対し、強要されるのではない自発的な節電やその他の手段によって、電力生産→送電上の再稼働の根拠を無効化することも、私たちに問われている。
 一市民としては、「独占解体→自由化促進」が問題なのではない。エネルギー消費におけるエネルギー産業の支配からの自由・離脱→自律を諸個人/組織がどうやって実現するか、そういう発想にたつことが重要だと思うのである。(機会をみて追記)

首相、辞任時期は「常識的に判断したい」 閣僚懇で発言
 菅直人首相は7日の閣僚懇談会で、自らの辞任時期について「常識的に判断したい」と語った。首相は今年度第2次補正予算や特例公債法を成立させ、今夏をめどに辞任する意向を示しているが、さらなる前倒しの可能性も出てきた。枝野幸男官房長官らが記者会見で明らかにした。 首相は閣僚懇で、2日の民主党代議士会で辞任時期について「一定のめど」としたことを自ら取り上げて、「『一定のめど』というのがいろいろと取りざたされているが、自分としては常識的に判断したい。現閣僚は切れ目なく、しっかり仕事をしてもらいたい」と述べたという。 国会では復興基本法が17日にも成立する見通しだが、2次補正や特例公債法は与野党合意の見通しがつかず、政権内では月内退陣論が加速。首相もこうした状況を踏まえて辞任時期を判断すると見られる。 (朝日)⇒自分で語ったはずの「冷温停止」「事故の収束」は、「めど」の条件から除外されたようだ。