2013年4月3日水曜日

無人爆撃機(drones)廃絶と武器貿易条約(ATT)を考えるための基礎的情報

無人爆撃機(drones)廃絶と武器貿易条約を考えるための基礎的情報

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・米、三沢に無人偵察機 3月伝達  北ミサイル警戒で暫定配備へ
 「米政府が3月中旬、米軍三沢基地(青森県)に無人偵察機グローバルホークを暫定配備する方針を伝えてきたことが分かった。複数の日本政府高官が5日、明らかにした。日本国内に配備するのは初で、ミサイル発射準備を進める北朝鮮への警戒監視強化が狙い(???)。米側は、伝達してきた時点では6~9月の暫定配備としていたが、4月に入り発射準備が発覚したことで配備を前倒しする可能性もある。

 三沢に暫定配備されるグローバルホークは、グアムのアンダーセン空軍基地に常駐している3機のうちの1機。 同基地を拠点にした通常任務では、太平洋から東シナ海、南シナ海、日本海の広域を飛行。情報収集の対象は中国と北朝鮮の2本柱。中国は周辺国との摩擦を強める海洋活動や海・空軍基地の偵察、北朝鮮に関しては核・ミサイル活動の把握にあたっている。・・・」(産経
・・
 
⇒「オスプレイもグローバルホークもいらない--「排他的経済水域の脱軍事化」をめざして」(2012, 8/7)より。
「・・・。グローバルホークについては、 「防衛計画の大綱」に基づく中期防衛力整備計画(中期防、2011~15年度)において3機の導入がすでに検討されてきた。

 グローバルホークは、搭載装備を含めて1機約5千万ドル(約40億円)で、合計120億円超に上る。税金をむさぼる、非常に高い「買い物」である。司令部機能を持つ地上施設の整備にはさらに数百億円かかると言われているが、「性能とコスト」両面から国産無人機の開発よりも優位に立つとして、自公政権期に検討が始まり、民主党政権がゴーサインを出した格好である。

 日本には安保廃棄→「自主防衛」論者が多くいるはずなのだが、日本の歴代政権は、なぜいとも簡単に国産開発の断念をくり返すのか、また断念の背後には、いったいどのような「密約」が存在するのだろう。
 主要メディア、ジャーナリズムはもっとそちらに関心を向けた方がよいと思うのだが、そうならないところが原子力ムラの「闇」よりも暗い、「日米同盟ムラの闇」の暗闇の所以なのかもしれない。・・・」


4/3
武器貿易条約:国連総会で採択 通常兵器に初規制 (毎日 ニューヨーク草野和彦)
 国連総会は2日、通常兵器が虐殺などに使われることの予防を目指した武器貿易条約(ATT)の採決を行い、賛成154、反対3、棄権23の賛成多数で採択した。
 「年間50万人の命を奪う」と言われながら、核兵器や化学兵器と違い「野放し状態」(国連)だった通常兵器の国際的な取引に、世界共通の法的拘束力を持つ規制が初めて導入されることになる。条約を批准した国が50カ国に達してから90日後に発効する。
 ATTは、通常兵器の非合法市場への流出を防ぎ、戦争犯罪やテロ行為など非人道的な行為を予防するのが目的。対象範囲として、戦車や戦闘機、装甲戦闘車両や攻撃ヘリコプターなど大型兵器7種類と、自動小銃などの小型武器の計8項目を明示。武器取引の可否を判断する際の基準を設けた。

 最も厳格に規制されるのは、国連安全保障理事会決議に基づく禁輸措置違反や、大量虐殺や「人道に対する罪」、民間人の直接攻撃に使われると分かっている場合だ。輸出入だけでなく、通過、積み替え、仲介といった「あらゆる移転」が禁止となる。
 また、国際人道法や国際人権法の重大な違反、テロや国際組織犯罪に関連する協定違反につながる危険性がある場合は、輸出を許可しないことを義務化。武器の非合法市場への流出防止措置をとることも義務とされた。

 焦点の一つで、規制推進派国や国際NGOなどが強い措置を求めていた弾薬の移転は、一定の規制を受けるものの流出防止の対象外となるなど、条約の運用の際に議論となりそうな項目も多い。
 条約への正式参加には各国議会などによる批准が必要。しかし、条約導入に政府は前向きながら(?)、国内に強硬な武器規制反対派を抱える世界最大の武器輸出国・米国で、批准が実現するかどうかには不安定要素がある。
 米国が不参加となれば、ロシアや中国など他の主要武器生産国も消極的になる可能性も出てくる。また、密輸による紛争地への武器供給などを効果的に規制できるかも、今後の運用次第だが、各国の裁量に任されている部分も少なくない。

 ATTを巡る交渉は、英国や日本、オーストラリアなど7カ国が共同提案した06年の国連総会決議を受けて開始。昨年7月の国連会議は時間切れで決裂し、先月28日まで行われた再交渉会議ではイラン、北朝鮮、シリアの3カ国の反対で合意による採択に失敗。多数決で採択できる国連総会に持ち込まれた。

武器貿易条約・識者談話 
◇国際社会の歴史で画期的
 各国が個別の基準で行ってきた武器の輸出規制が、条約により初めて国際的な法の枠で秩序立てて実施されることになる。国際社会の歴史には前例がなく、画期的なものだ。
 武器輸出管理に関する国内法が未整備な国は、条約加盟に合わせ、通常兵器による人道被害や非合法市場への流出を抑制するための国内法を整備することになる。武器の輸出入管理は、それら法整備に伴い、格段に円滑に実施されることになろう(?)。法整備が不十分な開発途上国などにとっては、その進展により軍事的にも人道的にもメリットを感じることができるのではないか(?)。

 条約には問題点も幾つかある。
 一つは規制の対象となる兵器が、紛争現場で多くの人的被害をもたらしている武器と必ずしも重ならない点だ。規制される兵器はある程度、高性能のものが多いが、実際に被害を生んでいるのはそれよりも性能が劣るものが多く、条約はそこをカバーし切れていない。
 また、無人機やサイバー攻撃など、新しい攻撃手段が次々に誕生している中で、規制対象兵器の更新が難しいことも問題と指摘されている。(時事 佐藤丙午・拓殖大教授(国際関係・安全保障)) 
 ↓
 
 武器貿易条約が「前例」がない、その意味では「画期的なもの」と言えなくもないが、上に引用した前半部の「開発途上国」に関する佐藤氏の分析は、あまりに楽観的過ぎると言わざるをえない。
 これまで「開発途上国」の政府が少しでも「人道的」「メリット」を優先させていたなら、「開発途上国」における軍・武装警察による民衆弾圧・人権侵害はもっと少なかったに違いないからだ。 
 「開発途上国」を含むすべての国連加盟国は、武器貿易条約如何にかかわらず、自ら率先し「武器輸出管理に関する国内法」を整備することができるのである。この点を見誤るべきではないだろう。

参考サイト
夏木碧さん(オクスファム・ジャパン)の「武器貿易条約(ATT)関連の速報や資料の紹介用twitterアカウント」
「武器と市民社会」研究会
武器貿易条約(ATT)3月27日条約草案の分析:その1
武器貿易条約(ATT)3月27日条約草案の分析:その2
武器貿易条約(ATT)3月27日条約草案の分析:その3
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Futureproof the Arms Trade Treaty

The preamble of the United Nations Charter states that the purpose of the Organization is to “save succeeding generations from the scourge of war.” If the delegates currently negotiating the Arms Trade Treaty (ATT) at the UN building in New York want to make the treaty relevant for future generations, they must make some critical changes to the Chair’s draft distributed 20 March 2013 in order to cover the emerging class of robotic, “unmanned” and autonomous weapons. This includes drones, but also military land and sea robots, as well as related parts, components and technologies.

In this two page policy brief, Wim Zwijnenburg, Policy Advisor Security & Disarmament, IKV Pax Christi and I outline five ways to “futureproof” the ATT so that it will cover new and future developments in weapons technology. In brief, we argue the treaty needs to:
  1. Broaden the Scope (Article 2) to include all conventional weapons, not just those listed in the UN Register of Conventional Weapons and small arms and light weapons
  2. Include explicit reference in the Scope to unmanned weapons
  3. Move ammunition and munitions into the Scope
  4. Move parts, components and an explicit reference to technology into the Scope
  5. Include in Article 15 on Conferences of States Parties specific provision for review of new weapons systems and technologies that are currently not included in the draft.
Click here to read the full paper

From Political Minefields --resisting technologies of violence

【関連サイト】
International Committee for Robot Arms Control

防衛省技術研究本部
無人機研究システムの初自律飛行成功について
「 防衛省技術研究本部は、航空自衛隊と共に、本日(2009,12/15)、硫黄島航空基地において、無人機研究システムの初自律飛行を実施し、無事自動着陸に成功しました」
陸上無人機
 「危険地域における偵察や物資輸送任務の安全性を高めるため、遠隔操縦技術とレーザーセンサやステレオビジョンを用いて障害物を自律的に回避する技術を融合することで、高速な無人走行を可能とする車両の研究をしています」(2011年11月)


 ・【研究ノート】「防衛装備品の国際共同研究開発の方向性と我が国の対応――技術集約型共同研究の推進と産学官の連携のあり方を中心として――」(防衛研究所紀要 大島孝二 2010 年 3 月) 
3 国際共同研究開発の要件と我が国の取り組むべき課題
 国際共同研究開発において、特に技術集約型共同研究の推進を見据えた場合、産学官の連携が要件となる。本節では、国際共同研究開発における産学官の連携の必要性について述べるとともに、我が国の推進すべき産学官の連携のあり方について提案する。

(1)国際共同研究開発における産学官の連携の必要性
 ここでは今後の国際共同研究開発の実施において、欧米及び民生品の研究開発体制の特徴を踏まえ、国内での産学官の連携体制の構築が要件になることを述べる。

ア 国際共同研究開発システムと国内研究開発システムとの連携
 前節で述べたとおり、欧米の国際共同研究開発は各国の政府、企業、政府系・非政府系研究所及び大学が協力し、産学官の連携により機能している。したがって、欧米諸国と効果的かつ効率的な共同研究開発を実施するためには、産学官の連携体制を軸とした国内研究開発システムを構築し、各国と各組織間の横断的な連携を図っていく必要がある。

 特に、技術集約型共同研究は、共同国相互の技術の補完機能として効力を発揮することから、各国保有の技術力や研究能力を最大限に活用しなければ、パートナーとしての関係が成立せず、逆に片務的な関係は効力を損なう。
 米国では、研究から開発に至る各段階で、企業や大学を組み込んだ効率的な役割分担が行われており、基礎研究成果の防衛装備品への応用を検討する分野にも人員、予算を投入している。欧州各国も、防衛装備品の高性能化を背景に、EU主導による産学の人材交流や基礎研究における大学や研究所の有する研究能力、高付加価値な技術や研究成果の活用に積極的に取り組んでいる。

 これまで開発段階では広範な要素技術を必要としてきたが、研究段階でも学際化が進み、大学や研究所の異分野の研究交流が求められている。
 例えば、ロボット研究では、機械工学、情報工学、生物工学など多くの要素研究を必要とする。研究の学際化は、インターネットなどの情報交換システムの普及と相俟って、地理的、財政的、又は官僚主義的な障壁を乗り越えてグローバル化し、迅速かつフラットな研究グループの構成へと進化している。

 このような学際的な情報交換や研究交流を活性化させることにより、技術のブレークスルーを生むケースや技術的なリスクを大幅に低減できる可能性も期待できる。
 また、進化的スパイラル方式では、研究の安定的かつ継続的な能力向上のための取り組みが求められ、より専門性が高く、持続的な研究活動が可能な研究所や大学の活用は最適である。さらに、共同研究では、特許・ノウハウなど多くの知的財産が生じる可能性が高く、知的財産の共同国への還元や保全措置などの対応は、政府、企業、研究所・大学など各組織間で行政や研究実務の視点から管理方法を検討していく必要がある。・・・・」


「批評する工房のパレット」内の関連ページ
USA: National Days of Action to Stop Drone War
The Al-Qaida Papers - Drones and US Drone Bases in Africa
⇒「日本もこうなる? ~英空軍基地が米国の無人爆撃機(drones)の出撃拠点に
⇒「7月武器貿易条約(ATT)交渉会議・報告会 」(2012, 7/25)
⇒「続・大学を解体せよ--人間の未来を奪われないために 」(2010, 11/2)
「 国家(官僚機構)、産業(資本)、大学(知)のトライアングルの関係から言えば、資本主義体制下の大学が、官僚機構による大学行政を通じて国家戦略と産業戦略に奉仕すべく位置づけられてしまうのは必然であり、それが大学の宿命でもあるだろう。だから大学研究や教育の、ある要素/側面が国家戦略や産業戦略と一体化すること、そのことのみをもって「大学無用」論や「大学解体」論を主張しても意味がないし、虚しいだけである。

 しかし、上のトライアングルが「鉄のトライアングル」と化し、そのことに対する批判をいろんな「大学利権」に既得権、自らの職業・立場の安定と安全を考慮するあまりに、大学研究・教育者がしない/できない状況になっているとしたら、どうだろう? 

 大学(院)研究と軍産複合体の研究開発の「利益相反」は、後に述べるように、軍事に転用されるテクノロジーと産業部門の「イノベーション」に転用されるテクノロジーの境界線が「融合」しているところで派生する。
 現在の大学院の「最先端融合科学」研究が、軍事と産業の「両用技術」開発を担っている/担わされてきたところに根本的な問題があるのだ。この傾向は、いわゆる「武器輸出(禁止)三原則」の「規制緩和」⇒撤廃に向けた動きと連動し、今後さらに進展するだろう。具体例を列挙すれば、このようなことだ。
 WIRED VISIONは、米国の軍産学複合体の「最先端融合科学」研究による、さまざまな新兵器開発をスクープしてきた。今年に入ってから、しかもその中のごく一部を取りあげるだけでも、以下のようなものがある。
・ネバダ核地域を警備する自律型ロボット
・超音波で脳を制御:米軍の研究
・米軍の外骨格スーツ『HULC』
・「瞬かない目」:サッカー場大の軍用飛行船、建造中 
・ゴキブリを軍事利用:米軍の計画
・嘘を見抜く「直観」を利用するシステム:米情報機関が開発へ

 こうした「研究開発」が、・米国の「全世界即時攻撃」計画と、「核戦争の危険性」の下で行われ、実際にそれが対テロ戦争に実戦利用された場合には、
・米国無人機の空爆は戦争犯罪か:議会公聴会の議論 という国際法上の問題を生み出してきた(いる)のである。

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 断言してもよいが、産官学連携路線は、必ずや日本における軍産学複合体へと「発展」する。
 理・工・医の「融合先端科学技術」分野に先導されるかたちで、人文・社会科学系が続くのである。
 戦前の日本の(旧帝国)大学制度は、戦後の米国の軍産学複合体のミニチュア版のような日本型「軍産学複合体」の「頭脳」を担っていたのであるから、それは「発展」というより退行である。
 その退行は、かなりの速度ですでに進行しているのである。 ・・・」