2013年4月13日土曜日

オスプレイの「安全神話」? ~このまま、なし崩し的に「本土低空飛行訓練」を許してよいのか(2)

オスプレイの「安全神話」? ~このまま、なし崩し的に「本土低空飛行訓練」を許してよいのか(2)

・オスプレイ:配備後、普天間騒音15%増 返還合意から17年
【宜野湾】 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが米軍普天間飛行場に配備された昨年10月から今年3月末までの半年間、宜野湾市上大謝名地区で同飛行場から派生する航空機騒音が9344回発生し、前年同期比で14・8%(1206回)増だったことが県と宜野湾市の騒音測定で分かった。
 1996年に日米両政府が普天間飛行場の返還を合意し12日で17年の節目を迎えたが、オスプレイの配備で基地被害が増加している実態が浮き彫りとなった。

 上大謝名地区で2012年度全体の騒音発生回数は、オスプレイ配備前にCH46ヘリコプターの解体作業で配備機数が減っていたことなどから、前年を下回った。だが、オスプレイ配備後は騒音が顕著に増加している。さらに100デシベル以上の騒音をもたらすジェット機の飛来が相次いだことも、増加の要因とみられる。

 同飛行場を離着陸する米軍機による騒音を把握するため3月に騒音測定器を設置した北中城村では、飛行ルート直下に位置する同村大城や荻道で90デシベル前後の騒音を連日記録した。オスプレイが北部訓練場に向かう経路に近い沖縄市の東部地区でも、航空機騒音への市民からの苦情が08年の3件に対して、12年は29件で年々増加傾向を示すなど、同飛行場から派生する騒音被害が近隣市町村にも広がっている。

 一方、5日に日米合意した嘉手納より南の米軍施設・区域の返還計画で、普天間飛行場の返還期日が記された。政府は沖縄の基地負担軽減の成果を強調するが、米国防総省は14会計年度(13年10月〜14年9月)の予算案で同飛行場の滑走路補修費を計上した。
 返還合意から17年を経たが普天間固定化の懸念は高まり、オスプレイ配備で基地被害は増加、危険性も一層高まっている。(毎日

オスプレイ低空訓練、105市町村「説明ない」
 米軍の新型輸送機「MV22オスプレイ」の沖縄配備を巡り、NPO法人「ピースデポ」(横浜市)は9日、オスプレイの低空飛行訓練について、全国の105市町村が国から説明や資料提供を受けていなかった、とするアンケート結果を公表した。

 アンケートは昨年10月末から今年2月下旬の間、オスプレイの本土訓練ルートを中心とする27道県と199市町村に行い、21道県と153市町村が回答。オスプレイの低空飛行訓練について「国から説明や資料提供を受けたか」という質問には、105市町村が「ない」と答え、「説明を受けた」などと回答した37市町村を大幅に上回ったという。 これについて、防衛省は「米軍から得た情報は全て都道府県に連絡している。個別に問い合わせがあった市町村にも情報提供をしている」と説明している。(読売 4月9日)

名護市、オスプレイ訓練データ公表
 稲嶺進名護市長は(4月)8日の定例会見で、オスプレイの訓練が始まった昨年10月以降の飛行訓練図と、訓練実施日の航空機騒音データを公表した。稲嶺市長は「現実としては全く日米合意が守られていない。米軍の都合で訓練が行われている」と現状を訴えた。
 訓練図は職員による目視や周辺住民らへの聞き取りを基に作成。日米合意で「可能な限り避ける」とされている学校や集落上空の飛行、ヘリモードでの旋回などが確認された。

 オスプレイに限らない航空機の騒音データでは、測定している久志、豊原、辺野古、許田、幸喜の各地点で80デシベル以上の騒音を多数観測。同11月6日に辺野古コミュニティーセンターで90・9デシベル、ことし3月14日に許田コミュニティーセンターで90・1デシベルを記録した。
 また、米軍嘉手納基地より南の施設・区域の統合計画で普天間飛行場の返還条件に辺野古移設が明記されたことについて、稲嶺市長は
 「世界一危険だといわれている普天間飛行場を返還する、閉めるというのが原点。辺野古が駄目なら、そのまま居座るというのは道理に合わない」と批判。
 「危険性の除去が返還の大きな義務だった。最初に辺野古、県内移設の話はなく、後から出てきた」と指摘し、危険性除去の原点に戻るよう求めた。(沖縄タイムス)


「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「オスプレイの「安全神話」? ~このまま、なし崩し的に「本土低空飛行訓練」を許してよいのか」(3/6)

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国、県民要求を無視 県内移設へ強硬姿勢
 米軍普天間飛行場の5~7年以内の返還を掲げた日米合意から17年の節目を迎えた。
 この間、政府は県内移設反対の県民世論を一顧だにせず、普天間周辺住民の基地被害に目を伏せたまま、県内移設をごり押しする姿勢を崩していない。住民の声に耳を傾けないまま政治的な解決を図ろうとする政府の姿勢には、原点だった「普天間飛行場の早期の危険性除去」の視点が欠如している。

 普天間飛行場返還をめぐる出発点は1988年4月20日、県が普天間飛行場の全面返還を含む米軍施設・区域の返還を米国に要請したことだった。あれから25年がたち、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故など重大事故が発生したが、日本政府は事故・事件があるたびに「米側に申し入れる」と述べるにとどめ、自由に沖縄の空を飛び回る米軍機の規制すらできていない

 昨年10月の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備後は県内全域に訓練が広がり、基地被害に拍車も掛かりつつある。米軍の活動を最優先し、基地被害の改善に向き合ってこなかった政府の姿勢が、県民に過重な基地負担を「本土との差別だ」と意識させ、保革一致で県内移設反対の方向性が定まってきた。

 嘉手納より南の返還・統合計画で普天間飛行場の返還は「2022年またはその後」と明記され、少なくとも9年間は固定化されることが明らかとなった。
 同計画について仲井真弘多知事は普天間飛行場の代替施設は「県外の方が早い」として、固定化回避のためにも、遊休化している県外の別の飛行場への移設を求めている。一方の政府は辺野古移設を推進するが、沖縄への新たな基地建設が軍事的になぜ必要なのか、県民が納得のいく説明はしていない。
 政府は3月22日に辺野古移設に向けた埋め立て承認申請書を県に提出した。普天間をめぐる国と沖縄の攻防は正念場を迎えたと言える。知事の埋め立て承認の判断に注目が集まる中、政府の強硬姿勢の打開に向け、県民の声を届ける作業が今後も重要となる。(琉球新報 4/12 池田哲平)

本紙世論調査:移設反対くっきり 高いハードル
 世論調査は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設へ向けた政府の県への埋め立て申請直後に行われた。普天間飛行場の辺野古移設への反対は74・7%(賛成15%)に達し、昨年5月の世論調査と比べ約8ポイント増加。注目されるのは辺野古移設に賛成する人の中でも22・9%が、埋め立て申請した政府の姿勢を「評価しない」と回答したことだ。漁協など一部利害関係者への説得を最優先する一方で、拙速な手続きは容認層の反発も招いている。

 名護市民に限っても、辺野古移設に賛成する人は県平均をわずかに上回るものの18・8%(反対72・9%)にすぎず、地元の理解を得ているとは到底言えない状況だ。埋め立て申請の仲井真弘多知事の対応については、「拒否すべきだ」と考える人が全県で77・3%、名護市民も76・6%と、ほとんど変わらなかった。

 来年1月にも実施される名護市長選挙で、辺野古移設容認派が支持を広げるには厳しい環境だ。知事が埋め立て申請を承認する政治的な大前提は、現時点では整いそうにない。
 宮古・八重山では辺野古移設に賛成が21・6%と最も多かった。米軍基地から派生する被害を身近に感じない一方、尖閣諸島の領有権問題で自衛隊強化を求める声が高まるなど保守化が進み、米軍への理解が一定進んでいる可能性がある。

 今回の調査で特徴的なのは米軍基地の全面撤去が49・3%で、縮小の39・3%を大きく上回ったことだ。2012年5月の世論調査では縮小が49%で、全面撤去は37%だったが、1年足らずで逆転した。本土復帰後、全面返還の声よりも段階的な縮小を求める声が強くなっていたが、県民の米軍基地へ意識の潮流が、変わりつつあるようだ。
 昨年10月、普天間飛行場へのオスプレイ配備以後、住民の安全を担保するはずの飛行ルールの日米合意がいとも簡単に破られた。日米地位協定の壁に阻まれ国内法が適用されない米軍基地や後を絶たない米兵犯罪への県民の視線は、厳しさを増している。そして、それを許す日本政府へも県民の怒りが向けられている。(沖縄タイムス 4/12 政経部・知念清張)