2013年4月15日月曜日

事故が起きても責任を取らない日本の原発輸出の倫理を問う

事故が起きても責任を取らない日本の原発輸出の倫理を問う

・中東2国と原子力協定 5月首相訪問で調印
 政府は13日、日本の原発輸出を可能にする原子力協定をトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)の両国とそれぞれ締結する方針を固めた。近く閣議決定する。5月上旬の大型連休中に安倍晋三首相が両国を訪れた際、個別に調印式を行う。政府関係者が明らかにした。

 安倍政権は成長戦略の柱にインフラ輸出を据えており、首相自ら協定調印に乗り出すことで国際原子力ビジネスを推進する政権の姿勢をアピールする狙い。調印後、発効には国会の承認が必要となる。政府は秋に見込む臨時国会に承認案を提出する考え。東京電力福島第1原発事故以来、原発輸出への慎重論は根強く、野党の一部は反発しそうだ。(共同)

原発輸出:日本国内では慎重なのに……疑問残る官民推進
「・・・・。 日本は00年代半ば以後、国を挙げて原発プラント輸出を目指してきた。日本原子力産業協会によると、既に原発を運用している国では、イギリスで日立製作所が現地の原発事業会社を買収してウィルファ、オールドベリー両原発の建設を決め、フィンランドでは東芝ハンヒキビ原発建設の優先交渉権を獲得している。
 新規に原発を導入する国では、ベトナムのほか、トルコで今月初め、三菱重工業とアレバ(仏)の合弁企業が、黒海沿岸のシノップ原発の受注で同国政府と大筋合意した。
 リトアニア、ヨルダンでも受注に向けた本格的な動きがある。リトアニアでは日立が原発建設の受注を予定していたが、昨年10月の建設の是非を問う国民投票で反対が多数に上り、先行きは不透明になっている。

 新規導入国では、日本が建設だけでなく運営管理、人材育成、燃料調達の面倒も見る「パッケージ型インフラ」の原発輸出となりそうだ。価格は1基6000億円ともされ、パッケージ型輸出となるとさらに巨額の取引となるが、問題は山積している。
 原発輸出に反対するNPO法人「『環境・持続社会』研究センター」理事の田辺有輝さん(33)は、ヨルダンを例に新規導入国への原発輸出を批判する。

 「ヨルダンの予定地は砂漠同様の乾燥地帯にあり、水不足が深刻です。下水処理場の処理水を原発の冷却水に使う考えですが、地震で水が途絶えた時にどこから給水するのか。テロの多い国であることも懸念されますし、80万人都市がわずか15キロと近くにあるほか、首都アンマンからも約40キロ。どう見ても立地条件はひどい。新規導入国は途上国が多く、原発建設計画からして問題が多数ある」。
 トルコは地震の多い国で、田辺さんは「国民に原発建設に反対する声が根強い」という。・・・。

 国際環境NGO「FoE ジャパン」理事の満田夏花(みつたかんな)さん(45)は「そこまでして、なぜ原発を売り込まなければならないのでしょうか。原発輸出は国の支援がないと成立しないのではと疑わざるを得ない。また、日本でも未解決の放射性廃棄物の処分問題を、相手国がどう解決するのか見えていません」と疑問を投げかける。

 原発事故が起きた場合の日本の責任はどうなるのか。
 経済産業省原子力政策課では「建設する国が安全を確保しなくてはいけない。日本としては必要な協力はするが、事故時の賠償責任はその国の法律に基づき電力事業者が負うのが原則だ」とする。
 だが、満田さんは「事故が起きたら相手国の人々から責任を追及されるに決まっています。福島原発事故の原因究明がまだ終わっていない段階、つまり原発の安全確認が十分できずにいるのに輸出しようとしている点にも問題があります」。

 伊藤さんは途上国の内情をよく研究して事業に加わるか否かを決定すべきだと警告する。「必ずしも民主的な国家運営がなされている国ばかりではありません。相手国政府の言いなりになって事業を進めると、実はその国の人々に多大な犠牲を強いる政策に加担することがあります。それは、長い目で見ると両国関係に大きな悪影響を及ぼします」

 アベノミクスを支える3本目の矢・成長戦略で、安倍晋三首相は3月13日「最先端のインフラシステム輸出の後押しは重要な柱だ」と強調した。2月に茂木敏充経産相がサウジアラビアと原子力協力の協議で合意しており、原発輸出の促進は明らかだろう。 国内向けには慎重な顔をして、原発輸出は推進一辺倒ではとても誠実とは言えまい。
・・・

原子力学会:「発言をちゅうちょ」 歴代幹部アンケート (毎日 2013年03月27日より)
 「電力会社に遠慮があった」「異議を唱えると原子力反対派と見られる」。
 東京電力福島第1原発事故を受け、日本原子力学会は27日、歴代幹部に実施したアンケート調査の結果を公表した。原発の安全性に疑念を抱きながら発言を避けてきた専門家の意識の一端が明らかになった。
 調査は、学会の事故調査委員会が2月に実施。歴代会長ら289人を対象に、事故を防げなかった要因などを自由記述で質問し、101人から回答を得た。
 事故の直接原因では、津波の軽視や過酷事故対策の不備が挙がった。
 背景として「チェルノブイリ原発事故(86年)などから学ぶべきだったが、別世界の出来事と扱われた」「日本の原発は安全との思い込みがあった」など、自らを過信していた姿勢が浮かんだ。

 一方で、「日本の原発が外国より危険と勇気を持って直言すべきだった」
安全性への言及は自己の足元を崩すという認識(!!!)があった」と自戒し、「原子力ムラ」の論理で黙認した姿勢を問題視した意見もあった。さらに、「学会の役割は研究成果を出すことで、(安全の)実現は違うと考えていた」「反対派が指摘する問題を科学的に議論する姿勢に欠けていた」との意見も寄せられた。
 分析した佐田務・日本原子力研究開発機構主幹は「比較的自由な議論ができる学会で、発言をちゅうちょせざるを得ない雰囲気があったことは大きな反省点」と話す。【西川拓】

◇調査に寄せられた主な意見
・各事業者は考え得る対策をしていると、深く考えず思っていた
・電力会社が強い力を持っていて、意見できない雰囲気や風土であった
・事業者は(規制への対応で)疲れ果て、学会は寝た子を起こすような余計なことは言わないでほしいという雰囲気があった

・専門領域の縦割りが進み、地震や津波の規模、その頻度については当該分野の見解を見守る姿勢だった
軽水炉はほとんど完成した技術で、もはや研究対象ではないかのような雰囲気(!!)があった
・電力会社にも安全性への研究を歓迎しない雰囲気があった
・疑問があれば口にして、得心するだけの言動を常に行うべきだった
・学会の影響力は、国や電力・産業界を動かすほど大きくはない
・・・

〈続・原子力規制庁の正体〉

・東電から研究費425万円 福島事故検証チームの教授
 東京電力福島第1原発事故の原因を検証する原子力規制委員会の検討会に参加する
奈良林直(ならばやし・ただし)北海道大教授が、東電から2010年度に研究費425万円を受け取っていたと規制委が12日までに公表した。 規制委事務局の原子力規制庁は
「検討会は技術的見地から事故原因を明らかにするのが目的。奈良林教授は原子炉に詳しく、ルールに従い受け取りを公表した上で議論に参加してもらう」としている。
 
 研究費は「試験装置、スパコン使用料」の名目。他に敦賀原発を所有する日本原子力発電から10年度に寄付金45万円、原発用の燃料を製造する原子燃料工業から研究費27万円を受け取っていた。 (共同)

原発新基準「5年猶予にNO」~市民が抗議  ourplanet 04/03/2013
 原子力規制委員会が原発再稼働の前提となる「新規制基準」導入に関して、一部5年間の猶予期間を設ける方針を示したことに対し3日、市民が東京・六本木の原子力規制庁前に集まり「5年猶予は認めない!」と抗議行動を行った。
 
 原発の「新規制基準」は、東京電力福島第1原発事故を受けて、既存の規制基準では不十分であるとの教訓から、原子力規制委員会がより厳しい基準を策定し、7月の施行に向けて議論を重ねている。施行後は、既存の全ての原発に適用させ、基準に達しない原発は、電力会社が改修計画をたて、原子力規制委員会の審査を経て改修工事をし、その後さらに審査を行う再稼働の前提となるもの。基準を満たすには、数年がかかると見込まれていた。

 ところが原子力規制委員会は3月19日に、シビアアクシデント対策について、特定安全施設や恒設のポンプなど、設置に時間がかかる設備については、五年の猶予期間を設けるとの方針を示した。また、関西電力大飯原発3、4号機については、9月予定の定期検査終了までは、「新規制基準」を適用させずに運転を継続させる方針を示した。

 今回、抗議行動を呼びかけたのは、市民や原発の設計技術者などがメンバーの原子力規制を監視する市民の会。集まった人々は規制庁の前で「5年猶予は認めない!」と訴えた。
 この日世田谷からかけつけた七戸わこさんは、原子力規制委員会の委員が国会の同意を得ないまま首相権限で任命されたことに不信を抱き、発足から委員会の傍聴を続けている。
 「委員の5人がどんな仕事をするのか、傍聴してきたが、発足から6ヶ月が経ち本質があらわになってきている。猶予を認めるということは、福島の原発事故から何も学んでいないということ」と危機感を強めた。 原子力規制を監視する市民の会の阪上武さんは、「5年猶予は明らかに電力会社の都合に合わせている。再稼動を促すようなもの。原子力規制委員会は、規制当局として一線を越えようとしている」と批判した。

関連サイト
原子力規制委員会 http://www.nsr.go.jp/
原子力規制を監視する市民の会 http://kiseikanshishimin.jimdo.com


「批評する工房のパレット」内の関連ページ
原子力規制庁の正体 」(2012, 3/22)
 〈原子力科学と原発推進機関としての原子力規制庁
 原子力規制庁の正体を見破るためには、設置法の条文を分析する必要がある。はたしてこれが「3・11」以前の日本の原子力行政の問題点を抜本的に総括し、その克服を実現する機関になるかどうか。つまりは、原子力規制庁が何のために存在するのか、機関としての理念と存在理由の問題である。
 
 内閣官房に「国会提出法案」一覧がある。その1月31日付のものをみると、原子力規制庁の設置法案を含む「原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案」がある。

 これらの「法律案」をよく読むと、原子力規制庁が新たに設置されようがしまいが、現行の原子力行政の体制と何らの変わり映えもないことがわかる。なぜなら、原子力安全委員会に代わって設置される「原子力安全調査委員会」なるものに与えられている法的権限が、現在の原子力安全委員会とまったく同じだからだ。
 強調しなければならないが、原子力規制庁を判断するときの基準は、内閣、官僚機構、電力企業に対する「独立性」にあるのではない。原子力規制庁=原子力安全調査委員会がこれらに対して行使しうる法的権限にある。・・・。

 要するに、レベル7の福島「原子力緊急事態」の廃墟の中から生まれ、二度と同じ「事態」をくり返さないため、と称して設置される原子力規制庁の「原子力安全調査委員会」なるものは、現行の原子力安全委員会に政府の「事故調」を足したような組織に過ぎないのである。

 これでは、「3・11」をくり返さない既存の原発の「安全・安心」など保障できるはずがない。ただ、「一元化」の名の元に、安全・保安院と文科省の「原子力ムラ」が、何の責任も問われぬまま規制庁に引っ越すだけの話である。そんな「引っ越し」に血税を費やす必要などまったくないと言わねばならないだろう。
  私の「提言」としては、
①安全・保安院を含む経産省・文科省を筆頭とした官僚機構内の「原子力ムラ」の大体な行革を断行し、
②現原子力委員会と安全委員会に、上に述べた法的権限を与えるよう両者の設置法を改定する。
③どうしても原子力規制庁を作ると言うなら、「原子力安全調査委員会」に同等の法的権限を与える。
 この三点抜きに、レベル7のメルトダウン→メルトスルーの「事態」を必然的に招いた「戦後」の「原子力行政」の抜本的総括などありえないのである。

【参考資料】
●「原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案」
概要要綱
●「原子力安全調査委員会設置法案」(概要要綱)」