2014年3月14日金曜日

『福島と生きる』メールマガジン 第15号

『福島と生きる』メールマガジン 第15号
――息長く〈福島〉とつながり続けるために――
2014年3月13日発行(不定期刊)
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―目次―
◆ふるさとを失った人々の苦難
〜住民不在の帰還促進と賠償打ち切りをやめるべき
◆3・8福島県民集会報告
◆イベント情報
◆活動・キャンペーン情報
◆保養情報
◆ニュースクリップ

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ふるさとを失った人々の苦難
〜住民不在の帰還促進と賠償打ち切りをやめるべき

(FoE Japan)
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東日本大震災から3年たちました。しかし、原発事故はまだ続いています。  約16万人以上の人々がふるさとを失い、避難を強いられました。 さまざまな事情から、避難したくても避難できずにとどまっている方々もいます。  家族がばらばらになって暮らしている方もいます。

5万人以上もの人たちが、賠償金もなく、自らの判断での避難を強いられました。  避難先で、経済的な困難に直面されている方々も少なくありません。そればかり か、家族を守るために苦渋の決断をしたのにも関わらず、「心配しすぎ」「故郷を捨てた」というような声にさらされ、精神的にも疎外感を味わっている方もいます。

原発から20〜30km圏の「旧緊急時避難準備区域」は2011年9月30日に解除になり、賠償は2012年8月に打ち切られました。しかし、2013年9月の段階で、避難者の75%、約21,000人 の方々が帰還できずにおり、各地の仮設住宅などで、賠償金な しでの困窮した生活を強いられています。

川内村からの避難者で郡山の仮設住宅に暮らすある避難者は、「すでに賠償は打ち切られました。多くの人は帰還したいが帰還できない状況にあります。若い人たちは放射能の心配から帰還できません。地域の崩壊、教育の崩壊、医療の崩壊が進み、高齢者は村に帰っても単独で通院できないため、帰還できません」と語っています。田村市都路地区や川内村などの「避難指示解除準備区域」とされた地域の避難指示解除が、今後進むと考えられます。しかし解除後1年たてば、賠償は打ち切られてしまうのです。

今年4月の解除が決まった田村市都路地区の20km圏内。しかし、未だに多くの人たちが、さまざまな理由で「帰還できない」状況にあります。 ある住民によれば、政府主催の住民説明会で、住民がこうした状況を訴え「全員が帰還できる環境を整えてから解除すべきではないか」と訴えたのですが、なし崩し的に解除が決められてしまったとのことです。

現在の帰還の線量基準は年20ミリシーベルト(毎時3.8μSv)。避難の基準も年20ミリシーベルト。国際的に勧告されている公衆の被ばく限度年1ミリシーベル トや、放射線管理区域(年換算5.2ミリシーベルト)と比してもはるかに高い基準であり、実際には意味をなさない基準である上、住民の意識からもかけはなれ たものとなっています。

国連人権理事会の特別報告者アナンド・グローバー氏は、さまざまな調査や住民への聴き取りをもとに、原発事故後の人権状況について勧告をだしています。その中で、「公衆の被ばく限度とされている年1mSvを下回るまで、帰還を促進する べきではなく、住民への賠償や行政支援を継続すべき」と述べています。いままさに求められているのはこのことではないでしょうか?
(FoE Japan 満田夏花)

⇒「【アナンド・グローバー氏来日シンポジウム】 国連人権理事会グローバー勧告を受けて(3/20)
⇒「『福島と生きる』メールマガジン 特別号No.4-1  満田夏花さん(FoE Japan )――行政の責任を問い続け、被災者支援と脱原発の運動を広げたい」

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◆3・8「原発のない福島を!県民大集会」報告
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3月8日、「3・11」3周年を前に「原発のない福島を!県民大集会」が郡山市、福島市、いわき市の3会場で同時開催された。いわき会場の発言者4人の話のうち、印象深い点をまとめたい。


 高校生平和大使として国連欧州本部で核兵器廃絶を訴えたこともある吉田 有紗さん(浪江町出身)は、3月1日に小高工業高校を卒業したばかりだ。 3年前、中学の卒業式の直後に震災にあった。

警戒区域内にある本来の校舎では一度も学ぶことがなかった。高校の3年間は生活の不便さと未来への不安を感じながら過ごした。普通の高校生活に憧れたこともあったという。  一口に3年というが、吉田さんたちにとってその3年は、かけがえのない、 人生の一番楽しいはずの高校生活にあたっていた。

その丸々全部を言い知れ  ぬ不安の中で過ごさなければならなかった。吉田さんはもう二度とそのよう な思いをすることのないよう、大人が正しい選択をしてほしい、自分も若者としてできることをしていく、と静かに語った。

高木昌さん(楢葉町からいわき市への避難者。楢葉町応急仮設住宅自治会長 連絡会議会長)は淡々とした語り口で被災者の思いを語ったが、そこには被 災者からの信頼を完全に失った政府、東電、行政の姿が透けて見えた。  政府、政党役員、省庁の役人によるパフォーマンス的な事故現場・被災地の視察、原発事故をあたかも対岸の火事のように見る態度。被災者を愚弄した、加害者としての責任を無視した行為に憤りは募るばかりだと、高木さんは言いきる。

環境省の手抜き汚染、実際より低い値の線量しか出ないようになっている文科省モニタリング・ポスト、発する情報は信憑性に乏しく、しかも「情報の後出しに専念する」東電。高木さんは被災者への軽視、軽蔑、愚弄といった言葉を何度も口にし、「被災者からの信頼は完全に失墜している」とくり返し語った。その中で楢葉町住民の間でも帰還を諦める人が増え、先が見えない状況だという。

有機米作りをしていた安島美光さん(いわき市)は、兼業農家から本格的に専 業農家に転換した矢先に原発事故に遭った。東電に賠償請求をしたものの、事故前年に有機農業の認証を受けたばかりで有機への転換途上だったため、最初は価格の安い一般の米の値段を基準としてしか賠償してもらえなかったという。 安島さんの米の放射能はゼロベクレルだ。

それを聞いたある漫画家が「ふくしまノート」という連載漫画の第16話で安島さんの経験を取り上げたところ、読者の書き込みに、同じ圏内の公園などでセシウムが検出されているのに、ゼロベクレルといっても信じられないという反応があった。正確な情報が分からず、消費者も何を信じたらいいのか分からないために苦しんでいるのだと、安島さんは消費者の立場を思いやる。「放射能という黒い網をかけられ、もがき苦しんでいるようだ」という言葉が強く印象に残った。

石丸小四郎さん(富岡町)は双葉地方原発反対同盟や反原発情報室で長年、反原発・原発労働者支援の活動に携わってきた。事故後広範に深刻な問題がおき、被災者が追いつめられているのに、誰一人責任をとらず、再稼働・原発輸出推進、核燃料サイクル強行、原発関連予算の増大の「原発事故焼け太り」政策が進められていると指摘。

事故直後原子力委員会は、原子炉爆発が起きれば半径170km圏内で強制避難、250km圏内(東京が含まれる)で避難が必要との報告書を首相に提出していたことを、東京の人たちは忘れているのではないか、と石丸さんは問いかけた。

さらに、最近、日系南米人向けに事故処理作業員の募集広告が出されたという。 今後必要な作業員の確保が難しくなれば、戦時中、植民地だった朝鮮半島や満州などから労働者を徴用したように、被曝労働にこうした外国人が動員されること になりはしないか。そうした事態に目を光らせていかなければならないと訴えた。

県民集会の参加は3回目になるが、福島が抱えさせられている問題の深刻さは増すばかりという実感を強くもった。だからこそ、4人の発言者の話はいずれも深く胸を打つものだった。
(文責:藤岡美恵子)
⇒「「原発のない福島を!県民大集会」(3/8  いわき会場)

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◆イベント情報 (イベント情報は変更されることもあります。必ず主催者サイトでご確認下さい)
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1.福島の今を知り、私たちの未来を考える2日間
  【第4弾:3月22日-23日】希望の種まき 【第5弾:5月】どろんこ田植え
  ※二本松市・東和地区の菅野瑞穂さんコーディネートの視察・農業体験ツアー。
   有機農家訪問、農業体験、放射線測定器視察、農家に宿泊、交流。
  ※詳細・申し込みはこちら http://eco.his-j.com/volunteer/tour/TF-FUKISHIMA-005

2.講演会「原発事故で避難は可能?〜柏崎刈羽原発と防災計画〜」
  3月23日(日)14:00-16:30(東京・東京しごとセンター)
  【基調講演】原発災害で避難は可能?(上岡直見)
  【報告】柏崎刈羽原発…地元からの報告
      原子力防災計画と再稼働
  ※主催:FoE Japan、 福島老朽原発を考える会、 原子力規制を監視する市民の会
  ※詳細・申し込みはこちら http://www.foejapan.org/energy/evt/140323.html

3.「 東日本大震災国際シンポジウム――
  市民社会による災害支援活動 その使命と可能性 」

  3月25日(火)15:00-18:00
  (東京・国立オリンピック記念青少年総合センター )
  ※目的: 日本の市民社会組織が東日本大震災支援活動から得た教訓と今後の可能性を世界の未来の防災・減災につなげる。JANIC 福島事務所の竹内所長が「福島でつながり合う市民社会組織の力」と題して報告。
   ほかにパネルディスカッションなど。
  ※国際協力NGOセンター(JANIC)
  ※申し込み: ウェブ経由の場合: http://goo.gl/lsL8I8 
        メールの場合:下記イベントサイトを参照
  ※U-stream中継(予定): http://www.ustream.tv/channel/janic1
  ※詳細: イベントサイトはこちら http://www.janic.org/earthquake/news/gndr325.php

4.日・独・ベラルーシ 市民イベント
  チェルノブイリ・福島の経験とエネルギーシフト

  ※FoE Japanは2014年4月、エネルギー問題や子どもたちの支援プロジェクトに携わる、ベラルーシ、ドイツから来る市民団体メンバー12名を迎え、東京、福島での視察のコーディネートと市民向けイベントの企画運営を行います。

  国際交流企画:日独ベラルーシ ワカモノの視点
  今をみつめ、これからを語る

  【日時】 2014年4月19日(土)13:30〜16:30 
  【会場】 ドイツ文化会館OAGホール (最寄:青山一丁目)
       http://www.oag.jp/jp/kontakt/
   第一部 ベラルーシと福島で起きたこと、起きていること
   第二部 日独ベラルーシ 若者の視点  
   ゲスト:鎌仲ひとみ監督 他
  ※主催:FoE Japanほか 複数団体に共催・協力依頼予定
  ※4月16日 には福島での交流会も予定しています。
  ※詳しくは、FoE Japanのウェブサイトにて告知予定です。
   http://www.foejapan.org/energy/evt/140419.html

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◆活動・キャンペーン情報
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●シャプラニール運営交流スペース「ぶらっと」が移転します
NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会、いわき事務所は、この3月でいわきでの支援活動が丸3年となります。これまでいわき駅近くのイト ーヨーカドーで交流スペース「ぶらっと」の運営を継続してまいりましたが、 4月上旬に拠点を移すことになりました。移転先はいわき駅から徒歩7分ほど の「スカイストア」です。

「スカイストア」は地元産の野菜や食材、お惣菜、 また手作り小物なども販売しており市民から親しまれているお店です。その一角をお借りし、これまでと同じように、出身地に関係なく誰でも立ち寄れる交流スペース「ぶらっと」を継続していきます。近くにいらした際は是非お立ち寄りください(シャプラニールいわき事務所より)。

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◆保養情報
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「ほよ〜ん相談会」  ※各地の保養情報、受け入れ活動の情報など
http://hoyou.isshin.cc/

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◆ニュースクリップ
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1.「原発事故の責任を」 福島からの避難者ら 国・東電相手に提訴    東京新聞 3月11日
  http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20140311/CK2014031102000153.html

 東京電力福島第一原発事故で、福島県から埼玉県内などに避難した被災者やその遺族らが十日、東電と国を相手に慰謝料など計二億三千百万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。原告の被災者らは「原発事故を起こ した法的責任が東電と国にあることを明確にしたい」としている。 (以下略)

2.悪化する福島原発職員のメンタルヘルス
  差別・中傷の体験による惨事苦悩やPTSDが深刻化    MTPro 3月11日
  http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1403/1403030.html

 被災地で支援作業に従事する者がいなければ復旧・復興の進展は望めない。 ただし,自分自身も被災しながら,混乱した状況の中で行う支援業務は過酷である。東日本大震災の2カ月後から現在まで,福島第一,第二原発の被災地労働者である東京電力職員のメンタルヘルス支援を行っている防衛医科大学校精神 科学講座講師の重村淳氏は,「原発職員は津波や爆発事故の体験といった惨事ストレス,被災体験,悲嘆,差別・中傷の四重のストレスにさらされている。

  特に,差別・中傷の体験がメンタルヘルスを悪化させている」と,第19回日本集団災害医学会総会・学術集会(2月25〜26日,会長=東京医科歯科大学大学院 救急災害医学分野教授・大友康裕氏)で強調した。 (続きを読むには会員登録が必要です)

3.原発関連死1000人超す 避難長期化、続く被害    東京新聞 3月10日
  http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014031090070300.html
  
 東京電力福島第一原発事故に伴う避難で体調が悪化し死亡した事例などを本紙が独自に「原発関連死」と定義し、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも千四十八人に上ることが分かった。昨年三月の調査では七百八十九人で、この一年間で二百五十九人増えた。事故から三年がた っても被害は拡大し続けている。  (以下略)

4.福島 自主避難者74%戻らず   NHK 3月7日
  http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140307/k10015804881000.html

 原発事故の影響で、避難区域以外の福島県の自治体から全国に避難している自主避難者について、今後も元の地域に戻ることは難しく移住や避難先での定住を検討している人が74%に上り、中には、いったん福島に戻ったものの、再び避難しているという厳しい決断をした人もいることがNHKが行ったアン ケートで分かりました。
 原発事故の影響で、国が居住などを制限するために指定した避難区域以外の福島県の自治体から県外に避難している自主避難者は、少なくとも2万5000 人に上っています。  (中略)

  今回のアンケートで、「家計の状況」について尋ねたところ、「苦しくなっている」と回答した人が全体の65%と、3分の2を占めました。   その理由について、複数回答で尋ねたところ、「交通費」が75%と最も多く、 次いで「蓄えの変化」が62%、「収入の変化」が55%などとなっています。 その一方で、原発事故の前に暮らしていた地域に「戻りたい」と回答した人は15%だったのに対し、「戻りたくない」、「戻りたいが戻れない」が合わせ て85%に上りました。  (以下略)


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『福島と生きる』メールマガジン 第15号 (2014年3月13日発行)
※『福島と生きる』メールマガジンは、『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』の共同執筆者の団体や活動の関連情報を発信していきます。
発行人=中野憲志・藤岡美恵子  (『福島と生きる--国際NGOと市民運動の新たな挑戦』共編者)


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・再稼働反対で立地議員団結 13道県136人、連合結成
 全国の原発立地自治体で原発の再稼働に反対する百人超の地方議員が「原発立地自治体住民連合」を組織した。今月下旬には、政府に再稼働を目指す原発の安全性を問いただす公開質問状を提出する方針。二十四日に都内で記者会見し、メンバーや活動方針を発表する。
 これまでに十三道県の百三十六人が参加を表明。質問状では「原発の大事故で被害者となるのは、立地自治体の住民」と強調。「事故は百パーセント起こらないと保証するのか。保証できないまま再稼働するのか」と政府を追及する。

 使用済み核燃料や、再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないのに再稼働を認める理由なども盛り込む方針。政府が回答しない場合には、活動に賛同する国会議員に質問主意書を提出してもらう。政府は閣議決定した答弁書を出さなければならなくなる。

 メンバーの内訳は県議十六人、市町村議百二十人。福島県いわき市議や福井県敦賀市議ら六人が共同代表に就いた。新規制基準に基づく再稼働第一号となる可能性がある九州電力川内原発のある鹿児島県からは計二十九人が加わった

 「東京に原発を!」など原発を批判する著書で知られる作家の広瀬隆氏が、質問状を取りまとめた。広瀬氏は「(マスコミでは)川内原発の再稼働に地元では反対がないなどと書かれているが、とんでもない。黙らされている地元民の怒りの声を広める」と話す。 (東京