2014年6月7日土曜日

マーシャル諸島共和国、国際法違反で核武装国を告訴

マーシャル諸島共和国、国際法違反で核武装国を告訴
APA‐Jニュースフラッシュ

 
 マーシャル諸島共和国は、アメリカ合衆国および他の8ヶ国の核兵器保有国が核軍縮交渉の義務を怠っているとして訴訟をおこした。同国は、1968年核不拡散条約(NPT)に定められた核軍縮交渉を行うことをこれら9か国が怠っているのは「あきらかな国際法侵犯」であると訴えている。

 この訴訟はノーベル賞を受賞した南アフリカのデズモンド・ツツ司教の支援を受けていると、核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation=NAPF)は発表している。NAPFの声明は、「これらの核兵器保有国が重要な約束を果たさず、法を尊重しないことで、世界はますます危険な場所になっている」とのツツ司教の言葉を引用し、ツツ司教がさらにこう語ったと、伝えている。
  「これらの国の指導者が、なぜ約束を破り続け、自国の市民と世界に、身の毛もよだつ惨害のリスクを負わせているのか、と問わねばならない。それは、私達の時代の最も根本的な道徳と法の問題の一つである」。

 核時代平和財団は、合衆国に本部を置く無党派の権利擁護団体で、マーシャル諸島共和国と連携し、同国に無償で法律面でのサービスを提供している団体である。
 1940年代および50年代、マーシャル諸島は、アメリカ合衆国の大規模な核実験場とされ。第二次世界大戦後およそ70発の核爆弾がここで実験された。
 マーシャル諸島共和国は、アメリカ合衆国を相手どった訴状をサンフランシスコの連邦地裁に、その他の九通の訴状はハーグにある国際司法裁判所に提出した。

 31の環礁からなるマーシャル諸島は1944年連合軍に占領され、1947年にアメリカ合衆国の管理下に置かれた。1946年から1958年まで、アメリカは水素爆弾と原子爆弾の実験をここで繰り返し行った。1954年3月1日の実験はブラボーというコード名で呼ばれる最大の水爆実験であった。それは、ビキニ環礁における15メガトンの水爆実験であったが、その爆発の熱い火の玉に続いて、3万2000メートルの高さまでキノコ雲が吹き上がり、放射性降下物が広範囲にまき散らされた。

 マーシャル諸島政府は、その爆発の威力はヒロシマ原爆の一千倍以上であったと指摘している。訴訟文によれば、NPTの第6条は関係国が「誠意をもって」核軍縮を交渉することを要求している。当初より核兵器保有国であった5か国、アメリカ合衆国、ロシア、イギリス、フランス、中国はNPT締結国であるが、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮も、慣習国際法の下、核軍縮条項の
拘束を受けている、と声明は述べている。

 合衆国に対する訴状のコピーによれば、この訴訟はマーシャル諸島─1986年マーシャル諸島共和国になった─が核実験への補償をアメリカ合衆国に求めるものではない。合衆国とマーシャル諸島の間に結ばれた協定によって、核賠償請求裁定委員会(Nuclear Claims Tribunal)が設置され、 核実験による被害者の損害を判定し、補償することになっている。しかし、この委員会に、損害を十分に補償する資金があったためしはないのである。

 合衆国への訴訟文には、アメリカ合衆国が、「判決日から一年以内に、その義務を果たすために必要なあらゆる方策をとるべきであり、その方策には、すべての意味における核軍縮を実施するための交渉を要求し、実現することも含まれるべきである」と述べている。
 「わが国の国民は、これらの兵器による破滅的かつ修復しがたい損害を受けてきた。私たちは、この地上で、わたしたち以外の誰も、二度とこのような残虐行為を経験しないように、闘うことを誓う」と訴訟文は述べている。

 訴訟文には、マーシャル諸島共和国外務大臣トニーデ・プラム氏の次のことばが引用されている。「核兵器が存在し続けていることが、そしてこの世界にそれが恐るべきリスクを突き付けていることが、私たちすべてを脅かしている」。

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出典:ラジオ・オーストラリア(2014年4月25日)
翻訳:加藤摂(APA‐J翻訳チーム)
翻訳チェック:HSナオコ 監修:APA‐Jデスクチーム
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