2014年6月15日日曜日

『終わりなき戦争に抗う ――中東・イスラーム世界の平和を考える10章』

終わりなき戦争に抗う  ――中東・イスラーム世界の平和を考える10章
(中野憲志編 新評論)



 シリア、アフガニスタン、パレスチナ…、〈中東〉の平和は、なぜこんなにも遠いのか?
 これを考えるヒントとして、私たちはかつて中東・イスラーム研究家の板垣雄三が提起した「歴史の現在」という言葉を知っている。
 それは、現在を「目まぐるしく過去に転化しつつ未来を実現することによって、過去と未来がそこに統一される場」として捉える歴史認識のことであるが(『歴史の現在と地域学』 岩波書店)、しかしこれによって照射されるべき「可能性のカード」としての未来は、今、希望という言葉からあまりにかけ離れてみえる。
 
 パレスチナの占領(1948年〜)、人道的軍事介入(1993年のソマリア以降)、対テロ戦争(2001年〜)、そして「保護する責任」に基づく武力行使(2011年リビア、コートジボアール、2013年マリ)を終わらせようとする意思が、世界のパワー・エリートからまったく読み取れないからである。私たちはそのことに無頓着すぎはしないだろうか。
 
 おそらく、希望のカードは「歴史の現在」を招来せしめた世界史の蹉跌を乗り越えんとする人間の現在的営為によってのみ手にしうるだろう。そして歴史がそのカードを引くためには、時の政権が語るような安保戦略と一体化し、軍事によって担保される「積極的平和主義」ではなく、生きるという人間の本源的営みをより豊かにし、存在の尊厳を守ることそのものであるような言葉として平和の理念を転換し、内政・外政にわたる日本の政治の行方を変えることが求められている。
 
 イスラーム世界の平和、今や人類の四分の一近くを占めるにいたったムスリムの尊厳抜きに、いかなる平和も構想できない。国際NGOや連帯運動ばかりではない。「戦後」平和運動そのものが、現在という「さらに切迫的に特異な世界史の転換点」(板垣)に立たされている。
 (編著者:中野憲志) 

【執筆者】
・中野憲志 (先住民族・第四世界研究、外交・安保政策批判、市民社会変容論)
・平山恵 (明治学院大学教員、シリア支援団体『サダーカ』メンバー)  
・レシャード・カレッド (アフガニスタン人医師、アフガニスタン支援団体『カレーズの会』理事長)  
・イヤース・サリーム (パレスチナ・ガザ生まれ、同志社大学大学院博士課程)  
・役重善洋 (パレスチナの平和を考える会、京都大学大学院博士課程) 
・臼杵陽 (日本女子大学教員、中東・イスラーム研究)
・藤岡美恵子 (法政大学非常勤講師、国際人権論・NGO論)
・リアム・マホニー (Field View Solutions所属、紛争地における民間人保護の専門家)
・長谷部貴俊 (日本国際ボランティアセンター事務局長、前アフガニスタン現地代表)
・阿部浩己 (神奈川大学教員、国際法・国際人権法)

【目次】
序章 終わりなき戦争に抗う ………中野憲志
はじめに
一 〈終わりなき戦争〉に正当性はあるか?
二 「積極的平和主義」?――湧きおこる戦争の言説
三 「戦争と平和」の言説と蘇る『知識人の裏切り』
四 歴史観の転換――いくつもの世界、いくつもの歴史

第Ⅰ部 終わりなき戦争・占領・介入に抗う

第1章「正戦」を超える「非戦」日本の貢献――シリアから考える ………平山恵
はじめに
一 「伝えられるシリア」と「現実のシリア」
二 「正戦」を支える「大量のわれわれ」
三 闇の中の小さな光
四 「非戦」の日本社会からできること
おわりに―― 国際社会を動かすために、「非戦」の日本社会ができること

第2章 平和なアフガニスタンの国づくりのために、日本に期待されていること …… レシャード・カレッド
はじめに ――日本や欧米人のイスラーム理解
一 アフガニスタンの近現代史
二 米国の報復戦争
三 カレーズの会の発足
四 国際社会と日本国政府によるアフガニスタン情勢への対応
おわりに

第3章 市民が担うイスラーム/トルコの事例 ――社会変革と民主化におけるムスリム市民社会の役割……イヤース・サリーム
はじめに
一 イスラーム市民社会の起源と慈善活動の役割
二 民主化プロセスにおけるムスリムNGOの役割――トルコの事例から
おわりに――シリア難民危機とトルコのNGO

第4章 「中東和平」の二〇年と占領経済のネオリベラル化――イスラエルにおける排外主義の深化と新しいパレスチナ連帯の可能性………役重善洋
はじめに――「中東和平」が不可視化してきた占領の現実
一 イスラエルにおける戦争・占領経済のネオリベラル化
二 イスラエル社会の右傾化と「軍事的ネオリベラリズム」の拡散
三 新しいパレスチナ連帯の可能性
おわりに

第5章 DIALOGUE 1 アラブ・イスラーム世界の「サウラ」(反乱)をどう読むか ………臼杵陽
一 メディアと現代的オリエンタリズム
二 「西側」の関与がもたらすもの
三 武装闘争とイスラーム主義をどう考えるか
四 日本の中東政策と中東研究

第Ⅱ部 国際人権と人道的介入

第6章 戦争を止めることが人権を守ること ………藤岡美恵子
はじめに
一 「人道的」戦争?
二 「対テロ戦争」――非対称な戦争、軽視される「南」
三 「人権を守るため」の武力行使
おわりに――戦争は人権を保障しない

第7章 人権危機における武力介入 ――人権運動の対応とジレンマ ………リアム・マホニー
「はじめに」に代えて(訳者)
一 非暴力か正戦か?
二 正当性の基準
三 介入がもたらす被害と長期的影響
四 軍事介入に代わる戦略

第8章「テロとの戦い」とNGO――私たちがなすべきこと ………長谷部貴俊
はじめに
一 人道主義の限界
二 私自身の中のオリエンタリズム
三 支援と文化
おわりに ――私たちのなすべきことは?

第9章 DIALOGUE2 国際人権と人道的介入――人権は武力行使を止められるか? ………阿部浩己
一 法と人権――「人権の主流化」の中のマージナル化
二 国際法の「西洋中心主義」
三 国際人権と平和――介入論を疑い、超える
四 国際人権運動の今後――ローカルな運動とつながる

編者あとがき

書籍価格(消費税込) 2835円
ISBNコード ISBN978-4-7948-0961-2
版型 四六判並製
頁数 296ページ 

 







【参考資料】
ニューズレター『NGOと社会』
〈NGOと社会〉NL9号
2011.11.20 シンポジウム「日本の「国際協力」と人道的介入」資料

〈NGOと社会〉の会・2012年連続シンポジウム
2012イスラーム連続シンポジウム報告  【〈NGOと社会〉の会・法政大学国際文化学部共催
  イスラーム社会の変革の胎動とNGO〜 「イスラーム的価値」の社会的実践から学ぶ

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・陸自と海自 760人 佐世保の街をパレード
 長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地と海上自衛隊佐世保地方隊は14日、同市中心部のアーケードを約1キロにわたってパレードし、小銃を携行した隊員ら約760人が参加した。
 パレードは「新入隊員の紹介と、自衛隊の真の姿を市民に見てもらうこと」を目的に2002年、同駐屯地の創立記念行事として始まったが、11回目の今回、初めて海自と合同で実施した。

 多くの市民が沿道から拍手を送る一方で、市民団体約150人が抗議集会を開き、パレードの横で「集団的自衛権の行使容認反対」「子供に銃を見せるな」などと抗議の声を上げ続けた。
 同市の男性会社員(58)は「子供の晴れ姿を見に来た。日本のために頑張ってほしい」。
 長崎市の主婦(45)は「駐屯地内でやればいい。わざわざ銃を持って商店街を歩く意図がわからない」と話した。【毎日 梅田啓祐】