2014年4月6日日曜日

函館市の大間原発建設中止請求訴訟

函館市の大間原発建設中止請求訴訟

 
・大間原発の建設中止求め提訴 国など相手に、函館市が自治体初 大間原発(青森県大間町)で過酷事故が起これば自治体として壊滅的な被害を受けるとして、函館市は3日、国と電源開発(東京)を相手取り、同原発の建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。
 自治体による原発差し止め訴訟は全国で初めて。

 被害が広範囲に及んだ東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発建設の同意手続きから除外されている周辺自治体が国の施策の不備を問う異例の裁判となる。
 函館市の工藤寿樹市長らが3日午後、東京地裁に訴状を提出した。

 訴えによると、大間原発は福島原発と同じ安全審査基準に基づいて設置が許可された。
 2011年3月に福島原発で過酷事故が起きたことを考えると、同基準に「重大な不備、欠陥があり、原発の安全性が確保されないことは明らかだ」と指摘。
 福島事故により、原発の被害は少なくとも函館のような30キロ圏内の自治体に及ぶことが明らかになったとし、原発建設への同意を得なければならない自治体の範囲は立地自治体だけでなく、30キロ圏に広がったと主張している。 (北海道新聞

大間原発建設差し止め、函館市きょう提訴 国相手に初
「・・・ 訴状要旨では、市は国に対して原子炉設置許可の無効確認と電源開発に建設停止を命ずることを求め、電源開発には原発の建設と運転の差し止めを求めている。
 函館と大間原発は最短23キロの距離にあり、事故が起きれば壊滅的な被害を受けると強調。
 原発から30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)内にあるため、原発建設の同意手続きを立地自治体と同様に周辺自治体も踏むべきだと訴えている。

 訴訟費用に充てようと函館市が募る寄付金は1週間ですでに500万円を突破。全国に支援の輪が広がりつつある。  工藤市長は「訴訟への決意をあらためて強く持った。函館のマチや市民を守るため強い気持ちで臨みたい」と強調した。」(北海道新聞)

・大間原発差し止め 函館市が国、事業者相手に提訴
「・・・  行政事件訴訟法が無効確認の提訴が可能と定める「法律上の利益を有する者」に、住民など個人だけでなく自治体も含まれるかどうかが争点となる。

 請求は
(1)原子炉設置許可の無効確認
(2)国からJパワーへの建設停止命令または市が同意するまでの間の建設停止命令
(3)Jパワーの建設と運転の差し止め-の3点。

 訴えによると、大間原発は市から最短で23キロの位置にあり、事故発生時は重大な被害を受け自治体機能が著しく損なわれると指摘。福島第1原発事故前の旧安全審査指針に基づく設置許可であり、新規制基準も旧指針の不備が十分に是正されず、新基準による審査に合格しても安全性は確保されないと主張している。
 福島の事故後、原発30キロ圏内の自治体に原子力防災計画の策定が義務付けられた以上、原発建設の際に同意が必要な自治体に函館市など30キロ圏内の自治体も含めるべきだと主張している。

 弁護団の河合弘之団長は「原告が自治体だというインパクトは大きい。市が議会の承認も得て提訴する意味の重さは裁判官に伝わると思う」と話した。
 提訴に対し、原子力規制委員会は「訴状が届いておらずコメントは控えたい」と説明。
 Jパワーは「函館市に情報提供や説明をしてきた中での提訴で残念だ。訴訟を通じて大間原発の意義や安全対策などを主張したい」と話している。
 大間原発はウラン燃料を使う通常の原発と異なり、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使う世界初の軽水炉。運転開始時期は決まっていない。(河北新報

IWJ Independent Web Journal  「函館市、自治体初 国を相手に原発差し止め訴訟


・原発差し止め訴訟 「住民の総意」の重み
青森県大間町に建設中の大間原発をめぐり北海道函館市は、国や電源開発(Jパワー)に原子炉設置許可の取り消しや建設中止を求め、東京地裁に提訴した。函館市は津軽海峡を挟んで、大間原発と向き合う。最短で約23キロ。地域防災計画や避難計画の策定を求められる半径30キロ圏内にあり、事故が起きれば甚大な被害を受けるとしている。

函館市はいわゆる「周辺自治体」。原発の建設や稼働を認めるか否かについて発言権はない。しかし立地自治体並みに事故のリスクは背負う。もしも東京電力福島第1原発事故のような過酷事故が起きたら、住民は避難を余儀なくされ、水産業や観光業が壊滅的な打撃を受ける恐れがある。

提訴の背景には、この理不尽さに対する不満がにじむ。政府は「大間原発は既に原子炉設置許可を受けている」とし、建設を継続する考えだ。自治体による初の原発差し止め訴訟では、函館市に訴訟を起こす資格(原告適格)があるかどうかが大きな争点になり、国やJパワー側は訴えの「門前払い」を目指すだろう。「本当に提訴に踏み切る必要があったのか」との冷めた見方もある。

だが裁判がどのように決着するかはともかく、国やJパワー側は、函館市側が事故のリスクなどについて納得のいく説明を得られなかったことから不信感を募らせ「住民の総意」として提訴に踏み切ったという事実を重く受け止めるべきだ。

国のエネルギー政策を中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」の政府案をめぐり自民、公明両党の間で修正協議が進められている。政府は原発を「重要なベースロード電源」として再びエネルギー政策の柱に据えようとしているほか、原発再稼働にも前のめりだ。福島第1原発事故の教訓を生かし、事故のリスクを正面から受け止める姿勢はうかがえない。

そんな中、函館市が声を上げた。工藤寿樹市長は2011年4月に初当選。さっそく、選挙で訴えた大間原発建設の無期限凍結を国やJパワーに要請した。しかし国の態度ははっきりせず、翌年10月にはJパワーが市への事前連絡なしに、東日本大震災で中断していた建設工事を再開した。

震災後、政府は新たな原子力災害対策指針を示し、避難計画などの策定を行う「緊急防護措置区域(UPZ)」を、それまでの原発の半径10キロから30キロに拡大。函館市はこのUPZにかかり、訴状で「原子炉の設置許可を申請した当時の安全設計審査指針や、福島第1原発事故の原因が解明されないまま策定された新基準では安全を確保できない」と訴えている。

提訴後の記者会見で工藤市長は「国は意見を聞かず危険だけ押しつけた」とし「声を上げないということは、原発で何が起きても、私たちは泣き寝入りするということだと思う」と述べた。提訴は、市議会はもちろん、水産業や観光業を中心に幅広い支持を集めた。

前例のない訴訟で、函館市の原告適格をめぐり専門家の見解は分かれる。裁判所の判断が注目されるが、それ以前に国などに肝に銘じてもらいたいことがある。それは、事業計画の事前説明や運転報告を受けられず蚊帳の外に置かれてきた周辺自治体は多数あり、その一つである函館市が住民の総意に応えようとしたとき、提訴よりほかに方法がなかったことだ。(茨城新聞 社説 4/3)

・原発事故、11県で避難試算遅れ 30キロ圏防災追いつかず
 原発事故時に住民の避難にかかる時間を試算する「避難時間予測」について、原発の半径30キロ圏に入る21道府県のうち、鹿児島県など11県で結果の取りまとめや公表が遅れていることが5日、分かった。

 11県は、原子力規制委員会の審査が先行する6原発の30キロ圏に入る福井、福岡、佐賀、長崎、鹿児島の5県のほか、青森、福島、新潟、静岡、鳥取、島根の6県。
 試算は避難計画の実効性を高めるため国主導で進めたが、今夏にも新規制基準下で初の原発再稼働が実施される可能性がある中、防災体制の整備が追いつかない実態が浮き彫りになった。
(共同)

・【函館市の提訴】 原発周辺の「声」も重い
 「・・・  全国には函館市と同じような状況に置かれてきた自治体は少なくない。原発立地自治体と同じリスクを背負わされながら、肝心な意思決定は「蚊帳の外」。これで首長は住民の命と安全に責任を持てるだろうか。

 今回の提訴で重要なポイントは、函館市のように原発から半径30キロ圏内の自治体も原発建設の同意対象とするよう求めた点だ。
 福島の事故後、政府は住民の避難計画作りを自治体に義務付ける範囲を30キロ圏まで拡大した。万が一に備えた事前対策が求められるのであれば、原発建設に自治体として意見が言えて当然だろう。  しかし、同意を求められるのは立地自治体とその都道府県で、事故前と何ら変わらない。函館市が手続き変更を求めるのももっともだ。

一方、今後の裁判で国やJパワーは函館市には提訴する資格がないと主張し、裁判所に訴えを門前払いさせる作戦に出る可能性も指摘されている。
 そうなれば函館市を含めて原発周辺自治体の住民は納得しないだろう。再稼働でも同じ問題があり、函館市や国が意見を述べ合うことが、原発の在り方を国民に問うことになる。

 異例の提訴は函館市議会が全会一致で決定し、工藤市長は「声を上げないのは原発で何が起きても泣き寝入りするということ」と取材に述べている。
  再稼働問題も絡み、提訴の行方に多くの国民が関心を持っている。原発周辺の住民の「声」を、司法がどう判断するのか注目したい。(高知新聞
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・川内原発再稼動「新たな課題なし」 規制委が地震、津波対策確認
 
 原子力規制委員会は3日、再稼働の前提となる審査を優先して進めることに決めた九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市久見崎町)で、敷地内の断層や地震、津波対策を確認するため現地調査した。
 規制委の島崎邦彦委員長代理は終了後、報道陣に対し、審査会合での九電の説明と相違点はなく、「新たな課題は見つからなかった」と述べた。
  川内原発の現地調査は昨年9月以来2回目。新規制基準適合性審査の優先審査対象となり、再稼働第1号となる可能性が高まってからは初めて。(南日本新聞

⇒2014年3月13日 「川内原発の再稼働を許さない」

・福島原発事故「深い反省」削除 エネルギー基本計画の序文
 政府が策定中のエネルギー基本計画の序文から、2月に決定した原案に記載していた東京電力福島第1原発事故への「深い反省」を削除していたことが4日、分かった。
 自民党は同日、基本計画に関係する部会の合同会議を開き、政府が示した案を事実上了承したが、出席した一部議員は削除に強く反発し、議論の継続を求めた。

 削除したのは、2月に自民、公明両党に示した計画原案の序文に当たる「はじめに」にあった「政府および原子力事業者は、いわゆる『安全神話』に陥り」や、過酷事故に対する「深い反省を一時たりとも放念してはならない」などの文言。(西日本新聞