2012年3月23日金曜日

原子力安全委員会が原発再稼働を、事実上、承認した日

原子力安全委員会が原発再稼働を、事実上、承認した日

 原子力安全委員会が今日(3月23日)、「臨時会議」を開き、定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の「ストレステスト」の1次評価について、「問題ない」とする確認結果を決定した。これによって大飯原発3、4号機の再稼働の行政的手続きは完了し、あとは野田政権の「政治判断」と「地元合意」を待つのみとなる。(「政治判断」なるものの問題性については、「原発再稼働における「政治主導」とは何か」を参照)。

 安全委が言う「確認結果」は、何とも紛らわしい表現である。委員会としては、一次評価は「福島事故を踏まえた緊急安全対策などの一定の効果が示された」に過ぎず、これによって「何らかの基準に対する合否判定を目的とするものではない」(時事通信)と言いたいらしい。
 つまり、安全委は、1次評価結果を「妥当」とした経済産業省原子力安全・保安院の審査書を委員会としてただ「確認」しただけであって、何らそれは再稼働の「安全・安心」を委員会として保障するものではないのだと。裏返して言えば、仮に野田政権が「政治判断」によって再稼働を承認したとしても、それは安全委の責任ではないのだと。

 おそらく安全委は、規制庁が発足するまで(6月以降まで?)、これと同じ論理によって、伊方原発その他の「ストレステスト」一次評価の「確認結果」を出し、再稼働に走ろうとする野田政権と立地自治体の「政治判断」にお墨付きを与えるのだろう。これが原発の「安全」を保障しない原子力安全委、そして原発の「安全」を「規制」しない原子力規制庁の本質なのだ。
 この「本質」は、これまでがそうであったように、規制庁設置関連法案を抜本的に改訂しない限り、これからも変わらないだろう。少しは、過去から学習することを覚えたいものである。

 政府の「政治判断」のための首相+3閣僚の協議については、「来週前半は難しい」とされている。
 安全委は、「2次評価の速やかな実施と、安全性向上に向けた継続的努力」を野田政権に対して「助言」している。この「助言」が政府の政策決定を法的に拘束するものでないこと、安全委の決定に法的権限が何もないこと、原子力規制庁の「原子力安全調査委員会」も同様であることが問題なのだと昨日書いた。
 で、これからどうするか? 今日、安全委の臨時会議を前に、再稼働に反対する院内集会も開かれたが、〈私たち〉は、この事実を前提に再稼働阻止を求めるこれからの「ローカルなたたかい」を、それぞれの現場で組み直す必要に迫られている。

斑目語録
 「国民の皆さんに理解していただきたいのは、規制を強めれば安全が確保されるのではないということです。現場を預かっている事業者が自主的にきちんと安全に対する取り組みをすることが重要なのです。事業者がいかに自主性を発揮して安全確保に取り組むか、ここにいかに魂を入れるかが最大のポイントだと思っています」(2007年6月)
近藤(原子力委員会委員長)語録
 「私は、この組織[原子力安全・保安院]の設置の際に、規制組織の独立に係る国際ルールに適ったものができたと評価していましたが、5年間の実績は、その判断が間違っていなかったことを示していると思っています。今後は、原子力政策大綱の示しているところに従って行政評価活動として新しい制度の妥当性の検証を行い、改良・改善に努めていただくのがよいと思います」(2006年1月)

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「関西電力大飯3・4号機ストレステスト審査書提出に抗議する緊急声明
⇒「「原子力緊急事態」: 国と自治体の責任を問う、ふたたび

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原発、防災地域30キロ圏に拡大 安全委、指針改定を了承
 原子力安全委員会(班目春樹委員長)は22日、原発事故に備えた防災対策重点地域を原発の30キロ圏に拡大し、原発に大津波が襲来した場合を想定した対策を明文化するなどした原発関連指針の改定案を了承した。
 改定案は規制組織を再編、新設する原子力規制庁に引き継ぐ予定だが、規制庁設置関連法案の国会審議が進まず、当初予定の4月1日発足は困難な情勢。指針改定がいつになるかは不透明だ。 昨年3月に発生した東京電力福島第1原発事故で、現在の指針の不備が露呈し、安全委は6月から見直し作業を進めてきた。 対象は耐震性や防災などに関する3指針。(デイリー東北)

日弁連、原子力基本法廃止を提言 政府に意見書
 日弁連は22日、原子力規制庁の設置に向けた政府の関連法案について、原発推進政策を支えてきた原子力基本法や原子力委員会の廃止などを求める意見書を野田佳彦首相らに提出した。
 意見書では、規制庁の在り方について「直接、間接を問わず他機関の影響を受けない独立機関とすべきだ」と主張。原子力基本法や原子力委員会が存続すれば、原発推進の政策が温存され、規制庁でもこれらの政策の影響を受けることにつながると指摘した。
 また、原発の寿命を原則40年とする原子炉等規制法の改正案についても触れ、「原発の危険性を考えれば長すぎるものであり、(寿命は)30年として例外は認めてはならない」と強調した。(共同)

再稼働不同意要請書が一転不採択 大飯原発で町会「議論不十分」
 福井県のおおい町会は22日の本会議で、原発対策特別委員会では全会一致で「趣旨採択」していた関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に同意しないよう求める要請書を、一転して賛成少数により不採択とした。
 要請書は大阪市の反原発団体から出され、「福島第1原発事故の知見を反映した適切な安全対策が取られるまで」との条件を付けた上、議会として同意しないことを求める内容。3月2日の特別委では、この条件は議会の考え方と同じだとして趣旨採択した。
 しかし松井榮治委員長はこの日の本会議で「要請文の内容に関する審査は尽くしたが、要請文の件名や提出団体の詳細について議論が不十分だったことは否めず、慎重に審査すべきだ」と報告。議員からは「要請書提出者は脱原発や原発ゼロを掲げて活動しており、議会の考え方やスタンスと違う」(森内正美議員)「再稼働そのものに同意しないと誤認され、町民の不要な誤解と経済不安を助長する恐れがある」(尾谷和枝議員)などと反対意見が相次いだ。
 一方で「陳情は提出団体の思想で判断すべきでなく、文面を中立的に吟味することが重要で趣旨採択とすべき」(浜上雄一議員)との意見もあった。 採決の結果、賛成5、反対8で不採択となった。
 一方で、町会の原発問題に関する「統一見解」を全会一致で決議した。統一見解は暫定的安全基準の早期提示や安全対策、原発の長期停止による影響を受ける自治体や地域経済への経済的支援などを国に求める内容で、3月6日の全員協議会でまとめていた。(福井新聞)