資格社会と専門家の資質--相馬と南相馬で考えたこと(3)
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3月になってしまった。はやい。
「3・11」が何もかも変えてしまった、そんな思いがする。
去年のクリスマスの連休、相馬と南相馬に行っていろんなことを考えた、と書いた。 その中に、「「医療」とは何だろう?」という〈問題〉がある。
非常に抽象的な話で申し訳ないが、書きかけのことにも絡めながら説明するよう心がけたい。 少し、聞いてほしい。
「イスラーム教徒の医師」の一行とまわったと書いた。
その医師が、仮設にいる人々の「話を聞きながら、診てまわった」という表現をした。
これには理由がある。県や地元の自治体であれば、大学(東大医学部であったり福島医大であったり)を通さない、また地元の医師会であれば地元の病院や診療所を通さない、外部からの「医療ボランティア」を、あまり「好まない」という背景がある。昔ながらの、「棲み分けの論理」が強力に作用しているわけである。
これは「大人の話」というか「業界の都合」というか、そういう複雑な、しかし「ボランティア」の前にたちはだかる、現実の大きな「壁」の問題である。だからその医師は、血圧を測る程度のことはしたが、一般に言うような「医療活動」はしなかった/できなかったのだ。医師は、人々の「話をききながら、診てまわった」のである。
どこの地域でも、どの業種でもこういう話はある。だから、それ自体が問題だということを言いたいのではない。ただ、わかったことの一つは、こうした諸々の制度化された「壁」が、いざ今回のような大規模な惨事、しかも「原子力緊急事態」までが併発した大災害の発生時の救援活動や、その後、必然的に長期化する支援活動において、おそろしいほど被災者や被ばく者への〈支援〉を阻害し、人々の「二次被災」「三次被災」を招いている側面がある、ということである。
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もうひとつ考えたこと。それは、医者にしろ何にしろ、「専門家」っていったい何で、どういう人のことを指すのか、ということである。
日本の大学は、医者なら医者、教師なら教師、(医療)カウンセラーならカウンセラーと、国と地方の二重の行政縦割りで、国と地方の官僚機構の「天下り」・利権・汚職の温床にもなっている「資格試験制度」を通じ、様々な階層化され序列化された「専門家」という職業・職種を輩出し、育成している。だが、そもそも「専門家」っていったい何なのか?
「話をききながら、人々を診てまわった医師」の姿をみながら、私はそんなことを考えていた。
これまで社会を社会として、かろうじて成り立たせてきた「骨組み」の骨が「スカスカ」になり、社会の末梢部から「壊疽化」が徐々に広がってゆくような、これからの時代と社会において、人間の社会と人間そのものを相手にする「専門家」に問われる「資質」「資格」とは何なのか。
「生きること、働くことが「資格」がなければ成立しない社会」、しかも「大学(院)教育を受けねばその「資格」が得られない社会」とはどういう社会なのか・・・。ポスト・リーマンショック、ポスト「3・11」の世界において。「医療崩壊」「学校/学級崩壊」が、久しく叫ばれる現代社会において。
「話を聞いてもらうこと」そのものが癒しになり、「話を聞くこと」そのものが人を「診る」ことになるとき、両者の間に「医師国家試験」という制度など、必要ないはずだ。
また、仮設の子どもたちに何かを教えるのに、教職大学院を出る必要なんて、ゼロだ。まして子どもを教える人々を「教育」するための大学院も必要ない。教師は、常に、子どもから学ぶのである。
何かが根本的に間違ったまま、「開発」され「発展」してきた社会。その社会の中で、自分と人が持っている資格、経歴、学歴に囚われ、「コンプレックス」を一生内面化しながら、借金を背負いながら大学(院)へと駆り立てられてゆく社会。それが今の社会なんだな・・・。 つくづく、そう思った。
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●「避難の権利」確立と避難者・居住者の長期的な救済に向けて」
低線量被ばくによる健康被害を巡る議論は決着を見ません。クロとの証明は十分でないが、シロであるとも言い切れない。そうしたグレーゾーンの問題に直面したとき、国家は市民の「自己決定」を尊重すべきです。
避難を選択した人には避難先での生活の保障を。
継続居住を選択した人には十分な防護と健康の保障を。
原子力発電は国策で推進されてきました。ですから被害者の生活保障、健康保障について、国家が責任をもって行うべきです。原発被災者への恒常的な対策立法(日本版チェルノブイリ法)を求める市民の声の高まりを受けて、院内集会を開催いたします。 (FoE Japan)
●「院内集会『原発事故被害者支援法(仮称)』市民提案」(岩上安身氏のブログより)
「「福島では今、在留者、避難者が引き裂かれるような空気があります。これは、個々の心の問題だけではありません」主催者団体の一つ、子どもを放射能から守る福島ネットワークの中手氏による、冒頭での発言。避難を選ぶのか、または継続居住を選ぶのか。放射線のリスクを高いと考えるのか、低いと考えるのか、または無いと考えるのか。認識や生活環境の差異で、県民の間に軋轢が生まれている状況は未だに続く・・・」
●「100万Bq,見ざる 聞かざる 調べざる御用学者と南相馬市」(南相馬市市議 大山弘一氏のブログより)
●「3.11大震災・検証」アーカイブ」(福島民報)
【補足】
①東大医学部、福島県立医大に対する被災者からの批判、たとえば「被災者をモルモットにしている」といった内容について知る人は多いと思う。私自身も直接耳にした。要するに、「検査し、データは取るが、診察をしない」ということだ。「研究」のために人間を利用している、としか当事者には感じられないという在り方。最悪のケースでは、外部と内部両方の被ばくについて被災者を「安心」させると称して、現実を過小評価する(と、どうしても被災者には映ってしまう)「医療」の在り方、である。なぜ、そうなってしまうのか?
「原子力ムラ」の一角を占める、としか思えない「専門家」だけではない。「地域医療の再生」を主張してきた人々が、被災者や患者、もっと言えば「現場」を知る一部の医療関係者からもそう思われているところがある、というところが深刻である。
②上の「院内集会」の映像は、時間のあるときにぜひ、観て頂きたい。
「福島の大学の人間」が「電力のために原発は必要でしょ?」と住民や子どもたちに、いまだに「教えている」こと、飯館村に「経産省の人間」が入って眼を光らせていること、その飯館村の「除染」の実態などが報告されている。それが「南相馬の問題」ともつながっている「可能性」があることも。 突然、泣き出した女性の話にも耳を傾けてほしい。
(福島において、文科省が検定した、あの「放射線教育」のテキストが学校現場において使用されるのは大問題である。脱原発宣言を発した福島の教育者は、この問題をめぐり、もっと学習し、議論を深めるべきではないか。)
③もうひとつだけ。それは、①や「制度化された「壁」」とも関係するが、「百年に一度の国家的危機」、東日本大震災・「原子力緊急事態」に対する支援活動において、日本の大学(研究者)が果たした/果たさなかった役割、責任の問題である。
個々の研究者レベルのことではない。検証すべきなのは、「大学の社会貢献」をモットーとしてきた日本の国公私立の大学が、大学としてまた制度として果たした/果たさなかった役割、責任である。
私は、国際NGOの周縁にコミットする者の一人として「NGOの役割・責任とは何か」を考えてきた。が、大学が制度として「果たした/果たさなかった役割、責任」はNGOのそれとは比較にならないほどの影響力を行使する。プラスの意味でもマイナスの意味でも。
実は、「原子力ムラ」どころではない、得体の知れない「大学ムラ」がこの国には存在するのではないか? そんなことを感じさせる空気、眼に見えない〈力〉がある。 「3・11」1周年を迎えようとする中、そろそろそういう「研究」が大学研究者内部から出てきてもよいのではないか。
忘却と隠ぺい、沈黙と無関心に抗う、長いたたかいが始まる。
●「原子力科学技術委員会(第3回) 議事録」(文部科学省)
・「東日本大震災、特に福島第一原発の事故を踏まえまして、現在、原子力政策を含みます全体的なエネルギー政策の方向性が検討されておりまして、特にエネルギー・環境会議におきましては、「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた検討が進められるとともに、原子力委員会におきましても「新原子力政策大綱」の策定に向けた検討が再開されまして、今後1年をめどに新大綱を取りまとめることとされております。
このような状況を踏まえまして、・・・、第4期基本計画におきましても、高速増殖炉サイクル等の原子力に関する技術の研究開発については、我が国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を見据えつつ実施し、核融合の研究開発については、エネルギー政策や原子力政策と整合性を図りつつ推進していく・・・」
・「特に、今回の事故を踏まえまして重点的に進めるべきもの、あるいは、エネルギー政策等を踏まえながらやるもの、原子力の安全確保の観点から取り組むべきもの、また、国際競争力や技術基盤の維持の観点から、継続しないと国益を損ねると考えられるもの、あるいは国際約束に基づくものや国際社会において責任を持って取り組むべきもの、また、オールジャパンとして、府省間あるいは産学官で連携して取り組むべきもの、あるいは、人材の育成という観点ですとか、活動拠点の形成・増強に向けてという観点、あるいは、課題解決に向けての分野間の連携のあり方や、また地域との連携のあり方、こういった観点について留意しながら整理をさせていただいております・・・」
・「課題領域のマル2、環境・エネルギーというところに移らさせていただきます。
まず、1つ目といたしまして、核融合研究開発を挙げさせていただいております。こちらにつきましては、現在、国際約束でございますITER計画やBA(幅広いアプローチ)活動に加えまして、国内の重要施設としまして、トカマク方式、あるいはヘリカル方式、レーザー方式並びに炉工学の推進等を図っているところでございますけれども、長期的視野に立って、引き続きこれらを着実にやっていくことが必要である旨を書いております・・・」
・「課題領域マル3といたしまして、医療・健康・介護ということで、1つ目のマルといたしまして放射線被ばく医療研究ということでございまして、放射線安全研究を挙げさせていただいております。
現在も今回の事故を踏まえていろいろな取組等も行われておりますけれども、今回の事故を通じて得られた教訓を生かしながら、安全規制の科学的合理性を高めるために利用可能な知見を蓄積することが重要である旨を書いております。
特に、小児をはじめとしました放射線感受性の定量的評価に関する研究、あるいは低線量・低線量率長期被ばくの影響解明に向けた研究等の取組が必要である旨を書いております。また、緊急被ばく医療研究といたしましては、専門的な診断と治療に関します医療技術の向上ということ、特に、このため、外傷等を伴います放射線障害に対する線量評価や基礎研究の総合的な実施の必要性をここにも書いておるとともに、その人材育成についても、重要な課題として挙げさせていただいております・・・」
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・福島第1原発:避難の特養高齢者死亡2倍 環境急変背景に
東京電力福島第1原発事故で避難した、原発周辺の特別養護老人ホームで、避難後死亡した入所者が前年同期(10年3月1日~11年1月1日)の死者の2倍近いことが福島県の調査で分かった。長時間移動による心身への負担や、受け入れ先での介護環境の急変が背景にあるとみられる。
調査は、事故後に避難指示や屋内退避指示が出された原発30キロ圏内とその周辺にある特養13施設が対象。入所者計931人の状況を調べたところ、今年1月1日までに少なくとも206人が死亡していた。10年同期の107人(総数は13施設931人)、09年同期の86人(同12施設895人)を大きく上回っている。県は「入所者の現状はすべて把握できているわけではない」としており、死者数は今後増える可能性がある。
原発の約23キロ北にある特養「福寿園」(福島県南相馬市)。原発事故後の3月15日、政府による「屋内退避指示」が出た。放射能汚染の不安から職員が相次いで避難。物流も滞り、入所者に提供する食事や薬は1週間足らずで底を突いた。「このままでは餓死者が出てしまう」。19日早朝、入所者96人全員を観光バス6台に乗せ、約10時間かけて横浜市内の老人福祉施設に運んだ。寝たきりのお年寄りは座席をぎりぎりまで倒して寝かせた。
同日夜、施設に到着したが全員に十分な介護は難しかった。再び受け入れ先を探し、多くを東京、大阪、山形など10都府県の施設に運んだ。山形県に移動した人の中には、症状に応じた介護を受けるためさらに同県内の施設に移動した人もいた。 福寿園によると、96人中26人が避難先で死亡した(2月末現在)。「例年、亡くなるのは年間14~15人だが、震災後は顕著に多い。長時間移動の負担に加え、避難先での介護が変わって体調を崩し、回復できなかった人も多くいた」と言う。
同施設は昨年末、南相馬で再開した。「遺族から『なぜ避難させたのか』と詰め寄られたこともあるが、避難させなければ餓死者が出ていたかもしれない。どうすべきだったか、今も分からない」と打ち明ける。 県によると、事故後、原発30キロ圏内にある介護福祉施設ではほとんどの入所者が避難した。特養より要介護度の低い人が入所するグループホームや養護老人ホームなど15施設でも、避難後の死者数は前年同期を上回った。
南相馬市内の介護施設での避難状況を独自に調べている東京大医科学研究所の坪倉正治医師は、死者急増と避難の関連を認めた上で「介護職員が避難し、入所者の命を守るためやむなく避難を決断した施設もあり、残るべきだったと一概には言えない。当時の避難状況を徹底的に検証して今後に生かすべきだ」と指摘する。【毎日、神保圭作】
・落ち葉に高濃度セシウム 森林土壌の測定結果公表
林野庁は1日、福島県内の森林391地点で実施した落ち葉や土壌の放射性セシウム濃度の測定結果を公表した。最も濃度が高かったのは、浪江町入北沢の1平方メートル当たり856万ベクレル。同町や双葉町など、東京電力福島第1原発から北西方向の地域で高濃度のセシウムが検出され、地面に落ちた葉や枝の方が土壌より濃度が高い傾向が見られた。
環境省によると、これまで河川など水源の調査では、セシウムはほとんど検出されていない(⇒再調査すべき)。豪雨などで落ち葉や土壌が流出した場合は汚染が拡大する恐れもあるが、通常の雨や雪解け水は地中にしみこむため、落ち葉などに付着したセシウムは流出しにくいという。(⇒そう断言できるかどうか)
林野庁は住宅地などとの境目に近い森林の除染対策は示してきたが、全体の除染は手付かずになっている。落ち葉や土壌の流出を防ぐ柵の設置や、間伐などによる除染の効果を検証しており、4月をめどに結果をまとめる方針だ。 土壌の放射性セシウム濃度では、文部科学省が昨年約2200地点で実施した調査で、最大2946万ベクレル(福島県大熊町)が検出されている。 (共同通信)
・汚染灰保管場所で千葉県が説明会 10日か11日に我孫子市議会向け
千葉県・東葛地域のごみ焼却施設から出た放射性物質を含む焼却灰の一時保管場所として、千葉県が我孫子市と印西市にまたがる手賀沼終末処理場を提案している問題で、県は2日、我孫子市議会に10日か11日に同市内の県有施設で説明会を開催したい意向を伝えた。
同市議会は条件付きで説明会に応じることを決めており、5日に臨時の議会運営委員会を開いて条件の内容を協議する。印西市議会も説明会開催を了承している。(産経)
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・国家試験の時期変更を 東大学長、秋入学で要請
秋入学への移行を検討している東大の浜田純一学長は2日、古川元久国家戦略担当相と内閣府で会談し、医師など国家試験の時期変更や、秋入学移行に伴う費用を国が負担(???)することなどを要請した。 これに対し、古川国家戦略相は「国の仕組みを産業界に先駆けて変えていく検討をしたい」と前向きな姿勢を示した。
浜田学長は会談後に記者団に、計12校の予定で秋入学を話し合う協議会について「他のやりたいところと一緒にできるかどうか、幅広く考えていった方がいい」と述べ、拡大を検討する方針を明らかにした。(共同)
●Student Debt Week of Action Feb 27 – March 2
1) Stop robbing us of our futures: Forgive student debt after five years of repayment and eliminate all interest on student loans. This would end the student debt crisis, allow millions of students to obtain a college degree, reset the housing market, pump billions of dollars back into the economy, and create jobs.
2) Pay your fair share: Stop draining government of revenue. Pay the statutorily required 35% corporate income tax instead of gaming the system through off-shore tax shelters, loopholes, and scams.
3) Get your money out of my democracy: Disclose corporate money in elections to date and pledge to keep all corporate money out of the 2012 and future elections. This includes an end to lobbying on public policy issues, such as Pell Grant and Trio Programs.
4) We need to talk. Albert Lord, will you meet with United States Student Association and Student Labor Action Project representatives on March 26th?