2013年9月9日月曜日

原子力ムラの刑事責任追及の(不)可能性

原子力ムラの刑事責任追及の(不)可能性

  福島第一原発「事故」の刑事責任をめぐり、検察当局が不起訴とする方針であることが明らかにされた。
 その理由は、「東日本大震災規模の地震や津波を現実的な危険として予測できていたとは言えず、対策を講じる義務があったとは言えない地震後の対応も含め、刑事責任を問うことはできない」というものである。 福島の訴訟団は直ちに検察審査会に申し立て、刑事責任が問えるかどうかは、今後、検察審査会の判断に委ねられることになった。
 
 東電を始めとする原子力ムラに対する刑事責任追及の可能性について、2年前の6月、「ベント「失敗」?---東電の刑事責任追及の可能性 」 (2011, 6/25)の中で次のように書いた。

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〈東電の刑事責任追及の可能性〉
 ない。現状では、ない。不可能である。
 まず、2002年11月、当時の小泉政権下の経産官僚がまとめた「東京電力原子力発電所、その他の原子力発電所におけるトラブル隠し等不祥事に関する政府答弁書」を熟読してほしい。くり返しになるが、熟読してほしい。

・「以上の調査結果を踏まえ、同年十月一日、経済産業大臣は、東京電力に対し厳重注意を行い、再発防止策を講ずるよう求めるとともに、今後、東京電力に対する定期検査の内容をより厳格なものとすること等を通告した」。

 この結果が、「3・11」→ベント「失敗」→水素爆発→メルトダウン→メルトスルーである。
 東電に対する刑事告発については、上の「原発トラブル隠し」に対する安全・保安院の調査結果を不十分とし、真相解明を求めた「原子力資料情報室」を含む団体・個人が、9年前に検討したことがある。「トラブル隠し」から派生するトラブルを隠すために、当時の保安院が情報を隠蔽していたことは明らかだったからである。
 当時、「自主検査」をめぐる29件にもおよぶ東電の不正が暴露され、炉心隔壁のひび割れ隠しなど6件の法令違反、格納容器の気密データの不正操作等々の事実、すなわち、東電を刑事告発する十分な根拠があったにもかかわらず保安院=国は「行政処分」のみで決着をつけてしまったのだ。

 今回の事態についても、東電の刑事責任を問うべしという「世論」は「3・11」直後から強くある。しかし、この国の「原子力行政」は、「シビアアクシデント(過酷事故)」を起こしたとしても、電力会社の刑事責任は追及しない/できない「システム」になっているのである。
 この「前例」を突破する/させないためには、どうすればよいか?
 そのことが「調査」を含む法的権限を「事故調査・検証委員会」に持たせるか否かにかかっていた/いるのである・・・・。
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 結局、権限を持たない政府の「事故調」は、原子力ムラの刑事責任を問わないための御用機関だった、ということになる。

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「東電不起訴を許すな!――何の津波対策もとらなかった東電免責はあり得ない

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9/11
福島地裁に2次提訴 原発訴訟原告団 2000人規模で責任追及
 東京電力福島第一原発事故による被災者が国と東電に対し慰謝料などを求めて提訴した「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団は10日、福島地裁に二次提訴した。二次提訴に加わった原告は1159人で、一次提訴と合わせて原告数は1959人となった。国と東電の責任を追及する集団訴訟では最大規模だという。
 原告側の弁護団によると、二次提訴の原告は原発事故当時、本県をはじめ宮城、茨城の両県に住んでいた90歳からゼロ歳までの被災者。原告側は国と東電に原発事故前の放射線量に戻すことや1人当たり月額5万円の慰謝料を求めている。
 提訴に先立ち、原告団は福島市内のホテルで記者会見した。南相馬市小高区の団体職員横山真由美さん(43)は「東電と国は、お互いが原発事故の責任を押し付け合っているだけ。被災者救済を進めたいと思い、原告に加わった」と語った。また、弁護団は今後、原告を募り、三次提訴を行う方針。 (福島民報
9/10
<福島第1原発事故>「原発告訴団」検察審査会に申し立てへ 
 「・・・告訴人のうち福島県の住民や避難者でつくる「福島原発告訴団」は処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てることを明らかにした。
  「福島原発告訴団」の武藤類子団長(60)らは福島市で記者会見し「不起訴処分は被害者を愚弄(ぐろう)している」と怒りをあらわにした。告訴団は福島地検に告訴・告発したものの、東京地検が一括処分したため不起訴の妥当性は東京の検察審査会が審査することになり、佐藤和良副団長は「泣き寝入りしろと言われているようなものだ」と反発した。」(毎日より)
・「今朝の「毎日新聞」記事に怒り・訂正を要求しました」(レイバーネットより)

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〈五輪招致安倍発言問題〉
・「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく今後とも及ぼすことはありません
(安倍首相の五輪招致プレゼンより)
・「まったく問題はない。汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされている」
・「汚染水の影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」。
・[近海のモニタリングの結果]、「数値は最大でも世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインの五百分の一。日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」。
・「日本のどの地域でもこの基準(食品や水の安全基準)の百分の一であり、健康問題については、これまでも今も将来もまったく問題ないことを約束する」
・「抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」(IOC委員との質疑応答より)

 「・・・だが、福島第一原発では毎日汚染水を含む大量の地下水が漏えいしている。先月には地上タンクから約三百トンの処理水が漏出。外洋につながる排水溝に沿って、処理水と同じ特徴を示す高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む水が確認され、外洋に漏れた可能性が極めて高い。
 港湾内の水についても、東電は、外洋と完全にブロックされた状態ではなく、水が行き来していると説明している。・・・」(東京新聞より)

・<安倍首相>汚染水「完全にブロック」発言、東電と食い違い
 「安倍晋三首相が五輪招致のプレゼンテーションで、福島第1原発の汚染水問題をめぐり、「完全にブロックされている」「コントロール下にある」と発言したことについて、「実態を正しく伝えていない」と疑問視する声が出ている。
 9日に開かれた東京電力の記者会見で、報道陣から首相発言を裏付けるデータを求める質問が相次いだ。担当者は「一日も早く(状況を)安定させたい」と応じた上で、政府に真意を照会したことを明らかにするなど、認識の違いを見せた。(中略)

 汚染水は壁の上を越えて港湾内に流出した。フェンス内の海水から、ベータ線を出すストロンチウムなどの放射性物質が1リットル当たり1100ベクレルトリチウムが同4700ベクレル検出された。
 東電は「フェンス外の放射性物質濃度は内側に比べ最大5分の1までに抑えられている」と説明するが、フェンス内と港湾内、外海の海水は1日に50%ずつ入れ替わっている
 また、トリチウムは水と似た性質を持つためフェンスを通過する。港湾口や沖合3キロの海水の放射性物質は検出限界値を下回っているが、専門家は「海水で薄まっているため」とみる。

  さらに、地上タンクから漏れた高濃度汚染水の一部について、東電は、海に直接つながる排水溝から港湾外に流出した可能性を否定していない。
 1日400トンの地下水が壊れた原子炉建屋に流れ込み、溶融燃料と接触して汚染水は増え続けている。「何をコントロールというかは難しいが、技術的に『完全にブロック』とは言えないのは確かだ」(経済産業省幹部)という。

  安倍首相は「食品や水からの被ばく量は、どの地域も基準(年間1ミリシーベルト)の100分の1」とも述べ、健康に問題がないと語った。厚生労働省によると、国内の流通食品などに含まれる放射性セシウムによる年間被ばく線量は最大0.009ミリシーベルト。
 だが、木村真三・独協医大准教授は「福島県二本松市でも、家庭菜園の野菜などを食べ、市民の3%がセシウムで内部被ばくしている。影響の有無は現状では判断できない」と指摘する。(毎日より)

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トリチウム濃度15倍に=タンク北6.4万ベクレル-地下水放出で遮断策・福島第1
- 東電は11日、漏れたタンクの北側に掘った観測用井戸で10日に採取した水から、放射性物質のトリチウムを1リットル当たり6万4000ベクレル検出したと発表。8日採取の4200ベクレルの約15倍に急上昇し、法律上海に流せる限度の同6万ベクレルを上回った。
- 土を分析したところ、地面の2.5~4メートル下で、最大で毎時0.09ミリシーベルトの放射線量を検出。相沢善吾副社長→「漏れた汚染水が浸透した可能性はある。地下水の流れを追跡し、必要なら(??)対策を取る」。
- 同じ井戸で9日に採取した水からは、トリチウムが同2万9000ベクレル検出。トリチウム以外のベータ線を出す放射性物質は8日採取分の3200ベクレルから低下し、9日分は1900ベクレル、10日分は2000ベクレル。(時事より)

福島第1原発:タンク北側地下水から放射性物質 東電発表
 「東京電力は9日、300トンの高濃度汚染水が漏れた福島第1原発の地上タンクの北側約20メートルに掘った井戸の地下水から、1リットル当たり3200ベクレルの放射性物質を検出したと発表した。5日にも近くの別の井戸から同650ベクレル検出されており、地下水汚染が拡大している恐れがある・・・・。」(毎日より)

・東電「高線量」発表に批判  ベータ、ガンマ線区別せず
 福島第1原発のタンク汚染水漏えい問題で、東京電力がタンクで「毎時1800ミリシーベルト」の放射線量を計測したと発表したことに批判が相次いでいる。極めて高い線量との印象を受けるが、実際には、計測した放射線は、透過力が弱く簡単に防御できるベータ線がほとんどで、強い透過力のガンマ線と区別せず合算値として発表した。専門家は「誤解を招く」と指摘、原子力規制委員会は測定の指導に乗り出した。
 「シーベルト」は放射線の人体への影響を表す単位で、値が高いほど影響も大きいとされる。
 東電は8月31日深夜、H3と呼ばれるエリアのタンクのうち、1カ所で毎時約1800ミリシーベルトを計測したと発表した。

 タンク内の水は、ガンマ線を出す放射性セシウムを取り除く処理をした後の水で、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が多く含まれている。ベータ線は飛距離が短い上に、厚さ数ミリのアルミ板などで簡単に 遮蔽 できる。皮膚や眼への影響があり管理が必要だが、人体への影響は限定的だ。
 東電は、高い線量が測れる「電離箱式サーベイメーター」という測定器を使ってタンク表面などを計測し、多くのケースでベータ線とガンマ線の合算値を発表していた。

 日本原子力研究開発機構の 大石哲也技術主幹は「国内外の人が驚いた。ベータ線とガンマ線では防護の仕方や線量限度が大きく異なる。合算は論外だ」と話す。
 合算値の発表は以前から行われ、原子力規制委員会の 田中俊一 委員長は8月21日の記者会見で「まったく別のものを一緒にしているということで、まずいのではないか」と疑問を呈していた。だが区別は徹底されず、東電は今月3日にも同じタンクの再測定で2200ミリシーベルトの合算値を原子力規制庁に報告。規制庁はガンマ線のみを追加測定するよう東電に指示した。
 田中氏は5日の定例会合で「まともなデータが出てこない。国際的に大混乱を来している」と厳しく批判。規制委は放射線の計測に専門的な知識を持つ人材を現場に派遣し、東電の指導に乗り出した。(共同)

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9/10
福島7市町村で除染延長=完了時期明示せず-環境省
- 環境省は10日、東京電力福島第1原発事故に伴い住民が避難している福島県の11市町村のうち、7市町村で国直轄の除染事業を延長すると発表。
- 見直し後の計画では完了時期の明示は先送り。同省は年内をめどに各市町村と協議して時期を決めたい方針。
- 7市町村は、南相馬市と川俣、浪江、富岡、双葉4町、飯舘、葛尾2村。いずれの自治体も汚染土の仮置き場の確保や、全国に避難している住民から作業着手の同意を得るのに時間がかかり、予定が大幅に遅れていた・・・。(時事より)

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トルコへの原発輸出と反対運動の現状
 「ことばが通じなくても、原発のない未来のために私たちは共に闘える」
   アスリハン・テューマー(緊急集会「倫理なき原発輸出を許さない」6.22大阪 より)
  http://www18.ocn.ne.jp/~nnaf/123a.htm
 ロシアが地中海沿岸のアックユに、日本が黒海沿岸のシノップに、原発を輸出しようとしています。「あれほどの原発事故を経験した日本が、この地に原発を建てようとしていることを思うと悲しくなる」 しかし、トルコには力強い反対運動があります
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ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.123 もくじ (13年8月20日発行)B5版28ページ
● トルコへの原発輸出と反対運動の現状 (アスリハン・テューマー)
● 中東への原発輸出という危機 (役重善洋)  
● ブラジルへの原発輸出を許すな (印鑰智哉)  
● 脱原発を日韓の市民運動の連帯で (川瀬俊治) 
● 原発メーカー訴訟:あなたも原告になりませんか      
● DAYS JAPN、インド・ベトナム・トルコに意見広告
● 「原発反対全インド民衆大会」                      
● 原子力エネルギーに関するインド民衆憲章2013                
● 「原発反対全インド民衆大会」への日本からの連帯アピール         
● ダン・ギンリンくんを悼む 

ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
560-0082豊中市新千里東町 2-4-D3-1106
http://www.japan.NoNukesAsiaForum.org