2011年4月9日土曜日

「放射能難民」と「放射能差別」

「放射能難民」と「放射能差別」


 放射能によってふるさとを追われた人々が、放射能によって差別される。いわゆる「原発難民」と呼ばれている人々に対する、放射能「感染」の「恐怖」に基づく社会的・個人的差別のことだ。
 地震・津波・放射能汚染の被害を受け、それから逃れようとする人々が、「福島出身」という、ただそれだけで差別され、排除される。被害者が、まるで放射能汚染の加害者であるかのように。

 原発災害のいっさいの責任と汚名を、福島の人々にきせてはならない。
 しかし問題は、福島県民や「放射能難民」に対する「放射能差別」を、「風評被害」という一言で片付けようとする動きが、福島第一原発「事故」の直後からずっとあることだ。「事態収束」が「長期化」するにつれ、この問題は法的・政治的概念が曖昧な「風評被害」という、一般的表現では捉えきれない/捉えてはならない様相を示すようになっている。

 ほとんど全て、と言って差し支えないと思うが、「風評被害」に関する報道は、「風評加害」を与える側/組織と人間の問題を論じない。 原発「事故」と放射能汚染に何の責任も負わない、負いようがない犠牲者に対する「放射能差別」(「風評被害」?)は、それ自体が人権侵害である。その自覚を、福島の「外側」に生きる〈私たち〉がしっかり持ち、それを身の回りで広めることが「放射能差別」を考え、なくす出発点になるだろう。

 「被害」と「差別」は、「加害」と「差別する主体」、組織と人間の存在抜きには語れない。 
 では、「放射能汚染」の「風評被害」の元凶はどこにあり、その責任主体は誰なのか? 「放射能差別」が人権侵害であることをしっかり認識した上で、次に問わねばならないのがこの問題である。


 私が県内外で生活する福島の人々に言えることは、「泣き寝入り」をしてはいけない/すべきではない、ということだ。 たとえば、下の新聞記事にある「他県のガソリンスタンドに『福島県民お断り』との貼り紙があった」「レストランで入店を断られた」「ホテルに宿泊できなかった」といったケースは、一般企業による深刻な社会的差別の事例である。
 これらの「ガソリンスタンド」「レストラン」「ホテル」は、明らかに国と各県から、福島県民を差別・排除しないよう、まず正式な「行政指導」を受けねばならない企業である。全国チェーンや地域チェーンの企業体である場合、その社会的責任と影響力はきわめて大きい。実名さえ公表すべきである

 その意味で、福島県の「災害対策本部会議」は、本来県が果たすべき役割、行政責任を弁えていない、と言わざるをえない。福島県庁は、県が果たすべき責任を国に押し付けたり/国に転嫁すべきでない。国に対して「正確な情報発信」を「要請」するにとどまっていることは、福島県民を「放射能差別」から守るべき県としての責任を認識していないことの現れである。県は自らの行政責任を果たしながら、国に対してもそうするよう公式に申し入れるべきなのだ。

 誰もが自然に持つ放射能汚染に対する「一般的恐怖」と、放射能汚染および感染に関する「犯罪的無知」は区別しなければならない。また公的機関や企業体、そこで働く公務員・労働者の犯罪的無知と、個人のそれも区別しなければならないだろう。そしてそのいずれに対しても差別を受けた者は、自らと家族、他者が同じ目に合わないように行動を起こすしかない/起こすべきなのである。
日弁連・被災者法的支援


 誰もが当然に持つ放射能汚染に対する「一般的恐怖」が、福島第一原発以外の原発に対しても向けられるようになってしまった。これが全国各地の原発を抱える地域への「風評被害」を拡大している。
 たとえば、西の「原発銀座」敦賀市がある福井県、また石川・富山・新潟三県などへの急激な観光の落ち込みがその一例だ。そしてこのことが、今回の原発「事故」の社会的被害をきわめて深刻なものにしている要素の一つになっている。ここでは、次の三つのことだけを指摘するにとどめておきたい。

 第一に、福島原発「事故」の「事態収束」の「長期化」と余震・地震の継続的発生という現実に照らして言えば、他原発に対する「一般的恐怖」は決して根拠のないものではないこと。
 第二に、だからこそ、稼動中の原発の一時停止が必要であること。
 第三に、その責任は、各原発を抱える市町村・道県、および国にあると同時に、各原発からの電力供給を受けている、たとえば首都圏や京阪神で生活する〈私たち〉の側にあること。

 なぜ福島県民や新潟県民は、国と東電が勝手に決めた首都圏への電力供給をまかなうために、原発災害の最大の犠牲者にならねばならないのか? それではただの「原発植民地主義」ではないか?
 これまでの原発建設をめぐるいっさいの地方・地域への「利益誘導」と地元の原発受け入れは、原発が〈絶対に事故を起こさない〉という〈ありえない神話〉によって成り立ってきた。しかし、この〈ありえない神話〉が完全に崩壊した今、首都圏、京阪神、名古屋・中京地域などの大都市圏の電力需要のあり方そのものが、「地元」サイドから厳しく問われるようになっているのである。
 〈私たち〉は、そこから目を逸らしてはならないだろう。放射能汚染の「一般的恐怖」によって、原発を抱える地方を切り捨て/見殺しにすること、「原発植民地主義」に沈黙を決め込むことは許されないのである。

 稼動中の原発の段階的一時停止を求めることは、原発大災害の再来予防上絶対に必要であるばかりでなく、この間の首都圏の経験と電力需要の実態から言っても、決して実現不可能なことではない。また、段階的一時停止さえ実現/要請せずに、「自然エネルギーへの転換」などはかれるはずもない

 大震災と福島原発大災害一ヶ月。これを機会に、放射能汚染の「一般的恐怖」に脅えてきた/いる〈私たち〉の責任とは何かを、もう一度見直すようにしたいものである。

・・・・・・・
7月
福島ナンバーの車に理不尽な風評被害
 東京電力福島第1原発事故の影響で「福島ナンバーの車は放射性物質で汚染されている」という理不尽な風評が広がっている。福島県内の中古車販売業者の団体は、風評被害で売り上げが落ち込んでいるとして東電に金銭的な補償を求める方針を固めた一方、県外に逃れたユーザーからは「周囲から冷たい目で見られる」との悲鳴が上がる。専門家は放射線への理解不足による偏見の増幅を懸念している。【毎日・西嶋正法】
◇震災後売り上げ、前年比で4割減…東電に補償請求へ
 「放射能は大丈夫なのか」。原発建屋の爆発から間もない3月半ば、福島市成川の中古車販売「福島自動車流通センター」の根本義光社長(57)は、インターネットで中古車を購入する予定だった男性から問い合わせを受けた。「問題はないと思います」と答えたが、数日後にキャンセルされた。 震災後の売り上げは前年比4割減。特にネット販売が大きなダメージを受けた。震災前は毎月ネットで3台前後売れていたが、震災後は1台も売れていない。関東や関西からの問い合わせも今は皆無。根本社長は「震災で地元の客足は鈍い。県外客も失えば、この先どうすればいいのか」と頭を抱える。
 郡山市安積町の中古車販売店でも売り上げの3割を占めてきた県外客へのネット販売が震災後はゼロに。社員は「福島ナンバーというだけで見向きもされない」と肩を落とす。
 中古車販売約100社で作る「福島県中古自動車販売商工組合」(川村秀夫理事長)の宗形義孝専務理事は「東電に金銭面での補償を求めていく。金額など詳細は詰めている最中だ」と説明。「原発事故が収束しない限り改善は望めない」と怒りをあらわにした。宗形専務理事によると、震災前は県内全体で月に推定で2000台前後売買された。しかし原発事故後は「福島」「いわき」「会津」ナンバーの中古車は同業者向けのオークションに出しても応札がなく、宮城や新潟、北関東など近隣からの引き合いもないという。

◇周りから「冷たい視線」…県外避難者「ナンバー変更したい」
 風評被害にユーザーも苦しむ。自動車の登録を行う国土交通省福島運輸支局(福島市)には、原発事故で県外へ逃れた避難者から、偏見などを理由にナンバーを変更したいという相談がこれまで20件前後寄せられている。 同支局によると、埼玉県に避難した女性は4月上旬、電話越しに「幼稚園に子供を送り迎えする時、周りの母親から冷たい目で見られた。子供がかわいそうなので早く埼玉のナンバーに変えたい」と涙声で訴えた。 東京都に避難した男性会社員は「都内を走っているとジロジロ見られ、つらい」、やはり都内に避難した事業所経営の男性は「福島ナンバーだと商売にならない」と、それぞれ変更を希望する理由を訴えた。 避難者は、避難先で車庫証明を取れば、ナンバーを変えられるが、多くは変更しないまま車の使用を続けているとみられる。
 同支局の小泉正彦・首席運輸企画専門官は「避難先の運輸支局でナンバープレートを変えられるのにうちに電話をしてきたのは、相談先が分からなかったのだろう」と話し、ユーザーが困惑していることをうかがわせる。小泉専門官は「それにしても原発の風評被害がここまで広がっていると思うといたたまれない」と嘆いた。
◇「全くナンセンス」
 放射線医学総合研究所(放医研、千葉県稲毛区)の笠井清美・放射線防護研究センター研究推進・運営室長は「爆発時に原発近くにあった車でも、きちんと除染(洗車)すれば問題ない。福島のナンバーを嫌悪するのは過剰な反応で、全くナンセンスだ」と指摘。「風評被害や偏見をなくすためにも放射線の正しい知識を広め、一人一人が理解を深める必要がある」と話す。
 放医研は、放射線の健康への影響などについての電話相談窓口を3月14日に開設。これまでに約1万1000件の相談が寄せられているという。放医研の相談電話は043・290・4003。

6月
献血拒否:放射線被ばく理由に いわき市の男性が抗議
 東京都赤十字血液センター(江東区)が、都内で献血をしようとした福島県いわき市の男性の家族から「原発事故による放射線被ばくを理由に献血を断られた」などと抗議を受けていたことが分かった。日本赤十字社側は「検診医が献血による心身への負担など健康に配慮し実施を見送ったようだ(???)。福島県民の献血を断る規定などはないが、検診医の放射能への理解が十分でなかった可能性もあり、現場教育を再度徹底する」と話している。
 日赤本社や同センターによると、男性は5月26日、東京・お台場のイベント施設の移動献血会場を訪れた。男性が「原発の近くにあるいわき市から来たので、放射線を浴びているかもしれない」と話したため、検診医は「心配ならば控えた方がいい」などと答え、採血しなかったという。 しかし、翌27日、男性の妻から同センターに「放射線で遺伝子が傷ついているかもしれないなどと言われ、献血を断られた」と抗議があったという。
 日赤は4月1日、全国の血液センターに対し、国が定める原発作業員の累積被ばく限度量などを参考に、福島第1、第2原発で累積被ばく量が100ミリシーベルトを超えた作業員については「本人の健康状態への配慮」を理由に半年間、献血を制限する方針を通知した。しかし、一般の福島県民については「通常、100ミリシーベルトを超える被ばくは考えられない」と制限していないという。 日赤側は「遺伝子が傷つくという話は一般論として説明したようだが、誤解されたのかもしれない。検診医の配慮(???)?は過剰だった可能性もあり、通知の趣旨を改めて徹底する」としている。【毎日・佐々木洋】

3月
避難区域から引っ越せない…業者の拒否相次ぐ
 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、1か月後までをめどに避難を求められている福島県の計画的避難区域で、住民が引っ越しの依頼を業者に断られるケースが相次いでいる。 引っ越し業者側は「社員の安全を考えると作業させられない」などとしており、現在、6000人以上とされる5市町村の計画的避難区域にいる住民の移動に支障が出る恐れもある。 「『避難しろ』と言われて避難できないなんて。見殺しにするんでしょうか
 村全域が計画的避難区域となった飯舘村の女性(50)が23日、大手業者の電話受付で住所を告げると、担当者に「現在、作業不可地域とされております」と言われた。食い下がっても、「やはり原発等の影響があるかと思われます」「社内的に決まっていますので」と断られた。別の大手業者にも同様に拒まれた。(読売)

福島の避難児童にいじめ 新潟の小学校 蹴られ入院
 東日本大震災で、福島県から新潟県長岡市に避難している小学6年の男子児童(11)が転入先の小学校で同級生に蹴られ、入院していることが23日、同市教育委員会への取材で分かった。学校側はいじめがあったことを認め、保護者に謝罪した。 市教委によると、男子児童は父親の実家がある長岡市に避難し、今月7日の始業式から新しい学校に通学。19日午前の休み時間、同級生の女子児童に腹を蹴られた。20日に腹部打撲と診断され、様子を見るために入院しているという。
 男子児童は15日にも「女子から悪口を言われている」と担任教諭に相談。学校側は21日、PTA総会で事実関係を説明し、同級生の児童からも話を聞いている。市教委の山田修管理指導主事は「福島県への差別的な発言はなかった。つらい思いをさせて申し訳ない」と話している。(産経)

放射線の教授「感染しない。県民差別するな」 原爆団体「政府が風評助長」4.22
 東京電力福島第1原子力発電所事故で、福島県から茨城県つくば市への転入者がスクリーニング検査受診の証明書を求められるなど、福島県外へ避難した住民が根拠のない差別的な扱いを受けるケースが続発している問題で、放射線の影響を研究している広島大原爆放射線医科学研究所(広島市)の星正治教授は「避難住民から放射能がうつる心配はありません」として、差別的扱いは許されないことだと断じた。
 放射性物質が大量に飛散した場合、被曝した人の衣服などに付着した放射性物質を周囲の人が吸い込む可能性はある。 だが、星教授は今回のケースでは「原発周囲の放射線量は下がってきている。除染作業も行われており、現時点で心配する必要はまったくない」と話す。 その上で「検査希望者にスクリーニングなどを実施する仕組み作りは、不安解消のためにも必要。ただ、それを義務づけることはやりすぎだ」と指摘する。
 また、広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長(85)は「風評の恐ろしさはわれわれが一番よく分かっている。同じことを繰り返してはならない。風評を助長しかねない政府の断片的な情報の出し方には疑問を感じる」と話す。 昭和20年8月の広島、長崎への原爆投下直後、放射線の知識は一般にはほとんど知られておらず、就職や結婚などの場面で、被爆者に対するさまざまな差別が起きていた。

福島ナンバー拒否、教室で陰口…風評被害に苦悩
 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故で、福島県から県外へ避難してきた住民らが、心ない仕打ちを受けるケースが相次いでいる。 長期にわたる避難生活を強いられている被災者が「人への風評被害」にも苦しめられる事態に、識者は「科学的に全く根拠のない風評被害だ」と冷静な対応を求めている。 「福島県から来たことを隠しますか」。福島県南相馬市の男子児童は千葉県内の小学校への転入手続きで、教師からこう聞かれた。母親は意味がよく分からずに「隠さなくていい」と答えた。男児の席は教卓の前で左右は空席になっていた。
 日本弁護士連合会によると、母親は弁護士に相談し、「原発事故による一時転入なので学校に改善を求めると子供が居づらくなる」と話したという。 南相馬市から群馬県へ避難した小学生の女子児童は、「福島県から来た」とクラスの子供から避けられたり、陰口を言われたりして不登校になった。 千葉県船橋市教委は、南相馬市から来た小学生の兄弟が嫌がらせを受けたとする連絡があり、「子供たちに避難者の気持ちを考えるよう指導するように」と小中学校に通知を出した。
 福島県いわき市の運送会社は、「放射能の問題があるので、いわきナンバーで来ないでほしい」という取引先の依頼を断れず、東京都や埼玉県でトラックを借り、荷物を積み替えている。社長(61)は「取引先から『いわき』ナンバーで来るなと言われたら従わざるを得ない。何とも理不尽だ」とため息をつく。 福島県田村市に工場を持つ埼玉県の会社は、福島ナンバーの車に乗った社員が首都圏のガソリンスタンドなどで利用を拒否され、埼玉県内ナンバーを使うよう指示した。 (読売 4/21)

つくば市、福島からの転入者に放射能検査要求
 茨城県つくば市が、東京電力福島第一原発の事故で福島県から避難して転入する人たちに、放射能汚染の有無を確認する検査を受けた証明書の提示を求めていたことが18日、わかった。 市側は「市民に無用な不安を与えない目的だった」としているが、転入者からの抗議を受け、検査を求めないことにした。 つくば市によると、市民課長名で3月17日、福島からの転入者にスクリーニング検査を求めることに決め、担当する窓口へ通知した。窓口の担当職員が、転入者に消防本部や保健所で検査を受け、証明書をもらうように指示するなどしていたという。原発事故が起きてから、つくば市には福島県いわき市などからの住民が避難している。
 今月11日、つくば市内の研究機関に就職するため仙台市から転居してきた男性(33)が証明書の提示を求められ、このことを茨城県に訴えたことから問題が発覚した。つくば市の岡田久司副市長は、「放射能汚染について、誤解があったと認めざるを得ない」と釈明した。(読売)

「福島県民お断り」入店・宿泊、風評被害相次ぐ
 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故で多くの避難者が出ている福島県の災害対策本部会議で8日、風評被害の事例が報告された。 放射線に関する県の相談窓口に寄せられたもので、ある運送業者から「他県のガソリンスタンドに『福島県民お断り』との貼り紙があった」という相談があった。ほかにも、福島県民であることを理由に、「レストランで入店を断られた」「ホテルに宿泊できなかった」「車に落書きされた」などの被害があったという。 県によると、3月17日の窓口開設から8日朝までに計6967件の相談があり、うち162件が風評被害に関するもの。県は風評被害払拭のため、これまで国に対して正確な情報発信に努めるよう要請している。(読売)
 ↓
 「風評被害払拭」のための「正確な情報発信」とは、どのような「情報」だろう。これも私たちに突きつけられた〈問題〉の一つである。 また、県が「放射能差別払拭」のためにどのような「情報」を発信してきたか、今後このことも同時に調査される必要があるだろう。

「放射能怖い」福島からの避難児童に偏見
 原発事故で被ばくを恐れ福島県から避難してきた子供が「放射能怖い」と偏見を持たれるケースがあるとして、千葉県船橋市教委が全市立小中学校長らに配慮するよう異例の指導を行っていたことが分かった。福島県南相馬市から船橋市へ避難した小学生の兄弟の事例では、公園で遊んでいると地元の子供から露骨に避けられたという。兄弟は深く傷つき、両親らは別の場所へ再び避難した。大震災から1カ月たつが、福島第1原発の深刻な事態が収まる見通しは立っていない。知識の欠如に基づく差別や偏見が広がることを専門家は懸念している。【毎日・味澤由妃】

 南相馬市の小学生の兄弟のケースは、避難者の受け入れ活動に熱心な船橋市議の一人が把握し、市教委に指摘した。市議によると兄弟は小5と小1で、両親と祖父母の6人で震災直後船橋市内の親類宅に身を寄せ、4月に市内の小学校に転校、入学する予定だった。 兄弟は3月中旬、市内の公園で遊んでいると、方言を耳にした地元の子供たちから「どこから来たの?」と聞かれた。兄弟が「福島から」と答えると、みな「放射線がうつる」「わー」と叫び、逃げていった。兄弟は泣きながら親類宅に戻り、両親らは相談。「嫌がる子供を我慢させてまで千葉にいる必要はない」と考え、福島市へ再び避難した。
 福島県から県内に避難し、この家族をよく知る男性は「タクシーの乗車や病院での診察を拒否された知人もいるようだ。大人たちでもこうなのだから、子供たちの反応も仕方がない。でも、当事者の子供はつらいだろう」と話す。 市議の指摘を受け、船橋市教委は3月28日「(放射能への)大人の不安が子どもたちにも影響を与え、冷静な対応がとれなくなることが危惧される」として、避難児童に「思いやりをもって接し、温かく迎える」「避難者の不安な気持ちを考え言動に注意する」よう市立小中学校長らに通知した。
 市教委によると今月から市内の学校へ通う被災者・避難者の子供は43人で、うち38人は福島県出身という。
 避難児童を多数受け入れる市立行田西小学校の中村俊一校長は、「温かく迎えるのは言われなくても当たり前のこと」と強調。「放射能を巡る偏見や方言で児童を傷つけることがないよう注意深く見守ろうと、教職員に何度も話している。始業式や入学式で『いつか古里に帰れる日が来るでしょう。その時に船橋に来て良かった、友達ができて良かったと思ってもらえるよう仲良くしてください』と呼びかけた」と話す。
 市教委に指摘した市議は「話を聞き、心がさみしくなった。船橋の子供たちにはいつも『思いやりのある人になってほしい』と言っている」と話す。

 千葉市稲毛区の放射線医学総合研究所(放医研)は福島第1原発事故直後の3月14日、放射線や被ばくを巡る電話相談窓口を開設。研究員や退職者6人が朝から深夜まで応対している。相談は主に首都圏から寄せられ、すでに6000件を超えている。 震災直後は「原発近くに住む親類を家で受け入れたいが、自分の子に影響はないか」という内容が多かった。その後、避難者の数が増えると「アパートの入居で難色を示された」「福祉施設や病院で被ばく線量を調べるスクリーニング検査の証明書の提出を求められた」などの相談が急増した。 今回の船橋のケースも踏まえ、放医研の柿沼志津子博士は「大人をまず教育したい。受け入れる側が心配すべきことは何もありません。むしろ心配しすぎる方が体に悪い」と指摘。「放射線について正確な知識に基づき、『正しく怖がる』ことが大切です。もっと勉強してほしいし、私たちも理解を深めてもらえるよう努力しなければならない」と話す。放医研は相談窓口(電話043・290・4003)を当面続けるという。

原発避難の福島県民「国は、逃げろと言うだけ」
 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故で避難した福島県の住民が、全国各地で先の見えない生活を続けている。 元の自治体の支援を十分受けられず、帰郷や生活再建の道筋が描けず、将来への不安と行政などへの不信が募る。 「国は『とにかく逃げろ』と言うだけ。その後のフォローがない」。
 避難指示区域(第一原発から20キロ圏内)の南相馬市小高区から、水戸市に避難した会社員(37)は憤る。3月12日、原発事故と避難指示を告げる防災無線を聞き、車で家を出たが、大渋滞で引き返した。 2日後、南相馬市原町区の中学校に避難したが、そこも30キロ圏内。 15日未明に、家族8人が車1台で姉が住む水戸市に向かった。ずっと姉の世話になるわけにもいかない。22日、被災者は家賃無料という茨城県営住宅への入居を申し込みに行った。 しかし、窓口の返事は「県民優先なんです」。同県でも、民家3000棟以上が全半壊するなどの被害が出た。県が用意できた空き住宅は3944戸。担当者は「茨城県民の分も足りない。県外の人には避難所の提供しかできない」と申し訳なさそうに話した。 やむなく借りた家の大家さんが親切で、水戸市の小学校に転校した娘3人のランドセルや文房具をそろえてくれた。 娘は11日、小学校から避難する際、ランドセルや教科書を置いたままになっていた。南相馬市に送ってくれないかと頼んでみたが、だめだった。
 家電や家具はリサイクルショップの善意で安く買った。会社員は「親切な人に巡り合い、幸運だった。ただ、政府は今後、我々の生活を守ってくれるのか」と不信感をぬぐえずにいる。(読売)

・・・・・・・
「都内で反原発デモ、浜岡原発の廃止など求める」(4/10)
「東海地震が起きれば想定される震源地域の真上にある浜岡原発では、福島第1原発の二の舞いかそれ以上の事態になる。即刻運転停止するべきだ」。集会には約2500人が参加。浜岡原発は現在、4、5号機が運転中。中部電力は定検中の3号機について、4月上旬に予定していた運転再開を見合わせている。
東京・高円寺で反原発デモ ネット通じ1万5千人 (4/10 共同)「2歳と6歳の子どもと参加した介護ヘルパー神山孝史さん(43)「ツイッターで知りました。原発を止めるのは今しかない。この子たちのためにできることをやりたい」。

Buy Fukushima, Buy Ibaraki!
「原発ジプシー」と被曝