脱原発への道筋: 「理想論」から「現実論」への転換を
昨日、統一地方選(後半戦)の投票と重なりながら、東京、静岡、広島、松山をはじめ各地で反/脱原発の集会・デモが行われた。いろいろ思うところ、考えるところがある。
とり急ぎ、とても重要だと思える記事や情報をランダムに紹介しておきたい。みなさんも考えてほしい。
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⇒ドキュメンタリー作品『100,000年後の安全』/GWに緊急トーク付き上映会を開催!広河隆一さん、須永昌博さん、舘野淳さん、飯田哲也さん出演
・「期待背かないように」 脱原発訴えた元原告団長
石川県志賀町議選(定数16)で脱原発を訴えトップ当選を果たした志賀原発訴訟の元原告団長、堂下健一さん(56)。落選した前回の約2倍の1128票を獲得し「町民の期待に背かないよう行動する」と語った。 町内の事務所にトップ当選の報告が入ったのは24日午後11時ごろ。集まった支持者からはどよめきが起き、堂下さんもやや驚いた表情に。全員で万歳三唱して当選を祝った。
・鹿児島・いちき串木野市長、川内3号凍結申し入れへ
福島第1原発の事故を受け、鹿児島県いちき串木野市の田畑誠一市長は25日、隣接する同県薩摩川内市で九州電力が進めている川内原発3号機の増設計画を当面凍結するよう、近く同社に申し入れる方針を明らかにした。 田畑市長は昨年6月、市議会が増設計画に賛成する陳情を採択したことを受け「市民の意見やエネルギー確保の観点から、安全確保を前提に増設を容認できると判断した」と表明していた。(産経)
・敦賀市長に河瀬氏5選 原発の安全・防災対策急務
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故に伴い、立地自治体として原子力政策をどう進めるかが注目された敦賀市長選は、接戦の末、現職の河瀬一治氏が5選を果たした。 緊急時の安全対策など原子力政策では4候補に大きな違いはなく、市政の安定、継続を求める市民の意思が多選批判を上回った。河瀬氏には選挙戦で公約した暮らしやすいまちづくり、これまで以上に分かりやすい安心安全対策の実行を望みたい。
河瀬氏は、16年前に4人による激戦を勝ち抜き初当選して以来、無投票を含め信任投票に等しく、今回が実質的に初の防衛戦。厳しい守りの選挙を強いられたが、「経験と実績」で新人候補の追い上げをかわした。 河瀬氏の得票率は半数に遠く及ばず、多選批判をクリアしたとは言い難い。告示後に同市の有権者を対象に実施した本紙世論調査でも、首長任期は「3期まで」とする回答が約73%を占めた。4期16年の実績が一定の信任を得たとはいえ、多選の弊害に対する声は根強い。市政運営では組織の硬直化に陥らぬよう、市民の目に見える形で変革を示すことが必要だ。
福島原発事故を受け、原子力行政のあり方が最大の注目点となり、市民の意識や各候補の原子力政策がクローズアップされた。だが、現職、3新人候補とも「安全を一から見直す」「安全確保を見極めたい」などニュアンスこそ異なるが、安全対策を確立した原発との共生は同じで、対立軸とはならなかった。 背景には市民の原発依存意識が働いている。敦賀原発1号機の建設開始から45年が経過。その間、2号機、高速増殖炉「もんじゅ」が増設された。電源三法交付金や固定資産税など原発関連収入は市歳入の約15%を占め、財政を潤してきた。 電力関係や建設、定検などに直接かかわる作業員のほか、飲食業など間接的な経済波及を含めれば市民の多くがその恩恵を受け、原発抜きには地域社会を語れない状況がある。
本紙調査でも原子力対策が28・6%と「力を入れてほしい政策」のトップに挙がった。さらに原発のあり方については、安全神話が崩れた状況の中で「これまで通り運転継続」と「止めずに安全対策を充実」が計73・5%にも達した。事故が起きないことを前提とした回答と思われるが、原発が止まることによる経済、雇用への不安も浮き彫りとなったといえよう。 一方、原発事故で市民が不安を覚えているのも事実だ。避難道路・避難場所の整備など防災計画の見直しを求める声も高まっている。国の新たな指針も策定されようが、隣接自治体を含め住民が安心できるよう、安全対策に早期着手するなど首長の責任がこれまで以上に問われる。その財源確保も課題だ。 3、4号機増設は着工時期が不透明となった。延期となれば地域経済に影を落とし、市財政にも多大な影響が及ぶ。日本海側拠点港を目指す敦賀港、中心市街地活性化、老人福祉や教育問題など喫緊の課題ばかりだ。選挙で把握した生の声の市政反映を望むとともに、公約の進ちょくを注視したい。 (福井新聞)
・「原発安全、今こそ肝に」 嶺南住民・新選良への声
福島第1原発事故の惨状や、避難生活を余儀なくされる人々の苦悩を目の当たりにしてなお、原発とともに歩まなければならない本県の原発立地、準立地の住民。「今こそ住民の代表者という自覚を」「地元で安心して暮らせるという当たり前のことを守って」。原子力政策をめぐる新選良への期待は、過去に例を見ないほど切実で深刻だ。24日誕生した新首長、市町議に求める嶺南住民の声を聞いた。
【対策徹底】
福島第1原発は地震と津波に耐えきれず、深刻度はチェルノブイリ事故並みとなった。このため「絶対安全と言えなくなった」「敦賀でも同じような状態になる可能性がある」などとし、多くの住民が安全性確保への行動力を求めた。運転開始から40年以上経過した原発を抱える敦賀市民からは、廃炉にまで言及した強い意見があった。自営業男性(64)は「福島第1原発と同じ炉型の日本原電敦賀1号機の津波対策を万全に」と求めた。主婦(67)や会社役員男性(50)も「40年が経過した敦賀1号機はできたら止めてほしい」「廃炉も視野に安全対策を徹底してほしい」などと訴えた。
【市町連携】
立地と準立地の連携を密にして「万が一」に備えよう、との意見も準立地の小浜市を中心に上がった。 同市の自営業男性(63)は「福島の事故で警戒区域となった20キロ圏内に小浜市はほぼ全域が入る」とし「立地地域と同じような原子力防災を考えなければならない」と訴えた。別の会社員男性(47)も「小浜はほかの市町に比べ、事故が起きたときの対策が十分でない。周辺市町と連携し、地域全体で訓練することが必要」とした。
【地域経済】
「地域経済のための原発」を認識した上で安全確保や利益還元を訴える住民も。高浜町の団体職員(50)は「将来にわたってリスクを背負っている。地元にしっかり利益を還元できるよう事業者に働き掛けるべきだ」と話した。 おおい町の遊漁船業者(60)は、福島の事故以降、利用客が減少した点に触れ「風評被害がないよう住民の声を行政や事業者に働き掛けてほしい」と訴えた。 「老朽化した原発を止めて」とした敦賀市の主婦や会社役員男性も「市の財政を考えると原発は必要」という認識に立っており、徹底した安全対策を求めた。
【新エネルギー】
新しいエネルギーへの転換や原発依存から脱却した市政運営を探るよう求める声もあった。高浜町の主婦(43)は「今ある原発を使いながら風力などの自然エネルギーも考えてほしい」。別の主婦(62)は「怖い思いをしてまで原発を推進してほしくない。自然エネルギーに転換して」と述べた。 敦賀市の女性(24)と会社員男性(51)は「原発に頼らない市政運営が必要」「原発依存の財政体質からの脱却を視野に」などと語った。 新選良の実行力に期待する声は大きく、おおい町の公務員男性(27)は「原発への危機意識が高まっている今こそ、町民の代表者という自覚と高い意識を」と訴えた。同町の女性は(50)は「地元で安心して暮らせるという当たり前のことを、住民は今一番求めている」と最後に付け加えた。(福井新聞)
・「反原発」3人中2人当選
山口県平生町議選は新議員12人が決まった。福島第1原発の事故を受け、隣接する上関町で進む原発建設計画の是非も争点化。反原発を掲げた候補3人のうち2人が当選し、住民の一定の支持を得た。 現職3人が引退し、現職9人、元職1人、新人4人が立候補。建設中止を訴えた3人は「原子力行政の誤りを正すべきだ」などと主張した。他の候補は原発事故も想定した防災対策の見直し、経済活性化、議会改革などを唱えた。「原発問題は国策」として触れない候補も目立った。 当選者の内訳は現職8人、新人4人。党派別は共産1人、無所属が11人となった。当日有権者数は1万766人。投票率は66・58%で前回を0・01ポイント上回った。(中国新聞)
・玄海原発再開、佐賀知事が先送り「国の判断待つ」
佐賀県の古川康知事は25日の定例会見で、発電再開を延期している九州電力玄海原発2、3号機について「(九電が国に提出した緊急安全対策の報告書に対する)国の判断結果を待ちたい。独自に判断するのは難しい」と述べ、県としての方針決定を先送りした。 古川知事は原発から半径10キロのEPZ(防災対策の重点地域)について「今までの決まりで十分とはならないだろう。どこまで拡大するか議論すべきだ」として対象範囲の見直しを表明。合わせて、東京電力福島第1原発の事故に関する情報収集や、防災計画の点検などに当たる原子力防災チームを新設すると発表した。
・岩内町、泊原発に「段階的廃炉も」
共同通信が実施した原発立地や隣接する市町村アンケートの自由記述欄には、福島第1原発事故をめぐり東京電力や政府への不信感がぶちまけられた。このうち、原子炉の存続について、泊原発のある後志管内泊村隣接の岩内町は択一式の質問に「条件付き継続」としたが、「自然な流れでは『段階的に廃炉』という気も」とした。 一方、事故原因について、大間原発が建設中の青森県大間町に隣接する風間浦村は「地震や津波に関する各種団体の提言を無視した」と批判している。(北海道新聞 4/24)
・泊原発、7町「安全でない」 30キロ圏首長アンケート 地元4町村は「安全」
東京電力福島第1原発事故を受け、北海道新聞社は18日、北電泊原発(後志管内泊村)から半径30キロ圏内の後志管内13町村の首長を対象に行ったアンケートの結果をまとめた。泊原発の安全性について、約10キロ圏内の地元4町村を含む5町村が「安全」と答えたのに対し、7町が「安全ではない」と回答。泊原発の今後のあり方では、2町が運転を停止した上での点検を求め、2町が3基ある原子炉を老朽化した順に廃炉とするよう主張した。 泊原発事故を想定した道の地域防災計画は事故が起きた際、半径約10キロ圏内の泊、岩内、神恵内、共和の地元4町村を避難対象地域と定め、避難計画や道、北電との連絡態勢を整備。赤井川や余市など、おおむね10~30キロ圏内の9町村は対象外だが、福島第1原発事故では半径30キロ圏内が避難対象区域や屋内退避区域となっている。
アンケートでは「現在の泊原発は安全か」との質問に対し、地元4町村と仁木町が「はい」と答え、赤井川村は無回答だった。「いいえ」と答えた7町のうち、寿都町の片岡春雄町長はその理由を「(福島の事故は)原発の安全神話を一変させた」とした。
泊原発の今後のあり方を聞いた質問(選択回答)では、倶知安町と蘭越町が「一度、運転をストップして安全を確認してほしい」との回答を選び、このうち蘭越町の宮谷内留雄町長は「道民が納得する十分な安全確認」を求めた。 寿都町と仁木町は「運転を続けても良いが、老朽化した原子炉から順番に廃炉にしてほしい」を選んだ。 一方、泊村と岩内町は「現在のまま運転を続けてよい」を選択。残る7町村は「その他」で、「地域住民の安全を最優先に運転されるべきだ」(山本栄二・共和町長)「あらゆる安全対策に直ちに着手すべきだ」(松井秀紀・積丹町長)などと答えた。 また、地元4町村だけを対象にした現行の地域防災計画については、無回答だった岩内町を除く地元3町村が「妥当」と回答。9町村はすべて「妥当ではない」と答えた。 地元4町村とそれ以外の9町村で泊原発への考え方が大きく分かれたことについて、岩内原発問題研究会の斉藤武一代表は「4町村は仕事や電源立地地域対策交付金などの関係で泊原発と関係が深く、原発を否定しづらい雰囲気がある」と指摘する。
北大公共政策大学院の田中洋行教授(危機管理)は「地元4町村は原発について頻繁に説明を受けているが、9町村は説明を受けていないため、不安を感じるのではないか。原発との関係いかんによらず、北電や道は広く情報を公表すべきだ」と話している。(北海道新聞 4/19)
・でも原発必要…島大生の86%
福島第1原発の事故を受け、島根大法文学部の上園昌武教授(環境経済論)が学生を対象に、原発に関する意識調査を実施した。77%が原発の危険性を認識する一方で、86%が原発は「必要である」と答えた。上園教授は「危険だが必要という矛盾を解決する方法を議論してほしい」と学生に求めている。
8日の環境問題の講義で、1年生に12問の調査を実施。330人から回答を得た。 原発の安全性について、39%が「とても危険」、38%が「やや危険」と回答した。福島原発事故以降、原発への考え方が否定的になった学生は57%だった。 一方、「日本でエネルギー源として原発が必要か」との設問に対しては、「必要」が51%、「ある程度必要」が35%だった。今後の原発建設について聞くと、推進、現状維持、廃止がいずれも3割台となった。
・CO225%削減目標見直し 原発事故に乗じていいか
東京電力福島第1原発の重大事故で、原子力推進政策の見直しを迫られる状況に陥った。菅直人首相が政府のエネルギー基本計画を見直し、新増設計画を白紙化すると表明。だが、その後は国会論議でも「事故の徹底検証」にトーンダウン。政策の混乱ぶりが浮き彫りになっている。 この影響を受けているのが地球温暖化対策だ。「温室効果ガスの排出量を2020年に90年比で25%削減する」目標を再検討すべきとの声が出ている。日本の将来像も描けない段階で「国際公約」を反古(ほご)にしようという。こんな一貫性のない政策でいいのだろうか。
■十分な議論もなく■
エネルギー基本計画は昨年6月に閣議決定したばかり。54基の原発を20年までに9基新増設。現在60%程度の稼働率を85%に引き上げ、30年までには14基に、稼働率も90%にする考えだ。温暖化対策の中核に位置付けた原発計画が事故で頓挫し、当面火力発電に頼らざるを得なくなったことで、見直し論が出てきた。
十分な議論もなしに国際的な約束を撤回すれば日本の信頼も傷つく。重要なのは原発の位置づけである。事故を教訓に新たな安全基準を確立し、高経年炉を含め、既存の原発すべてに厳格な評価が必要。その上で基本計画を再構築すべきだ。 環境省の試算では、福島原発6基を廃炉にした分を火力で補うと、目標を約8ポイント下回るという。しかし、わが国は原発を推進しながらも二酸化炭素(CO2)排出量が増加している。再生可能エネルギーの可能性をきちんと評価せずに「原発がなければ排出は減らせない」と決め付けることはできないだろう。
■自然エネ着実に力■
石油、石炭よりCO2排出量が少ない天然ガスを増やすとしても、自前の新エネルギーが必要だ。風力や太陽光、地熱発電などは技術開発が進展、海外での急速な普及で価格が下がり、着実に力を付けている。 「自然エネルギーは第三の産業革命」と位置付けるNPO法人・環境エネルギー政策研究所は、現在の10%程度の太陽光や水力などの割合をドイツ同様、20年までに電力の30%、50年には100%を目指す中長期的戦略が必要と提言する。原子力への重点的な投資が、省エネや再生可能エネルギー政策をここまで遅らせてきたといえないだろうか。
民主党内には25%削減見直しに異論もあり、普及策を検討する動きも出てきた。産業界には経営を圧迫する環境対策への反発は強い。原発事故に乗じて25%削減の撤回をもくろむ大企業や一部メディアもあり、削減への拘泥が震災復興の足かせになるとの主張まである。 努力を怠り目先の利潤追求に走るなら、温暖化防止と景気浮揚の両立を目指す日本版「グリーンニューディール政策」は望むべくもない。エネルギー政策と環境政策は密接に関連するものだ。縦割りの弊害を猛省し、長期的かつ持続的な環境エネルギー戦略を構築すべきではないか。
■価値観の転換必要■
今回の事故で、閉鎖的電力市場の問題点も浮かび上がった。大規模集中型から、再生可能エネルギー活用による地域分散型へのシフト、さらに多消費型から低エネ型へライフスタイルを転換することも大切だ。省エネ、リサイクル社会の価値創造など課題は多岐にわたる。日本らしい低炭素社会を見据える時だ。 県知事選で3選を果たした西川一誠知事は会見で「非常に大きな方向として、過度の依存を改めるという基本的な方向が望ましい」とし「時間もかかるが、新エネルギーなどの多角化が必要」と述べた。「大きな方向」「時間もかかる」「望ましい」という表現に、全国最多の原発を抱える自治体の懊悩(おうのう)がにじむ。
関西圏の電力消費の約半分を担う本県原発が万一、大事故を起こせば首都圏に与えたような影響が出る。知事の言葉は、政策がぶれる政府への問いかけとともに、関西への強いメッセージとも受け取れる。あるべき電力のベストミックスは何か。「電力共同体」として、関西に新エネルギーへの開発投資を促す新たな福井戦略を考えたい。(福井新聞・北島 三男)
・「東日本大震災」原子力ムラの過誤 保安院分離だけで解決しない
福島第1原発事故をめぐる専門家たちの決まり文句といえば「想定外」。己の非を棚上げにする魔法の合言葉だ。
謝罪しても何を反省しているのか分からない東京電力。人ごとのように事務的説明をこなす官僚。いまだ思想的援助を続ける識者。ひたすら原発を擁護する彼らの共通項は素人にも伝わっていよう。 原子力にかかわる専門家集団の閉鎖性、産官学の構造的癒着は、事故や不祥事のたびに指摘される。その「業界」を「原子力ムラ」と名づけたのは、かつて原子力技術者だった環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也さんだ。 飯田さんは日本記者クラブでの講演で、福島原発事故を「きっかけは天災だが、事故そのものは人災だ」と断罪した。官民にまたがる狭い人脈社会が「国策」をつくり、専門家の「業界」の利益を追求した結果、起こるべくして起こった惨事というわけだ。
国の原子力行政に致命的問題がある。監督する側も監督される側もムラ社会の一員なのだ。原子力安全・保安院と原子力安全委員会によるダブルチェックの建前が機能していないのは、福島の事故対応をみれば歴然である。安全委に至っては、事故後1カ月以上も委員が現地入りせず、当事者能力さえ失っている。 菅直人首相は国会で原子力行政を根本から見直すと表明した。原子力政策推進の旗振り役である経済産業省から保安院を分離する検討を、ようやく始めるという。独立性の高い規制と監督が保証された組織が必要なのは論をまたない。日本も加盟する原子力安全条約の要請であり、民主党の公約でもあったはずだ。 ただ、保安院の分離だけですべては解決しない。人材の供給源が今と同じでは、推進する側にとってはただ一手間増えるにすぎない。政府が決めた官僚OBの電力業界への天下り禁止も小手先だ。
組織の見直し作業は一刻の猶予も許されない。原発事故は、当事者である専門家に頼らざるをえない難しさがあるため、知識と技術が人質にとられ、政治に借りができてしまう。事故の収束を待っていては、原子力ムラの体質は温存され、福島の教訓の過小評価につながりかねない。 「想定外」と言い訳する専門家がいる一方、津波による重大事故の可能性を指摘していた専門家は在野にいくらでもいた。立地自治体が規制にどうかかわるかも含め、対抗知見が見いだせる人材を無視してはならない。 原子力ムラの過誤とは、都合の悪い指摘や批判を素人扱いし、排除し続けたおごりと無責任である。科学者による政治への異議であったはずの「民主・自主・公開」の原子力三原則を自ら破壊してきた姿勢を悔い改めるべきだ。(愛媛新聞・社説)
・原発計画見直し 首相はビジョンあるのか
菅直人首相の原発新増設見直し発言が波紋を広げている。東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、一度政府が決定したエネルギー基本計画の白紙化である。政府内、関係機関の十分な協議もなく、唐突感は否めない。わが国の原発偏重のエネルギー政策を見直すことは重要だ。しかし、まずは放射能汚染が拡大する現状対応に政府が死力を尽くすときだ。発言の「真意」が分からない。
東日本大震災による巨大津波の影響で全電源喪失、冷却機能不全に陥り、炉心溶融や放射性物質の拡散、高濃度の汚染水流出が続いている。類例のない深刻な事態は世界の原発政策にも大きな影響を与え、急速な見直し機運が台頭。脱原発に拍車が掛かる様相だ。 今回の深刻な原発事故は「想定外」だったのか、それとも想定を軽視した「人災」なのか、今後詳細な検証が必要だ。
国は新潟県中越沖地震の教訓から、2006年に耐震設計審査指針を改訂、各電力事業者は対策を強化してきた。東電は、巨大津波発生リスクが存在すること、また電源喪失による原子炉圧力容器破損の危険性を指摘する研究報告がなされていたことを知りながら、十分な対策を講じなかった可能性が指摘されている。同時に国の安全審査基準や評価のあり方も問われる。
菅首相の発言は原子力の現状に危機感を表したものだ。トップの政治判断として非常に重い。だが、今の段階では性急すぎる。首相は大震災対応で存在感の薄さが指摘されてきただけに、国内外にアピールするスタンドプレーと勘ぐりたくなる。 政府のエネルギー基本計画は現在54基ある原発を20年までに9基、30年までに14基以上新増設するもの。昨年6月に閣議決定したばかりだ。民主党政権は20年までに温室効果ガス排出量の90年比25%削減を国際公約した。原発推進とともに、安全な日本の原発を海外に売り込む戦略を打ち出し、実績を強調していた。基本政策の大転換を図るなら、「脱原発」へのシナリオを明示すべきである。
今や総電力の約3割を担う原発。新増設の全面見直しはリプレース(置き換え)や高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開などにも波及する。さらに、地球温暖化防止の推進を図るなら、太陽光や風力、地熱発電など自然エネルギー活用をよほど計画的に、強力に推し進める必要がある。これまでの場当たり的な政策では通用しない。 新増設14基のうち、3基が建設中、11基が着工準備中だ。日本原電敦賀3、4号機も含まれる。河瀬一治・福井県敦賀市長は事故対応を最優先に挙げ、「国策はぶれないことが重要」と国の冷静な対応を求めた。 電力事業者は震災、津波対策を急いでいる。新たな知見が得られれば、反映していくのは当然だ。事故対応と検証、既存原発への反映、安全総点検といった順序を踏まえ、原発の安全基準、評価も徹底的に見直し、原子力政策を再構築すべきである。それが事故当事国としての国際責任ではないか。
事故対策に廃炉措置、五里霧中の高レベル放射性廃棄物最終処分など難問が立ちはだかる。原発立地自治体を立ち往生させず、経済維持し、国民の信頼感醸成をどう進めていくのか。熟慮とビジョンなき「政治主導」に振り回されるのだろうか。 (福井新聞・社説 4/5)
・原発増設見直し「時期尚早」 河瀬全原協会長、官邸に要望
東京電力福島第1原発の事故を受け、全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長の河瀬一治・福井県敦賀市長らは4日、首相官邸で福山哲郎内閣官房副長官らに会い、菅直人首相宛ての要望書を提出した。まず原発事故の事態の収束に取り組むとともに、緊急時の代替電源確保などを要請。首相が原発増設計画の見直し方針を示している点に関しては、時期尚早との思いを伝えた。
河瀬市長や山口治太郎美浜町長、福島県双葉町の井戸川克隆町長ら全国3市4町の8人が首相官邸を訪れ、福山副長官、芝博一首相補佐官に7項目を要請。原発災害の早期の収束や緊急安全対策の実施、徹底的な原因究明と対策などを求めた。県原子力発電所所在地市町協議会としても同時に、安全確保など6項目を要請した。
エネルギー基本計画の見直し方針について河瀬市長は「国としてぶれないエネルギー政策をやってほしい」と要請。福山副長官は「まずは災害の復旧支援、事態の収束に全力を挙げる」と話す一方、エネルギー政策見直し論議には触れなかった。 要請後、河瀬市長は記者団に「あくまで今は事故の収束、原因究明などが最優先課題」と強調。「住民の多くが雇用などで原発に関わる自治体にとって、原発廃止はあり得ない。政府には想定外を想定内に変える安全対策をしてほしい」と述べた。
経済産業省では松下忠洋副大臣に同様の安全対策を求めた。松下副大臣は「要望を一つ一つ十分受け止め、事故原因を含めしっかり検証したい」と答えた。原発をめぐる今後の対応では「みなさん(原発立地地域)の意見を聞き、相談させてもらいたい」と述べ、今は事態の収束、安全対策などに優先的に取り組む意向を示した。 民主党本部で副幹事長の糸川正晃衆院議員にも要請書を渡した。
政府は、2030年までに原発を現状より14基以上増やすなど、原子力の積極的な利用拡大を図るとするエネルギー基本計画を閣議決定。今回の事故を受け、菅首相は3月31日、基本計画を白紙にして見直す方針を表明した。日本原電敦賀原発3、4号機増設も影響を受ける可能性がある。 (福井新聞 4/5)
⇒「2009年8月「もんじゅ」原子炉事故(炉内中継装置が原子炉容器内に落下)問題」(福井新聞)
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・1号機の格納容器圧力 窒素注入前の水準に
水素爆発防止のための窒素注入が続く福島第1原発1号機について東京電力は25日、格納容器内の圧力が注入前の水準に戻ったことを明らかにした。東電は格納容器内に水がたまって冷却が進んだ結果と見ているが、窒素が容器外に漏れている可能性もあることから、爆発を防ぐために今後も窒素の注入を続ける方針だ。
1号機の燃料棒の損傷度合いは70%と推定され、第1原発の原子炉の中で最も激しい。損傷の結果、燃料棒の被覆管が溶け、材料中のジルコニウムが冷却水と反応して大量の水素が発生。原子炉建屋内に充満し、3月12日に水素爆発が起きた。 原子炉内では今も強い放射線で水が分解されるなどして水素が発生しており、再爆発の危険がある。窒素注入は、化学的に安定で燃えない窒素を格納容器内に入れ、水素の濃度を下げる目的で今月6日から始まった。
当初、格納容器内の圧力を2.5気圧に高めることを目標にしていた。しかし、注入前の1.56気圧が11日の1.95気圧で頭打ちとなり、24日正午には注入前とほぼ同じ1.58気圧に下がった。注入量は予定の6000立方メートルの2倍近い約1万1350立方メートルに達している。 東電は、燃料を冷却するための注水で発生した水蒸気が格納容器に移動して水になり、底にたまると同時に圧力低下を招いたと分析する。圧力が想定通りに上がらないのは、格納容器から窒素が漏れているためとみており「窒素注入をやめれば水素の割合が高まり、爆発のリスクが増える。窒素注入は継続する」と話す。【毎日・4/25 江口一、藤野基文】
・福島県 5公園の放射線量、利用制限基準超える
福島県は24日、県内5カ所の公園の放射線量が、校舎や校庭を利用できるか判断する目安となる国の基準を超えたと発表した。県は、公園管理者に利用制限の対象とするよう要請するという。 国は暫定的な利用基準として、校庭の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上では屋外活動を制限することとしている。県は、小中学校や高校、公園など計46施設を22日に調査。そのうち、福島市、郡山市、二本松市、本宮市の5公園で、3.8~3.9マイクロシーベルトを検出したという。
県は25日にも5公園に看板を設置し、利用は1日あたり1時間程度とすることや、砂場の利用を控えることなどを求めていくという。 5公園は次の通り。信夫山子供の森公園(福島市)▽新浜公園(同)▽酒蓋公園(郡山市)▽日渉公園(二本松市)▽岩角農村公園(本宮市)。(朝日)
・福島第1原発:村の回復求め結束 飯舘村で住民団体発足へ
福島第1原発事故の影響で、全域が「計画的避難区域」に指定された福島県飯舘村の青年らが、村の環境回復と十分な補償を国や東電に求める住民団体を発足させる。26日午後6時半、村内で「愛する飯舘村を還せ!!村民決起集会」を開く。 村には約6200人の住民がいたが、自主避難が相次ぎ、現在は約5000人に。さらに計画的避難区域の指定を受け、今後約1カ月をめどに全村避難をしなければならない。家や仕事を失うことへの怒りや今後の生活への不安が村民に広がっている。
「負げねど飯舘」を合言葉に発足する団体の中心メンバーは、ラーメン店を経営する大井利裕さん(37)ら村の青年たち。大井さんが「住民が声を上げないと、小さな村は国の言いなりになる」と仲間を通じて呼び掛けると、すぐに約30人が集まった。 避難先が分散した後も村民のつながりを維持していくことや土壌の汚染除去を国や東電に求めていくことが活動の柱になる。インターネットを通じ、村の窮状も発信していくという。 大井さんは「ふるさとを奪われ、家族も仲間もバラバラにされてたまっか。住民の力を結集してうねりを作り、村を取り戻す」と力を込めた。【毎日・大場弘行】
⇒「原発1・3号機周辺、高汚染 水素爆発で飛散か」(朝日)
⇒「福島第1原発:敷地内の汚染地図公表」(毎日)