2012年8月28日火曜日

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである(2)

米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである(2)


 中央日報の記事、「尖閣紛争が米国に飛び火」によると、中国人民解放軍の副総参謀長が米国政府に対し、「釣魚島とその付属島嶼は中国の領土という点を明確にした」と述べたという。「最近、日本極右団体の釣魚島上陸などは不法行動という立場を米国側に伝えた」とし、「釣魚島が日米相互防衛条約の適用を受けることにも反対の立場を明らかにした」とのことだ。

 この中国(人民解放軍)の動きを、中央日報はある「軍事専門家」の分析を引きながら、「最近、日本が米国との防衛協力指針を改定するための交渉を行っている中で、米国側に圧力を加える狙いがある」とし、さらに「これを受け、日本と中国の尖閣領土紛争は米中両国間にも葛藤の火種となる可能性がある」という論評を加えている。

 先週、私は「「領土問題」に関する米国の二枚舌外交を許さず、「竹島・尖閣・北方領土」の領有権の所在に関する米国の公式見解を国際的に明らかにさせることが、これらの「領土紛争の平和的解決」の第一歩である」と書いたが、再度このことを強調したい。

 吉田茂が「日本にとても寛大」だと言ったサンフランシスコ「平和」条約は、日本政府・外務省の見解や、私たちの多くの「主観的願望」「思い込み」に反し、戦後日本の「領土問題」を解決しなかった。この客観的かつ冷厳たる事実を事実として、つまり日本は今現在、「解決すべき領有権の問題」を周辺諸国と抱えていることを認識することがすべての「領土問題」を論じる大前提にならねばならないし、ならざるをえないのである。

 8月24日の「香港の活動家らによる沖縄県・尖閣諸島上陸に抗議する衆院決議」は、その冒頭で「尖閣諸島はわが国固有の領土である。これは歴史的にも国際法上も疑いはない。また、現にわが国は尖閣諸島を有効に支配している。従って、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と宣言したが、そうとは言えない、ということだ。


 米国は、「国際の平和と安全」に国連加盟国の中で最も責任を負うべき国連安保理常任理事国として、「尖閣諸島」の領有権問題に関し、もはや「中立」を宣言することは許されない。中国も「固有の領土」論を主張するのであれば、その国際法的根拠を、サンフランシスコ「平和」条約に対する評価と、日中の二国間条約において領有権問題を棚上げにしてきた理由とともに、国際社会と自国の市民に対して明らかにすべきである。

 「尖閣諸島」を含む南西諸島周辺海域の日中間の国境ラインを再確定と再確定できない海域の特定→領土紛争を回避する日中間の合意の再確認さえできるなら、この地域をめぐる米中日の軍事的対立の根拠はなくなってしまう。「離島防衛」に名を借りた日米の「動的防衛協力」も、「主権防衛」に名を借りた中国海軍・人民解放軍のこの海域への台頭の大義名分のいずれもが、その物理的根拠を失うことになる。

 「琉球の海の平和」は、いくらでも実現可能な「尖閣諸島問題の平和的解決」を通じて、いつでも取り戻すことができる。
 それを阻んでいるのは誰か? 答えは誰の目にも明らかではないだろうか。

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⇒「琉球独立と台湾独立に関する国際シンポ
日時:2012年11月24日(土)、25日(日)
会場:沖縄県立美術館・博物館(講堂)
「オキナワ」と「フクシマ」から考える-振興・開発至上主義から​の「自立と自治」
9月1日(土)13:30-15:30 利賀山房(富山県)
 軍事基地や原発建設による振興・開発、一時的経済効果、さらなる​開発、そして、自然環境の破壊と雇用の不安……。負の連鎖がもた​らす構造的・不安定から、「地域」はいかにして脱却・回復するの​か。「オキナワ」と「フクシマ」の<自立と自治>を目指すさまざ​まな試みを参照しながら、「地域」の<自立と自治>への道筋を考​える。
・松島泰勝 (島嶼経済論、龍谷大学教授) 主な著書に 『琉球独立への道-植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』 (法律文化社)
・山下祐介 (都市社会学、首都大学東京准教授) 主な著書に 『限界集落の真実-過疎の村は消えるか?』 (ちくま新書)
・大澤真幸 (社会学) 主な著書に 『夢よりも深い覚醒へ-3.11後の哲学』 (岩波新書)