2012年8月15日水曜日

「竹島問題」と日韓基本条約の「交換公文」について

「竹島問題」と日韓基本条約の「交換公文」について

 今日は、日本の終戦/敗戦記念日であり、韓国/朝鮮の解放記念日である。
 中央日報日本語版が、昨日(8/14)、「東大出身の保坂教授、「日本のICJ提訴は理にかなっていない」なる記事を掲載した。この記事、および保坂氏の主張は、日韓両市民と在日の人びとに対しても、非常に誤解を与える内容なので、問題点を指摘しておこうと思う。


 記事によると、世宗(セジョン)大学の保坂祐二教授(独島総合研究所所長)は13日、日本の外務省から入手したとされる、日韓基本条約の締結時に取り交わした、「紛争解決のための交換公文」を公開したとのことだ。保坂氏は、その中に、
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 両国政府は別に規定がある場合を除き、両国間の紛争であり外交上の経路を通じて解決できない問題は、両国政府が合意する第三国による調整によりその解決を図る
・・
 という規定があることをもって、
①日本政府は「竹島」/「独島」の領有権問題を、国際司法裁判所(IJC)に提訴できないこと、なぜなら、
②「独島が紛争地域という日本の主張が交換公文から削除され、韓国は独島を紛争地域と認めなかった。したがって交換公文の紛争解決方式も独島には適用されない」からだ、と記事の中で述べている。
 さらに問題なのは、この保坂氏の主張をもって、中央日報が、
③それでも日本側が提訴することは、[日韓]「基本条約の破棄、すなわち韓日国交破棄を意味するため」と解釈していることである。


 まず、前提的に踏まえておきたいことは、保坂氏が外務省から「入手」したとされる、上の「交換公文」の内容(公文の全文ではなく、「両国政府が合意する第三国による調整によりその解決を図る」ということ)は、1965年の日韓基本条約の締結以前から明らかになっていた内容であり、殊更新しい内容ではない。
 また、1950年代の李承晩政権から、日韓基本条約を自民党佐藤政権と締結した朴軍事政権に至るまで、韓国政府が「独島」を韓国「固有の領土」と主張し、日韓間において「独島」をめぐる「領土問題は存在しない」という立場を一貫して取ってきたこともわかっている。

 問題は、「李承晩ライン」の策定以降、日韓両政府が互いに「竹島」「独島」をめぐって「我が国固有の領土」論を主張しあう中で、現実に領土問題が存在するにもかかわらず、互いが「領土問題は存在しない」の主張合戦をくり返してきたことにある。

 私が言っているのは、60年近くも日韓両市民、在日社会を巻き込みながら続けてきた、こんな不毛な「領土論争」に、もういい加減、国際(法)的に決着をつけてもよいのではないか、ということなのだ。
 どういう形で決着がつくかは誰にもわからない。決着をつけない、互いに領有権を主張しない、軍事化しない、双方の自治体・漁業組合代表が列席した漁業交渉に委ねる、という「決着」の付け方だってあるかもしれないし、どちらかが「国際法的観点」から「勝てない」と判断した場合には、領有権の放棄ということだってあるかもしれない。
 それでも、どういう形になるのであれ、もう公式に決着をつけようではないか、と。


 たしかに、「独島」の領有権を主張する韓国政府は、この問題をめぐって国際司法裁判所に強制管轄権を認めていないので、日本側の提訴を拒否することができる。しかし、受諾することもできる。それは政府の意思次第である。「理にかなっていない」とは言えないのである。まして、[日韓]「基本条約の破棄、すなわち韓日国交破棄を意味するため」などとするのは無茶苦茶な主張である。
 つまり、韓国政府がどのような日韓関係を結ぼうとするのか、その一点に尽きる。もちろん、それとまったく同じことが日本側にも言える。

 要は、「竹島」「独島」の領有権をめぐり、日韓間でいかなる合意ができるのか、そもそも二国間に「領土問題」が存在するという認識を持つのかどうか、それを解決する政府としての意思を持つのか否かであって、仲裁の主体、調停の場は、国際司法裁判所であろうがどこ/どの国々(第三国)であろうが関係ないのである。日韓両政府、日韓の主要メディアが、互いに「固有の領土」論合戦をくり返し、問題を硬直化させ、解決を60年近く先延ばししてきたことが問題なのである。(問題解決が期待された、二年前の日韓歴史共同研究(第二期)の場においても、結局打開策を見いだすことができなかったことは記憶に新しい。)

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参考資料
「参議院・日韓条約等特別委員会公聴会」(1965年12月1日)
藤田進(日本社会党)
 今度の日韓条約ないし協定の場合は、御承知のように、非常に韓国政府並びに日本政府の間における解釈というよりも、基本的問題で、たとえば領土竹島については、韓国議事録を見ますと、丁一権総理あるいは李東元外務部長の速記を読んでみますと、あれは椎名[外相]さんも触れたんだ、佐藤[首相]さんに総理官邸で会って、佐藤さんが参議院選挙で国民に、実はまだ解決していない、あれは日本の領土だ、一括解決をするんだということをおれも言ったので、おれの顔を立ててくれと言った

 けれども、内外記者の大ぜいいるところで状況描写されて、韓国国会では詳しく答弁されて、紛争でも何でもない、これはもう解決したのだ、だから交換公文にもこれは触れていないといったような、一々申し上げなくても御研究のようでございますが、いわば本質的な問題についてかなり大きな開きがあるということを、私どもも多年条約等を審議いたしまして初めて遭遇する事態なのであります。

 それだけに、お互いに親善協力をこの条約によってスタートするという提案者側の意図から見ても、非常に遺憾な点である。したがって、これらの点は、国際的にも、あるいはわが国民の前にも明らかにしていかなければ、双方ともに、現在の政権がそう十年も三十年も続くとも考え得られません。あすにも倒れるかもしれないという両国の実態でもあります。

 したがって、相当掘り下げて韓国もやっているが、私ども日本国としてもまあやっていかなければならないと思うのであります。しかし、それは不利益だとおっしゃることは大きな意味を持つわけで、われわれの国会の審議権というか、かた苦しいことはよしましても、かなりやはり突っ込んで審議しろというのが一般の世論であるように私ども心得まして審議を重ねていこう、空白を持たないようにしていこうということですが、この点について、もっと掘り下げた御意見を承りたい。

 結局、自民党佐藤内閣は、「掘り下げた御意見」を述べなかった。
 日米安保も原発も、私たちが伺い知ることができない「闇よりも暗い世界」に支配されてきたが、「戦後」における日韓関係の歴史も同じである。日韓の官・政・財の密約・談合・汚職・腐敗にまみれた、普通の市民、「かたぎ」の人間には、身も凍るような歴史が、そこには横たわっている。
 ここで読者の注意を喚起しておきたいのは、外務省および歴代政権が、1962年の二回目の国際司法裁判所への日本側の提訴を朴政権が受けず拒否して以降、口では第三国の調停・仲裁による「竹島」問題の解決を語りながらも、実際にはその実現にに向けた「外交」を展開してこなかったことである。これが「一貫」した日本政府の姿勢なのだ。

 それにしても。この国が、「参議院選挙で国民に、実はまだ解決していない、あれは日本の領土だ、一括解決をするんだということをおれも言ったので、おれの顔を立ててくれ」と言ったノーベル平和賞を受賞した政治家を、ときの内閣総理大臣としていたことを、しっかり記憶にとどめておこう。 恥じるというより、笑うしかないではないか。

【参考サイト】
⇒「日韓市民でつくる日韓会談文書・全面公開を求める会
⇒「行政文書開示請求書

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・「戦争体験史料館
沖縄戦で負傷の住民ら、国を提訴 賠償・謝罪求める(朝日)
終戦の日で各党が談話 (日経)
民主 日本国民の平和への理念と強固な意志に支えられた外交を柱に国際社会と手を携えて、恒久平和の実現に向けて全力でまい進する。
自民 過去の歴史と真摯に向き合い、先人が守り伝えてきたわが国の歴史・伝統・文化を尊重し戦没者の方々に対する畏敬の念を伝え続ける。
生活 自立と共生の理念のもと国際社会の責任を全うできる日本を目指し、諸外国と協調して世界の平和を創造する。
公明 断固たる決意で核廃絶に取り組む。世界の平和と人類の繁栄に貢献する平和国家・日本の国づくりに全力を尽くす。
みんな 来る総選挙で、戦時体制の下で完成された官僚統制・中央集権体制に風穴を開けるべく大覚悟で臨む。
 憲法の平和・民主の原則にそって、国民本位の政治、世界の平和に貢献する新しい政治を実現するために戦い抜く。
社民 過ちを二度と繰り返さないよう願う人々とともに、多くの犠牲を払い獲得した平和憲法を堅持し世界中に広げていく。
国民新 自らの伝統文化と歴史を継承し、国を守る意志を明確にすることで、国際社会からの尊敬と協調を勝ち取る。
たちあがれ日本 首相は堂々と靖国神社に参拝し、英霊に対して心からの感謝の誠をささげるべきだ。

韓国海兵隊、「仮想敵に占領」竹島に上陸訓練へ(読売)
「・・・竹島周辺で韓国軍と海洋警察庁が9月初めに実施予定の「独島防衛合同訓練」に海兵隊も参加し、竹島が「仮想敵に占領された状況」を想定して竹島に上陸する・・・」
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 韓国と「軍事同盟」条約を結び、韓国軍がこのような動きをすることを承認/黙認している「第三国」とはどの国か? よ~く、考えてみよう。

スイス人観光客13人が国後入り(北海道新聞)
「・・・日本政府は北方領土への外国人の訪問はロシアの管轄権を前提とする行為であり認められない、との立場をとっており、反発は必至だ・・・。北方領土には近年、中央アジア諸国や北朝鮮などからの労働者が多く入っているが、欧州から団体で訪れるのは異例」
スイスの企業家や官僚、国後島に上陸 投資環境を視察か(朝日)

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福島第1原発4号機建屋に水たまり 配管から汚染水漏れか (日経)
・14日午前11時15分ごろ、4号機のタービン建屋1階にある電源室(広さ約350平方メートル)の床全面に、深さ約1センチの水がたまっているのを巡回中の東電社員が発見。漏洩量は約4.2トン
・3号機タービン建屋から汚染水を移送する近くの配管2系統のうち、1系統にあいた穴から水が噴出。ポンプを止めると室内への流入も止まった。東電は屋外への流出はないとしており、原因調査中。
・水は電源室のほか、配管を通している外の廊下にも約70平方メートルにわたってたまっていた。東電は、4号機タービン建屋地下の滞留水貯蔵エリアに排水する。配管は12日に使い始めたばかりだった
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 報道によれば、たまっていた水からは、1cc当たりおよそ7万7000ベクレルの放射性セシウムが検出された。このほか、14日午前8時半ごろ、汚染水の処理に使った「吸着塔」と呼ばれる機器を保管する場所で、ポンプから白い煙が上がっているのが見つかり、作業員が消火器で消し止めた(とされている)ことが明らかになっている。現場ではトラブルが相次いでいる。

大飯原発で水漏れ 排水溝の水位上がる(中日新聞)

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オスプレイ:沖縄配備、賛成ゼロ…全国知事調査(毎日)

オスプレイ配備反対県民大会 常任幹事会がカンパの呼び掛け(琉球新報)
「・・・台風の影響による延期で資金が約1000万円不足している。そのため、市長会と町村会を通して広く県民にカンパを呼び掛ける。・・・24日には共同代表や常任幹事、宮古・八重山大会の実行委員を含めた大会参加促進総決起集会を開くことも予定・・・」 玉城義和事務局長。「手づくりの大会だが、県民こぞって参加できる態勢をつくっていきたい」。