「竹島問題」にみる外務省の「外交の不在」と野田政権の「政治の貧困」
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野田政権は今日、韓国に対し、「竹島」/「独島」の領有権に関する国際司法裁判所への「共同提訴」を正式に「提案」した。しかし、当初よりわかりきっていたように、韓国はこれを正式に拒絶する意思をくり返し表明している。これによって「竹島」「独島」をめぐる日韓の「領土紛争」は、「長期戦」の様相をますます深めるようになった。日本が単独提訴に向けた準備を開始するとともに、韓国に対する「対抗措置」を強化する「方針」を打ちだしたからである。驚いたことに、野田政権・外務省は、共同提訴→単独提訴で戦う姿勢を示しながら、一方で日韓基本条約の「交換公文」が規定する「調停」による解決も、同時に申し入れたとのことだ。
報道によると、野田政権・外務省の「提訴」の狙いは、日本が「公正な裁判」によって領有権問題の「決着」を目指そうとしている「姿勢」を国際的にアピールすることにあるそうだ。だが、外務省・野田政権がやろうとしていることは、日本の「保守」派からの「弱腰外交」批判をかわす「アリバイ外交」とでも定義すべきものであり、「竹島」/「独島」の領有権をめぐる最終的決着をはかるものにはなりえない。以下、その理由をごく簡単に述べておこう。
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もしも、外務省・野田政権が、領有権問題を本当に解決する意思を持つのであれば、「共同提訴」を韓国が非公式に拒絶した段階で(それはすでに半世紀以上前から明らかだったのであるが・・・)、双方が合意しうる「第三国」を調停役とする、「竹島」/「独島」の領有権の所在を審議する国際委員会的な機関の設置に向けた働きかけを行うべきだったのである。その実現のためには、公式・非公式の韓国との長期にわたる粘り強い外交交渉が欠かせない。
今、外務省・野田政権が検討しているという、国連総会や安保理へのこの問題の持ち込みは、「第三国」による調停案を韓国側が受け入れない場合においてはじめて検討されるべき外交手段の一つになる。(ここでは日本中心に論を進めているが、調停案が日本の領有権を否定する場合もありうることを忘れてはならないだろう)。
共同提訴を提案しながら、同時に拒否した場合には単独提訴にも踏み切ることを公言し、さらには調停案も提起する・・・。
これがいかに支離滅裂で、韓国側の硬化のみを招き、問題解決を不可能にさせる愚策・愚行であるか、もはや説明は必要ないだろう。外務省・野田政権は、最初の最初からこの問題を解決しようという姿勢を持っていない、としか言いようがない。
有権者の支持率6~7%の民主党を与党とする、支持率二割を切り、すでに「終わった」野田政権の下で、日韓関係は戦後最悪の「冷たい時代」を、本当に迎えることになるかもしれない。
3
外務省・野田政権が言う「対抗措置」の全容は、未だに明らかにはされていない。報道によって明らかにされているものをあげると、それらは、
①「8月25日の日韓財務相対話をはじめ、29~30日の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済閣僚会合での2国間会談など、財務、経済産業、総務3省と内閣府が所管する四つの会議・会談の延期や見送り」(これらの中には、8月30日に予定していた総合科学技術会議の日韓政策対話の延期も含まれる)
②「9月5~6日にロシアのウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の閣僚会談や、東京都内で9月19日に開かれる「LNG(液化天然ガス)産消会議」に合わせた閣僚級の協議も見送り」(以上、読売新聞)、さらに
③「金融市場が混乱した場合に備えた日韓通貨協定の交換枠も、700億ドル(約5兆5千億円)から130億ドル(約1兆円)に戻す方向」での調整、などである(以上、日経新聞)。
日本政府は、これらの「対抗措置」=制裁的措置に関し、「韓国側の動きをにらみながら実施の是非を慎重に検討する」としている。しかし、言わば制裁をちらつかせながら相手の妥協を引き出そうとすることは、およそ国家間の領土問題の解決において、やってはならない最悪のやり方である。
「対話と圧力」を語りながら、実際には圧力=制裁のみが強調され、実行されるような貧困なる「政治」が何も問題を解決しないことは、結局、何の進展もみられなかった安倍自公政権以降の「拉致制裁政治」の破産を見れば明らかである。
通常、二国間で、ある「紛争案件」が存在する場合に、それを外交交渉によって解決しようとするときには、両者とも「折り合い」をつけることができる、つまりは「ソフト・ランディング」ができる「落とし所」を予め設定して臨むものだが、今回の「共同提訴→単独提訴+「調停」提起+「対抗措置」+「対韓国国会非難決議」案」には、そうした努力や思考の片りんさえ見られない。具体的に何を実現したいのかが、さっぱり分からない。
国家の外交の不在と政治の貧困のとばっちりを食い、その代償を払うのは、いつの時代もただの市民である。
少しは歴史から学ぶこと。こんなあたりまえのことが、事が「朝鮮問題」におよんでしまうと、いつもまるで「無いものねだり」のようになってしまうのはなぜなのか。そこにどのような利害が作用しているのか。
それを理解するためにも、私たちは歴史から学ぶしかないようである。
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⇒「米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである」を更新
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野田政権は今日、韓国に対し、「竹島」/「独島」の領有権に関する国際司法裁判所への「共同提訴」を正式に「提案」した。しかし、当初よりわかりきっていたように、韓国はこれを正式に拒絶する意思をくり返し表明している。これによって「竹島」「独島」をめぐる日韓の「領土紛争」は、「長期戦」の様相をますます深めるようになった。日本が単独提訴に向けた準備を開始するとともに、韓国に対する「対抗措置」を強化する「方針」を打ちだしたからである。驚いたことに、野田政権・外務省は、共同提訴→単独提訴で戦う姿勢を示しながら、一方で日韓基本条約の「交換公文」が規定する「調停」による解決も、同時に申し入れたとのことだ。
報道によると、野田政権・外務省の「提訴」の狙いは、日本が「公正な裁判」によって領有権問題の「決着」を目指そうとしている「姿勢」を国際的にアピールすることにあるそうだ。だが、外務省・野田政権がやろうとしていることは、日本の「保守」派からの「弱腰外交」批判をかわす「アリバイ外交」とでも定義すべきものであり、「竹島」/「独島」の領有権をめぐる最終的決着をはかるものにはなりえない。以下、その理由をごく簡単に述べておこう。
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もしも、外務省・野田政権が、領有権問題を本当に解決する意思を持つのであれば、「共同提訴」を韓国が非公式に拒絶した段階で(それはすでに半世紀以上前から明らかだったのであるが・・・)、双方が合意しうる「第三国」を調停役とする、「竹島」/「独島」の領有権の所在を審議する国際委員会的な機関の設置に向けた働きかけを行うべきだったのである。その実現のためには、公式・非公式の韓国との長期にわたる粘り強い外交交渉が欠かせない。
今、外務省・野田政権が検討しているという、国連総会や安保理へのこの問題の持ち込みは、「第三国」による調停案を韓国側が受け入れない場合においてはじめて検討されるべき外交手段の一つになる。(ここでは日本中心に論を進めているが、調停案が日本の領有権を否定する場合もありうることを忘れてはならないだろう)。
共同提訴を提案しながら、同時に拒否した場合には単独提訴にも踏み切ることを公言し、さらには調停案も提起する・・・。
これがいかに支離滅裂で、韓国側の硬化のみを招き、問題解決を不可能にさせる愚策・愚行であるか、もはや説明は必要ないだろう。外務省・野田政権は、最初の最初からこの問題を解決しようという姿勢を持っていない、としか言いようがない。
有権者の支持率6~7%の民主党を与党とする、支持率二割を切り、すでに「終わった」野田政権の下で、日韓関係は戦後最悪の「冷たい時代」を、本当に迎えることになるかもしれない。
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外務省・野田政権が言う「対抗措置」の全容は、未だに明らかにはされていない。報道によって明らかにされているものをあげると、それらは、
①「8月25日の日韓財務相対話をはじめ、29~30日の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済閣僚会合での2国間会談など、財務、経済産業、総務3省と内閣府が所管する四つの会議・会談の延期や見送り」(これらの中には、8月30日に予定していた総合科学技術会議の日韓政策対話の延期も含まれる)
②「9月5~6日にロシアのウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の閣僚会談や、東京都内で9月19日に開かれる「LNG(液化天然ガス)産消会議」に合わせた閣僚級の協議も見送り」(以上、読売新聞)、さらに
③「金融市場が混乱した場合に備えた日韓通貨協定の交換枠も、700億ドル(約5兆5千億円)から130億ドル(約1兆円)に戻す方向」での調整、などである(以上、日経新聞)。
日本政府は、これらの「対抗措置」=制裁的措置に関し、「韓国側の動きをにらみながら実施の是非を慎重に検討する」としている。しかし、言わば制裁をちらつかせながら相手の妥協を引き出そうとすることは、およそ国家間の領土問題の解決において、やってはならない最悪のやり方である。
「対話と圧力」を語りながら、実際には圧力=制裁のみが強調され、実行されるような貧困なる「政治」が何も問題を解決しないことは、結局、何の進展もみられなかった安倍自公政権以降の「拉致制裁政治」の破産を見れば明らかである。
通常、二国間で、ある「紛争案件」が存在する場合に、それを外交交渉によって解決しようとするときには、両者とも「折り合い」をつけることができる、つまりは「ソフト・ランディング」ができる「落とし所」を予め設定して臨むものだが、今回の「共同提訴→単独提訴+「調停」提起+「対抗措置」+「対韓国国会非難決議」案」には、そうした努力や思考の片りんさえ見られない。具体的に何を実現したいのかが、さっぱり分からない。
国家の外交の不在と政治の貧困のとばっちりを食い、その代償を払うのは、いつの時代もただの市民である。
少しは歴史から学ぶこと。こんなあたりまえのことが、事が「朝鮮問題」におよんでしまうと、いつもまるで「無いものねだり」のようになってしまうのはなぜなのか。そこにどのような利害が作用しているのか。
それを理解するためにも、私たちは歴史から学ぶしかないようである。
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⇒「米中両政府は「尖閣諸島」の領有権に関する公式見解を国際社会に明らかにすべきである」を更新