米国は「中立」? 「当事国に自制を求める」?
連合国の主導国として、戦後日本の領有権を含む「主権」の及ぶ範囲を定めたサンフランシスコ「平和」条約の草案を書いた米国が、日本の領土問題に関して「中立」の立場を取ると、また宣言した。そればかりか、日本・中国・台湾・韓国・ロシアなどの「当事国」に対し、「自制」を求めているという。
米国は、戦後一貫してこのような傍観者的で優等生ぶった態度を取り続けている。
こんなことが許されてよいものだろうか。
戦後の国際秩序を決定した張本人たる米国は、国際法に照らして、「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」の領有権がいったいどの国に存在すると考えているのか。日本政府・野田政権はオバマ政権に対し、「中立宣言」に抗議した上で、米国政府としての公式見解を明らかにさせるべきではないのか。
きっと米国は、中国・台湾・韓国・ロシアに対し、いや世界に対し、日本に有利な見解を表明してくれるに違いない。
米国にとって日本はアジアで最も重要な「同盟国」であり、日本にとって米国は世界で最も重要な「同盟国」のはずだから。
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・尖閣問題 米報道官「日中で解決してほしい。同意で解決すべき」
日本政府が相次いで直面する重要課題、竹島、尖閣諸島の領土問題について、アメリカ政府は「領土問題に関しては、どの国にも味方しない」との中立の立場を守っていて、当事国に自制を求めている。
15日、アメリカ国務省のヌランド報道官は、「(尖閣問題は)日中で解決してほしい。アメリカは、どちらの味方もしない。挑発的行為でなく、同意で解決すべきだ」と述べた。
一方で、日本を知りつくすアーミテージ元国務副長官らの専門家グループが発表した日米同盟に関する新たな報告書の中では、日韓関係について、韓国にも自制を求めつつ、日本に対して、「歴史問題にしっかり向き合わなければいけない」と注文をつけている。
また、別の日本専門家は、竹島問題について、「日本は冷静に対応すべき。日本が過敏に反応することで日本の国益を損い、中国や北朝鮮を利するだけになる」として、日本側に自制を求めている・・・。 (FNN)
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「日米同盟ムラ」の面々も、よもや異論はないと思うのだが、オスプレイやグローバルホークを配備する前に、米国にはまず日本の領土問題の決着をつけてもらってはどうだろう。
それとも米国は、自国の「国益」と資源開発、「安全保障」のために、中国・韓国・ロシアの「実効支配」を黙認する何か「密約」でも交しているのだろうか?
「戦後」を生きてきたはずの私たちは、「戦後」について知らない/知らされていないことが、あまりにも多すぎる。
【参考資料】
「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」(1972年3月22日)
川村清一(日本社会党)
私、何としても納得できないのはアメリカ政府の態度なんです。この点、十二月十五日の参議院本会議において、私が社会党の代表質問で質問した際にも、外務大臣に対して質問したわけでありますが、外務大臣は、意識的にか、私の質問の本旨をはずして御答弁になっておるわけであります。
すなわち、平和条約第二条で日本は台湾を放棄したわけです。第三条で今度は沖繩をアメリカの施政権下に入れた。そうして、その第三条に基づいてこの尖閣列島もアメリカの施政権下に入っておるわけであります。そうして、その中に、御承知のように、アメリカは軍事施設を持っておるわけです。大正島などですね。
いわゆる今度の了解覚書A表、黄尾嶼あるいは赤尾嶼というのは、尖閣列島の島ですね、そうして基地を施設してきた。そうして今度沖繩を返還した。施政権を返還したその協定の中の返還区域の中には、はっきりと尖閣列島が入っておる。そういう事実があるにもかかわらず、尖閣列島の領有権というものが国際上の問題になってくるというと、アメリカ政府は施政権は返す、しかしながら、この尖閣列島の領有権についてはアメリカは発言の権限がないんだ、両当事国において話し合って解決してもらいたいと言って手を引いた。
いわゆる領土権がどちらかわからないと言うアメリカが、領土権がわからないその地域を施政権下に入れたり、そこに自分の軍事基地をつくるなんということは、はたしてこれが国際法上妥当なものかどうか。
こんなえてかってな理不尽な行為は私はないと思います。だから、かかるアメリカの行為に対して日本政府は厳重なる抗議をしなさいということを私は十二月の本会議で外務大臣に申し上げたわけであります。ところが福田外務大臣は、それだから尖閣列島はわが国固有の領土ということがはっきりしている、立証されたことになるんだと。
私は、アメリカに抗議すべきである、こういう無責任な話があるかということで抗議すべきである、依頼するとかなんとかということじゃないんです。こんなことが一体認められますか。どこの国の領土だかわからないものを施政権の中に入れて、しかも、今度は自分の軍事基地をそこに設けて、施政権が返ってくるにもかかわらず、A表の中にきちっと黄尾嶼、赤尾嶼として、その島に基地は存在させる。こういうことは一体認められるのかどうか。政府の見解を明確にしていただきたい。
福田赳夫(外務大臣)
尖閣列島の帰属についてのアメリカの態度、これについて意見を交えての御質問でございますが、川村さんの意見部分、これにつきましては私も全くそのとおりに思います。
私は、この問題はアメリカといたしましてはもう議論の余地はないというふうに腹の中では考えておる、こういうふうに見ておるんです。議論の余地のない問題、御指摘のように基地まで置いておる、返還協定ではA表の中にそれが人っておる、こういうことでございますから、もうアメリカがこの問題につきまして疑いは差しはさむ余地はない、私はアメリカ自身がそういうふうに思っておる、こういうふうに確信して疑いません。
それにもかかわらず、事が公の問題になりますると、最近になりまして、どうもあいまいな態度をとる、領土の帰属につきまして何かもの言いがつくならば、それは二国間で解決さるべき問題であるというような中立的な言い回しをしておる。私はアメリカ政府のそういう態度が非常に不満です。
これはなにか逃げ腰な態度であると、こういうふうに思いますが、またその背景があるんだろうと思います。つまり、そういう尖閣列島に対する領有権に対し何かアメリカに働きかけがあると、そういうようなことが裏にあるんじゃないかと、私はそういうふうに想像をしておるんですが、いずれにいたしましても態度をはっきりさせる。 これがアメリカといたしまして当然のことだと、こういうふうに思うのです。しかし、私はまあ川村さんとも私はこの点も意見が一致するんですが、アメリカに頼んでこれはあれを確認してもらう、そういう性質のものじゃないと思うんです。
そこで、そういうことはいたしませんけれども、これはなおアメリカでもプレス・ガイダンスとかなんとかいろいろ検討をしておるようでありますが、そういうかたまった考え方が出ますれば、厳重にアメリカ政府に対して抗議をするという態度をとろうと思っております。そのとおりに心得ております。
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私は佐藤内閣がこの件で米国に抗議した事実を知らない。
「主体的外交」を標榜する野田政権が何をする/しないか、注目しよう。
「衆議院・外務委員会」(1970年9月10日)
戸叶里子(日本社会党)
そこで、いまの大陸だなの問題でございますが、聞くところによりますと、もうすでに大陸だなにある鉱区に中国の国民政府が開発することを許して、そして[米国の]ガルフ石油会社というのがその開発に手をつけているというようなことも聞いておりますけれども、この点につきましてもはっきりと日本では交渉をされましたかどうでしょうか、この点も伺っておきたい。それができ上がってからのトラブルというものはたいへんにうるさくなると思いますので、いまのうちにはっきりさせておくべき必要があると思います・・・
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・オスプレイ配備:海兵隊司令官「死活的に重要」
米海兵隊のエイモス司令官は16日、新型輸送機MV22オスプレイに関する声明を出し、安全性を強調した上で、米国にとって日米安保条約の防衛義務を果たすために普天間飛行場にオスプレイを配備することは「死活的に重要だ」と訴えた。
司令官は「米国は同盟国日本の防衛のために最強の能力を前方展開する必要がある」と指摘。老朽化したCH46中型ヘリコプターに比べ、後継機のオスプレイは行動範囲、積載能力、スピードで上回るとした。 また、長期間の設計、開発過程、プログラムの更新、パイロット訓練強化などを踏まえ「安全性に自信を持っている」との考えを繰り返した。(ワシントン共同)
・沖縄タイムス・オスプレイ特集サイト