2011年2月7日月曜日

ドル経済の終焉・米国の崩落・壊れる米国の大学

ドル経済の終焉・米国の崩落・壊れる米国の大学


 今年は、2001年の「9.11」から10周年になる。つまり、対テロ戦争勃発10周年の年だ。
 米国の繁栄の象徴でもあった世界貿易センターは、旅客機の突撃によって崩落した。少なくともそういうことになっているし、私たちもそういうことにしている。その米国が、「9.11」から10年を経て、ドル経済の終焉と自らの経済・金融・財政政策の失敗により崩落しようとしている。米国の大学が次から次に壊れてゆくのは、そのことの表れでしかない。

 ドル経済の終焉と米国の崩落に関しては、いまその筋の専門家たちにとっての問いは、これらが「本当に起こるのかどうか」にあるのではない。「いつ起こるのか、どれくらいの打撃を世界経済にもたらすか、打撃を小さくするにはどうすればよいか」にすでに移っている。詳しいことを知りたい人は、証券会社の人間か米国経済の専門家にでも聞いたり、専門書に自分で目を通して欲しい。

 世界のドル経済体制は、近い内に必ずや終焉を迎える。すでに世銀、EU、中国、OPECに日本は「ポスト・ドル体制」をどうするのかを真剣に議論し始めている。しかし、円はもとよりユーロ、元、「オイルマネー」もドルに代わって、単一の通貨として世界経済と貿易を支える力はない。だから米国の国債を買い、為替相場の変動に介入し、米国を崩落させないために「協調」してきたのである。世界金融・信用恐慌がいくら起こっても、1930年代のように恐慌⇒ブロック化⇒ブロック相互の戦争(帝国主義間戦争)へとは「発展」しようがない。

 しかし「協調介入によるドル体制と変動為替相場体制の「安定」の偽装」にも、もう限界がきている。というより、10年前にブッシュが登場した時点ですでに限界を超えていたというのに、ブッシュとグリーンスパンが無策であったことの帰結が3年前の「リーマンショック」となって噴火したのである。
 米国や世界の投資・投機家たちはドルをこぞって売り、手放している。米国から資本を引き上げている。世界各地の観光スポットでは、ドルが歓迎されなくなるのを通り越して、ドルではモノが買えないところが増えている。米国国内でさえ、ドル以外のユーロや円が好まれる店や、連邦政府が発行するドルとは別の「地域通貨」での取り引き活動が登場し、広がっている。

 ともあれ、米国と世界は「リーマンショック」をはるかに凌ぐ大噴火を近い内に目撃することになる。ちょうど1929年に始まる世界大恐慌と同様に、「大地震が来た!」と思っていたものが前兆に過ぎず、本格的な打撃は1930年代に入って直後に来たように。今年の後半から来年が、かなりヤバイ。石油・穀物関連の市場価格の高騰、そこから波状的に拡大する物価全般の高騰。「気象変動」がそれに追い討ちをかける・・・。


 米国の大学が壊れているのは、その規模の大きさを別にすれば、基本的に日本、いや世界中で起こっている現象とまったく同じことが要因になっている。全米46州がデフォルト(債務不履行)宣言寸前の財政状況にある中で、州立大学の「運営費交付金」の大幅カット。連邦政府自体がデフォルト寸前で、州への財政配分を大幅にカットしようとしているのであるから、政府はあてにならない。その結果、授業料が高騰し、正規の教職員が合理化され、非常勤の教職員が膨張している。

 私立大学はますます金持ちしか行けない大学となり、昔はその「セーフティネット」とされた州立大学もそうなりつつある。リーマンショック以降、奨学金の利子の返済ができない学生たちが自己破産し、大学を中退し、ホームレス化するという事態が起こったが、それを克服・解決できない間に米国は、さらに破壊力のある大地震に見舞われようとしている。

 プエルトリコ、あるいはメキシコ、中米などのヒスパニック系移民がテキサスと並んで多いカリフォルニアの州立大学システム(バークレーやLAなど)で学生の運動が先鋭化したのは、以上のようなことが背景にあってのことだった。

2011/2/10


 プエルトリコの「大学教授協会」が学生たちの運動と当局の弾圧に抗議して、一日ストをした(現地時間の水曜)。800ドルの学費値上げに反対した学生のストライキで少なくとも八名の逮捕者が出たとのことだ。⇒ワシントンポストに転載されたAP通信の記事。およそストなどという経験を持たず、闘うことをしない、どこかの国の大学教授よりはよほどリッパである。
 米国の州立大学システムの財政事情については、1月24日のニューヨークタイムズが報じている。注目したいのは、次のような記事の内容だ。

・“The whole thing is kind of scary, for somebody like me who’s paying for college myself,” said Ms. Murphy, who plans to be a teacher. “I turn 20 tomorrow, I’m already in debt, and if tuition goes up again next year, I’ll be in an even worse position.”
・In California, where tuition has been raised by 30 percent in the last two years — and where out-of-state tuition now tops $50,000, about the same as an elite private university — the governor has proposed cutting state support for the University of California by $500 million for the next fiscal year.
・In state after state, tuition and class size are rising, jobs are being eliminated, maintenance is being deferred and the number of nonresident students, who pay higher tuition, is increasing.
・At the University of South Carolina, budget cuts have already pushed tuition to $9,786, more than double what it was a decade ago and well above both the national and regional averages.

 いずれ近いうちに、日本の国公立大学もかならず米国の州立大学と同じような状況に叩き込まれることになる。
 今年から来年にかけて日本列島を襲撃するであろう、ガソリン・灯油・石油関連商品・光熱費・食料品等々の値上げ、新消費税の導入などの大攻勢が「壊れる大学」現象をより一層加速させ、深刻なものにするだろう。これに伴い労働強化と口減らしが起こるだろう。今春季から日本は、一部の儲ける業種は内部留保を拡大させつつ「好況」を迎えつつも、全体としてはデフレ経済からハイパー・スタグフレーション(不況下のインフレ)に徐々に突入してゆくだろう。

 だから、派遣労働者やフリーターの人々は「戦略的防衛体制」に入る必要がある。サラ金には絶対に手を出さぬこと、少しでも貯金と必需品の備蓄をすること、今年に契約解除・解雇がありうることを念頭に置いておくこと、身体と精神の健康を保ち、医者や歯医者にかからないようにすること、「いざ」というときに互いに助け合うネットワークを広げること、未組織労働者を支援する最寄の団体を調べておくこと・・・。

 長いたたかいになりそうだ。