2014年5月9日金曜日

危機に瀕する大学―「改革」ばかりでどこへ行く?/ナノリスクの展望:光触媒:有用性の暗転など

危機に瀕する大学―「改革」ばかりでどこへ行く?/ナノリスクの展望:光触媒:有用性の暗転など

■ 談話会「危機に瀕する大学」  ―「改革」ばかりでどこへ行く?                              
 5月19日(月)に、市民科学研究室の理事メンバーの一人である柿原泰が話題提供者となって、次のテーマでの市民科学談話会を開きます。
 15名までの少人数で、自由な雰囲気で皆が存分に語り合う機会です。ふるってご参加ください。

5月19日(月)19時~
市民科学研究室事務所にて
●話題提供:柿原泰(市民科学研究室理事)
●参加希望者は必ず事前に市民研までお申込み下さい(15名定員)
●軽めの飲食をしながらの会ですので、その費用500円をご負担ください

 ここ10~20年、日本全国の大学はいつも「改革」をしてきた(するよう仕向けられてきた?)ように思われます。
 確かに、大学をめぐる環境は大きく変化し、「改革やむなし」の面はあるでしょう。しかし、昨今の大学改革をめぐる論議や掲げられる政策が前提としている、環境の変化や目指される方向性は、誰にとっても自明で納得のいくものなのでしょうか。
 この談話会では、大学をめぐってさまざまな期待や批判があるなか、現在の大学政策が教育・研究の現場にどのような困難な状況をもたらしているのかを、大学内部の問題としてだけでなく、より広い社会的な問題とも絡めながら、考えてみたいと思います。
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ナノリスクの展望:光触媒:有用性の暗転など
小林 剛*
*Takeshi KOBAYASHI, M.D. 医学博士 小林 剛 環境医学情報機構
東京理科大学ナノ粒子健康科学研究センター元客員教授
カリフォルニア大学環境毒性学部元客員教授
Email: tak-kob.md@tbc.t-com.ne.jp
pdfファイルはこちらから→csijnewsletter_024_kobayashi_20140331.pdf

 ナノテクノロジーは、その開発初期から、リスクの不安に包まれていた。その端緒は微小粒子の吸入によるディーゼル排気の呼吸器毒性(発ガン性)に由来する長年にわたる医学研究者らの実体験からの警告であった。その後、早くも約10年以上が経過した。
 しかし、これらの切実な警告は、ナノマテリアルの開発研究者や製造企業の軽視もしくは無視と行政の不作為とが相俟って、今日に至るまで、人間の健康と環境への有害影響に対する対策は極めて不十分で、無為無策のまま貴重な時間を浪費してきた。

 かくして、ナノリスクについての多くの課題は、未解決のまま越年し、その速やかな解明に対する有識者や世論からの重圧は日々高まるばかりである。こ こでは、昨年秋に強化された米国国立労働安全衛生研究所 (NIOSH)のナノマテリアルのリスクコントロール強化措置をふまえて、その周辺に蝟集している多くのナノ毒性問題について、その現況の俯瞰と将来に対 する展望を述べ、各位のご理解と強いご支持を要請する。

1.米国国立労働安全衛生研究所 (NIOSH) のコントロール強化
NIOSHは、ナノマテリアルの製造加工段階におけるナノ二酸化チタンに対する職業暴露限界値 (Occupational Exposure Levels:OEL) 0.3mg/m3を勧告し、衛生工学的対策(エンジニアリング・コントロール)の最新戦略を示した(付属資料 1~2)。この強化措置の周囲には、以下に述べるような重要な課題が山積している。

2.ナノ作業実態の改善
 日本におけるナノマテリアル作業環境の実態は、厚い企業秘密の壁に遮られ不明確であるが、作業場(大学研究室を含む)での安全対策は不十分であると推定できる。
 欧米各国においても、必ずしも万全の体制とは言い難いが、官民の努力には見るべきものがある点は、万事に消極的な我が国とは大きく異なっている。

 一般的に、我が国のナノ企業にはナノテクノロジーの労働安全衛生の専門家が不在であり、実際にどのように対応していいかに困惑している。この場合に は、都道府県の労働安全監督署の指導を仰ぐため、速やかに、専門官の相談窓口の利用をお勧めする。彼らは、そのような要請に対応する義務を有しており、親 切に応対してくれる筈である。
一方、労働基準監督署は、その名の通り、すべてのナノ作業所の実態を精査し、立入り検査と指導に徹すべきである。座して待つのではなく、現在大きく問題視されている有害なナノ作業に対して、労働者の健康保護のため積極的に打って出るべきである。

 特に、大学のラボにおいては、ナノテクノロジーの研究開発の第一線で活躍する研究者や学生自身のナノマテリアルに対する危険意識が乏しくナノ作業 責任者(ナノオフィサー)の不在や、作業規範の欠如など基本的な労働安全衛生管理でさえ極めて不十分であるため、大学当局は虚心坦懐に労働基準監督署の協 力を求めるべきである。
 大学全体としての安全確保のためには、旧来の無意味な大学の独立性 (治外法権)に固執してはならない。(因みに、米国の大学の研究環境に対する労働安全衛生局 (OSHA)の監督は厳しいが、大学側は非常に協力的である。)

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【続きは上記PDFファイルにてお読み下さい】