2011年5月31日火曜日

福島第一原発: 「今後10年間で処理費最大20兆円」?

福島第一原発: 「今後10年間で処理費最大20兆円」?

 毎日新聞によると、シンクタンク「日本経済研究センター」(東京)の岩田一政理事長が、福島第1原発の廃炉費用や避難した人の所得補償などの処理費が今後10年間で最大20兆円になるとの「試算」を出したという。31日、内閣府原子力委員会で提示したとのことだ。処理費は、「東電の剰余金のほか、再処理事業凍結など原子力政策の見直しによる財源で捻出可能とし、「増税や電気料金の引き上げの必要はない」という。⇒根拠無し。

 「試算」では、①廃炉費用は7400億~15兆円、②所得補償は6300億円、③20キロ圏内の住民が最終的に帰宅できなくなったと仮定し、国が土地を買い上げた場合は4兆3000億円で、計5兆6700億~19兆9300億円の計算になる。米国のスリーマイル島原発事故と旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の「実績に基づいて推計」したというが、記事を読むと、「試算」は私たちに安心感ではなく不安感だけを与えてしまう。

 その理由は、①「農業・漁業被害のほか、放射性物質で汚染された土壌の浄化費などは含まれていない」ことも指摘できるが、②廃炉費用の「7400億~15兆円」という巨大なコスト幅の根拠が何も分からないからだ。 また、③7400億円という数字が、「試算」と同様詳細が不明ではあるが、東電の廃炉「見積」(1~4号機へ2070億円)とどういう関係にあるのかもわからない。しかし、仮にこの額に根拠があるとして、④それがなぜ「最大」で15兆円にも跳ね上がるのか? 「メルトダウン」→格納容器・圧力容器破損になると一機あたりの廃炉費用が4兆円以上にもなるという「試算」なのだろうか? 記事には書いていないが、「試算」では使用済み核燃料と、溶けた核燃料の「処理費」はいくらなのか?

 岩田理事長は「廃炉の方向性も不透明で、試算を超える可能性がある」とも述べたという。しかし廃炉の「方向性」が何を意味するかも分からない。もっと言えば、10年間で最大20兆なら、20年かかったとしたら額は倍増するのだろうか? この「試算」はただ単に、あまたある試算の一つに過ぎないが、こんな「試算」では「20兆は軽く超える」という「情報」が風聞として一人歩きするのは目に見えている。

 しかし、はっきりしたことが二つある。
 一つは、原発はつくるのは簡単だが、今回のようなメルトダウン→廃炉という事態を引き起こしてしまえば、原発「先進国」たる米仏、そして東芝・日立製作所などの日本の原子力産業のテクノロジーの粋を結集しても手に負えなくなるということだ。とりわけ廃炉過程で浮上する、再処理もできず、「地層」にも「処分」できない使用済み核燃料と溶融した核燃料の「処理」については、その「工程表」を東電と国(原子力委員会および安全委員会)は打ち出し、この問題をめぐる国内外の不安と恐怖を早急に解消すべきである。(この問題は、同委員会の責任問題、また委員会「設置法」の抜本的改正問題を含めた今後の検討の中で、再度触れることにしたい)。

 もう一つは、原子力産業+ゼネコンにとり、メルトダウンした原発は建設時の数十倍も儲かる「金のなる樹」だということである。原発の建設費は一基3000億から5000億程度と言われているが、一市民にとっての原発が建設から廃炉まで半永久的に税金を食いつぶし、国の社会経済基盤を溶融しかねない代物であることが明白になった。

 青天井の「収束」→「廃炉」コストの「試算」に、ただただ私たちは青ざめて絶句し、思考停止に陥りがちになるが、「原子力緊急事態」とその後始末から逃げることができない以上、向き合わざるを得ない。長い、陰鬱な日常が始まろうとしている。

・・・
原子力発電環境整備機構
地層処分事業について」「全国各地で展開された「地層処分」キャンペーン」知らぬ間に、あなたの街/町にも来ていたかもしれない。
⇒「原子力の廃棄物の安全な最終処分のために」日本原子力研究開発機構 
⇒「埋め捨てにしていいの?原発のゴミ」地層処分問題研究グループ
・・・
リトアニア原発建設、日立と東芝の2陣営が応札
 リトアニア政府は1日(6/1)、同国の原子力発電所建設計画に、日立製作所と米GEの合弁会社であるGE日立ニュークリア・エナジー、および東芝傘下のウエスチングハウス(WH)の2社が応札したと発表した。リトアニア政府は応札条件を近隣のラトビア、エストニア、ポーランド、および欧州委員会と共に精査し、夏までに発注業者を選定する。
 計画している原子力発電所の発電能力は2200─3400メガワットとなる見通しで、リトアニア政府は2018─2020年までの建設を目指している。リトアニアは、旧ソビエト時代に建設されたイグナリナ原子力発電所を2009年末に閉鎖。その後2010年に新たな原子力発電所の建設に向け入札を行ったが、唯一応札した韓国電力公社(KEPCO)が応札を取り下げ、建設計画は宙に浮いていた。(ロイター)

首相、浜岡原発以外に停止求めず 知事会議で表明
 菅直人首相は31日、東京都内で開かれた全国知事会議に出席し、中部電力浜岡原発以外の原発について「安全性が確認されているものや今後、確認されるものは稼働して電力供給に当たってもらうという基本的な態度で臨む」と述べ、停止を求めない考えをあらためて示した。 原発が立地する地域の知事から「住民に『なぜここは大丈夫なのか』と聞かれる」(橋本昌茨城県知事)など、原発稼働の判断基準を問いただす声が出たのに答えた。また、菅首相は福島第1原発事故について「完全に収束するところまでいっていない。被災地ばかりでなく全国的にいろいろな影響を与えていることに責任者としておわびしたい」と陳謝した。(東京新聞)

島根原発3号機、運転再延期へ
 中国電力(中電)は31日、2012年3月に延期していた島根原発3号機(松江市鹿島町)の営業運転開始時期について、同4月以降に再延期すると発表した。3号機は津波対策に着手しておらず、制御棒駆動機構の動作不良の原因も未確定なため、地元の不安感を払拭できていないとした。運転開始時期のめどについては「できるだけ早く」との見解を示した。(山陰中央新報

原発立地県 “国任せ”脱却なるか(佐賀新聞) 

原子力施設周辺、断層342か所…保安院
 経済産業省原子力安全・保安院は31日、国内に原子力施設を持つ電力会社など12事業者から、耐震設計上、活断層と評価していなかった敷地周辺の断層342か所の報告を受けたと発表した。 東日本大震災を踏まえた対応で、保安院は今後、これらの断層について耐震設計上の検討が必要かどうか審議する。
 内閣府原子力安全委員会が4月28日、原子力施設周辺の断層の再評価を保安院に指示したのを受けての対応。 国内では、東日本大震災で大きな地殻変動が起きた結果、従来はほとんど地震が観測されていなかった地域で地震活動が活発化。中でも、これまで耐震設計上考慮していなかった「正断層型」と呼ばれる地震の発生が目立っている。(読売)

福島原発「津波の想定、過小評価」 IAEA報告書原案
 東京電力福島第一原子力発電所の事故調査のために来日した国際原子力機関(IAEA)の調査団の報告書の原案が31日、明らかになった。津波と地震による複合災害への対応が不十分だったことを指摘、東電をはじめ事故対応の当事者間で、責任の所在などの共通認識が欠けていると分析した。概要版が1日に公表される見通し。
 調査団は5月24日から6月2日までの予定で来日。各国の原発への教訓を得るため、東日本大震災で被災した福島第一原発や第二原発、東海第二原発を視察したほか、東京電力、経済産業省、文部科学省などの関係者から聞き取り調査をした。 報告書案は、事故を時系列で整理したうえで、得られた教訓を挙げた。
 福島第一原発事故の直接的な原因は地震と津波とし、電源や、炉心冷却に必要な多くの機能を失ったと指摘。東電は2002年以降、同原発の津波の想定高さを見直したが、過小評価だったと認定。過酷事故対策も、準備されていたが、複数基の事故に対処するには不十分だったとした。(朝日)

地下式原発推進で首相経験者ら議連
 民主、自民両党の首相経験者が顧問に名を連ねる「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」(会長・平沼赳夫たちあがれ日本代表)が31日発足し、自民党の森喜朗元首相や民主党の石井一選対委員長ら約20人が出席した。 平沼氏は「菅内閣が風力、太陽光発電を20%にすると言っているが、現在1%弱のものがなぜ二十数%になるのか。主要な電力は原子力でまかなう必要がある」と述べ、原発事故の封じ込めが可能な地下原発の推進を訴えた。(産経)

政府、20年めどに電力改革 発送電分離が焦点
 政府が2020年をめどに電力事業を抜本的に改革するための検討に入ることが、30日分かった。全国の10電力会社が発電から送電、小売りまで一貫して担っている現行の電力事業を見直し、発電と送電を分離することや、地域独占の供給体制の見直しが焦点になる。新成長戦略実現会議の下に「エネルギー環境会議」を設置。議長には玄葉光一郎国家戦略担当相が就く。電力事業を所管する経済産業省ではなく、官邸主導で改革案を練る。6月上旬から協議を開始し、年内にも基本方針をまとめる方針。
 菅直人首相は主要国(G8)首脳会議で20年代の早期に自然エネルギーの発電比率を20%に拡大する方針を表明した。政府内には「20%公約を達成するには電力事業改革の実行時期を20年よりもさらに繰り上げるべきだ」との意見がある。ただ、電力供給の不安定化につながるとの慎重論も根強く、議論は難航が予想される。
 電力供給については、大型発電所から地域全体に電力を送る「集権型」の体制を見直す。風力や太陽光などの中小規模の発電で地域の需要を賄う「分散型」への転換を目指す。 現行体制の問題点を検証し、20年ごろに新たな体制に移行。発電所の分散立地や、IT技術を活用した次世代送電網「スマートグリッド」に対応した仕組みを導入する。
 国内では1990年代後半から部分的に電力自由化が導入されたが、既存の電力会社が送電網を独占し、新規参入はほとんど進んでいない。電力会社を発電会社と送電会社に分離し、発電事業への参入を促すことが重要な検討課題になる。 一方、短期的課題としては、電力各社間を結ぶ送電線の増強や、工場などで自家発電設備を持つ企業の電力市場参入を促す。原発は安全性を向上させた上で今後も一定規模を維持する方向で議論する見込み。エネルギー政策の策定はこれまで経済産業省が担ってきたが、今回は国家戦略室が事務局を務める成長戦略会議が「司令塔」とし、新たな方向を打ち出す考えだ。【共同通信】

「火力や原発の新技術開発が必要」経産省賢人会議
 経済産業省は30日、「エネルギー政策賢人会議」の第3回会合を開いた。委員の薬師寺泰蔵慶応大名誉教授は「(温暖化防止などのため)石炭火力や原子力の新技術開発が必要だ」と指摘。菅直人首相が太陽光パネルを1000万戸に設置すると表明したことには、一部委員が「エネルギー改革を進める意味でもっと踏み込むべきだ」と述べた。(日経)

「発送電分離は唐突」日本電機工業会新会長の三菱電機・下村節宏会長
 日本電機工業会(JEMA)は31日、定時総会を開き、任期満了で退任する北沢通宏会長(富士電機社長)の後任に、下村節宏氏(三菱電機会長)を選出した。任期は1年。 就任会見で、下村新会長は「東日本大震災というかつて経験したことのない現実に直面している。復旧、復興をテーマに掲げ、全力を尽くす」と震災からの早期回復を支援していく姿勢を示した。政府が電力会社の発電部門と送電部門の分離(発送電分離)を議論する方針について「心証として唐突な感じがする。安定供給がされてきた日本の電力網の品質が落ちないように慎重な議論が必要」と述べた。(産経)

ドイツ、2022年までに脱原発 連立与党が合意
 ドイツ・メルケル政権の連立与党は30日未明(日本時間同日午前)、遅くても2022年までに、現在電力供給の約23%を担っている原子力発電から脱却する方針で合意した。DPA通信など、ドイツメディアが伝えた。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、他国に先駆けて「脱原発」へと政策転換したドイツは今後、風力などの再生可能エネルギーを中心にした構造への転換を目指す。
 メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟と姉妹政党のキリスト教社会同盟、連立相手の自由民主党の幹部が29日午後から協議していた。合意によると、現在17基ある原発を段階的に閉鎖し、大部分は10年後の21年までに止める。代替の電力源の確保が間に合わないなどの場合に備え、最後の3基の運転を1年間延長する選択肢を残した。(朝日
・・・
⇒「[オスプレイ配備]これはもう人権問題だ」沖縄タイムス