2011年5月29日日曜日

見積なき「工程表」: 「事故=メルトダウン=廃炉」×3のリアリズム

見積なき「工程表」: 「事故=メルトダウン=廃炉」×3のリアリズム

 31日午後2時半ごろ、福島第一原発4号機建屋付近で爆発音。東電によると、当時、「事故の復旧作業で無人の重機によるがれきの撤去作業中だった。がれきの中のボンベを重機で壊した可能性があるという。けが人はなく、周囲の放射線量にも大きな変化はないという」(朝日) ⇒「大きな変化」の定義は何か? 測定値を正確に公表すべきではないのか? 一事が万事、こういういい加減で曖昧な「情報」が私たちをイラつかせ、疲れさせ、福島の人々を不安にさせるということを、未だに国と東電は理解しない/できないのである。
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5/29
 台風2号が沖縄、九州で猛威をふるい、四国、関西、首都圏へと近づいている。昨夜から首都圏は雨。台風対策が間に合わず、土嚢とビニールシートで防備する福島第一原発。
 これからの台風シーズンは大丈夫だろうか? 原発と土嚢とビニールシート・・・。
 祈るしかない。
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許容限度の100倍、作業困難=2号機建屋、空気中の放射能濃度
 福島第1原発事故で、東京電力は29日、2号機の原子炉建屋1階で26日に空気中の放射性物質を採取し、分析した結果、放射線業務に従事する作業員が吸い込むことが許容される濃度限度の約100倍だったと発表した。
 建屋上部にある使用済み燃料プールの水温が高いため、湿度も99.9%と高く、長時間の作業ができない環境。室温は最高36.7度だった。東電はプールに設置作業中の循環冷却装置で水温を下げた後、1号機と同様に空気中の放射性物質の浄化を経て、原子炉用の循環冷却装置の設置に進む方針。(時事) (⇒「許容」なんてされない。国(経済産業省)が勝手に「省令」を改悪し、そう言っているだけである)
5/30
東電社員2人、250ミリシーベルト超えか
 2人が作業していた福島第1原発3、4号機の中央制御室=2011年3月22日、東京電力提供
 東京電力は30日、福島第1原発で復旧作業にあたっている同社の男性社員2人が、現在の作業員の緊急時の被ばく量の上限である250ミリシーベルトを超える可能性が高いと発表した。医師の診断では健康上の異常は認められていない。今後、内部被ばく量を詳細に調べる。100ミリシーベルトを超えるとがんを発症するリスクが少し高まる恐れがあるとされ、長期的な健康調査が求められそうだ。
 被ばくしたのは30代と40代の男性社員。東日本大震災が起きた3月11日から3、4号機の中央制御室などで作業していた。4月17日と5月3日に測定した際の外部被ばく量は30代社員は73.71ミリシーベルト、40代社員は88.7ミリシーベルトだった。 その後、詳細に調べたところ、40代社員の甲状腺から放射性のヨウ素131が9760ベクレル、30代社員からも7690ベクレルと、他の作業員より10倍以上高い量が検出された。ヨウ素は甲状腺に蓄積されやすいことが知られている。 国際放射線防護委員会(ICRP)は従来、職業上の被ばく限度を、自然被ばくや医療上の被ばくを除いて5年間で100ミリシーベルト、緊急時に年間500ミリシーベルト(!!!)とすることを勧告している。【毎日・岡田英、酒造唯、河内敏康】
⇒「被ばく量は数百ミリシーベルトか 東電社員」(毎日)
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 私は「「原発ジプシー」と被曝---「社員」であれ、「ジプシー」であれ」の中で、次のように書いた。「裏返して言えば、現場作業員の「安全管理」を国と東電が徹底して無視し続けてきたからこそ、事故の被害は「この程度」で済んでいるのである。そうであるからこそ、原発事故は「狂気の沙汰」であり、人間に「常軌を逸したこと」を強いるのだと言える。このことを明確にしない、いっさいの「事故報道」は偽善であり、欺瞞である。今後の修復作業の進展、それを伝える報道に一喜一憂するときにも、このことだけは忘れてはならないだろう」。このままでは「緊急時に年間500ミリシーベルト」に向けた「省令」改悪も、ありえない話ではない。
6/3
東電社員の被ばく、最大で580ミリシーベルト
 東電福島第一原発で、同社の男性社員2人が、250ミリシーベルトを超える被曝(ひばく)をした可能性がある問題で、同社は3日午後、2人の被曝(ひばく)線量を発表した。内部被曝線量は30歳代が最大で580ミリシーベルト、40歳代が570ミリシーベルトだった。厚生労働省は5月30日付で、東電と協力会社の関電工に線量管理に問題があったとして、労働安全衛生法違反で是正勧告をしている。(読売)⇒国際放射線防護委員会の「勧告」基準値よりも高い数値が確認されたというのに、「是正勧告」?
多量の放射性ヨウ素が検出された福島第1原発の作業員2人、被ばく線量
 福島第1原発の作業員2人から、多量の放射性ヨウ素が検出された問題で、東京電力は2人の線量が650ミリシーベルトを上回る可能性があると発表した。この2人は30代と40代の男性社員で、内部被ばく線量の評価はそれぞれ、210~580ミリシーベルト、200~570ミリシーベルトになるという。この結果、外部被ばくを加えた被ばく線量は、上限の250ミリシーベルトを超えたのは確実で、650ミリシーベルトをも上回る可能性があるという。(FNN)

1号機地下に高濃度汚染水、水位も急上昇
 東京電力は30日(5/30)、福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋地下階のたまり水から、通常の原子炉冷却水の約1万倍にあたる高濃度の放射性物質を検出したと発表した。 原子炉格納容器の下部が破損した2号機地下階のたまり水とほぼ同じ濃度で、1号機も格納容器から炉心の水が漏れ出した可能性が高いとみている。 東電が27日に採水して分析したもので、放射性物質の濃度は、セシウム137が1立方センチ・メートルあたり290万ベクレル、セシウム134が同250万ベクレル、ヨウ素131が同3万ベクレルに上った。
 東電は、この汚染水をくみ上げ、浄化して炉心に戻す「循環冷却」を計画しているが、完成は7月以降になる見通し。水面は地下約7メートルだが、29日午後4時から25時間で約37センチ・メートルも急上昇した。雨で増えた地下水が流れ込んだ可能性もあるが、このまま上昇が続くとタービン建屋側へ流れ出す恐れがあるという。(読売)→放射能汚染水が出れば出るほど、アレバが儲かる。
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 原発の「事故」は、ほとんどの場合メルトダウンを起こすものではないし、廃炉につながるわけでもない。私たちは今、「事故」そのものがメルトダウンを起こし、廃炉を決定付けてしまった原発大災害の社会的・経済的コストの甚大さを、少しずつ感じ始めている。いや、日本社会が全体として感じ始めているのであれば、まだ救いはあるかもしれない。

 一昨日(5/27)、東電は放射能汚染水の処理費が531億円になるとの試算を公表した。これを最初に知ったとき、不覚にも私は処理費には汚染水の除染その他を含んだ総費用なのだと思っていた。しかし、この額は汚染水処理にかかる総額ではない。
 毎日新聞はこのように報じている。、「東電によると、約8万4700立方メートル(5月16日現在)の高濃度汚染水があるが、最終的には約25万立方メートルを処理する必要があると見込み、施設や仮設タンクの建設費、汚染水の処理費などを積算した。高濃度汚染水は現在、タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設に移送しているが、移送費や低濃度汚染水の処理費は含まれていない」。
 では、「移送費や低濃度汚染水の処理費」はいくらかかるのか?

 東電から4、5月と二度にわたり工程なき「工程表」を示され、私たちはかなりのストレスがたまっている。今回初めて、汚染水処理にかかる一部の「見積」が東電から出されたわけだが、しかし国・東電・マスコミが口を噤んでいるのは、来年一月中旬を「メド」とする「冷温停止」状態になるまで、いったいいくらかかるのか、その「総額見積表」である。私たちのストレスは今後、東電が次々に「見積」を公表するにつれ、さらに嵩じてゆくだろう。

 財源なき政策がありえぬように、見積なき工程表もありえない。仮に、もう一つ仮に工程表が「科学的合理性」に裏打ちされたものであったとしても、「経済的合理性」に裏打ちされたものでなければ、実現可能性(feasibility)はゼロになる。技術的に可能なものが、現実的には不可能になる。これが社会の常識である。

 毎日新聞はじめマスコミは、汚染水処理費は東電が支払うと書き、それで決着がつくかのような報道をしているが、事はそんなに単純ではない。
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原発賠償条約、加盟を検討 海外から巨額請求の恐れ
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、国際原子力機関(IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた
 このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある。(朝日
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 青天井の賠償・補償コストと、青天井の「原子力非常事態」の「収束」コスト。これまで工程なき工程表を論じてきた私たちは、見積なき工程表に目を向けることを余儀なくされている。日本経済と社会、そして私たちの生活は本当に福島第一原発とともにメルトダウンしてしまうかもしれない。
 チェルノブイリによる1990年代におけるロシアの社会・経済的メルトダウンの実態、またチェルノブイリを抱えながら、それでも原発を放棄できないウクライナの悲劇。放射能汚染と被曝だけではすまない、国の経済と社会に取り返しのつかない災難をもたらす、「事故=メルトダウン=廃炉」の原発災害の恐ろしさを、これから私たちは、じわりじわりと、まざまざと思い知ることになるだろう。

〈東電の債務問題〉
 今週号の『週刊ダイヤモンド』の記事、「東電の最大30兆円の隠れ債務で現実味を帯びる発送電分離」を読んでみよう。
・2011年3月期、経常利益3176億円。だが、事故処理などの特別損失を1兆0776億円計上し、1兆2473億円の最終赤字。「問題は、原発事故の賠償費用や廃炉費用の引当金を負債としてほぼ計上しなかったことだ」。
・廃炉については、福島第1原発1~4号機への2070億円の引き当てのみ。
・政府筋によると廃炉には1.5兆円、一部では10兆円に達する見方さえある。
・「賠償費用に至っては債務としてまったく認識していない」。
・政府内部では20~30キロメートル圏内の約4万世帯に各1億円として4兆円の賠償を想定。企業約2000社にも、年間売上高約5000億円の20年分、総額10兆円の営業補償を検討中。土地収用費用や外国への賠償費用、使用済み核燃料の処理費用も踏まえると約20兆円に上る。

 このまま行けば第一原発の5、6号機、第二原発の「修理」後の再稼働という話に必ずなる。しかしそのことより、廃炉をめぐる「政府筋」情報の1.5兆円と「一部では10兆円」の「見方」のギャップがどこから来るのか、その理由、根拠、詳細を知ることの方が、さしあたって重要である。
①そもそも、東電の「福島第1原発1~4号機への2070億円」と1.5兆円がどういう関係にあるのか、
②廃炉になぜこんなにも金がかかるのか、さらに
③「使用済み核燃料の処理費用」の「見積」額がいくらなのか、私たちには何も分からない。こんなことを放置していて良いはずがないではないか。

 しかし。とりあえず今重要なことは531億円の「明細」を明らかにさせ、次の工程表の発表時に、工程表の見積もりをセットで出させるよう国・東電に圧力をかけることだ。ここからでしか始まらない。


 なぜ、詳細な見積書が必要なのか。理由は二つある。
 一つは、「事態収拾」に金がかかればかかるほど、東電に賠償・補償責任を負う財源がなくなり、それによって被害者・被災者への賠償・補償額と対象が減額・限定され、支払い期日もさらに遅れる可能性が濃厚になるからだ。
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風評被害賠償、対象は出荷制限・自粛地域
 東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償範囲の指針作成を進めている政府の「原子力損害賠償紛争審査会」(会長・能見善久学習院大教授)は、当面の農林水産物の風評被害の賠償対象地域について、政府の出荷制限や自治体の自粛要請で損害を受けた地域の農家や漁業者とする方針を固め、2次指針の最終案に盛り込むことにした。 31日の次回会合で最終案を提示する見込みだ。
 具体的には、〈1〉野菜は、出荷制限を受けた福島、茨城、栃木、群馬4県の全域と、千葉県内3市町。品目は、全県にまたがるホウレンソウのほか、自治体ごとにパセリやチンゲンサイなど〈2〉魚介類は、福島、茨城両県――となっている。審査会では、風評被害の賠償は原則、原発事故との相当な因果関係が認められる損害が対象で、津波や地震などの「自粛ムード」に伴う損害は認めない方針を示している。(読売)
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 現状では東電が公表する「見積」の根拠が何もわからない。「透明性」が何もない。公的資金が投入されず、電気代にも関係しないのであれば、「民・民」同士で勝手にやってもらえばよいが、「賠償・補償+収束」コスト総額は、今後の復興増税・電気料金値上げ・消費税値上げに直結する問題である。
⇒「消費税:「段階的増税を」…財務省、内閣府が報告書」(毎日)

 来年1月中旬が「メド」とされている「冷温停止」が可能かどうか、その科学的・技術的合理性と実現可能性が未だに私は理解できないでいる。だから「新工程表」について、私は何も語る気がしない。しかしそのことを置いたとしても、「冷温停止」以前の未完の汚染水処理の段階で、その一部の作業に531億円もの金が使われることに驚きを禁じえない。メディアも私たちも事の重大さを、もう少し自覚した方がよいだろう。とりわけ20代、30代の人たちは、2、30年後の廃炉完了からさらにその後のメンテまで、福島第一・第二原発の処理問題に一生付き合うことになるのだから。(私の世代は、おそらく廃炉完了をみることなく死んでゆく世代になるだろうが、メルトダウンを起こした原発の「処理費」には、さらに汚染土壌・構築物等の除染、被曝検査・予防の医療費等々が加算されることも忘れてはならない。)

 汚染水処理の「施設や仮設タンクの建設費」はいくらかかるのか。高濃度汚染水処理費としてアレバが提示した額はいくらなのか? 当初アレバによる高濃度汚染水の処理費は数兆円にのぼると噂されていたが、「予想していたより安くなった」と安心している場合ではないだろう。アレバには青森・六ヶ所村で随分稼いで頂いて来た。この上さらに福島で暴利を貪るなど、まさか考えていないとは思うが、はっきりその証拠を示してもらわねばならない。


 そもそも原発のメンテ・廃炉費用はべらぼうに高い。だから電力会社は廃炉・メンテを渋り、問題を起こすのだが、原発をつくるのも廃炉にするのも、同じ原子力産業+ゼネコンである。今回の場合、東芝・日立・日本のゼネコン、米仏の原子力産業が関わっており、どの企業がどの工程・作業を請け負い、いくらで入・落札したか、実態を明らかにしてもらわねばならない。そうでなければ私たちは、将来的な公的資金投入の是非を議論しようがない。これが二点目の理由である。その額に応じて、今はペンディング状態になっている、福島第一の原子炉設計・製造・修理・メンテに関わったGE、東芝、日立などの賠償責任問題も、真剣に議論しなければならない時が来るかもしれない。

 531億円の明細の開示。そして「冷温停止」に至る収束スキームそれぞれにどの企業が関与し、その受注額はいくらなのか。スキームの中には、かの悪名高き米国のべクテル社も一枚噛んでいる。昔、ボリビアの水の民営化問題でベクテル社とフランスの水産業のボッタクリの実態を調査したことがあるが、ベクテル社とフランスの水産業はボリビアのみならず水の民営化と戦った世界各地の〈民衆の敵〉である。意外に知らない人が多いが、ベクテル社は、実はゼネコン型原子力企業なのだ。

 ともあれ、この間何もかもが闇の奥に隠されたまま、事が進んでいるのが「工程表」をめぐる実情である。国と東電には、早急に情報開示をしてもらわねばならない。メディアは情報開示を国と東電に迫るべきだろう。福島原発大災害に乗じた、日米仏原子力複合体の貪欲な利権漁り、やりたい放題のボッタクリにストップをかけなければならない。

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5号機の海水ポンプ故障
 東京電力は29日、冷温停止中の福島第1原発5号機で、原子炉と使用済み核燃料プールの冷却水を冷やしている仮設の海水ポンプが故障したと発表した。一時的に冷却機能が失われており、東電は同日午前8時から予備ポンプへの交換作業を始めた。同日中には再起動できる見込み。 東電によると、28日午後9時ごろ、作業員がパトロール中にポンプが止まっているのを見つけた。冷却水の温度は29日午前8時時点で原子炉が87.4度、使用済み核燃料プールが44.7度で、28日午後9時時点から原子炉は19.4度、プールは3.7度上昇した。【毎日・酒造唯】

1号機地下の汚染水、水深5・5m
 東京電力は28日、福島第一原子力発電所の1号機原子炉建屋地下にたまっている汚染水の水深は28日午前7時現在、約5・5メートルと発表した。 水位計を27日に設置し、明らかになった。ただし、汚染水の表面から1階床面までは6メートルあり、東電は「短時間で地上にあふれ出る恐れは少ない」としている。
 東電によると、13日に初めて作業員が確認したときの汚染水の水深は約4・2メートルだった。東電はその後、水位が上昇しているとしていたが、いずれも目視によるものだった。1号機では現在、原子炉圧力容器に毎時6トンでの注水を続けており、大半が地下に流れ出しているとみられる。 一方、東電は29日から、同原発に医師を24時間態勢で常駐させる。これまでは、東電の産業医や産業医科大学などから交代で派遣されている医師が作業員の健康管理や診療に当たっていたが、早朝や夜間は不在のことが多かった。(読売)

1、4号機 事故後も耐震性「安全」
 東京電力は28日、福島第1原発の1号機と4号機について事故後の耐震安全性の評価結果をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に提出した。東電が想定したマグニチュード(M)7級の大地震などの揺れに対しても壁や鉄筋には「余裕があり、十分な安全性がある」(???)とした。保安院も東電の評価を妥当とした。 松本純一・東電原子力・立地本部長代理は「1、4号機の機器類の耐震性や、2、3号機については評価した上で改めて報告したい」と話した。
 台風2号の接近に備え、東電は使用済み燃料プールに放水作業中の大型コンクリートポンプ車について、強風による転倒を避けるため長いアームをたたんで移動させる。強風による原子炉建屋への影響について、保安院は「建屋の壁の一部が(水素爆発などにより)落ちて隙間(すきま)が多くなっていることもあり、建屋が損壊したりする恐れはない」とみている。
 東電は第1原発敷地内で測定し、28日に公開した放射線量の未公表データについて、線量を書いた紙を「外部に保管した際、一部を紛失した」と27日説明していたが、28日、「本店と原発内に保管され紛失していなかった」と説明を変更した。【毎日・河内敏康、平野光芳、比嘉洋】

「脱原発は10年以内に可能」ドイツ政府諮問委が報告書
 ドイツ政府が福島原発事故後、新しいエネルギー政策の検討のために立ち上げた諮問委員会の最終会合が28日に開かれ、「脱原発は10年以内に可能」とする報告書をまとめた。DPA通信が伝えた。 委員会報告に拘束力はなく、メルケル政権は連立与党内で最終的な調整を進めるが、報告を基に2021年前後に原子力から脱却する野心的な目標を掲げる可能性が強い。
 ドイツは福島事故後に原発の運転延長から、脱原発に政策を転換。国内の17基の原発をいつまでにすべて閉鎖するのかなどが焦点になっている。メルケル首相は脱原発の行程や方法を定める法案を6月6日に閣議決定する方針で、委員会報告を受けて5月29日に予定されている連立与党協議で脱原発の目標年を決めるとの観測がある。ただ、与党内の一部には時期確定に慎重な意見もある。(朝日)

周南市議会、上関原発中止求める意見書 30キロ圏内
 中国電力が山口県上関町で計画している上関原発建設の中止を申し入れるよう県に求める意見書案が27日、周南市議会で全会一致で可決された。県によると、少なくとも県が埋め立て免許を出した2008年10月以降、上関原発建設中止を求める意見書は県内の議会で初めてという。
 周南市は一部が予定地から30キロ圏に入っている。意見書は二井関成知事あてで、福島第一原発事故を受け「風向きによっては全市が影響を受けることになる。避難区域となった場合、石油化学コンビナートの工場群が全面停止という事態になる」と指摘。国に対し、既設原発の安全管理や事故が起きたときの対処法の確立▽原発の新増設計画の凍結▽原発に代わる新エネルギービジョンの早急な策定――を求めることも併せて要望している。米沢痴達議長は「直接知事に会い、意見書を提出したい」と話した。 中国電力広報・環境部門は「内容がわからないのでコメントのしようがない」としている。(朝日・福家司)

四国電の原発安全対策、「地震4連動」も想定 日向灘含める
 四国電力の千葉昭社長は27日の記者会見で、同社の伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)の安全対策について「(東海、東南海、南海大地震に加えて)日向灘の4連動まで考える必要がある」と述べ、より大きな震災を想定していることを明らかにした。現時点では設計の見直しなどは必要ない(???)としているが、不十分な部分があれば追加対策をとる考えも示した。
 従来は東海から南海にかけての3連動型の大地震を想定していたが、近年の調査ではさらに西側の日向灘まで震源域が伸びるパターンも考えられるとの指摘もある。日向灘は伊方原発に近いことから、より大規模な震災になった場合のことを考慮に入れる。 3連動型の場合は最大でマグニチュード8.6を想定している。仮に4連動となった場合、「マグニチュード9近いレベルになる可能性もある」(千葉社長)という。ただし、伊方原発はそれでも耐えうる設計になっているとし、直ちに追加の安全対策などが必要なわけではないとした。 津波も従来の想定より若干高くなるが、現段階ではクリアできるとしている。現在、社内の委員会を通じて詳細な検討を進めており、千葉社長は「もう一段の高いレベルで必要な対策はどんどんやる」と強調した。
 夏場の電力供給については、現在定期点検中の「(伊方原発)3号機が7月10日に起動することが大前提」と説明。3号機は四国電の発電設備の中でも最大級の出力を持っている。仮に再開できなければ、最大電力需要に対する供給余力を示す予備率が1%程度に下がるとしている。 気象庁によると、今夏は昨年ほどの猛暑にはならないものの、例年より暑くなるとの予想が出ている。3号機が起動すれば予備率は17%程度を維持できるが、再開が延びた場合は火力発電を最大限活用するほか、自家発電をしている事業会社からの融通などあらゆる手段を講じて電力を安定供給する方針。現時点では目標値を定めた形での節電要請などは考えていないとした。(日経)