2011年5月26日木曜日

福島第一原発の「廃炉工程表」はどうなったのか?

福島第一原発の「廃炉工程表」はどうなったのか?


 スイスが、2034年までに原発を全廃することを決定した。これに対し、日本はと言えば・・・。
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「2034年までに原発全廃」 スイスが国家目標
 スイス政府は25日、国内に5基ある原子力発電所を、寿命を迎える2034年までに廃炉とし、改修や新規建設はしないとの国家目標を決めた。福島原発事故後、ドイツに続き「脱原発」政策にかじを切った。記者会見したロイトハルト環境エネルギー相によると、全閣僚7人が特別会合を開き、
(1)老朽化する原発の改修を含む現在の原発態勢の維持
(2)改修はせず、今の原発の安全性が保てる間に順次廃炉
(3)原発の即時稼働停止、の三つのシナリオを中心に協議。最終的に(2)を選んだ。
 ロイトハルト氏は朝日新聞の取材に「フクシマが、今後数十年のスイスのエネルギー戦略を変えた」と答えた。
 スイスでは電力使用量の約39%を原発が担っている。今後は、約56%を占める水力発電の割合を高める方針。スイスにはアルプスの水源を活用した水力発電所が500カ所以上あり、まずはこれらの設備を改修するなどして効率を高めるという。さらに、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入も進め、原発分の穴埋めを図る。
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 「改修はせず」が気にはなるが、「順次廃炉」=段階的廃炉路線は現実主義的で、実現可能性がある。
 これに対し菅首相は、25日午後(日本時間同)、パリでのサルコジ仏大統領との会談において、「原子力の安全性向上」に努めながら、「安全を確保した原発は活用する姿勢を表明」(朝日電子版)したという。首相は福島第一原発の「事故収束に向けた工程表に沿って来年1月までに(原子炉を)冷温停止にしていきたい。事故の情報と教訓を国際社会と共有して国際的な議論を先導(???)したい」と語ったという。
 「フクシマ」は、今後数十年の日本のエネルギー戦略を変えはしなかったようだ。スイスと日本、どちらが原子炉三基のメルトダウンを引き起こした国なのか、ワケが分からなくなる。
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「20年代に自然エネルギーを2割」 菅首相が国際公約
 菅直人首相は25日夕(日本時間26日未明)、訪問先のパリで経済協力開発機構(OECD)の設立50周年記念行事に出席し、日本のエネルギー政策について講演した。発電量全体に占める再生可能な自然エネルギーの割合(現在は約9%)を引き上げ、「2020年代のできるだけ早い時期に20%とする」という数値目標を掲げた。
 首相は目標達成に向けて太陽電池の発電コストを「2020年に現在の3分の1、2030年に6分の1まで引き下げることを目指す」と強調した。首相は福島第一原発事故を受けて、太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用を拡大する意向を示していたが、数値目標を示すのは初めて。昨年6月に決めた政府のエネルギー基本計画にある達成時期を10年程度前倒しする目標だ。国際会議で表明することで事実上の「国際公約」となる。(朝日)
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 つまり、原発大災害を引き起こした責任を負うこの国の最高責任者が、この間の「事態」から学んだ「教訓」とは、元々決まっていた「再生可能エネルギーの利用」拡大計画を「10年程度前倒し」する、その程度のことでしかなかった、ということらしい。首相が言っているのは、「2020年代のできるだけ早い時期」(2025年くらいまで?)に、日本のエネルギー消費に占める原発依存率を今より11%程度下げて20%程度にするその程度のことなのである。

 しかし、その程度のことは、目標数値上の微調整が必要になるにせよ、すでにNEDO 再生可能エネルギー技術白書―新たなエネルギー社会の実現に向けて―」が基本ラインとして打ち出していたことである。もっと分かりやすく言えば、「サンライズ計画」とは、経産省の「原発依存率50%」路線から方向転換し、環境省の「2050年に26%」路線へと面舵一杯し、その「工程表」を前倒ししながら、「原子力村」に代わる「再生可能エネルギー村」をつくるぞという、しかし「原子力村」は廃村にしない、日本のエネルギー産業の「構造調整」プログラムなのである。失敗から学ぶことをしない「総括なき乗り移り」とは、まさにこういうことを言うのではないだろうか。

 このような論調に対しては、「それでも原発依存率を低くすることは良いことではないのか?」という意見/批判は根強くあると思うので、また機会を改めて考えることにしたい。言いたいのは、「構造調整」プログラムは新規参入を助長はするが「構造」そのものは変えない、ということだ。今後、「原子力村」から「再生可能エネルギー村」に「本籍」を移す人、「本籍」は移さないが「住民票」だけを移す人、素性を隠して両方に「住民票」を置くという「掟破り」をする人など、いろんな学者・「専門家」が出てくるだろう。重厚長大型の原子力・エネルギー産業と「連携」したり、あるいは「新規参入」・ベンチャー型産業の旗振り・権威として。


 「廃炉工程表」の策定問題
 今、喫緊に日本政府に求められていることは四つある。
①第二の「3・11」を想定した原発の「安全基準」の具体的策定、
②福島第一原発5、6号機、第二原発の廃炉問題に対する方針決定、
③第一原発1~4号機の「廃炉工程表」の策定、
④使用済み核燃料および原子炉・格納容器内で溶けた核燃料の処分方法の公表などである。
 福島の子どもたち、被災者の今後に直結する問題として、ここでは③の「廃炉工程表」について考えてみたい。
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「さらに7万人が避難すべき」、仏IRSNが福島原発事故の評価を更新
 フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は23日、東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故に関する評価を更新し、立ち入りが禁止されている原発から半径20キロ以内の警戒区域外にも放射線レベルの高い地域があり、この地域の住民約7万人も避難すべきとの見解を示した。 これによると、福島原発の北西にあたる、住民がすでに避難した警戒区域より原発から離れた地域に、放射能レベルが1平方メートルあたり数百から数千ベクレル、さらに数百万ベクレルに達する場所があったという。
 IRSNによると「警戒区域外では最も汚染が激しい」この地域には14歳以下の子ども9500人を含む約7万人が暮らしている。ここに住み続ければ福島原発事故発生からの1年間で、フランスで原子力事故時の公衆の安全基準となっている年間10ミリシーベルトを超える放射線を浴びることになるという。年間10ミリシーベルトは、フランスで自然放射線源から浴びる放射線量の3倍にあたる。
 IRSN環境部門のトップ、ディディエ・シャンピオン(Didier Champion)氏は、年間10ミリシーベルトというのは予防的な数字で、それだけで危険な量ではないが、食物や飲料水の摂取による内部被曝は含まれていないと説明した。 またIRSNが避難すべきだとした7万人のうち2万6000人以上は、事故後最初の1年間の被曝量が16ミリシーベルトを超える可能性があるという。
 5月15日に計画的避難が始まった福島県飯舘村と同県川俣町には、風によってこれまでに継続して高いレベルの放射能物質が流されてきているという。IRSNは、日本の公式発表および米軍による上空からの測定に基づいて評価を更新した。(c)AFP

「安全宣言で地震被害拡大」学者7人起訴 イタリア地裁
 2009年4月に309人の犠牲者を出したイタリア中部のラクイラ地震で、地震学者が直前に「安全宣言」を出したために被害が広がったとして、ラクイラ地裁の予審判事は25日、学者7人を過失致死罪で起訴した。地震予知失敗の刑事責任が問われる、世界でも異例の裁判となる。 起訴された国立地球物理学火山学研究所(INGV)のエンゾ・ボスキ所長ら7人は、地震発生6日前の同年3月31日、政府の災害対策機関の幹部やラクイラ市長らと災害対策委員会を開いた。ラクイラで半年間にわたって続いていた微震について検討したが、避難勧告は見送られた。
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 「原発安全宣言で原発災害拡大」訴訟をいつか日本でも起こせるかもしれない。 
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 福島第一・第二原発の廃炉問題に関し、1~4号機の廃炉を除いて、東電も国も明言を避けている。それには二つの理由がある。 一つは、「事態の収拾」と「廃炉世論の収拾」後の稼働再開の余地を残すという「姑息な思惑」と、もう一つは廃炉費用調達の展望が見えないという問題である。

 東電の武藤副社長は、今月17日の会見で「廃炉費用の見通しが立たない」と言ったが、実際これは本音のところだろう。「3・11」以降、さまざまな廃炉費用試算情報が飛び交ってきたが、第一・第二原発のすべての廃炉費用は数兆円から10数兆円規模になるというものさえある(私には試算根拠が理解できないのだが)。
 廃炉費用が嵩(かさ)めば嵩むほど、賠償・補償に回せる資金が少なくなり、そうなるとその皺寄せはすべて被災者・被害者が受けることになる。この冷酷な現実を脱原発派はどうするか。何を方針として打ち出し、「提言」するか?〈私たち〉はとてもシビアな問題に直面しているのだ。


「悪魔のシナリオ」
 メルトダウンの仕方、初期段階で放出された放射能の量などにおいて、今回の事態はチェルノブイリとは違うと言えるのかも知れない。しかし、現在進行形で起こっていることは福島における「チェルノブイリの空間的再現」である。

 放射線が全く出ない状態に戻すのに10年以上かかる、と言われている。1~3号機の廃炉が完了するのに30年程度はかかる、と言われている(東芝・日立の当初案「10年程度」は、1~3号機のメルトダウンを前提していなかったはずだ)。けれども、廃炉費用のメドが立たないということは、廃炉計画のメドが立たないということであり、廃炉計画のメドが立たないということは、東電単独では「廃炉工程表」が出せないということだ。そうなれば原発近辺の被災者の帰宅のメドも立たない、ということになる。

 菅内閣は、この「悪魔のシナリオ」をいかにして解決するのか? 「事故収束に向けた工程表に沿って来年1月までに冷温停止にしていきたい」と言うが、廃炉費用の確保を含めた「冷温停止」後の「廃炉工程表」を国が示せなければ「国際公約」も果たせなくなる。いや、「国際公約」なんてどうでもよい。被災者への公約を本当に国は果たせるのか?
 こうした状況の中で、内閣府・原子力委員会は、東電に「廃炉工程表」の提出を指示した。しかし今のままでは仮に東電が提出したとしても、財源に裏打ちされない工程なき「気休め表」しか出てこないだろう。

 菅内閣、そして民主党をはじめすべての政党は、この事態の深刻さをどこまで理解しているだろう。問いは、〈私たち〉自身に対しても向けられている。三基もの原子炉のメルトダウンを起こした国の脱原発派が背負わねばならない、本当の試練が始まろうとしている。

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原発の廃炉費用、想定より3千億円増 電事連が試算
 電気事業連合会は(2007年2月)8日、国内55基の原子力発電所を将来、解体撤去する際にかかる廃炉費用が、想定してきた約2兆6000億円から、約2兆9000億円に膨らむとの試算値を経済産業省の審議会に示した。廃炉に関する制度改正などにより、環境への悪影響を減らす追加費用が必要となるためだ。上積み分は、将来の電気料金引き上げに反映される可能性がある。
 廃炉の際、コンクリートや金属片など放射性廃棄物が大量に発生する。追加費用のうち約1000億円分は、放射性物質と認定する放射能濃度を従来よりも下げ、廃棄物量が増えることに伴うもの。処分方法を埋め立てから再資源化に変えたことでも処理単価が大きく膨らみ、全体では、現在1基あたり約550億円の費用が、更に50億~100億円程度増える見込みとなった。上積み分を、企業会計や料金原価へどう反映させるかは、今後議論する。 廃炉は10~20年ごろから本格化するが、巨額の費用が一時期に集中するため、利益の一部を事前に積み立てる「廃止措置引当金」が設けられている。現在の想定額約2兆6000億円に対し、原発を持つ電力会社は約1兆1000億円分をすでに計上済みだが、追加分は引当額を上積みすることになる。2007年02月08日(朝日)

再生可能エネルギー:首相表明に発言相次ぐ
 菅直人首相が、日本の電力に占める再生可能エネルギーの発電比率を20年代の早い時期に20%とすると表明したことについて、各方面から発言が相次いだ。 枝野幸男官房長官は26日の記者会見で、菅首相が「積み重ね型の議論ではなく、首相の強いリーダーシップの下に方向性を打ち出すやり方も、重要な課題で方向性を変えるに当たっては重要だ」と述べ、首相が主導したと説明。
 しかし、日本経団連の米倉弘昌会長は同日の定時総会後の会見で、経済界に相談や説明もなく、目標が表明されたことに対して「目的だけが独り歩きする政策は危険だ」と批判した。 石油連盟の天坊昭彦会長(出光興産会長)は同日の会見で、「鳩山由紀夫前首相が言った『温室効果ガス25%削減』と比べて、少しは現実的だ」と一定の評価をした。ただ、「最初に数字を決めて独り歩きするより、実現性の高い計画を作っていただきたい」とけん制。温室効果ガスの25%削減を突然表明するなど、エネルギー政策を巡って産業界と対立してきた民主党政権への警戒感をにじませた。【毎日・影山哲也、宮崎泰宏、立山清也】

地震国に原発安全基準、IAEAに要請…G8案
【パリ=小野田徹史】仏北部ドービルで26日開幕する主要8か国(G8)首脳会議(サミット)で採択される共同声明の最大テーマとなる「原子力安全」部分の原案が25日、判明した。
 日本のように地震発生リスクがある国・地域向けに原子力発電所の新たな安全基準を策定するよう、国際原子力機関(IAEA)に求めている。さらに、東京電力福島第一原発の事故を教訓として重視し、原発を今後導入する国を含め、IAEAの現行の安全基準を活用することを促している。 IAEAは、原発の設計や放射性物質の取り扱いなどについて、加盟国が守るべき安全基準を定めている。しかし、津波によって原子炉冷却のための電源が喪失した福島の事故が起きたのは、その基準が十分に機能しなかったためだという見方が根強い。このため、G8は、地震国向けには別途、新たな基準を作る必要があると判断した。(読売)

「原発は安全」と協会が海外向けにPR
 原発関連のメーカーや電力会社、研究機関などでつくる社団法人「日本原子力産業協会」(原産協会、今井敬会長)が、東日本大震災後の4月19日から「日本の原発は安全で高品質」と海外向けにPRする冊子をホームページ(HP)上で公開していることが分かった。東京電力福島第1原発事故で安全性への懸念が高まる中、事故に触れずに原発輸出のPRを続ける姿勢に海外から批判も出ている。
 冊子は「日本原子力購入ガイド2011」。全約100ページで、震災発生前に作製が始まり、4月19日に原産協会の英語版HPに掲載された。会員企業の国内メーカーやゼネコンなどの原子力関連商品や事業の内容を英語で紹介している。 冊子は冒頭で「日本の原子力産業界は、信頼できる最高級の部品を使い、高性能の原発を建てている」とアピール。「日本の原子力の現状と将来」と題したページでは、「日本の原発は7000時間当たりの緊急停止割合が世界一低く、最高水準の安全性を実証している」と日本原発の安全性を強調している。【毎日・林田七恵、日野行介】(⇒批判を受け、協会はHPから削除)

小中高に線量計 福島県教委が配布
 東京電力福島第1原発事故を受け、福島県教育委員会は19日、県内全ての小中高校など約1200カ所に放射線の累積量を測る線量計を来週にも配布する方針を明らかにした。子供が学校などにいる間に受ける放射線量を推計するため。対象は公立、私立を問わない。認可外の保育園への配布も検討する。
 県教委によると、各校に配布する線量計は児童・生徒と行動をともにする教師が身に着ける。県教委が結果を集計し文部科学省に報告する。夏に向かって気温が上がるため、この数値を基準に教室で換気を行う。 県は4月以降、放射線量が高かった福島市や郡山市の小中高校などに線量計を配り同様の調査を行っている。【毎日・種市房子】

原発反対、日独中韓で増 日本は初めて多数に 世論調査
 東京電力福島第一原発の事故を受け、朝日新聞社は今月、日米仏ロ韓独中の7カ国で世論調査を実施、事故への見方や原発に関する意識を探った。原子力発電の利用について、賛成が反対より多いのは米国とフランス。韓国と中国では拮抗(きっこう)し、ドイツ、ロシア、日本では反対が多数を占めた。日本は、事故後3回目の調査で初めて反対が賛成を上回った。 対象国は、世界の主要原発国と、建設中の原発が最も多い中国を選んだ。
 原発の利用で、米国は賛成55%、反対31%、フランスは51%、44%と賛成多数になった。これに対し、ロシアは賛成36%、反対52%、日本は34%、42%。「脱原発」を進めるドイツは、反対81%が賛成19%を大きく引き離している。 日本は、4月16、17日の調査で賛成50%、反対32%だったが、今月14、15日の前回調査で賛成43%、反対36%と差が縮まり、今回初めて逆転した。

連合、原発推進方針を凍結 昨夏決めたばかりですが
 連合(古賀伸明会長)は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて原発推進政策を凍結し、新規立地・増設を「着実に進める」としてきた方針を見直す。26日午後の中央執行委員会で決定する。民主党の有力な支持団体だけに、民主党政権のエネルギー政策に影響するのは必至だ。
 連合は中央執行委に提出する文書で、原子力エネルギー政策について「より高度な安全確保体制の確立、地域住民の理解・合意という前提条件が確保され難い状況に鑑み、凍結する」と明記し、原発政策の総点検・見直しに着手する方針を打ち出す。新増設推進の姿勢を改め、当面は政府のエネルギー政策見直しの行方を見守る姿勢に転じる。 連合は昨年8月、傘下の労組間で意見が割れていた原発政策について、初めて「推進」を明確に打ち出したばかりだった。(朝日)
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 政界も労働界も、これから来年にかけて、「菅降ろし」と相まって「サンライズ計画」をめぐるアレヤコレヤの紛糾、責任の転嫁合戦の嵐が起こるだろう。誰が何を語り、どう動き、どう豹変するか、凝視したい。